JP4337795B2 - ベベルギヤ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部品等として適した、樹脂金属複合ベベルギヤを用いるベベルギヤ装置に関する。
樹脂製ベベルギヤは、歯の噛み合い時の騒音発生を抑えるために金属製ベベルギヤと噛み合う相手ベベルギヤとして用いられ、高強度と耐久性が要求される。
従来、樹脂製ベベルギヤとして、補強繊維基材に樹脂を含浸したリング状樹脂成形体に歯を形成したものが提案されている。例えば、特許文献1に開示される次の技術である。
すなわち、帯状の補強繊維基材を準備する。この帯状の補強繊維基材を金属製ブッシュの外周に重ね巻きし筒状体を形成する。そして、金属製ブッシュと筒状体を成形金型に収容し、筒状体に樹脂を含浸し、加熱成形して金属製ブッシュと一体となったギヤ素形体を成形する。そして、ギヤ素形体の軸方向端面に切削加工により歯を形成する。
特開2005−140140号公報
上記の樹脂製ベベルギヤは、帯状の補強繊維基材を重ね巻きしてなる筒状体の軸方向端面に歯が付与されているため、歯にかかる負荷の方向が筒状体の軸方向と交差した構成となり、強度面で理想的と言える。
しかし、歯部が樹脂のみで構成されているため、強度と耐久性に限界があり、更なる向上が要望されていた。
本発明が解決しようとする課題は、歯部の材質および形状を工夫して、耐久性を向上させ、かつ歯の噛み合い時の騒音を低減した樹脂金属複合ベベルギヤを用いたベベルギヤ装置を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、歯幅方向の一部が樹脂部、歯幅方向の他の部分が金属部で構成された歯部を有する樹脂金属複合ベベルギヤと、当該ギヤと噛み合う金属製の相手ベベルギヤとを含むギヤ装置を次のように構成する。
すなわち、樹脂金属複合ベベルギヤと金属製の相手ベベルギヤのピッチ円錐角を互いに異なる値に設定し、樹脂金属複合ベベルギヤの樹脂部が、優先的に相手ベベルギヤの当たり部となるようにすることを特徴とする(請求項1)。
本発明は、樹脂金属複合ベベルギヤと相手金属ベベルギヤの歯面の当り角度を機械的に調整することにより、樹脂金属複合ベベルギヤの相手金属ベベルギヤへの当り部を優先的に樹脂部となるようにしている。樹脂金属複合ベベルギヤの樹脂部の位置は、ピッチ円錐角の調整の仕方により、歯幅方向の外周部側にすることができるし(請求項2)、歯幅方向の内周部側とすることもできる(請求項3)。
上述のように、本発明に係るギヤ装置は、樹脂金属複合ベベルギヤの樹脂部が、相手金属ベベルギヤと優先的に当るので、歯の噛み合い時の騒音を小さくすることができる。また、樹脂部に高負荷を受けたときは、樹脂部が変形して金属部が負荷を受けることになるため、歯部が樹脂のみの場合と比較して歯元強度が著しく向上する。
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るベベルギヤ装置であって、樹脂金属複合ベベルギヤ100に、金属製の相手ベベルギヤ3が噛み合ったギヤ装置である。図2は、その樹脂金属複合ベベルギヤであって、歯幅方向の外周部側が樹脂部である場合であり、(a)は上面図、(b)は縦断面図を示したものである。回転軸との締結部は信頼性の関係から金属製ブッシュ2を用いる。この金属製ブッシュ2の周囲に段部を形成し、樹脂部1の回り止め5として凹凸形状、抜け止め6として上方がせり出した形状とし、この部分にリング状の補強繊維基材を嵌め合せ、閉じた金型内で前記補強繊維基材に液状樹脂を浸透させて樹脂部1を形成する。リング状の補強繊維基材は、アラミド繊維、カーボン繊維、ガラス繊維等の糸を筒状に編んだ筒状体を準備し、この筒状体を端部から軸方向に巻き上げて構成したものである。そのほか、シート状の補強繊維基材を紙縒り状に巻き、その両端を重ねてリング状に形成してもよい。また、液状樹脂は、架橋ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。
前記ギヤ素形体を補強繊維基材側から金属部と樹脂部を含むように切削加工により歯を形成する際、図1に示すように相手ベベルギヤのピッチ円錐角に対しプラス角度誤差を付与することにより、相手ベベルギヤ3との当たり部4を歯幅方向の外周部側に位置する樹脂部1とすることができる。このため、通常の噛み合い時には樹脂部が優先的に相手ベベルギヤに当たり、ベベルギヤ同士の噛み合い音が低減される。また、歯部に高負荷を受けたときは樹脂部が変形して金属部が負荷を受けるため、歯部が樹脂のみの場合と比較して歯元強度が著しく向上する。
図3は、本発明の他の実施の形態に係るベベルギヤ装置である。図4は、その樹脂金属複合ベベルギヤであって、歯幅方向の内周部側が樹脂部である場合を示したものである。金属製ブッシュ2と同心にリング状溝を形成し、樹脂部1の回り止め5として凹凸形状、抜け止め6として上方の開口が底部より狭い形状とし、この部分にリング状の補強繊維基材を圧入し、閉じた金型内で前記補強繊維基材に液状樹脂を浸透させて樹脂部1を形成する。
前記ギヤ素形体を補強繊維基材側から金属部と樹脂部を含むように切削加工により歯を形成する際、図3に示すように相手ベベルギヤのピッチ円錐角に対しマイナス角度誤差を付与することにより、相手ベベルギヤ3との当たり部4を歯幅方向の内周部側に位置する樹脂部1とすることができる。噛み合い音の低減、歯元強度の向上については、前述のとおりである。
本発明の実施例について、図7を参照しながら説明する。
実施例1
図7(a)において、パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維を質量比50/50の割合で混紡した糸を筒状に編んだ筒状体7を準備し、この筒状体7を端部から軸方向に巻き上げて、リング状の補強繊維基材8とする。図7(b)において、図2に示す金属製ブッシュ2と前記補強繊維基材8を成形金型9に配置した後、金型内を脱気し真空状態とする。ここに溶融させた架橋ポリアミノアミド樹脂10を注入し、補強繊維基材8に浸透、硬化させ、ギヤ素形体を得た。本実施例の形態は、金属製ブッシュ2の外周に補強繊維基材8を挿入するため作業性が良く、また成形金型9のゲートが補強繊維基材8に直結しているため成形性も良好である。前記ギヤ素形体を、補強繊維基材側から金属部と樹脂部を含むように所定の寸法に切削加工、歯切り加工を行い、金属製の相手ベベルギヤ3のピッチ円錐角に対しプラス角度誤差0.5°を付与した軸角90°の樹脂金属複合ベベルギヤを得た。
比較例1
実施例1で得たギヤ素形体を、補強繊維基材側から金属部と樹脂部を含むように所定の寸法に切削加工、歯切り加工を行い、相手ベベルギヤのピッチ円錐角に対し角度誤差0°とした軸角90°の樹脂金属複合ベベルギヤを得た。
従来例1
パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維を質量比50/50の割合で混紡した糸を用いた平織りの布を所定幅(金属製ブッシュ2の厚さ寸法の1.2倍)で裁断して帯状の補強繊維基材を準備し、この帯状の補強繊維基材を図6に示す金属製ブッシュの外周に重ね巻きし筒状体を形成する。前記金属製ブッシュ2と筒状体を成形金型に配置した。その後は比較例1と同様にして樹脂製ベベルギヤを得た。
比較例2
切削加工により、比較例1と同形状の鋼製(S45C)のベベルギヤを得た。
上記実施例、従来例、比較例で作製したベベルギヤを用いて、噛み合い音評価、モータリング耐久評価を行った結果を表2、図5にそれぞれ示す。測定方法は、以下に示すとおりである。
噛み合い音評価:ギヤの噛み合い部に集音マイクを設置し、表1に示す条件によりギヤを駆動させたときの騒音をFFTアナライザで周波数解析し、音圧を比較した。
表2の値は、比較例2を100としたときの指数で表わしたものである。
モータリング耐久評価:表1に示す条件によりギヤを駆動させ、ベベルギヤが破壊するまでのサイクル数を測定した。なお、ベベルギヤが正方向7回転、逆方向7回転を1サイクルとした。
Figure 0004337795
Figure 0004337795
表2から明らかなように、本発明による樹脂金属複合ベベルギヤは、相手ベベルギヤのピッチ円錐角に対し角度誤差を付与していない樹脂金属複合ベベルギヤ(比較例1)と比較して音圧レベル指数が小さく、噛み合い音の低減効果を付与できる。また、図5から明らかなように、本発明による樹脂金属複合ベベルギヤは、樹脂製ベベルギヤ(従来例1)と比較して疲労寿命の大幅な向上により耐久性を付与できることが理解できる。
本発明の実施の形態に係る樹脂金属複合ベベルギヤが相手ベベルギヤとの当たりの様子を示す断面説明図である。 本発明の実施の形態に係る樹脂金属複合ベベルギヤであって、歯幅方向の外周部側が樹脂部である場合であり、(a)は上面図、(b)は縦断面図を示したものである。 本発明の他の実施の形態に係る樹脂金属複合ベベルギヤが相手ベベルギヤとの当たりの様子を示す断面説明図である。 本発明の他の実施の形態に係る樹脂金属複合ベベルギヤであって、歯幅方向の内周部側が樹脂部である場合であり、(a)は上面図、(b)は縦断面図を示したものである。 本発明に係る実施例における樹脂金属複合ベベルギヤのモータリング耐久評価結果を示す曲線図である。 従来の樹脂製ベベルギヤであり、(a)は上面図、(b)は縦断面図を示したものである。 本発明が対象とする樹脂金属複合ベベルギヤの製造過程を示す説明図であり、(a)はリング状の補強繊維基材の製造過程を示す説明図、(b)は樹脂金属複合ベベルギヤを成形する様子を示す断面説明図である。
符号の説明
1は樹脂部
2は金属製ブッシュ
3は相手ベベルギヤ
4は相手ベベルギヤとの当たり部
5は回り止め
6は抜け止め
7は筒状体
8は補強繊維基材
9は成形金型
10は架橋ポリアミノアミド樹脂
100は樹脂金属複合ベベルギヤ

Claims (3)

  1. 歯幅方向の一部が樹脂部、歯幅方向の他の部分が金属部で構成された歯部を有する樹脂金属複合ベベルギヤと、当該ギヤと噛み合う金属製の相手ベベルギヤとを含むギヤ装置であって、
    樹脂金属複合ベベルギヤと金属製の相手ベベルギヤのピッチ円錐角を互いに異なる値に設定し、樹脂金属複合ベベルギヤの樹脂部が、優先的に相手ベベルギヤの当たり部となるようにしたことを特徴とするベベルギヤ装置。
  2. 樹脂金属複合ベベルギヤは、歯幅方向の外周部側が樹脂部、歯幅方向の内周部側が金属部で構成された歯部を有することを特徴とする請求項1記載のベベルギヤ装置。
  3. 樹脂金属複合ベベルギヤは、歯幅方向の内周部側が樹脂部、歯幅方向の外周部側が金属部で構成された歯部を有することを特徴とする請求項1記載のベベルギヤ装置。
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