JP4337479B2 - ゼオライトの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はゼオライトの製造方法に関するものである。
ゼオライトは、触媒、吸着材、分離材等の種々の用途に広く用いられており、ゼオライトの合成方法としては、ゼオライトの骨格構造を形成しうる金属元素の化合物とテンプレートを用いて水熱合成することが一般に行われている。
ところで、水熱合成に使用されるテンプレートを回収する方法については殆ど知られていない。例えば、特許文献1によれば、ゼオライト調製から得られるテンプレート含有母液をリサイクルする多くの試みは失敗に終わっているとして、高シリカフォージャサイト型の調製の場合には、問題となる不純物の点からリサイクルされたテンプレート液を使用できることを提案しているに過ぎない。
上述のように、従来のゼオライトの合成においては、ゼオライト結晶を分離した廃水からテンプレートを回収し、再使用することは、廃水がそのまま再使用できる場合を除いては行われていない。廃水をそのまま再使用することは、特許文献1によると、多くの場合、廃水中には重合物や不純物核が含有されることから一般には困難である。また、廃水をそのままテンプレート源として用いる方法では、テンプレート濃度が低く、ゼオライト合成に必要なテンプレート量の大半をリサイクル液からまかなおうとすると、原料混合物の体積が増大し、必要な反応器の体積が大きくなりすぎるため工業実施が困難となる。テンプレート含有廃液に含有される水の量を考慮し、テンプレート含有廃液以外から持ち込まれる水の量を低減すると、原料混合物の粘度が高くなりすぎたり、混合時に必要な反応が阻害され、目的とするゼオライトが得られないという問題が生じる。
一方で、有機テンプレートを用いてゼオライトを合成する場合、テンプレートとして、アルキルアンモニウム、アミン等が一般に用いられるが、アルキルアンモニウムは製造コストに占める原材料費の割合が高くなりすぎるため、より安価なアミンを用いる方法がより有利である。しかしながら、アミンは悪臭物質の指定をうけているものが多く、毒性も高いため、ゼオライト合成廃液中のアミンは環境に放出できず、多大な費用をかけて処理されているのが現状である。普及している処理方法の例を挙げると、ゼオライト合成廃液を硫酸等で中和した後、多量の水で希釈して活性汚泥等を用いて生物化学的に浄化する方法、あるいはアミン硫酸塩水溶液を分解炉で燃焼する方法等である。第一、第二の方法ともアミンは再使用されることなく分解される。有機アミンをテンプレートとして用いるゼオライトの水熱合成においては、有機アミンはそのごく一部が鋳型剤としてゼオライトに取り込まれるに過ぎず、大部分はゼオライトを分離した廃液中に留まる。有機アミンがゼオライトの原材料費に占める割合は、骨格成分の占める割合にも匹敵するため、廃液中のアミンが回収されないことによる損失は極めて大きい。
特開平11−11938号公報
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、ゼオライト合成において、ゼオライト結晶を分離した廃液からテンプレートを回収し、回収したテンプレートをゼオライトの合成に再使用するゼオライトの製造方法を提供することにある。
本発明者等は、鋭意検討の結果、テンプレートを用いてゼオライトを合成する際に得ら
れるテンプレートを含む廃液にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を加えて処理廃液を得、該処理廃液からテンプレートを分離濃縮することにより、分離濃縮したテンプレートがそのままゼオライトの製造に使用可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、(1)テンプレートを用いてゼオライトを水熱合成し、
(2)得られた水熱合成生成物からゼオライトを分離し、
(3)ゼオライトを分離して得られた廃液の少なくとも一部にアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を添加して処理廃液を得、
(4)処理廃液からテンプレートを分離濃縮し、
(5)分離濃縮したテンプレートの少なくとも一部をゼオライトの水熱合成に使用することを特徴とするゼオライトの製造方法に存する。
本発明の製造方法に依れば、高価なテンプレートを高濃度、高純度で回収して再利用することで、ゼオライトを工業的に有利に製造することが可能である。
<本発明のゼオライト>
(ゼオライトの基本構成)
本発明において、ゼオライトとは、International Zeolite Association (IZA)の規定による結晶性アルミノシリケート類、および結晶性アルミノフォスフェート類を指す。このなかでも、特にゼオライトがアルミノフォスフェート類(骨格構造を構成する原子が酸素、アルミニウム及びリンであり、その一部が他の原子(Me)で置換されていても良い)である場合に本発明が有利に実施される。中でも、I)アルミニウムがヘテロ原子(Me1:但し、Me1は、2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alのぞく)の元素から選ばれる少なくとも一種類の元素を示す。)で一部置換されたMe−アルミノフォスフェート、II)リンがヘテロ原子
(Me2:但し、Me2は4B族元素)で置換されたMe−アルミノフォスフェート、あるいは、III)アルミニウムとリンの両方がヘテロ原子(それぞれMe1、Me2)で置換されたM
e−アルミノフォスフェートが好ましい。
ここで、骨格構造を構成しているMe、Al及びPの構成割合(モル比)は、通常、下記式1−1〜3―1のモル比であり、好ましくは、下記式1−2〜3−2である。xが上記範囲より小さいと、吸着質の圧力が低い領域での吸着量が小さくなったり、合成が困難となる傾向があり、上記範囲より大きいと、合成時に不純物が混入しやすい傾向がある。又、y、zが上記範囲外であると、合成が困難である。
0≦x≦0.3 …1−1
(xは、Me、Al、Pの合計に対するMeのモル比を示す)
0.2≦y≦0.6 …2−1
(yは、Me、Al、Pの合計に対するAlのモル比を示す)
0.3≦z≦0.6 …3−1
(zは、Me、Al、Pの合計に対するPのモル比を示す)
0.01≦x≦0.3 …1−2
(xは、Me、Al、Pの合計に対するMeのモル比を示す)
0.3≦y≦0.5 …2−2
(yは、Me、Al、Pの合計に対するAlのモル比を示す)
0.4≦z≦0.5 …3−2
(zは、Me、Al、Pの合計に対するPのモル比を示す)
Meは、1種でも2種以上含まれていても良い。好ましいMe(Me1,Me2)は、周期表
第3、第4周期に属する元素である。Me1は2価の状態でイオン半径が0.3以上、0.8Å以下であるのが好ましく、更に好ましくは2価、4配位の状態でイオン半径が0.4以上、0.7Å以下である。上記の中でも、合成の容易さ、吸着特性、触媒特性の点から、Fe,Co,Mg,Znから選ばれる少なくとも一種類の元素であるのが好ましく、特にFeであるのが好ましい。Me2は、4B族元素であり、好ましくは周期表第三または第四周期に属する元素である、特にSiが好ましい。
また、このアルミノフォスフェート類は、骨格構造を構成する成分とは別に、他のカチオンとイオン交換可能なカチオン種を持つものものを含んでいてもよい。そうした場合のカチオンとしては、プロトン、Li、Na、Kなどのアルカリ元素、Caなどのアルカリ土類元素、La,Ce等の希土類元素などが挙げられる。中でも、プロトン、アルカリ元素、アルカリ土類元素が好ましい。
又、本発明のアルミノフォスフェート類は、そのフレームワーク密度(以下、FDと略すことがある)が、通常、13T/nm3以上20T/nm3以下、好ましくは、13.5T/nm3以上であり、更に好ましくは14T/nm3以上であり、一方、19T/nm3
以下が好ましく、17.5T/nm3以下が更に好ましい。ここで、フレームワーク密度
(T/nm3)ゼオライトの単位体積nm3あたり存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する酸素原子以外の元素の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。上記範囲未満では、構造が不安定となる傾向があり、一方、上記範囲を越えると吸着量、触媒活性が小さくなる傾向がある。
又、本発明のアルミノフォスフェート類は、その構造としては、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで、AEI、AEL、AET、AFI、AFN
、AFR、AFS、AFT、AFX、ATO、ATS、CHA、ERI、LEV、VFIが挙げられるが、中でも、吸着特性、触媒活性の点から、AEI、AEL、 AFI、C
HA、LEVから選ばれるいずれかであるのが好ましく、特にCHA、AFIが好まい。<アルミノフォスフェート類の製造方法>
以下、アルミノフォスフェート類を例にその製造方法を説明する。
(構成原料)
アルミノフォスフェート類は、アルミニウム源、Me原子源(特に好ましくは鉄源)、リン源およびテンプレート原料として用い、それらを混合した後、水熱合成により製造される。
アルミニウム源:アルミニウム源は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウムなどが使用される。中でも、取り扱いやすさ、反応性の観点からは擬ベーマイトが好ましい。
Me源:Me源も特に限定されず、通常、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いても良い。
リン源:リン源は通常リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。
テンプレート:テンプレートとしては、アミン、イミン、四級アンモニウム塩が使用できるが、好ましくは(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物、(2)シクロアルキル基を有するアミン、および(3)アルキル基を有するアミンからなる群から選
ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。テンプレートは一種類でも、二種類以上を混合して使用しても良い。それらは入手しやすく安価であり、さらに、製造されたMe-アルミノフォスフェートの取り扱いも容易で構造破壊も起きにくいという効果
がある。二種類以上を混合して使用する場合は、そのうちの一種類以上を回収すればよく、回収するテンプレートは、以下に示す如く(i)蒸留、または(ii)分液・抽出による濃縮分離が容易なものが好ましい。
蒸留によりテンプレートを回収する場合には、上記の中でも、水より低沸点であるか水と共沸混合物を形成する化合物が、後述の蒸留工程でのテンプレートの分離が容易で、エネルギー効率、回収効率の点からも好ましい。かかる化合物としてはトリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピリジン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、N−エチルブチルアミン、ジプロピルアミン、N−メチルブチルアミン等が挙げられるが、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N−メチルブチルアミンが好ましく、特に好ましいのはトリエチルアミン、シクロヘキシルアミンである。
一方、分液・抽出によりテンプレートを回収する場合には、遊離した状態で水と混和しない化合物が後述の分液・抽出工程でのテンプレート分離が容易であって好ましい。かかる化合物としてはトリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ヘキサメ
チレンイミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等が挙げられる。
以下、図1のフローを例に説明するがこれに限定されるものではない。
(水熱合成)
次に、アルミノフォスフェート類の製造方法における水熱合成について説明する。
通常、水熱合成に先立ち、先ず、Me源、アルミニウム源、リン酸源、テンプレートおよび水を原料混合槽(1)に入れ、混合して水性ゲルを調合する。混合順序は制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよいが、通常は、まず水にリン酸源、アルミニウム源を混合し、これにMe源、テンプレートを混合する。
水性ゲルの組成は、所望のものの合成しやすさに影響し、アルミニウム源、Me源およびリン酸源を酸化物のモル比であらわすと、MeO/Al23の値は、通常0より大きく1.0以下であり、好ましくは、0.02以上であり、一方、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。
また、P25/Al23の比は、所望のものの合成しやすさに影響し、通常0.6以上、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1以上であり、通常1.8以下、好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下である。 テンプレートの総量は、所望のものの合成しやすさ、経済性に影響し、P25に対するテンプレートのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。
また、水の割合の下限としては、Al23に対して、モル比で3以上であり、合成のしやすさの観点からは5以上が好ましく、10以上がより好ましい。水の割合の上限としては、200以下、合成のしやすさ、生産性の高さの観点からは150以下が好ましく、120以下がより好ましい。水性ゲルのpHは、4〜10であり、合成のしやすさの観点からは5〜9が好ましく、5.5〜7.5がより好ましい。pHの調整は、テンプレート類の量の調節、あるいは塩酸、硫酸等の酸の添加により行われる。
なお、水性ゲル中には、原料の溶解性を向上させる、あるいは鉱化剤等の効果を期待して、上記以外の成分を共存させても良い。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒があげられる。共存割合は
、所望のものの合成しやすさに影響し、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩の場合は、Al23に対してモル比で通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒の場合は、水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。かくして調製した水性ゲルを耐圧製の水熱合成容器(2)に入れ、自己発生圧下、または結晶化を阻害しない気体加圧下、所望の構造のアルミノフォスフェート類の結晶化を行う所定温度(合成温度)を保持する事により水熱合成を行う。
合成温度は、所望のものの合成しやすさに影響し、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上であって、通常200℃以下、好ましくは195℃以下である。
合成温度を保持する時間は、所望のものの合成しやすさに影響し、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的に変化させてもよい。
(水熱合成生成物からのゼオライトの分離)
水熱合成によって得られた、ゼオライトを含むスラリー(水熱合成生成物)は、ゼオライト分離槽(3)に移送され、先ずゼオライトが分離される。分離方法に制限はないが、デカンテーション、遠心分離、濾過等が挙げられる。尚、分離槽は、シャワー等のゼオライトの水洗機能を備えていても良い。又、分離槽から分離されたゼオライトは、必要により水洗後、必要によりゼオライトを脱水し、通常、室温から150℃以下の温度で乾燥して、テンプレートを含有したアルミノフォスフェート類を得ることができる。尚、ゼオライト洗浄後の洗浄液は、ゼオライトと分離された後、廃水として廃棄されるが、洗浄後の洗浄液中のテンプレート濃度によっては、一部を後述の廃液処理槽(4)に移送してテンプレートの回収を行っても良い。
一方、水熱合成生成物からゼオライトを分離した残部(廃液)は、廃液移送ライン(L4)により、廃液処理槽(4)に移送される。尚、図1においては、移送ライン(L4)はゼオライト分離槽(3)の上部に設けられているが、実質的にゼオライトが分離された廃液が抜き出される状態であれば、ゼオライト分離槽(3)の上部には限らない。
(テンプレートの回収)
本発明では、ゼオライトを分離して得られた廃液の少なくとも一部にアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を添加して処理廃液(以下、廃液の少なくとも一部にアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を添加してえられる廃液を、処理廃液と略することがある)を得、処理廃液からテンプレートを分離濃縮する。
図1の例においては、ゼオライトと分離して得られた廃液を廃 液移送ライン(L4)により廃液処理槽(4)に供給し、一方、 アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物をL6 より添加する。ゼオライトを分離して得られた廃液は、通常、水、未反応物、副生物等を含有し、その中にテンプレートの塩が存 在するが、アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化 合物の添加によりテンプレートの塩が遊離のテンプレートとなり テンプレートの回収効率が高くなるとともに、未反応物、副生物 等に起因して沈殿物が生成する。
アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくはカルシウム化合物、特に好ましくは水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウムが挙げられる。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の使用量は廃液に含まれる酸性成分と当量あるいは過剰であれば特に制限はない。ただし、廃液中の無機物の沈殿生成を促進するために、廃液のpHが通常、pH3〜10、好ましくは4〜8となるように添加するのが好ましい。尚、アルカリ金属化合物またはアルカ
リ土類金属化合物を添加する際に塩酸等の酸で更にpHを制御しても良い。
アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加する際の廃液の温度に特に制限はないが、遊離したテンプレートの分離濃縮を蒸留によって行う場合には、遊離したテンプレートをガス化させるために十分な温度で処理を行うとテンプレートの分離濃縮も同時に行うことができる。その場合には、通常、テンプレートの沸点あるいは水との共沸温度付近で処理が行われるが、常圧の場合、通常、30℃以上110℃以下であり、下限は好ましくは50℃、上限は好ましくは105℃、更に好ましくは100℃以下である。又、圧力は、通常常圧で行うが、特に制限はない。
尚、上記処理で生成する沈殿物としては、例えば、ゼオライト原料に由来する金属成分、またはゼオライト原料に由来する金属の塩で、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、水酸化鉄等が挙げられある。
上記処理廃液は、蒸留、抽出等に供することによりテンプレートを分離濃縮する。ここで、分離濃縮とは、処理廃液より高濃度にテンプレートを含有する溶液を回収する操作であり、分離濃縮の手段により、該溶液は水、抽出に使用した有機溶媒等を含んでいても良く、又、均一溶液でも分散液でも、抽出溶媒との混合物であっても良い。
テンプレートの分離濃縮を蒸留によって行う場合には、上記の通り、廃液にアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を添加する際の廃液の温度をコントロールして沈殿生成と同時に蒸留を行う方法と、生成した沈殿を除去した後に蒸留を行う方法が挙げられるが、テンプレートが水より軽沸あるいは水と共沸する場合には作業効率の面からは沈殿生成と蒸留を同時に行う方法が好ましい。
沈殿生成と同時に蒸留を行う場合には、上述の通りテンプレー トをガス化させるのに十分な温度で沈殿生成を行い、遊離したテ ンプレートをガス化させ、次いでガス状テンプレートはテンプレ ート蒸気ライン(L7)から冷却器(5)に導出されて凝縮し、回収される(回収テンプレート槽:6)。
一方、生成した沈殿を除去した後に蒸留を行う場合には、沈殿物を分離した後の残留液を蒸留塔に供給し、テンプレートの沸点あるいは水との共沸温度付近で処理が行われるが、常圧の場合通常、30℃以上110℃以下であり、下限は好ましくは50℃、上限は好ましくは105℃、更に好ましくは100℃である。
いずれの場合も、蒸留の終点目標は、蒸留残さの最終的な処理方法、テンプレートの種類等に依存するが、蒸留残さ中の軽沸あるいは水と共沸するテンプレート(回収可能なテンプレート)濃度が概ね1〜0.5重量%程度以下となるのが好ましい。蒸留残さ中の回収可能なテンプレート濃度がこの範囲以上であると、テンプレートの損失が大きく、この範囲以下にしようとすると、テンプレートを含む留出液の濃度が低くなったり、蒸留に要するエネルギーが大きくなる傾向がある。
蒸留により回収されるテンプレートを含む留出分は水を含んでいてもよい。留出分中のテンプレートの濃度は、10重量%以上 が好ましく、特に20重量%以上が好ましい。留出分中のテンプレートの濃度は高い方が好ましく、従って、上限は100重量%である。留出物中のテンプレート濃度が上記下限値未満であると、リサイクル使用した場合に、出発反応物の濃度が低下し、生産性が低下する可能性があるため、精留等により、さらに濃縮する必要が生じることとなる。
一方、テンプレートの分離濃縮を分液または溶媒抽出によって行う場合には、沈殿生成してテンプレートを遊離させた後で分液のみ、または溶媒を加えてテンプレートを抽出・分液してテンプレートを回収する。分液または溶媒抽出を行う温度に特に制限はないが、分液効率の面からはテンプレートの水への溶解度が小さくなる温度が好ましく、通常0℃
以上80℃以下、好ましくは10℃以上50℃以下の範囲である。
溶媒抽出を行う際に用いる溶媒は特に制限はないが水への溶解度が小さく、遊離したテンプレートの溶解度が大きいものが好ましい。例えば、ジエチルエーテル、酢酸エチル、トルエン、ベンゼン、クロロホルム等が挙げられる。
分液によって回収されたテンプレートはそのままゼオライトの製造に用いることができるが必要に応じて蒸留等の精製を行ってもよい。また溶媒抽出によって回収されたテンプレートは多量の溶媒を含むため、ゼオライトの製造に用いる前に蒸留等によってテンプレートの濃縮を行う。
かくして分離濃縮されたテンプレートは、その少なくとも一部、好ましくは分離濃縮されたテンプレート全部をテンプレート循環ライン(L8)から、通常、原料混合槽に循環し、原料テンプレートとして水熱合成に使用される。
(沈殿物の分離)
尚、テンプレート分離後の廃液は、廃液処理槽(4)の底部から抜き出し、適宜、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等の方法によって沈殿物と液体とを分離し、処理される。沈殿物の分離は通常、テンプレート分離後に行われるが、その順序に制限はなく、沈殿物の分離を行った後で当該廃液の蒸留により廃液中からテンプレートを分離することもできる。又、沈殿物を分離した後の液体中の無機金属含有量は特に限定されないが、排水処理設備の配管を閉塞させる等の問題を生じる可能性を考慮すると、0.5重量%以下程度とするのが好ましい。上記廃液処理槽にアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を加えることによって生成した沈殿物を廃液から分離する操作を行う場合には、廃液中の無機物が除去できるためにテンプレート回収後の廃水の処理が極めて容易となる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何等限定されるものではない。
(ゼオライトの合成)
水172.4gに85重量%リン酸79.3gを加え、これに擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア製)42.8gをゆっくりと加え、3時間攪拌した。これに、硫酸第一鉄7水和物30.5gを水164.4gに溶かした液を加え、さらにトリエチルアミン(以下、TEAと略する)48.4gをゆっくりと加えてさらに3時間攪拌した。そして以下の組成を有するゲル状の出発反応物を得た。
0. 3FeSO4:0.9Al23:P25:1.4TEA: 56H2
上記の出発物質を5分割し、テフロン(登録商標)製内筒を有するステンレス製オートクレーブ(内容積約0.2L)5本に仕込み、撹拌せずに200℃で12時間水熱合成を行った。
反応後冷却して、生成したスラリーをデカンテーションにより、沈殿物と廃液とに分離した。沈殿物は水で3回洗浄した後濾別し、120℃で乾燥した。乾燥後の重量は、69.3gであった。
元素分析の結果、得られた固体の組成は、0.095TEA:Fe0.08Al0.92PO4:0.55H2O
であり、TEA 4.66gを含有していた。XRD測定の結果、乾燥後の沈殿物は、AFI構造を有する鉄アルミノフォスフェートであることが確認された。
(廃液からのアミンの回収)
ゼオライトを分離した廃液は合計で475.7g、廃液中のTEA濃度は8.5重量%で
あった。廃液中の全TEAは40.3gであり、出発反応物中のTEAの83.4%であった。なお、廃水原液にはアルミニウム、鉄、リンがそれぞれ1重量%程度含まれていた。廃液中のTEAは一部がリン酸塩、硫酸塩として存在すると考えられる。
これに水酸化カルシウム24.0gを添加して1時間撹拌混合し、次いで35%塩酸でpHを6に調整し、無機沈殿物を生成させた。次に常圧下加熱して約90℃(TEAと水と
の共沸点付近)で留出分を得た。留出分は45.3gでTEA濃度は88.0重量%であっ
た。留出分中のTEAは39.9gであり、廃液に含まれていたTEAを99%回収できた。TEA分離後、遠心分離によって蒸留残さから無機沈殿物を分離してTEA分離後の廃液元素分析を行ったところ、TEA分離後の廃液中のアルミニウム及び鉄は1μg/g以下、リンは3
0μg/gであった。
(回収アミンの再使用)
蒸留で得たアミン回収液をテンプレート源としてゼオライト合成を再び行った。
アミン回収液に含まれる水を考慮し、上記(ゼオライトの合成)において、硫酸第一鉄7水和物を溶解する水の量を5.84g減らして158.6gとし、テンプレートとして、上記のアミン回収液45.3gにTEA8.5gを加えたものを用いた以外は上記と同様に出発反応物を得た。原料混合物中のテンプレートの82.6%はリサイクル使用されたものであった。水熱合成の結果、上記と同じ組成の純粋なAFI構造の鉄アルミノフォスフェートが得られた。
(比較例1)
(生物化学処理)
実施例で得られたゼオライト分離後の廃液をそのまま生物化学処理することを試みたが、テンプレートの毒性が強いため廃水処理負荷が非常に大きく、処理は困難であると判明した。
(比較例2)
(廃液そのものの再使用)
テンプレートを含む廃液をそのまま水熱合成に再利用しようと試みた。
テンプレートを実施例の合成を行って得られた廃液からまかない、リン、アルミニウム、鉄に関しては、実施例の仕込み量から、ゼオライト分離後の廃液中のリン、アルミニウム、鉄の量を差し引いた原料を加えた。すなわち、水125gに85重量%リン酸57.6gを加え、これに擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア製)32gをゆっくりと加え、3時間攪拌した。これに、硫酸第一鉄7水和物12.4gを、出発反応物の濃度を出来る限り高く維持するため、水ではなく実施例の合成によって得られたテンプレート含有廃液475.7gに加えて混合したものを加え、さらにトリエチルアミン(TEA)8.13gをゆっくりと加えてさらに3時間攪拌した。そして以下の組成を有するゲル状の出発反応物を得た。
0. 3FeSO4:0.9Al23:P25:1.4TEA: 74H2
実施例と同様に水熱合成を行ったが、ゼオライト以外のデンス成分が生成し、AFI構造を有するゼオライトを得ることが出来なかった。TEAの一部がリン酸塩、硫酸塩を形成
しているため、テンプレートとして有効に働かないためと推察される。
本発明のゼオライトの製造方法のフロー例
符号の説明
1:原料混合槽
2:水熱合成容器
3:ゼオライト分離槽
4:廃液処理槽
5:冷却器
6:回収テンプレート貯槽
L1:原料投入ライン
L2:原料混合物移送ライン
L3:生成物移送ライン
L4:廃液移送ライン
L5:ゼオライト抜き出しライン
L6:アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物投入ライン
L7:テンプレート蒸気ライン
L8:テンプレート循環ライン
L9:沈殿物抜き出しライン

Claims (7)

  1. (1)テンプレートを用いてゼオライトを水熱合成し、
    (2)得られた水熱合成生成物からゼオライトを分離し、
    (3)ゼオライトを分離して得られた廃液の少なくとも一部にアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物を添加して処理廃液を得、
    (4)処理廃液からテンプレートを分離濃縮し、
    (5)分離濃縮したテンプレートの少なくとも一部をゼオライトの水熱合成に使用すること
    を特徴とするゼオライトの製造方法。
  2. テンプレートの分離濃縮が蒸留によって行われることを特徴とする請求項1に記載のゼオライトの製造方法。
  3. テンプレートの分離濃縮が分液または溶媒抽出によって行われることを特徴とする請求項1に記載のゼオライトの製造方法。
  4. テンプレートが、水より低沸点化合物であるかまたは水と共沸する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライトの製造方法。
  5. アルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物がカルシウム化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のゼオライトの製造方法。
  6. ゼオライトがアルミノフォスフェート類であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のゼオライトの製造方法。
  7. 分離濃縮したテンプレートの濃度が10〜100重量%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のゼオライトの製造方法。
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