JP4337173B2 - オリゴアルキルオキシラン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジグリセリンにアルキルオキシランが付加したオリゴアルキルオキシラン誘導体、その製造方法および用途に関し、さらに詳しくは分子量分布が狭く、水溶液の曇り点が一定の範囲にあり、不飽和度の少ないオリゴアルキルオキシラン誘導体,その製造方法,前記誘導体からなるベタツキ感がなく経時的な臭気の発生の無い保湿剤、ならびにその保湿剤を含有する化粧料および洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、乾燥皮膚やアトピーの問題から保湿剤を配合した化粧料や洗浄剤や化粧石鹸が増えている。これらに使用される保湿剤としては1,3−ブタンジオールや特開平10−167948号公報などに示されているようなポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどがあるが、多価アルコールまたはポリエチレングリコールジアルキルエーテルを多量に用いるとベタツキ感が残るという問題点がある。
【0003】
この問題を改善するため、現在では、官能基数が3以上の多価アルコールにオキシラン、メチルオキシラン等のオキシラン類を1〜50モル程度付加したアルキルオキシラン誘導体を使用するのが一般的である。
官能基数が3以上の多価アルコールにアルキルオキシランが付加したアルキルオキシラン誘導体は、アルキルオキシランの付加モル数を変更することにより、親水性と親油性のバランスを変更でき、これにより使用感を任意に変更できるのでグリセリンなどのメチルオキシラン付加物などが化粧品用保湿剤成分として使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、官能基数が3以上の多価アルコールのアルキルオキシラン誘導体であっても、ベタツキ感が完全に無いというわけではなく、多量に使用すると多価アルコールを使用した場合と同様にベタツキが発生する。また油性感が原料のロットによりバラツクため、安定した配合系を組むことが出来ないという問題点もある。その上、経時的に臭気を発生しやすいという問題もあり、特開平10−87983号公報では多価アルコールアルキレンオキサイド付加物に抗酸化剤を添加する品質改良法が示されている。多価アルコールのアルキルオキシラン誘導体からなる保湿剤は、その有用性にも関わらずこれらの問題点のため、その使用が制限されており、その改良が強く望まれているのが現状である。
【0005】
本発明者らは、ベタツキの原因物質を探るべく、市販されている官能基数が3以上の多価アルコールのアルキルオキシラン誘導体を解析したところ、アルキルオキシランの付加モル数には分布があり、特に平均付加モル数が1〜15モル程度の誘導体は未反応多価アルコールが1〜30%残存しており、しかも系中の水分子にアルキルオキシランが付加した2官能のアルキルオキシラン誘導体も副生しており、分子量分布も広いことが判明した。このような未反応多価アルコールや2官能の化合物および高付加モル数の化合物は、多価アルコールを単独使用した場合と同じようにベタツキ感の原因となる。また、分子量分布があまりに広いと製品の親水性と親油性のバランスを崩すため、保湿剤に必要な適度な油性感を損なうことになる。
【0006】
さらに、多官能アルキルオキシラン誘導体についてその臭気の原因を解析したところ、アルキルオキシラン誘導体、特にメチルオキシラン誘導体の市販品には、付加反応時に副生した末端がプロペニル基やアリル基となった不飽和化合物が含まれており(五藤芳和,高分子論文集,vol50,No.2,pp.121−126,1993)、これらの化合物が経時的に分解してプロピオンアルデヒドとなり、臭気の主原因となっていることが判明した。
【0007】
従来、分子量1,000以上の高分子量のアルキルオキシラン誘導体においては不純物の検討がなされたことはあるが(五藤芳和,日本化学会誌,1993,(9),1085〜1090)、保湿剤として有用である低付加モル数のアルキルオキシラン誘導体においては、その中に含まれている不純物について調査されたことはなく、このためベタツキ感や臭気および油性感について不純物の観点から配慮したものは無かった。
【0008】
本発明の課題は、保湿性に優れ、しかもベタツキ感が無く、油性感も適度であり、かつ経時的臭気変化が少なく、このため保湿剤として好適に使用できるオリゴアルキルオキシラン誘導体,その製造方法,この誘導体からなるベタツキ感が無く経時的な臭気発生の無い保湿剤,ならびにその保湿剤を含有する化粧料および洗浄剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは好適に使用できる保湿剤を得るべく鋭意検討した結果、ジグリセリンを出発物質としてアルキルオキシランを特定モル数付加したアルキルオキシラン誘導体であって、分子量分布が均一で、かつ50%水溶液の曇り点が一定の範囲にあり、かつ不飽和度が小さいアルキルオキシラン誘導体は、保湿性に優れ、しかもベタツキが無く、油性感も適度であり、経時的臭気変化が少なく、このため保湿剤として好適に使用できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は次のアルキルオキシラン誘導体製造方法である。
(1)式(1)で示される、多分散度が1.04以下であり、かつ50%水溶液の曇り点が40〜90℃、かつ不飽和度が0.03以下であるオリゴアルキルオキシラン誘導体の製造方法であって、ジグリセリン1モルに対して式(2)で示されるアルコラート触媒を0.005〜0.1モルの割合で添加し、減圧下に脱アルコール処理を行った後、アルキルオキシランまたはオキシランを80〜110℃で付加反応させ、その後、抗酸化剤の存在下に、反応液をpH3以下に調整した後、アルカリ土類金属酸化物あるいはアルカリ土類金属水酸化物を含有する酸吸着剤で処理することを特徴とするオリゴアルキルオキシラン誘導体の製造方法。
【0011】
【化2】
【0012】
(ただし、AOは−OCH2CH(CH3)−基または−OCH2CH(CH2CH3)−基であり、EOは−OCH2CH2−基であり、AOとEOはランダム状に付加していてもブロック状に付加していても良い。l,m,nおよびoはオキシプロピレン基またはオキシブチレン基の平均付加モル数で、a,b,cおよびdはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1≦l,m,n,o≦4、0≦a,b,c,d≦3、5≦l+m+n+o≦12、0≦a+b+c+d≦4を満足する数である。)
【0013】
【発明の実施の形態】
前記式(1)において、l,m,nおよびoはそれぞれ1〜4、好ましくは1〜3である。l,m,nおよびoがそれぞれ1〜4と限定されるのは、グリセリンの各水酸基1個に対して最低1モルはアルキルオキシランが付加していなくては使用時にベタツキ感が発生し、4モルを越えると油性感が強くなりすぎるので好ましくないためである。さらに全体のアルキルオキシランの付加モル数であるl+m+n+oは5〜12、好ましくは5〜10である。l+m+n+oが5〜12と限定されるのは全体の付加モル数が5モルより小さいと水溶性が強すぎてしっとり感を得ることが難しく、12モルを越えると逆に親油性が強くなりすぎて使用感が油に近くなり十分なしっとり感を得ることが出来なくなるので好ましくないためである。
【0014】
前記式(1)において、a,b,cおよびdはそれぞれ0〜3、好ましくは0〜2である。a,b,cおよびdが0の場合オキシエチレン鎖は導入されないが、オキシエチレン鎖は親水性と親油性のバランスを調整するために必要に応じて導入することができる。オキシエチレン鎖の全体の付加モル数であるa+b+c+dが4より多いと親水性が強くなりすぎて好ましくない。
【0015】
前記式(1)で示される本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は多分散度が1.04以下、好ましくは1.03以下である。多分散度は分子量分布を示す指標であり、1に近ければ近い程分子量分布が狭く、均一な化合物であることを示している。オリゴアルキルオキシラン誘導体中に未反応の原料ジグリセリンが残存していたり、不均一な付加反応により分子量分布が広い場合は、多分散度が大きくなる。実際多分散度が1.04を越える場合は使用時のベタツキ感が発生し好ましくない。
【0016】
多分散度は、一般的にゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下GPCという)の溶出パラメーターとして得られるものであり、測定装置、カラム、展開溶剤等によって大きく変化することがしられているが、本明細書で記されている多分散度は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の除で求められ、Mw/Mnで示される。具体的には、GPCシステムとしてSHODEX GPC SYSTEM−11(昭和電工(株)製、商標)、示差屈折計としてSHODEX RI−71(昭和電工(株)製、商標)、GPCカラムとしてSHODEX KF804L(φ8mm×300mm、昭和電工(株)製、商標)を3本直列に連結し、カラム恒温槽温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を1ml/minの流速で流し、サンプルの0.1%THF溶液を0.1ml注入し、溶出曲線をBORWIN GPC計算プログラムで解析し、多分散度を得ることができる。
【0017】
前記式(1)で示される本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は、この誘導体の50重量%水溶液を用いて測定した曇り点が40〜90℃、好ましくは60〜80℃である。曇り点は、オリゴアルキルオキシラン誘導体の50重量%水溶液を一度加温し、濁らせて、この濁りが見られる50重量%水溶液を徐々に冷却していき、濁りが消失する温度として求められる。なお、水溶液の濁りが消失する温度は、水溶液が透明になったのを目視で確認する。
【0018】
一般的に、オリゴアルキルオキシラン誘導体ではアルキルオキシランの付加モル数が多くなるに伴って水酸基濃度が下がるため親油性が強くなるが、保湿剤としては親水性が強すぎても親油性が強すぎても好ましくない。この親水性と親油性のバランスは感覚の問題であるため、化合物中に含まれる不純物の量などによって変化しやすく数値化しにくいものであるが、本発明者らが鋭意検討した結果、オリゴアルキルオキシラン誘導体の50重量%水溶液の曇り点が40〜90℃の範囲のものが保湿剤として親水性と親油性のバランスが好適なものであることを突き止めた。すなわち、曇り点が40℃より小さいものは親油性が強すぎるためベタツキ感を伴う油としての感触しかなく、曇点が90℃より大きいと親水性が強くなりすぎてしっとり感を得ることが難しくなる。曇り点がこの範囲であれば保湿剤として十分に使用できるが、さらに十分なしっとり感を得るためには、曇点が60〜80℃の範囲にある方が好ましい。
【0019】
前記式(1)で示されるオリゴアルキルオキシラン誘導体はアルキルオキシランの付加モル数が少いと分子構造中の水酸基の割合が高くなって曇り点は高くなり、アルキルオキシランの付加モル数が多くなり分子構造中の水酸基の割合が低くなると曇り点は低くなる。また、オキシエチレン鎖は親水性基であるため、オキシランの付加モル数が多くなると曇点は高くなる。従って、曇り点はアルキルオキシランの種類および付加モル数などを選択することにより調整することができる。
【0020】
前記式(1)で示される本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は、不飽和度が0.03以下、好ましくは0.02以下である。不飽和度はアルキルオキシラン誘導体中に含まれているアリル基またはプロペニル基等の不飽和結合を有する基の含有量をあらわす指標であり、JIS K 1557 6.7により求められるものである。
【0021】
不飽和度が大きいことは、オリゴアルキルオキシラン誘導体中に、不純物としてアリル基およびプロペニル基等の不飽和結合を有する化合物が多く含まれていることを示している。アリル基またはプロペニル基を有する不純物は、経時的に分解してアリルアルコールやプロピオンアルデヒドとなるので、このような不純物が経時的臭気悪化の主原因となる。そのため、不飽和度が小さければ小さいほど経時的臭気変化は良好であり、不飽和度が0.03を越えると経時的臭気変化が大きくなり、化粧品や洗浄剤として好ましくなくなる。
【0022】
本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は保湿性に優れ、しかも分子量分布が均一であるのでベタツキ感が無く、油性感も適度であり、かつ経時的臭気変化が少ない。このため、本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は、極めて良好な保湿剤として利用することができる。
【0023】
本発明の保湿剤は、前記本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体からなるものであり、前記オリゴアルキルオキシラン誘導体だけからなっていても、通常保湿剤に配合される公知の成分が他の成分として含まれていても良い。本発明の保湿剤は、具体的には化粧料や洗浄剤などに保湿剤として配合して利用することができる。
【0024】
本発明の化粧料は、前記本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体(すなわち本発明の保湿剤)を2〜40重量%、好ましくは5〜20重量%含む化粧料である。本発明の化粧料は、前記本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体を上記の量で含有しているので、良好なしっとり感を得ることができる。オリゴアルキルオキシラン誘導体の配合量が2重量%未満では保湿性が十分に発揮できずしっとり感が不足するため好ましくなく、配合量が40重量%を越えるとしっとり感や保湿性能としては特に問題はないが、他の化粧料成分の配合量が低下するので、化粧品としての機能が十分に発揮できなくなるので現実的ではない。好適な配合量の範囲は5〜20重量%である。
【0025】
本発明の化粧料の具体的なものとしては、化粧水、乳液、クレンジングクリーム、ヘアトリートメントローション、ヘアスタイリングフォーム、ヘアスタイリングジェル、日焼け止めローション、日焼け止めクリーム、ファンデーション、口紅、コールドクリーム、ハンドクリーム、パック、皮膚洗浄剤、柔軟化化粧料、栄養化化粧料、美白化粧料、しわ改善化粧料、老化防止化粧料、洗浄料化粧料、リンス、トリートメント、整髪剤、養毛剤、マスカラ、アイシャドーなどが上げられる。
【0026】
本発明の化粧料に含まれる前記オリゴアルキルオキシラン誘導体以外の成分は特に限定されず、通常化粧料に配合される公知の他の化粧料成分が配合できる。他の化粧料成分の具体的なものとしては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、ヘキシルドデシルアルコール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール;流動パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ビーズワックス、オリーブ、地ろう、カルナウバろう、ラノリン、鯨ろう等の植物性油脂、動物性油脂またはろう;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、イソプロピルミリスチン酸エステル、イソプロピルステアリン酸エステル、ブチルステアリン酸エステル等の脂肪酸またはそのエステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;ポリエーテル変性シリコーン、グリセリルエーテル変性シリコーン、ポリエーテルアルキル変性シリコーン、等のシリコーン油用乳化剤;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、寒天、ゼラチン等の増粘剤;界面活性剤、薬効成分、乳化安定剤、キレート剤、pH調整剤、顔料、着色料、色素、香料、防腐剤、水などがあげられる。
【0027】
本発明の洗浄剤は、前記本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体(すなわち本発明の保湿剤)を2〜40重量%、好ましくは5〜20重量%含む洗浄剤である。本発明の洗浄剤は、前記本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体を上記の量で含有しているので、良好なしっとり感を得ることができる。オリゴアルキルオキシラン誘導体の配合量が2重量%未満では保湿性が十分に発揮できずしっとり感が不足するため好ましくなく、配合量が40重量%を越えるとしっとり感や保湿性能としては特に問題はないが、他の洗浄剤成分の配合量が低下するので、洗浄剤としての機能が十分に発揮できなくなるので現実的ではない。好適な配合量の範囲は5〜20重量%である。
本発明の洗浄剤の具体的なものとしては、ボデイーソープ、シャンプー、クレンジングローションなどがあげられる。
【0028】
本発明の洗浄剤に含まれる前記オリゴアルキルオキシラン誘導体以外の成分は特に限定されず、通常洗浄剤に配合される公知の他の化粧料成分が配合できる。他の洗浄剤成分の具体的なものとしては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、ヘキシルドデシルアルコール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール;流動パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ビーズワックス、オリーブ、地ろう、カルナウバろう、ラノリン、鯨ろう等の植物性油脂、動物性油脂またはろう;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、イソプロピルミリスチン酸エステル、イソプロピルステアリン酸エステル、ブチルステアリン酸エステル等の脂肪酸またはそのエステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;ポリエーテル変性シリコーン、グリセリルエーテル変性シリコーン、ポリエーテルアルキル変性シリコーン、等のシリコーン油用乳化剤;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、寒天、ゼラチン等の増粘剤;界面活性剤、薬効成分、乳化安定剤、キレート剤、pH調整剤、顔料、着色料、色素、香料、防腐剤、水などがあげられる。
【0029】
本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は、たとえば以下の製造方法で簡便に得ることができる。
1)反応系中のジグリセリン1モルに対して前記式(2)で示されるアルコラート触媒を0.005〜0.1モル、好ましくは0.008〜0.07モルの割合で添加し、減圧下に脱アルコール処理を行った後、アルキルオキシランまたはオキシランを80〜110℃で付加反応させる方法。
2)反応系中のジグリセリン1モルに対して前記式(2)で示されるアルコラート触媒を0.005〜0.1モル、好ましくは0.008〜0.07モルの割合で接触させ、減圧下に脱アルコール処理を行った後、アルキルオキシランまたはオキシランを80〜110℃で付加反応させ、その後、抗酸化剤の存在下または非存在下に、反応液をpH3以下、好ましくはpH2〜3に調整した後、アルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する酸吸着剤で処理する方法。
【0030】
前記式(2)で示されるアルコラート触媒の具体的なものとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムターシャリーブトキシドなどアルカリ金属のアルコラートがあげられる。これらのアルコラート触媒は、ハンドリングをよくするため、炭素数1〜4のアルコール希釈溶液として使用することもできる。
【0031】
本発明の製造方法においてアルコラート触媒の使用量が前記下限値未満であると十分な触媒活性が得られず、反応が起こりにくくなり反応が長時間になるので好ましくなく、また前記上限値を越えると脱アルコール時にジグリセリンの水酸基が十分にアルコラートに変換されず、アルコラート触媒にオキシランまたはアルキルオキシランが付加した副生物が発生しやすくなるので好ましくない。
【0032】
ジグリセリンとアルコラート触媒の添加方法は特に限定されず、ジグリセリンとアルコラート触媒とを反応器中で混合するなどの方法が採用できる。
本発明の製造方法では、ジグリセリンとアルコラート触媒を添加させたのち、減圧下に脱アルコール処理を行う。脱アルコール処理をすることにより、アルコラート触媒から生成したアルコール(すなわちROH、ここでRは前記式(2)のRである)が除去される。ジグリセリン以外のアルコールは不純物の原因となるので、反応系に残留しないように、できるだけ完全に除去するのが好ましい。
【0033】
脱アルコール処理は、窒素等の不活性ガス気流下で、50〜100℃、好ましくは70〜100℃の温度で、100mmHg以下、好ましくは50mmHg以下の減圧下で、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜2時間行うのが望ましい。本発明の製造方法では、アルコラート触媒の使用量が少ないため、上記のような比較的穏和な条件下で、ジグリセリンの水酸基を完全にアルコラートとすることができる。
【0034】
脱アルコール処理した後は、反応系にアルキルオキシランまたはオキシランを添加し、アルコラート化されたジグリセリンと反応させる。アルキルオキシランの具体的なものとしては、メチルオキシラン、エチルオキシランなどがあげられる。反応温度は80〜110℃、好ましくは90〜110℃である。また反応時間は1〜20時間、好ましくは2〜15時間、圧力は0.3〜10kgf/cm2(ゲージ圧)とするのが望ましい。反応温度が110℃を超えるとプロペニル基またはアリル基を持った不飽和化合物が多く副生し、また80℃未満の場合付加反応自体が起こりにくくなるので好ましくない。
【0035】
上記のような方法により、アルコラート触媒由来の副生物をほとんど生成させることなく、不純物の含有量が少ない高純度の本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体を簡便に製造することができるが、引き続いて前記2)の方法で記載した精製を行って不純物をほぼ完全に除去することができ、より経時的な臭気発生の少ないオリゴアルキルオキシラン誘導体を製造することができる。
【0036】
前記2)の製造方法では、後処理として精製工程を設け、反応中に若干副生する不飽和化合物を一度酸処理することにより不飽和基を切断することを特徴にしている。すなわち、前記反応後、抗酸化剤の存在下または非存在下に、反応液をpH3以下に調整した後、アルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する酸吸着剤で処理する。
【0037】
前記1)の製造方法では、反応中にアリル基が副生した場合、このアリル基は比較的速やかにプロペニル基に移行するが、このプロペニル基は不純物として残留する。そこで、前記2)の製造方法において、反応液をpH3以下に調整することにより、プロペニル基を切断する。プロペニル基は、pHが3以下の条件下では速やかに切断され、水酸基を持つ化合物とプロピオンアルデヒドとに分かれる。そして分かれたアルデヒド基を吸着剤および減圧下の処理によって除去する。これにより、不純物がほぼ完全に除去され、高純度のオリゴアルキルオキシラン誘導体を得ることができる。
【0038】
このとき使用する酸としては、反応液のpHを3以下に下げることが可能であれば、種々のものが使用できる。具体的なものとしては、塩酸またはリン酸、あるいはこれらの水希釈品などがあげられる。
【0039】
酸性条件下で処理する前に、抗酸化剤を系中に添加することが肝要である。使用できる抗酸化剤は、抗酸化作用を有する化合物であれば水溶性のものでも油溶性のものでもよく、特に限定されるものではない。
抗酸化剤の具体的なものとしては、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)、ブチルヒドロキシアニソール、パラヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、オルトトリルビグアナイド、チオジプロピオン酸ジラウリル、茶抽出物、ローズマリー抽出物などがあげられる。これらの中ではBHTが好ましい。抗酸化剤は1種または2種以上を使用することができる。
【0040】
添加する抗酸化剤の量は、酸処理中のポリアルキレングリコール鎖の酸化劣化を防止することができる量であればよく、特に限定はされないが、通常オリゴアルキルオキシラン誘導体に対して、重量基準で30〜500ppm、好ましくは50〜200ppmとするのが望ましい。上記上限値を超えて添加してもよいが、多すぎるとコスト的に不利になるので実用的でない。
【0041】
本発明の使用方法で使用する酸吸着剤は、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合物、またはこれらを含むものである。酸吸着剤の具体的なものとしては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム及びこれらの混合物が例示される。これらの化合物を含有する市販品を使用することもでき、例えばキョーワード100、キョーワード300、キョーワード500,キョーワード600,キョーワード1000、キョーワード2000(協和化学工業(株)製、商標)、トミックスAD100、トミックスAD300、トミックスAD500、トミックスAD600、トミックスAD800(富田製薬(株)製、商標)などを例示することができる。
【0042】
これらの吸着剤の添加時期は、反応系のpHを3以下に調整した後であって濾過工程前までであればいつでも良い。具体的には、pH調整処理工程終了後、直ちに酸吸着剤を添加して脱水後濾過して目的物を得る方法;pH調整処理工程後、いったん脱水処理を行った後、酸吸着剤を添加して再び減圧処理を行ってから濾過して目的物を得る方法などがあげられる。
【0043】
添加する吸着剤の量としては、切断により副生したアルデヒド類および過剰の酸を吸着できる量であればよく、特に限定されないが、多すぎると濾過性が悪くなり、少なすぎると十分にpHを中性域に戻すことが出来なくなるので、反応液中の含有量として0.1〜3重量%が適量である。好ましい範囲としては0.5〜2重量%である。
【0044】
上記のようにして酸吸着剤による処理を行うことにより、反応液のpHは6〜8に戻る。
上記のように精製処理を行うことにより、不純物をほぼ完全に除去することができ、より高純度のオリゴアルキルオキシラン誘導体を得ることができる。
【0045】
なお、本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物などのアルカリ触媒存在下に、ジグリセリンにオキシランまたはアルキルオキシランを付加重合させて製造することもできるが、上記のような水酸基を持つ化合物をアルカリ触媒として用いた場合、触媒中の水酸基にもアルキルオキシランが付加するため、2官能のアルキルオキシラン誘導体が多量に副生する。これらの副生物はベタツキの原因になるため、保湿剤として使用する場合には、精製して副生物を除去した後使用するのが好ましい。このため製造方法としては、前記1)または2)の方法が好ましい。
【0046】
また副生物である2官能アルキルオキシラン誘導体の生成を防止するため、触媒とジグリセリンを混合した後、系中を加熱条件下で減圧処理して水分を除去する方法も考えられるが、アルカリ触媒が水酸基を持つ化合物である場合、通常工業的に使用できる温度範囲および減圧条件下ではグリセリンの水酸基を十分にアルコラートに変換することができないため、残存する触媒由来の水酸基にアルキルオキシランが付加した2官能の誘導体が副生する。これらの副生物はベタツキの原因になるため、保湿剤として使用する場合には、精製して副生物を除去した後使用するのが好ましい。このため製造方法としては、前記1)または2)の方法が好ましい。
【0047】
精製方法としては、クロマトグラフィー等の公知の方法が採用でき、例えばアルカリ触媒を用いて合成したオリゴアルキルオキシラン誘導体から分取液体クロマトグラフィー等の精製手段により、未反応ジグリセリンまたは水分子にアルキルオキシランが結合した2官能アルキルオキシラン誘導体または反応中に副生した末端に不飽和基を持つ誘導体を除去することができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体は保湿性に優れ、しかも分子量分布が均一であるのでベタツキ感が無く、油性感も適度であり、かつ経時的臭気変化が少なく、このため保湿剤として好適に使用できる。
【0049】
本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体の製造方法は、ジグリセリンに対して特定のアルコラート触媒を特定量接触させ、減圧下に脱アルコール処理を行った後、アルキルオキシランまたはオキシランと反応させているので、不純物の少ない高純度のオリゴアルキルオキシラン誘導体を容易に効率よく、しかも低コストで製造することができる。本発明の製造方法で製造されるオリゴアルキルオキシラン誘導体は、不飽和基を含む不純物をほとんど含んでいないので、経時的臭気変化が少ない。
さらに後処理として、抗酸化剤の存在下に反応液をpH3以下に調整した後、酸吸着剤で処理することにより、より不純物の少ないオリゴアルキルオキシラン誘導体を容易に効率よく、しかも低コストで製造することができる。
【0050】
本発明の保湿剤は、上記オリゴアルキルオキシラン誘導体からなっているので、保湿性に優れ、ベタツキ感が無く、油性感も適度であり、かつ経時臭気変化が少なく、このため化粧料や洗浄剤に好適に配合できる。
本発明の化粧料は、上記オリゴアルキルオキシラン誘導体を特定量含有しているので、保湿性に優れ、ベタツキ感が無く、油性感も適度であり、かつ経時臭気変化が少ない。
【0051】
【実施例】
以下に実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。各実施例において、物性は次の方法で測定した。
《多分散度》
GPCシステムとしてSHODEX GPC SYSTEM−11(昭和電工(株)製、商標)、示差屈折計としてSHODEX RI−71(昭和電工(株)製、商標)、GPCカラムとしてSHODEX KF804L(φ8mm×300mm、昭和電工(株)製、商標)を三本直列に連結し、カラム恒温槽温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を1ml/minの流速で流し、サンプルの0.1ml注入し、溶出曲線を日本分光社製のBORWIN GPC計算プログラムで解析し、多分散度を得た。
【0052】
《曇り点》
オリゴアルキルオキシラン誘導体の50重量%水溶液を、温度計と共に試験管に入れる。この水溶液を、濁りを生じる温度より2〜3℃高い温度まで温度計でよく撹拌しながら加温し,その後冷却して水溶液が透明になった時の温度を測定する。
《不飽和度》
JIS K 1557 6.7により求めた。
【0053】
実施例1
窒素吹き込み管,注入管,攪拌器,温度計を取り付けた5リットルオートクレーブに、ジグリセリン830g(5モル)およびポタジウムターシャリブチラート22.4g(0.2モル→グリセリンに対して4モル%)をとり、窒素ガスを吹き込みながら、90±5℃で、50mmHg以下の真空条件で撹拌しながら1時間脱アルコール処理をおこなった。ついで反応系内を窒素ガスで1.0kg/cm2に加圧して、メチルオキシラン2743.4g(47.3モル)を圧力が3.5kg/cm2以下になるようにコントロールしながら100±5℃で徐々に圧入した。全量圧入後、さらに3時間同温度で撹拌を続けた。ついで温度を80±5℃に下げ、窒素ガスを吹き込みながら100mmHg以下の減圧条件下で1時間処理し、残存する未反応メチルオキシランを除去した。ついで窒素ガスで系内を常圧に戻し全量を5リットル4つ口フラスコに移した。得られた反応液は3525gであった。
【0054】
上記4つ口フラスコに撹拌機・窒素吹き込み管・温度計および真空ジョイントを取り付け、85%燐酸を用いてpHを2.5に調整した。窒素ガスを吹き込みながら、温度を60±2℃に保持して1時間撹拌した。ついで、次に酸吸着剤であるキョーワード1000(協和化学工業(株)製、商標)55.1g(反応液に対して2重量%)を加え、温度を100±5℃に上げ、窒素ガスを吹き込みながら真空を取り始め、真空度が50mmHg以下になってからさらに2時間脱水を続けた。減圧濾過により副生した塩および吸着剤を除去して、3,441gのオリゴアルキルオキシラン誘導体を得た(pH6.5)。得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)のチャートを図1に示す。
【0055】
得られた化合物の多分散度は1.022であり、水酸基価は319.2であり、不飽和度は0.01であった。また50%水溶液の曇点は、72.9℃であった。水酸基価より求めた分子量は703.0であった。これよりメチルオキランの付加モル数を求めると、メチルオキシランは全部で9.3モル付加していた。
【0056】
従って得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体の構造は下記式(3)であると推定できる。
【0057】
【化3】
【0058】
実施例2
窒素吹き込み管,注入管,攪拌器,温度計を取り付けた5リットルオートクレーブに、ジグリセリン498g(3モル)およびナトリウムメチラート1.6g(0.03モル→グリセリンに対して1モル%)をとり、窒素ガスを吹き込みながら、80±5℃で、50mmHg以下の真空条件で、撹拌しながら1時間脱アルコール処理をおこなった。ついで反応系内を窒素ガスで1.0kg/cm2(ゲージ圧)に加圧して、エチルオキシラン1901g(26.4モル)を圧力が3.5kg/cm2以下になるようにコントロールしながら100±5℃で徐々に圧入した。全量圧入後、さらに8時間同温度で撹拌を続けた。ついで温度を80±5℃に下げ、窒素ガスを吹き込みながら100mmHg以下の減圧条件下で1時間処理し、残存する未反応エチルオキシランを除去した。
【0059】
窒素ガスで系内圧力を1.0kg/cm2(ゲージ圧)に加圧し、サンプル抜き取り管より、反応液のサンプル20gをナスフラスコに抜き取り、アルカリ吸着剤であるキョーワード700(協和化学工業(株)製)2gを入れ、100mmHg以下の減圧下で30分間処理したのち、減圧濾過によりキョーワードを除去して水酸基価測定用サンプル17.4gを得た。得られたサンプルの水酸基価は300.5であり、水酸基価より求めた分子量は746.8であった。ここから実際に付加したエチルオキシランの付加モルを算出すると、8.07モルであった。
【0060】
続いて、オキシラン290g(6.6モル)を圧力が4kg/cm2(ゲージ圧)以下になるようにコントロールしながら100±5℃で徐々に圧入した。全量圧入後、さらに3時間同温度で撹拌を続けた。
次に、温度を80±5℃に下げ、窒素ガスを吹き込みながら100mmHg以下の減圧条件下で1時間処理し、残存する未反応オキシランを除去した。ついで窒素ガスで系内を常圧に戻し、20gを分析用サンプルとして抜き取ったのち、残量全部を5リットル4つ口フラスコに抜き取った。得られた反応液は2544gであった。
【0061】
上記4つ口フラスコに撹拌機、窒素吹き込み管、温度計および真空ジョイントを取り付け、BHT(試薬,関東化学製)0.25g(反応液に対して、98ppm)を入れ完全に溶解するまで撹拌したのち、17.5%塩酸を用いてpHを2.3に調整した。窒素ガスを吹き込みながら、温度を60±2℃に保持して1時間撹拌した。ついで、温度を100±5℃に上げ、窒素ガスを吹き込みながら真空を取り始め、真空度が50mmHg以下になってからさらに2時間脱水を続けた。次に酸吸着剤であるキョーワード1000(協和化学工業(株)製、商標)25.4g(反応液に対して1重量%)を加え、窒素ガスを吹き込みながら80±5℃,100mmHg以下の条件下で1時間撹拌を続けたのち、減圧濾過により副生した塩および吸着剤を除去して、2469gのオリゴアルキルオキシラン誘導体を得た(pH6.8)。
【0062】
GPCより得られた化合物の多分散度は、1.028であった。
また、得られた化合物の水酸基価は268.7であり、不飽和度は0.00であった。また50%水溶液の曇点は、68.7℃であった。
水酸基価より求めた分子量は、835.1であった。ここで得られた分子量とエチルオキシラン付加終了後に求めた分子量から、オキシランの付加モル数を求めると、オキシランは全部で2モル付加していた。
【0063】
従って得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体の構造は下記式(4)であると推定できる。
【0064】
【化4】
【0065】
実施例3
窒素吹き込み管,注入管,攪拌器および温度計を取り付けた5リットルオートクレーブに、ジグリセリン498g(3モル)およびソジウムメチラート8.1g(0.15モル→グリセリンに対して5モル%)をとり、窒素ガスを吹き込みながら、80±5℃で、50mmHg以下の真空条件で撹拌しながら1時間脱アルコール処理をおこなった。ついで反応系内を窒素ガスで1.0kgf/cm2(ゲージ圧)に加圧して、エチルオキシラン950.4g(13.2モル)とメチルオキシラン1148.4g(19.8モル)の混合物を、圧力が3.5kg/cm2以下になるようにコントロールしながら100±5℃で徐々に圧入した。全量圧入後、さらに5時間同温度で撹拌を続けた。ついで温度を80±5℃に下げ、窒素ガスを吹き込みながら100mmHg以下の減圧条件下で1時間処理し、残存する未反応メチルオキシランおよびエチルオキシランを除去した。ついで窒素ガスで系内を常圧に戻し全量を5リットル4つ口フラスコに抜き取った。得られた反応液は2545gであった。
【0066】
上記4つ口フラスコに撹拌機・窒素吹き込み管・温度計および真空ジョイントを取り付け、17.5%塩酸を用いてpHを2.7に調整した。温度を100±2℃に保持して窒素ガスを吹き込みながら真空を取り始め、真空度が50mmHg以下になってからさらに2時間脱水を続けた。減圧濾過により副生した塩および吸着剤を除去して、2493gの化合物を得た(pH7.0)。
【0067】
得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体の多分散度は1.028であり、水酸基価は279.8であり、不飽和度は0.01であった。また50%水溶液の曇点は、62.7℃であった。
水酸基価より求めた分子量は802であった。これよりメチルオキランおよびエチルオキシランの付加モル数を混合比から算出すると、エチルオキシランは4モル、メチルオキシランは6モル付加していた。
【0068】
従って得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体の構造は下記式(5)であると推定できる。
【0069】
【化5】
【0070】
{ }内はランダム状付加
【0071】
比較例1
一般的に工業的に行われている方法での合成を試みた。
窒素吹込管,注入管,攪拌器,温度計を取り付けた5リットルオートクレーブに、ジグリセリン664g(4モル)および水酸化ナトリウム6.4g(0.16モル→グリセリンに対して4モル%)をとり、窒素ガスで1.0kg/cm2に加圧し、メチルオキシラン2378g(41モル)を圧力が5.0kg/cm2以下になるようにコントロールしながら130±5℃で徐々に圧入した。全量圧入後、さらに2時間同温度で撹拌を続けた。ついで温度を80±5℃に下げ、窒素ガスを吹き込みながら100mmHg以下の減圧条件下で1時間処理し、残存する未反応メチルオキシランを除去した。ついで窒素ガスで系内を常圧に戻し全量を5リットル4つ口フラスコに抜き取った。得られた反応液は2927gであった。
【0072】
次にアルカリ吸着剤であるキョーワード700(協和化学工業(株)製)30gを4つ口フラスコに入れ、撹拌機、窒素吹込管、温度計および真空ジョイントを取り付け、温度を90±5℃に上げ、窒素ガスを吹き込みながら真空を取り始め、真空度が200mmHg以下になってからさらに1時間吸着処理を続けた。減圧濾過により吸着剤を除去して、2831gの化合物を得た(pH6.9)。得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)のチャートを図2に示す。
【0073】
得られた化合物の多分散度は1.052であり、水酸基価は317.1であり、不飽和度は0.11であった。また50%水溶液の曇点は、72.4℃であった。
水酸基価より求めた分子量は707.7であった。これよりメチルオキランの付加モル数を求めると、メチルオキシランは全部で9.34モル付加していた。
【0074】
比較例2
比較例1と同様の方法で、メチルオキシランの付加モル数の多いサンプルの合成を試みた。
窒素吹込管、注入管、攪拌器および温度計を取り付けた5リットルオートクレーブに、ジグリセリン332g(2モル)および水酸化ナトリウム4.0g(0.1モル→グリセリンに対して5モル%)をとり、窒素ガスで1.0kg/cm2に加圧し、メチルオキシラン2262g(39モル)を圧力が5.0kg/cm2以下になるようにコントロールしながら130±5℃で徐々に圧入した。全量圧入後、さらに2時間同温度で撹拌を続けた。ついで温度を80±5℃に下げ、窒素ガスを吹き込みながら100mmHg以下の減圧条件下で1時間処理し、残存する未反応メチルオキシランを除去した。ついで窒素ガスで系内を常圧に戻し全量を5リットル4つ口フラスコに移した。得られた反応液は2511.9gであった。
【0075】
上記4つ口フラスコに撹拌機、窒素吹込管、温度計および真空ジョイントを取り付け、85%塩酸を用いてpHを2.3に調整した。温度を120±5℃に上げ、窒素ガスを吹き込みながら真空を取り始め、真空度が200mmHg以下になってからさらに1時間脱水を続けた。減圧濾過により副生した塩を除去して、2430.1gの化合物を得た(pH6.7)。
【0076】
得られた化合物の多分散度は1.081であり、水酸基価は190.0であり、不飽和度は0.17であった。また50%水溶液の曇点は、23.1℃であった。水酸基価より求めた分子量は1181.1であった。これよりメチルオキランの付加モル数を求めると、メチルオキシランは全部で17.5モル付加していた。
【0077】
比較例3
比較例1と同様の方法で、アルキルオキシランの代わりにオキシランを用いて合成を行った。
窒素吹込管、注入管、攪拌器および温度計を取り付けた5リットルオートクレーブに、ジグリセリン830g(5モル)および水酸化ナトリウム8.0g(0.2モル→グリセリンに対して4モル%)をとり、窒素ガスで1.0kg/cm2に加圧し、オキシラン2024g(46モル)を圧力が5.0kg/cm2以下になるようにコントロールしながら130±5℃で徐々に圧入した。全量圧入後、さらに2時間同温度で撹拌を続けた。ついで温度を80±5℃に下げ、窒素ガスを吹き込みながら100mmHg以下の減圧条件下で1時間処理し、残存する未反応オキシランを除去した。ついで窒素ガスで系内を常圧に戻し全量を5リットル4つ口フラスコに抜き取った。得られた反応液は2780.2gであった。
【0078】
次にアルカリ吸着剤であるキョーワード700(協和化学工業(株)製)30gを4つ口フラスコに入れ、撹拌機・窒素吹き込み管・温度計および真空ジョイントを取り付け、温度を90±5℃に上げ、窒素ガスを吹き込みながら真空を取り始め、真空度が200mmHg以下になってからさらに1時間吸着処理を続けた。減圧濾過により吸着剤を除去して、2703.5gの化合物を得た(pH7.4)。
【0079】
得られた化合物の多分散度は1.048、水酸基価は402.8であり、50%水溶液の曇点は、97℃以上(97℃時点でも曇点は認められない。これ以上の温度上昇は測定系が沸騰するため測定不能)であった。
水酸基価より求めた分子量は557.1であった。これよりオキランの付加モル数を求めると、オキシランは全部で8.9モル付加していた。
この化合物の構造式は下記式(6)で示される。
【0080】
【化6】
【0081】
実施例4〜6および比較例4〜10
本発明の化合物を用いて10%水溶液を調製し、べたつき感の無さ(さっぱり感)、しっとり感についての官能評価を行った。また本発明の化合物を50℃で1週間保存し、臭気の経時変化を調べた。
なお、官能評価は、10人の専門パネラーを用いた。評価方法は、上腕部を洗浄した後に試料を塗布し、塗布直後および一晩後のベタツキ感の無さ(さっぱり感)、しっとり感についての評価を5段階評価でそれぞれ行った。評価方法は以下の基準に従った。各項目についての合計点を表1に記す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0082】
【表1】
【0083】
実施例7
本発明のオリゴアルキルオキシラン誘導体を使用してクレンジングクリームを作製した。すなわち、以下の組成からなる油相部を60℃に加温し均一に溶解した後、撹拌しながら水相部を同温度で添加した。得られたクレンジングクリームの使用感の官能評価を行った。また配合物を50℃で1週間保存し、臭気の経時変化を調べた。
【0084】
なお、官能評価は、10人の専門パネラーが使用時および使用後のベタツキ感の無さ(さっぱり感)、使用後および一晩経過後のしっとり感についての評価を5段階評価でそれぞれ行った。評価方法は以下の基準に従った。各項目についての合計点を表2に記す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0085】
【表2】
【0086】
油相部:
ヘキサデシルアルコール 2.0重量%
ビースワックス 6.0重量%
ワセリン 5.0重量%
スクワラン 30.0重量%
イソプロピルミリステート 5.0重量%
グリセリンモノステアレート 2.0重量%
ステアリン酸 0.5重量%
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.5重量%
香料 適量
防腐剤 適量
水相部:
実施例3の化合物 8.0重量%
精製水 残部
【0087】
実施例8
本発明の化合物を使用してクレンジングローションを作製した。すなわち、以下の組成からなる油相部を60℃に加温し均一に溶解した後、撹拌しながら水相部を同温度で添加した。得られたクレンジングローションの評価を実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0088】
油相部:
ヘキサデシルアルコール 1.0重量%
流動パラフィン 10.0重量%
ワセリン 2.0重量%
グリセリンモノステアレート 2.0重量%
ステアリン酸 0.5重量%
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.5重量%
香料 適量
防腐剤 適量
水相部:
実施例2の化合物 7.0重量%
トリエタノールアミン 0.5重量%
精製水 残部
【0089】
実施例9
本発明の化合物を使用してヘアトリートメントローションを作製した。すなわち、エタノールにポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油、香料、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、防腐剤および実施例1の化合物を室温で加え、均一に混合した後、精製水を加えた。得られたヘアトリートメントローションの使用時の毛髪へのなじみなどを実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0090】
実施例1の化合物 10.0重量%
エタノール 5.0重量%
ポリオキシエエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 0.2重量%
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.2重量%
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
【0091】
実施例10
本発明の化合物を用いてヘアスタイリングフォームを実施例9と同様に作製した。得られたヘアスタイリングフォームの評価を実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0092】
実施例11
本発明の化合物を用いてヘアスタイリングジェルを作製した。結果を表2に示す。
実施例2の化合物 18.0重量%
エタノール 5.0重量%
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 0.2重量%
カルボキシビニルポリマー 0.5重量%
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残量
【0093】
実施例12
本発明の化合物を使用して日焼け止めを作製した。
以下の組成からなる基剤のうち乳化剤を含む油相部を60℃に加温し均一に溶解した後、撹拌しながら水相部を同温度で添加した。結果を表2に示す。
油相部:
パラアミノ安息香酸エチル 2.0重量%
ジメチルポリシロキサン 0.5重量%
2−エチルヘキサン酸ヘキサデシル 7.0重量%
実施例3の化合物 8.0重量%
エタノール 15.0重量%
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 2.0重量%
香料 適量
防腐剤 適量
水相部:
精製水 残部
【0094】
実施例13
本発明の化合物を使用して、ボディソープを作製した。
撹拌しながら以下の組成からなる基剤のうち精製水以外のものを50℃に加温し溶解したのち、撹拌しながら精製水を同温度で添加した。結果を表2に示す。
ポリオキシエチレン(20モル)ドデシルエーテル 10.0重量%
ラウリン酸ナトリウム 2.0重量%
ラウリン酸ジエタノールアミド 3.0重量%
実施例1の化合物 10.0重量%
ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノラウレート 5.0重量%
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
【0095】
比較例11
実施例7で示した配合で、実施例3の化合物のかわりに比較例2の化合物を用いてクレンジングクリームを作製した。結果を表2に示す。
【0096】
比較例12
実施例7で示した配合で、実施例3の化合物の代わりに比較例1の化合物を用いてクレンジングクリームを作製した。結果を表2に示す。
【0097】
比較例13
実施例7で示した配合で、実施例3の化合物の代わりに代表的保湿剤であるグリセリンを用いてクレンジングクリームを作製した。結果を表2に示す。
【0098】
比較例14
実施例9で示した配合で、実施例1の化合物の代わりに比較例2の化合物を用いてヘアトリートメントローションを作製した。結果を表2に示す。
【0099】
比較例15
実施例11で示した配合で、実施例2の化合物の代わりに、代表的保湿剤であるグリセリンを用いてヘアスタイリングジェルを作製した。結果を表2に示す。
【0100】
比較例16
実施例12で示した配合で、実施例3の化合物の代わりに、比較例1の化合物を用いて日焼け止めを作製した。結果を表2に示す。
【0101】
比較例17
実施例7で示した配合で、実施例3の化合物の代わりに、比較例3の化合物を用いてクレンジングクリームを作製した。結果を表2に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体のGPCチャートである。
【図2】比較例1で得られたオリゴアルキルオキシラン誘導体のGPCチャートである。
Claims (1)
- 式(1)で示される、多分散度が1.04以下であり、かつ50%水溶液の曇り点が40〜90℃、かつ不飽和度が0.03以下であるオリゴアルキルオキシラン誘導体の製造方法であって、ジグリセリン1モルに対して式(2)で示されるアルコラート触媒を0.005〜0.1モルの割合で添加し、減圧下に脱アルコール処理を行った後、アルキルオキシランまたはオキシランを80〜110℃で付加反応させ、その後、抗酸化剤の存在下に、反応液をpH3以下に調整した後、アルカリ土類金属酸化物あるいはアルカリ土類金属水酸化物を含有する酸吸着剤で処理することを特徴とするオリゴアルキルオキシラン誘導体の製造方法。
ROX(2)
(ただし、Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐の炭化水素基、Xはカリウムまたはナトリウムである)
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