JP4336920B2 - ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物に関し、更に詳しくは、シリカ配合ゴム組成物の加硫物性、特にモジュラス、耐摩耗性及びtanδのバランスなどの物性を改良するゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
各種原料ゴムにシリカを配合したゴム組成物は広く用いられており、例えば低発熱性で耐摩耗性などに優れたタイヤトレッド用ゴム組成物として使用されている。しかしながら、シリカを配合したタイヤトレッドは、湿潤路のグリップ性はよいが、未加硫配合物の粘度上昇などが起こり、生産性が悪化するという問題があった。特に、単純に原料ゴムにシリカ及びカーボンを同時に混合した場合、カーボンとゴムは充分な接触及び反応が起こり、充分な混合を促進するが、シリカとゴムとの混合は充分ではなく、シリカの分散不良を引き起こし、充分なシリカの特性が生かされなかった。
【0003】
かかる問題を解決すべく、従来から種々の提案があるが、いずれも実用上満足のいくものとは言えないのが実情である。例えば、ジエチレングリコールや脂肪酸を添加したり、カルボン酸金属塩を添加したり、シリカを予めシリコーンオイルで処理する方法(例えば特開平6−248116号公報参照)などが提案されているが、いずれも実用上充分な方法とは言えない。
【0004】
更に、混合時の焼け発生やまとまりの低下に対しては、混合回数を増加するなどの方法をとる以外に方法がなく、また、カーボンとシリカを混合する場合にも、別々に混合するか、もしくは混合時間や混合回数を長くしているのが実状である。この問題についてもSiH含有の直鎖状あるいは環状ポリシロキサンをアルコキシ化した化合物を添加する方法(例えば特開平9−111044号公報参照)が提案されているが、この化合物を用いても、まだ充分満足いくものではなかった。
【0005】
従って、本発明は、加硫性ゴム組成物、特にはシリカ配合加硫性ゴム組成物の特性、例えば低発熱性や耐摩耗性などの特性を実質的に損なうことなく、未加硫ゴム組成物の加工性を改良したゴム組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の分岐状のオルガノオキシ基含有ポリシロキサンとシランカップリング剤とを併用すること、あるいは該ポリシロキサンを粉体に含浸させたものを使用することが、分散改良効果を与える上で有効であることを知見した。
【0007】
即ち、前述の如く、シリカを配合したタイヤトレッドの加硫物性は良好であるが、未加硫時の加工性に劣るという欠点があった。これはシリカ表面に存在するシラノール基に起因し、シラノール基の凝集力により未加硫ゴム組成物中で構造体が生成して粘度が上昇したりする現象のために、未加硫ゴム組成物の加工性が低下するためと推定されている。
【0008】
更に、シリカ配合ゴム組成物には、ゴムの補強のために、シランカップリング剤が併用されることが多いが、シリカ粒子の内腔のシラノール基とシランカップリング剤とが反応してシランカップリング剤を損失させ、補強効果を低下させるため、多量のシランカップリング剤を配合しなければならないという問題があった。従来技術におけるように、これにジエチレングリコールなどの極性物質を添加すると、加硫促進剤などの極性配合剤が吸着される現象はある程度防止できるが、完全には防止できず、シランカップリング剤などのシリカ粒子と化学結合する物質が内腔に結合するのを防止することもできなかったものである。
【0009】
これに対し、下記一般式(1)
R−SiZ3 (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOX基又はシロキサン残基を示し、Xは水素原子又は1価炭化水素基を示す。)
で示される構造単位(T単位)を80〜100mol%含有し、かつ、このT単位のうち、式(2)
R−SiZ’3 (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、Z’はシロキサン残基を示す。)
で示される分岐点となる構造単位(T−3単位)を10〜50mol%含む数平均分子量が1,000〜10,000の分子内に分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(A)をゴム組成物中に配合すると、オルガノオキシシリル基がシラノール基と反応してシリカ粒子の表面を覆うので、従来技術の問題点を解決して、シラノール基の凝集力や極性によって生ずる粘度上昇や、加硫促進剤などの極性添加剤やシランカップリング剤などの無駄な消費を効果的に抑えることができる。このシリカ表面への処理効率は、従来知られているアルコキシ基含有の直鎖状ポリシロキサンに比較して、本発明のような分子内に分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンの方が更に優れていることを見出した。また、本発明の分岐状ポリシロキサンは、シリカとの反応後に網目状に結合するため、シリカ表面に炭化水素基がきれいに配向するため、分岐構造をもたないアルコキシ基含有ポリシロキサンよりも、より分散改良効果が高くなり、ゴム物性の更なる改良も可能であることも見出した。更に、本発明の分岐状ポリシロキサンを、式(3)
R−Si(Y)aO(3-a)/2 (3)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基、Yはアルコキシ基を示し、aは1.0〜2.5の正数である。)
で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサンを単独加水分解するか、式(3)で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサン及びその他のアルコキシシラン又はその部分加水分解物を共加水分解することによって得られるものとした場合、従来知られているSiH基含有ポリシロキサンとアルコールとを脱水素反応により製造するアルコキシ基含有ポリシロキサンと異なり、合成反応中に危険な水素が発生しないため、安全に製造でき、また、ポリシロキサン分子中にもSiH基が残存しないため、ゴム混練中にも水素ガスの発生がなく、極めて安全なゴム用配合剤であるということも見出した。平均組成式(3)のR−Si(Y)aO(3-a)/2で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサンは、分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンの式(2)R−SiZ’3で示される分岐点となる構造単位(T−3単位)を含む構造を製造するのに適したものであり、そのため、従来知られているR−Si(Y)3(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基、Yはアルコキシ基である。)で示されるアルコキシシランを用いて製造したアルコキシ基含有ポリシロキサンよりも構造に均一性があり、そのためシリカ表面での配向性に優れるため、シリカの分散性が良くなることから、加硫物性を損なわずに、より加工性を改良することができる。
【0010】
そして、上記分岐状ポリシロキサンをシランカップリング剤と組み合わせること、あるいはこの分岐状ポリシロキサンを粉体に含浸してゴム組成物に配合することにより、優れた作業性、分散性を与え、物性の良好なゴム加硫物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は下記ゴム組成物を提供する。
[請求項1] 原料ゴムとしてジエン系ゴム又はエチレン−プロピレン共重合体ゴムにシリカを配合してなるゴム組成物に、(A)式(1)
R−SiZ3 (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOX基又はシロキサン残基を示し、Xは水素原子又は1価炭化水素基を示す。)
で示される構造単位(T単位)を80〜100mol%含有し、かつ、このT単位のうち、式(2)
R−SiZ’3 (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、Z’はシロキサン残基を示す。)
で示される分岐点となる構造単位(T−3単位)を10〜50mol%含む数平均分子量が1,000〜10,000の分子内に分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン、及び、
(B)シランカップリング剤
を(A)成分と(B)成分とが重量比で(A)/(B)=95/5〜5/95の割合において配合したことを特徴とするゴム組成物。
[請求項2] (A)成分が、下記平均組成式(3)
R−Si(Y)aO(3-a)/2 (3)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、Yはアルコキシ基を示し、aは1.0〜2.5の正数である。)
で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサンを単独加水分解するか、又はこの式(3)で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサン及びその他のアルコキシシラン又はその部分加水分解物を共加水分解することによって得られたものである請求項1記載のゴム組成物。
[請求項3] (A)成分の含有量が組成物全体の0.2〜30重量%である請求項1又は2記載のゴム組成物。
[請求項4] 更に、(C)成分として不活性粉体をこれに(A)成分のポリシロキサンを(A)成分と(C)成分とが重量比で(A)/(C)=70/30〜5/95の割合となるように含浸した状態において配合した請求項1〜3のいずれか1項記載のゴム組成物。
[請求項5] タイヤトレッド用である請求項1〜4のいずれか1項記載のゴム組成
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴム用配合剤は、(A)成分として分岐状のオルガノオキシ基含有ポリシロキサンを含有する。このポリシロキサンは、式(1)
R−SiZ3 (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOX基又はシロキサン残基を示し、Xは水素原子又は1価炭化水素基を示す。)
で示される構造単位(T単位)を80〜100mol%含有し、かつ、このT単位のうち、式(2)
R−SiZ’3 (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、Z’はシロキサン残基を示す。)
で示される分岐点となる構造単位(T−3単位)を10〜50mol%含むことを特徴とする数平均分子量が1,000〜10,000の化合物である。
【0015】
ここで、Rは、上記のように炭素数1〜18、好ましくは1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、9−デセニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などを具体例として示すことができる。また、置換1価炭化水素基としては、上記炭素数1〜18の非置換1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部を置換基で置換したもので、置換基としては、(i)フッ素、塩素などのハロゲン原子、(ii)グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基などのエポキシ官能基、(iii)メタクリル基、アクリル基などの(メタ)アクリル官能基、(iv)アミノ基、アミノエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジブチルアミノ基などのアミノ官能基、(v)メルカプト基、テトラスルフィド基などの含硫黄官能基、(vi)(ポリオキシアルキレン)アルキルエーテル基などのアルキルエーテル官能基、(vii)カルボキシル基、スルフォニル基などのアニオン性基、(viii)第4級アンモニウム塩構造含有基などが適用可能である。
【0016】
ZはOX基又はシロキサン残基であり、Xは水素原子又は1価炭化水素基である。この場合、1価炭化水素基としては、炭素数が1〜8、特に1〜4のものが好ましく、Rと同様のアルキル基、アルケニル基、アリール基等を挙げることができるが、特にアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましく、OX基としては、OH基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好ましい。シロキサン残基は、酸素原子を介して隣接するケイ素原子に結合し、シロキサン結合(O−Si≡)を形成するもので、隣接するケイ素原子と酸素原子を共有するためO1/2と表すことができ、R−SiZ3において、例えばZがすべてシロキサン残基であれば、R−SiO3/2と表すことができる。なお、Zは互いに同一であっても異なっていてもよい。R−SiZ3で表される構成単位のZのうち、少なくとも1個はシロキサン残基である必要がある。
【0017】
本発明で用いる分岐状のポリシロキサンは、上述したように、式(1)のT単位を80〜100mol%含有するものであるが、この場合、このT単位の10〜50mol%、好ましくは10〜40mol%、更に好ましくは10〜30mol%が式(2)のR−SiZ’3(Rは上記と同じ、Z’は上記シロキサン単位である)で示される構造単位である。なお、残りはシロキサン残基が1個又は2個のものである。分岐状ポリシロキサンは、特にシリカ表面のシラノール基と反応するためにはオルガノオキシ基、とりわけアルコキシ基を有することが有効である。そのため、オルガノオキシ基は、(A)成分の分子中に少なくとも1個有する必要がある。オルガノオキシ基含有量は分子中に1個以上、上限は40重量%であることが好ましい。40重量%を超えると、数平均分子量やT単位、T−3単位を満足できなくなることがある。なお、OX基は、ポリシロキサンの主鎖、側鎖、末端のいずれにあってもよい。
【0018】
上記式(1)で示されるT単位の割合が少ないと、シリカとの反応時に網目構造が少なくなり、シリカ表面に炭化水素基の配向が少なくなり、分散改良効果が低下し、また、式(2)で示される単位が少ないと、T単位の割合が少ない場合と同様に、分散改良効果が低下し、逆に多いと、シリカとの反応性が低下し、ゴム物性が低下してしまう。
【0019】
なお、分岐状ポリシロキサンのその他の構成単位としては、R3SiZで表されるM単位を0〜10mol%、R2SiZ2で表されるD単位を0〜20mol%、SiZ4で表されるQ単位を0〜20mol%とすることができる(R,Zは上記と同じ)。
【0020】
また、(A)成分のポリシロキサンの数平均分子量は、上述したように1,000〜10,000である。
【0021】
本発明で用いるポリシロキサンは、上述したように、分子内に分岐構造を持つポリシロキサンであることが重要で、このように分子広がりを持った構造であることがより処理効率を向上させるのに有効となっている。
【0022】
かかる分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンとしては、特に式(3)
R−Si(Y)aO(3-a)/2 (3)
(式中、Rは上記と同じ、Yはアルコキシ基、特に炭素数1〜8のアルコキシ基である。aは1.0〜2.5の正数である。)
で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサン又はその部分加水分解物を触媒存在下又は非存在下、単独加水分解するか、あるいは式(3)で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサン又はその部分加水分解物及びその他のアルコキシシラン又はその部分加水分解物を触媒存在下又は非存在下、共加水分解することによっても得ることが好ましい。その際の触媒としては、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物、テトラブチルチタネート等のチタン化合物、酢酸、シュウ酸、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、DBU等のアルカリ化合物やイオン交換樹脂等の固体触媒等が挙げられる。
【0023】
上記式(3)で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサンを用いることにより、加水分解の際に生成するアルコール量を低減化させることができ、分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンの製造においてポットイールドを向上させることができるため、R−Si(Y)3(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基、Yは1価のアルコキシ基である。)で示されるアルコキシシランを加水分解するよりも有利であり、また、本発明の分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンの式(2)R−SiZ’3で示される分岐点となる構造単位(T−3単位)を含む構造を製造するのに適したものである。なお、上記式(3)で示される化合物は、式(4)R−SiCl3で示されるクロロシランをアルコール共存下、水と反応させ、残存した水及びアルコールを留去することで得ることができる。
【0024】
分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンは、前述したように、分子内のT単位のうち、式(2)
R−SiZ’3 (2)
で示される分岐点となる構造単位(T−3単位)を含む構造であればよく、この構造を含む化合物を製造するためには、加水分解に使用する水の量を数平均分子量500以上になるために必要な量とすればよい。
【0025】
本発明において使用される分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(A)は、ゴム組成物当り0.2〜30重量%、特に好ましくは1.0〜10重量%になるように配合する。分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(A)の配合量が少なすぎると所望の効果が得られず、逆に多すぎるとシリカと結合しない該物質が加硫物からブリードアウトする場合がある。
【0026】
本発明の第1発明に係るゴム用配合剤は、上記(A)成分の分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンに(B)シランカップリング剤を併用したものであるが、シランカップリング剤としては、従来からシリカ充填剤と併用される任意のシランカップリング剤とすることができ、典型例としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]ジスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]トリスルフィド等を挙げることができる。このうち、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]ジスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]トリスルフィド及びこれらの混合物が加工性や補強性、摩耗性向上の面から最も好ましい。
【0027】
本発明に係る加硫性ゴム組成物に上記(A)成分と(B)成分のシランカップリング剤とを併用した配合剤を配合すると、従来に比し、シランカップリング剤(B)の使用量を少なくすることができ、耐摩耗性を更に改良することができる。本発明におけるシランカップリング剤(B)の好ましい使用量は、分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(B)の比(重量比)が95/5〜5/95、更に好ましくは80/20〜60/40となる量である。シランカップリング剤(B)の配合量が少なすぎると所望の効果が得られず、逆に多すぎると混合や押出工程での焼け(スコーチ)が生じ易くなるので好ましくない。
【0028】
本発明においては、従来からゴム組成物に一般的に配合される少なくとも一種の粉体(C)に前記ポリシロキサン(A)を含浸したものを配合し得る。粉体(C)としては、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸等の不活性粉体やシリカ等を挙げることができる。ここで、不活性粉体とは、本発明の分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(A)との反応性の小さいものをいう。この粉体(C)の配合量は、(A)/(C)の重量比で70/30〜5/95、更に好ましくは60/40〜30/70の割合で、粉体の量が少なすぎると、シリカとポリシロキサンが速く反応しすぎることで、補強性が低下するので好ましくなく、逆に多すぎると、ポリシロキサンのシリカヘの表面処理効果がうすれるので好ましくない。
【0029】
上記ゴム用配合剤は、ゴム組成物に配合されて用いられる。この場合、本発明に係る加硫性ゴム組成物に主成分として配合されるゴムは、従来から各種ゴム組成物に一般的に配合されている任意のゴム、例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムやエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR,EPDM)などを単独又は任意のブレンドとして使用することができる。タイヤトレッド用としては、シリコーンゴムは強度の面で好ましくなく、非シリコーン系ゴム、特に上記したゴムが好ましい。
【0030】
ここで、ゴム組成物は、上記原料ゴム100重量部に対し、シリカを全体で5〜100重量部、好ましくは5〜80重量部と、前記ゴム用配合剤(即ち、分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(B)又は粉体(C)との予備混合物)を全組成物中の分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(A)の配合量が0.2〜30重量%、好ましくは1〜10重量%となるように配合する。また、これらゴム用配合剤を2種以上混合して用いてもよい。
【0031】
なお、ゴム組成物は、上述したシランカップリング剤を上述した量で含有していることが好ましい。
【0032】
本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、カーボンブラック、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑性剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる配合物は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0033】
【実施例】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[合成例1]
分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(1)
撹拌器、冷却器、温度計を備えた1リットルセパラブルフラスコに、平均組成式CH3−Si(OCH3)2O1/2で示される化合物160g及び酸性イオン交換樹脂0.8gを仕込み、20〜50℃にて、撹拌下、イオン交換水120gをゆっくり加えた。その後、68℃にて2時間撹拌を続けた。次いで、生じたメタノールを常圧下、140℃まで昇温し、留去した。更に、80℃まで冷却し、20mmHgにて減圧留去を行った。得られた化合物は110gであった。このもののGPCによる平均分子量は1,500であった。この化合物のNMR分析を行ったところ、下記に示す組成比の分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンであることが確認できた。
【0035】
【化1】
(CH3−SiZ3の含有率100mol%で、CH3−SiZ3中のCH3−SiZ’3の含有率25mol%)
【0036】
[合成例2]
分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(2)
合成例1において、加えたイオン交換水の量を変えた他は同様に操作したところ、GPC平均分子量50,000であり、CH3−SiZ3の含有率100mol%で、CH3−SiZ3中のCH3−SiZ’3の含有率45mol%の分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンであることが確認できた。
【0037】
[合成例3]
分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン(3)
合成例1において、オルガノオキシシラン原料として、更にジメチルジメトキシシランを加え、イオン交換水の量を変えた他は同様に操作したところ、GPC平均分子量2,100であり、(CH3)2−SiZ2の含有率50mol%、CH3−SiZ3の含有率50mol%で、CH3−SiZ3中のCH3−SiZ’3の含有率20mol%の分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンであることが確認できた。
【0038】
[合成例4]
比較のため、メチルハイドロジェンポリシロキサンとエタノールとの反応によって下記構造の化合物を合成した。NMR分析を行ったところ、この化合物にはCH3−SiZ’3で示される構造単位は含まれていなかった。
【0039】
【化2】
【0040】
[実施例,比較例]
表1に示す配合成分を密閉型ミキサーで混練し、これに加硫促進剤と硫黄をオープンロール混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間プレス加硫して目的とする試験片(ゴムシート)を調製し、加硫物性を評価した。
【0041】
なお、各例に用いた上記ポリシロキサン以外の配合成分としては、下記市販品を使用した。
天然ゴム:RSS#1
SBR:ニポールNS116(日本ゼオン製)
BR:NP1220(日本ゼオン製)
シリカ:ニプシルAQ(日本シリカ製)
シランカップリング剤:KBE−846(信越化学工業製),ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド
カーボンブラック:シーストKH(東海カーボン製)
粉末硫黄:5%油処理の粉末硫黄
老化防止剤6C:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
加硫促進剤CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
酸化亜鉛:亜鉛華3号
ステアリン酸:工業用ステアリン酸
【0042】
また、各例において得られた組成物の加硫物性の試験方法は、以下の通りである。
未加硫物性
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に基づき100℃にて測定した。
(2)加硫速度
JIS K 6300に基づき160℃にて95%加硫度に達する時間を測定した。
(3)スコーチ時間
JIS K 6300に基づき125℃にて粘度が5ポイント上昇する時間を測定した。
加硫物性
(1)カーボン/シリカ分散状態
加硫ゴムを鋭利な刃物で切り、その表面を目視で確認し、評価した。
◎…カーボン及びシリカの不良分散塊が殆どなく、均等に分散している。
○…カーボン及びシリカの不良分散塊が少し散見されるが、それ以外はある程度分散している。
△…切り出した表面から粉らしきものが見えるのが確認でき、カーボン及びシリカの不良分散塊が無数に見受けられる。
(2)300%変形応力、破断強度、破断伸度
JIS K 6251(ダンベル状3号形)に準拠して測定した。
(3)tanδ
東洋精機製作所製粘弾性装置レオログラフソリッドにて20Hz、初期伸長10%、動歪み2%で測定した(試料幅5mm,温度0℃及び60℃)。
(4)耐摩耗性
ランボーン型試験機で測定し、摩耗減量を下記式により指数表示した。
耐摩耗性(指数)=
[(参照試験片での減量)/(各試験片での減量)]×100
評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明に従えば、分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサンの使用により、従来知られているアルコキシ基含有ポリシロキサンと比較して処理効率が向上するため、シランカップリング剤を併用して又は粉体に含浸して使用することで、シリカの分散性が向上し、かつゴム組成物の各物性(引張り、耐摩耗性、tanδ)が向上し、タイヤトレッド用のゴム組成物に適したものとなる。
Claims (5)
- 原料ゴムとしてジエン系ゴム又はエチレン−プロピレン共重合体ゴムにシリカを配合してなるゴム組成物に、(A)式(1)
R−SiZ3 (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOX基又はシロキサン残基を示し、Xは水素原子又は1価炭化水素基を示す。)
で示される構造単位(T単位)を80〜100mol%含有し、かつ、このT単位のうち、式(2)
R−SiZ’3 (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、Z’はシロキサン残基を示す。)
で示される分岐点となる構造単位(T−3単位)を10〜50mol%含む数平均分子量が1,000〜10,000の分子内に分岐構造を持つオルガノオキシ基含有ポリシロキサン、及び、
(B)シランカップリング剤
を(A)成分と(B)成分とが重量比で(A)/(B)=95/5〜5/95の割合において配合したことを特徴とするゴム組成物。 - (A)成分が、下記平均組成式(3)
R−Si(Y)aO(3-a)/2 (3)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、Yはアルコキシ基を示し、aは1.0〜2.5の正数である。)
で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサンを単独加水分解するか、又はこの式(3)で示されるアルコキシ基含有ポリシロキサン及びその他のアルコキシシラン又はその部分加水分解物を共加水分解することによって得られたものである請求項1記載のゴム組成物。 - (A)成分の含有量が組成物全体の0.2〜30重量%である請求項1又は2記載のゴム組成物。
- 更に、(C)成分として不活性粉体をこれに(A)成分のポリシロキサンを(A)成分と(C)成分とが重量比で(A)/(C)=70/30〜5/95の割合となるように含浸した状態において配合した請求項1〜3のいずれか1項記載のゴム組成物。
- タイヤトレッド用である請求項1〜4のいずれか1項記載のゴム組成物。
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