JP6206152B2 - 含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法、ゴム用配合剤、並びにゴム組成物 - Google Patents

含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法、ゴム用配合剤、並びにゴム組成物 Download PDF

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Description

本発明は、分子内に加水分解性シリル基、スルフィド基、アミノ基を有し、ゴム配合物に有効に用いられる含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法、並びにゴム用配合剤に関するものである。該ゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤは、ヒステリシスロスが低いほか、耐磨耗性に優れる。
含硫黄有機ケイ素化合物はシリカ充填ゴム組成物からなるタイヤの製造に必須成分として有用である。シリカ充填タイヤは自動車用途で向上した性能、特に耐磨耗性、転がり抵抗及びウェットグリップ性に優れる。こういった性能向上はタイヤの低燃費性向上と密接に関連しており、昨今盛んに研究されている。
低燃費性向上にはゴム組成物のシリカ充填率を上げることが必須であるが、シリカ充填ゴム組成物はタイヤの転がり抵抗を低減し、ウェットグリップ性を向上させるものの、未加硫粘度が高く、多段練り等を要し、作業性に問題がある。そのためシリカ等の無機充填剤を単に配合したゴム組成物においては充填剤の分散が不足し、破壊強度及び耐磨耗性が大幅に低下するといった問題が生じる。そこで、無機充填剤のゴム中への分散性向上、並びに充填剤とゴムマトリックスの化学結合をさせるため含硫黄有機ケイ素化合物が必須であった。
含硫黄有機ケイ素化合物としては、アルコキシシリル基とポリスルフィドシリル基を分子内に含む化合物、例えばビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドやビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等が有効であることが知られている。
上記ポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物のほかに、スルフィド基含有有機ケイ素化合物とアルキルアルコールアミンをエステル交換させることにより得られる組成物は、低燃費性と耐磨耗性を大幅に向上させることができることが知られている(特開2008−169157号公報、国際公開第2009/104766号)。
しかしながら、上記特許文献記載の含硫黄有機ケイ素化合物は、保存安定性が悪く取り扱いが困難であるという問題点があった。
なお、本発明に関連する背景技術文献を挙げると下記の通りである。
特公昭51−20208号公報 特表2004−525230号公報 特開2004−18511号公報 特開2005−8639号公報 特開2002−145890号公報 特開2008−150546号公報 特開2010−132604号公報 特許第4571125号公報 米国仮特許出願第60/423577号明細書 米国特許第6229036号明細書 米国特許第6414061号明細書 特開2008−169157号公報 国際公開第2009/104766号
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐磨耗性を大幅に向上させることが可能であり、保存安定性が良好な含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法を提供することにある。また、他の目的は該含硫黄有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤及びゴム組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、加水分解性シリル基、スルフィド基、アミノ基を有する特定の含硫黄有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤を使用したゴム組成物が、所望の低燃費タイヤ特性を満足することを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記含硫黄有機ケイ素化合物とその製造方法、ゴム用配合剤、ゴム組成物を提供する。
〔1〕
下式(1)
(R1O)3Si−R3−Sn−R3−Si(OR13 (1)
(式中、R1メチル基又はエチル基、R3メチレン基、エチレン基、又はトリメチレン基、nは平均値として2≦n≦の数を表す。)
で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物と、下式(2)
456N (2)
〔式中、R4フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、又はエチルフェニル基、R5及びR6は下式で表されるいずれかの基を示す。
*−CH 2 −OH、*−C 2 4 −OH、及び*−C 3 6 −OH(*は結合部位を示す。)〕
で表されるアミン化合物とのエステル交換反応物である含硫黄有機ケイ素化合物の混合物
〔2〕
上式(2)で表されるアミン化合物が、N−フェニルジエタノールアミン、m−トリルジエタノールアミン、o−トリルジエタノールアミン、p−トリルジエタノールアミンから選ばれるものであることを特徴とする〔1〕記載の含硫黄有機ケイ素化合物の混合物
〔3〕
上式(2)で表されるアミン化合物の使用量が、上式(1)で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物100質量部に対して1〜200質量部であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の含硫黄有機ケイ素化合物の混合物
〔4〕
下式(1)
(R1O)3Si−R3−Sn−R3−Si(OR13 (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R3は炭素数1〜10のアルキレン基、nは平均値として2≦n≦6の数を表す。)
で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物と、下式(2)
456N (2)
〔式中、R4は炭素数6〜12のアリール基、R5及びR6は下式(3)で表される基を示す。
*−R7−OH (3)
(式中、R7は炭素数1〜12のアルキレン基を示す。*は結合部位を示す。)〕
で表されるアミン化合物を触媒存在下、エステル交換反応を行うことを特徴とする含硫黄有機ケイ素化合物の混合物の製造方法。
〔5〕
上式(2)で表されるアミン化合物が、N−フェニルジエタノールアミン、m−トリルジエタノールアミン、o−トリルジエタノールアミン、p−トリルジエタノールアミンから選ばれるものであることを特徴とする〔4〕記載の製造方法。
〔6〕
上式(2)で表されるアミン化合物の使用量が、上式(1)で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物100質量部に対して1〜200質量部であることを特徴とする〔4〕又は〔5〕記載の製造方法。
〔7〕
前記触媒が、酸触媒、アルカリ金属アルコラート、又は有機金属系触媒であることを特徴とする〔4〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕
〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の含硫黄有機ケイ素化合物の混合物を含んでなるゴム用配合剤。
〔9〕
更に少なくとも1種の粉体を含有してなり、前記含硫黄有機ケイ素化合物の混合物(A)と少なくとも1種の粉体(B)の質量比が、(A)/(B)=70/30〜5/95の割合である〔8〕記載のゴム用配合剤。
〔10〕
〔8〕又は〔9〕記載のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物。
〔11〕
〔10〕記載のゴム組成物を用いて形成したタイヤ。
本発明の含硫黄有機ケイ素化合物は、加水分解性シリル基とアミノ基及びスルフィド基を有しており、アミノ基のゴム中のシリカとの相互作用によりシリカ近傍での反応性及び分散性が上がるため、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下し、所望の低燃費タイヤ特性を満たすことができる。また、アリール基置換のアミン化合物を用いることにより保存安定性を向上させることができる。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明において「シランカップリング剤」は「有機ケイ素化合物」に含まれる。
[含硫黄有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)]
本発明の含硫黄有機ケイ素化合物は、下式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−Sn−R3−Si(OR1(3-p)(R2p (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価の炭化水素基、R3は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、nは平均値として2≦n≦6の数を表し、pは0〜2を示す。)
で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物と、下式(2)
456N (2)
〔式中、R4は炭素数6〜12のアリール基、R5は下式(3)で表される基、R6は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は下式(3)で表される基を示す。
*−(CH2s−R7−OH (3)
(式中、R7は炭素数1〜12のアルキレン基、又は*−O−(Y−O)m−Y−*であり、Yは炭素数1〜10のアルキレン基であり、mは1〜40であり、sは0〜12を示す。*は結合部位を示す。)〕
で表されるアミン化合物を触媒存在下、エステル交換反応させることにより得られる含硫黄有機ケイ素化合物である。
上式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等のアルキル基、アルケニル基等が例示される。R3は炭素数1〜10の2価炭化水素基を示し、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、フェニレン基、メチルフェニルエチレン基等のアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基や、これらの基が結合した基などが例示される。nは平均値として2≦n≦6の数を表し、好ましくは平均値として2≦n≦4のものが用いられる。pは0、1又は2であり、好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
このような上式(1)で表される化合物としては下記のものが代表例として挙げられるが、ここに例示したものに限らない。
(CH3O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH23−S3−(CH23−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH23−S2−(CH23−Si(OCH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S3−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
上式(2)中、R4は炭素数6〜12のアリール基を示し、具体的には、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
5は下式(3)
*−(CH2s−R7−OH (3)
(式中、R7は炭素数1〜12のアルキレン基、又は*−O−(Y−O)m−Y−*であり、Yは炭素数1〜10のアルキレン基であり、mは1〜40であり、sは0〜12を示す。*は結合部位を示す(以下、同様)。)
で表される基を示し、具体的に炭素数1〜12のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基が挙げられ、炭素数1〜10のアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基が挙げられる。
6は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は上式(3)で表される基を示し、具体的に炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基が挙げられ、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基が挙げられ、上式(3)の基としては、*−CH2−OH、*−C24−OH、*−C36−OH、*−C24−O−C24−OH、*−(CH2CH2O)2−C24−OH、*−(CH2CH2O)3−C24−OH、*−(CH2CH2O)4−C24−OH、*−(CH2CH2O)5−C24−OHが挙げられるが、ここに例示したものに限らない。
更に詳しくは、上式(2)で表されるアミン化合物が、N−フェニルジエタノールアミン、2−(N−メチルアニリノ)エタノール、2−(N−エチルアニリノ)エタノール、m−トリルジエタノールアミン、o−トリルジエタノールアミン、p−トリルジエタノールアミン、N−エチル−N−2−ヒドロキシエチル−m−トルイジン、N−メチル−N−2−ヒドロキシエチル−m−トルイジン、N−エチル−N−2−ヒドロキシエチル−o−トルイジン、N−メチル−N−2−ヒドロキシエチル−o−トルイジン、N−エチル−N−2−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N−メチル−N−2−ヒドロキシエチル−p−トルイジンが挙げられ、経済的な観点からN−フェニルジエタノールアミン、2−(N−メチルアニリノ)エタノール、2−(N−エチルアニリノ)エタノールが好ましい。
上式(2)で表されるアミン化合物の使用量は、上式(1)で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物100質量部に対して1〜200質量部であり、好ましくは2〜100質量部であり、更に好ましくは10〜50質量部である。
上式(1)の有機ケイ素化合物と上式(2)のアミン化合物をエステル交換反応させる場合に用いる触媒は、酸触媒、アルカリ金属アルコラート、有機金属系触媒が好ましい。酸触媒としては、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、カンファースルホン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸が挙げられる。アルカリ金属アルコラートとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシドが挙げられる。有機金属系触媒としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタンなどのチタン系触媒、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルスズオキシドなどのスズ系触媒が挙げられる。
前記触媒の使用量については特に制限はないが、原料である上式(1)で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物に対して0.0001〜10質量%、好ましくは0.0001〜1質量%である。
本発明の含硫黄有機ケイ素化合物は、式(1)のスルフィド基含有有機ケイ素化合物と式(2)のフェニル基置換アミン含有アルコールとのエステル交換反応物であり、用いるアルコールの価数によって生成する含硫黄有機ケイ素化合物が異なる。また、本発明の含硫黄有機ケイ素化合物は、下記に示す複数の有機ケイ素化合物を含む混合物であり得るが、下記に示す有機ケイ素化合物に限定されない。
トリアルコキシシリル基含有の有機ケイ素化合物と1価のアルコールとの反応の例を挙げると、未反応のスルフィド基含有有機ケイ素化合物、1つのアルコキシシリル基がエステル交換した反応物、2つのアルコキシシリル基がエステル交換した反応物、3つのアルコキシシリル基がエステル交換した反応物、4つのアルコキシシリル基がエステル交換した反応物、5つのアルコキシシリル基がエステル交換した反応物、6つのアルコキシシリル基がエステル交換した反応物が生成することが考えられる。生成物としては下記に示す有機ケイ素化合物に限定されない。
Figure 0006206152
(式中、R1は上記の通り。Aは式(2)で示されるOH基を1個有するアミン化合物の残基、xは平均値として2≦x≦6の数である。)
トリアルコキシシリル基含有の有機ケイ素化合物と2価のアルコールとの反応の例を挙げる。未反応のスルフィド基含有有機ケイ素化合物、分子内で2つのアルコールがエステル交換した反応物、2分子間で2つのアルコールがエステル交換した反応物、多分子に渡りジアルコール体により架橋された反応物、分子内で2つのアルコールがエステル交換した反応物とスルフィド基含有有機ケイ素化合物がジアルコール体により架橋された反応物、分子内で2つのアルコールがエステル交換した反応物と、スルフィド基含有有機ケイ素化合物が多分子に渡りジアルコール体により架橋された反応物などが考えられる。生成物としては下記に示す有機ケイ素化合物に限定されない。
Figure 0006206152
(式中、R1は上記の通り。Bは式(2)で示されるOH基を2個有するアミン化合物の残基、xは平均値として2≦x≦6の数である。)
[含硫黄有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)の製造方法]
本発明の含硫黄有機ケイ素化合物は、上述した通り、下式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−Sn−R3−Si(OR1(3-p)(R2p (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価の炭化水素基、R3は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、nは平均値として2≦n≦6の数を表し、pは0〜2を示す。)
で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物と、下式(2)
456N (2)
〔式中、R4は炭素数6〜12のアリール基、R5は下式(3)で表される基、R6は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は下式(3)で表される基を示す。
*−(CH2s−R7−OH (3)
(式中、R7は炭素数1〜12のアルキレン基、又は*−O−(Y−O)m−Y−*であり、Yは炭素数1〜10のアルキレン基であり、mは1〜40であり、sは0〜12を示す。*は結合部位を示す。)〕
で表されるアミン化合物を触媒存在下、エステル交換反応させることにより得られるが、本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒は原料であるスルフィド基含有有機ケイ素化合物、アミン化合物と非反応性であれば特に限定されないが、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。
本発明の有機ケイ素化合物を製造する場合の反応温度は、反応が進行していれば特に限定されないが、好ましくは20〜150℃、より好ましくは60〜120℃程度である。反応時間は、反応が終了していれば特に限定されないが、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは1〜15時間程度である。
本発明のゴム用配合剤は、本発明の含硫黄有機ケイ素化合物(A)を含むが、含硫黄有機ケイ素化合物(A)を予め少なくとも1種の粉体(B)と混合したものをゴム用配合剤として使用することも可能である。粉体(B)としてはカーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。補強性の観点からシリカ及び水酸化アルミニウムが好ましく、シリカが特に好ましい。
粉体(B)の配合量は、成分(A)/(B)の質量比で70/30〜5/95、更に好ましくは60/40〜10/90の割合である。粉体(B)の量が少なすぎるとゴム用配合剤が液状となり、ゴム混練機への仕込みが困難となる場合がある。粉体(B)の量が多すぎると、ゴム用配合剤の有効量に対し全体量が多くなってしまい、輸送費用が高くなる場合がある。
本発明のゴム用配合剤は、脂肪酸、脂肪酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体等の有機ポリマーやゴムと混合されたものでもよく、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合してもよく、その形態として液体状でも固体状でもよく、更に有機溶剤に希釈したものでもよく、またエマルジョン化したものでもよい。
本発明のゴム用配合剤は、シリカ配合のゴム組成物に対して好適に用いられる。
この場合、上記ゴム用配合剤の添加量はゴム組成物に配合されるフィラー100質量部に対して本発明の有機ケイ素化合物を0.2〜30質量部、特に好ましくは1〜20質量部添加するのが望ましい。有機ケイ素化合物の添加量が少なすぎると所望のゴム物性が得られない。逆に多すぎると添加量に対して効果が飽和し、非経済的である。
ここで、本発明にかかるゴム用配合剤を用いるゴム組成物に主成分として配合されるゴムとしては従来から各種ゴム組成物に一般的に配合されている任意のゴム、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムやエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR,EPDM)などを単独又は任意のブレンドとして使用することができる。また、配合されるフィラーとしてはシリカ、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。
本発明にかかるゴム用配合剤を用いるゴム組成物には、前述した必須成分に加えてカーボンブラック、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これら添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り従来の一般的な配合量とすることができる。
なお、これらのゴム組成物において、本発明の有機ケイ素化合物は公知のシランカップリング剤の代わりをなすことも可能であるが、更に他のシランカップリング剤の添加は任意であり、従来からシリカ充填剤と併用される任意のシランカップリング剤を添加してもよい。それらの典型例としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、ビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等を挙げることができる。
本発明のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物は、一般的な方法で混練、加硫又は架橋して用いることができる。
本発明のタイヤは上記のゴム組成物を用いることを特徴とし、上記のゴム組成物がトレッドに用いられていることが好ましい。本発明のタイヤは転がり抵抗が大幅に低減されていることに加え、耐磨耗性も大幅に向上している。なお、本発明のタイヤは従来公知の構造で特に限定はなく、通常の方法で製造できる。また、本発明のタイヤが空気入りのタイヤの場合、タイヤ内に充填する気体として通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中、粘度は毛細管式動粘度計による25℃における測定に基づく。また、部は質量部を示す。
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、N−フェニルジエタノールアミン90.6g(0.5mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、テトラブトキシチタン0.03gを投入し、120℃にて5時間加熱撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた580.5gの反応生成物は、粘度73mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(1)とする。
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、N−フェニルジエタノールアミン181.2g(1.0mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、テトラブトキシチタン0.05gを投入し、120℃にて5時間加熱撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた625.9gの反応生成物は、粘度1080mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(2)とする。
[実施例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、N−フェニルジエタノールアミン90.6g(0.5mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、トリフルオロメタンスルホン酸0.6gを投入し、120℃にて10時間加熱撹拌した。その後、キョーワード500(協和化学工業(株)製)6.0gを投入し、室温にて2時間撹拌した。ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮、濾過することで得られた578.8gの反応生成物は、粘度70mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(3)とする。
[実施例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、N−フェニルジエタノールアミン181.2g(1.0mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、トリフルオロメタンスルホン酸0.6gを投入し、120℃にて10時間加熱撹拌した。その後、キョーワード500(協和化学工業(株)製)6.0gを投入し、室温にて2時間撹拌した。ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮、濾過することで得られた620.9gの反応生成物は、粘度990mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(4)とする。
[実施例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、p−トリルジエタノールアミン97.7g(0.5mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、テトラブトキシチタン0.03gを投入し、120℃にて5時間加熱撹拌した。その後ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた588.8gの反応生成物は、粘度89mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(5)とする。
[実施例6]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、2−(N−メチルアニリノ)エタノール75.6g(0.5mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、テトラブトキシチタン0.03gを投入し、120℃にて5時間加熱撹拌した。その後ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた587.5gの反応生成物は、粘度58mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(6)とする。
[実施例7]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、2−(N−エチルアニリノ)エタノール82.6g(0.5mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、テトラブトキシチタン0.03gを投入し、120℃にて5時間加熱撹拌した。その後ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた591.6gの反応生成物は、粘度58mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(7)とする。
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、N−メチルジエタノールアミン59.6g(0.5mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、テトラブトキシチタン0.03gを投入し、120℃にて5時間加熱撹拌した。その後ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた545.1gの反応生成物は、粘度42mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(8)とする。
[比較例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製KBE−846)539.0g(1.0mol)、トリエタノールアミン74.6g(0.5mol)、キシレン500gを納め、オイルバスにて120℃に加熱した。その後、テトラブトキシチタン0.03gを投入し、120℃にて5時間加熱撹拌した。その後ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた538.5gの反応生成物は、粘度122mm2/sの褐色透明液体であり、得られた含硫黄有機ケイ素化合物を有機ケイ素化合物(9)とする。
[実施例8〜14、比較例3,4]
実施例1〜7、比較例1,2で合成した含硫黄有機ケイ素化合物の保存安定性を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
[測定条件]
50gのガラス容器に含硫黄有機ケイ素化合物20gを納め、開放系にて40℃、50RH%の恒温恒湿室で保管し、1週間後、1ヶ月後の状態を評価した。
[評価基準]
○:変化なし(液状を保っている)
△:部分的に固化
×:完全に固化(ゲル化)
Figure 0006206152
表1の通り、アルキルアルコールアミンとの反応物は湿熱安定性が悪いのに対し、本発明の含硫黄有機ケイ素化合物は湿熱安定性に優れるため、長期の保存が可能であることが示された。
[実施例15〜21、比較例5〜9]
油展エマルジョン重合SBR(JSR(株)製#1712)110部、NR(一般的なRSS#3グレード)20部、カーボンブラック(一般的なN234グレード)20部、シリカ(日本シリカ工業(株)製ニプシルAQ)50部、実施例1〜7の含硫黄有機ケイ素化合物又は下記に示す比較化合物A〜C6.5部、ステアリン酸1部、老化防止剤6C(大内新興化学工業(株)製ノクラック6C)1部を配合してマスターバッチを調製した。これに亜鉛華3部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)0.5部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1部、硫黄1.5部を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
次に、ゴム組成物の未加硫又は加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表2,3に示す。
〔未加硫物性〕
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に準拠し、余熱1分、測定4分、温度130℃にて測定し、比較例7を100として指数で表した。指数の値が小さいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れている。
〔加硫物性〕
(2)動的粘弾性
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、引張の動歪5%、周波数15Hz、60℃の条件にて測定した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を160gとした。tanδの値は比較例7を100として指数で表した。指数値が小さいほどヒステリシスロスが小さく低発熱性である。
(3)耐磨耗性
JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン型磨耗試験機を用いて室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例7の磨耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きいほど、磨耗量が少なく耐磨耗性に優れることを示す。
Figure 0006206152
Figure 0006206152
Figure 0006206152
表2,3の通り、本発明の有機ケイ素化合物はヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐磨耗性を大幅に向上させることを示した。

Claims (11)

  1. 下式(1)
    (R1O)3Si−R3−Sn−R3−Si(OR13 (1)
    (式中、R1メチル基又はエチル基、R3メチレン基、エチレン基、又はトリメチレン基、nは平均値として2≦n≦の数を表す。)
    で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物と、下式(2)
    456N (2)
    〔式中、R4フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、又はエチルフェニル基、R5及びR6は下式で表されるいずれかの基を示す。
    *−CH 2 −OH、*−C 2 4 −OH、及び*−C 3 6 −OH(*は結合部位を示す。)〕
    で表されるアミン化合物とのエステル交換反応物である含硫黄有機ケイ素化合物の混合物
  2. 上式(2)で表されるアミン化合物が、N−フェニルジエタノールアミン、m−トリルジエタノールアミン、o−トリルジエタノールアミン、p−トリルジエタノールアミンから選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載の含硫黄有機ケイ素化合物の混合物
  3. 上式(2)で表されるアミン化合物の使用量が、上式(1)で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物100質量部に対して1〜200質量部であることを特徴とする請求項1又は2記載の含硫黄有機ケイ素化合物の混合物
  4. 下式(1)
    (R1O)3Si−R3−Sn−R3−Si(OR13 (1)
    (式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R3は炭素数1〜10のアルキレン基、nは平均値として2≦n≦6の数を表す。)
    で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物と、下式(2)
    456N (2)
    〔式中、R4は炭素数6〜12のアリール基、R5及びR6は下式(3)で表される基を示す。
    *−R7−OH (3)
    (式中、R7は炭素数1〜12のアルキレン基を示す。*は結合部位を示す。)〕
    で表されるアミン化合物を触媒存在下、エステル交換反応を行うことを特徴とする含硫黄有機ケイ素化合物の混合物の製造方法。
  5. 上式(2)で表されるアミン化合物が、N−フェニルジエタノールアミン、m−トリルジエタノールアミン、o−トリルジエタノールアミン、p−トリルジエタノールアミンから選ばれるものであることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
  6. 上式(2)で表されるアミン化合物の使用量が、上式(1)で表されるスルフィド基含有有機ケイ素化合物100質量部に対して1〜200質量部であることを特徴とする請求項4又は5記載の製造方法。
  7. 前記触媒が、酸触媒、アルカリ金属アルコラート、又は有機金属系触媒であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の含硫黄有機ケイ素化合物の混合物を含んでなるゴム用配合剤。
  9. 更に少なくとも1種の粉体を含有してなり、前記含硫黄有機ケイ素化合物の混合物(A)と少なくとも1種の粉体(B)の質量比が、(A)/(B)=70/30〜5/95の割合である請求項8記載のゴム用配合剤。
  10. 請求項8又は9記載のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物。
  11. 請求項10記載のゴム組成物を用いて形成したタイヤ。
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