しかしながら、従来の情報提示装置においては、ユーザの頭部を位置基準として表示面配置制御を行っていることから、ユーザの視界の一部もしくは全部が表示ユニットによって隠された状態で、表示ユニットが常に頭部の動きに同期した動きをすることになる。そのため、ユーザが主たる観察作業とは異なる作業のために基準の観察方向から視線を外してキーボードや作業書を見たい場合等に、表示ユニットが視界の妨げとなり、そのような作業に支障がでるという問題があった。
付言すれば、表示ユニットが光を透過し得る透過型の情報提示装置でも、何らかの必要で基準の観察方向から一時的に視線を外したユーザの注視領域内で、表示ユニットの一部が障害物となったり情報提示が邪魔になったりすることで、ユーザの視界が遮られてしまうという問題も生じる。
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたもので、観察者であるユーザの視線が基準の観察方向から外されたとき、ユーザの注視方向への視線が表示ユニットによって遮られるのを確実に防止するものであり、さらには、ユーザの視線が基準の観察方向に戻る際には、観察対象やそれに関連する提示情報を早い段階から視界内の適切な領域に提示できるようにすることを目的とする。
(1)本発明の請求項1に係る情報提示装置は、視覚情報を表示する表示面を有する表示ユニットと、前記表示ユニットを支持するとともに、観察者の頭部に着脱可能に装着される装着ユニットと、重力作用方向である鉛直軸を基準として前記装着ユニットの姿勢を検知するセンサユニットと、前記センサユニットの検知情報に基づいて前記表示ユニットの表示面を前記装着ユニットに対し前記観察者の正視領域となる第1配置領域と該第1配置領域から外れた第2配置領域とのうちいずれかに切り替え配置する配置領域切り替え手段とを備えたことを特徴とする。
この構成により、観察者であるユーザの視線が何らかの観察対象に向かって第1配置領域を正視しているときは、装着ユニットの前方に表示ユニットの表示面が位置していることになり、一方、ユーザが前記観察対象物から視線を外すように頭部姿勢を変化させると、それに応じて、表示面の配置領域を装着ユニットについて正視方向からユーザの視界を妨げない方向へと変化させることが可能となる。
(2)本発明の請求項2に係る情報提示装置は、前記センサユニットの検知情報と関連付けて前記装着ユニットの任意の基準姿勢を設定するとともに該装着ユニットの基準姿勢で前記第1配置領域を設定する基準設定手段を設けたことを特徴とする。
これにより、通常の観察方向がどのような頭部姿勢に対応したものであっても、その観察方向を基準として、表示面配置領域の適切な切り替えがなされることとなる。
(3)本発明の請求項3に係る情報提示装置は、前記装着ユニットが前記基準姿勢から前記鉛直軸に対し傾斜する方向に姿勢変化したとき、該傾斜による前記表示面の変位を抑制するよう、前記配置領域切り替え手段が、前記表示面の配置領域を前記第1配置領域から前記第2配置領域に切り替えることを特徴とする。
この構成により、観察者の視線が基準とした観察方向から外れるにつれて、表示面も観察者の注視領域から外れる方向に自然に移動することになる。
(4)本発明の情報提示装置においては、請求項4に記載のように、前記センサユニットが前記鉛直軸に対する前記装着ユニットの傾斜角を検知する重力加速度センサで構成されるのが好ましい。この場合、重力加速度センサにより観察者の観察方向の変化を正確に検知することができる。
(5)本発明の情報提示装置においては、請求項5に記載のように、前記センサユニットが2次元重力加速度センサであるのがより好ましい。2次元重力加速度センサとすることで、その検知精度がさらに向上することになる。
(6)本発明の請求項6に係る情報提示装置は、前記配置領域切り替え手段が、前記装着ユニットと前記表示ユニットの間に介在し、前記表示ユニットを前記装着ユニットに対し移動可能に支持するサポート部と、前記サポート部を介して前記表示面の配置領域を切り替える切り替え駆動部とを有することを特徴とする。
この装置では、装着ユニットに対する表示ユニットの位置調整機能を有することから、頭部への装着時における表示ユニットの位置調整機構としても前記サポート部や切り替え駆動部を利用することが容易になる。
(7)請求項6に係る情報提示装置においては、請求項7に記載のように、前記サポート部が、前記表示ユニットを支持する一端部および前記装着ユニットに回動可能に支持された他端部を有する回動部材で構成され、前記切り替え駆動部が、前記回動部材を回動させるサーボモータと、前記サーボモータの回動位置情報と前記センサユニットの検知情報とに基づいて前記サーボモータを駆動制御するモータコントローラとを有する構成としてもよい。
この場合、装着時の位置調整やサーボモータのオフセット量設定を行うことで、基準の観察方向を設定することができることから、余計な操作負担がなく、装置も簡素な構成でかつ小型・軽量にできることになる。
(8)本発明の請求項8に係る情報提示プログラムは、視覚情報を表示する表示面を有する表示ユニットと、前記表示ユニットを支持するとともに、観察者の頭部に着脱可能に装着される装着ユニットと、重力作用方向である鉛直軸を基準として前記装着ユニットの姿勢を検知するセンサユニットと、前記表示ユニットの表示面を前記装着ユニットに対し相対的に移動および停止させるアクチュエータとを備えた情報提示装置を制御するものであって、前記センサユニットの検知情報に基づいて前記アクチュエータを制御し、前記表示面の配置領域を前記装着ユニットに対し前記観察者の正視領域となる第1配置領域と該第1配置領域から外れた第2配置領域との間で切り替える切り替え制御機能を、コンピュータで実行可能に構成するものである。
このプログラムにより、既存の情報提示装置に搭載されるような小型のアクチュエータおよびコンピュータを用いて、上述のような所要の表示面配置切り替え機能を容易に達成できることとなる。
(9)上記のプログラムにおいては、請求項9に記載のように、前記センサユニットの検知情報と関連付けて前記装着ユニットの任意の基準姿勢を設定するとともに、該装着ユニットの基準姿勢で前記第1配置領域を設定する基準設定機能を、前記コンピュータで実行可能に構成するのが好ましい。
この場合、基準となる観察方向がどのような頭部姿勢に対応したものであっても、その観察方向を基準として表示面配置領域の適切な切り替えができる基準設定手段を簡素な構成で容易に実現できる。
(10)上記のプログラムにおいては、請求項10に記載のように、前記装着ユニットが前記基準姿勢から前記鉛直軸に対し傾斜する方向に姿勢変化したとき、該傾斜による前記表示面の変位を抑制するよう前記表示面の配置領域を切り替える機能を、前記コンピュータで実行可能に構成するのがよい。
これにより、コンピュータ制御を活用し、観察者の視線が基準とする観察方向から外れるにつれて表示面を観察者の注視領域から外れる方向に自然に移動させることができる。
なお、前記センサユニットは前記装着ユニットに支持されるものでも、単独で前記観察者の頭部又はその近傍に装着されるものでもよい。さらに、例えば観察者を支持する移動体の加速度を検出するなどして、前記センサユニットの姿勢検知精度の向上を図ることもできる。また、前記第2配置領域は、観察者の頭部姿勢変化に関係なく特定の観察方向に近い側の領域とすることができるし、単に観察者の頭部前面を開放するための待避領域とすることもでき、これらを併用し適宜選択する複数の配置領域とすることもできる。
本発明によれば、観察者であるユーザの視線が基準とする観察方向から外れたときには、装着ユニットに対する表示ユニットの配置領域を、ユーザの視界の妨げとならない配置領域側に切り替えるようにしたため、観察者であるユーザの視線が基準とする観察方向から外れたときには、ユーザの視界、特に注視領域が表示ユニットによって遮られるのを確実に防止することができる。
また、第2配置領域への表示面の待避的な配置切り替えにも拘わらず、ユーザの視線が基準とした観察方向に戻る降には、装着ユニットに対する表示面配置領域の切り換えと観察者の視線の戻りとが相俟って、表示面を第1配置領域に迅速に戻すことになり、観察対象に関連する提示情報をその観察対象への視線回復時に自然にかつ即座に適切な領域で提示することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る情報提示装置の概略構成図、図2はその頭部搭載状態を示す側面図、図3はその頭部搭載状態を示す上面図、図4はその制御系のブロック図、図5は表示ユニットの配置領域の切替えに関する回転角度とセンサユニット検知情報との関係を示すグラフ、図6はその制御プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
図1から図4において、11は視覚情報を表示する表示面11aを有する、例えば透過型の表示ユニットである。この表示ユニット11は、図2および図3に示すように、ユーザ(観察者)の頭部Hに着脱可能に装着される装着ユニット12に対し、サーボモータ14、アーム状の回動部材16および回動軸部材17を介して支持されており、ユーザ(観察者)の頭部前方側に配置される。また、表示ユニット11は、図示しない表示制御手段によって表示制御され、例えばユーザが行う作業の支援のために必要なマニュアル情報を表示面11a上に表示するようになっている。
なお、装着ユニット12は特に形状が限定されるものではなく、環状、略U字形状、ヘルメット状など公知の形態をとり得るし、可携性を有するものでも、開閉式のものでもよい。
センサユニット13は、重力作用方向である鉛直軸(図1中、上下方向の軸線)を基準として、前記鉛直軸に対する装着ユニット12の姿勢を傾斜角として検知する2次元重力加速度センサである。サーボモータ14は、回転角度範囲が例えば300度のDC(直流)サーボモータで構成されている。21は位置調整手段を兼ねた操作部である。
具体的には、センサユニット13は、直交した二軸について加速度を検知する二軸加速度センサ13a,13b(図4参照)からなり、各軸の加速度センサがそれぞれの水平感度軸回りで鉛直軸に対し傾くことにより、重力加速度成分gx,gyを検知できるものである。そして、前記二軸加速度センサの検知信号出力を、通常の運動(加速度)の検知にくらべて十分に長い周期で観察し、その観察結果に現れる前後方向と左右方向の傾斜に基づく重力成分の変化から、鉛直軸についての傾斜角φを計算する。このセンサユニット13の検知情報は、コントローラ15に取り込まれる。コントローラ15は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Reaad Only Memory)および入出力インターフェース回路等を含むマイクロコンピュータ構成のもので、図4に示す頭部傾斜計測部151、f(φ)選択部152、作動角計算部153、メモリ部154、初期値読み出し・書き込み部155およびモータ駆動部160を含んで構成されている。
頭部傾斜計測部151は、例えば、前後方向と左右方向の傾斜に基づく二軸加速度センサ13a,13bの出力から得られる重力加速度成分gx,gyに基づいて、鉛直軸に対する傾斜角φをこれらの関数(例えば、arctan(gy/gx))として計算する。
f(φ)選択部152は、後述する表示ユニット11の配置領域の切替えに関し、サーボモータ14の回転角度位置θmとセンサユニット検知情報φとの関係を規定する条件式f(φ)またはそれに相当するデータテーブルを有し、例えば図5(a)又は図5(b)に示すような条件の下で、表示ユニット11の配置領域切り替えに関連するモータ角度θの値を、第1配置領域の値θP1と第2配置領域の値θP2とのうちいずれかに選択する機能を有している。
作動角計算部153は、頭部傾斜計測部151からの鉛直軸に対する傾斜角の信号φと、f(φ)選択部152からの選択信号と、初期値読み出し・書き込み部155からの初期値情報等を基に、初期設定時のオフセット量を基準として、そこからサーボモータ14の目標とする回転角度位置までの作動角を計算する(詳細は後述する)。
メモリ部154は、f(φ)選択部152での演算に使用される条件式やデータを読み出し可能に記憶するとともに、初期値読み出し・書き込み部155からの初期値の設定情報を読み出し可能に記憶保持している。
また、モータ駆動部160は、詳細を図示しないが、サーボモータ14へのPWM(パルス幅変調)指令信号を生成するPWM指令信号生成回路、サーボアンプおよびモータドライバ回路等を含んでいる。
より具体的には、アクチュエータであるサーボモータ14には、もしくは、そのコントローラ15には、図示しないパルス信号発生器が内蔵されており、このパルス発生器からは、前記PWM指令信号の立ち上がりに同期して、オフセット量設定値に応じた所定パルス幅の基準パルス信号が所定周期(例えば20ms)毎に出力される。ここにいう所定パルス幅はサーボモータ14の回転の基準角度位置に対応するものであり、操作手段21への操作入力に応じてサーボモータ14をオッフセット調節することで、この基準パルス信号のデューティー比が変更できるようになっている。なお、図1ではコントローラ15にパルス発生器が内蔵され、サーボモータ14からはθmに一義的に対応するセンサ出力(θm)がなされる場合を図示しており、サーボモータ14には例えば回動角度位置θmに応じて変化する抵抗値を示すポテンショメータが内蔵されている。
また、コントローラ15内の作動角計算部153(マイクロコンピュータ)は、所定周期(例えば20ms)のPWM指令信号とオフセット量に対応する前記基準パルスとに基づき、両者のアクティブパルス幅の差に相当する偏差信号を所定周期毎に生成する。この偏差信号はモータ駆動部160のサーボアンプで増幅されてモータドライバに入力され、モータドライバからサーボモータ14に対して駆動パルス信号Cpが出力される。この駆動パルス信号Cpは、前記所定周期毎に“0”(例えば電圧0V)と“1”(例えば電圧5V)を繰り返すものである。また、コントローラ15は、駆動パルス信号Cpにおける所定周期内での“0”の区間と“1”の区間の時間的割合であるデューティー比Rを、前記偏差信号に応じて制御するようになっている。
また、モータ駆動部160のPWM指令信号生成回路は、前記所定周期毎に、センサユニット13からの検知信号φとサーボモータ14の現在の回動角度位置情報(θm)とに基づき、サーボモータ14の回動角度位置を後述する目標角度位置に近づけるよう、その目標角度位置と現在の回動角度位置との偏差に応じたデューティー比を持つPWM指令信号を生成する。
ここで、サーボモータ14の作動角度範囲が300度で、作動角0度のときのデューティー比をR0、作動名300度のときのデューティー比をR1とすると、作動角θaを得るためのデューティー比は、θa×(R1−R0)/300+R0で与えられる。
コントローラ15は、また、センサユニット13の検知情報に基づき、図1に実線で示すように、装着ユニット12が水平状態(鉛直軸に対する傾きゼロの状態)に近い場合には、表示ユニット11の表示面11aを、装着ユニット12に対して前記観察者の正視領域となる第1配置領域P1に配置するように前記PWM指令信号を生成する。さらに、図1に仮想線で示すように、ユーザの頭部姿勢変化によって、装着ユニット12が鉛直軸に対する傾斜角φの大きい領域にまで傾いた場合には、表示ユニット11の表示面11aを第1配置領域P1から外れた、例えば上側に外れた第2配置領域P2に配置するように、前記PWM指令信号を生成する。
すなわち、コントローラ15は、サーボモータ14および回動部材16、17と共に、センサユニット13の検知情報に基づいて、表示ユニット11の表示面11aを第1配置領域P1とこの第1配置領域P1から外れた第2配置領域P2とのうちいずれかに切り替え配置する配置領域切り替え手段20を構成している。
この配置領域切り替え手段20は、装着ユニット12が基準姿勢から鉛直軸に対し傾斜する方向に姿勢変化したとき、その傾斜による表示面11aの変位を抑制するように、表示面11aの配置領域を第1配置領域P1から第2配置領域P2に切り替える。
操作手段21は、ユーザの初期の操作入力によりサーボモータ14のオフセット量が指令されたとき、センサユニット13の検知情報と関連付けて、そのときの装着ユニット12の基準姿勢(ユーザが任意に選択し得る)を記憶設定するとともに、その装着ユニット12の基準姿勢で表示ユニット11の配置が第1配置領域P1となるようにサーボモータ14のオフセット量を設定する基準設定手段となっている。
なお、本装置は、図示しないバッテリー式の電源供給ユニットおよび電源スイッチを有しており、電源投入により動作可能となる。また、回動軸部材17の中心軸線はユーザの両眼球の回動中心を通る左右の直線にほぼ平行でかつ近接している。
次に、本実施の形態の情報提示装置の動作について説明する。
いま、観察者であるユーザの視線が図1、図2(a)の左方側(図外)に存在する何らかの観察対象に向かっているとする。このとき、ユーザは図1中に実線で示す表示ユニット11を正視している状態となる。すなわち、装着ユニット12に対して第1配置領域P1に配置された表示ユニット11の表示面11aがユーザの正視領域となっている。
ここで、ユーザが前記観察対象物から視線を外して、例えばマニュアルを読むため、図1に仮想線で示すように前方下方側に視線を下げたとする。このとき、表示ユニット11の配置領域が装着ユニット12に対し固定されていれば、装着ユニット12の姿勢変化に応じて表示面11aの位置は下がることになる。
しかし、本実施の形態では、装着ユニット12が図1に実線で示す基準姿勢から鉛直軸に対し傾斜する前方下方側に姿勢変化したとき、その傾斜による表示面11aの変位を抑制するように、配置領域切り替え手段20が表示面11aの配置領域を第1配置領域P1から図1に仮想線で示す第2配置領域P2に切り替える。したがって、観察者の視線が基準とした観察方向から外れるにつれて、表示面11aも観察者の注視領域から外れる方向に自然に移動することになり、視線を下げた観察者の正視領域における視界が表示面11aによって妨げられることがない。
このような動作は、コントローラ15の一部を構成するマイクロコンピュータに本発明のプログラムを実行可能に構成することで達成される。
図6は、本発明のプログラムの一実施の形態を示すフローチャートである。このプログラムは、上述のように表示面11aを装着ユニット12に対し相対的に移動および停止させるアクチュエータとしてのサーボモータ14を備えた情報提示装置を制御するプログラムであって、センサユニット13の検知情報に基づいてサーボモータ14を制御し、配置領域切り替え手段20による上述のような切り替え制御機能を、マイクロコンピュータで実行可能に構成するものである。
電源スイッチがONとなり、装置に電源が供給されると、図6に示す処理が開始される。まず、各種センサ情報の読み込みがされ(S11)、次いで、ユーザによる表示ユニット11の位置調整とこれによるサーボモータ14のオフセット量調節がなされたか、例えばオフセット量の設定ボタンが押されたかをチェックし(S12)、その調節・設定がなされたときのPWM指令信号のデューティー比(若しくはアクティブパルス幅)Rと、センサユニット13からの検知情報φiとを記憶し、さらに、そのときの装着ユニット12の鉛直軸に対する傾斜角θiを計算する(S13)。なお、図1に示す理想的な状態では装着ユニット12の中心軸船は完全に鉛直になっているので、このときの傾斜角は0度となる。
このようにして、オフセット調整済みとなった後は、センサユニット13からのセンサ情報φに基づいて、現在の装着ユニット12の姿勢が、鉛直軸に対する傾斜角θ(t)として計算される(S114)。
次いで、傾斜角θ(t)の大きさを、次式θi−α≦θ(t)≦θ+βを用いて判断する。αは例えば10度、βは例えば80度である。
θ(t)<θi−αの場合、表示ユニット11は装着ユニット12に対し図1の時計方向に少し回動したものとして、表示ユニット11の装着ユニット12に対する配置を位置P1に設定する(S16)。
一方、θ(t)>θi+βの場合、ユーザが視線を下げ、装着ユニット12が大きく下方に姿勢変化したと判断し、表示ユニット11の装着ユニット12に対する配置を位置P2に設定する(S17)。
さらに、θi−α≦θ(t)≦θ十βの場合、通常の作動範囲内にあると判断し、次いで、|θ(t)−θ(i)|≧γか否かをチェックする(S18)。ここで、γは例えば60度である。そして、基準姿勢からの傾斜角(|θ(t)−θ(i)|)がγを超えなければ、表示ユニット11の装着ユニット12に対する配置を位置P1に設定し(S16)、基準姿勢からの傾斜角がγを超える程度に装着ユニット12が大きく傾いた場合には、表示ユニット11の装着ユニット12に対する配置を位置P2に設定する(S17)。
このようにして、所定周期毎に目標を位置P1又は位置P2にすべく選択処理がされ、モータ駆動部160による駆動パルス信号が出力され(S19)、サーボモータ14が鉛直軸を基準として頭部姿勢に応じた表示面配置領域になるよう駆動制御されるが、動作モード設定部21bによって、このような自動の表示ユニット11の配置制御を行うモードから、このような制御をしない手動調整モードへの切り換えがなされると(S20)、コントローラ15は今回の処理を終了する。
このように、本実施の形態のプログラムでは、表示面11aの配置領域を装着ユニット12に対し観察者の正視領域となる第1配置領域P1とこの領域から外れた第2配置領域P2との間で切り替える切り替え制御機能を、コンピュータで実行可能に構成する。このプログラムにより、既存の情報提示装置に搭載されるような小型のアクチュエータおよびコンピュータを用いて、上述のような所要の表示面配置切り替え機能を容易に達成できる。
また、本プログラムにおいては、センサユニット13の検知情報と関連付けて装着ユニット12の任意の基準姿勢(θi)を設定するとともに、その装着ユニット12の基準姿勢で第1配置領域P1を設定する基準設定機能を、前記コンピュータで実行可能に構成している。したがって、基準となる観察方向がどのような頭部姿勢に対応したものであっても、その観察方向(例えば前方上側向きでもよい)を基準として表示面配置領域の適切な切り替えができる基準設定手段を簡素な構成で容易に実現できる。
さらに、装着ユニット12が基準姿勢から鉛直軸に対し傾斜する(交差角が変化する)方向に比較的大きく姿勢変化したとき、その傾斜による表示面11aの変位を抑制する配置領域切り替え機能を、前記コンピュータで実行可能に構成するが、このときの第2配置領域P2側への配置切り替えは、多段階又は無段階的になされるようにきめ細かなコンピュータ制御を実行することもできる。そのようにして、観察者の視線が基準とする観察方向から外れるにつれて、観察者の注視領域から外れる方向に表示面11aをスムーズに移動させることができる。
本実施の形態の情報提示装置では、また、上述例のセンサユニット13に2軸加速度センサからなる2次元重力加速度センサを採用しているので、観察者の観察方向の変化を正確に検知することができ、かつ、小型のセンサユニットを構成できる。
さらに、配置領域切り替え手段20が、装着ユニット12と表示ユニット11の間に介在し、表示ユニット11を装着ユニット12に対し移動可能に支持するサポート部としての回動部材16および回動軸部材17と、このサポート部16、17を介して表示面11aの配置領域を切り替える切り替え駆動部としてのサーボモータ14およびコントローラ15とを有するので、装着ユニット12に対する表示ユニット11の位置調整機能を有することになり、頭部への装着時における表示ユニット11の位置調整機能としてもこれらのサポート部や切り替え駆動部を利用することができる。
しかも、装着時の位置調整やサーボモータ14のオフセット量設定を行うことで、通常の観察方向を可変設定することができることから、余計な操作負担がなく、装置も簡素な構成でかつ小型・軽量にできる。
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る情報提示装置を模式的に示す側面図で、図7(a)および図7(b)の両分図は、頭部姿勢の相違による表示面配置領域の変化を示している。
なお、本実施の形態において、上述の実施の形態と同様の構成については上述の実施の形態と同一の符号を付して説明し、その構成の説明は割愛する。
図7に示すように、表示ユニット11は左右の回動部材16(片側のみ図示している)に一体的に連結されているが、サーボモータのような駆動手段はない。回動部材16の基端側は、軸部材37を介して装着ユニット12の支持フレーム部分に回動可能に支持され、さらにリンク部材31に一体的に連結されている。
装着ユニット12のフレーム部分には軸部材37と平行に所定間隔を隔てて軸部材38が設けられており、両軸部材37、38の軸間距離に相当する長さのリンク部材34がリンク部材31の上端部にリンク結合されている。
リンク部材34は、また、軸部材38を介してその軸央部で装着ユニット12に回動可能に支持されたリンク部材35の上端にもリンク結合しており、これらリンク部材31、34、35は装着ユニット12の支持フレーム部分および軸部材37、38と共に、リンク部材35とリンク部材31および表示ユニット11とが常に平行な姿勢を保つような平行リンク機構30が形成されている。
なお、リンク部材35の上端部に上下に離間する複数の結節用の孔を形成しておき、リンク部材34,35間の結節点位置を調整することで、リンク部材31、35を平行でなく、表示ユニット11をリンク部材35に対して傾斜させるようなリンク機構とすることもできる。
リンク部材35の下端部には錘部材39が取り付けられており、この錘部材39の自重により、リンク部材35は前後の回動方向については常時鉛直軸に近い姿勢を保つようになっている。
これらリンク部材35、軸部材38および錘部材39は、重力作用方向である鉛直軸を基準として装着ユニット12の姿勢を検知するセンサユニットとしての鉛直軸方向検知機構40を構成しており、この鉛直軸方向検知機構40は、センサユニットとしての検知情報に基づき、表示ユニット11の表示面11aを、装着ユニット12に対し前記観察者の正視領域となる第1配置領域P1とその第1配置領域P1から外れた第2配置領域P2とのうちいずれかに切り替え配置する配置領域切り替え手段としても機能する。
具体的には、鉛直軸方向検知機構40は、頭部姿勢の変化によって装着ユニツト12が基準姿勢から鉛直軸に対し傾斜する方向に姿勢変化したとき、その傾斜による表示面11aの変位を抑制するよう、表示面11aの配置領域を装着ユニット12に対する第1配置領域P1から第2配置領域P2に切り替える。
この実施の形態においても、図7(b)に示すように、観察者であるユーザの視線が基準とする観察方向から外れる程度の頭部姿勢変化があったときには、装着ユニット12に対する表示ユニット11の配置領域を、錘部材39の作用する重力を利用してユーザの視界の妨げとならない配置領域P2側に自然に切り替えているので、観察者であるユーザの視線が基準とする観察方向から外れたときには、ユーザの注視領域、例えば下方の作業マニュアルを注視する視線が表示ユニット11によって遮られるのを自然にかつ確実に防止することができる。
また、第2配置領域P2への表示面11aの待避的な配置切り替えにも拘わらず、図7(a)に示すようにユーザの視線が基準とした観察方向に戻る際には、錘部材39の重力に基づく装着ユニット12に対する表示面配置領域の切り換えと、観察者の視線の戻りとが相俟って、表示面11aを第1配置領域P1に迅速に戻すことができ、観察対象に関連する提示情報をその観察対象への視線回復時に自然にかつ即座に適切な領域で提示することができる。
なお、上述の各実施の形態は、単眼式の情報提示装置を例に説明したが、本発明が両眼式の装置にも適用できることはいうまでもない。また、上述の各実施の形態における表示面11aに限らず、本発明にいう表示面は、表示ユニットによる情報表示がその一部又は全部でなされる面であり、透過型でないものであってもよい。また、第2配置領域は、観察者の頭部の姿勢変化に関係なく基準の観察方向に近い側の領域とすることができるし、単に観察者の頭部前面を開放するための待避領域(基準の観察方向から離れる側も含む)とすることもでき、これらを併用し適宜選択する複数の配置領域とすることもできる。ここにいう待避領域は、情報提示をしない領域には限られない。
例えば、車やオートバイの運転中に視線を振って何らかの提示情報(例えばナビゲーション情報)を見たりしたいという場合、通常運転時には装着ユニットに対する表示面の配置領域が待避領域としての第2配置領域となり、第1配置領域は視線を振って見上げたりしたときにのみ装着ユニットに対する正視領域となり、必要な情報提示がなされる領域となる。
さらに、本発明においては、センサユニットは装着ユニットに直接又は間接的(表示ユニットの回動中心付近の他の部材)に支持されるもののほか、単独で観察者の頭部又はその近傍(肩や首など)に装着されるものでもよい。さらに、例えば観察者を支持する移動体の加速度を検出するなどして、加速度センサを用いた場合に重力成分との分離が必要となる加速度成分を明確にし、センサユニットの姿勢検知精度の向上を図ることもできる。