JP4334835B2 - 顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕微鏡、特に染色した試料を機能性の高いレーザー光源からの複数の波長の光により照明して、高い空間分解能を得る高性能かつ高機能の新しい光学顕微鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光学顕微鏡の技術は古く、種々のタイプの顕微鏡が開発されてきた。また、近年では、レーザー技術および電子画像技術をはじめとする周辺技術の進歩により、更に高機能の顕微鏡システムが開発されている。
【0003】
このような背景の中、例えば特開平8−184552号公報において、複数波長の光で試料を照明することにより発する二重共鳴吸収過程を用いて、得られる画像のコントラストの制御のみならず化学分析も可能にした高機能な顕微鏡が提案されている。
【0004】
この顕微鏡は、二重共鳴吸収を用いて特定の分子を選択し、特定の光学遷移に起因する吸収および蛍光を観測するものである。この原理について、図7〜図10を参照して説明する。図7は、試料を構成する分子の価電子軌道の電子構造を示すもので、先ず、図7に示す基底状態(S0状態)の分子がもつ価電子軌道の電子を波長λ1の光により励起して、図8に示す第1電子励起状態(S1状態)とする。次に、別の波長λ2の光により同様に励起して図9に示す第2電子励起状態(S2状態)とする。この励起状態により、分子は蛍光あるいは燐光を発光して、図10に示すように基底状態に戻る。
【0005】
二重共鳴吸収過程を用いた顕微鏡法では、図8の吸収過程や図10の蛍光や燐光の発光を用いて、吸収像や発光像を観察する。この顕微鏡法では、最初にレーザー光等により共鳴波長λ1の光で図8のように試料を構成する分子をS1状態に励起させるが、この際、単位体積内でのS1状態の分子数は、照射する光の強度が増加するに従って増加する。
【0006】
ここで、線吸収係数は、分子一個当りの吸収断面積と単位体積当たりの分子数との積で与えられるので、図9のような励起過程においては、続いて照射する共鳴波長λ2に対する線吸収係数は、最初に照射した波長λ1の光の強度に依存することになる。すなわち、波長λ2に対する線吸収係数は、波長λ1の光の強度で制御できることになる。このことは、波長λ1および波長λ2の2波長の光で試料を照射し、波長λ2による透過像を撮影すれば、透過像のコントラストは波長λ1の光で完全に制御できることを示している。
【0007】
また、図9の励起状態での蛍光または燐光による脱励起過程が可能である場合には、その発光強度はS1状態にある分子数に比例する。したがって、蛍光顕微鏡として利用する場合には画像コントラストの制御が可能となる。
【0008】
さらに、二重共鳴吸収過程を用いた顕微鏡法では、上記の画像コントラストの制御のみならず、化学分析も可能にする。すなわち、図7に示される最外殻価電子軌道は、各々の分子に固有なエネルギー準位を持つので、波長λ1は分子によって異なることになり、同時に波長λ2も分子固有のものとなる。
【0009】
ここで、従来の単一波長で照明する場合でも、ある程度特定の分子の吸収像あるいは蛍光像を観察することが可能であるが、一般にはいくつかの分子における吸収帯の波長領域は重複するので、試料の化学組成の正確な同定までは不可能である。
【0010】
これに対し、二重共鳴吸収過程を用いた顕微鏡法では、波長λ1および波長λ2の2波長により吸収あるいは発光する分子を限定するので、従来法よりも正確な試料の化学組成の同定が可能となる。また、価電子を励起する場合、分子軸に対して特定の電場ベクトルをもつ光のみが強く吸収されるので、波長λ1および波長λ2の偏光方向を決めて吸収または蛍光像を撮影すれば、同じ分子でも配向方向の同定まで可能となる。
【0011】
また、最近では、例えば特開2001−100102号公報において、二重共鳴吸収過程を用いて回折限界を越える高い空間分解能をもつ蛍光顕微鏡も提案されている。
【0012】
図11は、分子における二重共鳴吸収過程の概念図で、基底状態S0の分子が、波長λ1の光で第1電子励起状態であるS1に励起され、更に波長λ2の光で第2電子励起状態であるS2に励起されている様子を示している。なお、図11はある種の分子のS2からの蛍光が極めて弱いことを示している。
【0013】
図11に示すような光学的性質を持つ分子の場合には、極めて興味深い現象が起きる。図12は、図11と同じく二重共鳴吸収過程の概念図で、横軸のX軸は空間的距離の広がりを表わし、波長λ2の光を照射した空間領域A1と波長λ2の光が照射されない空間領域A0とを示している。
【0014】
図12において、空間領域A0では波長λ1の光の励起によりS1状態の分子が多数生成され、その際に空間領域A0からは波長λ3で発光する蛍光が見られる。しかし、空間領域A1では、波長λ2の光を照射したため、S1状態の分子のほとんどが即座に高位のS2状態に励起されて、S1状態の分子は存在しなくなる。このような現象は、幾つかの分子により確認されている。これにより、空間領域A1では、波長λ3の蛍光は完全になくなり、しかもS2状態からの蛍光はもともとないので、空間領域A1では蛍光自体が完全に抑制され(蛍光抑制効果)、空間領域A0からのみ蛍光が発することになる。
【0015】
このことは、顕微鏡の応用分野から考察すると、極めて重要な意味を持っている。すなわち、従来の走査型レーザー顕微鏡等では、レーザー光を集光レンズによりマイクロビームに集光して観察試料上を走査するが、その際のマイクロビームのサイズは、集光レンズの開口数と波長とで決まる回折限界となり、原理的にそれ以上の空間分解能は期待できない。
【0016】
ところが、図12の場合には、波長λ1と波長λ2との2種類の光を空間的に上手く重ね合わせて、波長λ2の光の照射により蛍光領域を抑制することで、例えば波長λ1の光の照射領域に着目すると、蛍光領域を集光レンズの開口数と波長とで決まる回折限界よりも狭くでき、実質的に空間分解能を向上させることが可能となる。したがって、この原理を利用することで、回折限界を越える二重共鳴吸収過程を用いた超解像顕微鏡、例えば蛍光顕微鏡を実現することが可能となる。
【0017】
さらに、顕微鏡の超解像性を高めるため、例えば特開平11−95120号公報において、超解像顕微鏡の機能を十分に活かすための蛍光ラベラー分子や、利用する波長λ1および波長λ2の2つの光の試料への照射タイミング等が開示されている。この先行技術では、少なくとも基底状態を含む3つの量子状態を有し、第1電子励起状態を除く高位のエネルギー状態から基底状態へ脱励起するときの遷移が蛍光による緩和過程よりも熱緩和過程が支配的である各種分子を染色する蛍光ラベラー分子と、生化学的な染色技術を施した生体分子とを化学結合させた試料を、染色する分子を励起する波長λ1の光でS1状態に励起し、続いて波長λ2の光により即座に高位の量子準位に励起することで、S1状態からの蛍光を抑制するようにしている。このように分子の光学的性質を利用して、空間的な蛍光領域を人為的に抑制することで、空間分解能の向上を図ることができる。
【0018】
このような分子の光学的性質は、量子化学的な立場から説明することができる。すなわち、一般に、分子はそれを構成する各原子がσまたはπ結合によって結ばれている。言い換えると、分子の分子軌道は、σ分子軌道またはπ分子軌道を有していて、これらの分子軌道に存在する電子が各原子を結合する重要な役割を担っている。そのなかでも、σ分子軌道の電子は各原子を強く結合し、分子の骨格である分子内の原子間距離を決めている。これに対して、π分子軌道の電子は各原子の結合にほとんど寄与しないで、むしろ分子全体に極めて弱い力で束縛されている。
【0019】
多くの場合、σ分子軌道にいる電子を光で励起すると、分子の原子間隔が大きく変化し、分子の解離を含む大きな構造変化が起こる。その結果、原子の運動エネルギーや構造変化のために、光が分子に与えたエネルギーのほとんどが熱エネルギーに変化する。したがって、励起エネルギーは蛍光という光の形態では消費されない。また、分子の構造変化は極めて高速(ピコ秒より短い)に起こるので、その過程で仮に蛍光が起きてもその寿命が極めて短い。
【0020】
これに対し、π分子軌道の電子は、励起しても分子の構造自体はほとんど変化せず、高位の量子的な離散準位に長時間とどまり、ナノ秒オーダで蛍光を放出して脱励起する性質を有している。
【0021】
量子化学によれば、分子がπ分子軌道をもつことと、二重結合をもつこととは同等であり、用いる蛍光ラベラー分子には、二重結合を豊富にもつ分子を選定することが必要条件となる。このことは、二重結合をもつ分子でもベンゼンやピラジン等の6員環分子において、S2励起状態からの蛍光が極めて弱いことが確かめられている(例えば、M.Fujii et.al.Chem.Phys.Lett.171(1990)341)。
【0022】
したがって、ベンゼンやピラジン等の6員環分子を含む分子を蛍光ラベラー分子として選定すれば、S1状態からの蛍光寿命が長く、しかも光励起によりS1状態からS2状態に励起することで、分子からの蛍光を容易に抑制できるので、超解像性を効果的に利用することができる。すなわち、これら蛍光ラベラー分子により染色して観察を行なえば、高空間分解能で試料の蛍光像を観察することができるのみならず、その分子の側鎖の化学基を調整することにより、生体試料の特定の化学組織のみを選択的に染色できるので、試料の詳細な化学組成までも分析可能となる。
【0023】
また、一般に、二重共鳴吸収過程は2つ光の波長や偏光状態等が特定の条件を満たすときにのみ起こるので、これを用いることで分子の構造を非常に詳細に知ることができる。すなわち、光の偏光方向と分子の配向方向とは強い相関関係があり、2つ波長の光のそれそれの偏光方向と分子の配向方向とが特定の角度をなすとき、二重共鳴吸収過程が強く起こる。したがって、2つ波長の光を試料に同時に照射して、それぞれの光りの偏光方向を回転することにより、蛍光の消失の程度が変化するので、その様子から観測しようとする組織の空間配向の情報も得ることができる。このことは、2つ光の波長を調整することでも可能である。
【0024】
以上のように、上記の特開平11−95120号公報記載の技術によると、超解像性以外にも、高い分析能力を有していることがわかる。さらに、波長λ1と波長λ2との2つの光の照射タイミングを工夫することで、S/Nを改善し、かつ蛍光抑制を効果的に起こすことができ、超解像性をより効果的に発現することが可能となる。
【0025】
このような超解像顕微鏡法の具体例として、例えば特開2001−100102号公報には、蛍光ラベラー分子をS0状態からS1状態へ励起する波長λ1の光(特にレーザー光)をポンプ光とし、S1状態からS2状態へ励起する波長λ2の光をイレース光として、図13に示すように、光源81からポンプ光を、光源82からイレース光をそれぞれ放射させ、ポンプ光はダイクロイックミラー83で反射させた後、輪帯光学系84により試料85上に集光させ、イレース光は位相板86で中空ビーム化した後、ダイクロイックミラー83を透過させてポンプ光と空間的に重ね合わせて輪帯光学系84により試料85上に集光させるようにしたものが提案されている。
【0026】
この顕微鏡によると、イレース光の強度がゼロとなる光軸近傍以外の蛍光は抑制されるので、結果的にポンプ光の広がりより狭い領域(Δ<0.61・λ1/NA、NAは輪帯光学系84の開口数)に存在する蛍光ラベラー分子のみが観察されることになり、結果的に超解像性が発現することになる。なお、イレース光を中空ビーム化する位相板86は、例えば、図14に示すように、光軸に対して点対称な位置で位相差πを与えるように構成したものや、液晶面を用いた液晶空間変調器を用いることができる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来提案されている超解像蛍光顕微鏡にあっては、以下に説明するような問題がある。
【0028】
以下、超解像蛍光顕微鏡を図15に示すように構成した場合を例にとって説明する。図15に示す超解像蛍光顕微鏡は、上記の特開2001−100102号公報に開示されているもので、ローダミン6Gで染色された試料100を観察するものである。この顕微鏡では、モードロック型のNd:YAGレーザー101から出射される波長1064nmのレーザー光をベータ硼酸バリウム(BBO)結晶からなる波長変換素子102により2倍高調波の波長532nmのレーザー光に波長変換し、このレーザー光をハーフミラー103で透過光と反射光との二光路に分岐して、その透過光をポンプ光としてダイクロイックミラー104および105を順次透過させた後、対物レンズ106により二次元移動ステージ107上に載置された試料100に集光させるようにしている。
【0029】
また、ハーフミラー103での反射光は、反射ミラー108で反射させた後、Ba(NO3)2 結晶からなるラマンシフター109で波長599nmのレーザー光に波長変換し、このレーザー光をイレース光として反射ミラー110で反射させた後、位相板111により中空ビームに整形し、さらにダイクロイックミラー104によりポンプ光と同軸上に揃えて、ダイクロイックミラー105を経て対物レンズ106により試料100に集光させるようにしている。
【0030】
一方、試料100からの蛍光は、対物レンズ106を経てダイクロイックミラー105で反射させた後、蛍光集光レンズ112、シャープカットフィルター113およびピンホール114を経てフォトマル115で受光するようになっている。なお、試料100に投射されるポンプ光およびイレース光は、フォトマル116で受光され、その出力に基づいてNd:YAGレーザー101から出射されるレーザー光の強度が一定となるように制御されるようになっている。
【0031】
かかる構成の超解像蛍光顕微鏡の場合、以下のような問題が生じる。
1)光路分割用のハーフミラー103や光路合成用のダイクロイックミラー104を用いるため、光量のロス等が発生する。
2)ポンプ光とイレース光との光路長が異なるため、Nd:YAGレーザー101をパルス発光させた場合には、試料面上における光の照射タイミングがずれるので、その補償光学系が必要となる。
3)ダイクロイックミラー104で、ポンプ光とイレース光とを同軸上に揃えるには、実際にはそれぞれの光に対して独立のあおり機構が必要になると共に、その調整には熟練した技術を要することになる。
4)ポンプ光とイレース光とが独立に位置ずれを起こした場合には、試料面で所望の空間的な重なりが実現せず、蛍光抑制が理想条件より大きくずれて、空間分解能の劣化や蛍光強度の揺らぎが大きくなる。
【0032】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、ポンプ光とイレース光とを光路分岐することなく、一貫して同じ光軸上を進行させて試料面まで到達させることにより、光の利用効率に優れ、しかも簡単な光学系の構成で観察分解能に優れた顕微鏡を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1に係る発明は、少なくとも基底状態を含む3つの電子状態を有する分子を含む試料を観察する顕微鏡であって、
レーザー光源と、
このレーザー光源から出射したレーザー光の基本波の一部を、同軸上で2倍波に変換する波長変換素子と、
この波長変換素子から出射した上記2倍波はビーム整形することなく出射させ、上記基本波はビーム中央部の強度が周辺部よりも弱くなるように位相変調して出射する位相変調素子と、
この位相変調素子から出射した上記基本波および2倍波を観察試料に集光する集光光学系と、
上記観察試料からからの発光を検出する検出光学系と、
を有し、上記2倍波により、上記観察試料内の上記分子を基底状態から第1電子励起状態に励起し、上記基本波により第1電子励起状態から他の電子状態へ遷移させるよう構成したことを特徴とするものである。
【0034】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の顕微鏡において、上記レーザー光源は、Nd:YAGレーザーであることを特徴とするものである。
【0035】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の顕微鏡において、上記波長変換素子は、非線形光学素子からなることを特徴とするものである。
【0036】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の顕微鏡において、上記非線形光学素子は、ベータ硼酸バリウムの結晶からなることを特徴とするものである。
【0037】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の顕微鏡において、上記位相変調素子は、空間的に屈折率分布を有する位相板からなることを特徴とするものである。
【0038】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の顕微鏡において、上記位相板は、入射するビームの光軸対称に90度毎にλ/4(λは基本波の波長)の位相差を与えるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0039】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載の顕微鏡において、上記位相板は、入射するビームの光軸を中心とする円形領域で位相変調するよう構成されていることを特徴とする。
【0040】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の顕微鏡において、上記円形領域は、上記基本波に対する位相変調度合いがπであることを特徴とするものである。
【0041】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の顕微鏡において、上記円形領域は基板上に形成された蒸着膜を有しており、入射するレーザー光のビーム径に対する上記円形領域の半径比をρ、上記円形領域におけるレーザー光の透過率をB、上記円形領域以外の上記基板におけるレーザー光の透過率をAとするとき、A−2Bρ2=0、を満たすことを特徴とするものである。
【0042】
請求項10に係る発明は、請求項1〜4に記載の顕微鏡において、上記位相変調素子は、液晶空間光変調器からなることを特徴とするものである。
【0043】
先ず、本発明の原理について図1を参照して説明する。図1は蛍光抑制効果の基礎をなす2重共鳴吸収過程を説明するための振動励起準位を含む分子のエネルギーダイヤグラムを示すもので、分子の基底状態(S0)、蛍光発光に強く関与する第1電子励起状態(S1)および2重共鳴吸収過程に強く関与する第2電子励起状態(S2)が模式的に描かれている。
【0044】
一般に、ベンゼン環を含むような多原子分子では、無数の振動励起状態(v1,v2,・・・,vn)が存在し、しかも各電子励起状態と量子的に強く結合している。一方、基底状態(S0)と第1電子励起状態(S1)とのエネルギー間隔は一般に大きく、振動励起状態(v1,v2,・・・,vn)は比較的広いエネルギー間隔をもち、いわゆる「まばら」に存在する。これに対し、第1電子励起状態よりも高い電子励起状態間のエネルギー間隔は極めて接近している。その結果、振動励起状態(v′1,v′2,・・・,v′n)は、この接近した電子励起状態間のエネルギー領域に極めて「密」に存在し、あたかも連続的なプロードな量子状態を形成する。しかも、量子化学の理論によれば、電子励起状態自身もその波動関数が互いに混合するため、その傾向がますます強まる。
【0045】
すなわち、第1電子励起状態(S1)よりも高いエネルギーをもつ振動励起準位は、第2電子励起状態(S2)とも確率的にカップリングするので、もしこの振動励起準位でイレース光によりS1状態の分子を励起すれば、その確率で第2電子励起状態(S2)の分子が生成されので、原理的には2重共鳴吸収過程が可能となる。また、この振動励起準位に分子を励起するとS1状態に戻らず、蛍光を発することなく基底状態(S0)に直接脱励起することもある。
【0046】
この状況を、2重共鳴吸収過程を利用する観点から考察すると、イレース光の光子エネルギー、言い換えると波長の選定条件は、実質上、極めて緩くなる。特に、超解像顕微鏡法の基礎をなす蛍光抑制効果を誘起するためには、基底状態(S0)から第1電子励起状態(S1)に遷移しても蛍光を発光することができないような小さい光子エネルギーのイレース光を用いればよい、と言うことを意味する。そして、そのような条件の一つとして、イレース光子エネルギーがポンプ光のそれの半分となる場合が存在する。波長換算すると、イレース光の波長がポンプ光のそれの倍となる条件である。例えば、ローダミン系の分子では、ポンプ光が波長500nm近傍、イレース光が波長1000nm前後、という条件で蛍光抑制効果を誘起できる。
【0047】
超解像効果を発揮するためには、イレース光のビーム形状整形が不可欠であるが、上記のようなポンプ光とイレース光との波長選定は、ビーム形状整形作業の際に極めて魅力的な条件を提供する。すなわち、超解像顕微鏡おけるイレース光のビーム整形は、該ビームを位相変調するのが一般であり、例えば上記の特開2001−100102号公報には、イレース光の光路に光軸面において光軸に対して対称に4分割した位相板を挿入してイレースを空間変調することにより、イレース光を理想的な中空ビームに整形することが開示されている。また、図14に示したような光軸に関して位相が2π周回するような位相差をイレース光に与える位相板の例もある。これらの位相板の機能を一言で言えば、集光したときに光軸対称のビーム面を通過する光の位相が反転するために、言い換えるとπずれているために、ビーム中央で電場強度がゼロになると言うことである。
【0048】
ここで、上述したように、もし、イレース光の波長をポンプ光の倍に設定して、空間位相変調によるイレース光のビーム整形を行なうと、非常に興味深い現象が期待できる。すなわち、図14で示したような位相板をイレース光波長に対して設計すると、当然、イレース光は集光すると光軸上で電場がキャンセルされ、中空状のビームとなる。このような位相板は、具体的には、ガラス基板に厚みコントロールした蒸着膜を形成したり、ガラス基板を直接エッチングしたりして作製することができる。
【0049】
ところで、イレース光に対して最適化された位相板は、ビームプロファイルに対してポンプ光には如何なる影響も与えない。なぜなら、近赤外・可視光領域ではガラス基板をはじめとする多くの物質は屈折率がほぼ一定であるからである。例えば、BK7では屈折率がほぼ1.5であり、数%程度しか変化しない。このため、ポンプ光は位相板を通過しても、光軸に対して対称位置を通る光は位相がイレース光と比較して2倍の2πの変化を与えることになり、結局、この光を集光しても電場はキャンセルされず、位相板通過する前の光を集光した場合と同様のガウシアン関数タイプの光軸中央で強度極大を持つ、見慣れたパターンが得られることになる。
【0050】
一方、超解像顕微鏡の光源としては、多くの場合、レーザー光源が用いられている。また、レーザー光の波長変換には、一般に非線形光学結晶が用いられており、この結晶にレーザー光(基本波)を通すことにより、その一部の光を非線形光学効果により波長が半分の光(2倍波)に変換するようにしている。この場合、結晶からは入射レーザー光と波長変換された光とが同軸上に出射されるので、通常はダイクロイックミラー等で波長分離し、単色化して利用される。このような非線形光学結晶としてはベータ硼酸バリウム(BBO)が有名であり、代表的な固体レーザーであるNd:YAGレーザー等の波長変換素子として多用されている。
【0051】
ここで、上述した位相板を基本波に対して最適設計して、基本波と2倍波とを同軸で通過させると、2倍波は形状が変化せずレーザー光特有のガウシアンビームのままであるが、基本波は中空形状のビームとなる。したがって、非線形光学結晶から同軸上に出射される基本波および2倍波を、それぞれイレース光およびポンプ光として利用して位相板に入射させるようにすれば、イレース光とポンプ光とを同軸上に重ね合わせる光学素子が不要となり、光学系を極めて簡単に構成することが可能となる。しかも、イレース光およびポンプ光は同じダイバージェンスで発光しているので、同じ顕微鏡対物レンズで試料上に集光する際も、ポンプ光用およびイレース光用の独立したダイバージェンス調整レンズが不要となる。さらに、ポンプ光およびイレース光は独立して位置ずれすることがないので、観察分解能の低下防止にも寄与することができる。これにより、上述した従来の超解像蛍光顕微鏡における問題を完全に解決することが可能となる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による顕微鏡の実施の形態について、図2〜図6を参照して説明する。
【0053】
図2〜図5は第1実施の形態を示すもので、図2は顕微鏡の光学系の構成を示す図であり、図3〜5は図2の構成の顕微鏡で使用可能な位相板の三つの変形例を示す図である。本実施の形態の顕微鏡は、イレース光を中空ビーム化して超解像性を発現させて空間分解能を向上させたレーザー走査型の超解像蛍光顕微鏡で、ローダミン6Gで染色された生体試料を観察するものである。
【0054】
ここで、ローダミン6Gは、530nmの励起波長帯域で基底状態(S0)から第1電子励起状態(S1)への励起による吸収が最大となる。また、第1電子励起状態(S1)から、よりエネルギー的に高い高位の電子励起状態に励起できる吸収帯が、波長600〜650nmの領域に存在するが、波長1000nm前後の近赤外領域にも上述したように振動励起準位が存在する。
【0055】
そこで、本実施の形態では、ポンプ光およびイレース光発生用のレーザー光源としてレーザーダイオード(LD)励起型のモードロックNd:YAGレーザー1を用い、その基本波(波長1064nm)をイレース光として、2倍波(波長532nm)をポンプ光として用いる。なお、LD励起型のモードロックNd:YAGレーザー1は、レーザー共振器の設計パラメータの調整により、MHzオーダーの繰り返し周波数で、ピコ秒のレーザーパルスを発振することができる。例えば、スイス:Time-Bandwidth社製のGE−100シリーズは、標準仕様で、100MHzの繰り返し周波数において、パルス幅:6psecのパルス光を平均出力50mWで発振することができる。これは、1パルスの持つエネルギーが、500pJに対応する。また、共振器を設計変更することで、繰り返し周波数を、25MHz〜1GHzの間で調整することができる。
【0056】
図2において、LD励起型のモードロックNd:YAGレーザー1からのレーザー光は、BBO結晶の非線形光学素子からなる波長変換素子2に入射させて、同軸上で基本波であるイレース光と2倍波であるポンプ光とを発生させ、これらの光をシャープカットフィルタ3を経て位相変調素子である位相板4に入射させる。
【0057】
位相板4は、イレース光に対して、図14に示したように光軸に対して点対称な位置で位相差πを与えるように最適化して構成し、これによりイレース光を中空ビーム化する。なお、ポンプ光については位相板4を通過する際に光軸に対して点対称な位置で位相が2π変わるので、基本的には位相板4で空間変調されず、ビームプロファイルも変化しない。
【0058】
位相板4を通過したポンプ光およびイレース光は、キューベット型のハーフミラーからなるビームセパレーター5を透過させた後、互いに直交する軸を中心に揺動可能な2枚のガルバノ揺動ミラー6,7を有するガルバノビームスキャナーを経て、対物レンズ8によりローダミン6Gで染色された例えば生体試料9の表面に集光させ、その集光点をガルバノビームスキャナーによりビデオレートに同期して移動させて試料面上を2次元走査する。なお、図2では、図面を簡略化するために、ガルバノ揺動ミラー6,7を互いに平行な軸を中心に揺動するように示している。
【0059】
一方、ポンプ光およびイレース光の照射により試料9から発する蛍光は、対物レンズ8によりコリメートしたのち、入射光路とは逆の経路を辿って、ガルバノビームスキャナーを経てビームセパレーター5に入射させ、該ビームセパレーター5で反射される蛍光を投影レンズ10によりピンホール11に集光させる。ピンホール11は、試料9の蛍光発光点に対して共焦点位置に配置し、このピンホール11を透過した蛍光を、ポンプ光カットノッチフィルター12およびイレース光カットノッチフィルター13を透過させて、それぞれポンプ光およびイレース光を除去した後、光電子増倍管14で受光して蛍光出力信号を得る。ここで、投影レンズ10、ピンホール11、ポンプ光カットノッチフィルター12、イレース光カットノッチフィルター13および光電子増倍管14は、検出光学系を構成する。
【0060】
光電子増倍管14から得られる蛍光出力信号は、パルスカウンティング法により計数し、その計数値を図示しないパーソナルコンピュータのフレームメモリに格納して、試料9の蛍光2次元画像をCRT等のモニタにリアルタイムで表示する。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、Nd:YAGレーザー1からのレーザー光を波長変換素子2に入射させて、同軸上で基本波と2倍波とを得、基本波をイレース光として用い、2倍波をポンプ光として用いるようにしたので、上述した従来の超解像蛍光顕微鏡における問題を完全に解決でき、光の利用効率に優れ、しかも簡単な光学系の構成で観察分解能に優れた超解像蛍光顕微鏡を実現することができる。
【0062】
図3は、図2に示した構成の顕微鏡で使用可能な位相板の第1変形例を示すもので、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図である。この位相板21は蒸着技術で作製したもので、レーザービーム面すなわち瞳面の光軸を中心に90度毎にλ/4(λは基本波)の位相差を与えるようにしたものである。すなわち、瞳面を光軸を中心に90度毎に4つの領域22−1〜22−4に分割し、イレース光波長に対して光軸対称領域で位相差πを与えるように、領域22−2にはλ/4の蒸着膜を形成し、領域22−3には2λ/4の蒸着膜を形成し、領域22−4には3λ/4の蒸着膜を形成したものである。
【0063】
かかる位相板21を通してイレース光を顕微鏡対物レンズにより試料面に集光すると、光軸中央で電場強度が相殺され、中央で電場強度がゼロとなるドーナツツ状の疑似ベッセルビームを得ることができる。これは、イレース光の形状として優れた資質を有する。
【0064】
具体的には、Nd:YAGレーザーの基本波である波長1064nmのレーザー光をイレース光とする場合には、BK7のガラス基板23上にフッ化マグネシウムを、領域22−2では厚さ350nmに、領域22−3では厚さ700nmに、領域22−4では厚さ1050nmにそれぞれ蒸着する。このようにすれば、各領域で350nmの厚み差が付けられているので、イレース光に対してλ/4ずつの位相差を与えることができる。また、この位相板21に半分の波長532nmである2倍波を通過させると、この波長領域では屈折率が全く変化しないので、光軸対称位置を通る光は、丁度、 1波長分変化し、ビーム波面の位相分布は全く変化しない。
【0065】
この位相板21は、ガラス基板23を4つの領域22−1〜22−4に分割し、その3つの領域にフッ化マグネシウムをそれぞれ所望の厚さ蒸着して作製するので、その作製に用いるマスクの製造およびマスクの位置合わせが簡単にでき、位相板21を容易かつ安価に作製することができる。
【0066】
図4は、図2に示した構成の顕微鏡で使用可能な位相板の第2変形例を示すもので、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図である。この位相板31は、図3に示した位相板21と同様に蒸着技術で作製したもので、レーザー光の断面中央の円形領域32に、光軸対称位置で位相差πを与えるように蒸着膜を形成したものである。
【0067】
具体的には、Nd:YAGレーザーの基本波である波長1064nmのレーザー光をイレース光とする場合には、BK7のガラス基板33上の領域32上にフッ化マグネシウムを厚さ2λ/4(700nm)蒸着する。この位相板31を用いて、領域32よりも大きい径の円形のレーザー光を入射させれば、領域32を透過するレーザー光は空間変調されるので、この位相板31を透過したレーザー光を対物レンズにより試料面に集光させれば、やはり光軸中央で電場強度が相殺されてゼロとなるドーナツ状のイレース光を得ることができる。この位相板31は、形状が単純で、簡単かつ安価に製作でき、極めて実用的である。
【0068】
だだし、この場合、ビーム中央で完全に電場強度をゼロにするためには、波動光学の理論から、下記の定量的な条件が要請される。すなわち、フーリエ光学理論(例えば、矢田貝豊彦著:現代人の物理「光とフーリエ変換」朝倉書店)によると、上記の位相板31を用いた場合の焦点面(x,y)上での集光パターンI(x,y)は、下記の(1)式で与えられる。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、NAは対物レンズの開口数、λはレーザー光の波長、ρはレーザー光のビーム径に対する領域32の半径比、Bは領域32のレーザー光の透過率、Aは領域32以外の基板33のレーザー光の透過率、J1(x,y)はベッセルの1次関数である。
【0071】
上記(1)式によると、光軸中心(0,0)で電場強度がゼロとなる条件は、A−2Bρ2=0、となる。したがって、例えば位相板の透過率が全領域で100%(A=B=1)の場合には、ρ=0.707となる。この場合には、対物レンズの瞳径と位相板31の領域32の径との比が、0.707となるように光学系を構成すればよい。
【0072】
図5は、図2に示した構成の顕微鏡で使用可能な位相板の第3変形例を示す斜視図である。この位相板41は、ガラス基板を化学エッチングにより、入射するビームの光軸を中心に90度毎に4つの領域42−1〜42−4に分割して、イレース光波長に対して光軸対称領域で位相差πを与えるように、領域42−1と領域42−2との間、領域42−2と領域42−3との間、および領域42−3と領域42−4との間で、それぞれλ/4の段差を形成したもので、その作用は図3に示した位相板21と同様である。具体的には、Nd:YAGレーザーの基本波である波長1064nmのレーザー光をイレース光とする場合には、BK7のガラス基板43に上記領域間のλ/4の段差として325.5nmの段差を形成する。この位相板41は、ガラス基板等を直接、化学エッチングして作製できるので、簡単かつ安価にできる。
【0073】
図6は、本発明による顕微鏡の第2実施の形態における光学系の構成を示す図である。この顕微鏡は、図2に示した顕微鏡において、位相変調素子として位相板4に代えて液晶空間光変調器51を用いてイレース光をビーム整形するようにしたものである。このため、本実施の形態では、シャープカットフィルタ3を経て同軸上で出射されるイレース光とポンプ光とをハーフミラー52で反射させて液晶空間光変調器51に入射させ、ここで回折させてイレース光をビーム整形した後、ハーフミラー52および反射ミラー53を経てビームセパレーター5に入射させる。その他の構成は、図2と同様であるので、図2と同一素子には同一参照番号を付して説明を省略する。
【0074】
液晶空間光変調器51は、イレース光の波長に対して空間変調するように、その液晶面の屈折率分布をプログラミングする。このようにすれば、イレース光のみを中空ビームに整形し、その2倍波のポンプ光に対しては回折面において2倍の位相変調すなわち2πの位相差を与えてビーム形状を変化させないようにすることができる。したがって、本実施の形態においても第1実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、イレース光をビーム整形する位相変調素子は、上述した位相板や液晶空間光変調器に限らず、他の公知の素子を使用することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、レーザー光源からのレーザー光を波長変換素子に入射させて同軸上で基本波と2倍波とを得、これらの光を位相変調素子に入射させて、2倍波はビーム整形することなく出射させ、基本波はビーム中央部の強度が周辺部よりも弱くなるように位相変調して出射させ、この位相変調素子から出射される基本波をイレース光とし、2倍波をポンプ光として集光光学系により観察試料に集光させて、ポンプ光により観察試料内の分子を基底状態から第1電子励起状態に励起し、イレース光により第1電子励起状態から他の電子状態へ遷移させて、観察試料からからの発光を検出光学系で検出するようにしたので、上述した従来の超解像顕微鏡における種々の問題を解決でき、光の利用効率に優れ、しかも簡単な光学系の構成で観察分解能に優れた超解像顕微鏡を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理を説明するための図である。
【図2】 本発明の第1実施の形態における顕微鏡の光学系の構成を示す図である。
【図3】 図2に示す顕微鏡に使用可能な位相板の第1変形例を示す正面図および平面図である。
【図4】 同じく、位相板の第2変形例を示す正面図および平面図である。
【図5】 同じく、位相板の第3変形例を示す斜視図である。
【図6】 本発明の第2実施の形態における顕微鏡の光学系の構成を示す図である。
【図7】 試料を構成する分子の価電子軌道の電子構造を示す概念図である。
【図8】 図7の分子の第1電子励起状態を示す概念図である。
【図9】 同じく、第2電子励起状態を示す概念図である。
【図10】 同じく、第2電子励起状態から基底状態に戻る状態を示す概念図である。
【図11】 分子における二重共鳴吸収過程を説明するための概念図である。
【図12】 同じく、二重共鳴吸収過程を説明するための概念図である。
【図13】 従来の超解像顕微鏡の一例の構成を示す図である。
【図14】 図13に示す位相板の構成を示す平面図である。
【図15】 従来の超解像顕微鏡の他の例の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 Nd:YAGレーザー
2 波長変換素子
3 シャープカットフィルタ
4 位相板
5 ビームセパレーター
6,6 ガルバノ揺動ミラー
8 対物レンズ
9 試料
10 投影レンズ
11 ピンホール
12 ポンプ光カットノッチフィルター
13 イレース光カットノッチフィルター
14 光電子増倍管
21,31,41 位相板
51 液晶空間光変調器
52 ハーフミラー
53 反射ミラー
Claims (10)
- 少なくとも基底状態を含む3つの電子状態を有する分子を含む試料を観察する顕微鏡であって、
レーザー光源と、
このレーザー光源から出射したレーザー光の基本波の一部を、同軸上で2倍波に変換する波長変換素子と、
この波長変換素子から出射した上記2倍波はビーム整形することなく出射させ、上記基本波はビーム中央部の強度が周辺部よりも弱くなるように位相変調して出射する位相変調素子と、
この位相変調素子から出射した上記基本波および2倍波を観察試料に集光する集光光学系と、
上記観察試料からからの発光を検出する検出光学系と、
を有し、上記2倍波により、上記観察試料内の上記分子を基底状態から第1電子励起状態に励起し、上記基本波により第1電子励起状態から他の電子状態へ遷移させるよう構成したことを特徴とする顕微鏡。 - 上記レーザー光源は、Nd:YAGレーザーであることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
- 上記波長変換素子は、非線形光学素子からなることを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡。
- 上記非線形光学素子は、ベータ硼酸バリウムの結晶からなることを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡。
- 上記位相変調素子は、空間的に屈折率分布を有する位相板からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の顕微鏡。
- 上記位相板は、入射するビームの光軸を中心に90度毎にλ/4(λは基本波の波長)の位相差を与えるよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡。
- 上記位相板は、入射するビームの光軸を中心とする円形領域で位相変調するよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡。
- 上記円形領域は、上記基本波に対する位相変調度合いがπであることを特徴とする請求項7に記載の顕微鏡。
- 上記円形領域は基板上に形成された蒸着膜を有しており、入射するレーザー光のビーム径に対する上記円形領域の半径比をρ、上記円形領域におけるレーザー光の透過率をB、上記円形領域以外の上記基板におけるレーザー光の透過率をAとするとき、A−2Bρ2=0、を満たすことを特徴とする請求項8に記載の顕微鏡。
- 上記位相変調素子は、液晶空間光変調器からなることを特徴とする請求項1〜4に記載の顕微鏡。
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