JP4334645B2 - 塗布装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、枚葉タイプの基板に、効率よくかつ均一な膜厚の塗布膜を形成する塗布装置に係り、特に、大面積の枚葉基板に、所望の特性の塗布膜を形成するための、耐久性および信頼性のある塗布装置を得ることを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置やプラズマディスプレイなどに用いられる枚葉タイプのガラス基板に、感光性樹脂膜や接着剤層、保護膜などを形成するための樹脂溶液やインキなどの塗布液を塗布する方式としては、一般に回転塗布方式が多用されている。回転塗布方式には開放型と密閉型があるが、いずれも、塗布液の塗布効率が低く、しかも、基板のコーナ部分の塗布膜厚が厚くなりすぎるという欠点があり、今後見込まれる基板寸法の大型化にともなって、塗布液の使用量、塗布膜厚の均一性、および塗布工程の生産性などの点において課題が多い。
【0003】
そこで、回転塗布方式における欠点を解消するとともに、塗布液自体の物性や基板の平滑度の影響を受けることが少なく、安定して均一な膜厚の塗布膜を枚葉基板に形成できる塗布装置を、国際出願PCT/JP94/00845(国際公開94/27737号、国際出願日:1994年5月27日)において、本出願人は先に提案した。
【0004】
この塗布装置は、上方へ向かって開口するとともに、水平方向に延びる帯状のスリットを有する塗布ヘッドと、塗布ヘッドに塗布液を供給する塗布液供給手段と、塗布ヘッドの上方に対向して配置され、塗布面を下方へ向け、かつ傾斜状態に基板を吸着保持する基板保持部材とを備えている。この塗布装置では、先ず、塗布ヘッドに塗布液を供給してスリットから塗布液を吐出し、基板と塗布ヘッドとの間隙に帯状の液溜まりを形成する。次いで、この液溜まりを横切る方向へ、塗布ヘッド、または基板を吸着保持した基板保持部材を相対的に移動させることによって、塗布液の液溜まりを基板の塗布面に順次接触させ、基板に塗布膜を形成する。
【0005】
上記塗布装置は、塗布液の粘度や表面張力などの物性、および基板の濡れ性や平滑度などに対応して、所望の均一な塗布膜厚を得るために、基板の塗布面と塗布ヘッドとの間隙を調節する機構、および、前記間隙を維持した状態で、基板の傾斜角度を調節する機構、さらに、基板を吸着保持した基板保持部材と塗布ヘッドとの相対的な移動速度を調節する機構などを備えている。この塗布装置によると、塗布液の塗布効率がよく、しかも枚葉基板であっても、塗布面の平滑度に影響されず、基板の片面のみに、広い領域にわたって均一な膜厚の塗布膜を形成することができる。
【0006】
次に、上記塗布装置における塗布膜形成基板の生産性をより向上するため、基板を吸着保持する基板保持部材の外周の複数箇所に、塗布処理する基板の外周よりも内側に延びた空間部を設けた。そして、塗布装置へ基板を供給したり、塗布装置から基板を排出する際、基板を着脱するための基板着脱部材が、基板着脱位置に係止した基板保持部材の前記空間部を通過しながら、基板を装着、または離脱するように構成した塗布装置を、特願平9−19575(特開平10−202163号、出願日:1997年1月20日)において提案した。この塗布装置によれば、複雑な機構を用いることなく、塗布処理後の基板排出や塗布処理前の基板供給などの基板着脱動作が高速かつ確実になるので、塗布膜形成基板の生産性を高められる。
【0007】
さらに、本出願人は、基板に形成する塗布膜の膜厚をより均一にするため、上記塗布方式に加え、従来の回転塗布方式を併用した塗布装置を、特願平9−31237(特開平9−267066号、出願日:1997年1月30日)において提案した。これは、すでに塗布液を塗布された基板を高速回転することにより、均一な膜厚の塗布膜領域を拡大し、塗布膜形成基板の有効寸法を大きくする効果がある。
【0008】
上記各出願においては、塗布装置の構成上2つの形式を提案している。第1の形式は、塗布ヘッドを固定し、基板保持部材を移動する形式である。この形式の塗布装置において、塗布開始位置から塗布終了位置までの基板保持部材の移動距離は、少なくとも基板の塗布方向長さ以上の距離を要し、したがって、基板保持部材の移動距離を含む塗布装置の機械的長さは、少なくとも、基板の塗布方向長さの2倍以上になる。しかし、最近は、塗布処理を施す基板の大判化にともない、基板保持部材が大型化し重量も増大しており、第1の形式の塗布装置では、所望の塗布膜特性を得るための機械的精度や、装置の耐久性を確保できなくなりつつある。
【0009】
塗布装置の第2の形式は、塗布処理時に基板保持部材を固定し、塗布ヘッドを移動する形式である。この形式の塗布装置の機械的長さは、塗布ヘッドの移動距離、すなわち基板の塗布方向長さに、塗布ヘッド自体の移動方向における物理的な寸法と、塗布ヘッドを移動させる移動手段の物理的な長さとを加えたものとなる。したがって、塗布処理する基板が大判化しても、塗布装置の機械的長さを、第1の形式の塗布装置よりも短く構成することができるので、機械的精度や、装置の耐久性を確保することが容易である。
【0010】
上記塗布装置における構成上の要点は、第1に、下向きに傾斜して基板保持部材に吸着保持した基板の塗布面と、塗布ヘッドに設けられた水平方向に延びる帯状スリットの上向き開口との間隙を常に一定に維持しつつ、基板の塗布面と並行な傾斜方向に、塗布ヘッドを一定速度で移動するように構成することである。
【0011】
第2に、所望の均一な塗布膜厚を得るために、塗布液の粘度や表面張力、および基板の濡れ性などに対応して、基板を保持する基板保持部材の傾斜角度を調節可能とすることである。第3に、塗布装置へ塗布処理前の基板を供給したり、塗布装置から塗布処理後の基板を排出するとき、迅速確実に基板を装着、または離脱できるように、塗布処理中の下向きの傾斜位置から基板保持部材を反転回動し、必ずしも水平である必要はないが、一定の基板着脱位置で上向きに係止することである。
【0012】
図4、および図5は、前記第2の形式の塗布処理装置の構成例を示す外観斜視図と側面透視図である。この塗布装置では、塗布部躯体11の上部に、塗布処理する基板Sを吸着保持する基板保持部材13を、回動軸Jを介して軸承している。この基板保持部材13は、駆動源M2によって塗布処理位置Rと基板着脱位置Vとの間を反転回動することができる。塗布部躯体11の下部には、基板保持部材13の基板保持面(図では下向き)に対向するように、塗布処理する基板の塗布面と一定の間隙を維持しながら、駆動源M1によって移動する塗布ヘッド15が、直線状ガイドレール17を介して、スライド可能に設けられている。
【0013】
この塗布部躯体11は、その下部の一端が回動軸Kにて架台21に軸承されており、他端が塗布部傾斜角調節手段30を介して、塗布処理される基板Sの傾斜角度を調節可能に架台21に取り付けられている。そして、塗布部傾斜角調節手段30のハンドルHを回転することにより、塗布部躯体11の回動角度、すなわち、塗布処理時の基板の傾斜角度θを調節可能としてある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、塗布処理する基板の大判化、大面積化の要求が増大しており、そのため、先ず、基板を吸着保持する基板保持部材の大サイズ化が必要になった。その際、基板保持面の平面度を確保するための機械的強度アップにより、基板保持部材自体の寸法や重量が増大してきた。当然、基板に塗布処理するための塗布ヘッドも、大サイズ化が必要になり、寸法や重量が増大する。さらに、基板保持部材を反転回動する回動機構や、塗布ヘッドを移動する移動機構も、機械的強度アップが必要になり、また、基板保持部材と塗布ヘッドとを一体的に保持する塗布部躯体も、所定の位置精度を保つために強度アップされ、寸法や重量が増大した。
【0015】
このように、寸法や重量が増大した塗布部躯体を、図4および図5に示した装置構造を用いて、傾斜角度自在に構成することは、装置の機械的強度面から問題があり、安全性や耐久性を損なう虞れがある。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、上向きに開口したスリットを有する塗布ヘッドに塗布液を供給して、スリットから塗布液を吐出し、下向きに傾斜して保持された基板に塗布液を塗布する塗布装置において、塗布処理時における基板の傾斜角度を調節可能にするとともに、大判化、大面積化した基板においても所望の塗布膜特性が得られ、その品質維持が容易で、かつ高い耐久性と安全性とを有する塗布装置を得ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の塗布装置は、塗布処理位置において塗布面を下方へ向けかつ傾斜状態に基板を保持する基板保持部材と、塗布処理位置と基板着脱位置との間で基板保持部材を反転回動する回動手段と、塗布処理位置における基板保持部材の下方に設けられ、上方へ向かって開口し水平方向に延びるスリットを有する塗布ヘッドと、塗布ヘッドに塗布液を供給し、スリットから塗布液を吐出する塗布液供給手段と、塗布ヘッドを基板の傾斜方向と平行な方向へ相対的に移動させる移動手段とを、基板の塗布面と塗布ヘッドとが塗布処理時に一定の間隙を維持するように、基板保持部材と塗布ヘッドとを対向して保持する塗布部躯体に設け、この塗布部躯体を円軌道に沿って回動自在に支持する架台と連結し、架台に対する塗布部躯体の回動角度を調節することによって、塗布処理される基板の傾斜角度を可変する塗布部傾斜角調節手段を備えている。
【0017】
そして、本発明の塗布装置は、塗布部躯体または架台の一方に固着された一対の円弧状案内部材と、他方に固着され、前記一対の円弧状案内部材の円軌道に沿って摺動する複数の摺動部材とで構成され、架台上にて塗布部躯体を回動自在に支持する躯体回動手段を備えている。なお、本発明の塗布装置に設けられた、基板保持部材は、水平に延びる回動軸によって塗布部躯体に軸承され、前記躯体回動手段を構成する円弧状案内部材の円軌道中心は、基板保持部材を軸承する回動軸心に位置するように構成した。また、本発明の塗布装置に設けられた、塗布部傾斜角調節手段は、動力を用いる駆動源によって、機械的に駆動される。
【0018】
すなわち、塗布処理する基板を吸着保持する基板保持部材とその回動機構、および、基板に塗布膜を形成するための塗布ヘッドを含む塗布液供給手段とその駆動機構を塗布部躯体に一体的に設け、架台上にてこの塗布部躯体を円軌道に沿って回動するように構成する。つまり、塗布部躯体または架台の一方に固着された一対の円弧状案内部材と、他方に固着され、前記一対の円弧状案内部材の円軌道に沿って摺動する複数の摺動部材とで構成された躯体回動手段を用いることによって、大型化し重量が増大した塗布部躯体を、架台上にて自在に回動できるようにした。
【0019】
このように塗布装置を構成することによって、塗布処理する基板が大判化、大面積化しても、塗布装置全体の強度や耐久性を損なうことなく塗布部を回動可能となり、塗布処理する基板の傾斜角度を、所望する塗布膜特性を得られるように調節できることになる。さらに、躯体回動手段を構成する円弧状案内部材の円軌道中心を、基板保持部材を軸承する回動軸心に位置させたので、塗布部を回動しても、基板保持部材を軸承する回動軸心の空間的位置は変化せず、したがって、反転回動した基板保持部材の基板着脱位置を空間的に固定でき、基板着脱機構などの構造が簡単になる。また、架台に対する塗布部の回動角度を調節するための塗布部傾斜角調節手段を、動力を用いて機械的に駆動することにより、大型化し重量が増大した塗布部を安全に回動させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1は、本発明の塗布装置の実施形態を示す外観斜視図である。また、図2は、塗布装置の構成を示すために装置の一部を破断した状態の側面図である。さらに、図3は、塗布部の回動角度調節動作を説明するための側面図である。
【0021】
(塗布装置の構成)
まず、塗布装置の構成概要について説明する。図1、図2において、1は塗布装置の本体である。塗布装置1は、基板Sに塗布膜を形成する塗布部10と、前記塗布部10を回動自在に支持する架台部20とで構成される。架台部20の側面フレーム21A、21Bの上部には、それぞれ円弧状ガイドレール22が固着されている。この円弧状ガイドレール22は、摺動面が円軌道をなすように研磨加工された、例えば、鋼鉄で作製される。
【0022】
一方、塗布部10を構成する塗布部躯体11の側面フレーム11A、11Bには、前記架台部20の円弧状ガイドレール22に設けられた円軌道に沿って摺動する、複数の摺動部材12を備えている。この摺動部材12は、例えば、ボールベアリングやニードルベアリングが用いられる。
【0023】
塗布部10は、複数の摺動部材12を介して、架台部20の円弧状ガイドレール22上に載置され、この円弧状ガイドレール22の円軌道に沿って自在に回動可能になっている。この塗布部10の回動中心は、回動軸Jによって塗布部躯体11に軸承されている基板保持部材13の回動軸心Qと同一中心になるように構成される。
【0024】
また、本実施形態では、塗布装置1を構成する架台部20の側面フレーム21A、21Bに、回動軸心Qを中心とする半径にて、円弧状に穿孔された円弧状スリット23が設けられている。そして、先端部にネジ加工を施した連結ピン31が、この円弧状スリット23から突出するように、塗布部10を構成する側面フレーム11A、11Bに固着されている。この連結ピン31のネジ加工部には、塗布部固定ネジ32が嵌め込まれ、この塗布部固定ネジ32を締めることによって、塗布部躯体11が架台部20に固定される構造になっている。
【0025】
さらに、本塗布装置には、架台部20に対する塗布部10の回動角度、すなわち、塗布処理する基板の傾斜角度を調節するための塗布部傾斜角調節手段が設けられている。図2および図3において、31は、塗布部躯体11の側面フレームに固着されている連結ピンである。この連結ピン31にはスライダ33が軸装されている。このスライダ33には、平行案内軸が挿通されている。平行案内軸の一方は、ボールネジロッド34であり、このボールネジロッド34と平行に他方の案内軸であるガイドロッド35が設けられている。このボールネジロッド34の一端には傘歯車が嵌入され、架台部20の両側面フレーム21A、21B間に配設された伝導軸36と噛み合っている。この伝導軸36は、ベルトまたはチェーンなどの伝導手段を介してモータ等の駆動源M3に連結されている。
【0026】
本塗布装置における塗布部傾斜角調節手段は、この駆動源M3を含むスライダ駆動機構によって構成される。すなわち、駆動源M3を駆動して、伝導軸36を介してボールネジロッド34を回転させることにより、ボールネジロッド34とガイドロッド35によって構成される平行案内軸に沿って、スライダ33が摺動する。このスライダ33は、駆動源M3の回転方向を制御することによって摺動方向を換えることができ、また、駆動源M3への動力供給を制御することによって、摺動したり、あるいは停止させることができる。つまり、駆動源M3を制御することによってスライダ33が摺動し、連結ピン31を介して塗布部躯体11を回動することになり、よって、塗布処理時における基板の傾斜角度を調節することができる。なお、駆動源M3としては、例えば、ブレーキ付きインダクションモータが用いられる。
【0027】
(塗布部の構成)
次に、塗布部10の構成について説明する。図2に示すように、塗布部10の上部には、塗布部躯体11に軸承された基板保持部材13が、駆動源M2、例えば、サーボモータと減速機とによって、塗布処理位置Rと基板着脱位置Vとの間で反転回動可能に設けられる。前記基板保持部材13は、基板保持面に多数の吸引孔を備え、それらの吸引孔は、図示しない吸引ポンプに接続され、吸引ポンプの吸引作用により、塗布処理する基板を基板保持面に吸着保持する。この基板保持部材13は、塗布処理位置Rにおいては、塗布部躯体11に設けられた塗布処理位置係止手段14によって位置決めされ、また、基板着脱位置Vにおいては、塗布装置1との相対位置が固定された基板着脱位置係止手段24によって位置決めされる。
【0028】
一方、塗布部10の下部には、上向きに開口し水平に延びるスリットを有する塗布ヘッド15が、前記基板保持部材13に下向きに吸着保持された基板Sの塗布面と並行な方向へスライド可能に、塗布部躯体11に固着された直線状ガイドレール17に沿って移動する移動基台16を介して取り付けられている。塗布ヘッド15を載置した移動基台16は、ガイドレール17に併設されたボールネジ18に連結され、駆動源M1、例えば、回転数を制御可能なサーボモータによって、ボールネジ18が一定回転数で回転することによって、直線状ガイドレール17に沿って移動可能とされる。
【0029】
すなわち、基板保持部材13が回動し、塗布処理位置係止手段14によって位置決めされ、塗布処理位置Rに係止された状態で、基板保持部材13の基板保持面と直線状ガイドレール17とは並行になり、基板保持部材13に吸着保持された基板Sの塗布面と、ガイドレール17上に移動可能に装着された塗布ヘッド15の上向きに開口したスリットとは、一定の間隙を保持した状態になる。この状態で、駆動源M1を駆動すると、前記一定の間隙を維持した状態で、基板保持部材13に吸着保持された基板Sの塗布面と並行な方向に、傾斜した基板Sの最も高い端縁S1から最も低い端縁S2の方向へ、塗布ヘッド15が一定速度で移動可能とされる。
【0030】
この塗布ヘッド15には、塗布液貯留タンクT、塗布液供給ポンプP、塗布液濾過フィルタFなどで構成された塗布液供給手段が接続され、前記塗布液供給手段が運転状態のとき、塗布ヘッド15に設けられた上向きに開口し水平に延びるスリットから塗布液が吐出し塗布ヘッド15の上面に液溜まりを形成する。この状態で塗布ヘッド15を、傾斜した基板Sの最も高い端縁S1から最も低い端縁S2の方向へ移動することにより、塗布ヘッド15の上面に形成された液溜まりの塗布液が順次基板Sに付着し、均一な膜厚の塗布膜が基板Sの塗布面に形成される。
【0031】
塗布ヘッド15が移動し、基板Sの塗布面に塗布膜が形成されたら、塗布終了位置Mにて塗布ヘッド15は停止する。次いで、基板保持部材13が、塗布膜が形成された基板Sを吸着保持したまま、基板着脱位置Vへ向けて回動を開始する。基板保持部材13は、駆動源M2によって反転回動し基板着脱位置Vにおいて、基板着脱位置係止手段24によって位置決めされる。その後、図示しない基板着脱部材によって、塗布膜が形成された基板Sは、基板保持部材13から離脱する。
【0032】
そして、塗布処理する新しい基板が、基板着脱位置Vに係止されている基板保持部材13上に載置された後、再び基板保持部材13は塗布処理位置Rへ向けて回動する。この間に、塗布ヘッド15は、塗布終了位置Mから塗布開始位置Lに復帰し、基板保持部材13が塗布処理位置Rの塗布処理位置係止手段15に係止されたら、再び、塗布ヘッド15による塗布処理が開始される。
【0033】
(装置の作用動作)
次に、本塗布装置の作用動作について説明する。図3は、塗布部10の回動角度を図2の角度とは異なる角度に調節した状態を示している。前述したように、塗布処理では、所望の均一な膜厚などの塗布膜特性を得るため、塗布液の粘度や表面張力を調製するとともに、基板の濡れ性などに対応して、基板を保持する基板保持部材の傾斜角度を調節する。
【0034】
例えば、基板Sに形成する塗布膜の膜厚を厚くしようとするときは、高粘度の塗布液を用いて、かつ、塗布処理時の基板の傾斜角度を小さくするため、図3に示すように、塗布部の回動角度を水平に近づくようにする。逆に、塗布膜の膜厚を薄くしようとするときは、低粘度の塗布液を用いて、かつ、塗布処理時の基板の傾斜角度を大きくするため、図2に示したように、塗布部の回動角度を鉛直に近づくようにする。
【0035】
なお、塗布液の粘度や表面張力の調製においては、塗布液の乾燥性や塗布膜厚の均一性なども考慮しなければならず、おのずと限界があるので、本塗布装置では、塗布処理時の基板の傾斜角度を調整することによって、所望の均一な膜厚の塗布膜を得ようとするものである。
【0036】
以下に、本発明の塗布装置において、塗布処理時の基板の傾斜角度を調節する手順について説明する。先ず最初に、本塗布装置で使用する塗布液の粘度と表面張力、および塗布処理する基板の濡れ性を、所定の測定方法を用いて測定し記録する。この記録は、種々の塗布液や基板の塗布特性データとして蓄積することにより、塗布装置の調節に利用することができる。次いで、調製した塗布液を、本装置の塗布液供給手段に供給し、具体的には塗布液貯留タンクTへ注入し、塗布液供給ポンプPを起動して、塗布液供給手段を始動する。
【0037】
次に、塗布装置において基板の傾斜角を調節する。例えば、塗布装置の塗布部回動角度が、水平に対し0°〜40°の範囲で調節可能なとき、最初に設定する塗布部の回動角度を、回動範囲のほぼ中間に位置する20°に設定する。基板の傾斜角度、すなわち塗布部の回動角度は、図2、図3に示す塗布部固定ネジ32を一旦緩めて、塗布部10を回動可能にして調節する。塗布部10の回動角度の調節は、駆動源M3を正転または逆転することにより、ボールネジロッド34を回転駆動してスライダ33を移動することによって行う。スライダ33の移動によって、連結ピン31を介して連結された塗布部10の回動角度が所定の角度に位置したら、塗布部固定ネジ32を締めて塗布部躯体11を架台20に固定する。
【0038】
次に、塗布液を塗布するテスト用基板を塗布装置に装着し、塗布処理を行う。このテスト塗布処理は少なくとも3回行い、それぞれ塗布膜厚等の塗布膜特性を測定する。その結果、塗布膜厚等の塗布膜特性の平均値が、例えば、所望の塗布膜厚よりも薄い場合は、最小回動角度0°〜中間回動角度20°の中間である10°に設定し、再度塗布膜特性を測定する。もし、所望の塗布膜厚よりも厚い場合は中間回動角度20°〜最大回動角度40°の中間である30°に設定し、再度塗布膜特性を測定する。
【0039】
上記2回の測定結果をもとに、塗布部10の回動角度、すなわち基板の傾斜角度と塗布膜特性との相関特性を得ることによって、所望の塗布膜特性が得られる塗布部の回動角度を求める。その際、相関特性上の再現精度が不十分なときは、例えば、前記2回の測定の、さらに中間の回動角度において、再度塗布膜特性を測定し、所望の精度の相関特性を得てから、目的とする塗布膜特性を得られる傾斜角度を求め、塗布部10の回動角度を決定する。
【0040】
なお、これらの準備動作中に測定した測定結果や測定条件は、すべて記録するとともに、本番の塗布処理中に抜き取り等で塗布膜特性を測定した結果と合わせて、統計処理することによって、各種塗布液の粘度や表面張力、基板の濡れ性、塗布処理時の基板の傾斜角度などと、得られた塗布膜特性との相関性が図られ、塗布膜の品質保証が容易になる。
【0041】
このように、塗布処理においては、所望する塗布膜特性を得るために、何度も塗布部10の回動角度を調節することになるが、本発明の塗布装置では、回動角度の調節を、安全確実かつ簡便迅速に行えるように装置を構成している。その一つは塗布部の回動機構である。すなわち、本発明の塗布装置は、塗布処理位置Rにおいて基板を吸着保持するための基板保持部材13を軸承し、この基板保持部材13に対し、並行に移動する塗布ヘッド15を備えた塗布部10を、複数の摺動部材12を介して、架台部20に設けた円弧状ガイドレール22に載置し、回動自在としている。
【0042】
したがって、塗布処理する基板の大判化、大面積化にともなって、大型化し重量が増大した塗布部10の荷重は、複数の摺動部材12、および円弧状ガイドレール22を介して、架台部20に加わることになる。つまり、個々の摺動部材12や円弧状ガイドレール22に加わる荷重は分散し、軽減されることになり、機械的強度や耐久性、および安全性を高めることになる。
【0043】
また、塗布部10の重心位置が、複数の摺動部材12の中間位置にあれば、連結ピン31、スライダ33、ボールネジロッド34などで構成される塗布部傾斜角調節手段に加わる塗布部10の荷重が軽減され、機械的強度や耐久性、および安全性の面でより好ましい状態になる。
【0044】
本塗布装置の他の特徴の一つは、塗布部躯体11に軸承された水平に延びる回動軸Jの回動軸心Qを中心に、基板に塗布液を塗布する塗布処理位置Rと、基板を装着または離脱する基板着脱位置Vとの間で、基板保持部材13を反転回動させる回動手段を備えており、基板の供給動作、および排出動作を簡便迅速に行うことができることである。
【0045】
そして、この基板保持部材13の回動軸心Qは、塗布部躯体11を回動自在とする躯体回動手段の円弧状ガイドレールに設けた円軌道の半径中心と同一中心に設けられる。したがって、塗布部10を回動し、塗布処理時における基板の傾斜角度をいかように調節した場合でも、基板保持部材13の回動軸心Qが物理的に移動することはない。
【0046】
よって、基板の傾斜角度調整にともなう、塗布部10の回動角度調節作業の都度、基板着脱位置Vにおいて基板保持部材13に基板を装着し、もしくは基板保持部材13から基板を離脱する基板着脱部材の動作位置を調節する作業が不要になる。また、基板保持部材13を基板着脱位置Vにおいて係止する基板着脱位置係止手段24も、塗布装置との相対位置を調節する必要がない。したがって、基板の傾斜角度変更にともなう塗布装置周辺機構の調節作業を不要にすることができるとともに、塗布装置自体の機構、構造も簡素化できることにより装置の耐久性を高められ、また、基板の傾斜角度調整を迅速化できる。
【0047】
(他の実施例)
上記塗布部傾斜角調節手段を用いて、基板の傾斜角度を調節する際は、駆動源M3の回転方向切り替えスイッチを兼ねた駆動スイッチを断接して、塗布部の回動角度を調節すればよい。また、塗布部10の回動角度を検出する手段を備えることもでき、その場合は、塗布部10の回動角度を自動制御により調節することも可能になる。なお、いずれの場合においても、塗布部10の回動角度を固定するための塗布部固定ネジ32を併用し、誤操作による塗布部10の回動を防止する必要がある。
【0048】
また、上記実施形態においては、塗布部躯体を回動するための躯体回動手段として、円弧状ガイドレールを架台の側面フレームに設け、この円弧状ガイドレールの円軌道上を摺動する複数の摺動部材を、塗布部躯体の側面フレームに備えて構成したが、逆に、塗布部躯体に円弧状ガイドレールを設け、その円弧状ガイドレールを介して塗布部躯体を支持するために、円弧状ガイドレールの円軌道に接触して摺動する摺動部材を架台に備えて構成してもよい。
【0049】
すなわち、本発明の塗布装置では、躯体回動手段として、塗布部躯体か、または塗布部躯体を支持する架台の、いずれか一方に、円弧状の案内部材を固着する。その際、円弧状案内部材の円軌道の半径中心を、塗布部躯体に軸承した基板保持部材の回動軸心と一致させる。他方、前記円弧状案内部材の円軌道に沿って摺動する摺動部材を、架台、または塗布部躯体に固着する。例えば、前記実施形態とは異なり、塗布部躯体の両側面に円弧状ガイドレールを設け、この円弧状ガイドレールの円軌道に接触しながら回転する支持輪を架台に備えてもよい。そして、塗布部躯体を円弧状ガイドレールを介して、架台の支持輪上に載置する。すると、塗布部躯体は、前記架台の支持輪上にて、円弧状ガイドレールの円軌道に沿って自在に回動可能となる。
【0050】
さらに、架台に対する塗布部の回動角度を設定するために、架台と、架台上を回動する塗布部躯体とを連結する塗布部傾斜角調節手段を設け、この塗布部傾斜角調節手段を操作して、円弧状ガイドレールを設けた塗布部躯体を、架台に設けた支持輪上にて回動のうえ位置決めして固定することによって、塗布処理時における基板の傾斜角度を調整することができる。
【0051】
このとき、この塗布部躯体の回動中心は、塗布部躯体に軸承している基板保持部材の回動軸心と、同一の軸心位置にあるので、基板の傾斜角度、すなわち塗布処理位置における基板保持部材の傾斜角度を調整するために、塗布部の回動角度を変化させた場合においても、基板保持部材の回動軸心は変化せず、従って、基板着脱位置に回動したときの基板保持部材の係止位置も変化しない。
【0052】
ちなみに、本実施形態の塗布装置では、厚さ1mm、長さ700×幅600mmの大きさのガラス基板に、感光性樹脂溶液の塗布膜を±10パーセント以内の膜厚バラツキで形成することができた。また、従来の塗布装置では、所望の塗布膜特性を得るための、塗布装置の調整に要する時間が1時間以上必要であったが、本発明の塗布装置によると、塗布装置の調整時間を30分以下に短縮することができ、飛躍的に、塗布装置の稼働率を向上することができた。
【0053】
なお、本発明の塗布装置で塗布処理される枚葉基板は、典型的には液晶表示装置のカラーフィルタ用ガラス基板であり、基板に塗布される液は、ガラス基板上に微細パターンを形成するための感光性樹脂溶液である。前記ガラス基板は非可撓性であるが、本塗布装置で処理される基板は、このようなガラス基板に限らず、プラスチック、金属、板紙などでもよい。
【0054】
また、本発明の塗布装置において使用する塗布液は、特に制限はなく、例えば粘度が3〜50cps程度の溶剤系感光性樹脂溶液、水系感光性樹脂溶液、または、これらの感光性樹脂溶液に顔料などの着色剤を分散させた感光性樹脂溶液、その他、染料、フィラー、増感剤、樹脂、添加剤などを単独または組合せて混合することもできる。さらに、各種接着剤、保護膜などを形成するための樹脂溶液、各種インキなどを対象とすることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した如く、本発明の塗布装置は、請求項1に示したように、塗布処理位置において塗布面を下方へ向けかつ傾斜状態に基板を保持する基板保持部材と、塗布処理位置と基板着脱位置との間で基板保持部材を反転回動する回動手段と、塗布処理位置における基板保持部材の下方に設けられ、上方へ向かって開口し水平方向に延びるスリットを有する塗布ヘッドと、塗布ヘッドに塗布液を供給し、スリットから塗布液を吐出する塗布液供給手段と、塗布ヘッドを基板の傾斜方向と平行な方向へ相対的に移動させる移動手段とを、基板の塗布面と塗布ヘッドとが塗布処理時に一定の間隙を維持するように、基板保持部材と塗布ヘッドとを対向して保持する塗布部躯体に設け、この塗布部躯体を円軌道に沿って回動自在に支持する架台と連結し、架台に対する塗布部躯体の回動角度を調節することによって、塗布処理される基板の傾斜角度を可変する塗布部傾斜角調節手段を備えたので、塗布液の粘度や表面張力、基板に対する濡れ性などの特性に対応して、塗布部の回動角度を調節して、塗布処理時時における基板の傾斜角度を自在に設定することができ、多様な特性の塗布液に対応して、所望の塗布膜厚や膜厚の均一性などの塗布膜特性を得ることが容易である。
【0056】
また、本発明の塗布装置における躯体回動手段は、請求項1に示したように、塗布部躯体または架台の一方に固着された一対の円弧状案内部材と、他方に固着され、前記一対の円弧状案内部材の円軌道に沿って摺動する複数の摺動部材とで構成され、架台上にて塗布部躯体を回動自在に支持する躯体回動手段を備えたので、塗布処理する基板が大判化、大面積化しても、構造が簡単で、かつ精度が高く、安全性や耐久性に優れる塗布装置を得られる。
【0057】
さらに、本発明の塗布装置は、請求項2に示したように、基板保持部材は、水平に延びる回動軸によって塗布部躯体に軸承され、請求項1に示す円弧状案内部材の円軌道中心が、基板保持部材を軸承する回動軸心に位置するので、塗布処理時の基板傾斜角度を調節するために、塗布部躯体を回動した場合においても、基板着脱位置における基板保持部材の係止位置は変化せず、従って、基板保持部材に基板を装着、および基板保持部材から基板を離脱するための基板着脱機構の調節が不要になり、構造が簡単でかつ精度が高く、信頼性や耐久性に優れ、操作性の良好な塗布装置を得られる。
【0058】
また、本発明の塗布装置は、請求項3に示したように、塗布部傾斜角調節手段は、動力を用いる駆動源によって機械的に駆動されるので、大型化し重量が増大した塗布部を、安全かつ確実に回動して、塗布処理する基板の傾斜角度を可変することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本塗布装置の全体構成を示す外観斜視図である。
【図2】 本塗布装置の構成を示す一部破断した側面図である。
【図3】 塗布部の回動角度調節動作を説明するための側面図である。
【図4】 従来の塗布装置の構成例を示す外観斜視図である。
【図5】 従来の塗布装置の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
1 塗布装置
10 塗布部
11 塗布部躯体
11A、11B 側面フレーム
12 摺動部材
13 基板保持部材
14 塗布処理位置係止手段
15 塗布ヘッド
16 移動基台
17 直線状ガイドレール
18 ボールネジ
20 架台部
21 架台
21A、21B 架台フレーム
22、22A 円弧状ガイドレール
23 円弧状スリット
24 基板着脱位置係止手段
30 塗布部傾斜角調節手段
31 連結ピン
32 塗布部固定ネジ
33 スライダ
34 ボールネジロッド
35 ガイドロッド
36 伝導軸
J 回動軸
L 塗布開始位置
M 塗布終了位置
Q 回動軸心
S 基板
S1 基板の高い端縁
S2 基板の低い端縁
R 塗布処理位置
V 基板着脱位置
M1、M2、M3 駆動源

Claims (3)

  1. 塗布面を下方へ向けかつ傾斜状態に基板を位置させ、上方へ向かって開口し水平方向に延びるスリットを有する塗布ヘッドに塗布液を供給して、基板の塗布面と塗布ヘッドとの間隙に、スリットから吐出される塗布液によって液溜まりを形成しつつ、塗布ヘッドを基板の傾斜方向と平行に、傾斜した基板の最も高い端縁から最も低い端縁の方向へ移動することにより、液溜まりの塗布液を基板の塗布面に付着させて、塗布膜を形成する塗布装置において、
    塗布処理位置において塗布面を下方へ向けかつ傾斜状態に基板を保持する基板保持部材と、塗布処理位置と基板着脱位置との間で基板保持部材を反転回動する回動手段と、塗布処理位置における基板保持部材の下方に設けられ、上方へ向かって開口し水平方向に延びるスリットを有する塗布ヘッドと、塗布ヘッドに塗布液を供給し、スリットから塗布液を吐出する塗布液供給手段と、塗布ヘッドを基板の傾斜方向と平行な方向へ相対的に移動させる移動手段とを基板の塗布面と塗布ヘッドとが塗布処理時に一定の間隙を維持するように、基板保持部材と塗布ヘッドとを対向して保持する塗布部躯体に設け、
    この塗布部躯体を円軌道に沿って回動自在に支持する架台と連結し、架台に対する塗布部躯体の回動角度を調節することによって、塗布処理される基板の傾斜角度を可変する塗布部傾斜角調節手段と、
    塗布部躯体または架台の一方に固着された一対の円弧状案内部材と、他方に固着され、前記一対の円弧状案内部材の円軌道に沿って摺動する複数の摺動部材とで構成され、架台上にて塗布部躯体を回動自在に支持する躯体回動手段と、
    を備えたことを特徴とする塗布装置。
  2. 基板保持部材は、水平に延びる回動軸によって塗布部躯体に軸承され、円弧状案内部材の円軌道中心が、基板保持部材を軸承する回動軸心に位置することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
  3. 塗布部傾斜角調節手段は、動力を用いる駆動源によって機械的に駆動されることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布装置。
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