本発明の実施の形態による固体電解コンデンサ及び固体電解コンデンサの製造方法について図1乃至図4に基づき説明する。図1に示されるように固体電解コンデンサ1は、積層された6つのコンデンサ素子10〜60と、プリント基板70と、接続部材80と、6つのコンデンサ素子10〜60を覆うようにしてモールドする図示せぬモールド部とを備えている。
6つのコンデンサ素子10〜60は、それぞれ同一形状且つ同一の構成であり、図1に示されるように陽極部11〜61と、陰極部12〜62とを備えている。なお、図2を参照して説明する以下の説明では、6つのコンデンサ素子10〜60の構成は同一であることから、コンデンサ素子10のみについて図示し、他のコンデンサ素子20〜60については説明を省略する。
陽極部11は略長方形状をした板状をなしており、図1及び図2に示される左右方向に長辺が指向し、図1に示される左側の端部11Bには、図4に示されるように外方へ略台形状に突出する凸部11Cが設けられている。陽極部11は弁作用金属であるアルミニウムにより構成されており、図2に示されるように、アルミニウムの密度の高い中央の芯の部分11Dに対してその表面には、表面積を増やすためにエッチングが施されることにより粗面化(拡面化)されてポーラス状になっている。このポーラス状のの表面全体は化成処理(陽極酸化)によって絶縁性の誘電体層(酸化膜層)11Aが形成されている。陽極部11の寸法は、長手方向の長さが10mm、幅が5mm程度であり、厚さ、即ち、図2に示される上下方向の幅は100μm程度である。
陽極部11の表面の所定の領域、即ち、図2に示される陽極部11の右側の端部から左側の端部11Bに向って陽極部11の左右方向の長さの略2/3の位置に至るまでの領域全体には、導電性のポリマーにより構成される固体電解質層12Aが形成されている。固体電解質層12Aは誘電体層11Aの上に積層して設けられており、誘電体層11Aに対向する固体電解質層12Aの部分は、エッチングにより陽極部11の表面に形成されたポーラスの中に入り込んでいる。固体電解質層12A上には、グラファイトペースト層12Bと、銀ペースト層12Cとがこの順で積層されており、固体電解質層12A、グラファイトペースト層12B、及び銀ペースト層12Cは陰極部12を構成する。グラファイトペースト層12B及び銀ペースト層12Cは、固体電解質層12Aが形成されている陽極部11及び誘電体層(酸化膜層)11Aの領域を覆うようにして固体電解質層12A上に形成されている。
陽極部11の図2に示される左側の端部11Bであって陰極部12が設けられていない領域と陰極部12との境界位置には、絶縁性を有するエポキシ系樹脂等からなるレジスト13が設けられている。レジスト13は、固体電解質層12Aを陽極部11上に形成するために陽極部11となる化成箔を溶液に浸漬させているときに、ポーラス状になっている陽極部11の表面において毛細管現象により溶液が所定の領域よりも図2の左側の方へ上がってくることを防止し、固体電解質層12Aが形成されていない陽極部11の図2に示される左側の端部11Bを確保するために設けられている。
6つのコンデンサ素子10〜60は、図1に示されるように、陰極部12〜62同士が互いに積層配置されている。陰極部12〜62は、板状の陽極部11〜61上に形成されているため、陽極部11〜61の厚さ方向に対して略垂直な上面10A〜60Aと下面10B〜60Bとを有している。図1に示されるように、積層される6つのコンデンサ素子10〜60の第1層をなす第1コンデンサ素子10の上面10Aと第2コンデンサ素子20の下面20Bとが導電性接着剤91によって接着され、第2コンデンサ素子20の上面20Aと第3コンデンサ素子30の下面30Bとが導電性接着剤91によって接着されている。また、第3コンデンサ素子30の上面30Aと第4コンデンサ素子40の下面40Bとが導電性接着剤91によって接着されており、第4コンデンサ素子40の上面40Aと第5コンデンサ素子50の下面50Bとが導電性接着剤91によって接着されている。また、第5コンデンサ素子50の上面50Aと第6コンデンサ素子60の下面60Bとが導電性接着剤91によって接着されている。
従って、6つのコンデンサ素子10〜60の陰極部12〜62は電気的に接続されており、後述のように6つのコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61の図1に示される左側の端部11B〜61B同士が電気的に接続されることと相まって、6つのコンデンサ素子10〜60は電気的に並列接続されている。
6つのコンデンサ素子10〜60の陰極部12〜62が設けられていない陽極部11〜61の端部11B〜61Bの部分は、陰極部12〜62が設けられている部分と比較して銀ペースト層12C等が形成されていないことから薄くなっている。このため、図1に示されるように、コンデンサ素子10〜60の積層方向において、陽極部11〜61の図の左側の端部11B〜61B同士が互いに所定の間隔で離間して隣接して積層配置されている。
積層された6つのコンデンサ素子10〜60は、陽極部11〜61と略同一形状をしたプリント基板70上に載置されている。プリント基板70は、例えば、エポキシ樹脂製のプリント基板70である。6つのコンデンサ素子10〜60は、プリント基板70に対して形状が一致して重なるようにプリント基板70上に載置されている。プリント基板70は、積層された6つのコンデンサ素子10〜60のうちの第1コンデンサ素子10の陰極部12及び陽極部11に対向している。
プリント基板70の表面70A及び裏面70Bには、第1の導電パターン71A、71Bと第2の導電パターン72A、72Bとがそれぞれ設けられている。表面70Aの第1導電パターン71A、第2の導電パターン72Aは、それぞれ裏面70Bの第1の導電パターン71B、第2の導電パターン72Bと、スルーホール70a、70bを介して電気的に接続されている。第1の導電パターン71Aは、第1コンデンサ素子10の陽極部11の図1に示される左側の端部11Bに対向する位置に配置されており、第2の導電パターン72Aは、第1コンデンサ素子10の陰極部12に対向する位置に配置されている。
プリント基板70の裏面の第1の導電パターン71B、第2の導電パターン72Bは、それぞれ図示せぬ電子回路等に実装されるいわゆるユーザ端子であり、プリント基板70の表面の第1の導電パターン71A、第2の導電パターン72Aと同様の金属材料により構成されている。陽極部11の図1に示される左側の端部11Bは、プリント基板70の表面の第1の導電パターン71Aに電気的に後述の接続部材80を介して接続されている。また、陰極部12が導電性接着剤91によって第2の導電パターン72Aに電気的に接続されている。
6つのコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61の図1に示される左側の端部11B〜61Bの位置には、接続部材80が設けられている。接続部材80は、図4に示されるように、それぞれ略長方形状の板状をなす接続部本体81と底部82とを有しており、-接続部本体81の一の短辺の全体は、底部82の一の長辺の長手方向の略中央の位置に一体に接続されている。接続部本体81と底部82とは略垂直の角度をなして接続されて略L字状をなしている。従って、接続部本体81は、積層されたコンデンサ素子10〜60の積層方向に底部82から延出している。
接続部本体81は、図1に示されるように、陽極部11〜61の各端部にそれぞれ跨って当接して固定されており、すべての陽極部11〜61の図1に示される左側の端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cに当接した状態で、コンデンサ素子10〜60の積層方向に交差する方向であって、且つ陽極部11〜61の端部の凸部11C〜61Cが当接している側とは反対の側である接続部材80の外側から、即ち、図1の左側から右側へ向けてレーザの照射を受けることにより、陽極部11〜61の各端部11B〜61Bにそれぞれ電気的に接続される。
接続部材80はNiにより構成されている。後述のようにレーザ照射を受ける前の状態の接続部本体81の図1に示される左右方向の厚さは、0.1mm程度である。また、レーザ照射を受ける前の状態の接続部本体81の図1に示される左側の面、即ち、レーザ照射を受ける接続部本体81の面は、光沢を有しないことが好ましい。
レーザは、図3に示されるように、接続部本体81上に5つのドット81a〜81eを互いに近接する位置関係をなして設けるようにスポットで照射される。レーザ照射により設けられる各ドット81a〜81eは、隣接する2つ以上のコンデンサ素子の陽極部の端部に跨って設けられている。具体的には、ドット81a、81bはコンデンサ素子10の陽極部11の端部11Bとコンデンサ素子20の陽極部21の端部21Bとに跨って設けられており、ドット81cはコンデンサ素子30の陽極部31の端部31Bとコンデンサ素子40の陽極部41の端部41Bとに跨って設けられている。また、ドット81d、81eはコンデンサ素子50の陽極部51の端部51Bとコンデンサ素子60の陽極部61の端部61Bとに跨って設けられている。
コンデンサ素子10〜60の積層方向の一端のドット81a、81bと、当該ドット81a、81bに隣接するドット81cとは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向、即ち、図3の左右方向へずれている。ドット81cは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向において当該一端の2つのドット81a、81bの間の位置に設けられている。
同様に、コンデンサ素子10〜60の積層方向の他端のドット81d、81eと、当該ドット81d、81eに隣接するドット81cとは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向、即ち、図3の左右方向へずれている。ドット81cは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向において当該他端の2つのドット81d、81eの間の位置に設けられている。
ドット81a〜81eは、互いに近接する位置関係で密に配置されており、互いに重ならない位置関係となっている。コンデンサ素子10〜60の積層方向で見た場合、即ち、図3の上下方向で見た場合には、ドット81a、81dと、ドット81b、81eとがそれぞれ並べられた2列とドット81cが1つ並べられた1列との計3列をなしている。このため、接続部本体81とコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61の端部11B〜61Bとの接合を強固として、且つドット81a〜81eの数を必要最小限とすることができる。
接続部材80の底部82は、第1コンデンサ素子10の陽極部11の図1に示される左側の端部11Bと、プリント基板70の第1の導電パターン71Aとの間に配置されており、プリント基板70の第1の導電パターン71Aに当接している。底部82は、コンデンサ素子10〜60の積層方向、即ち、図1において上から下に向う方向へレーザの照射を受けることによりプリント基板70の第1の導電パターン71Aに電気的に接続される。
前述のように、陽極部11〜61の図1に示される左側の端部11B〜61Bには凸部11C〜61Cが設けられているため、図4に示されるように、あたかも長方形状の一の短辺を挟む2つの角部を、それぞれ切欠いて取除いたたような形状をなしている。これに対して、図4に示されるように底部82は長方形状をしている。底部82は、コンデンサ素子10〜60の積層方向において、陽極部11〜61の図1に示される左側の端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cと重なるように配置されるのであるが、底部82の長手方向の幅、即ち、図4における左右方向の長さは、陽極部11〜61の延出方向に対する幅方向における凸部11C〜61Cの幅、即ち図4における凸部11C〜61Cの左右方向の長さよりも大きいため、底部82は、結果的にコンデンサ素子10〜60の積層方向においていずれのコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61とも重ならない非重畳部82Aを有する。
6つのコンデンサ素子10〜60の各陽極部11〜61の端部の凸部11C〜61Cを互いに電気的に接続するための導電性の材料からなる接続部材80が、すべての陽極部11〜61の端部の凸部11C〜61Cに跨って固定されているため、接続部材80によって、陽極部11〜61の端部11B〜61B間にそれぞれ所定の空間を確保した状態で陽極部11〜61の端部11B〜61Bを支持することができる。
固体電解コンデンサ1を構成するコンデンサ素子10〜60の、陰極部12のいわゆる陰極層(固体電解質層12A、グラファイトペースト層12B、及び銀ペースト層12C)が設けられている部分は、これらが設けられていない陽極部11〜61の端部11B〜61Bの部分と比較して積層方向の幅が厚くなっており、この厚い部分である陰極部12〜62の部分を互いに積層させると、陰極部12〜62が積層されることに伴い互いに積層される陽極部11〜61の端部11B〜61Bの部分では、厚さの違いにより当該端部間に空隙が形成されることになる。しかし、上述のように接続部材80によって、陽極部11〜61の端部11B〜61B間にそれぞれ所定の空間を確保した状態で陽極部11〜61の端部11B〜61Bを支持することができるため、陽極部11〜61の端部11B〜61B間に別途スペーサを設けずに済む。このため、薄い陽極部11〜61の端部11B〜61Bの部分を無理に曲げて互いに隣接させて接続しなくて済み、コンデンサ素子の層数が多い場合であっても、容易に陽極部を無理に曲げることなく互いに接続することができる。
また、接続部材80は、接続部本体81に接続された底部82を有しているため、コンデンサ素子10〜60とプリント基板70とが、接続部材80を介して一体に接続することができる。このため、固体電解コンデンサ1全体の強度を向上させることができる。また、接続部材80の底部82の長手方向における接続部本体81の幅の方が、同方向における底部82の長さよりも小さいため、後述のプリント基板接続工程においてレーザを照射する際に、レーザ照射位置を確認することができ、正確な位置にレーザの照射を行うことができる。
また、コンデンサ素子10〜60の積層方向からレーザを照射することにより複数のコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61を互いに電気的に接続する場合には、陰極部12〜62と陽極部11〜61とのショートを防止するために、陽極部11〜61の端部11B〜61Bと陰極部12〜62とを結ぶ方向において、陰極部12〜62が設けられていない陽極部11〜61の端部11B〜61Bの長さを長くせざるを得ない。
これに対して接続部材80により陽極部11〜61の端部11B〜61Bをレーザ照射により溶接して電気的に接続するため、比較的弱いレーザ照射により溶接することができ、溶接によるショートを考慮する必要性は低くなり、当該陽極部11〜61の端部11B〜61Bを短くすることができる。
固体電解コンデンサの製造方法では、先ず、コンデンサ素子製造工程を行う。実際に行われるコンデンサ素子製造工程では、複数のコンデンサ素子が同時に製造されるが、ここでは、説明の便宜上1つのコンデンサ素子10が製造される工程を一回のコンデンサ素子製造工程とする。先ず、表面に誘電体層11Aが形成され陽極部11となるアルミニウム板、即ち、化成箔を打抜いて一端を陽極部11の形状とする。このとき、後述のように陰極層が形成される化成箔の部分は、複数同時に製造される他のコンデンサ素子の陰極部が形成される化成箔の他端の部分と、製品にならない余分な化成箔の部分を介して接続された状態となっている。後述の接続工程を行う直前に行う切断の工程において、この余分な化成箔の部分は切断され除去される。
次に、スクリーン印刷法を用いて、陽極部11の所定の位置であって陰極部12と陽極部11との境界となる位置にレジスト13を形成する。次に、前述のように化成箔を打抜いたときに、打抜いた断面には誘電体層11Aが形成されていない部分が生ずるが、この部分に誘電体層11Aを生成するために再度酸化させる再化成を行う。
次に、レジスト13を境とする所定の領域、即ち図1に示される陽極部11のレジスト13よりも右側の部分に相当する化成箔の部分を、固体電解質層12Aを形成するための反応溶液中に浸漬し、化学酸化重合を行うことにより、固体電解質層12A、即ち、導電性ポリマー層を形成する。陽極部11の表面はエッチングによりポーラス状になっているので、直接銀ペースト層12Cを形成することができないため、銀ペースト層12Cを形成する準備のために固体電解質層12Aを形成するのである。
次に、何らかの原因により、化成箔の表面に形成されている誘電体層11Aに破損が生じることがある。この部分を修正するための修復工程を行う。次に、導電性高分子層の上にグラファイトペースト層12Bと、銀ペースト層12Cとをこの順で積層して形成する。グラファイトペースト層12B、銀ペースト層12Cの形成は、ディップ法やスクリーン印刷法やスプレー塗布法等が用いられる。以上がコンデンサ素子製造工程である。このコンデンサ素子製造工程を6回行うことによって、6つのコンデンサ素子10〜60を製造する。
次に、積層工程を行う。積層工程では、6つのコンデンサ素子10〜60を、陽極部11〜61の図1に示される左側の端部11B〜61B同士が互いに隣接するように積層配置するとともに、陰極部12〜62同士を互いに積層配置する。陰極部12〜62間には、導電性接着剤91が塗布され、陰極部12〜62同士が導電性接着剤91によって互いに電気的に接続される。
次に、積層された状態の6つのコンデンサ素子10〜60を、製品とならない余分な化成箔の部分から切断して陰極部12〜62の形状とすることにより、略長方形状をしたコンデンサ素子10〜60の形状とする。
次に、接続工程を行う。接続工程では、図4に示されるように、6つの積層されたコンデンサ素子10〜60とは別体として用意された接続部材80を、積層した複数のコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61の図1に示される左側の端部11B〜61Bに、電気的に接続することにより、6つのコンデンサ素子10〜60を互いに電気的に並列接続する。
具体的には、先ず、積層された6つのコンデンサ素子10〜60の第1層をなす第1コンデンサ素子10の陽極部11の図1に示される左側の端部11Bの凸部11Cと平行に底部82を対向配置させた状態で、陽極部11〜61の当該端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cの方向へ接続部材80に対して軽く荷重をかけて、接続部材80を端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cへ押付ける。このようにして、接続部材80をすべての陽極部11〜61の当該端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cに跨って当接させる。
なお、図4において二点鎖線で示される矢印は、単に積層された6つのコンデンサ素子10〜60と、接続部材80と、プリント基板70との位置関係を示しているだけであって、必ずしもこの方向に移動させることによりこれら3つを接続するという意味ではない。
次に、陽極部11〜61の端部11B〜61Bに当接する接続部本体81の側に対する反対の側、即ち、図1に示される左側から、コンデンサ素子10〜60の積層方向に交差する方向、具体的には、積層方向に垂直の方向に向けて接続部本体81に対してレーザを照射するレーザ照射工程を行う。レーザはYAGレーザ溶接が用いられ、レーザは、陽極部11〜61の端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cに当接する接続部本体81上の位置、又は、凸部11C〜61C間の空間に対向する接続部本体81上の位置に、図3に示されるように、5つのドット81a〜81eを互いに近接する位置関係をなして設けるようにスポットで間欠的に照射される。
レーザ照射は、より具体的にはドット81a〜81eが以下の位置関係をなすように行われる。レーザ照射により設けられるドット81a、81bはコンデンサ素子10の陽極部11の端部11Bとコンデンサ素子20の陽極部21の端部21Bとに跨り、ドット81cはコンデンサ素子30の陽極部31の端部31Bとコンデンサ素子40の陽極部41の端部41Bとに跨っている。また、ドット81d、81eはコンデンサ素子50の陽極部51の端部51Bとコンデンサ素子60の陽極部61の端部61Bとに跨っている。
また、コンデンサ素子10〜60の積層方向の一端のドット81a、81bと、当該ドット81a、81bに隣接するドット81cとは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向、即ち、図3の左右方向へずれている。ドット81cは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向において当該一端の2つのドット81a、81bの間の位置に配置されている。
同様に、コンデンサ素子10〜60の積層方向の他端のドット81d、81eと、当該ドット81d、81eに隣接するドット81cとは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向、即ち、図3の左右方向へずれている。ドット81cは、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向において当該他端の2つのドット81d、81eの間の位置に設けられている。ドット81a〜81eは、互いに近接する位置関係で密に配置されており、互いに重ならない位置関係となっている。各ドット81a〜81eは以上のような位置関係で、ドット81c、ドット81a、81b、ドット81d、81eの順に設けられるようにレーザ照射が順に行われる。
ドット81a〜81eが互いに近接する位置関係で密に配置されるようにレーザ照射を行うようにしたため、接続部本体81とコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61の端部11B〜61Bとの接合強度を高めることができる。また、ドット81a、81eが互いに重ならない位置関係となるようにレーザ照射を行うようにしたため、レーザ照射が強すぎて接続部本体81に貫通孔が形成されてしまうといった不具合の発生を防止することができる。
また、コンデンサ素子10〜60の積層方向で見た場合、即ち、図3の上下方向で見た場合には、ドット81a、81dとドット81b、81eとがそれぞれ並べられた2列とドット81cが1つ並べられた1列との計3列をなしている。このため、接続部本体81とコンデンサ素子10〜60の陽極部11〜61の端部11B〜61Bとの接合を強固として、且つドット81a〜81eの数を必要最小限とすることができる。
以上のレーザ照射工程により接続部本体81を陽極部11〜61の各端部11B〜61Bに電気的に接続する。レーザ照射の条件は、図1の左右方向における接続部本体81の厚さや材質、レーザ照射するための光ファイバの径等によって変わるが、例えば、光ファイバとしてφ0.4mmのSIファイバを用いた場合には、1回の照射エネルギーは3Jから15J程度である。3J未満では、接続部本体81と陽極部11〜61の端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cとの接合強度が弱い。15Jを超えると接続部本体81にレーザ照射による貫通孔が形成されてしまうからである。
次に、プリント基板接続工程を行う。プリント基板接続工程では、図4に示されるように、6つの積層されたコンデンサ素子10〜60、接続部材80とは別体として用意されたプリント基板70上に、当該6つの積層されたコンデンサ素子10〜60及び接続部材80を載置し電気的に接続する。具体的には、先ず、導電性接着剤91を塗布した陰極部12〜62をプリント基板70の第2の導電パターン72A上に当接させ、また、接続部材80の底部82を第1の導電パターン71A上に当接させ、非重畳部82Aに対してコンデンサ素子10〜60の積層方向から、即ち、図1又は図2に示される上方向から、図4の破線で示される円の位置にレーザを照射する。このことにより、接続部材80の底部82をプリント基板70の第1の導電パターン71Aに電気的に接続すると共に、陰極部12〜62を第2の導電パターン72Aに電気的に接続する。
その後、固体電解コンデンサ1を保護するためにモールドを行い、切断を行い、更に、損傷している部分を修復するためのエージングを行い、特性検査、外観検査を経て固体電解コンデンサの製造方法の全工程を終了する。
コンデンサ素子10〜60の積層方向に交差する方向から且つ接続部材80の外側からレーザを照射することにより、接続部材80を陽極部11〜61の各端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cにそれぞれ電気的に接続させるため、個々のコンデンサ素子10〜60に対するレーザ強度を一定に保つことが可能となり、各陽極部11〜61の端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cと接続部材80との溶接を、いずれも同じような状態で均等に行うことが可能となる。
また、接続工程では、第1層のコンデンサ素子10と平行に底部82を対向配置させた状態で接続部本体81を陽極部11〜61の端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cに当接させることにより、底部82に非重畳部82Aを規定するようにした。このため、非重畳部82Aに対してコンデンサ素子10〜60の積層方向からレーザを照射することで、プリント基板70の第1の導電パターン71Aに非重畳部82Aを電気的に接続させることができる。
また、接続工程の後に、プリント基板70の導電パターン71Aを底部82に当接させ、非重畳部82Aに対してコンデンサ素子10〜60の積層方向からレーザを照射することにより、底部82をプリント基板70の導電パターン71Aに電気的に接続するプリント基板接続工程を行うようにしたため、底部82は非重畳部を有し、コンデンサ素子10〜60がその積層方向において重なる重畳部に対して薄く、レーザ強度の制御が容易であることから、レーザの強度を調整してやることでレーザ照射によりプリント基板70を貫通してしまうことを防止することができる。
本発明による固体電解コンデンサ及び固体電解コンデンサの製造方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、コンデンサ素子10〜60は6つ設けられていたが、個数は5つ以上であれば何枚であってもよい。これに伴い、レーザ照射により接続部本体上に設けられるドットの位置や径、ドットの個数も変わる。
但し、この場合であっても、各ドットは、隣接する2つ以上のコンデンサ素子の陽極部の端部に跨って設けられる。また、少なくともコンデンサ素子の積層方向の一端又は他端のドットと、積層方向において当該一端又は他端のドットに隣接するドットとが、積層方向に垂直の方向へずれ、互いに近接する位置関係で密に配置され、各ドットが互いに重ならない位置関係をなすか又は所定の面積以下で各ドットが互いに重なる位置関係をなす。
例えば、図5に示されるように、コンデンサ素子110〜180を8つ備える固体電解コンデンサの場合には、接続部本体81′上においてドット81a′、81b′は、コンデンサ素子110の陽極部111の端部111Bとコンデンサ素子120の陽極部121の端部121Bとに跨り、ドット81c′はコンデンサ素子130の陽極部131の端部131Bとコンデンサ素子140の陽極部141の端部141Bとに跨っている。また、ドット81d′はコンデンサ素子150の陽極部151の端部151Bとコンデンサ素子160の陽極部161の端部161Bとに跨っており、ドット81e′、81f′はコンデンサ素子170の陽極部171の端部171Bとコンデンサ素子180の陽極部181の端部181Bとに跨っている。
また、コンデンサ素子110〜180の積層方向の一端のドット81a′、81b′と、当該ドット81a′、81b′に隣接するドット81c′とは、コンデンサ素子110〜180の積層方向に垂直の方向、即ち、図5の左右方向へずれている。ドット81c′は、コンデンサ素子110〜180の積層方向に垂直の方向において当該一端の2つのドット81a′、81b′の間の位置に設けられている。
同様に、コンデンサ素子110〜180の積層方向の他端のドット81e′、81f′と、当該ドット81e′、81f′に隣接するドット81d′とは、コンデンサ素子110〜180の積層方向に垂直の方向、即ち、図5の左右方向へずれている。ドット81d′ は、コンデンサ素子110〜180の積層方向に垂直の方向において当該他端の2つのドット81e′、81f′の間の位置に設けられている。コンデンサ素子110〜180の積層方向で見た場合、即ち、図5の上下方向で見た場合には、ドット81a′、81e′と、ドット81c′、81d′と、ドット81b′、81f′とがそれぞれ並べられた3列をなしている。
また、コンデンサ素子を8つ備える固体電解コンデンサの場合には、図6に示されるように、レーザの径を変えてドット81a″〜81e″とし、ドット81a″〜81e″のような配置としてもよい。ドット81a″、81b″はコンデンサ素子110の陽極部111の端部111Bとコンデンサ素子120の陽極部121の端部121Bとコンデンサ素子130の陽極部131の端部131Bとに跨り、ドット81c″はコンデンサ素子140の陽極部141の端部141Bとコンデンサ素子150の陽極部151の端部151Bとに跨っている。ドット81d″、81e″はコンデンサ素子160の陽極部161の端部161Bとコンデンサ素子170の陽極部171の端部171Bとコンデンサ素子180の陽極部181の端部181Bとに跨っている。
なお、ドット81c″については、図6に示されるように、僅かにコンデンサ素子130の陽極部131の端部131Bとコンデンサ素子160の陽極部161の端部161Bとに跨っているが、このようなドット81c″の周縁部ではレーザの照射が弱く、この位置においては、接続部本体81′とコンデンサ素子130、160の陽極部131、161の端部131B、161Bとは実質的に接合されていない。
コンデンサ素子110〜180の積層方向の一端のドット81a″、81b″と、当該ドット81a″、81b″に隣接するドット81c″とは、コンデンサ素子110〜180の積層方向に垂直の方向、即ち、図6の左右方向へずれている。ドット81c″は、コンデンサ素子10〜60の積層方向に垂直の方向において当該一端の2つのドット81a″〜81b″の間の位置に設けられている。
同様に、コンデンサ素子110〜180の積層方向の他端のドット81d″、81e″と、当該ドット81d″、81e″に隣接するドット81c″とは、コンデンサ素子110〜180の積層方向に垂直の方向、即ち、図6の左右方向へずれている。ドット81c″は、コンデンサ素子110〜180の積層方向に垂直の方向において当該他端の2つのドット81d″、81e″の間の位置に設けられている。コンデンサ素子110〜180の積層方向で見た場合、即ち、図6の上下方向で見た場合には、ドット81a″、81d″と、ドット81b″、81e″とがそれぞれ並べられた2列とドット81c″が1つ並べられた1列との計3列をなしている。
図7に示されるように、コンデンサ素子210〜290を9つ備える固体電解コンデンサの場合には、接続部本体81″上においてドット81a′′′、81b′′′はコンデンサ素子210の陽極部211の端部211Bとコンデンサ素子220の陽極部221の端部221Bとに跨り、ドット81c′′′はコンデンサ素子230の陽極部231の端部231Bとコンデンサ素子240の陽極部241の端部241Bとに跨っている。また、ドット81d′′′、81e′′′はコンデンサ素子240の陽極部241の端部241Bとコンデンサ素子250の陽極部251の端部251Bとコンデンサ素子260の陽極部261の端部261Bとに跨り、ドット81f′′′はコンデンサ素子260の陽極部261の端部261Bとコンデンサ素子270の陽極部271の端部271Bとに跨っている。また、ドット81g′′′、81h′′′はコンデンサ素子280の陽極部281の端部281Bとコンデンサ素子290の陽極部291の端部291Bとに跨っている。
なお、ドット81f′′′については、図7に示されるように、僅かにコンデンサ素子280の陽極部281の端部281Bに跨っているが、ドット81f′′′の周縁部ではレーザの照射が弱く、この位置においては、接続部本体81″とコンデンサ素子280の陽極部281の端部281Bとは実質的に接合されていない。
また、コンデンサ素子210〜290の積層方向の一端のドット81a′′′、81b′′′と、当該ドット81a′′′、81b′′′に隣接するドット81c′′′とは、コンデンサ素子210〜290の積層方向に垂直の方向、即ち、図7の左右方向へずれている。ドット81c′′′は、コンデンサ素子210〜290の積層方向に垂直の方向において一端の2つのドット81a′′′、81b′′′の間の位置に設けられている。
同様に、コンデンサ素子210〜290の積層方向の他端のドット81g′′′、81h′′′と、当該ドット81g′′′、81h′′′に隣接するドット81f′′′とは、コンデンサ素子210〜290の積層方向に垂直の方向、即ち、図7の左右方向へずれている。ドット81f′′′ は、コンデンサ素子210〜290の積層方向に垂直の方向において当該他端の2つのドット81g′′′、81h′′′の間の位置に設けられている。コンデンサ素子210〜290の積層方向で見た場合、即ち、図7の上下方向で見た場合には、ドット81a′′′、81d′′′、81g′′′と、ドット81b′′′、81e′′′、81h′′′とが並べられた2列とドット81c′′′、81f′′′とが並べられた1列との計3列をなしている。
また、本実施の形態では、ドット81a〜81eは互いに重ならない位置関係となっていたが、所定の面積以下で各ドットが互いに重なる位置関係をなしていてもよい。ここで、所定の面積とは、各ドットが互いに重なった位置関係となった場合であってもレーザ照射により接続部材に貫通孔が形成されない程度に重なり合う面積をいう。
また、接続部材のレーザ照射を受ける表面は粗面化されていてもよい。粗面化されていることにより、レーザ光の反射を低減することができる。このため、接続部材におけるレーザ光の吸収を増加させることができる。
また、陽極部11〜61を構成する弁作用金属はアルミニウムにより構成されたが、これに限定されない。例えばタンタルやニオブ等であってもよい。
また、接続部材80はNiにより構成されていたが、これに限定されない。例えば、SUS、鉄、アルミニウム、銅、リン青銅、Mo、Cr等の導電性の金属、又は、Fe―Ni合金に代表されるようなこれらを含む合金であればよい。Fe―Ni合金としては、例えばNiを42%含有する合金が挙げられる。また、表面に導電性材料がメッキされたものを用いてもよい。この場合メッキとしては、例えば、Snメッキ、Znメッキ、半田メッキ、Niメッキ等が用いられる。これらは、レーザを反射する等のレーザ照射に対する悪影響の少ないものであるため用いられる。また、例えば、日立電線株式会社により製造されている商品名「日立ハイクラッド」のような、異種金属を金属学的に接合させたいわゆるクラッド材等を用いてもよい。
また、レーザはYAGレーザ溶接が用いられたが、これに限定されず、例えば、第二高調波レーザや、LD(半導体)レーザ、エキシマレーザ等を用いてもよい。
また、接続部本体81は、すべての陽極部11〜61の端部11B〜61Bの凸部11C〜61Cに当接した状態でレーザ照射されたが、当接せずに接続部本体81と凸部11C〜61Cとの間に僅かな隙間を介して近接対向した状態でレーザ照射されてもよい。この場合には、接続部本体81と凸部11C〜61Cとの間の距離は50μm以下であることが好ましく、更に、30μm以下であることがより好ましい。このように近接対向した状態でレーザ照射された場合であっても、レーザ照射によって接続部本体81が溶融して陽極部11〜61の凸部11C〜61Cに当接した状態となると考えられ、凸部11C〜61Cと接続部本体81とは電気的に接続されると考えられる。
また、接続部材の形状は本実施の形態における接続部材の形状に限定されない。例えば、接続部材の底部の長手方向の長さと、同方向における接続部本体の幅とが同一であってもよい。