JP4329237B2 - 強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法及び強誘電体薄膜形成用溶液 - Google Patents

強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法及び強誘電体薄膜形成用溶液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、その電気的又は光学的性質により各種デバイスへの応用が期待されるSBT又はSBTN強誘電体薄膜を形成するための溶液及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SBT又はSBTN強誘電体薄膜は、その優れた強誘電特性からFeRAM等の種々の誘電体デバイスへの応用が期待されている。このSBT又はSBTN強誘電体薄膜の形成方法には、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、MOCVD法等があるが、比較的安価で簡便な薄膜形成法として、ゾルゲル法がある。ゾルゲル法は、U. S. Pat. filing No. 09/061362に記載の通り、有機金属化合物の溶液よりなるSBT又はSBTN強誘電体薄膜形成用溶液を基板に塗布し、塗布後に加水分解させて酸化物薄膜とした後、焼成して結晶化させることにより強誘電体薄膜を形成する方法であり、原料の有機金属化合物としては、一般に、金属アルコキシドやその部分加水分解物、或いは有機酸塩が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来用いられているSBT又はSBTN強誘電体薄膜形成用溶液では、溶液の熱分解温度(Sr,Bi,Ta,Nbの各有機金属化合物から有機物部分が脱離する反応がほぼ終了する温度)が450℃前後と高温で、有機化合物が有機金属から脱離し難いため、熱分解反応を終了させるためには高温の熱処理が必要であり、ひいては、強誘電特性を得るために必要な結晶化アニール温度も700〜800℃と非常に高いという問題があった。また、長期間溶液を保存した場合、液中のパーティクルの増加や沈殿発生等の現象が起こり、溶液を長期間安定して使用することができないという欠点もあった。
【0004】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、熱分解特性に優れ、長期保存安定性に優れたSBT又はSBTN強誘電体薄膜形成用溶液を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のSBT強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法は、2価アルコールとSr,Bi及びTaの各有機金属化合物を含有してなるSBT強誘電体薄膜形成用溶液を製造する方法において、2価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを用い、Bi有機金属化合物として2−エチルヘキサン酸Biを用い、Ta有機金属化合物としてTaジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートを用いる強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法であって、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加する工程と、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加した後加熱還流し、その後2−エチルヘキサン酸Biを添加して加熱還流する工程とを有することを特徴とする。
【0006】
本発明のSBTN強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法は、2価アルコールとSr,Bi,Ta及びNbの各有機金属化合物を含有してなるSBTN強誘電体薄膜形成用溶液を製造する方法において、2価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを用い、Bi有機金属化合物として2−エチルヘキサン酸Biを用い、Ta有機金属化合物としてTaジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートを用い、Nb有機金属化合物としてNbジエチレングリコラート又はNbトリエチレングリコラートを用いる強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法であって、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加する工程と、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加した後加熱還流し、その後2−エチルヘキサン酸Biを添加して加熱還流する工程とを有することを特徴とする。
【0007】
即ち、本発明者らは、SBT又はSBTN強誘電体形成用溶液の熱分解特性と長期保存安定性を改善すべく鋭意検討を行った結果、2価アルコールとSr,Bi及びTa、或いは更にNbの各有機金属化合物を含有してなるSBT又はSBTN強誘電体薄膜形成用溶液の製造に当たり、多価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを、Bi有機金属化合物として2−エチルヘキサン酸Biを、Ta有機金属化合物としてTaジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートを、Nb有機金属化合物としてNbジエチレングリコラート又はNbトリエチレングリコラートを用いることにより、熱分解温度の低減と長期保存安定性の向上を図ることができ、また、この溶液を加熱還流した後、メンブランフィルターで濾過してパーティクルを除去することにより、溶液の長期保存安定性のより一層の向上を図ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、SBT又はSBTN強誘電体薄膜を形成するための各有機金属化合物としては、従来、各種のものが提案されているが、従来一般的に用いられている有機金属化合物、特にTa有機金属化合物及びNb有機金属化合物では、いずれも経時安定性は高いが分解温度が高い、或いは、熱分解温度は低いが安定性が低いといった問題があるのに対し、2−エチルヘキサン酸Biと、Ta及びNbのジエチレングリコラート又はトリエチレングリコラートは、他のBi,Ta,Nbの有機金属化合物と異なり、
(1) 経時安定性が高い
(2) 水分に対する反応性が低い
(3) 熱分解温度が低い
といった優れた特長を有する。この物性の差は、Ta及びNbに配位している有機物によるところが大きく、水酸基を多く有し、かつ適度な大きさの分子であるジエチレングリコール又はトリエチレングリコールであれば上記(1)(3)の良好な効果が得られる。
【0009】
また、溶媒として多価アルコールを用いない場合には、SBT又はSBTN強誘電体薄膜の形成に当たり、良好な電気特性を得るためには、結晶化アニールのために750℃以上の高温熱処理が必要となるが、多価アルコールを用いることにより、後述の実施例の結果からも明らかなように700℃以下の比較的低い結晶化アニール温度で電気特性に優れたSBT又はSBTN強誘電体薄膜を形成することができる。特に、多価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを用いた場合には、SBT又はSBTN強誘電体薄膜形成用溶液の保存安定性を高めることができ、この保存安定性の向上効果はジエチレングリコール又はトリエチレングリコール以外の多価アルコールでは達成し得ない。
【0010】
本発明においては、2価アルコール中にSr,Br及びTa或いは更にNbの各有機金属化合物を含有する溶液を調製した後、該溶液を加熱還流し、その後、メンブランフィルターで濾過することにより液中のパーティクルを除去することが好ましく、これにより、長期保存安定性に優れたSBT又はSBTN強誘電体薄膜形成用溶液を得ることができる。
【0011】
本発明の方法は、2価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを用い、Ta出発原料としてTaジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートを用い、Nb出発原料としてNbジエチレングリコラート又はNbトリエチレングリコラートを用い、Bi出発原料として2−エチルヘキサン酸Biを用いることを特徴とするものであることから、従って、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールにTaジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートとNbジエチレングリコラート又はNbトリエチレングリコラートとを添加する工程、更に、この添加後加熱還流し、その後2−エチルヘキサン酸Biを添加して加熱還流する工程を有する。
【0012】
本発明の強誘電体薄膜形成用溶液は、このような本発明の強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法により製造されたものであり、好ましくは熱分解温度が350℃以下で、粒径0.5μm以上のパーティクルの存在量が50個/mL以下であることを特徴とする。
【0013】
なお、本発明において、2価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを用いるが、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを混合使用しても良いことは言うまでもない。同様にTa有機金属化合物としてTaジエチレングリコラートとTaトリエチレングリコラートとを併用しても良く、また、Nb有機金属化合物としてNbジエチレングリコラートとNbトリエチレングリコラートとを併用しても良い。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明で用いる有機金属化合物原料は次の通りである。
【0016】
Sr有機金属化合物:Srイソプロポキシド、Srブトキシド等のアルコキシド、2−エチルヘキサン酸Sr等のカルボン酸塩等が挙げられるが、本発明において用いるSr有機金属化合物には特に制限はない。Sr有機金属化合物はSrジエチレングリコラート又はSrトリエチレングリコラートであっても良く、従ってこの場合には、溶媒としてのジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属Srを添加して加熱下反応させることにより、Srジエチレングリコラート又はSrトリエチレングリコラートを生成させても良い。
【0017】
Bi有機金属化合物:2−エチルヘキサン酸Biを用いる。
【0018】
Ta有機金属化合物:Taジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートを用いる。
【0019】
Nb有機金属化合物:Nbジエチレングリコラート又はNbトリエチレングリコラートを用いる。
【0020】
なお、Ta及びNbのジエチレングリコラート、トリエチレングリコラートは金属Ta,Nbをそれぞれジエチレングリコール又はトリエチレングリコールと反応させること、或いはTa,Nbのアルコキシド(アルコラート)をジエチレングリコール又はトリエチレングリコール中で加熱還流し、アルコールの置換反応を行うことで得ることができる。
【0021】
各金属アルコキシドはそのまま使用しても良いが、分解を促進するために部分加水分解物として使用しても良い。
【0022】
本発明のSBT又はSBTN強誘電体薄膜形成用溶液を調製する場合、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールと各有機金属化合物を、所望のSr,Bi,Ta,Nb比、及び所望の濃度になるように、適当な比率で混合する。この場合、溶液の均質化のために加熱還流することが行われるが、Bi有機金属化合物は比較的熱的に不安定であり、長時間の加熱を加えると、液中に沈殿を生じることがあるため、Sr,Ta,Nbの各有機金属化合物について別工程で予め加熱還流を行った後、最後にBi有機金属化合物を添加し、若干の加熱還流を行うのが好ましい。
【0023】
本発明においては、このようにジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに各有機金属化合物を添加して加熱還流することにより、均質化して得られた溶液を基板への塗布に適した濃度及び濡れ性とするために、適当な溶媒を使用して濃度調整を行うが、ここで用いる溶媒は、塗布に用いる基板の種類、形成する強誘電体薄膜の膜厚等に応じて適宜決定される。一般的には、アルコール類(例えばエタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、カルボン酸(例えば酢酸、2−エチルヘキサン酸)、炭化水素(n−ヘキサン、n−オクタン)等が挙げられるが、好ましくは毒性が低いエタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールが望ましい。これらの溶媒は1種類のみに限定されず、所望の塗布特性に応じて2種類以上の有機溶剤を混合して用いても良い。なお、強誘電体薄膜形成用溶液の有機金属化合物の合計濃度は、金属酸化物換算量で0.1〜20重量%程度とするのが好ましい。
【0024】
この有機金属化合物溶液中には、必要に応じて安定化剤として、β−ジケトン類(例えば、アセチルアセトン、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等)、ケトン酸類(例えば、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等)、これらのケトン酸のメチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類、オキシ酸類(例えば、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等)、これらのオキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類(例えば、ジアセトンアルコール、アセトイン等)、α−アミノ酸類(例えば、グリシン、アラニン等)、アルカノールアミン類(例えば、ジェタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン)等を、(安定化剤分子数)/(金属原子数)で0.2〜3程度添加しても良い。
【0025】
本発明では、このようにして調製された強誘電体薄膜形成用溶液をメンブランフィルターで濾過することにより、パーティクルを除去し、好ましくは粒径0.5μm以上のパーティクルの個数が溶液1mL当り50個/mL以下となるようにすることが、溶液の経時安定性の向上の点で好ましい。
【0026】
溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数が50個/mLを超えると、長期保存安定性が劣るものとなる。この溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数は少ない程好ましく、特に50個/mL以下であることが好ましい。
【0027】
このようなパーティクル個数となるように、調製後の溶液をメンブランフィルターで濾過する方法としては特に制限はなく、具体的には次のような方法が挙げられるが、特に、ポンプの脈動のない加圧濾過法が好ましい。
(1) 市販のメンブランフィルター、例えば、0.2μm孔径のメンブランフィルターを使用し、シリンジで圧送する濾過法。
(2) 市販のメンブランフィルター、例えば0.05μm孔径のメンブランフィルターと加圧タンクを組み合せた加圧濾過法。
(3) 上記(2)のフィルターと溶液循環槽を組み合せた循環濾過法。
【0028】
いずれの方法においても、溶液圧送圧力により、フィルターによるパーティクル捕捉率が異なる。圧力が低いほど捕捉率が高くなることは一般的に知られており、特に、(1)(2)において、パーティクル50個/mL以下の条件を実現するためには、低圧で非常にゆっくりとフィルターに通す必要がある。
【0029】
このような強誘電体薄膜形成用溶液により、強誘電体薄膜を形成するには、上述の本発明の強誘電体薄膜形成用溶液をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法等の塗布法により基板上に塗布し、乾燥(仮焼成)及び本焼成を行う。
【0030】
使用される基板の具体例としては、基板表層部に、単結晶Si、多結晶Si、Pt、Pt(最上層)/Ti、Pt(最上層)/Ta、Ru、RuO、Ru(最上層)/RuO、RuO(最上層)/Ru、Ir、IrO、Ir(最上層)/IrO、Pt(最上層)/Ir、Pt(最上層)/IrO、SrRuO又は(LaSr1−x)CoO等の層状ペロブスカイト型導電性酸化物等を用いた基板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
なお、1回の塗布では、所望の膜厚が得られない場合には、塗布、仮焼成の工程を複数回繰り返し行った後、本焼成を行う。
【0032】
ここで、仮焼成は、溶媒を除去すると共に有機金属化合物を加水分解して複合酸化物に転化させるために行うことから、空気中、酸化雰囲気中、又は含水蒸気雰囲気中で行う。空気中での加熱でも、加水分解に必要な水分は空気中の湿気により十分に確保される。この加熱は、溶媒の除去のための低温加熱と、有機金属化合物の分解のための高温加熱の2段階で実施しても良い。
【0033】
本焼成は、仮焼成で得られた薄膜を結晶化温度以上の温度で焼成して結晶化させるための工程であり、これにより強誘電体薄膜が得られる。
【0034】
本発明の強誘電体薄膜形成用溶液は、熱分解温度が350℃以下と低いことから、この仮焼成は150〜350℃で行うことができまた、本焼成は600〜800℃で行うことができる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0036】
実施例1
金属Sr0.83gとTaジエチレングリコラート13.4gと、Nbジエチレングリコラート2.94gとジエチレングリコール14.4gとを混合し、180℃で加熱還流、蒸留を行った後、室温まで冷却した。この液に27重量%の2−エチルヘキサン酸Biの2−エチルヘキサン酸溶液16.2gを加えた後、液重量が50gになるようにジエチレングリコールを加えた後、更に加熱還流を行って、有機金属化合物の合計濃度が約20重量%(金属酸化物換算)のSBTN強誘電体薄膜形成用溶液(Si:Bi:Ta:Nb(モル比)=0.8:2.2:1.6:0.4)を得、更にこの溶液の有機金属化合物の合計濃度(金属酸化物換算)が5重量%となるように有機溶剤としてイソプロピルアルコールを添加して濃度調整を行った。その後、目開き0.2μmのPTFEフィルターで濾過を行って液中のパーティクルを除去した。得られた溶液について、溶液中の、粒径0.5μm以上のパーティクルの個数を液中パーティクルカウンターにより測定したところ50個/mLであった。
【0037】
この溶液を3ヶ月放置したところ、経時変化による沈殿発生はなく、経時安定性に優れることが確認された。
【0038】
この溶液を、Pt/Ti/SiO/Siにスピンコートで2000rpm×30secの条件で塗布し、ホットプレート上250℃で10分間乾燥後、RTA(急速高速加熱炉)を用いて650℃×1分(昇温速度20℃/sec)の熱処理を行った。この工程を4回繰り返し、約200nmの膜厚のSBTN薄膜を得た後、管状炉を用いて酸素雰囲気下で650℃で焼成を行った。その後、スパッタリングにより上部にPt電極を成膜した後、電気特性評価を行ったところ、強誘電特性を示すD−Eヒステリシスが観察された。
【0039】
実施例2
実施例1において、Taジエチレングリコラートの代りにTaトリエチレングリコラート17.6gを用いたこと以外は同様に溶液の調製及びSBTN薄膜の形成を行い、溶液の経時安定性及びSBTN薄膜の電気特性の評価を行ったところ、実施例1の結果と同様、溶液は3ヶ月放置した後も経時変化による沈殿発生は無く安定であり、また、SBTN薄膜は、強誘電特性を示すD−Eヒステリシスが観察された。
【0040】
実施例3
実施例1において、Nbジエチレングリコラートの代りにNbトリエチレングリコラート4.0gを用いたこと以外は同様に溶液の調製及びSBTN薄膜の形成を行い、溶液の経時安定性及びSBTN薄膜の電気特性の評価を行ったところ、実施例1の結果と同様、溶液は3ヶ月放置した後も経時変化により沈殿発生は無く安定であり、また、SBTN薄膜は強誘電特性を示すD−Eヒステリシスが観察された。
【0041】
実施例4
実施例1においてジエチレングリコールの代りにトリエチレングリコールを用いたこと以外は同様に溶液の調製及びSBTN薄膜の形成を行い、溶液の経時安定性及びSBTN薄膜の電気特性の評価を行ったところ、実施例1の結果と同様、溶液は3ヶ月放置した後も経時変化による沈殿発生は無く安定であり、また、SBTN薄膜は強誘電特性を示すD−Eヒステリシスが観察された。
【0042】
比較例1〜4
実施例1において、ジエチレングリコールの代りに下記の2価アルコールを用いたこと以外はそれぞれ同様に溶液の調製及びSBTN薄膜の形成を行い、溶液の経時安定性及びSBTN薄膜の電気特性の評価を行ったところ、いずれの溶液の場合も3ヶ月以内に沈殿が発生し、保存安定性に劣ることが判明した。ただし、溶液の合成直後のそれぞれの溶液を用いて形成したSBTN薄膜の電気特性の評価を行ったところ、強誘電特性を示すD−Eヒステリシスが観察された。
比較例1:エチレングリコ−ル
比較例2:プロピレングリコール
比較例3:1,3−プロパンジオール
比較例4:1,2−ブタンジオール
【0043】
比較例5
実施例1において、Taジエチレングリコラートの代わりにTaエトキシド7.7gを用い、Nbジエチレングリコラートの代りにNbエトキシド1.5gを用い、180℃での加熱還流、蒸留を行わなかったこと以外は同様に溶液の調製及びSBTN薄膜の形成を行い、溶液の経時安定性及びSBTN薄膜の電気特性の評価を行ったところ、実施例1の結果と同様、溶液は3ヶ月放置した後も経時変化による沈殿発生は無く安定であったが、得られたSBTN薄膜は、強誘電特性が観察されなかった。
【0044】
比較例6
実施例1において2−エチルヘキサン酸Biの代りに金属Bi4.37gを用いたこと以外は同様に溶液の調製及びSBTN薄膜の形成を行い、溶液の経時安定性及びSBTN薄膜の電気特性の評価を行ったところ、液合成直後に沈殿が発生した。
【0045】
比較例7
2−エチルヘキサン酸Sr0.1mol、2−エチルヘキサン酸Bi0.22mol、Taエトキシド0.16mol及びNbエトキシド0.4molをそれぞれ2−エチルヘキサン酸100mlに溶解し、加熱還流、蒸留を行った後、室温まで冷却し、約0.1mol/LのSBTN溶液を得た。その後、この溶液を重量濃度換算で5重量%になるように、酢酸ブチルを用いて濃度調整を行った後、目開き0.2μmのPTFEフィルターで濾過を行い、SBTN薄膜形成用溶液を得た。この溶液は3ヶ月放置した後も経時変化による沈殿発生は無く安定であった。
【0046】
この溶液を用いて実施例1と同様の成膜を行った後、電気特性の評価を行ったが、強誘電特性は観察されなかった。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、熱分解特性に優れ、長期保存安定性に優れた強誘電体薄膜形成用溶液が提供され、このような強誘電体薄膜形成用溶液によれば、高品質で強誘電特性に優れた強誘電体薄膜を比較的低い熱処理温度にて再現性良く形成することができる。

Claims (6)

  1. 2価アルコールとSr,Bi及びTaの各有機金属化合物を含有してなる強誘電体薄膜形成用溶液を製造する方法において、2価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを用い、Bi有機金属化合物として2−エチルヘキサン酸Biを用い、Ta有機金属化合物としてTaジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートを用いる強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法であって、
    ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加する工程と、
    ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加した後加熱還流し、その後2−エチルヘキサン酸Biを添加して加熱還流する工程とを有することを特徴とする強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法。
  2. 2価アルコールとSr,Bi,Ta及びNbの各有機金属化合物を含有してなる強誘電体薄膜形成用溶液を製造する方法において、2価アルコールとしてジエチレングリコール又はトリエチレングリコールを用い、Bi有機金属化合物として2−エチルヘキサン酸Biを用い、Ta有機金属化合物としてTaジエチレングリコラート又はTaトリエチレングリコラートを用い、Nb有機金属化合物としてNbジエチレングリコラート又はNbトリエチレングリコラートを用いる強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法であって、
    ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加する工程と、
    ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールに金属ジエチレングリコラート又は金属トリエチレングリコラートを添加した後加熱還流し、その後2−エチルヘキサン酸Biを添加して加熱還流する工程とを有することを特徴とする強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、該加熱還流後、メンブランフィルターで濾過することにより液中のパーティクルを除去することを特徴とする強誘電体薄膜形成用溶液の製造方法。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項の方法で製造された強誘電体薄膜形成用溶液。
  5. 請求項において、熱分解温度が350℃以下であることを特徴とする強誘電体薄膜形成用溶液。
  6. 請求項又はにおいて、粒径0.5μm以上のパーティクルの存在量が50個/mL以下であることを特徴とする強誘電体薄膜形成用溶液。
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