JP4328987B2 - 嵩高性に優れたパイル製品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、嵩高性に優れたパイル製品に関する。さらに詳しくは、捲縮発現性が優れ、且つ捲縮の発現が繊維軸方向に変化していることを特徴とする、優れた染色加工性を併せ持つウ−ルライクなアクリロニトリル系複合繊維,或いは且つ潜在的に熱による高収縮性を有するアクリロニトリル系繊維を混用したパイル糸に用いたパイル製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりアクリロニトリル系複合繊維を用いたパイル製品としてスライバ−ニット機による編地、つまりハイパイル製品が生産されているが、ふとんやぬいぐるみの詰め綿用に使用されているポリエステル系複合繊維を混用してなるハイパイル製品に比較して、乾熱あるいは湿熱タンブラ−加工における高クリンプ発現作用によるパイル表面の毛玉状形態の形成能力、いわゆる羊の毛皮の表面形態である“シ−プ状形態”の形成能力と嵩高性付与において劣性であるため、ポリエステル系複合繊維を混用してなるパイル製品が市場の多く占められている。
また紡績糸をパイル糸として構成したパイル編物製品、あるいはパイル織物製品のいわゆるボア製品において乾熱あるいは湿熱タンブラ−加工では“シ−プ状形態”の形成能力と充分なる嵩高性付与が得られいない。そのためパイル表面に樹脂を付着させてから乾熱タンブラ−加工してパイルを部分的かつランダムに固まらせる方法やパイル表面に高温蒸気をノズルからから噴出させて凹凸を形成する方法によって擬似“シ−プ状形態”を形成する方法が採用されているが風合が硬くなり衣料用途や寝装用途には適正ではない。
一方ハイパイル製品で多く使用されているふとんやぬいぐるみの詰め綿用に使用されているポリエステル系複合繊維を混用しようとすると、該ポリエステル系複合繊維は原綿の捲縮が多いため紡績工程においてネップの発生やドラフト不良が発生して正常な紡績糸にはならないため、およびポリエステル系繊維の染色は通常高圧染色を要するため染色設備の制約や染色コストが高くなるためかかる混用品は採用されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は前述の如き従来技術に付随する欠点を改善しようとするものであり、
本発明の目的とすところは、乾熱あるいは湿熱タンブラ−加工などの簡便な加工により容易に“シ−プ状形態”を形成させ、嵩高性を付与した嵩高性に優れたパイル製品を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
アクリル系繊維からなるパイル糸を有するパイル製品であり、前記パイル糸が、アクリルニトリル系重合体成分中の第二成分モノマ−量の差が1から10重量%である高収縮性及び低収縮性の2種のアクリロニトリル系重合体成分を繊維軸方向にサイドバイサイドに接合してなる下記複合繊維特性を満たす複合繊維を20〜80重量%、繊維軸方向に熱による高収縮性を潜在するアクリロニトリル系重合体からなる収縮繊維を20〜80重量%及びアクリロニトリル系重合体またはアクリロニトリル系重合体以外の繊維を0〜80重量%含有し、かつパイル糸を構成するアクリル系繊維の単繊維が繊維軸方向に不均一な捲縮を有し、かつ該単繊維の少なくとも一部が単繊維同士で絡み合って形成された複数の独立した毛玉状物を有していることを特徴とする嵩高性に優れたパイル製品。
[複合繊維特性]複合繊維のスルフォン酸基の量が0.2〜1.0重量%であり、共重合された第二成分モノマ−量の多い方である高熱収縮成分中のスルフォン酸基の量が、低熱収縮性成分中のそれより0.2 〜1.0重量%多く、しかも高熱収縮成分中のスルホン酸基の量が下記式(1)及び(2)の範囲で繊維軸方向に50〜600mmの周期で変化しているアクリル系複合繊維。
【0005】
式(1)
1.2≦(Amax/Amin)≦3
(但し、Amax/Aminは高熱収縮性アクリロニトリル系重合体成分中の繊維軸方向のスルフォン酸基の量(重量%)の最大値と最小値を示す。)
【0006】
式(2)
0.24≦(A−B)×(Amax/Amin)≦2.5
(但し、A、Bは高熱収縮性及び低熱収縮性のアクリロニトリル系重合体成分中の繊維軸方向の平均スルフォン酸基の量(重量%)を示す。)
【0007】
また、前記アクリロニトリル系重合体からなる繊維が重合体成分中の第三成分モノマ−に塩基性基を含有するアニオン性モノマーを用いた酸性染料可染繊維である前記の嵩高性に優れたパイル製品である。
【0008】
更に、熱又は水感性の捲縮発現性アクリル系繊維をパイル糸とする編織物のパイル糸を開毛機によって単繊維状態に開毛し、該開毛したパイルを剪毛したはパイル編織物を製造し、該パイル織編物に熱及び/又は水蒸気を付与しながらタンブラー加工することを特徴とする嵩高性に優れたパイル製品の製造法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、アクリル系繊維からなるパイル糸を有するパイル製品であり、パイル糸を構成するアクリル系繊維の単繊維が繊維軸方向に不均一な捲縮を有し、かつ該単繊維の少なくとも一部が単繊維同志で絡み合って形成された複数の独立した毛玉状物を有し、所謂“シープ状形態”の嵩高性を示していることを特徴とする。
【0010】
本発明におけるパイル糸の望ましい構成は、前記の複合繊維を20〜80重量%、アクリロニトリル系重合体からなる繊維が該繊維軸方向に熱による高収縮性を潜在する収縮繊維を20〜80重量%、アクリロニトリル系重合体またはアクリロニトリル系重合体以外からなる繊維を0〜60重量%含有する紡績糸である。
【0011】
最も望ましいパイル糸は、前記複合繊維を20〜80重量%、アクリロニトリル系重合体成分中の第三成分モノマ−に塩基性基を含有するアニオン性染料可染繊維いわゆる酸性染料可染繊維が繊維軸方向に熱による高収縮性を潜在する収縮繊維を20〜80重量%、アクリロニトリル系重合体またはアクリロニトリル系重合体以外からなる繊維を0〜60重量%含有する紡績糸をパイル糸として構成することによって達成される。
【0012】
本発明のパイル製品は、例えば、熱又は水感性の捲縮発現性アクリル系繊維をパイル糸とする編織物のパイル糸を開毛機によって単繊維状態に開毛し、該開毛したパイルを剪毛したはパイル編織物を製造し、該パイル織編物に熱及び/又は水蒸気を付与しながらタンブラー加工することにより得られる。特に、パイル糸中に前記の複合繊維を含有させることが毛玉状物を多数形成させ、嵩高性に優れたパイル製品を得るのに好ましい。
【0013】
【実施例】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、実施例中捲縮特性、糸ボイル収縮率は次の測定法により求めた値であり、表中の◎、○、△、×の記号は各々の評価項目の特性が下記であることを示す。
【0014】
(1) 捲縮特性
試料:原綿約10gを水中フリ−な状態で15分間沸騰させ、徐冷(20℃以下)後、水分を濾紙で取り去り、フリ−な状態で80℃で30分乾燥させ、徐冷(室温まで)する。
測定:JIS L1015 (n=50)
Cn;捲縮数 (ケ/25mm)
Ci;捲縮度 (%)
【0015】
(2) 熱水収縮率(%)
試料:紡績原糸を1番手になるよう均整に引き揃えた束に荷重100gを加えて、100cmの長さの間隔に縫い糸で縛り印を付け、約10cm角のガ−ゼの袋に入れ、水中フリ−な状態で15分間沸騰させ、徐冷(20℃以下)後、袋から取りだし、水分を濾紙で取り去り、フリ−な状態で80℃で30分乾燥させ、徐冷(室温まで)する。
測定:次式で算出する。(L0−L1)/L0×100(n=10)
L0;紡績原糸を1番手に引き揃えた束に荷重100gを加え印を付けた間隔の長さ(原長100cm)
L1;前述した処理後、束に荷重100gを加え、付けられてある印の間隔の長さ。
【0016】
(3)シ−プ状形態
試料:パイル用フライス編機、あるいはダブルラッシェル編機により編成し、パイル面を後出の仕上げ加工およびタンブラ−加工した編ボア地、あるいはマイヤ−毛布地。
測定:パイル表面地の外観判定すなわちパイル糸を構成していた繊維が開繊された後、タンブラ−加工で繊維1本1本が互いに絡み合って玉状態に集合した形態いわゆる“シ−プ状形態”を判定する。
◎;各々の玉状態が独立し、丸味形状で、嵩高い。
○;各々の玉状態が独立し、やや丸味形状に欠けるが、嵩高い。
△;各々の玉状態が独立性に乏しく、丸味形状に欠け、嵩高性が不足。
×;各々の玉状態が独立せず、丸味形状にならず、嵩が低い。
【0017】
(4) 風合い
試料:前出と同じ。
測定:試料をハンドリングして判定する。
◎;ソフトで弾力性がある。
○;ソフトだが弾力性にやや不足。
△;ややソフト性に欠け、弾力性が不足。
×;堅く、弾力性がない。
【0018】
実施例1
異収縮性アクリロニトリル系重合体がサイドバイサイドに接合された複合繊維で、ボイル後の捲縮数23、捲縮度37、繊維長89〜140mmの複合繊維3デニ−ルを40重量%、レギュラ−アクリル繊維として日本エクスラン工業社製タイプK6の繊維長76〜127mmの3デニ−ルを20重量%、レギュラ−アクリル繊維をトウ状態で熱延伸加工した後で熱水収縮率40%が得られる収縮繊維として日本エクスラン工業社製タイプF49の繊維長89〜140mmの4.5デニ−ルを40重量%を常法に従って梳毛紡績し、メ−トル番手36番双糸の紡績糸(A)を作成した。該紡績糸(A)の熱水収縮率の測定結果は40.6%であった。該紡績糸(A)を綛仕立てした後、噴射バルキ−式染色機にて常法によりカチオン染料でベ−ジュ色に染色した。該染色糸をパイル糸として16ゲ−ジのフライスボア編機によりパイル長が10mm,目付け580g/m2ボア地を作成し、連続熱風乾燥機いわゆるピンテンタ−によりボア地のパイル裏側を酢酸ビニル樹脂にてバッキングした後、パイル糸を開毛機により繊維1本1本に開毛し、開毛したパイルを剪毛機により均一にパイル長10mmに剪毛した。
【0019】
得られたボア地をタンブラ−乾燥機に投入して、ボア地をゆっくり回転させながらもみ加工いわゆるタンブラ−加工を行なった。
タンブラ−加工の乾熱温度条件は90℃×30分間で、ボア地に湿り気を付与する程度の蒸気投入を行った。得られたボア地の評価した結果は表1に示した。タンブラ−加工においてボア地が投入される回転筒の直径は120cm、奥行き100cm、回転条件は正回転6回/20秒→停止5秒→逆回転6回/20秒→停止5秒の繰り返しとした。
【0020】
比較例1
ボイル後の捲縮数15、捲縮度23、繊維長76〜127mmの日本エクスラン工業社製C8タイプの3デニ−ルを40重量%、レギュラ−アクリル繊維として日本エクスラン工業社製のタイプK6の繊維長76〜127mmの3デニ−ルの複合繊維を20重量%、レギュラ−アクリル繊維をトウ状態で熱延伸加工した後で熱水収縮率40%が得られる収縮繊維として日本エクスラン工業社製タイプF49の繊維長89〜140mmの4.5デニ−ルを40重量%を常法に従って梳毛紡績し、メ−トル番手36番双糸の紡績糸(B)を作成した。該紡績糸(B)の熱水収縮率の測定結果は40.1%であった。該紡績糸(B)を綛仕立てした後噴射バルキ−式染色機で紡績糸(A)と同条件にて綛染色し、16ゲ−ジのフライスボア編機により目付け575g/m2のボア地を作成し、バッキング加工後、パイル糸を開毛加工、剪毛加工、タンブラ−加工した後、前出の評価項目で評価した結果は1に示した。
【0021】
比較例2
ボイル後の捲縮数28、捲縮度26、繊維長76〜127mmの日本エクスラン工業社製C7タイプの3デニ−ルの複合繊維を40重量%、レギュラ−アクリル繊維として日本エクスラン工業社製のタイプK6の繊維長76〜127mmの3デニ−ルを20重量%、レギュラ−アクリル繊維をトウ状態で熱延伸加工した後で熱水収縮率40%が得られる収縮繊維として日本エクスラン工業社製タイプF49の繊維長84〜140mmの4.5デニ−ルを40重量%を常法に従って梳毛紡績し、メ−トル番手36番双糸の紡績糸(C)を作成した。該紡績糸(C)の熱水収縮率の測定結果は41.1%であった。該紡績糸(C)を綛仕立てした後噴射バルキ−式染色機で紡績糸(A)と同条件にて綛染色し、16ゲ−ジのフライスボア編機により目付け570g/m2のボア地を作成し、バッキング加工後パイル糸を開毛加工、剪毛加工、タンブラ−加工した後、前出の評価項目で評価した結果は表1に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から実施例1の紡績糸(A)使用したボア地はシ−プ状形態、風合いが優れ、嵩高く弾力性があり衣料用途に使用することが出来、ポリエステル系複合繊維を混用してスライバ−ニットした後、タンブラ−加工してシ−プ状形態にしたハイパイル製品と比べ遜色がない。
紡績糸(B)および(C)を使用した比較例1及び2つのボア地はシ−プ状形態、風合いはやや劣り、衣料用途に使用した場合はポリエステル系複合繊維を混用してスライバ−ニットした後、タンブラ−加工してシ−プ状形態にしたハイパイル製品と比べ劣る。
【0024】
実施例2
異収縮性アクリロニトリル系重合体がサイドバイサイドに接合された複合繊維で、ボイル後の捲縮数23、捲縮度37、繊維長89〜140mmの複合繊維を40重量%、レギュラ−アクリル繊維として日本エクスラン工業社製タイプK6の繊維長76〜127mmの3デニ−ルを20重量%、酸性可染アクリル繊維として日本エクスラン工業社製タイプH4をトウ状態で熱延伸加工した後、熱水収縮率40%が得られる収縮綿の繊維長89〜140mmの4.5デニ−ルを40重量%を常法に従って梳毛紡績し、メ−トル番手36番双糸の紡績糸(D)を作成した。該紡績糸(D)の熱水収縮率の測定結果は40.9%であった。該紡績糸(D)を綛仕立てした後、噴射バルキ−式染色機にて該複合繊維3デニ−ルとタイプK6の3デニ−ルをカチオン染料で赤色に染色し、タイプH4の4.5デニ−ルを酸性染料で黒色に染色した。該染色糸をその後施例1と同様に16ゲ−ジのフライスボア機で目付け600g/m2のボアを作成して、バッキング加工後、パイル糸を開毛加工、剪毛加工、タンブラ−加工した後、前出の評価項目で評価した結果は表2に示すごときであった。
【0025】
【表2】
【0026】
紡績糸(D)を使用したボア地はシ−プ状形態、風合いが実施例1の紡績糸Aを使用したボア地と同様に優れており、さらに加えるに酸性可染アクリル繊維の収縮性綿を混用することによりパイル表面のカチオン可染繊維からなるシ−プ状形態のヘア−部とパイル深層の酸性可染繊維混用からなるダウン部との段差が明確で異色効果がはっきりと現れ立体感のあり、ソフトで弾力性のある優れた衣料用途のボア製品に仕上がった。
【0027】
実施例3
異収縮性アクリロニトリル系重合体がサイドバイサイドに接合された複合繊維で、ボイル後の捲縮数23、捲縮度37、繊維長89〜140mmの複合繊維を40重量%、レギュラ−アクリル繊維として日本エクスラン工業社製タイプK6の繊維長76〜127mmの3デニ−ルを20重量%、酸性可染アクリル繊維として日本エクスラン工業社製タイプH4をトウ状態で熱延伸加工した後、熱水収縮率25%が得られる収縮綿の繊維長76〜127mmの3デニ−ルを40重量%を常法に従って梳毛紡績し、メ−トル番手30番双糸の紡績糸(E)を作成した。該紡績糸(E)の熱水収縮率の測定結果は24.5%であった。該紡績糸(E)を綛仕立てした後噴射バルキ−式染色機で該複合繊維3デニ−ルとタイプK6の3デニ−ルをカチオン染料で赤色に染色し、タイプH4の3デニ−ルを酸性染料で黒色に染色した。該染色糸をその後実施例1と同様にフライス編機でボアを作成して、バッキング加工後、パイル糸を開毛加工、剪毛加工、タンブラ−加工した後、前出の評価項目で評価した結果は表3に示すごときであった。
【0028】
【表3】
【0029】
紡績糸(E)を使用したボア地はシ−プ状形態、風合いが実施例1の紡績糸(A)を使用したボア地に比べシ−プ状形態の形成能が少し劣る。さらに酸性可染アクリル繊維の収縮綿を混用しているがパイル表面のカチオン可染繊維からなるシ−プ状形態部とパイル深層の酸性可染繊維混用からなるダウン部との段差がやや明確でなく異色効果による立体感が少し損なわれた。
【0030】
実施例4
実施例1の紡績糸(A)を16ゲ−ジのフライス編機によりパイル長が16mm、目付け605g/m2ボア地を作成して、バッキング加工した後、ロ−ラ−プリント機を使用して常法によりカチオン染料で青色のストライプ柄にプリントした。その後再度バッキング加工し、ついでパイル糸を開毛加工、剪毛加工、タンブラ−加工した後、前出の評価項目で評価した結果は表1とほとんど同じであり、プリント加工品は綛染色品となんら遜色のない製品に仕上がった。
【0031】
実施例5
異収縮性アクリロニトリル系重合体がサイドバイサイドに接合された複合繊維で、ボイル後の捲縮数23、捲縮度37、繊維長89〜140mmの複合繊維を33重量%、レギュラ−アクリル繊維として日本エクスラン工業社製タイプK8の繊維長76〜127mmの3デニ−ルを33重量%、レギュラ−アクリル繊維をトウ状態で熱延伸加工した後で熱水収縮率40%が得られる収縮繊維として日本エクスラン工業社製タイプF49の繊維長89〜140mmの4.5デニ−ルを34重量%を常法に従って梳毛紡績し、メ−トル番手32番双糸の紡績糸(F)を作成した。該紡績糸(F)の熱水収縮率の測定結果は38.8%であった。
【0032】
異収縮性アクリロニトリル系重合体がサイドバイサイドに接合された複合繊維で、ボイル後の捲縮数23、捲縮度37、繊維長89〜140mmの複合繊維を60重量%、レギュラ−アクリル繊維をトウ状態で熱延伸加工した後で熱水収縮率40%が得られる収縮繊維として日本エクスラン工業社製タイプF49の繊維長89〜140mmの4.5デニ−ルを40重量%を常法に従って梳毛紡績し、メ−トル番手32番双糸の紡績糸(G)を作成した。該紡績糸(G)の熱水収縮率の測定結果は43.7%であった。
該紡績糸(F)と該紡績糸(G)の各々をパイル糸として14ゲ−ジのダブルラッシェル編機により編地を作成し、パイル糸をセンタ−カット機でカットした後パイル長が12mm、目付け615g/m2のマイヤ−編地を得た。該編地を連続染色機を使用して常法によりカチオン染料でラクダ色に染色した後、パイル糸を開毛加工、剪毛加工、タンブラ−加工した後、前出の評価項目で評価した結果は表4に示すごときであった。
【0033】
【表4】
【0034】
紡績糸(F)を使用したマイヤ−毛布地はシ−プ状形態が良好で嵩が有り、風合いは十分ソフトで毛布用に適正である。紡績糸(G)を使用したマイヤー毛布地はシープ状形態が非常に良好で嵩が有り、風合いはソフトで弾力性があるため毛布用に最適である。
【0035】
【発明の効果】
本発明におけるパイル製品の嵩高性は、高低の2種の収縮性アクリロニトリル系重合体成分を繊維軸方向にサイドバイサイドに接合してなる複合繊維を混用した紡績糸をパイル糸として使用し、編ボア地、織ボア地、あるいはマイヤ−毛布地にしてタンブラ−加工することにより得られ、得られたパイル製品はシ−プ状形態のハイパイル製品となる。特にタンブラ−加工時にシ−プ形成を補助する樹脂などの薬品をパイル表面に付与さたり、あるいはパイル表面に高温蒸気をノズルから噴出させて凹凸を形成させて擬似シ−プ状形態を作るなどの従来の生産性の低い方法を採用することなしに、通常のタンブラ−加工をするのみで顕著な効果が得られることは特筆すべきことである。
Claims (3)
- アクリル系繊維からなるパイル糸を有するパイル製品であり、前記パイル糸が、アクリルニトリル系重合体成分中の第二成分モノマ−量の差が1から10重量%である高収縮性及び低収縮性の2種のアクリロニトリル系重合体成分を繊維軸方向にサイドバイサイドに接合してなる下記複合繊維特性を満たす複合繊維を20〜80重量%、繊維軸方向に熱による高収縮性を潜在するアクリロニトリル系重合体からなる収縮繊維を20〜80重量%及びアクリロニトリル系重合体またはアクリロニトリル系重合体以外の繊維を0〜80重量%含有し、かつパイル糸を構成するアクリル系繊維の単繊維が繊維軸方向に不均一な捲縮を有し、かつ該単繊維の少なくとも一部が単繊維同士で絡み合って形成された複数の独立した毛玉状物を有していることを特徴とする嵩高性に優れたパイル製品。
[複合繊維特性]
複合繊維のスルフォン酸基の量が0.2〜1.0重量%であり、共重合された第二成分モノマ−量の多い方である高熱収縮成分中のスルフォン酸基の量が、低熱収縮性成分中のそれより0.2 〜1.0重量%多く、しかも高熱収縮成分中のスルホン酸基の量が下記式(1)及び(2)の範囲で繊維軸方向に50〜600mmの周期で変化しているアクリル系複合繊維。
式(1)1.2≦(Amax/Amin)≦3
(但し、Amax/Aminは高熱収縮性アクリロニトリル系重合体成分中の繊維軸方向のスル フォン酸基の量(重量%)の最大値と最小値を示す。)
式(2)0.24≦(A−B)×(Amax/Amin)≦2.5
(但し、A、Bは高熱収縮性及び低熱収縮性アクリロニトリル系重合体成分中の繊維軸方向の平均スルフォン酸基の量(重量%))を示す。) - 前記アクリロニトリル系重合体からなる収縮繊維が重合体成分中の第三成分モノマ−に塩基性基を含有するアニオン性モノマーを用いた酸性染料可染繊維である請求項1記載の嵩高性に優れたパイル製品。
- 熱又は水感性の捲縮発現性アクリル系繊維をパイル糸とする編織物のパイル糸を開毛機によって単繊維状態に開毛し、該開毛したパイルを剪毛したパイル編織物を製造し、該パイル織編物に熱及び/又は水蒸気を付与しながらタンブラー加工することを特徴とする請求項1記載の嵩高性に優れたパイル製品の製造法。
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