JP4327301B2 - 形質転換微生物、d−アミノアシラーゼの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、D−/L−アミノアシラーゼのうちD−アミノアシラーゼのみを選択的に生産させるD−アミノアシラーゼ産生遺伝子を亜鉛耐性微生物に導入してなる形質転換微生物、及び該形質転換微生物を利用したD−アミノアシラーゼの製造方法に関する。D−アミノアシラーゼは、抗生物質の側鎖やペプチド医薬品等の用途に求められる光学純度の高いD−アミノ酸の製造等の点において、産業上有用な酵素である。
【0002】
【従来の技術】
従来、D−/L−アミノアシラーゼを同時に生産する微生物として、ケミカル・アンド・ファルマシューティカル・ブリテン( Chemical and Pharmaceutical Bulletinn)26, 2698(1978)にはシュードモナス・エスピー( Pseudomonas sp.)AAA6029 株が、又、特開昭53−59092号公報には、ストレプトミセス・オリバセウス( Streptomyces olibaceus )S・62等の放線菌が、それぞれ開示されている。
【0003】
これらの微生物を利用した場合、D−アミノアシラーゼの生産能力はさておき、光学異性体であるD−アミノアシラーゼとL−アミノアシラーゼとを同時に生産してしまうため、両者を分離すると言う煩雑で高コストな操作を余儀無くされる欠点がある。
【0004】
一方、D−/L−アミノアシラーゼのうちD型のみを選択的に生産する微生物として、例えば特開平1−5488号公報に係る発明では、アルカリゲネス・デニトリフィカンス・サブスピーシーズ・キシロースオキシダンス( Alcaligenes denitrificans subsp. xylosoxydans)MI−4株が開示されている。
【0005】
この菌株を利用した場合、D−/L−アミノアシラーゼの分離と言う面倒がないものの、D−アミノアシラーゼの生産能力が不十分であった。しかも特開平1−5488号公報では、D−アミノアシラーゼ産生遺伝子が構造的に解明されていないため、D−アミノアシラーゼの生産能力を向上させるための遺伝子の改変,高生産性形質転換微生物の創製等を図ることができなかった。
【0006】
以上の点に鑑み、森口らを中心とする本願発明者は、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス・サブスピーシーズ・キシロースオキシダンス(Alcaligenes xylosoxydans subsp. xylosoxydans)A−6株が有するD−アミノアシラーゼ産生遺伝子の構造を解明し、配列表の配列番号1に係る塩基配列を示した。さらに、このD−アミノアシラーゼ産生遺伝子に一定の改変を加えることにより、形質転換微生物のD−アミノアシラーゼ生産能力を顕著に向上させることに成功した(Protein Expression and Purification 7,395-399(1996) )。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、その後の研究により、上記D−アミノアシラーゼ産生遺伝子を導入した各種形質転換微生物は、一般的に、亜鉛イオンを含む培地において、特にその亜鉛イオン濃度を一定の範囲に制御することによって、そのD−アミノアシラーゼ生産能力が大きく向上する、と言う新たな知見が得られた。
【0008】
更に、このような培地への亜鉛イオン添加によるD−アミノアシラーゼ生産能力向上の効果は、宿主微生物の種類によって発現の度合いが大きく異なり、この効果の発現度合いの大きい宿主微生物は一般的に、形質転換前においても亜鉛耐性を示すこと、即ち、菌体量(A660nm)を以て測定される繁殖能力が亜鉛イオン添加によって阻害され難い傾向がある、と言う新たな知見も得られた。
【0009】
そこで本発明は、上記D−アミノアシラーゼ産生遺伝子で形質転換された微生物であって、培地への亜鉛イオンの添加により、D−アミノアシラーゼ生産能力が更に大きく増強されるものを提供することを、その解決すべき技術的課題とする。
【0010】
【着眼点】
本願発明者は、上記の知見に基づき、▲1▼配列表の配列番号1に示すD−アミノアシラーゼ産生遺伝子を持つ形質転換微生物は、理由は明確ではないが、一定量の亜鉛イオンの存在により発現が増強されること、▲2▼亜鉛イオンは一般的に微生物に対して阻害的に働くと考えられることから、上記亜鉛イオンの効果を充分に確保するためには、上記遺伝子を導入するための宿主として、元々亜鉛耐性を備えた微生物を選択する必要があること、の2点に想到し、本願発明を完成した。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の発明)の構成は、亜鉛耐性を示す宿主微生物に、亜鉛イオンの存在により遺伝子産物の発現が増強されるD−アミノアシラーゼ産生遺伝子を導入し、亜鉛イオンを含む培地におけるD−アミノアシラーゼ高生産性形質を獲得させた、形質転換微生物である。
【0012】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、前記第1発明に係るD−アミノアシラーゼ産生遺伝子が、配列表の配列番号1に示す塩基配列を有するか、又は配列表の配列番号1に示す塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であってD−アミノアシラーゼを有効にコードする塩基配列を有するものである、形質転換微生物である。
【0013】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明(請求項3に記載の発明)の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る宿主微生物が大腸菌である、形質転換微生物である。
【0014】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかにおいて、宿主微生物へのD−アミノアシラーゼ産生遺伝子の導入に当たり、該遺伝子に対して以下(1)及び(2)の改変を行った、形質転換微生物である。
(1)リボソーム結合領域に特定塩基配列(GAAGGA)を設計して、該遺伝子の翻訳開始点上流9塩基の位置に導入することにより、翻訳効率の向上を図る改変。
(2)EcoRI認識部位及びHind III認識部位を該遺伝子の上流と下流に作成し、該遺伝子を純化して切り出し発現ベクターへ連結することにより遺伝子の発現効率の向上を図る改変。
【0015】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明(請求項5に記載の発明)の構成は、第1発明〜第4発明のいずれかに係る形質転換微生物を亜鉛イオンを含む培地で培養し、培養物からD−アミノアシラーゼを取得する、D−アミノアシラーゼの製造方法である。
【0016】
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明(請求項6に記載の発明)の構成は、前記第5発明に係る培地に含まれる亜鉛イオン濃度を0.1〜10mMに制御する、D−アミノアシラーゼの製造方法である。
【0017】
【発明の作用・効果】
(第1発明の作用・効果)
第1発明の形質転換微生物は、亜鉛イオンの存在により発現が増強されるD−アミノアシラーゼ産生遺伝子を導入されており、かつ、宿主微生物も元々亜鉛耐性を示すものである。
【0018】
従って、第1発明によって、D−アミノアシラーゼ産生遺伝子で形質転換された微生物であって、培地への亜鉛イオンの添加によりD−アミノアシラーゼ生産能力が最大限に増強され得るものを提供することができる。
【0019】
(第2発明の作用・効果)
配列表の配列番号1に示す塩基配列を有するD−アミノアシラーゼ産生遺伝子は、亜鉛イオンの存在により著しく遺伝子産物の発現が増強される遺伝子であることが確認された。又、配列表の配列番号1に示す塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であってD−アミノアシラーゼを有効にコードする塩基配列を有するものも、同様の特徴を期待できる。従って第2発明により、第1発明の宿主微生物に好ましく導入することができるD−アミノアシラーゼ産生遺伝子の代表的な実施形態が提供される。
【0020】
(第3発明の作用・効果)
大腸菌は亜鉛耐性を備えることが確認された。又、大腸菌はその菌学的性質や生理的性質、培養条件や管理条件等が周知されている。従って第3発明により、D−アミノアシラーゼの高効率生産を、容易な生産管理の下に行える。
【0021】
(第4発明の作用・効果)
第4発明における(1)の改変により、D−アミノアシラーゼ産生遺伝子の翻訳効率が向上する。又、第4発明における(2)の改変により、D−アミノアシラーゼ産生遺伝子の発現効率が向上する。従って第4発明により、形質転換微生物のD−アミノアシラーゼ生産能力を更に増大させることができる。
【0022】
(第5発明の作用・効果)
第5発明によって、第1発明〜第4発明の形質転換微生物を用いたD−アミノアシラーゼの高効率製造方法が提供される。
【0023】
(第6発明の作用・効果)
第6発明によって培地中の亜鉛イオン濃度を最適化することにより、D−アミノアシラーゼのとりわけ高効率な製造方法が提供される。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、第1発明〜第6発明の実施の形態について説明する。以下において単に「本発明」と言うときは、第1発明〜第6発明を一括して指している。
【0025】
〔宿主微生物〕
本発明に係る形質転換微生物を得るための宿主微生物としては、菌体量(A660nm)の増加又は減少を以て測定される培地中での繁殖能力が亜鉛イオン添加によって余り阻害されない、と言う亜鉛耐性の微生物が用いられる。この亜鉛耐性の一つの判断基準として、当該微生物の亜鉛無添加培地における菌体量(A660nm)に対して、亜鉛2mM添加の同一条件培地における菌体量が増加又は10%以内の減少にとどまること、あるいは、亜鉛5mM添加の同一条件培地における菌体量が増加又は20%以内の減少にとどまること、を挙げることができる。
【0026】
上記の条件に該当する限りにおいて、宿主微生物の分類上の種類は限定されないが、一般的には、形態学的性質や生理学的性質が良く知られ、その培養条件や管理条件が周知である宿主微生物が好ましい。かかる宿主微生物の好適例として、大腸菌( Eschericia coli)を挙げることができる。反面、少なくとも前記A−6株を含むアルカリゲネス・キシロースオキシダンス種の微生物は、大腸菌と比較すると亜鉛耐性を備えていない。
【0027】
宿主微生物に対する上記遺伝子の導入手段については特段に限定されず、例えば、プラスミドに連結して導入する方法や、バクテリオファ−ジDNAに連結して導入する方法等を必要に応じて任意に選択すれば良い。
【0028】
〔D−アミノアシラーゼ産生遺伝子〕
本発明に係るD−アミノアシラーゼ産生遺伝子は、D−/L−アミノアシラーゼのうちD−アミノアシラーゼのみを選択的に生産させる遺伝子であって、培地中の亜鉛イオンの存在によりその活性発現が増強されるタイプのものである。
【0029】
このようなD−アミノアシラーゼ産生遺伝子であることが確認された好適な一例として、配列表の配列番号1に示す塩基配列を有するものを挙げることができる。又、配列表の配列番号1に示す塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、D−アミノアシラーゼを有効にコードする塩基配列を有するものも好適であると考えられるが、現に培地中の亜鉛イオンにより活性発現が増強されないものは、本発明にとって好適ではない。
【0030】
配列表の配列番号1に示す塩基配列を有するD−アミノアシラーゼ産生遺伝子は、自然界の土壌よりスクリーニングによって得られたD−アミノアシラーゼ産生菌である前記アルカリゲネス・キシロースオキシダンス・サブスピーシーズ・キシロースオキシダンスA−6株から取得されたものである。
【0031】
〔D−アミノアシラーゼ産生遺伝子の改変〕
上記D−アミノアシラーゼ産生遺伝子は、そのまま宿主微生物に導入することもできるが、以下の(1),(2)の遺伝子改変を行った後に導入することが、更に好ましい。
【0032】
(1)リボソーム結合領域に特定塩基配列(GAAGGA)を設計して、該遺伝子の翻訳開始点上流9塩基の位置に導入することにより、翻訳効率の向上を図る改変。
【0033】
(2)EcoRI認識部位及びHind III認識部位を該遺伝子の上流と下流に作成し、該遺伝子を純化して切り出し発現ベクターへ連結することにより遺伝子の発現効率の向上を図る改変。
〔D−アミノアシラーゼの製造方法〕
第5発明に係るD−アミノアシラーゼの製造方法においては、第1発明〜第4発明の形質転換微生物を亜鉛イオンを含む培地で培養し、その培養物からD−アミノアシラーゼを取得する。亜鉛イオンは、例えば塩化亜鉛,硫酸亜鉛等の亜鉛化合物を培地に適量添加することにより与えることができる。第6発明のように、培地に含まれる亜鉛イオン濃度を0.1〜10mMに制御することが、とりわけ好ましい。
【0034】
D−アミノアシラーゼの製造方法に関し、上記以外の点の実施方法や実施条件は特段に限定されないが、tacプロモーターの誘導物質(例えばイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)、ラクトース等)を誘導物質とする栄養培地中で培養を行うこと、その際のラクトース濃度を0.1〜1%程度としておくこと等が推奨される。
【0035】
【実施例】
(遺伝子の取得と塩基配列の決定)
アルカリゲネス・キシロースオキシダンス・サブスピーシーズ・キシロースオキシダンスA−6株から得た染色体DNAを制限酵素 Sau3AI で部分分解し、2〜9KbのDNA断片を分取した。
【0036】
得られたDNA断片を公知のプラスミド pUC118 の BamHI認識部位に挿入連結した。この連結プラスミドにより大腸菌JM109を形質転換し、アンピリン耐性形質転換株を得た。こうして得られた形質転換株の中から、D−/L−アミノアシラーゼのうちD−アミノアシラーゼのみを選択的に生産する能力を持つ株を得た。このD−アミノアシラーゼ生産能力を持つ形質転換株は、5.8Kbの挿入断片を持つプラスミドを保持していた。
【0037】
このプラスミド中の5.8Kbの挿入断片をトリムダウンしてD−アミノアシラーゼ産生遺伝子の位置を推定した後、約2.0Kbについて、常法に従い、配列表の配列番号1に示すような塩基配列を決定した。配列表には、対応するアミノ酸配列も付記する。その結果、ATGから始まる1452ヌクレオチドからなるオープンリーディングフレーム(ORF)が確認された。
【0038】
(遺伝子の改変)
上記の5.8Kbの挿入断片を持つプラスミドから、 BamHI-HindIII消化により4KbのDNA断片を切り出し、公知のプラスミド pUC118 と連結することにより連結プラスミド pAND118を作製し、これを鋳型として、リボソーム結合領域に特定塩基配列(GAAGGA)を設計して該遺伝子の翻訳開始点上流9塩基の位置に導入するためのプライマーを用いた部分特異的変異により、リボソームバインディングサイト(RBS)を改変したプラスミド pANSD1 を作製した。
【0039】
次に、上記プラスミド pANSD1 を鋳型とし、プライマーを用いた部分特異的変異により、上記RBSの直上流には EcoRIの認識部位を、又、ORFの直下流には HindIII認識部位を、それぞれ作成してなるプラスミド pANSD1HE を得た。
【0040】
更にプラスミド pANSD1HE を制限酵素 EcoRI-HindIIIで消化して得た1.8KbのDNA断片を、図1に示すプラスミド pKK223-3 の EcoRI-HindIII部位に挿入連結して、図2に示すプラスミド pKNSD2 を得た。
(形質転換大腸菌)
大腸菌(Eschericia coli)K12株由来の株を宿主として、D.HANAHANの方法(DNA cloning Vol.1 109〜136 1985)によりプラスミドDNAを導入し、形質転換大腸菌 E. coli TGI/pKNSD2を得た。
【0041】
(遺伝子取得源菌株の亜鉛耐性)
前記のアルカリゲネス・キシロースオキシダンス・サブスピーシーズ・キシロースオキシダンスA−6株を、リン酸一カリウム0.2%,リン酸二カリウム0.2%,ポリペプトン2%,硫酸マグネシウム0.01%及びグリセリン1%を含み、pH7.2である亜鉛無添加培地、及びこれと同一組成の培地にそれぞれ0.2mM,2.0mM及び5.0mMの濃度に酸化亜鉛を添加した亜鉛添加培地において30°C、24時間培養し、菌体量(A660nm)を測定することにより、その亜鉛耐性を評価した。その際、培養後の培地pHも測定した。その結果を末尾の表1における「A−6菌」と表記した欄に示す。
【0042】
表1より、亜鉛無添加培地におけるA−6株の菌体量に対して、亜鉛添加培地におけるA−6株の菌体量は顕著に減少しており(2.0mMの亜鉛添加培地において約35%、5.0mMの亜鉛添加培地において約60%の減少)、上記A−6株が亜鉛耐性ではないことが分かる。
【0043】
(宿主菌の亜鉛耐性)
宿主菌として用いた上記大腸菌K12株由来の株に対しても、上記のA−6株と同様の組成の培地を用いて、同様に菌体量(A660nm)を測定することにより、その亜鉛耐性を評価した。その結果を末尾の表1における「 TG1(宿主菌)」と表記した欄に示す。
【0044】
表1より、亜鉛無添加培地における宿主菌の菌体量に対して、亜鉛添加培地における宿主菌の菌体量は余り減少せず(2.0mMの亜鉛添加培地において約3%、5.0mMの亜鉛添加培地において約12%の減少。0.2mMの亜鉛添加培地においては却って増加している)、上記宿主菌が亜鉛耐性であることが分かる。
【0045】
(形質転換大腸菌の亜鉛耐性)
形質転換大腸菌 E. coli TG1/pKNSD2に対しても、上記のA−6株と同様の組成の培地を用いて、同様に菌体量(A660nm)を測定することにより、その亜鉛耐性を評価した。その結果を末尾の表1における「pKNSD2/TG1(組換え菌)」と表記した欄に示す。
【0046】
表1より、亜鉛無添加培地における形質転換大腸菌の菌体量に対して、亜鉛添加培地における形質転換大腸菌の菌体量は余り減少せず(2.0mMの亜鉛添加培地において約5%、5.0mMの亜鉛添加培地において約15%の減少。0.2mMの亜鉛添加培地においては却って増加している)、上記形質転換大腸菌が亜鉛耐性であることが分かる。
【0047】
(形質転換大腸菌に対する亜鉛添加効果)
形質転換大腸菌 E. coli TG1/pKNSD2を、バクトトリプトン1%,バクトイーストエキス0.5%,塩化ナトリウム0.5%及びアンピシリン100μg/mlを含むpH7.0の培地において30°Cで16時間の前培養を行った。
【0048】
続いて、前培養後の形質転換大腸菌を、リン酸一カリウム0.2%,リン酸二カリウム0.2%,ポリペプトン2%,硫酸マグネシウム0.01%,グリセリン1%及び誘導剤としてのラクトース0.1%を含み、pH7.0である亜鉛無添加培地、及びこれと同一組成の培地にそれぞれ0.2mM及び2.0mMの濃度に酸化亜鉛を添加した培地において、30°Cで24時間の本培養を行い、培養液のブロスアウトpHと、培養液(A660nm)D−アミノアシラーゼ酵素活性(U/mL)を測定した。
【0049】
その結果、亜鉛無添加培地では酵素活性が21.78U/mL(ブロスアウトpH5.05)であったのに対して、0.2mMの亜鉛添加培地においては58.85U/mL(ブロスアウトpH5.03)、2.0mMの亜鉛添加培地においては109.79U/mL(ブロスアウトpH5.11)の酵素活性を示し、少なくとも一定の濃度範囲における亜鉛イオンの添加によって、D−アミノアシラーゼ生産能力が顕著に向上することを確認した。
【0050】
又、比較のために、前記A−6株を上記の前培養用の培地(但しアンピシリンは無添加)において同上の条件で前培養し、更に、誘導剤を上記ラクトース0.1%からN−アセチル−D,L−ロイシン0.1%に変更した以外は上記の本培養用の培地と同じ組成の培地において同上の条件で本培養を行い、培養液のブロスアウトpHと、培養液(A660nm)D−アミノアシラーゼ酵素活性(U/mL)を測定した。
【0051】
その結果、亜鉛無添加培地では酵素活性が0.29U/mL(ブロスアウトpH7.47)であったのに対して、0.2mMの亜鉛添加培地においては0.12U/mL(ブロスアウトpH7.48)、2.0mMの亜鉛添加培地においては0.29U/mL(ブロスアウトpH7.43)の酵素活性を示し、亜鉛イオンの添加によるD−アミノアシラーゼ生産能力の向上効果は認めることができなかった。
【0052】
【表1】
【0053】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドを概念化して示す図である。
【図2】プラスミドを概念化して示す図である。
Claims (4)
- 亜鉛耐性を示す宿主微生物である大腸菌K12株由来のTG1株に、亜鉛イオンの存在により遺伝子産物の発現が強化されるD−アミノアシラーゼ産生遺伝子であって、配列表の配列番号1に示す塩基配列を有するか、又は配列表の配列番号1に示す塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であってD−アミノアシラーゼを有効にコードする塩基配列を有するものを導入し、亜鉛イオンを含む培地におけるD−アミノアシラーゼ高生産性形質を獲得させたことを特徴とする形質転換微生物。
- 前記宿主微生物へのD−アミノアシラーゼ産生遺伝子の導入に当たり、該遺伝子に対して以下の(1)及び(2)の改変を行ったことを特徴とする請求項1に記載の形質転換微生物。
(1)リボソーム結合領域に特定塩基配列(GAAGGA)を設計して、該遺伝子の翻訳開始点上流9塩基の位置に導入することにより、翻訳効率の向上を図る改変。
(2)EcoRI認識部位及びHind III認識部位を該遺伝子の上流と下流に作成し、該遺伝子を純化して切り出し発現ベクターへ連結することにより遺伝子の発現効率の向上を図る改変。 - 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の形質転換微生物を亜鉛イオンを含む培地で培養し、培養物からD−アミノアシラーゼを取得することを特徴とするD−アミノアシラーゼの製造方法。
- 前記培地に含まれる亜鉛イオン濃度を0.1〜10mMに制御することを特徴とする請求項3に記載のD−アミノアシラーゼの製造方法。
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