JP4326923B2 - 回転出湯式鋳造装置 - Google Patents

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この発明は、精密鋳造が要求される歯科医療用の金属性生体代替材料や装飾・工業分野での高融点活性金属合金の溶製・鋳造に用いられる鋳造装置に関する。
歯科医療用の鋳造材料は、高度な安全性、生体親和性、長期にわたる信頼性の要求等から、従来から金合金(12%金‐パラジウム‐銀合金)で代表される高価な金属材料が使用されている。これらの鋳造材料は融点が1300℃以下と比較的低く比重も小さいため、その溶製には従来の抵抗加熱溶解法でも十分に対応することができた。また、装飾・工業用の高融点金属においても、合金化を要求されない単一金属の場合はアーク加熱溶解法で対応することができた。この種の歯科医療用の鋳造装置については、例えば特許文献1に記載されている。
一方、昨今、歯科医療用材料として、高価な金合金に代わって、合理的な価格でありながら人体に対して安全で生体適合性の高いチタン系合金の適用が注目されている。しかし、この新しいチタン系合金は、生体適合性を持たせるためにTaやNbなど、融点が3000℃前後と高温で、密度差もTiの4.5g/cm3に対して20 g/cm3前後ときわめて大きい高融点活性金属を合金元素とする必要があり、従来の抵抗加熱やアーク加熱では溶解できず、また均一な合金化ができないという問題がある。
その場合、高融点活性金属の合金化には、いわゆる浮揚溶解法が適している。浮揚溶解法は、コイルを巻いた水冷金属るつぼに金属を入れ、コイルに高周波電流を流すもので、るつぼ内に発生する交番磁界により金属にコイル電流と逆向きの渦電流が生じ、金属内のジュール熱で金属が溶解し、かつ両電流間の電磁反発力で金属が浮揚する。浮揚溶解法は融点が3000℃前後ときわめて高い活性金属元素も溶解可能であり、しかも密度差の大きい溶融合金も強力な電磁力で攪拌されるため均質化される。また、金属はるつぼと非接触の状態で溶解されるため、るつぼからの不純物による汚染が少ない。この浮揚溶解法を用いた溶解炉(浮揚溶解炉)については、例えば特許文献2に記載されている。
図3は、上記した浮揚溶解法を用いた回転出湯式鋳造装置の従来構成を示す概略縦断面図である。図3において、鋳造装置は、上面が開口した水冷金属るつぼ(以下、単に「るつぼ」という。)1の外側にコイル2を備え、倒立回転により開口3から出湯する浮揚溶解炉4と、開口3に湯口5が対向するようにるつぼ1の上面に連結される鋳型6と、るつぼ1及び鋳型6を真空排気する真空排気系統7とからなっている。すり鉢状のるつぼ1は図示しないスリットにより分割された多数の銅のセグメントからなり、図示しない冷却パイプを流れる冷却水により冷却される。鋳型6は通気性の鋳型材(埋没材)からなり、ロストワックス法により鋳込み空間8が形成されている。るつぼ1及び鋳型6は全体が密閉容器9に組み込まれ、真空排気系統7によりるつぼ底部から真空排気される。
図3の鋳造装置において、溶解金属10をるつぼ1に装填したら、真空排気系統7の図示しない真空ポンプを運転し、るつぼ1及び鋳型6を真空排気する。次いで、高周波電源11からコイル2に通電し、金属10を浮揚溶解する。すでに知られる通り、コイル2に高周波電流を流すと、るつぼ1及び金属10に渦電流が誘導され、これらの電流の間に電磁反発力が発生する。このとき、電磁反発力が金属10の重量よりも大きければ、金属10はるつぼ1から離れて浮揚する。同時に渦電流によるジュール熱で金属10は溶解する。金属10が溶解したら、密閉容器9を含めた鋳造装置全体を電源導入端子21を中心とする水平軸12を支点に180度回転させ、浮揚溶解炉4及び鋳型6を倒立させる。これにより、るつぼ内の溶解金属10は鋳型6に出湯され、湯口5から鋳込み空間8に鋳込まれる。図4は、回転倒立した鋳造装置を示している。
特開2000−176629号公報 特開平10−38468号公報
ところが、図3に示したような従来の回転出湯式鋳造装置には、下記の問題点がある。
(1) 密閉容器に浮揚溶解炉と鋳型の全体を組み込んで真空排気しているが、密閉容器の容積が大きいため、真空排気の応答性が悪い。ちなみに、るつぼは銅セグメント間のスリットを介して密閉容器内に通じており、鋳型は通気性の鋳型材を介して密閉容器内に通じているため、真空排気は密閉容器内の全空間に対して行うことになる。
(2) 容積の大きい密閉容器を回転させるため、回転操作性が悪く、また大きな設置スペースを必要とする。
(3) コイルが真空雰囲気の密閉容器内に収容されるため、通電中に真空放電が発生する可能性があり、コイル電圧を真空放電の危険のない大きさに制限する必要がある。
(4) 真空排気系統が一系統のため、鋳込み時に鋳型内を単独で真空引きすることができず、るつぼ側との差圧により溶湯を鋳込み空間に押し込むことができない。
(5) 密閉容器内の気密性が確保できる電源導入端子が必要となることから、装置の構造が複雑で高価なものになる。
この発明は上記問題に対処し、装置を簡略・小型及び安価にするとともにコイルの真空放電の危険をなくし、併せて鋳込み品質を高めることにある。
上記課題を解決するために、この発明は、上面が開口した水冷金属るつぼの外側にコイルを備え、倒立回転により前記開口から出湯する浮揚溶解炉と、前記開口に湯口が対向するように前記水冷金属るつぼの上面に連結される鋳型と、前記水冷金属るつぼ及び鋳型を真空排気する真空排気系統とからなり、前記コイルに通電して前記水冷金属るつぼ内の金属を浮揚溶解し、次いで前記浮揚溶解炉を倒立回転させて溶湯を前記鋳型に鋳込む回転出湯式鋳造装置において、前記水冷金属るつぼとコイルとの間に密閉容器を配置して前記水冷金属るつぼを密閉し、この水冷金属るつぼに密閉容器により密閉した鋳型を気密に連結するようにするものとする(請求項1)。
請求項1の発明は、浮揚溶解炉及び鋳型の全体を密閉容器に収容するのではなく、浮揚溶解炉はるつぼのみを密閉容器で密閉し、このるつぼに密閉容器により密閉した鋳型を気密に連結してるつぼ及び鋳型の密閉を図る。これにより密閉容器が小型化して容積が必要最小限となり、るつぼ内と鋳型内の雰囲気制御(真空排気や加圧制御)の応答性が高まるとともに、回転操作が容易になり、設置スペースも節減される。また、コイルは密閉容器の外部に出るため大気圧下となり、るつぼ内と鋳型内を真空排気した場合にも真空放電の危険がなくなるとともに、密閉容器への電源導入端子部分に気密性を必要としなくなるため、装置の構造が簡略化される。
請求項1の発明において、前記浮揚溶解炉及び鋳型の倒立回転は前記コイルに通電したまま行うようにするのがよい(請求項2)。これにより、倒立回転時の溶湯温度の低下を防ぐことができる。
請求項1の発明において、前記水冷金属るつぼ及び通気性を有する鋳型の内部をそれぞれ個別に真空排気する第1及び第2の真空排気系統を設け、前記金属の溶湯を前記鋳型に鋳込む際に、前記第1真空排気系統の真空排気を停止し、前記第2真空排気系統の真空排気を実施するようにするとよい(請求項3)。るつぼと鋳型の真空排気系統をそれぞれ独立させ、鋳込み時にはるつぼ側の第1真空排気系統の真空排気を停止し、鋳型側の第2真空排気系統の真空排気を実施することにより、るつぼと鋳型との間に差圧を発生させ、この差圧で溶湯を鋳込み空間に押し込んで緻密な鋳造を行うことができる。
請求項3の発明において、真空排気した前記水冷金属るつぼ及び鋳型の内部を不活性ガスで置換する加圧系統を設け、この加圧系統により、前記溶湯を前記鋳型に鋳込む際に前記水冷金属るつぼの内部を加圧するようにするとよい(請求項4)。真空排気したるつぼ及び鋳型を不活性ガスで置換することにより、より確実な酸素遮断雰囲気で金属を溶解させることができるとともに、鋳込み時に不活性ガスの加圧系統でるつぼ側を加圧することにより、鋳型側との間の差圧をより大きくして、鋳込み品質を一層高めることができる。
請求項1の発明において、前記溶湯を鋳込む前記鋳型を前記浮揚溶解炉と一体に回転させて遠心鋳造を行うようにするとよい(請求項5)。これにより、一層緻密な鋳造が可能になる。
この発明によれば、酸素遮断雰囲気で金属を溶解し、るつぼ及び鋳型の倒立回転により溶解金属を鋳型に出湯する回転出湯式鋳造装置において、真空排気及び不活性ガス置換のための密閉容器を小型化して真空排気や加圧の応答性を高め、回転操作性を良好とし、設置スペースを節減することができる。また、コイルを大気圧下に置いて、真空放電の危険をなくすとともに装置を簡略化することができる。更に、鋳込み時のるつぼ側と鋳型側との間の差圧を高め、湯回りを良好にして鋳造品質を高めることができる。
図1は、この発明の実施の形態を示す回転出湯式鋳造装置の概略縦断面図、図2はその倒立回転状態を示す図である。なお、従来例と対応する部分には同一の符号を用いるものとする。図1において、円筒状のるつぼ1はコイル2との間に配置された密閉容器13により周囲が密閉されている。密閉容器13は底付き円筒状で非金属材、例えばFRP(繊維強化プラスチック)からなり、円柱状のるつぼ1に下から被嵌されている。なお、るつぼ1は円筒外周面の上下端部を残して中間部が逃げ加工され、上下端部のみが密閉容器13に密着することにより密閉性が高められている。るつぼ1の底部には密閉容器13を貫通して、るつぼ内を真空排気する第1真空排気系統14及びるつぼ内をアルゴンなどの不活性ガスで置換する第1加圧系統15が接続されている。
また、円柱状の鋳型6は、密閉容器16により周囲が密閉されている。密閉容器16は下部フランジ付の帽子状で、鋳型6を通して溶湯からの輻射熱を受けるため、例えばステンレス板などの非磁性金属材からなり、下部フランジを介してるつぼ1にねじにより、図示しないパッキンを挟んで気密に連結されている。通気性の鋳型6の上面及び外周面と密閉容器16との間には通気空間17及び18があけられ、上部通気空間17に通じるように、鋳型内を真空排気する第2真空排気系統19及び鋳型内を不活性ガスで置換する第2加圧系統20が接続されている。鋳型6の上面外縁部には複数個の突起6aが設けられており、鋳型6は密閉容器16により、突起6aを介してるつぼ1の上面に押し付けられて固定されている。
るつぼ1に溶解金属10を装填したら、第1及び第2真空排気系統14,19によりるつぼ1及び鋳型6を真空排気する。また、不活性ガス雰囲気とする場合には、第1及び第2加圧系統による不活性ガスの封入操作を行い、るつぼ1及び鋳型6を所定レベルの酸素遮断雰囲気(真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気)にする。次いで、高周波電源11からコイル2に高周波電流を供給し、るつぼ1内の金属10を浮揚状態で溶解させ溶湯とする。金属10が溶解したら、真空雰囲気の場合は直ちに、また不活性ガス雰囲気の場合は第1及び第2真空排気系統14,19による不活性ガスの排気の後、るつぼ1を鋳型6と一体に水平軸12の回りに180度回転させ、図2に示すように倒立させる。その場合、コイル2は通電したままとして、溶湯の温度低下を防止する。
上記倒立回転の際、溶湯が湯口5に到達したら、又はその到達の直前に、真空雰囲気による溶解(真空溶解)の場合は第2真空排気系統19により鋳型6の真空排気を開始する。これにより、るつぼ1と鋳型6との間に差圧が生じ、この差圧により溶湯が鋳込み空間8に押し込まれて湯回りを良好になる。また、上記した鋳型6の真空排気の開始と同時に、第1加圧系統15から不活性ガスを送入しるつぼ1を加圧するとよい。それにより上記した差圧が大きくなり、湯回りがより良好になる。鋳込み終了後、コイル2の通電、真空排気、不活性ガスによる加圧等を停止し、鋳込み金属を冷却する。
図示実施の形態において、るつぼ1の密閉容器13はコイル2の内側に配置され、るつぼ1には密閉容器13により密閉された鋳型6が気密に連結されている。そのため、密閉容器13,16の容積が縮小し、図示実施の形態における真空・加圧空間は実質的にるつぼ1及び鋳型6の内部空間に限られる。その結果、真空排気及び加圧の応答性が速くなり、鋳造の所要時間が短縮される。また、コイル2は真空雰囲気外に置かれ、真空放電の危険がなくなるので、コイル電圧の高圧化による溶解時間の短縮が可能になるとともに、コイル2に対する電源導入端子部分を気密にする必要がないので密閉容器13の構造が簡略化される。更に、密閉容器13,16が小型化されるため、設置スペースが縮小するとともに回転倒立操作が容易になる。
一方、るつぼ1及び鋳型6にはそれぞれ独立に第1及び第2の真空排気系統14,19が設けられている。そこで、鋳込み時にはるつぼ側の真空排気を停止し、鋳型側の真空排気を実施することにより、るつぼ1と鋳型6との間に差圧を発生させ、この差圧により溶湯を鋳込み空間に押し込んで緻密な鋳造を行うことができる。また、その際、第1加圧系統15からるつぼ1に不活性ガスを送入して加圧することにより、上記差圧を増大させ、鋳造品質をより高めることができる。
なお、真空排気は溶解中も継続し、溶解後の倒立回転の際にるつぼ1の真空排気のみを停止し、鋳型6の真空排気を引き続き継続するようにしてもよい。また、溶湯を鋳込む鋳型6は浮揚溶解炉4と一体に垂直軸の周りに回転させて遠心鋳造を行うことができ、それにより一層緻密な鋳造が可能になる。
この発明の実施の形態を示す回転出湯式鋳造装置の縦断面図である。 図1の回転出湯式鋳造装置を倒立回転させた状態の図である。 従来の回転出湯式鋳造装置示を示す縦断面図である。 図3の回転出湯式鋳造装置を倒立回転させた状態の図である。
符号の説明
1 水冷金属るつぼ
2 コイル
3 開口
4 浮揚溶解炉
5 湯口
6 鋳型
8 鋳込み空間
13 密閉容器
14 第1真空排気系統
15 第1加圧系統
19 第2真空排気系統
20 第2加圧系統

Claims (5)

  1. 上面が開口した水冷金属るつぼの外側にコイルを備え、倒立回転により前記開口から出湯する浮揚溶解炉と、前記開口に湯口が対向するように前記水冷金属るつぼの上面に連結される鋳型と、前記水冷金属るつぼ及び鋳型の内部を真空排気する真空排気系統とからなり、前記コイルに通電して前記水冷金属るつぼ内の金属を浮揚溶解し、次いで前記浮揚溶解炉を倒立回転させて溶湯を前記鋳型に鋳込む回転出湯式鋳造装置において、
    前記水冷金属るつぼとコイルとの間に密閉容器を配置して前記水冷金属るつぼを密閉し、この水冷金属るつぼに密閉容器により密閉した鋳型を気密に連結するようにしたことを特徴とする回転出湯式鋳造装置。
  2. 前記コイルに通電したまま前記浮揚溶解炉及び鋳型を倒立回転させることを特徴とする請求項1記載の回転出湯式鋳造装置。
  3. 前記水冷金属るつぼ及び通気性を有する前記鋳型の内部をそれぞれ個別に真空排気する第1及び第2の真空排気系統を設け、前記金属の溶湯を前記鋳型に鋳込む際に、前記第1真空排気系統の真空排気を停止し、前記第2真空排気系統の真空排気を実施することを特徴とする請求項1記載の回転出湯式鋳造装置。
  4. 真空排気した前記水冷金属るつぼ及び鋳型を不活性ガスで置換する加圧系統を設け、この加圧系統により、前記溶湯を前記鋳型に鋳込む際に前記水冷金属るつぼの内部を加圧することを特徴とする請求項3記載の回転出湯式鋳造装置。
  5. 前記溶湯を鋳込む前記鋳型を前記浮揚溶解炉と一体に回転させて遠心鋳造を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の回転出湯式鋳造装置。
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