JP4324833B2 - テープカセット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はテープカセットに関する。詳しくは、回動することによってマウス部を開閉するフロントリッドと該フロントリッドと一体となってカセットシェルに対して前後方向に移動可能なスライダーとを備えたテープカセットについての技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
テープカセットは、通常、テープ状記録媒体、例えば、磁気テープを巻装したテープリールをカセットシェル内において回転自在に支持して成り、このようなテープカセットには、回動することによってカセットシェルの前端部に形成されたマウス部を開閉するフロントリッドとカセットシェルに前後方向にスライド自在に支持されたスライダーとを備え、フロントリッドがスライダーの前端部に回動自在に支持されているものがある。そして、フロントリッドによってマウス部が閉塞された状態においては、マウス部の前面に位置されている磁気テープの前面がフロントリッドによって覆われた状態とされている。
【0003】
スライダーは、フロントリッドが回動され開放位置に達した状態において該フロントリッドと一体となってカセットシェルに対してスライドされるようになっている。
【0004】
テープカセットにはフロントリッドを閉塞位置にロックするリッドロック部材が設けられ、該リッドロック部材はフロントリッドの内面側に設けられた支持軸に回動自在に支持されている。そして、リッドロック部材は捩じりコイルバネによってフロントリッドをロックする方向へ付勢され、リッドロック部材に設けられた係止爪がスライダーに設けられた係止部に係止されることによってフロントリッドが閉塞位置においてロックされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来のテープカセットにおいて、例えば、マウス部の前面に位置された磁気テープの状態を見ようとして、ロックされたフロントリッドを無理に開けようとすると、リッドロック部材のロック力が強いためロックが外れず、フロントリッドの支持軸やリッドロック部材自体を破損してしまうという不具合を生じるおそれがあった。
【0006】
例えば、従来のテープカセットにあっては、ロックされているフロントリッドを介してリッドロック部材に約1Kgfの力が加えられると、上記した破損を生じる可能性が高かった。
【0007】
そこで、本発明テープカセットは、フロントリッドを介してリッドロック部材にロックを解除する方向への所定の作用力が加わったときに、フロントリッドの支持軸やリッドロック部材に破損を生じないようにすることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明テープカセットは、上記した課題を解決するために、カセットシェルに対してスライドするスライダーにその側面部から突出された係止部を設け、マウス部を開閉するフロントリッドに支持軸を設け、フロントリッドの支持軸に回動自在に支持されると共に係止爪を有し該係止爪がスライダーの係止部に係止されてフロントリッドを閉塞位置にロックし、かつ、フロントリッドをロックする方向へ付勢されフロントリッドの回動動作に伴って回動されるリッドロック部材を設け、該リッドロック部材の回動支点と係止爪との間の位置に所定の作用力で変位する弾性変位部を設けたものである。
【0009】
従って、本発明テープカセットは、所定の作用力が加わったときに弾性変位部が変位してリッドロック部材によるフロントリッドに対するロックが解除される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明テープカセットの実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0011】
テープカセット1は、薄い箱状をしたカセットシェル2内にテープ状記録媒体としての磁気テープ3を巻装した一対のテープリール4、4が左右に離間して回転可能に収納されて成る(図1参照)。
【0012】
テープリール4、4は、それぞれ磁気テープ3が巻回される軸部の軸方向における両端部にそれぞれ上フランジ部4a、下フランジ部4bが設けられて成り、軸部に磁気テープ3が巻回されている(図1参照)。
【0013】
カセットシェル2は上シェル5と下シェル6とが上下で結合されて成る(図1及び図2参照)。上シェル5は主面となる上壁部7と該上壁部7の後縁から垂設された後壁部8と上壁部7の左右両側縁のそれぞれ後半部から垂設された側壁部9、9とを有している(図12参照)。側壁部9、9の下縁は後述するスライダーを案内する案内突部9a、9aとして形成されており、また、上壁部7の左側縁の前半部と上壁部7の右側縁に寄った位置の前半部にも、それぞれ下方へ突出し前後方向に延びる案内レール7a、7bが設けられている(図3及び図4参照)。
【0014】
下シェル6は主面となる底壁部10と該底壁部10の後縁から立設された後壁部11と底壁部10の左右両側縁から立設された側壁部12、12とを有し(図12参照)、該側壁部12、12は、その後端部を除く部分が該後端部より稍内側に位置され、この後端部を除く部分が段差面部12a、12aとして形成されている(図2参照)。
【0015】
上シェル5と下シェル6とが上下で結合されカセットシェル2が構成された状態においては、その左右両端部の前端部に前後に開口した角筒状を為すテープ引出部2a、2aが形成され、カセットシェル2の前面側でテープ引出部2a、2a間に形成された空間がマウス部13として形成される。そして、このマウス部13は前方及び上下に開放されている。また、テープリール4、4に巻回された磁気テープ3は、テープ引出部2a、2aを介して引き出されマウス部13の前側を横切るように位置されている。
【0016】
テープカセット1には、カセットシェル2の前面に沿って位置する磁気テープ3の前面側を覆うフロントリッド14が回動自在に設けられている(図1、図2及び図5参照)。
【0017】
フロントリッド14は、被支持部15、15と該被支持部15、15を連結し磁気テープ3の前面側を覆う閉塞部16とが一体に形成されて成り、被支持部15、15の内面にはそれぞれ内方へ突出された回動支点軸15a、15aが設けられている。そして、右側の被支持部15の内面には、それぞれ回動支点軸15aから稍離間した位置に支持軸15bと被規制凹部15cとが各別に形成されている。また、被支持部15、15の外面には、その周縁の一部に外面側が薄く削り取られるようにして摺動凹部15d、15dが形成されている。
【0018】
フロントリッド14の閉塞部16の左右両側縁の外面には、それぞれ係合凹部16a、16aが形成され、右側の係合凹部16aの直ぐ下側に下方に開口され閉塞部16の内外を連通する挿入用切欠16bが形成されている。
【0019】
スライダー17は板状の金属材料によって形成され、横長の略矩形状を為す上面部18と該上面部18の左右両側縁の後半部から垂設された側面部19、19と上面部18の左右両側縁の前半部から垂設されたリッド支持部20、20と上面部18の前縁から垂設されたバックリッド部21とが一体に形成されて成る(図6乃至図8参照)。そして、リッド支持部20、20は、それぞれ側面部19、19より稍内側に位置され、上下幅は側面部19、19の略半分とされている。
【0020】
側面部19、19の下端部には、内側に折り返されて上方に開口された断面コ字状を為す被案内支持部19a、19aが形成されている。また、側面部19、19の前端縁の下端部からは前方へ向けてオーバーラップ部19b、19bが突設されている。
【0021】
リッド支持部20、20には、それぞれ下方へ開口した略半円状の軸支持部20a、20aが形成され、また、リッド支持部20、20の後端部下縁には、それぞれ内方へ突出したフック部22、23が形成されている。
【0022】
フック部22、23は、リッド支持部20、20からこれと直交する方向へ突出された突出部22a、23aと該突出部22a、23aの先端から上方へ突出された摺動係合部22b、23bとから成る。また、突出部23aの外端部の前縁、即ち、リッド支持部20側の部分の前縁には、凹状を為す位置規制部23cが形成されている(図7及び図10参照)。さらに、突出部22a、23aは、右側の突出部23aの突出長さが左側の突出部22aのそれより長くされている(図7参照)。
【0023】
バックリッド部21は、その左右の幅が上記マウス部13の左右の幅より僅かに小さく形成され、下端部が折り返されている。
【0024】
スライダー17は、側面部19、19の被案内支持部19a、19aがそれぞれ上シェル5の側壁部9、9の案内突部9a、9aに摺動自在に係合され、また、フック部22、23の摺動係合部22b、23bがそれぞれ上シェル5の上壁部7の案内レール7a、7bの内面に摺動自在に係合され(図4参照)、これによりスライダー17が案内突部9a、9a及び案内レール7a、7bに案内されて上シェル5に対して前後方向にスライドされる。
【0025】
上記フロントリッド14は、被支持部15、15の回動支点軸15a、15aがスライダー17のリッド支持部20、20の軸支持部20a、20aに支持されることにより、スライダー17に対して回動支点軸15a、15aを支点として回動自在とされる。そして、フロントリッド14がスライダー17に支持された状態においては、スライダー17のオーバーラップ部19b、19bがそれぞれ被支持部15、15の摺動凹部15d、15dに外側から摺接される(図1乃至図3参照)。
【0026】
スライダー17は、フロントリッド14がマウス部13を閉塞する閉塞位置にある状態においては、フロントリッド14の閉塞部16がカセットシェル2のテープ引出部2a、2aに規制されるため、即ち、スライダー17が後方へスライドしようとしてもフロントリッド14の閉塞部16がテープ引出部2a、2aの前面に当接して規制されるため後方へスライドすることはできないが(図11参照)、フロントリッド14がマウス部13を開放する開放位置にある状態においては、テープ引出部2a、2aによる規制された状態が解除されるため、スライダー17はフロントリッド14と一体となってカセットシェル2に対して後方へスライドすることが可能である(図13参照)。
【0027】
フロントリッド14の右側の被支持部15の内面にはリッドロック部材24が回動自在に支持される(図5、図9及び図10参照)。リッドロック部材24は全体に細長く形成され、略中央部に被支持孔24aが形成されている。そして、リッドロック部材24は被支持孔24aにフロントリッド14の被支持部15に形成された支持軸15bが挿通され、該支持軸15bを支点として回動可能とされる。
【0028】
リッドロック部材24の一端部からは係止爪24bが突設されている。そして、リッドロック部材24には、被支持孔24aの近傍の部分に、フロントリッド14の被支持部15と反対側に位置する部分を切り欠いて形成したバネ掛け面24cが形成され、該バネ掛け面24cの側縁には規制突部24dが設けられている。また、リッドロック部材24の他端部はその周面が曲面に形成された被作用部24eとして形成され、当該他端部寄りの位置に被支持部15側に突出する被規制ピン24fが突設されている。
【0029】
また、リッドロック部材24には、被支持孔24aと係止爪24bとの間で該係止爪24bに寄った位置に、係止爪24bが突出された方向へ開放された切欠24gが形成されている。リッドロック部材24の切欠24gによって切り欠かれた部分は、円弧面に形成され、リッドロック部材24には、切欠24gを形成することにより他の部分より薄肉にされた弾性変位部24hが形成される(図9参照)。
【0030】
リッドロック部材24は係止爪24bがスライダー17の右側に位置するフック部23の突出部23aに後方側から係止され、これによりフロントリッド14が閉塞位置においてロックされる(図10参照)。従って、スライダー17のフック部23は、リッドロック部材24の係止爪24bが係止される係止部としての役割を果たす。そして、リッドロック部材24の被規制ピン24fは被支持部15の規制凹部15c内に位置されている。また、リッドロック部材24がフロントリッド14をロックした状態においては、被作用部24eが最下端に位置するようになっている(図10及び図11参照)。
【0031】
リッドロック部材24は、捩じりコイルバネ25によってフロントリッド14をロックする方向へ付勢される(図5及び図10参照)。
【0032】
捩じりコイルバネ25は、コイル部25aがフロントリッド14の回動支点軸15aに嵌挿され、一端部25bがスライダー17のフック部23の位置規制部23c内に位置されて突出部23aに弾接され、他端部25cがリッドロック部材24のバネ掛け面24cに弾接されている(図10参照)。従って、リッドロック部材24は、係止爪24bがスライダー17のフック部23に係止される方向、即ち、リッドロック部材14をロックする方向へ付勢される。
【0033】
上記したように、捩じりコイルバネ25は、一端部25bがスライダー17のフック部23の位置規制部23c内に位置されて突出部23aに弾接されているため、テープカセット1に振動等が生じても、一端部25bがフック部23の摺動係合部23b側へ位置ずれを生じてしまうことがない。従って、捩じりコイルバネ25の一部がテープカセット1の他の部分、例えば、フック部23の摺動係合部23bが摺動される案内レール7bに接触しまうことがなく、これによりスライダー17のスライド動作の信頼性を確保することができる。
【0034】
以下に、フロントリッド14及びスライダー17の動作について説明する(図11乃至図14参照)。
【0035】
テープカセット1が装着されるテーププレーヤー等の装置(以下、単に「装置」と言う。)には、支持部材が設けられており、該支持部材にはフロントリッド14を保持して回動させるリッドオープナー26、26とリッドロック部材24のフロントリッド14に対するロックを解除するロック解除カム27とが設けられている(図12乃至図14参照)。そして、リッドオープナー26は、一端部が回動支点26aとして設けられ、他端部に係合突部26bが設けられ、回動支点26aを中心として支持部材に対して回動可能とされている。また、ロック解除カム27は、後端部が前方へいくに従って上方へ変位する傾斜縁27aとして形成され、該傾斜縁27aに連続する部分が水平な水平縁27bとして形成されている。
【0036】
テープカセット1が装置に装着される前の状態においては、リッドロック部材24の係止爪24bがスライダー17のフック部23の突出部23aに係止されることにより、フロントリッド14が閉塞位置においてロックされている(図11参照)。そして、スライダー17はカセットシェル2に対する移動範囲における前端に位置されている(図11参照)。
【0037】
テープカセット1を装置の挿入口から図11に示す矢印A1方向へ挿入していくと、ロック解除カム27がフロントリッド14の閉塞部16に形成された挿入用切欠16bからフロントリッド14の内側に相対的に挿入されていく(図12参照)。このとき、リッドオープナー26、26の係合突部26b、26bがフロントリッド14の係合凹部16a、16aに係合される。また、テープカセット1のA1方向への移動に伴って、ロック解除カム27の傾斜縁27aと水平縁27bが順にリッドロック部材24の被作用部24eと摺接され、これによりリッドロック部材24がフロントリッド14に対するロックを解除する方向、即ち、図12に示すB1方向へ回動され、係止爪24bのスライダー17の突出部23aに対する係合が解除される。従って、フロントリッド14の閉塞位置におけるロックが解除される(図12参照)。
【0038】
さらに、テープカセット1がA1方向へ挿入されると、リッドオープナー26、26がテープカセット1のA1方向への移動に伴って回動され、これによりフロントリッド14がB1方向へ回動されていく(図13参照)。
【0039】
リッドロック部材24はフロントリッド14とともに回動され、リッドロック部材24とロック解除カム27の水平縁27bとの摺接が解除される。そして、リッドロック部材24とロック解除カム27の水平縁27bとの摺接が解除されると、リッドロック部材24は捩じりコイルバネ25の付勢力によってB2方向へ回動しようとするが、リッドロック部材24の被規制ピン24fがフロントリッド14の規制凹部15cの端縁に接触しB2方向への回動が規制される(図13参照)。
【0040】
フロントリッド14が閉塞位置からB1方向へ略90度回動されると、閉塞部16がカセットシェル2のテープ引出部2a、2aの前面から離間され該テープ引出部2a、2aによる規制が解除されるため、スライダー17がフロントリッド14と一体となってカセットシェル2に対して後方へスライドすることが可能な状態となる(図13参照)。
【0041】
この状態からさらにテープカセット1がA1方向へ挿入されると、フロントリッド14がリッドオープナー26、26に保持されているため、カセットシェル2のA1方向への移動によって、スライダー17がフロントリッド14と一体となってカセットシェル2に対して相対的に後方、即ち、A2方向へスライドされる。そして、テープ引出部2a、2aが装置に設けられた図示しないストッパーに当接されたところで、テープカセット1の装置への挿入が完了し、スライダー17は後方側の移動端に位置される(図14参照)。
【0042】
テープカセット1の装置への挿入が完了した状態からテープカセット1がA2方向へ移動され装置から引き出されていくと、フロントリッド14がリッドオープナー26、26に保持されているため、カセットシェル2がA2方向へ移動されることによって、スライダー17がフロントリッド14と一体となってカセットシェル2に対して相対的に前方、即ち、A1方向へ移動される(図13参照)。
【0043】
スライダー17が前方側の移動端までスライドされると、フロントリッド14がB2方向へ回動され、再びマウス部13を閉塞する。そして、リッドロック部材24は被作用部24eが再びロック解除カム27の水平縁27bと接する(図12参照)。
【0044】
さらに、テープカセット1がA2方向へ移動されると、ロック解除カム27とリッドロック部材24の被作用部24eが摺動され、被作用部24eとロック解除カム27の傾斜縁27aとが摺接されるに従ってリッドロック部材24が捩じりコイルバネ25の付勢力によってB2方向へ回動され、再び係止爪24bがスライダー17の突出部23aに係止されフロントリッド14が閉塞位置においてロックされる。
【0045】
図15は、リッドロック部材24にフロントリッド14を介して所定の作用力が加えられたときに、リッドロック部材24の弾性変位部24hが弾性変位してフロントリッド14のロックが解除される状態を示すものである。
【0046】
例えば、マウス部13の前面に位置されフロントリッド14によって覆われた磁気テープ3の状態を見ようとして、使用者がロックされたフロントリッド14を開けようとしたときには、該フロントリッド14を介してリッドロック部材24に作用力が加えられる。このとき、リッドロック部材24は捩じりコイルバネ25の付勢力によってB2方向へ付勢されているが、リッドロック部材24には被支持孔24aと係止爪24bとの間の位置に弾性変位部24hが設けられているため、フロントリッド14のB1方向への回動に伴って弾性変位部24hを支点として、それより上側に位置する部分が弾性変位部24hより下側に位置する部分に対して矢印Xの方向へ変位され、係止爪24bとスライダー17のフック部23との係止状態が解除される。
【0047】
従って、リッドロック部材24によるフロントリッド14のロック状態が解除され、フロントリッド14を開放位置まで開放することが可能である。そして、リッドロック部材24の係止爪24bとスライダー17のフック部23との係止状態が解除されると、リッドロック部材24は弾性変位部24hが弾性復帰して元の状態に戻る。
【0048】
以上に記載した通り、テープカセット1にあっては、リッドロック部材24に、被支持孔24aと係止爪24bとの間の位置に弾性変位部24hを設けているため、ロックされているフロントリッド14を開けようとした場合に、該フロントリッド14を介してリッドロック部材24に所定の作用力が加えられたときに、リッドロック部材24の弾性変位によってフロントリッド14のロックが解除される。従って、フロントリッド14の支持軸15bやリッドロック部材24自体を破損してしまうという不具合を回避することができる。
【0049】
図17に示す図表は、3つの異なるタイプのリッドロック部材について、弾性変位の状態を検討した結果を示すものである。
【0050】
検討はタイプI、タイプII、タイプIIIの3つのタイプについて行い、これらの3つのタイプI、タイプII、タイプIIIの何れも、弾性変位部24hが被支持孔24aと係止爪24bの中央より係止爪24b側に寄った位置に設けられたものである。
【0051】
図表中、「角度α」は図16に示すように弾性変位支点Pを中心とした回動支点Qと係止爪24bとの間の角度を示し、「距離β」は図16に示すように弾性変位支点Pから回動支点Qと係止爪24bとを結ぶ線までの距離を示し、「断面積」は弾性変位部24hにおける弾性変位支点Pを含む最小断面の面積を示し、「厚み」は弾性変位部24hの厚み、即ち、左右方向における幅を示し、「作用力」はフロントリッド14を介してリッドロック部材に加えられた作用力を示す。
【0052】
また、この検討において使用したリッドロック部材はPOM(ポリアセタール樹脂)によって形成されたものであり、また、スライダーはSUS(ステンレス鋼)によって形成されたものである。
【0053】
図17に示す通り、タイプIは作用力350gfで弾性変位してフロントリッド14のロックが解除されたが、タイプII及びタイプIIIは、それぞれ作用力600gf、800gfで弾性変位してフロントリッド14のロックが解除された。また、「係止爪の削れ」の欄に示す通り、タイプI、タイプII、タイプIIIの3つのタイプの何れの場合も弾性変位する際にフック部23に摺接される係止爪24bにほとんど削れが生じることがなかった。さらに、3つのタイプの何れの場合も弾性復帰した状態において塑性変形がなく元の状態に戻り、リッドロック部材としての機能を損なうことなく繰り返し使用することが可能であった。
【0054】
フロントリッド14を介してリッドロック部材24に加えられる作用力は、500gfを基準とすることが好ましいと考えられる。この基準を考慮し、さらに、リッドロック部材としての機能を損なうことなく繰り返し使用することが可能であることを考慮すると、「使用可否」の欄に示す通り、タイプII及びタイプIIIについて特に良好な結果を得た。
【0055】
尚、リッドロック部材24としては、上記した3つのタイプのように、弾性変位部24hが被支持孔24aと係止爪24bの中央より係止爪24b側に寄った位置に設けられたものでは、弾性変位する際にフック部23に摺接される係止爪24bにほとんど削れが生じないが、弾性変位部24hが被支持孔24aと係止爪24bの中央より被支持孔24a側に寄った位置に設けられたものでは、弾性変位する際にフック部23に摺接される係止爪24bに削れが生じる可能性が高い。
【0056】
これは、弾性変位部24hが係止爪24bに近い方が、弾性変位したときに弾性変位部24hより上側に位置する部分の下側に位置する部分に対する変位角度が大きくなり、係止爪24bとスライダー17のフック部23との係止状態が解除され易くなるためであると考えられる。
【0057】
また、上記には、リッドロック部材24として、係止爪24bが突出された方向へ開放された切欠24gを形成して弾性変位部24hを設けたものを示したが、逆に、リッドロック部材として、係止爪24bが突出された方向と反対の方向へ開放された切欠を形成して弾性変位部を設けたものを使用することも可能である。
【0058】
上記した実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明の実施を行うに際しての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【0059】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、本発明テープカセットは、開放位置と閉塞位置との間を回動することによってカセットシェルの前部に形成された前方及び上下に開放されたマウス部を開閉するフロントリッドと、対向して位置する側面部と該側面部間を連結する上面部とを有すると共にカセットシェルに前後方向にスライド自在に支持され開放位置まで回動されたフロントリッドと一体となってスライドするスライダーとを備えたテープカセットであって、スライダーにその側面部から突出された係止部を設け、フロントリッドに支持軸を設け、フロントリッドの支持軸に回動自在に支持されると共に係止爪を有し該係止爪がスライダーの係止部に係止されてフロントリッドを閉塞位置にロックし、かつ、フロントリッドをロックする方向へ付勢されフロントリッドの回動動作に伴って回動されるリッドロック部材を設け、該リッドロック部材の回動支点と係止爪との間の位置に所定の作用力で変位する弾性変位部を設けたことを特徴とする。
【0060】
従って、ロックされているフロントリッドを開けようとした場合に、該フロントリッドを介してリッドロック部材に所定の作用力が加えられたときに、リッドロック部材の弾性変位によってフロントリッドのロックが解除されるため、フロントリッドの支持軸やリッドロック部材自体を破損してしまうという不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2乃至図17と共に本発明テープカセットの実施の形態を示すものであり、本図はフロントリッドが閉塞されている状態を示すテープカセットの概略斜視図である。
【図2】フロントリッドが開放されている状態を示すテープカセットの概略斜視図である。
【図3】上シェルとフロントリッドとスライダーとの関係を示す斜視図である。
【図4】上シェルとスライダーの関係を示す底面図である。
【図5】フロントリッドとリッドロック部材と捩じりコイルバネとを分解して示す斜視図である。
【図6】スライダーの斜視図である。
【図7】スライダーの平面図である。
【図8】スライダーの側面図である。
【図9】リッドロック部材の拡大斜視図である。
【図10】要部を示す拡大斜視図である。
【図11】図12乃至図14と共にフロントリッド及びスライダーの動作を示すものであり、本図はフロントリッドが閉塞位置にある状態を示す概略拡大側面図である。
【図12】リッドロック部材によるフロントリッドに対するロックが解除された状態を示す概略拡大側面図である。
【図13】フロントリッドが開放位置にある状態を示す概略拡大側面図である。
【図14】スライダーが後方の移動端に位置されている状態を示す概略拡大側面図である。
【図15】リッドロック部材が弾性変位してフロントリッドに対するロックが解除される状態を示す概略拡大側面図である。
【図16】リッドロック部材の拡大側面図である。
【図17】3つの異なるタイプのリッドロック部材について弾性変位の状態を検討した結果を示す図表である。
【符号の説明】
1…テープカセット、2…カセットシェル、13…マウス部、14…フロントリッド、15b…支持軸、17…スライダー、18…上面部、19…側面部、23…フック部(係止部)、24…リッドロック部材、24b…係止爪、24h…弾性変位部
Claims (1)
- 開放位置と閉塞位置との間を回動することによってカセットシェルの前部に形成された前方及び上下に開放されたマウス部を開閉するフロントリッドと、対向して位置する側面部と該側面部間を連結する上面部とを有すると共にカセットシェルに前後方向にスライド自在に支持され開放位置まで回動されたフロントリッドと一体となってスライドするスライダーとを備えたテープカセットであって、
スライダーにその側面部から突出された係止部を設け、
フロントリッドに支持軸を設け、
フロントリッドの支持軸に回動自在に支持されると共に係止爪を有し該係止爪がスライダーの係止部に係止されてフロントリッドを閉塞位置にロックし、かつ、フロントリッドをロックする方向へ付勢されフロントリッドの回動動作に伴って回動されるリッドロック部材を設け、
該リッドロック部材の回動支点と係止爪との間の位置に所定の作用力で変位する弾性変位部を設けた
ことを特徴とするテープカセット。
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