JP4320793B2 - 打ち抜き性及び圧延方向の磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、交流磁心に用いられる、打ち抜き性及び圧延方向への磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁鋼板は使用時の磁化方向の電磁特性が優れることが望ましく、その特性は集合組織に大きく左右される。好適な集合組織は使用形態によって、即ち、鋼板のいずれの方向を磁化方向として使用するかによって異なり、一部のトランスのように主として圧延と平行な1方向のみが磁化方向となる場合、圧延方向の結晶方位が<001>であるような集合組織が最適である。このような結晶方位を優先的に成長させ、圧延方向に電磁特性を良好にした電磁鋼板は、いわゆる方向性電磁鋼板として広く製造市販されている。
【0003】
集合組織は圧延方向の結晶方位とともに、圧延面に垂直な軸の方向の結晶方位によって規定される。現在の方向性電磁鋼板は、圧延面に平行な面が{110}であり,{110}<001>方位、ないしはゴス(Goss)方位と称される。
【0004】
ゴス方位をもつ方向性電磁鋼板は、Fe-Si の基本成分系にCを0.03〜0.10%程度、さらにインヒビタ成分としてMnS やAlN 等を0.01〜0.05%程度添加した素材に複数回の圧延と焼鈍を繰り返し施し、ゴス方位をもつ結晶粒を優先的に異常成長、即ち二次再結晶させることによって製造する方法が一般的である。
【0005】
そして、この方法では、Cは最終的にゴス方位が発達するためには必須とされているため鋼中に含有させるが、鉄損特性向上のため、通常は二次再結晶させる前に脱炭除去する工程が必要となる。
【0006】
また、インヒビタは、二次再結晶の際にゴス方位をもつ結晶粒を優先的に異常成長させるため、その前段階での正常粒の成長を抑制することを目的として添加されるが、製品鋼板中に残存すると電磁特性に悪影響があるので、最終的には焼鈍によって除去しなければならない。
【0007】
このように従来の製造方法は、電磁特性を確保するために極めて複雑かつコストのかかる工程を採用しており、工業上の生産性の観点からは大きな問題を抱えている。
【0008】
中でも生産性を悪化させている最大の原因は、上記インヒビタを除去するため、二次再結晶後に高温長時間の純化焼鈍を要するところにある。
このため、インヒビタを添加することなくゴス方位に強く集積した集合組織が得られれば、産業上の意義は絶大であるが、そのような技術は知られていない。
【0009】
また、生産性を悪化させている別の原因はCの添加である。Cも通常の製造工程ではゴス方位の集積のために必須の添加成分であるため、二次再結晶前に脱炭焼鈍することが必要になるが、これは、製造時間とコストの点で不利である。
しかし、Cを省略する技術については知られていない。
【0010】
ところで、電磁鋼板を小型のトランスコアに用いる場合には、打ち抜き性が要求される。
電磁鋼板は、大別して「無方向性」と「方向性」に分類され、一般には、無方向性電磁鋼板は、結晶粒径が細かく打ち抜き性が良好なのに対して、方向性電磁鋼板は、圧延方向の電磁特性については優れているものの、打ち抜き性の点で問題があった。
【0011】
即ち、方向性電磁鋼板において優れた電磁特性を得るには、二次再結晶によってゴス方位に揃った結晶粒を異常成長させて、巨大結晶粒( 平均結晶粒径で10mm以上) を生成させることが必要であるが、この巨大結晶粒は打ち抜き性を悪化させることになる。
【0012】
二次再結晶による巨大粒を発生させずにゴス方位を得るとの観点から従来技術を評価してみると、実際、上記方向性電磁鋼板の製造過程において、熱間圧延後の鋼板の表層近傍には{110}〈001〉方位の結晶粒がある程度存在し、その後の冷間圧延や脱炭焼鈍等の工程でその方位の相対的な存在割合は増加するが、そのままで良好な電磁特性が得られるには到底至らない。
【0013】
即ち、かかる二次再結晶前の段階での{110}〈001〉方位への集積強度は、集合組織の方位分布関数から求めたランダム方位の場合との比で、高々5倍程度であり、しかも板厚全体にわたってではない。
【0014】
一方、無方向性電磁鋼板の範疇でも、集合組織の制御により圧延方向の電磁特性を向上させる試みがなされてきた。
【0015】
即ち、特開昭54−110121号公報には、冷延鋼板を急速昇温してα→γ変態させ、つぎに緩慢に冷却してγ→α変態させることにより、圧延面内に{110}面の集積度が上昇する旨が記載されている。
しかし、その集積度はランダム方位にくらべて高々5倍程度であった。
【0016】
また、文献(高島稔ら:「材料とプロセス」第5巻(1992年)p.1921)には、Sbを微量添加することにより、冷間圧延後の{110}〈001〉方位が増加する旨が記載されている。
ただし、これはもともと僅少であったこの方位を高々ランダム方位の場合の存在割合程度に回復したにすぎず、本来のゴス方位に集積した集合組織には遠く及ばない。
【0017】
同様に、文献(H.Shimanaka ら: 「Energy Efficient Electrical Steels」TMS-AIME (1980年)p.193) に記載されるAl添加2回冷延法や、文献(塩崎守雄ら:「材料とプロセス」第5巻(1992年)p.1923)に記載される中間焼鈍後にスキンパス圧延を追加する方法によっても、十分なゴス方位への集積は得られない。
しかも、これらの手法はいずれも工程が煩雑になり、製造コストの上昇をもたらすという欠点がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、熱延においてCを必要とせずに、板厚全体にわたって{110}<001>方位に集積した集合組織を形成し、この素材を用いることで、インヒビタ成分を格別に必要とせず、しかも、二次再結晶によって結晶粒を異常成長させる必要もなく、正常粒を成長させることにより、結晶粒の粒径を適正に制御し、かつ{110}<001>方位に集積した、打ち抜き性と圧延方向の磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題、即ち、Cが0.005 %以下で、二次再結晶を利用せずに熱間圧延によって{110}<001>方位に集積した集合組織を形成し、二次再結晶を利用せずに{110}<001>方位粒を集積させるという課題を解決するために、発明者らは鋭意研究を行った。
【0020】
通常の二次再結晶を利用して製造した方向性電磁鋼板は、熱間圧延段階では、板面の表層近傍のみにおいてゴス粒が存在し、板厚中心部には存在してないため、最終段階でゴス粒を集積させるには二次再結晶を利用せざるを得なかった。
【0021】
そのため、発明者らは、熱延段階において、板厚全体にわたって{110}<001>方位への集積強度を高め、特に板厚中心部においてもその強度を十分に強くすれば、二次再結晶を利用しなくても{110}<001>方位粒を集積できるとの発想の下に検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
【0022】
即ち、熱間仕上げ圧延において、圧延終了温度と最終1パスでの圧下率を制御し、通常の工程で採用されているよりも低温かつ最終1パスで強圧下する条件下で、板厚1.5 mm以下に熱間仕上げ圧延を行うことで、熱間圧延後に{110}<001>方位に集積した集合組織を形成できること、さらに、この素材を用いることで、二次再結晶を利用せずに{110}<001>方位粒を高度に集積させることが可能であることを見出し、この発明を完成するに至ったのである。
【0024】
この発明の要旨構成は以下のとおりである。
1. C:0.005 wt%以下、Si:0.1 〜4.5 wt%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを熱間粗圧延後、熱間仕上げ圧延を行い、その後必要に応じて熱延板焼鈍を施し、酸洗の後、1回又は途中焼鈍を含む2回以上の冷間圧延若しくは温間圧延を施して最終板厚とした後、仕上げ焼鈍を行い、次いで絶縁皮膜を付与して電磁鋼板を製造するにあたり、
熱間仕上げ圧延を、最終1パスでの圧下率:30%以上及び圧延終了温度:600 〜800 ℃の条件下で行い、熱延板板厚を1.5 mm以下にすることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
2. 上記1において、鋼スラブがさらにAlおよびMnをそれぞれ2.0wt%以下含有することを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明を完成させるに至った経緯を説明する。
真空小型溶解炉にて、Si:3.12wt%、C:0.003 wt%、Mn:0.01wt%、、Al:0.005wt%からなる成分の鋼塊50 kg を溶解し、サイジングのために熱間粗圧延にて板厚5mmにした。この鋼板を1100℃にて30分間加熱した後、ロール径700 mmφの圧延機にて、周速800 m/min.、最終1パスでの圧下率84%、圧延終了温度を750 ℃にて熱間仕上げ圧延し、板厚0.8 mmの鋼板を製造し、この鋼板について、集合組織、磁気特性を調査した結果、{110}〈001〉方位への集積強度がランダム組織のそれの28倍と極めて高く、磁気特性もW15/50 で2.3 W/kg、B50で 1.705Tと、今までにはない優れた磁気特性を有する鋼板が得られた。
【0026】
そして、この知見に基づき、さらに詳細な研究を行った結果、Si含有鋼を、通常の工程で採用されているよりも低温かつ最終1パスで強圧下する条件下で、1.5 mm以下の板厚に熱間仕上げ圧延することによって、熱延板の{110}〈001〉方位への集積度が顕著に向上すること、さらに、この素材を用いることで、二次再結晶を利用せずに{110}<001>方位粒を高度に集積させることが可能であることを見出し、この発明を完成するに至ったのである。
尚、この発明では、熱間圧延段階での{110}〈001〉方位への集積強度が、上述した熱間仕上げ圧延条件のみに依存し、その他の製造条件にはほとんど依存しないことも判明した。
【0027】
以下に、この発明の鋼組成、鋼組織及び製造条件を限定した理由について説明する。
【0028】
(1) 鋼組成
(a) C:0.005 wt%以下
Cは、従来の製造方法で方向性電磁鋼板を製造する場合には、最終的にゴス方位が発達するため必須の添加元素であるが、この発明ではCは不要な成分であり、また、通常工程では行う二次再結晶前の脱炭工程も敢えて行わなくてもよいため、少ないほど好ましく、よって、0.005 wt%以下とした。
【0029】
(b) Si:0.1 〜4.5 wt%
Siは比抵抗を増大させ、渦電流損を低減させる効果があり、この発明には必須の成分である。しかし、 0.1wt%未満だと十分にこの効果が現れず、また、 4.5wt%を超えると、磁束密度の低下が大きいばかりでなく、打ち抜き性も劣化する。
従って、Siの含有量は0.1 〜4.5 wt%の範囲とした。
【0030】
(c) この発明では、C,Si以外の成分については特に限定はしないが、用途に応じて既知である種々の第三元素を適宜添加することは可能である。
例えば、Al及びMnは、Siと同様に比抵抗を増大させる効果を有する成分であり添加することができるが、Al及びMnの添加量は、いずれも2.0 wt%を超えるとコストの上昇を招くので、それぞれ2.0 wt%以下の範囲内で添加することが好ましい。
【0031】
(2) 鋼組織
この発明の電磁鋼板は、従来の製造方法のように二次再結晶による異常成長を生じさせるメカニズムによって粒成長させた組織を有するものではなく、正常粒を、粒径、{110}<001>方位及びこの方位をもつ正常粒の存在割合を適正に制御して成長させた組織を有することを主な特徴とするものであり、これによって、従来の方向性電磁鋼板においては困難とされていた磁気特性と打ち抜き性との両立を可能にしたものである。
【0032】
(a) 平均結晶粒径:0.1 〜5.0mm の範囲
結晶粒の平均結晶粒径は、0.1 mm未満であると、鉄損の内履歴損失が増加して鉄損を顕著に悪化させることになり、また、5mmを超えると打ち抜き性が悪化する。
従って、結晶粒の平均結晶粒径は、0.1 〜5.0mm の範囲とした。
【0033】
(b) 圧延方向に平行な軸線に対する{110}<001>方位の<001>軸のずれが回転角で±15°以内である正常粒が全体の結晶粒の80%以上
{110}<001>方位及びこの方位をもつ正常粒の存在割合に関して言えば、圧延方向に平行な軸線に対する{110}<001>方位の<001>軸のずれが15°より大きいと、磁束密度が極端に劣化し、また、前記ずれが回転角で±15°以内である正常粒の結晶粒全体に占める存在割合が、体積百分率で80%未満である場合にも、磁束密度が劣化する。
従って、この発明の電磁鋼板は、圧延方向に平行な軸線に対する{110}<001>方位の<001>軸のずれが回転角で±15°以内である正常粒が全体の結晶粒の80%以上のものに限定した。
【0034】
(3) 製造条件
次に、この発明の製造方法について限定した理由を説明する。
(A) 熱間仕上げ圧延条件
(a) 圧延終了温度:600 〜800 ℃
図1は、真空小型溶解炉にて、Si:3.12wt%、C:0.003 wt%、Mn:0.01wt%、Al:0.005wt%からなる成分の鋼塊を、最終1パスの圧下率を60%、仕上げ板厚を1.0 mmの熱間仕上げ圧延を圧延終了温度を変えて行った種々の鋼板を製造し、各鋼板の板厚中心部における{110}〈001〉方位への集積強度と圧延終了温度との関係を示したものである。
【0035】
図1から、圧延終了温度は、800 ℃を超えると、{110}〈001〉方位の集積が弱くなり、また、600 ℃未満であると、圧延荷重が極端に増し圧延困難となる。
従って、圧延終了温度は600 〜800 ℃とした。
【0036】
(b)最終1パスでの圧下率:30%以上
図2は、上記組成の鋼塊を、圧延終了温度700 ℃で最終1パスの圧下率を10〜80%の範囲で変化させて仕上げ板厚1.0mm の熱間圧延を行った種々の鋼板を製造し、各鋼板の板厚中心部における{110}〈001〉方位への集積強度と最終1パスの圧下率との関係を示したものである。
【0037】
図2から、最終1パスでの圧下率が30%未満であると、{110}〈001〉方位の集積が弱くなり、最終製品での磁気特性及び方位集積が劣化するので、熱間仕上げ圧延での1パスでの圧下率は30%以上とした。
【0038】
(c) 熱延板板厚:1.5mm 以下
図3は、上記組成の鋼塊を最終1パスでの圧下率:80%、圧延終了温度:700
℃の条件下で熱間圧延を行い、板厚0.8 〜3.0mm の範囲の種々の鋼板を製造し、各鋼板の板厚中心部における{110}〈001〉方位への集積強度と仕上げ板厚との関係を示したものである。
【0039】
図3から、熱延板板厚は、1.5 mmよりも厚いと、{110}〈001〉方位の集積が弱くなることから、熱延板板厚は1.5 mm以下とした。
【0040】
(B) その他の製造条件
この発明は、熱間圧延段階での{110}〈001〉方位への集積強度が、熱間仕上げ圧延条件のみに依存し、その他の製造条件にはほとんど依存しないことは既に上述した。従って、焼鈍、酸洗、冷間圧延若しくは温間圧延、及び絶縁皮膜形成条件等については特に限定せず、通常行われている範囲内で行うことができる。
一例として挙げると、熱延板を1000℃×2分で焼鈍し、酸洗ののち圧下率70%の冷間圧延を施し、850 ℃×3分の仕上げ焼鈍を行ったのち絶縁皮膜を形成する。
【0041】
【実施例】
次に、この発明の製造方法を用いて電磁鋼板を製造し、性能を評価したので以下で説明する。
・実施例1
真空小型溶解炉にて、Fe-2.0%Si(鋼種A)及びFe-3.3%Si(鋼種B)組成からなる2 種類の鋼塊50kgをそれぞれ溶解し、その後1150℃にて加熱し熱間粗圧延で 1.4〜8.0mm 厚の板とし、さらに、各板を1100℃にて加熱し、圧延終了温度を550 〜850 ℃に制御し、800m/min. の圧延速度で1パスにて板厚1.0mm に仕上げ、その後 950℃で5分間焼鈍した。さらに、酸洗を行い、その後、冷間圧延にて板厚0.35mmに仕上げ、さらに、温度950 ℃で2分間焼鈍した。これら各鋼板について、EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)にて結晶粒の方位を測定し、{110}<001>方位粒の存在割合を求めた結果を、仕上げ圧延における圧延終了温度と1パス圧下率との関係でプロットしたものを図4に示す。
【0042】
尚、図中の丸印「○」と「●」は鋼種Aを、また三角印「△」と「▲」は鋼種Bを示し、白抜き印「○」と「△」は、圧延方向に平行な軸線に対する{110}<001>方位の<001>軸のずれが回転角で±15°以内である正常粒が全体の結晶粒の80%以上である場合、黒塗り印「●」と「▲」は、前記正常粒が全体の結晶粒の80%未満である場合を示したものである。
【0043】
図4の結果から、鋼種A及びBとも、仕上げ圧延における圧延終了温度が600
〜800 ℃で、かつ1パスでの圧下率が30%以上である場合に、圧延方向に平行な軸線に対する{110}<001>方位の<001>軸のずれが回転角で±15°以内である正常粒が全体の結晶粒の80%以上であった。
【0044】
・実施例2
真空小型溶解炉にて、Fe-3.2%Si の組成からなる鋼塊100kg を溶解し、その後1150℃にて加熱し熱間粗圧延で 1.4〜8.0mm 厚の板とした。この板を、1100℃にて加熱し、圧延温度を 600、650 、750 、850 ℃に制御し、800m/min. の圧延速度で1パスにて板厚1.0mm に仕上げ、その後、温度1000℃で2分間焼鈍した。さらに、酸洗を行い、その後、冷間圧延にて板厚0.35mmに仕上げ、さらに、温度950 ℃で2分間焼鈍した。これら各鋼板について、EBSDにて結晶粒の方位を測定し、{110}<001>方位粒の存在割合を求めるとともに、磁気測定を行い、最大磁束密度 1.7テスラ(T)、周波数50Hzに対する1kg当たりの鉄損値:W17/50 及び、磁化力800 A/mでの磁束密度;B8 を求めた。さらに、鋼板断面を光学顕微鏡によって観察して、平均結晶粒径を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
No. 1、5、7及び10は、熱延の圧下率が低い例であり、また、No.11 は熱延の圧延温度が高い例であり、いずれの場合も、圧延方向に平行な軸線に対する{110}<001>方位の<001>軸のずれが±15°以内の結晶粒の割合が80%未満となり、結晶粒径も小さく、磁気特性が劣化した例である。
その他は本発明例であり、いずれも前記割合が80%以上であり、磁気特性が優れていた。
【0047】
・実施例3
真空小型溶解炉にて、Fe-3.4% Si(鋼種1)、Fe4.8%Si(鋼種2)組成からなる鋼塊50kgを溶解し、その後、1150℃にて加熱し熱間圧延で5mm厚の板とした。この板を、1100℃にて加熱し、圧延温度を750 に制御し、800 m/min.の圧延速度で1パスにて板厚1.0mm に仕上げ、温度1000℃で2分間焼鈍した。さらに、酸洗を行い、その後: 冷間圧延にて板厚0.35mmに仕上げ、さらに、結晶粒の粒径を変えるために、温度、時間を変化させ、再結晶及び粒成長焼鈍した。これら各鋼板について、EBSDにて結晶粒の方位を測定し、{110}<001>方位粒の存在割合を求めるとともに、磁気測定を行い、W17/50 及びB8 を求めた。さらに、鋼板断面を光学顕微鏡によって観察して、平均結晶粒径を求めた。また、打ち抜き性についても評価した。これらの結果を表2に示す。尚、表2中の打ち抜き性は、良好である場合を「○」、良くない場合を「×」として示してある。
【0048】
【表2】
【0049】
表2の結果から、No. 1〜4は本発明の適合例であり、鉄損値W17/50 、磁束密度B8 及び打ち抜き性のいずれも良好である。
No. 7及び8はSi含有量が高い場合の比較例であり、特に磁束密度B8 が劣化し、また、打ち抜き性も劣化した例である。No. 5及び6は平均結晶粒径が5mmよりも大きい場合の比較例てあり、特に打ち抜き性が劣化している。加えて、No. 6については、粒成長させすぎたために、磁束密度B8 がかなり劣化していることがわかる。
【0050】
【発明の効果】
この発明によれば、従来の方向性電磁鋼板の製造方法では二次再結晶を利用せずには実現不可能とされていた(110)<001>方位粒への集積を、二次再結晶を利用せずに行うことができ、しかも、正常粒の粒径を適正に制御することによって、従来の方向性電磁鋼板においては劣る傾向にあった打ち抜き性を改善することができる。
また、この発明では、従来技術では必須の工程であった脱炭焼鈍、二次再結晶焼鈍及び純化焼鈍の工程を省略できるため、大幅なコスト低減、製造時間の短縮及び省エネルギー化が図れる。
このように、この発明では、打ち抜き性が良好であり、かつ圧延方向の磁気特性に優れた電磁鋼板を安価に得ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 板厚中心位置における(110)<001>方位への集積強度と圧延終了温度との関係を示す図である。
【図2】 板厚中心位置における(110)<001>方位への集積強度と最終1パスでの圧下率との関係を示す図である。
【図3】 板厚中心位置における(110)<001>方位への集積強度と熱延板板厚との関係を示す図である。
【図4】 (110)<001>方位粒の存在割合を求めた結果を仕上げ圧延における圧延終了温度と1パスでの圧下率との関係でプロットした図である。
Claims (2)
- C:0.005 wt%以下、Si:0.1 〜4.5 wt%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを熱間粗圧延後、熱間仕上げ圧延を行い、その後必要に応じて熱延板焼鈍を施し、酸洗の後、1回又は途中焼鈍を含む2回以上の冷間圧延若しくは温間圧延を施して最終板厚とした後、仕上げ焼鈍を行い、次いで絶縁皮膜を付与して電磁鋼板を製造するにあたり、
熱間仕上げ圧延を、最終1パスでの圧下率:30%以上及び圧延終了温度:600 〜800 ℃の条件下で行い、熱延板板厚を1.5 mm以下にすることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1において、鋼スラブがさらにAlおよびMnをそれぞれ2.0wt%以下含有することを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
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