JP4320221B2 - 昇降便座 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、便座を駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の昇降便座としては、2つのリンクを連結軸で回動自在に連結し、略X字状のリンクを形成し、便器の両側に一対の支持台を配し、支持台を便器と同じく床などに置き、支持台と便座の間に略X字状のリンクを介在させ、2つのリンクの端部をスライド駆動することで、便座を前方に傾けながら上昇させ、便座を略水平な姿勢から前傾した待機姿勢にすることで、例えば、腰痛などで腰を十分に落として便座に座ることができない人のために、腰をわずかに曲げるだけで、その人の臀部を便座が受け止めることができるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、便器の両側に一対の側枠部を配し、側枠部を便器と同じく床などに置き、側枠部に平行四節リンクを介して便座を連結し、電動伸縮駆動体によって、平行四節リンクを駆動させて、便座を略水平な着座姿勢に維持しながら上昇させ、便座の待機姿勢を着座姿勢とほぼ同じ略水平にすることで、例えば、車椅子を使用している人が、車椅子から便座に容易に乗り移ることができるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−289477号公報
【特許文献2】
特開平11−169406号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来の昇降便座では、特許文献1の技術のように便座の待機姿勢を前傾したものにする機種および特許文献2の技術のように便座の待機姿勢を着座姿勢とほぼ同じ略水平にする機種の2つの機種がそれぞれ別個に存在しているが、2つの機種の一方から他方の機種に変更することができない。そのため、昇降便座の製造、販売者は、2つの機種を別々に製造、販売する必要があって、コスト高の要因になる。また、この2つの機種の一方を購入して使用した者が他方の機種を使用する場合には、他方の機種を新たに購入する必要があるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献1の技術では一対の支持台が、特許文献2の技術では一対の側枠部がそれぞれ例えばトイレルームの床に置かれているので、便器の両側に他の物を置くためのスペースが大幅に制限されるという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、簡単な操作で便座の待機姿勢を変更可能にして、便座の待機姿勢の異なる装置を同一の機種として、製造、販売することができ、コストを低減することができ、また、便座の待機姿勢が異なる装置を新たに購入する必要がなく、購入者に割安感を与えることができる昇降便座を提供することを目的としている。また、昇降便座を便器に装着する一方、トイレルームの床などに置かないようにして、便器の両側に他の物を置くためのスペースを確保できる昇降便座を提供することを目的としている。
【0008】
さらに、1つのアクチュエータの動力で各リンク機構を作動させるようにして、小型にすることができ、コストを低減することができる昇降便座を提供し、また、アクチュエータをリンク機構の下方に配することで、リンク機構回りを薄型にすることができる昇降便座を提供することができ、さらに、本体ケースにモータ等を収容することで、耐環境性および遮音性に優れた昇降便座を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]便座(10)を駆動機構(20a)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20a)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、該2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との他方に嵌合するものであることを特徴とする昇降便座。
【0010】
[2]便座(10)を駆動機構(20a)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20a)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との他方に嵌合するものであることを特徴とする昇降便座。
【0011】
[3]前記駆動機構(20a)は、便器(1)の両側に一対配され、
前記一対の駆動機構(20a)は、前記便器(1)にそれぞれ装着されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の昇降便座。
【0012】
[4]前記駆動機構(20a)は、一対のナット部材(52)と、スクリュー部材(51)と、付勢手段(55)とを備え、
前記一対のナット部材(52)は、前記スクリュー部材(51)の正逆回転により螺進して、前記一対のナット部材(52)同士が近接あるいは離間するように配され、
さらに、前記一対のナット部材(52)は、前記2つのリンク部材(41、42)の端部にそれぞれ連結され、前記一対のナット部材(52)同士が近接した状態と離間した状態との一方から前記近接した状態と前記離間した状態との他方に螺進することで、前記2つのリンク部材(41、42)を前記折畳状態と前記展開状態とに変動させて、便座(10)を昇降させるようにし、
前記付勢手段(55)は、前記一対のナット部材(52)を介して、前記便座(10)を上昇する方向に付勢していることを特徴とする[1]、[2]または[3]に記載の昇降便座。
【0013】
[5]前記駆動機構(20a)は、一対のナット部材(52)と、スクリュー部材(51)と、転動部材(58)と、支持レール(59)とを備え、
前記一対のナット部材(52)は、前記スクリュー部材(51)の正逆回転により螺進して、前記一対のナット部材(52)同士が近接あるいは離間するように配され、
さらに、前記一対のナット部材(52)は、前記2つのリンク部材(41、42)の端部にそれぞれ連結され、前記一対のナット部材(52)同士が近接した状態と離間した状態との一方から前記近接した状態と前記離間した状態との他方に螺進することで、前記2つのリンク部材(41、42)を前記折畳状態と前記展開状態とに変動させて、便座(10)を昇降させるようにし、
前記転動部材(58)は、前記一対のナット部材(52)にそれぞれ設けられ、該一対のナット部材(52)が螺進するにともなって、前記支持レール(59)上を転動するものであることを特徴とする[1]、[2]、[3]または[4]に記載の昇降便座。
【0014】
[6]便座ベース(30)と、補強部材(70)と、肘掛け部材(80)とを備え、
前記便座ベース(30)は、前記便座(10)と便器(1)との間に介在して、前記便座(10)を支持し、前記便器(1)に沿って略U字形状に形成されていて、前方に開いた開放口を有し、
前記補強部材(70)は、前記便座ベース(30)の開放口の両端縁部間に架設され、
前記肘掛け部材(80)は、前記補強部材(70)の両端部にそれぞれ固設されていることを特徴とする[1]、[2]、[3]、[4]または[5]に記載の昇降便座。
【0015】
[7]便座(10)を駆動機構(20a)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20a)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、該2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)が回動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との他方に嵌合するものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材(41、42)を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータ(90)と、該アクチュエータ(90)の動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段(100)とを備え、
前記リンク機構は、便器の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータ(90)は、前記便器の両側の一方に配され、
前記伝達手段(100)は、前記アクチュエータ(90)から各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。
【0016】
[8]便座(10)を駆動機構(20a)によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構(20a)は、少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、
前記2つのリンク部材(41、42)は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)は、該水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)は、該前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合した前記連結軸(45)を中心にして、前記2つのリンク部材(41、42)を回動したとき、該2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座(10)を下降させたとき便座(10)を略水平な着座姿勢にする一方、便座(10)を上昇させたとき便座(10)を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸(45)は、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前記前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)との他方に嵌合するものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材(41、42)を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータ(90)と、該アクチュエータ(90)の動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段(100)とを備え、
前記リンク機構は、便器の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータ(90)は、前記便器の両側の一方に配され、
前記伝達手段(100)は、前記アクチュエータ(90)から各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。
【0017】
[9]前記アクチュエータ(90)は、前記リンク機構の下方に配されていることを特徴とする[7]または[8]に記載の昇降便座。
【0018】
[10]前記アクチュエータ(90)は、本体ケース(91)と、動力源であるモータ(M1)と、該モータ(M1)の回転を減速して前記伝達手段(100)へ出力するための減速機構(92)と、前記モータ(M1)を制御するためのコントローラ(98)とを備え、
前記本体ケース(91)には、前記モータ(M1)、前記減速機構(92)およびコントローラ(98)が収容されていることを特徴とする[7]、[8]または[9]に記載の昇降便座。
【0019】
[11]前記減速機構(92)は、ウォーム(93)を備えた歯車伝達機構であることを特徴とする[10]に記載の昇降便座。
【0020】
[12]前記伝達手段(100)は、前記2つのリンク部材(41、42)の少なくとも一方の端部に支持されたプーリ部材(101)と、該プーリ部材(101)に巻き掛けられたケーブルとを備え、
前記ケーブルは、前記アクチュエータ(90)の動力によって巻き取られあるいは巻き戻されることで、前記2つのリンク部材を回動するように配索されていることを特徴とする[7]または[8]に記載の昇降便座。
【0021】
[13]前記ケーブルの張力の大きさに基づいて、前記便座(10)が異常状態にあることを検出するための検出機構(110)を備えたことを特徴とする[12]に記載の昇降便座。
【0022】
[14]前記検出機構(110)は、前記ケーブルに連結されたレバー部材(111)と、該レバー部材(111)の動きを検出するための検出スイッチ(112)とを備え、
前記レバー部材(111)は、前記ケーブルの張力が前記レバー部材(111)を付勢する力より大きくなったときの高張力時位置と、前記レバー部材(111)を付勢する力より小さくなったときの低張力時位置とに揺動可能に配され、前記低張力時位置に揺動する方向へ付勢され、
前記検出スイッチ(112)は、前記レバー部材(111)が前記低張力時位置に揺動したことを検出することで、前記便座(10)が異常状態にあることを判断できるように配されていることを特徴とする[13]に記載の昇降便座。
【0023】
前記本発明は次のように作用する。
駆動機構(20a)が少なくとも2つのリンク部材(41、42)と、連結軸(45)とを備え、2つのリンク部材(41、42)が、その2つのリンク部材(41、42)の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、共孔が水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とを含むものでは、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているとき、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に回動すると、便座(10)が駆動機構(20a)によって略水平な着座姿勢と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢とに昇降するようになっている。
【0024】
便座(10)の姿勢を変えながら便座(10)を昇降させるには、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)から外して、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合させればよい。このように、連結軸(45)の嵌合する共孔を変え、2つのリンク部材(41、42)の回動中心を変更することによって、便座(10)が下降したとき略水平な着座姿勢になる一方、便座(10)が上昇したとき、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になる。
【0025】
例えば、水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とは、2つのリンク部材(41、42)の各々において別々の位置に穿設される。しかしながら、2つのリンク部材(41、42)の一方において、水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とを同一の位置に設けるようにしてもよい。この場合、2つのリンク部材(41、42)の他方においては、水平待機姿勢用共孔(41a、42a)と前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)とを別々の位置に設ける。
【0026】
2つのリンク部材(41、42)がX字状リンクを構成したものでは、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に合わせ、2つのリンク部材(41、42)を連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動することによって、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら待機姿勢に昇降するようになる。
【0027】
一方、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)から外し、前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合させ、2つのリンク部材(41、42)を連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動することによって、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢とに昇降するようになる。
【0028】
2つのリンク部材(41、42)を共に起立した状態がX字状リンクの高さの最大値であり、また、2つのリンク部材(41、42)を共に倒伏した状態がX字状リンクの幅の最大値である。したがって、X字状リンクを取り付けるための取付スペースは、高さ方向および幅方向共に、リンク部材の長さと同じ長さを確保できれば十分である。
【0029】
駆動機構(20a)が便器(1)の両側に一対配され、一対の駆動機構(20a)が便器(1)にそれぞれ装着されているものでは、駆動機構(20a)を床などに置く必要がなく、便器(1)の両側に位置する床のスペースが狭いトイレルームなどであっても、装置を設置することができる。
【0030】
駆動機構(20a)が一対のナット部材(52)と、スクリュー部材(51)と、付勢手段(55)とを備え、付勢手段(55)が一対のナット部材(52)を介して、便座(10)を上昇する方向に付勢しているものでは、一対のナット部材(52)がスクリュー部材(51)の正逆回転により螺進して、一対のナット部材(52)同士が近接あるいは離間する。一対のナット部材(52)が2つのリンク部材(41、42)の端部にそれぞれ連結されているから、一対のナット部材(52)同士が近接あるいは離間することで、2つのリンクが折畳状態と展開状態とに変動して、便座(10)が昇降する。便座(10)は着座者の体重に抗して上昇する。したがって、駆動機構(20a)は便座(10)を上昇するときに、大きな駆動力を発生させる必要がある。付勢手段(55)が便座(10)を上昇する方向に付勢しているので、付勢手段(55)は、駆動機構(20a)が便座(10)を上昇させるときの駆動力を補助する役割を果たす。
【0031】
駆動機構(20a)がスクリュー部材(51)と、一対のナット部材(52)と、転動部材(58)と、支持レール(59)とを備えたものでは、着座者の体重が便座(10)、2つのリンク部材(41、42)および、一対のナット部材(52)を介してスクリュー部材(51)にかかるようになる。着座者の体重でスクリュー部材(51)が撓むと、ナット部材(52)がスクリュー軸の方向に円滑に螺進しないで、便座(10)を昇降させる際に支障を来すおそれがある。しかしながら、ナット部材(52)に設けられた転動部材(58)が支持レール(59)上を転動することで、着座者の体重がスクリュー部材(51)でなく、支持レール(59)にかかるようにしたので、着座者の体重がスクリュー部材(51)にかからないようになる。それによって、一対のナット部材(52)が、スクリュー部材(51)の正逆回転により円滑に螺進して、便座(10)を支障なく昇降させることができる。
【0032】
便座ベース(30)と、補強部材(70)と、肘掛け部材(80)とを備え、補強部材(70)が便座ベース(30)の開放口の両端縁部間に架設され、肘掛け部材(80)が補強部材(70)の両端部にそれぞれ固設されているものでは、変形し易い便座ベース(30)の開放口の両端縁部が補強部材(70)によって補強され、着座者が肘掛け部材(80)を使用することで、肘掛け部材(80)に荷重がかかり、便座ベース(30)の開放口が広げられたり狭められたりするようになっても、補強部材(70)によって、便座ベース(30)の開放口の両端縁部の変形を抑えることができる。
【0033】
次に、リンク機構は、便器の両側にそれぞれ配され、アクチュエータ(90)は、便器の両側の一方に配され、伝達手段(100)は、アクチュエータ(90)から各リンク機構にそれぞれ延ばされているものでは、昇降便座は以下のように動作する。
【0034】
アクチュエータ(90)が始動すると、アクチュエータ(90)の動力が伝達部材を介して各々のリンク機構に伝わり、各リンク機構が作動する。連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているときには、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に回動し、便座(10)が略水平な着座姿勢と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢とに昇降する。
【0035】
一方、連結軸(45)を前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合させているときには、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に回動し、便座(10)が下降したとき略水平な着座姿勢になる一方、便座(10)が上昇したとき、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になる。
【0036】
次に、2つのリンク部材(41、42)がX字状リンクを構成したものでは、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているときに、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)を連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら待機姿勢に昇降するようになる。
【0037】
一方、連結軸(45)を前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合させているときに、アクチュエータ(90)の動力によって、2つのリンク部材(41、42)を連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢とに昇降するようになる。
【0038】
次に、アクチュエータ(90)がリンク機構の下方に配されているものでは、アクチュエータ(90)とリンク機構とを水平に並べて配置しないで済み、リンク機構およびその周辺部材の厚みを減らすことができ、便座(10)の脇に温水タンクが配されるようなタイプの衛生洗浄装置であっても、リンク機構回りが温水タンクまで張り出さないから、温水タンクをリンク機構回りに干渉することなく配することができる。
【0039】
次に、本体ケース(91)にモータ(M1)、減速機構(92)およびコントローラ(98)が収容されているものでは、モータ(M1)や減速機構(92)が作動するときの音が、本体ケース(91)の外に出に難くなり、遮音性が増す。また、本体ケース(91)にモータ(M1)、減速機構(92)ばかりでなくコントローラ(98)も収容されているので、利用者に用いられる洗浄水などが、コントローラ(98)等にかからないようになり、また、塵埃などが侵入しないようになって、耐環境性が向上する。
【0040】
次に、伝達手段(100)は、2つのリンク部材(41、42)の少なくとも一方の端部に支持されたプーリ部材(101)と、プーリ部材(101)に巻き掛けられたケーブルとを備え、ケーブルは、アクチュエータ(90)の動力によって巻き取られあるいは巻き戻されることで、2つのリンク部材を回動するように配索されているものでは、プーリ部材(101)とケーブルとによる簡単な構成で、2つのリンク部材(41、42)を回動させることができる。
【0041】
連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているときに、アクチュエータ(90)が始動すると、ケーブルが巻き取られあるいは巻き戻される。それにより、プーリ部材(101)を支持したリンク部材が作動して、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら待機姿勢に昇降するようになる。
【0042】
一方、連結軸(45)を前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合させているときに、アクチュエータ(90)が始動し、ケーブルが巻き取られあるいは巻き戻されることで、プーリ部材(101)を支持したリンク部材が作動し、2つのリンク部材(41、42)を連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢とに昇降するようになる。
【0043】
次に、減速機構(92)がウォーム(93)を備えた歯車伝達機構であるものでは、ウォーム(93)を用いることで大きな減速比が得られるとともに、アクチュエータ(90)が停止しているときに、便座(10)側からの力が伝達手段(100)を介して、ウォーム(93)が噛合するギアである、例えばウォームホイールにかかって回転しようとする。しかし、そのウォームホイールが回転しようとしても、ウォーム(93)が回転することがなく、便座(10)は所定位置に拘束される。すなわち、減速機構(92)によって、便座(10)を所定位置に拘束することができるので、特別な拘束手段を設ける必要がない。
【0044】
次に、ケーブルの張力の大きさに基づいて、便座(10)の状態を検出するための検出機構(110)を備えたものでは、ケーブルの沿線上の空いたスペースに、検出機構(110)を配することができ、空いたスペースを有効に利用し、この点からも装置を小型にすることができる。
【0045】
次に、検出機構(110)は、ケーブルに連結されたレバー部材(111)と、レバー部材(111)の動きを検出するための検出スイッチ(112)とを備えたものでは、連結軸(45)を水平待機姿勢用共孔(41a、42a)に嵌合させているときに、アクチュエータ(90)が始動すると、ケーブルが巻き取られあるいは巻き戻される。それにより、プーリ部材(101)を支持したリンク部材が作動して、2つのリンク部材(41、42)が連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら待機姿勢に昇降するようになる。
【0046】
一方、連結軸(45)を前傾待機姿勢用共孔(41b、42b)に嵌合させているときに、アクチュエータ(90)が始動し、ケーブルが巻き取られあるいは巻き戻されることで、プーリ部材(101)を支持したリンク部材が作動し、2つのリンク部材(41、42)を連結軸(45)を中心に折畳状態と展開状態とに回動し、2つのリンク部材(41、42)が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座(10)が着座姿勢と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢とに昇降するようになる。
【0047】
便座(10)が着座姿勢にあるとき、ケーブルは、リンク部材(41、42)を介して便座(10)からの力を受けておらず、ケーブルの張力がレバー部材(111)を付勢する力より小さくなっていて、レバー部材(111)は低張力位置に揺動している。検出スイッチ(112)は、レバー部材(111)が低張力位置に揺動していることを検出する。しかし、他のスイッチによって、便座(10)が着座姿勢にあることが検出されていれば、便座(10)の駆動機構(20a)が正常な状態であることが判る。
【0048】
また、便座(10)が着座姿勢以外にあるとき、ケーブルは、リンク部材を介して便座(10)からの力を受けていて、ケーブルの張力がレバー部材(111)を付勢する力より大きくなっていて、レバー部材(111)は高張力位置に揺動している。検出スイッチ(112)は、レバー部材(111)が高張力位置に揺動していることを検出する。それによって、便座(10)の駆動機構(20a)が正常な状態であることが判る。
【0049】
さらに、例えば、装置の保守点検時に、作業者が誤って、工具が2つのリンク部材(41、42)の間に挟まったままアクチュエータ(90)を始動して、2つのリンク部材(41、42)が回動不能状態になると、ケーブルの張力がレバー部材(111)を付勢する力より小さくなっていて、レバー部材(111)は低張力位置に揺動する。検出スイッチ(112)は、レバー部材(111)が低張力位置に揺動したことを検出する。それによって、便座(10)の駆動機構(20a)が異常状態にあることが判る。このように、簡単な構成により、便座(10)の駆動機構(20a)が正常状態であるか、異常状態であるかを確実に検出することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明を代表する各種実施の形態を説明する。
図1〜図22は、本発明の第1実施の形態を示している。図1は本発明の第1実施の形態に係る昇降便座の駆動機構を示す側面図、図2は昇降便座の斜視図であって、便座が下降している状態を示す図、図3および図4は同じく便座が上昇している状態を示す図、図5は便器から便座および衛生洗浄装置を外した状態を示す図、図6は昇降便座の分解斜視図、図7は同じく駆動機構を示す平面図、図8は同じく駆動機構を示す正面図、図9は昇降便座の便座ベースおよびベース部材を示す平面図である。
【0051】
図1〜図9に示すように、本実施の形態に係る昇降便座は、洋式便器1に取り付けて使用されるものであり、便器1の後端部にはタンク2が取り付けられている。昇降便座は便座10を昇降させるための駆動機構20aを備えている。駆動機構20aは、便器1の両側に一対配されている。一対の駆動機構20aは、便器1にそれぞれ装着されている。図8に示すように、駆動機構20aのベース部材20は、クランク状断面形状に形成され、ベース上部21とベース下部22と、それらの中間部を成すベース壁部23とを備えている。ベース壁部23の前端部を外側に折り曲げることで前壁24が形成され、ベース壁部23の後端部を外側に折り曲げることで後壁25が形成されている。ベース部材20の各ベース上部21は、ベースプレート26を介して便器1の開口の両側縁部にそれぞれ係止している。
【0052】
また、昇降便座は、便座10を固定するための便座ベース30を備えている。便座ベース30は、便座10と便器1との間に介在して、便座10を支持するものである。図9に示すように、便座ベース30は、便器1に沿って略U字形状に形成されていて、前方に開いた開放口31を有している。
【0053】
図1および図8に示すように、便座10は、一対の駆動機構20aによって支持されている。駆動機構20aは、2つのリンク部材41、42と、連結軸45とを備えている。2つのリンク部材41、42は、X字状リンク20aを構成している。2つのリンク部材41、42は、同じ形状のものを表裏にして用いられる。一方のリンク部材41と他方のリンク部材42との互いに重なる部分には、共孔がそれぞれ穿設されている。共孔は、水平待機姿勢用共孔41a、42aと前傾待機姿勢用共孔41b、42bとを含んでいる。一方のリンク部材41に水平待機姿勢用共孔41aと前傾待機姿勢用共孔41bとが穿設されている。また、他方のリンク部材42に水平待機姿勢用共孔42aと前傾待機姿勢用共孔42bとが穿設されている。
【0054】
図10、図11、図13および図14は昇降便座の駆動機構を示す側面図であって、便座を待機姿勢にしたときの駆動機構の状態を示す図、図12は便座を着座姿勢にしたときの駆動機構の状態を示す図である。
【0055】
図10〜図14に示すように、連結軸45は、共孔に嵌合することによって、2つのリンク部材41、42を共に倒伏した図12に示す折畳状態と、共に起立した図10、図11、図13および図14にそれぞれ示す展開状態とに回動可能に支持するものである。
【0056】
駆動機構20aは、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合することによって、連結軸45を中心に2つのリンク部材41、42を回動して2つのリンク部材41、42を折畳状態と展開状態とに変動して、便座10を着座姿勢と、その着座姿勢(図12参照)とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢(図10、図13参照)とに昇降させる一方、連結軸45を前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合することによって、連結軸45を中心に2つのリンク部材41、42を回動して2つのリンク部材41、42を折畳状態と展開状態とに変動して、便座10を着座姿勢と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢(図11、図14参照)とに昇降させるものである。
【0057】
付勢手段55は、一対のナット部材52を介して、便座10を上昇する方向に付勢している。付勢手段55は、一対のナットホルダ53間に張設された引っ張りばねである。
【0058】
図15は昇降便座の駆動機構の部分斜視図、図16は駆動機構のスクリュー部材およびナット部材を主に示す斜視図、図17は駆動機構の部分斜視図、図18は便座を下降したときの駆動機構の状態を示す側面図、図19〜図22は駆動機構の斜視図あるいはそれらの機構の部分斜視図を示し、便座を上昇したときの駆動機構の状態を示す図、図23は図12のXXIII−XXIII断面図である。
【0059】
図12〜図23に示すように、駆動機構20aは、スクリュー部材51と、一対のナット部材52と、付勢手段55とを備えている。スクリュー部材51は、略前後方向にスクリュー軸を延ばしている。ベース部材20の前壁24と後壁25とには軸受部材51a、51bが嵌着されている。その軸受部材51a、51bにスクリュー部材51が正逆回転可能に架設されている。また、スクリュー部材51の前側部および後側部には台形ねじがそれぞれ形成されている。一方の台形ねじは右ねじで形成される一方、他方の台形ねじは左ねじで形成されている。
【0060】
一対のナット部材52は、スクリュー部材51の各台形ねじにそれぞれ螺合し、スクリュー部材51の正逆回転によりスクリュー軸方向に螺進して、一対のナット部材52同士が近接あるいは離間するように配されている。各ナット部材52にはナットホルダ53が外嵌している。また、ベース部材20の後壁25には減速機構であるギアボックス54が固設され、ギアボックス54には駆動モータMが取り付けられている。ベース部材20の前壁24、後壁25には、スクリュー部材51を外側から嵌合させるための嵌合溝24a、25aがそれぞれ形成されている。
【0061】
各ナットホルダ53には軸部材57がそれぞれ回転可能に支持されている。一対のナット部材52は、軸部材57を介して2つのリンク部材41、42の各下端部にそれぞれ連結されている。また、2つのリンク部材41、42の各上端部が便座ベース30にそれぞれ連結されている。便座ベース30の両側部を成すベース側部32は、逆L字状断面形状に形成され、ベース側部32の側壁33には長孔34が形成されている。一方のリンク部材41の上端部は、便座ベース30の側壁33に回動可能に支持され、他方のリンク部材42の上端部にはローラ部材43が設けられ、ローラ部材43が便座ベース30の長孔34に移動可能に嵌合している。
【0062】
一対のナット部材52は、スクリュー軸方向にそれぞれ螺進することで、互いに離間した状態と互いに近接した状態とになって、2つのリンク部材41、42を折畳状態と展開状態とに変動させて、便座10を昇降させるようにしている。
【0063】
駆動機構20aは転動部材58と、支持レール59とを備えている。転動部材58は、一対のナット部材52にそれぞれ設けられ、一対のナット部材52が螺進するにともなって、支持レール59上を転動するものである。具体的には、転動部材58は、軸部材57に回転可能に支持されている。また、支持レール59は、L字状断面形状のアングル材により形成され、その長手方向を略前後方向にしてベース部材20のベース壁部23に固設されている。
【0064】
図19および図23に示すように、2つのリンク部材41、42にはねじ孔46が穿設され、ねじ孔46にスペーサ47が螺着している。スペーサ47は、リンク部材41とベース部材20との隙間に介在してリンク部材41のがたつきを防止するためのものであり、リンク部材42と便座ベース30との間の隙間に介在してリンク部材42のがたつきを防止するためのものである。また、スペーサ47は、ねじ孔46に螺合していくことにより、リンク部材41、42に当接するようになっている。
【0065】
また、ベース部材20には、駆動機構20aを外部から覆うための下部カバー28が装着され、便座ベース30には、リンク部材41、42の上部を外部から覆うための上部カバー38が装着されている。さらに、下部カバー28と上部カバー38とは、便座10を上昇した状態にしても互いに重なるように形成されている。
【0066】
次に作用を説明する。
図5および図8に示すように、便器1の両側に一対の駆動機構20aが配され、一対の駆動機構20aのベース部材20が開口の側縁部にそれぞれ装着されている。その駆動機構20aに便座ベース30を介して便座10が支持されている。すなわち、第1実施の形態に係る昇降便座は便器1に設置するものである。
【0067】
したがって、昇降便座を床3などに置く必要がなく、便器1の両側に、他の物を置くためのスペースを十分に確保することができる。また、リンク部材41、42の下方にスクリュー部材51を配するなどによって、昇降便座を薄型にして、幅方向で嵩張らないようにし、狭いトイレルームなどであっても、昇降便座を設置することができる。
【0068】
2つのリンク部材41、42がX字状リンクを構成しているので、2つのリンク部材41、42を共に起立した状態がX字状リンクの高さの最大値であり、また、2つのリンク部材41、42を共に倒伏した状態がX字状リンクの幅の最大値である。したがって、X字状リンクを取り付けるための取付スペースは、高さ方向および幅方向共に、リンク部材の長さと同じ長さを確保できれば十分である。それにより、昇降便座を高さ方向また、奥行き方向(前後方向、スクリュー軸方向)で嵩張らないようにし、昇降便座を小型にすることができる。
【0069】
連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合させているとき、2つのリンク部材41、42が連結軸45を中心に回動すると、便座10が駆動機構20aによって略水平な着座姿勢(図1、図12に示す姿勢)と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢(図10、図13に示す姿勢)とに昇降するようになっている。
【0070】
便座10を着座姿勢から水平待機姿勢にするには、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合させ、駆動モータMによってスクリュー部材51を正転させればよい。それにより、一対のナット部材52がスクリュー部材51のスクリュー軸の方向に螺進して、一対のナット部材52同士が近接する。一対のナット部材52が2つのリンク部材41、42の端部にそれぞれ連結されているから、一対のナット部材52同士が近接することで、2つのリンク部材41、42が連結軸45を中心に回動して、2つのリンク部材41、42が折畳状態から展開状態に変動する。それによって、2つのリンク部材41、42が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座10が着座姿勢とほぼ同じ姿勢を維持しながら水平待機姿勢に上昇するようになる。
【0071】
便座10を上昇させるとき、着座者の体重に抗して便座10を上昇させる必要がある。付勢手段55が便座10を上昇する方向に付勢しているので、付勢手段55は、駆動モータMの駆動力を補助する役割を果たすようになり、駆動モータMの負荷が軽減される。
【0072】
また、一対のナット部材52がスクリュー軸の方向に螺進するとき、ナット部材52に設けられた転動部材58が支持レール59上を転動する。着座者の体重は、便座10、2つのリンク部材41、42および、一対のナット部材52を介して支持レール9にかかるようになり、着座者の体重がスクリュー部材51にはかからないようになっている。それにより、一対のナット部材52が、スクリュー部材51の正逆回転によりスクリュー軸の方向に円滑に螺進して、便座10を支障なく昇降させることができる。
【0073】
便座10を水平待機姿勢から着座姿勢にするには、駆動モータMによってスクリュー部材51を逆転させればよい。それにより、一対のナット部材52がスクリュー部材51のスクリュー軸の方向に螺進して、一対のナット部材52同士が離間する。それによって、連結軸45を中心に2つのリンク部材41、42が回動して、2つのリンク部材41、42が展開状態から折畳状態に回動する。それによって、2つのリンク部材41、42が共に起立した状態から共に倒伏した状態になって、便座10が水平待機姿勢から略水平な姿勢を維持しながら着座姿勢に下降するようになる。
【0074】
図1および図12に示すように、便座10を下降して着座姿勢にしたとき、前傾待機姿勢用共孔41b、42bは同一位置にある。便座10の姿勢を変えながら便座10を昇降させるには、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aから外して、前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合させればよい。このように、連結軸45の嵌合する共孔を変え、2つのリンク部材41、42の回動中心を変更することによって、便座10が着座姿勢から上昇し、また、便座10が上昇したとき、前傾待機姿勢(図11、図14に示す姿勢)になる。
【0075】
便座10を着座姿勢から前傾待機姿勢にするには、水平待機姿勢用共孔41a、42aから外し、前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合させ、駆動モータMによってスクリュー部材51を正転させればよい。それにより、一対のナット部材52がスクリュー部材51のスクリュー軸の方向に螺進して、一対のナット部材52同士が近接する。それにより、2つのリンク部材41、42が連結軸45を中心に回動して、2つのリンク部材41、42が折畳状態から展開状態に変動する。それによって、2つのリンク部材41、42が共に倒伏した状態から共に起立した状態になって、便座10が着座姿勢から、その姿勢を徐々に前方に傾けながら上昇していき、前傾待機姿勢になる。
【0076】
便座10を前傾待機姿勢から着座姿勢にするには、駆動モータMによってスクリュー部材51を逆転させればよい。それにより、一対のナット部材52がスクリュー部材51のスクリュー軸の方向に螺進して、一対のナット部材52同士が離間する。それにより、前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合させた連結軸45を中心に2つのリンク部材41、42が回動して、2つのリンク部材41、42が展開状態から折畳状態に変動する。それによって、2つのリンク部材41、42が共に起立した状態から共に倒伏した状態になって、便座10が前傾待機姿勢から、その姿勢を徐々に後方へ傾けながら下降していき、略水平な着座姿勢になる。
【0077】
次に、図24〜図29に基づいて、本発明の第2実施の形態に係る昇降便座を説明する。図24および図25は昇降便座に肘掛け部材を設けたときの斜視図であって、便座が待機姿勢にあるときの図、図26は便座ベースに補強部材を設けたときの部分斜視図であって、上部カバーを外した状態を示す図、図27は同じく上部カバーを外した状態を示す図、図28は同じく上部カバーを取り付けた状態を示す図、図29は同じく補強部材に肘掛け部材を取り付けた状態を示す図である。
【0078】
図24〜図29に示すように、昇降便座は補強部材70と、肘掛け部材80とを備えている。補強部材70は、便座ベース30の開放口31の両端縁部35間に架設されている。補強部材70の両端部71には脚部材81が溶着され、脚部材81の上端部に肘掛け部材80が締結されている。また、脚部材81は、便座ベース30の側壁33にカラー82を介して締結されている。
【0079】
肘掛け部材80は、オプションで取り付けることができる。先ず、昇降便座から上部カバー38を外しておく。図26に示すように、補強部材70と脚部材81とが一体化したものを持ってきて、補強部材70の端部71を便座ベース30のベース側部32に締結するとともに、カラー82を介して脚部材81を便座ベース30の側壁33に締結する。次に、図28に示すように、便座ベース30に上部カバー38を取り付ける。このとき、上部カバー38の下孔39を脚部材81に通すようにする。次に、図29に示すように、脚部材81に肘掛け部材80を締結する。それによって、昇降便座の販売時また購入後に、肘掛け部材80を取り付けることができる。
【0080】
肘掛け部材80を設けた昇降便座においては、着座者が肘掛け部材80を使用することで、肘掛け部材80に荷重がかかると、その荷重を脚部材81を介して便座ベース30の開放口31の両端縁部35が受けるようになる。便座ベース30の開放口31の端縁部35は片持ちであるため、一般的には剛性が低いが、便座ベース30の開放口31の両端縁部35間に補強部材70が架設されているので、剛性が上がり、開放口31の両端縁部35の変形を抑えることができる。
【0081】
次に、図30〜図55に基づいて、本発明の第3実施の形態に係る昇降便座を説明する。本第3実施の形態では、前述した第1実施の形態あるいは第2実施の形態と同様な構成については、その説明を省略し、本第3実施の形態に特有の構成について説明する。その説明の際に、第1実施の形態あるいは第2実施の形態と同様な構成を用いる場合には、その同様な構成と同一の番号を付して説明する。
【0082】
図30〜図39に示すように、昇降便座は、少なくとも2つのリンク部材41、42を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータ90と、アクチュエータ90の動力をリンク機構に伝達するための伝達手段100とを備えている。リンク機構は、便器1の両側にそれぞれ配されている。
【0083】
アクチュエータ90は、便器1の両側の一方に配されている。伝達手段100は、アクチュエータ90から各リンク機構にそれぞれ延ばされている。それにより、アクチュエータ90を各リンク機構に対応して便器1の両側にそれぞれ設けないで済む。
【0084】
また、アクチュエータ90は、リンク機構の下方に配されている。アクチュエータ90をリンク機構の下方に配することで、アクチュエータ90とリンク機構とを水平に並べて配置しないで済み、リンク機構およびその周辺部材の厚みを減らして、リンク機構回りを薄型にすることができる。
【0085】
図30〜図37に示す昇降便座は、洗浄水を溜めるためのタンクが衛生洗浄装置5の本体内に内蔵されたタイプである。図38および図39に示す昇降便座は、温水タンク6が、衛生洗浄装置の本体内に内蔵されたものでなく、便座10の脇に配されているタイプである。このような図38および図39に示すタイプの昇降便座にも、リンク機構回りを薄型にすることで、温水タンク6まで張り出さないようにし、温水タンク6との干渉を回避することができる。
【0086】
図40〜図50および図53〜図55に示すように、アクチュエータ90は、本体ケース91と、動力源であるモータM1と、モータM1の回転を減速して伝達手段100へ出力するための減速機構92と、モータM1を制御するためのコントローラ98とを備えている。
【0087】
本体ケース91には、モータM1、減速機構92およびコントローラ98が収容され、本体ケース91の内部は、蓋体91aが閉じられることである程度の密閉性を有している。このように、本体ケース91にモータM1および、減速機構92を収容することで、モータM1や減速機構92が作動するときの音が、本体ケース91の外に出に難くなり、遮音性が増す。また、本体ケース91にコントローラ98を収容することで、利用者に用いられる洗浄水が、コントローラ等にかからないようになる。
【0088】
減速機構92は、ウォーム93を備えた歯車伝達機構である。減速機構91にウォーム93を用いることで大きな減速比が得られる。また、アクチュエータ90のモータM1が回転停止しているときに、便座10側からの力が伝達手段100を介して、巻取プーリ95、96にかかり、巻取プーリ95、96が回転しようとして、ウォーム93が噛合するギアであるウォームホイール94を回転しようとしても、ウォーム93が回転しないので、ウォームホイール94も回転せず、巻取プーリ95、96も回転しないようになり、巻取プーリ95、96を回転不能に拘束するための特別な拘束手段を設ける必要がない。
【0089】
図53に示すように、本体ケース91には、モータM1を載置するための座部91bおよび、減速機構92の各歯車を回転可能に支持するための枢軸部91cが一体的に形成されている。座部91bには、伝達手段100である2本のケーブル102の各インナーワイヤ104がそれぞれ通る挿通孔91dが開設されている。各インナーワイヤ104は、本体ケース91の一端側から本体ケース91内に入り、モータM1と本体ケース91の底部との間の隙間を通り、また、挿通孔91dを通り、各インナーワイヤ104の先端部が、本体ケース91の他端側にある巻取プーリ95、96にそれぞれ連結されている。すなわち、各インナーワイヤ104は、ある程度の長さ真っ直ぐに延ばされてから巻取プーリ95、96にそれぞれ連結されている。それにより、インナーワイヤ104を巻取プーリ95、96で巻き取り易くまた巻き戻し易くなっている。巻取プーリ95、96は、減速機構92の出力ギア92aに一体的に回転可能に締結されている。
【0090】
図47〜図52に示すように、伝達手段100は、2つのリンク部材41、42の少なくとも一方の端部に支持されたプーリ部材101と、プーリ部材101に巻き掛けられたケーブル102とを備えている。ケーブル102は、アクチュエータ90の動力によって巻き取られあるいは巻き戻されることで、2つのリンク部材41、42を回動するように配索されている。
【0091】
具体的には、2つのリンク部材42の一方の下端部にプーリ部材101が回転可能に支持されている。2つのリンク部材42の他方は、ベース壁部23に揺動可能に枢着されている。ベース壁部23にはガイド溝23aが形成されている。本実施の形態では、ガイド溝23aは、ベース壁部23に固設した溝部材23bに形成されているが、ベース壁部23に直接的に形成してもよい。ガイド溝23aには、プーリ部材101が移動可能に嵌合している。また、ベース壁部23には中継プーリ105が回転可能に支持されている。
【0092】
さらに、ケーブル102は、アクチュエータ90から便座10の両側の一方にあるリンク機構に延ばされるとともに、アクチュエータ90からベースプレート26に沿うように延ばされ、さらに、便座10の両側の他方にあるリンク機構に延ばされている。各ケーブル102の先端部は、両側のリンク機構にそれぞれ連結されている。すなわち、ケーブル102のアウターケーシング103の先端部はベース壁部23に連結されている。ケーブル102のインナーワイヤ104は、中継プーリ105を介してプーリ部材101に巻き掛けられ、その先端部がレバー部材110に連結されている。
【0093】
昇降便座は、ケーブル102の張力の大きさに基づいて、便座10の状態を検出するための検出機構110を備えている。本第3実施の形態では、ケーブルの先端部に検出機構110を配したが、ケーブルの先端部に限らず、ケーブルの沿線上の空いたスペースに検出機構110を配することができ、空いたスペースを有効利用することができる。
【0094】
検出機構110は、ケーブル102に連結されたレバー部材111と、レバー部材111の動きを検出するための検出スイッチ112とを備えている。レバー部材111は、ケーブル102の張力がレバー部材111を付勢する力より大きくなったときの高張力時位置(図51に示すように、溝部材23bの端部に当接した状態の位置)と、レバー部材111を付勢する力より小さくなったときの低張力時位置(図52に示すように、溝部材23bの端部から離間した状態の位置)とに揺動可能にベース壁部23に支持されている。また、レバー部材111は、引っ張りばね113によって、低張力時位置に揺動する方向へ付勢されている。
【0095】
検出スイッチ112はリミットスイッチであり、そのスイッチ片が高張力時位置に揺動したレバー部材111によって押し込まれることで、便座10が着座姿勢以外の姿勢にあって、ケーブル102が便座10側からの力を受けて引っ張られていた状態である駆動機構20aの正常状態を検出する一方で、そのスイッチ片が低張力時位置に揺動したレバー部材111によって押し込まれないことで、便座10が着座姿勢以外にあって、ケーブル102が便座10側からの力を受けない状態である駆動機構20aが異常状態を検出するように配されている。
【0096】
また、便座10の姿勢を検出するための姿勢検出スイッチ114を備えている。リンク部材42の端部には被検出突起42cが形成され、姿勢検出スイッチ114は、リミットスイッチであり、そのスイッチ片が被検出突起42cに押し込まれない状態で、便座10が着座姿勢にあること、またそのスイッチ片が押し込まれた状態で、便座10が水平待機姿勢あるいは前傾待機姿勢にあることを検出することができる。
【0097】
検出機構110の動作について主に説明する。便座10が図48に示す着座姿勢にあるとき、便座10側からの力を便器1が受けていて、ケーブル102が受けておらず、ケーブル102は例えば弛んで、レバー部材111は図52に示す低張力時位置にある。このとき、検出スイッチ112のスイッチ片はレバー部材111によって押し込まれない。また、姿勢検出スイッチ114が便座10が着座姿勢にあることを検知している。
【0098】
便座10を図49に示す水平待機姿勢あるいは図50に示す前傾待機姿勢にするとき、アクチュエータ90のモータM1が始動すると、巻取プーリ95、96が回転して、ケーブル102のインナーワイヤ104が巻き取られ、インナーワイヤ104が巻き掛けられたプーリ部材101がガイド溝23aに沿って移動し、それにより、2つのリンク部材41が起立し、便座10が水平待機姿勢あるいは前傾待機姿勢に上昇する。このとき、便座10側からの力をケーブル102が受けていて、ケーブル102は張られ、レバー部材111は図51に示す高張力時位置に揺動し、検出スイッチ112のスイッチ片はレバー部材111によって押し込まれる。また、姿勢検出スイッチ114は便座10が水平待機姿勢あるいは前傾待機姿勢にあることを検知している。
【0099】
便座10を水平待機姿勢あるいは前傾待機姿勢から着座姿勢に下降するとき、アクチュエータ90のモータM1が始動すると、巻取プーリ95、96が回転して、ケーブル102のインナーワイヤ104が巻き戻され、インナーワイヤ104が巻き掛けられたプーリ部材101がガイド溝23aに沿って移動し、それにより、2つのリンク部材41が倒伏し、便座10が水平待機姿勢あるいは前傾待機姿勢から着座姿勢に下降していく。このとき、便座10側からの力をケーブル102が受けていて、ケーブル102は張られ、レバー部材111は高張力時位置に揺動し、検出スイッチ112のスイッチ片はレバー部材111によって押し込まれる。
【0100】
保守点検などの作業中に、例えば、便座10が着座姿勢に下降していくとき、便器1と便座10との間の隙間や、2つのリンク部材41の間の隙間に異物が挟まることで、便座10側からの力をケーブル102が受けない状態になると、ケーブル102は弛んで、レバー部材111は低張力時位置に揺動し、検出スイッチ112のスイッチ片はレバー部材111によって押し込まれない。このとき、姿勢検出スイッチ114は便座10が着座姿勢にないことを検知している。便座10が着座姿勢以外にあって、レバー部材111が低張力時位置に揺動していることから、便座10や駆動機構20aが異常状態であることが判る。すなわち、レバー部材111と検出スイッチ112とから成る簡単な構成により、駆動機構20aが正常状態であるか、異常状態であるかを確実に検出することができる。
【0101】
以上説明した第1〜第3実施の形態では、駆動機構20aは、4つのリンク部材を備えた、平行四節リンクに類似したものであってもよく、5以上のリンク部材を備えたものであってもよい。4つのリンク部材で平行四節リンクに類似した駆動機構20aを構成し、連結軸45を水平待機姿勢用共孔41a、42aに嵌合すれば、便座10は略水平な姿勢を維持しながら昇降するようになる。一方、4つのリンク部材で平行四節リンクにならないように駆動機構20aを構成し、連結軸45を前傾待機姿勢用共孔41b、42bに嵌合すれば、便座10が着座姿勢からその姿勢を前方へ傾けながら上昇するようになる。
【0102】
また、第1、第2実施の形態では、スクリュー部材51のスクリュー軸を略前後方向に延ばしたものを示したが、略垂直方向に延ばすようにしてもよい。そのようなスクリュー部材51に一対のナット部材52を螺合し、各ナット部材52に、X字状リンクの2つのリンク部材41、42の各下端部を連結した場合には、一対のナット部材52を互いに近接させることで、2つのリンク部材41、42が折畳状態に変動し、一対のナット部材52を互いに離間させることで、2つのリンク部材41、42が展開状態に変動する。また、このとき、一対のナット部材52を互いに離間する方向に付勢すればよい。
【0103】
さらに、第1〜第3実施の形態においては、2つのリンク部材41、42の互いに重なる部分に共孔を穿設する場合に、少なくとも水平待機姿勢用共孔41a、42aと前傾待機姿勢用共孔41b、42bとを含むようにすればよく、水平待機姿勢用共孔41a、42aおよび前傾待機姿勢用共孔41b、42bを含め共孔を3以上設けるようにしてもよい。
【0104】
例えば、前傾待機姿勢用共孔41b、42bを複数設けると、連結軸45の嵌合する前傾待機姿勢用共孔41b、42bが異なれば、便座10を前方へ傾ける角度が異なるようになるので、便座10の前傾待機姿勢の態様を増やすことができる。共孔の数を増やすには、2つのリンク部材41、42の少なくとも一方の幅を広げて、2つのリンク部材41、42の互いに重なる部分の面積を広くすればよい。交差する部分が広くなった分だけ、多くの共孔を穿設することができる。それによって、多くの共孔の中から使用者が適好する前傾待機姿勢になるものを選択することができる。
【0105】
さらに、第1〜第3実施の形態において、X字状リンクにおいては、2つのリンク部材41、42の互いに重なる部分に水平待機姿勢用共孔41a、42aと前傾待機姿勢用共孔41b、42bとがそれぞれ穿設され、水平待機姿勢用共孔41a、42aと前傾待機姿勢用共孔41b、42bとの間の間隔を広くしていくと、2つのリンク部材41、42をそれぞれ起立させる角度の異なる度合いが大きくなっていき、前傾待機姿勢にある便座10の傾きを大きくすることができる。
【0106】
さらに、前記第3の実施の形態では、ケーブル102としてアウターケーシング103およびインナーワイヤ104から成るものを示したが、これに限らない。例えば、ケーブル102としては、ギアードケーブルであってもよい。アクチュエータ90でギアードケーブルを繰り込み繰り出すことで、リンク機構を駆動するようにしてもよい。
【0107】
【発明の効果】
本発明にかかる昇降便座によれば、連結軸の嵌合する共孔を水平待機姿勢用共孔と前傾待機姿勢用共孔との一方から水平待機姿勢用共孔と前傾待機姿勢用共孔との他方に変更することで、便座を上昇させたときの待機姿勢を略水平な着座姿勢とほぼ同じ水平待機姿勢と、着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢とに切り換えるようにしたので、連結軸を共孔に抜き差しする簡単な操作で、便座の待機姿勢を変えることができ、便座の待機姿勢の異なる装置を同一の機種として、製造、販売することができ、コストを低減することができ、また、便座の待機姿勢が異なる装置を新たに購入する必要がなく、購入者に割安感を与えることができる。
【0108】
また、2つのリンク部材がX字状リンクを構成しているので、X字状リンクを取り付けるための取付スペースは、高さ方向および幅方向共に、リンク部材の長さと同じ長さを確保できれば十分であり、X字状リンクの取付スペースが広くならないで済み、装置全体を小型にすることができる。さらに、駆動機構を便器の両側に一対配し、一対の駆動機構を便器に装着したので、駆動機構をトイレルームの床などに置く必要がなく、便器の両側に他の物を置くスペースを十分に確保することができる。
【0109】
さらに、付勢手段が一対のナット部材を介して、便座を上昇する方向に付勢しているので、着座者の体重に抗して便座を上昇させるとき、付勢手段が駆動機構を補助する役割を果たし、駆動機構にかかる負荷を軽減することができる。さらに、駆動機構が一対のナット部材と、スクリュー部材と、転動部材と、支持レールとを備え、一対のナット部材が螺進するにともなって、転動部材が支持レール上を転動するようにしたので、着座者の体重が支持レールにかかって、スクリュー部材にかからないようになり、一対のナット部材が、スクリュー部材の正逆回転により円滑に螺進して、便座を支障なく昇降させることができる。
【0110】
補強部材を便座ベースの開放口の両端縁部間に架設し、肘掛け部材を補強部材の両端部にそれぞれ固設したので、変形し易い便座ベースの開放口の両端縁部を補強部材によって補強することができ、また、掛け部材の使用時に肘掛け部材に荷重がかかっても、補強部材によって、便座ベースの開放口の両端縁部の変形を抑えることができる。
【0111】
さらに、リンク機構が便器の両側にそれぞれ配され、アクチュエータが便器の両側の一方に配され、伝達手段がアクチュエータから各リンク機構にそれぞれ延ばされているので、各リンク機構に対応してアクチュエータをそれぞれ設けないで済み、部品点数が減って、コストを削減することができるとともに、装置全体を小型にすることができる。さらに、アクチュエータがリンク機構の下方に配されているので、アクチュエータとリンク機構とを水平に並べて配置しないで済み、リンク機構回りを薄型にすることができ、便座の脇に例えば洗浄用のタンクが配されるようなタイプの昇降便座においても、タンクをリンク機構回りに干渉することなく配することができる。
【0112】
さらに、本体ケースにモータ、減速機構およびコントローラが収容されているものでは、モータや減速機構が作動するときの音が、本体ケースの外に出に難くなり、遮音性が増して、高級感が向上する。また、本体ケースにモータ、減速機構ばかりでなくコントローラも収容されているので、利用者に用いられる洗浄水が、コントローラ等にかからないようになり、耐環境性が向上する。さらに、伝達手段が2つのリンク部材の少なくとも一方の端部に支持されたプーリ部材と、プーリ部材に巻き掛けられたケーブルとを備え、ケーブルがアクチュエータの動力によって巻き取られあるいは巻き戻されることで、2つのリンク部材を回動するように配索されているので、プーリ部材とケーブルとによる簡単な構成で、2つのリンク部材を回動させることができ、部品点数を少なくして、コストを低減することができるとともに、装置を小型にすることができる。
【0113】
さらに、減速機構にウォームを用いることで大きな減速比が得られるとともに、アクチュエータが停止しているときに、便座側からの力が伝達手段を介して、ウォームが噛合するギアである、例えばウォームホイールにかかって回転しようとしても、ウォームが回転しないので、特別な拘束手段を設けることなく、便座を所定位置に拘束することができ、この点からもコストを低減することができる。さらに、ケーブルの張力の大きさに基づいて、便座の異常状態を検出するための検出機構を備えたので、ケーブルの沿線上の空いたスペースに、検出機構を配することができ、空いたスペースを有効に利用することができ、この点からも装置を小型にすることができる。
【0114】
さらに、検出機構がケーブルに連結されたレバー部材と、レバー部材の動きを検出するための検出スイッチとを備え、ケーブルの張力がレバー部材を付勢する力より小さくなると、レバー部材が高張力位置から低張力位置に揺動し、レバー部材が低張力位置に揺動するのを検出することで、駆動機構が異常状態にあることが簡単な構成で確実に判るようになり、この点からもコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る昇降便座の駆動機構を示す側面図である。
【図2】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が下降している状態を示す図である。
【図3】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が上昇して着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢になっている状態を示す図である。
【図4】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が上昇して着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になっている状態を示す図である。
【図5】同じく昇降便座の斜視図であって、便器から便座および衛生洗浄装置を外した状態を示す図である。
【図6】同じく昇降便座の分解斜視図である。
【図7】同じく昇降便座の駆動機構を示す平面図である。
【図8】同じく昇降便座の駆動機構を示す正面図である。
【図9】同じく昇降便座の便座ベースおよびベース部材を示す平面図である。
【図10】同じく昇降便座において、便座を上昇して、着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢になったときの駆動機構を示す側面図である。
【図11】同じく昇降便座において、便座を上昇して、着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になったときの駆動機構を示す側面図である。
【図12】同じく昇降便座において、便座を下降させたときの駆動機構を示す側面図である。
【図13】同じく昇降便座において、便座を上昇して、着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢になったときの駆動機構を示す側面図である。
【図14】同じく昇降便座において、便座を上昇して、着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になったときの駆動機構を示す側面図である。
【図15】同じく昇降便座の駆動機構の部分斜視図である。
【図16】同じく昇降便座の駆動機構のスクリュー部材およびナット部材を主に示す斜視図である。
【図17】同じく昇降便座の駆動機構の部分斜視図である。
【図18】同じく昇降便座において、便座が下降したときの駆動機構の側面図である。
【図19】同じく昇降便座の駆動機構の斜視図であって、便座が上昇して、水平待機姿勢になったときの駆動機構の状態を示す図である。
【図20】同じく昇降便座の駆動機構の部分斜視図であって、便座が上昇して、水平待機姿勢になったときの駆動機構の状態を示す図である。
【図21】同じく昇降便座の駆動機構の斜視図であって、便座が上昇して、前傾待機姿勢になったときの駆動機構の状態を示す図である。
【図22】同じく昇降便座の駆動機構の部分斜視図であって、便座が上昇して、前傾待機姿勢になったときの駆動機構の状態を示す図である。
【図23】図12のXXIII−XXIII断面図である。
【図24】本発明の第2実施の形態に係る昇降便座において、肘掛け部材を設けたときの斜視図であって、便座が水平待機姿勢にあるときの図である。
【図25】同じく昇降便座において、肘掛け部材を設けたときの斜視図であって、便座が前傾待機姿勢にあるときの図である。
【図26】同じく昇降便座において、便座ベースに補強部材を設けたときの部分斜視図であって、上部カバーを外した状態を示す図である。
【図27】同じく昇降便座において、便座ベースに補強部材を設けたときの部分斜視図であって、上部カバーを外した状態を示す図である。
【図28】同じく昇降便座において、便座ベースに補強部材を設けたときの斜視図であって、上部カバーを取り付けた状態を示す図である。
【図29】同じく昇降便座において、便座ベースに補強部材を設けたときの斜視図であって、補強部材に肘掛け部材を取り付けた状態を示す図である。
【図30】本発明の第3実施の形態に係る昇降便座の分解斜視図である。
【図31】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が下降している状態を示す図である。
【図32】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が上昇して着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢になっている状態を示す図である。
【図33】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が上昇して着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢になっている状態を示す図である。
【図34】同じく昇降便座の斜視図であって、便器から便座および衛生洗浄装置を外した状態を示す図である。
【図35】同じく昇降便座を示す正面図である。
【図36】同じく昇降便座を示す平面図である。
【図37】同じく昇降便座を示す側面図である。
【図38】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が下降している状態を示し、昇降便座の側部にタンクおよび温風機構を備えたものの図である。
【図39】同じく昇降便座を示す正面図であって、昇降便座の側部にタンクおよび温風機構を備えたものの図である。
【図40】同じく昇降便座の斜視図であって、便座が下降している状態を示し、昇降便座の側部に異形のタンクおよび温風機構を備えたものの図である。
【図41】同じく昇降便座の下部カバーを外して、リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す側面図である。
【図42】同じく昇降便座が水平待機姿勢になったときの側面図であって、リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す図である。
【図43】同じく昇降便座が水平待機姿勢になったときの側面図であって、下部カバーを外して、リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す図である。
【図44】同じく昇降便座が前傾待機姿勢になったときの側面図であって、リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す図である。
【図45】同じく昇降便座が前傾待機姿勢になったときの側面図であって、下部カバーを外して、リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す図である。
【図46】同じく昇降便座の各リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す斜視図である。
【図47】同じく昇降便座の下部カバーを外して、各リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す斜視図である。
【図48】同じく昇降便座の下部カバーを外して、各リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す斜視図である。
【図49】同じく昇降便座が水平待機姿勢になったときの斜視図であって、下部カバーを外して、各リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す図である。
【図50】同じく昇降便座が前傾待機姿勢になったときの斜視図であって、下部カバーを外して、各リンク機構、アクチュエータおよび伝達手段を示す図である。
【図51】同じく昇降便座のリンク機構および伝達手段の各部分を拡大して示した部分拡大側面図であって、レバー部材が高張力位置に揺動しているときを示す図である。
【図52】同じく昇降便座のリンク機構および伝達手段の各部分を拡大して示した部分拡大側面図であって、レバー部材が低張力位置に揺動しているときを示す図である。
【図53】同じく昇降便座のアクチュエータの分解斜視図である。
【図54】同じく昇降便座のアクチュエータの上蓋を外して、そのモータ、減速機構およびコントローラを示した分解斜視図である。
【図55】同じく昇降便座のアクチュエータの減速機構を示した斜視図である。
【符号の説明】
M…駆動モータ
M1…モータ
1…便器
2…タンク
5…衛生洗浄装置
6…温水タンク
7…温風暖房機構
10…便座
20a…駆動機構
20…ベース部材
21…ベース上部
22…ベース下部
23…ベース壁部
23a…ガイド溝
23b…溝部材
24…前壁
24a、25a…嵌合溝
25…後壁
26…ベースプレート
28…下部カバー
30…便座ベース
31…開放口
32…ベース側部
33…側壁
34…長孔
35…端縁部
38…上部カバー
39…下孔
41…リンク部材
41a、42a…水平待機姿勢用共孔
41b、42b…前傾待機姿勢用共孔
42…リンク部材
42c…被検出突起
43…ローラ部材
45…連結軸
46…ねじ孔
47…スペーサ
51…スクリュー部材
51a、51b…軸受部材
52…ナット部材
53…ナットホルダ
54…ギアボックス
55…付勢手段
57…軸部材
58…転動部材
59…支持レール
70…補強部材
71…端部
80…肘掛け部材
81…脚部材
82…カラー
90…アクチュエータ
91…本体ケース
91a…蓋体
91b…座部
91c…枢軸部
91d…挿通孔
92…減速機構
92a…出力ギア
93…ウォーム
94…ウォームホイール
95、96…巻取プーリ
98…コントローラ
100…伝達手段
101…プーリ部材
102…ケーブル
103…アウターケーシング
104…インナーワイヤ
105…中継プーリ
110…検出機構
111…レバー部材
112…検出スイッチ
113…引っ張りばね
114…姿勢検出スイッチ
Claims (14)
- 便座を駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記2つのリンク部材は、該2つのリンク部材の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との他方に嵌合するものであることを特徴とする昇降便座。 - 便座を駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記2つのリンク部材は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との他方に嵌合するものであることを特徴とする昇降便座。 - 前記駆動機構は、便器の両側に一対配され、
前記一対の駆動機構は、前記便器にそれぞれ装着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の昇降便座。 - 前記駆動機構は、一対のナット部材と、スクリュー部材と、付勢手段とを備え、
前記一対のナット部材は、前記スクリュー部材の正逆回転により螺進して、前記一対のナット部材同士が近接あるいは離間するように配され、
さらに、前記一対のナット部材は、前記2つのリンク部材の端部にそれぞれ連結され、前記一対のナット部材同士が近接した状態と離間した状態との一方から前記近接した状態と前記離間した状態との他方に螺進することで、前記2つのリンク部材を前記折畳状態と前記展開状態とに変動させて、便座を昇降させるようにし、
前記付勢手段は、前記一対のナット部材を介して、前記便座を上昇する方向に付勢していることを特徴とする請求項1、2または3に記載の昇降便座。 - 前記駆動機構は、一対のナット部材と、スクリュー部材と、転動部材と、支持レールとを備え、
前記一対のナット部材は、前記スクリュー部材の正逆回転により螺進して、前記一対のナット部材同士が近接あるいは離間するように配され、
さらに、前記一対のナット部材は、前記2つのリンク部材の端部にそれぞれ連結され、前記一対のナット部材同士が近接した状態と離間した状態との一方から前記近接した状態と前記離間した状態との他方に螺進することで、前記2つのリンク部材を前記折畳状態と前記展開状態とに変動させて、便座を昇降させるようにし、
前記転動部材は、前記一対のナット部材にそれぞれ設けられ、該一対のナット部材が螺進するにともなって、前記支持レール上を転動するものであることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の昇降便座。 - 便座ベースと、補強部材と、肘掛け部材とを備え、
前記便座ベースは、前記便座と便器との間に介在して、前記便座を支持し、前記便器に沿って略U字形状に形成されていて、前方に開いた開放口を有し、
前記補強部材は、前記便座ベースの開放口の両端縁部間に架設され、
前記肘掛け部材は、前記補強部材の両端部にそれぞれ固設されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の昇降便座。 - 便座を駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記2つのリンク部材は、該2つのリンク部材の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材が回動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との他方に嵌合するものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータと、該アクチュエータの動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段とを備え、
前記リンク機構は、便器の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータは、前記便器の両側の一方に配され、
前記伝達手段は、前記アクチュエータから各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。 - 便座を駆動機構によって昇降させるようにした昇降便座において、
前記駆動機構は、少なくとも2つのリンク部材と、連結軸とを備え、
前記2つのリンク部材は、X字状リンクを構成し、前記2つのリンク部材の互いに重なる部分に共孔をそれぞれ備え、
前記共孔は水平待機姿勢用共孔と、前傾待機姿勢用共孔とを含み、
前記水平待機姿勢用共孔は、該水平待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢にするためのものであり、
前記前傾待機姿勢用共孔は、該前傾待機姿勢用共孔に嵌合した前記連結軸を中心にして、前記2つのリンク部材を回動したとき、該2つのリンク部材が共に倒伏した折畳状態と、共に起立した展開状態とに変動することで、便座を下降させたとき便座を略水平な着座姿勢にする一方、便座を上昇させたとき便座を前記着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢にするためのものであり、
前記連結軸は、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との一方から外され、前記水平待機姿勢用共孔と前記前傾待機姿勢用共孔との他方に嵌合するものであり、
前記少なくとも2つのリンク部材を有するリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータと、該アクチュエータの動力を前記リンク機構に伝達するための伝達手段とを備え、
前記リンク機構は、便器の両側にそれぞれ配され、
前記アクチュエータは、前記便器の両側の一方に配され、
前記伝達手段は、前記アクチュエータから各リンク機構にそれぞれ延ばされていることを特徴とする昇降便座。 - 前記アクチュエータは、前記リンク機構の下方に配されていることを特徴とする請求項7または8に記載の昇降便座。
- 前記アクチュエータは、本体ケースと、動力源であるモータと、該モータの回転を減速して前記伝達手段へ出力するための減速機構と、前記モータを制御するためのコントローラとを備え、
前記本体ケースには、前記モータ、前記減速機構およびコントローラが収容されていることを特徴とする請求項7、8または9に記載の昇降便座。 - 前記減速機構は、ウォームを備えた歯車伝達機構であることを特徴とする請求項10に記載の昇降便座。
- 前記伝達手段は、前記2つのリンク部材の少なくとも一方の端部に支持されたプーリ部材と、該プーリ部材に巻き掛けられたケーブルとを備え、
前記ケーブルは、前記アクチュエータの動力によって巻き取られあるいは巻き戻されることで、前記2つのリンク部材を回動するように配索されていることを特徴とする請求項7または8に記載の昇降便座。 - 前記ケーブルの張力の大きさに基づいて、前記便座が異常状態にあることを検出するための検出機構を備えたことを特徴とする請求項12に記載の昇降便座。
- 前記検出機構は、前記ケーブルに連結されたレバー部材と、該レバー部材の動きを検出するための検出スイッチとを備え、
前記レバー部材は、前記ケーブルの張力が前記レバー部材を付勢する力より大きくなったときの高張力時位置と、前記レバー部材を付勢する力より小さくなったときの低張力時位置とに揺動可能に配され、前記低張力時位置に揺動する方向へ付勢され、
前記検出スイッチは、前記レバー部材が前記低張力時位置に揺動したことを検出することで、前記便座が異常状態にあることを判断できるように配されていることを特徴とする請求項13に記載の昇降便座。
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