JP4318374B2 - 金属ベース回路基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高発熱性電子部品或いは高発熱性電子部品と制御回路電子部品とを実装することができ、電源用途等の大電力用の混成集積回路に好適な、高い放熱性が実現される混成集積回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
高発熱性電子部品を実装する回路基板として、アルミニウム等の金属板を基材に用い、該金属板上に数十μm程度の厚さの無機フィラー含有樹脂からなる絶縁層を設け、更に前記絶縁層上に回路形成されてなる構造を有する金属ベース回路基板が、熱伝導性の良好なことから、特に発熱量が大きい電子部品が搭載されて利用される大電力用途を初めとして、広く用いられている。
【0003】
近年、大電力用途における大電力化、基板密度の増大化、或いは更に適用分野の拡大を目的に、より一層熱放散性の高い金属ベース回路基板が要望され、例えば、300μmと厚い銅箔を回路導体として用いた金属ベース回路基板が開発されている。
【0004】
しかし、金属ベース回路基板は、一般に、金属板と金属箔が異なる金属により形成されているため、製造時等に受ける熱により応力が絶縁層近傍に発生し易い。そのため、熱衝撃を繰り返すような使用条件においては、絶縁層にクラックが入り、最悪の場合には絶縁破壊を起こすことがあった。
【0005】
上記問題解決を目的として、金属板を回路と同じ銅板にするという試みも行われたが、重量が重くなる、コストが高くなる等の問題点があり、現在、ほとんど用いられていない。
【0006】
また、回路導体としてアルミニウムを用いるという試みも行われたが、この場合、導体と絶縁接着層との密着力が低く表面処理を行わなければ使用できないという問題点がある。
【0007】
前記表面処理方法としては、機械的に粗化する方法や化学的に表面をアルマイト処理をする方法等が公知であるが、しかし、機械的に表面を粗化する方法ではピール強度は向上するものの、得られる金属ベース回路基板の耐電圧特性が低下するし、化学的に表面をアルマイト処理する方法では熱衝撃試験を行うとアルミニウム層とアルマイト層との界面で熱膨張率の差より剥離すると言う問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱衝撃を繰り返すような或いは強い熱衝撃を受ける使用条件においても、絶縁層にクラックが発生せず、回路や絶縁層の剥離が無く、信頼性の高い、大電流用途向けに好適な金属ベース回路基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属板上に絶縁層を介して回路を設けてなる金属ベース回路基板であって、特定純度のアルミニウムを回路とすることにより、導体と絶縁層との密着力が高く、熱衝撃信頼性を高めたことを特徴としている。
【0010】
即ち、本発明は、厚さ0.5〜3mmのアルミニウム板上の少なくとも一主面に、無機充填材を含むビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる絶縁層を介してアルミニウムからなる回路を設けた金属ベース回路基板であって、アルミニウム回路が99質量%以上のアルミニウムからなり、アルミニウム回路の厚みが300μm以上1000μm以下であり、アルミニウム回路のピール強度が42〜103N/cmであり、230℃60秒加熱後室温まで空冷し3KV×3秒の耐電圧試験を繰り返えすとき、絶縁破壊に至るまでの回数が100回以上であることを特徴とする金属ベース回路基板である
【0011】
また、本発明は、前記アルミニウム回路上にニッケル、銅、金からなる群から選ばれる1種以上のめっきが施されていることを特徴とする前記の金属ベース回路基板である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図に基づいて、本発明を説明する。
図1は、本発明の金属ベース回路基板の一例について、その断面を示す模式図である。本発明の金属ベース回路基板は、アルミニウム板1上に絶縁層2を介してアルミニウムからなる回路3が設けられ、前記回路3上の一部には、銅、ニッケル、金、金−ニッケル、銅−ニッケル等からなる金属層4と、更に必要に応じて金属層5とが積層してなる多層構造部分が設けられている。また、回路3上には、半導体素子、抵抗チップ等の電子部品6が、一般にハンダ7を介して設けられ、前記電子部品6は、必要に応じて、金、アルミニウム等のボンディング用のワイヤー8を経由して、回路3上に設けられた金属層4、5を介して電気的に接続されている。また、図示していないが、金属ベース回路基板の全面若しくは一部に他の回路基板が設けられていても何ら差し支えない。
【0013】
本発明において、アルミニウムからなる回路3は、99質量%以上の純度のアルミニウム、好ましくは99.5質量%以上の純度のアルミニウムからなることが本質的である。然るに、本発明者の実験的検討結果に拠れば、アルミニウムの純度が99質量%未満では、絶縁層との密着力が低下し、部品を実装するだけの強度を得ることが出来ない。一方、理由は明確でないが、アルミニウムの純度が99質量%以上あれば、Cu、Mn、Si、Mgなどを含有するアルミニウム合金であっても前記不都合は見いだせず、例えば、JIS番号の1000番台の呼称を有するもの、即ち、1N99、1N90、1085、1080、1070、1060、1050、1230、1N30、1100、1200、1N00などを本発明において用いることができる。
【0014】
本発明の金属ベース回路基板は、前述の通りに、回路が特定組成のアルミニウムからなり、その結果として、回路と絶縁層とが30N/cm以上の接着力を有しているという特徴がある。本発明の金属ベース回路基板は、従来から行われていた回路表面の処理等の面倒な処理を行うことなく、30N/cm以上の高い接着力を有しており、実使用条件下において回路の剥離等の異常を発生しがたく、信頼性の高い、しかも安価であるという特徴を有している。
【0015】
本発明において、アルミニウム回路の厚みは、300〜1000μmである。即ち、300μm以上のときに実用条件下で蒙る加熱冷却の繰り返しを受けても十分に耐え得る金属ベース回路基板が得られるが、1000μmを越える場合には、パターン形成に困難が伴ってきて実用的でなくなる。前記範囲のうち、応力緩和を確実に達成し、しかも生産上の困難さがないことから300〜500μmがより好ましい範囲として選択される。
【0016】
アルミニウム回路上に設けられる金属層としては、銅が一般的であるが、ニッケル、金、銅−ニッケル、ニッケル−金の他、アルミニウム等の金やアルミニウムからなるボンディングワイヤー(以下、単にワイヤーという)との接合性に富む材質のものであればよい。また、必要に応じて、前記金属層の上に他の金属層を設けても良い。
【0017】
前記の金属層を設けたアルミニウム回路の多層構造部分は、アルミニウムと金属層の2種以上の複合箔を用いても良いが、アルミニウム箔を絶縁層上に設けた後、金属層を順次メッキ等の方法で設けたものが、特に最外表面にめっきの金属層を設けたものが、表面性状がワイヤー接合性に優れることから、好ましい。
【0018】
本発明に用いるアルミニウム板は、アルミニウム或いはその合金であれば良く、その厚さは0.5〜3mmが用いられる。また、絶縁層としては、絶縁性を有する材質で有ればいずれも採用でき、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂等やそれらをガラス布等に含浸させたものや無機フィラーを充填したもの、あるいは前記樹脂を塗布した樹脂層のみで形成したもの、さらに前記樹脂をフィルム状にして接着したもの等が用いられる。また、前記絶縁層には、熱伝導性を向上する目的で、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、ガラスファイバー等の無機充填材を含むことが一般的である。
【0019】
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0020】
【実施例】
〔実施例1〕
厚さ3.0mmのアルミニウム板上に、酸化アルミニウムを50体積%含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化エポキシ社製エピコート828)を絶縁層の厚さが80μmになるように塗布し、アルミニウム(厚さ400μm)/銅(厚さ20μm)の複合箔をアルミニウム層側が絶縁層に接するように配置し、加熱下で加圧することにより金属ベース基板を作製した。この金属ベース基板についてアルミニウム箔と絶縁層との密着力を測定し、この結果を表1に示した。
【0021】
次ぎに、スクリーン印刷法を用いて所望の位置をマスクした後、まず銅箔をエッチングした後、再度所望の位置をマスクしてアルミニウムをエッチングすることで、一部に多層構造部分を有するアルミニウム回路を形成し、更に所定の部分をマスクした後、アルミニウム回路の一部、また前記銅層を設けた部分の上にニッケル層めっきして、金属ベース回路基板を作製した。
【0022】
前記金属ベース回路基板を用いて、230℃のホットプレート上で60秒加熱した後、室温まで空冷し、3KV×3秒の耐電圧試験を実施した。これを絶縁破壊が発生するまで繰り返し、破壊回数を調べた。結果を表1に示した。
【0023】
また、金属ベース回路基板の回路パターン上に、半導体素子、セラミックスチップ抵抗等をハンダ付けして実装し、混成集積回路を形成した。このとき、半導体素子と回路との電気的接続には、φ300μmのアルミ線を用いたワイヤーボンディングを行いモジュールを形成し、前記半導体に負荷を与えるとともに、半導体下面とそれに対応する金属板裏面との温度差から、金属ベース回路基板の熱抵抗を測定した。この結果を表1に示した。
【0024】
【表1】
Figure 0004318374
【0025】
〔実施例2〜4〕
表1に示したとおりに、アルミニウム材質、アルミニウム層の厚さが異なるいろいろな金属ベース回路基板を実施例1と同じ操作で作製し、実施例1と同じ試験を行った。これらの結果を表1に示した。
【0026】
〔比較例〕
実施例1において、アルミニウム回路と同じ厚みを有し、回路が銅からなる金属ベース基板とそれを用いた金属ベース回路基板とモジュールを作成し、評価を行い比較例とした。その結果を表1に示した。
【0027】
【発明の効果】
本発明の金属ベース回路基板は、アルミニウム回路が99.0質量%以上のアルミニウムからなり、絶縁層との密着力が30N/cm以上と高いので、実使用条件下においても回路の剥離等の異常を発生しがたく、高信頼性であるという特徴を有しており、産業上非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属ベース回路基板の一例を示す模式図(断面図)。
【符号の説明】
1 金属板
2 絶縁層
3 アルミニウム回路
4 金属層
5 金属層
6 電子部品
7 ハンダ
8 ワイヤー

Claims (2)

  1. 厚さ0.5〜3mmのアルミニウム板上の少なくとも一主面に、無機充填材を含むビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる絶縁層を介してアルミニウムからなる回路を設けた金属ベース回路基板であって、アルミニウム回路が99質量%以上のアルミニウムからなり、アルミニウム回路の厚みが300μm以上1000μm以下であり、アルミニウム回路のピール強度が42〜103N/cmであり、230℃60秒加熱後室温まで空冷し3KV×3秒の耐電圧試験を繰り返えすとき、絶縁破壊に至るまでの回数が100回以上であることを特徴とする金属ベース回路基板。
  2. アルミニウム回路上にニッケル、銅、金からなる群から選ばれる1種以上のめっきが施されていることを特徴とする請求項1記載の金属ベース回路基板
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