JP4317350B2 - 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子分泌促進剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はグリコサミノグリカンを含む成長因子分泌促進剤に関する。より詳細にはコンドロイチン骨格を有すると共に硫酸基を有するグリコサミノグリカンを含む顆粒球マクロファージコロニー刺激因子分泌促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
グリコサミノグリカンは成長因子と相互作用をすることが従来から知られている。例えばグリコサミノグリカンの成長因子誘導剤としての利用が特開2002-3384に開示されている。上記文献には、線維芽細胞の培養時にヘパラン硫酸やガラクトサミノグリカン(デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸)を添加すると塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及び肝細胞成長因子(HGF)の分泌が促進されることが記載されている。しかし、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(以下「GM-CSF」とも略記する)の分泌を促進することができるグリコサミノグリカンについての言及はなく、又は特定のグリコサミノグリカンがGM-CSF分泌の促進活性を有することを示唆する記載も存在しない。
【0003】
GM-CSFはT細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞等の細胞が分泌する分化誘導因子である。GM-CSFは、顆粒状細胞やマクロファージ前駆細胞に作用してそれらの増殖を促進し、これらの細胞の好中球や単核球への分化を誘導する。従って遺伝子組換で調製したGM-CSFを造血幹細胞の培養時に添加することにより造血幹細胞の組織や細胞への分化を促す再生医療も考え得る。しかし、この方法によるとコストがかかりすぎるという問題点が存在する。この問題点を解決する試みとして、ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(以下「HUVEC」とも記載する)と造血幹細胞を共培養し、HUVECにGM-CSFを分泌させるという手法が検討されている(Leuk Lymphoma 1998, 31, 61-69、Cytokine 1996, 8, 702-709)。この試みは、IL-1、TNFα、LPS、IL-3等の物質を培地に添加して培養細胞にGM-CSFを分泌させるというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
IL-1、TNFα、LPS、IL-3等の物質はそれ自体が生体に対して強い生理活性を有している。従って再生組織の内部にこれらの物質が残留した場合に、再生組織を移植された宿主の免疫・恒常性に上記の残留物質が影響を与える可能性あった。一方、再生された組織の内部に残留した上記の物質を完全に除去することは極めて困難である。従って、仮に再生組織内部に残留して生体に混入した場合であっても、生体に対し悪影響を与えない程度の安全性を有するGM-CSF分泌促進剤が強く望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題に鑑み鋭意検討した結果、驚くべきことに一般にコンドロイチン硫酸Eと呼ばれるコンドロイチン硫酸が極めて強いGM-CSF分泌促進活性を示すことを見い出した。そしてこの知見に基づき上記コンドロイチン硫酸をGM-CSF分泌促進剤(以下「本発明促進剤」とも記載する)として用いて本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0006】
(1) 二糖単位の全数Nと下記式1に示す二糖単位の数nとの関係がn/N≧0.3を充たすコンドロイチン硫酸又はその薬理学的に許容される塩を含むことを特徴とする顆粒球マクロファージコロニー刺激因子分泌促進剤。
【化2】
(2) コンドロイチン硫酸の重量平均分子量が20000以上であることを特徴とする(1)記載の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子分泌促進剤。
(3) n/Nが0.5以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子分泌促進剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
1.本発明促進剤は、二糖単位の全数Nと下記式(1)に示す二糖単位の数nとの関係がn/N≧0.3を充たすコンドロイチン硫酸又はその薬理学的に許容される塩を含むことを特徴とするGM-CSF分泌促進剤である。
【0008】
【化3】
【0009】
コンドロイチン及びコンドロイチン硫酸の基本骨格は、下記式(2)で示される二糖単位が繰り返して結合してなる構造である。
【0010】
【化4】
【0011】
式(2)中、R1、R2、及びR3は各々独立して水素原子又は硫酸基を示す。
【0012】
本発明促進剤の有効成分であるコンドロイチン硫酸は、その基本骨格を構成する上記式(2)で表される二糖単位の数Nと上記式(1)に示す二糖単位の数nとの関係がn/N≧0.3を充たす。また、好ましい該コンドロイチン硫酸としては前記n/Nの値が0.5以上であるものが挙げられ、0.6以上である該コンドロイチン硫酸が最も好ましい。このようなコンドロイチン硫酸はGM-CSFの分泌を効率よく促進することができるからである。
【0013】
上記n/Nの値は、例えばコンドロイチン硫酸分解酵素(例えばコンドロイチナーゼABC)でコンドロイチン硫酸を消化し、消化されて新たに生じた不飽和二糖を、分子量の相違によって物質を分離する手段(例えばゲル濾過など)によって分析して、得られたピークの面積などから容易に算出することが可能である。この方法はグリコサミノグリカンの構造分析に広く一般に用いられている酵素的二糖分析法であり、具体的には後述の実施例に記載された方法によって測定することが可能である。
上記酵素的二糖分析法によりコンドロイチン硫酸を分析する際に酵素消化することにより下記式(3)の不飽和二糖が生ずる。
【0014】
【化5】
【0015】
【表1】
【0016】
これらの不飽和二糖に相当するピーク面積の合計に対する、ΔDi-SEに相当するピーク面積の割合が、上記のn/Nの値と同じ値を示す。
【0017】
本発明促進剤におけるコンドロイチン硫酸の分子量が低すぎると本発明促進剤の所望の効果を十分に奏することが困難となる。従って特定以上の分子量を有することが好ましい。すなわち、その重量平均分子量は20,000以上であることが好ましく、40,000以上であることが更に好ましい。更に50,000以上の重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸が最も好ましいコンドロイチン硫酸として挙げられる。このようなコンドロイチン硫酸を含む本発明促進剤は、後述の実施例に記載された方法に従って測定される培地中におけるGM-CSFの濃度を15pg/ml以上に増加させる程度のGM-CSF分泌促進活性を有する。
【0018】
本発明促進剤におけるコンドロイチン硫酸の由来及び調製法は上記構造を有する限り、特に限定はされず、何れであっても使用することが可能であり、生体組織から抽出したコンドロイチン硫酸であっても或いは化学的に合成したコンドロイチン硫酸であっても構わない。しかし、その中でも特に生体組織から抽出して調製したコンドロイチン硫酸が好ましく、特にイカ軟骨由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチン硫酸Eとも指称されるコンドロイチン硫酸)が好ましい。このようなコンドロイチン硫酸は上記式(1)に示す二糖単位の含有量が極めて高く、本発明促進剤の所望の効果を奏することが極めて容易となるからである。
【0019】
本発明促進剤におけるコンドロイチン硫酸の薬理学的に許容される塩は、アルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオン・カルシウムイオン等)との塩又はアルカリ金属イオン(ナトリウムイオン・カリウムイオン等)との塩が例示され、特にアルカリ金属イオンとの塩が好ましい塩として例示される。その中でも特にナトリウムイオンとの塩が好ましい。本発明促進剤の使用によりin vitroで培養した再生組織において当該再生組織を生体などに移植して生体内で一時的にナトリウムイオン濃度が上昇しても、生体には充分なナトリウム排出機構が存在して恒常性が維持されるからである。
【0020】
本発明促進剤は、後述の「本発明促進剤の使用方法」に記載した通り、培養液等の培地中において細胞又は組織を培養するに際して、当該培養される細胞又は組織のGM-CSFの分泌を促進するために使用することができる。
【0021】
2.本発明促進剤の使用方法
本発明促進剤は、それを培地中に添加して、当該培地中において細胞又は組織の培養を行い、培養される細胞又は組織のGM-CSF分泌作用の促進するために使用することができる。
【0022】
上記目的の為に本発明促進剤が添加される培地は、培養される細胞又は組織の培養に適している培地であれば特に限定はされない。例えば培養すべき細胞としてヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)を用いる場合にはHuMedia-EB2(クラボウ株式会社製)等が挙げられ、ヒト皮膚毛細血管内皮細胞を用いる場合にはCS-C或いはSFM CS-C培地(セルシステムズ社製)等が挙げられ、またヒト大動脈血管平滑筋細胞、ヒト肺静脈血管平滑筋細胞、ヒト冠状動脈血管平滑筋細胞を用いる場合にはHuMedia-SG2或いはHuMedia-SD2(クラボウ株式会社製)等が挙げられる。ヒト気管支由来表皮細胞を用いる場合には2mM グルタミン、1%ウシ胎児血清を含むF12/DMEM培地(Cromwell O., et al (1992) Immunology 77:330-337)等が挙げられる。ヒト新生児包皮表皮角化細胞、ヒト成人乳房表皮角化細胞を用いる場合にはHuMedia-KG2或いはHuMedia-KB2(クラボウ株式会社製)が挙げられる。ヒト新生児包皮皮膚線維芽細胞、ヒト成人皮膚線維芽細胞を用いる場合には106S或いはLSGS培地(クラボウ株式会社製)が挙げられる。
【0023】
一方、培養される組織として胃粘膜を用いる場合には2mMグルタミン、10%ウシ胎児血清を含むF12/DMEM培地(Beales IL. et al(1997) Eur J Gastroenterol Hepatol. 9:451-455)等が挙げられ、肝組織を用いる場合には2mMグルタミン、20%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(Kato M. et al (1994) Lung 172:113-124)等が挙げられる。
【0024】
また、本発明促進剤は例えば上記HUVEC等のGM-CSFを分泌する性質を有する細胞に対して特に強くGM-CSFの分泌を促進するので、GM-CSFの分泌しないがGM-CSFによって分化が誘導される細胞(例えば顆粒球、マクロファージ前駆細胞、造血幹細胞等)とHUVEC等のGM-CSFを分泌する細胞とを共培養して上記の分化を誘導すべき細胞に対して効率的に分化を誘導することも可能である。
【0025】
培地に本発明促進剤を添加する場合の濃度は1〜500μg/mlが例示され、好ましくは10〜200μg/mlが挙げられる。このような範囲であれば、例えばHUVECであれば2〜4日で十分量(15pg/ml以上の濃度)のGM-CSFを分泌させることが可能だからである。
GM-CSFの分泌を促進するための培養時間は通常は1日以上、好ましくは2日以上である。
【0026】
本発明促進剤は例えば白血病、悪性リンパ腫、再生不良性貧血、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、放射線による造血障害などの血液疾患の処置剤(治療、予防、進行抑制剤)等を目的とした医薬として利用することが可能である。
【0027】
本発明促進剤は、コンドロイチン硫酸の他に、緩衝剤、水、薬学的に許容されうる担体、賦形剤、希釈剤などを含有することができ、また他の薬効を有する薬剤、成長因子などと混合して複合的な作用を示す医薬組成物として、温血動物(ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ等)へ非経口的又は経口的に適用しうる医薬とすることが可能である。
【0028】
本発明促進剤には、薬学的に許容される補助剤、例えばpH調節剤、緩衝剤、張度調節剤、湿潤剤、安定化剤、無機塩類、界面活性剤、消泡剤、糖類、糖アルコールなどを混合してもよい。
【0029】
本発明促進剤を、例えば血液疾病への適用を目的とする医薬として使用する場合の剤形としては、コンドロイチン硫酸を医薬品に慣用される水性溶媒(例えば蒸留水、緩衝液、生理食塩水、水性有機溶媒を含む水などが挙げられ、蒸留水又は緩衝液が好ましい)に溶解した注射剤などが挙げられ、また創傷治癒を目的とする医薬とするのであれば、錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、軟膏剤などが挙げられるが、目的の用途で使用可能である限り特に限定はされない。
【0030】
例えば本発明促進剤を造血障害の改善を目的とする造血機能改善剤として使用する場合は、公知の造血機能改善剤(例えばラクトフェリン、サポニン、セファランチン等)などの増殖因子と同時に生体内に存在するように投与することでGM-CSF分泌促進効果に基づく優れた造血機能改善効果を示す。両者は一緒に製剤化しても良く、または別個に製剤化しても良い。別個に製剤化する場合には、投与経路・用法は同一でも良く、また別々であっても良い。
【0031】
本発明促進剤中のコンドロイチン硫酸の配合量及び投与量は、その製剤の投与方法、剤形、患者の具体的症状、及び患者の体重に応じて適宜個別的に決定されるべき事項であり、特に限定はされないが、一般にコンドロイチン硫酸の投与量は1日あたり概ね100μg/kg〜100mg/kg程度を例示することができる。また、上記製剤の投与回数は1日1回程度でも可能であり、1日2〜4回、又はそれ以上の回数に分けて投与することも可能である。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
<調製法>
1.デルマタン硫酸-1(DS-1)
鶏冠1000kgに水4000Lを加えてミンチした後煮沸した。これを、冷却後プロテアーゼ(プロナーゼ、科研製薬株式会社)を添加して一晩タンパク質を分解し、酵素分解液を得た。酵素分解液に塩化ベンザルコニウム溶液32Lを加えた後、珪藻土でろ過して目的物質を含む113kgの珪藻土を得た。この珪藻土に水350Lと塩化ナトリウム42kgを加えた後ろ過し、ろ液に終濃度0.5Mになるように水酸化ナトリウムを加え40℃で一時間攪拌した。これを塩酸で中和し、その後終濃度42%になるようにエタノールを加えて沈殿を生じさせ、生じた沈殿物を回収した。この沈殿物を適当量の水に溶解し1%の塩化ナトリウムと2倍量のエタノールを加えて沈殿を生じさせ、この沈殿物を乾燥させて粉体1.0kgを得た。
【0033】
上記粉体を水1.0Lに溶解して10%(w/w)となるように調製し、ShivelyとConradの方法(Shively JE, Conrad HE., Biochem. (1970) Han 6; 9(1): 33-43)により亜硝酸処理を行ってヘパリン/ヘパラン硫酸を除去した。すなわち、上記粉体を溶解した溶液を0.1%(w/w)亜硝酸水溶液に混和し、24℃で10分間放置した後、沈殿をろ過して除いた。ろ過液のpHを3.0に調整した後、珪藻土を用いて更にろ過した。ついで終濃度0.25Mになるように水酸化ナトリウムを添加し、40℃で1時間攪拌した。その後pHを10.5に調整し、塩化ナトリウムを終濃度1%になるように加え、さらにエタノールを終濃度48%(w/w)になるように30〜40分かけて攪拌しながら加えた。得られた沈殿物に活性炭を加えて吸引ろ過し、ろ過液をイオン交換樹脂Diaion SA-12A、PK220(三菱化学株式会社)に通して脱塩し、通過液にエタノールを加え、474gのデルマタン硫酸(DS-1)を得た。
【0034】
2.低分子化デルマタン硫酸(LMWDS)
1.で調製したDS-1を酸加水分解の手法で低分子化した。すなわち、10%(w/w)濃度のDS-1の水溶液に終濃度0.5Mになるように塩酸を加え、65℃で280分間攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液で中和後、1.5%(w/w)の酢酸ナトリウムを加え終濃度48%(w/w)になるようにエタノールを加えLMWDSを得た。
【0035】
3.ナマコ由来グリコサミノグリカン(SC-GAG)
ナマコ体壁2kgをホモジナイズし、クロロホルム:メタノール=2:1の混液により脱脂した。120℃で30分間オートクレーブ処理後、適当量のアルカリプロナーゼ(アクチナーゼ:科研製薬株式会社製)により55℃で8時間消化した。さらに終濃度0.4Mになるように水酸化ナトリウムを加え40℃で一時間攪拌し、終濃度10%(w/w)になるようにトリクロロ酢酸を加えタンパク質を除去した。流水透析した後、2.5%(w/w)の酢酸ナトリウム存在下でエタノール沈殿を行い、粗精製品15gを得た。
【0036】
得られた粗精製品500mgを2回に分けて50mMの炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解しSephadex G-100カラム(φ3.4×100cm:アマシャムバイオサイエンス株式会社製)に付し、カルバゾール反応(Bitter-Muir法,T. Bitter, H. Muir, Anal. Biochem. J, 4, 330-334 (1962))において陽性を示す画分を574mg回収した。次いで100mM酢酸ナトリウム水溶液に溶解しDEAE celluloseカラム(φ1.8×18cm:アマシャムバイオサイエンス株式会社製)に付し1.2Mまでの塩化ナトリウム直線濃度勾配により溶出させ、同じくカルバゾール反応陽性の画分を回収しSC-GAG 210mgを得た。
【0037】
<測定法>
二糖分析法
(1)グリコサミノグリカン分解酵素による消化
新生化学実験講座3、糖質II 54-59頁に記載の方法により、被検物質1.0mgを2mM酢酸カルシウムを含む20mM酢酸ナトリウム(pH7.0)220μlに溶解して、グリコサミノグリカン分解酵素(コンドロイチン骨格を有するグリコサミノグリカンを分析する場合にはコンドロイチナーゼABC(生化学工業株式会社製)、ヘパリンを分析する場合にはヘパリチナーゼIとヘパリナーゼの混合物(何れも生化学工業株式会社製))20mUを加えて、37℃で2時間反応させた。
【0038】
(2)HPLCによる分析
上記(1)による酵素消化を行った後の溶液20μlを、HPLC(株式会社島津製作所製、LC6AD型)を用いて分析した。イオン交換カラム(CarboPac PA-1カラムφ4.0×250mm:Dionex社製)を使用し、232nmでの吸光度を測定した。公知の方法(Kariya, et al.(1992) Comp. Biochem. Physiol., 103B, 473-479)に準拠し、流速1ml/分で、塩化リチウムを用いたグラジエント系(50mM→2.5M)で測定した。
【0039】
<実施例>
1.GM-CSF分泌促進活性の定量
細胞はクラボウ株式会社より市販されているHUVECを用いた。細胞の培養にはHuMedia-EB2(クラボウ株式会社) 500mLに対し、0.5mlのhEGF 10ug/ml, hFGF-B 5ug/ml,ヘパリン 10mg/ml, ハイドロコーチゾン 1mg/ml, 抗菌剤(ゲンタマイシン50mg/ml + アンフォテリシン 0.5ug/ml) と 1mlのアルギニン,グルコースを添加した培地を使用し、この培地でHUVECを培養して3世代継代維持した。その後、24穴プレートに5x104cells/well/1mlになるよう細胞を植え込み、 CO2インキュベーターで2日間培養した。低栄養培養液(HuMedia-EB2(クラボウ株式会社) 500mLに対し、ハイドロコーチゾン 1mg/ml, 抗菌剤(ゲンタマイシン50mg/ml + アンフォテリシン 0.5ug/ml) と 1mlのアルギニン,グルコースを添加したもの)に培地交換し、さらに一日培養しコンフルエントの状態にした。80μg/mlで被検物質〔DS-1、LMWDS、DS-2(生化学工業株式会社より市販されているブタ皮由来デルマタン硫酸)、CSC(生化学工業株式会社より市販されているサメ軟骨由来コンドロイチン硫酸ナトリウム(注射用))、CSE(生化学工業株式会社より市販のイカ軟骨由来コンドロイチン硫酸E)、SC-GAG、ヘパリン(Hep:Scientific Protein Laboratories社製):DS-1、LMWDS、SC-GAGの調製方法は前述の調製法参照〕を含む低栄養培養液に培地交換した。3日間培養した後、培養上清を別の容器に移し、1000rpm、10分間遠心分離して細胞成分を除去した後、GM-CSFの濃度をQuantikine Human GM-CSF Immunoassay (R&D systems社製)を用いて定量した。対照として何も添加せずに同様に培養して得られた培養上清中のGM-CSFの濃度を用いた(図1)。
その結果、CSEのみが極めて高いGM-CSF濃度を示すことが明らかとなった。
【0040】
2.二糖組成の分析
DS-1、LMWDS、DS-2、CSC、CSEはコンドロイチナーゼABC(生化学工業株式会社)を用いて酵素処理した。生成した不飽和二糖の組成をポリアミン結合型シリカ担体カラム(株式会社YMC製)に付し、標準不飽和二糖(不飽和コンドロ二糖キット;生化学工業株式会社)の溶出位置と比較することにより、前記硫酸化多糖中の二糖組成およびその含量を解析した。Hepはヘパリチナーゼ(生化学工業株式会社)により酵素処理し標準不飽和二糖(不飽和ヘパリン二糖キット)を用いて以下同様に解析した。結果を表1及び表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
なお、Hepをヘパリチナーゼで消化して得られた不飽和二糖は下記式(4)の通りである。
【0044】
【化6】
【0045】
【表4】
【0046】
SC-GAGは糖鎖分解酵素で消化されないため化学的分解により分析した( Kariya et al., J. Biol. Chem (1990)265, 5081-85)。SC-GAGの基本的な骨格は下記式(2)の通りである。
【0047】
【化7】
【0048】
【表5】
【0049】
SC-GAGの基本的な骨格の構成単位の比は下記表3の通りだった。
【0050】
【表6】
【0051】
GM-CSF分泌促進活性の定量と二糖組成の分析から4,6-二流酸-コンドロイチン不飽和二糖(ΔDi-SE)を多く含むコンドロイチン硫酸はGM-CSF分泌を著しく促進することが明かとなった。
【0052】
3.分子量分析
DS-1、LMWDS、DS-2、CSC、CSE、Hepの重量平均分子量は、Araiらの方法(Biochem. Biochem. Biophys. Acta,1117,60-70,1992)に準拠して測定した。分子量が既知のコンドロイチン硫酸C(重量平均分子量39100、18000、8030)及びヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量104000)を標準品としてHPLCを用いたゲルろ過での溶出時間により決定した。カラムは、Tsk gel G4000PWXL、G3000PWXLおよびG2500PWXL(各φ7.8×300mm、東ソー株式会社)を連結したものを用いた。溶媒は0.2mol/L塩化ナトリウム溶液を用い、流速は0.6ml/分とし、検出器は示差屈折率検出器(RI-8020、東ソー株式会社)を用いた。重量平均分子量の解析にはGPC-8020ソフトウェア(東ソー株式会社)を用いた。
【0053】
SC-GAGは糖鎖構造がDS-1、LMWDS、DS-2、CSC、CSE、Hepと異なり分岐構造を持つため超遠心沈降法により重量平均分子量を求めた(Kariya et al.,(1986) Connect. Tissue(Tokyo) 18, 312-313)。
その結果、重量平均分子量は表4の通りだった。
【0054】
【表7】
【0055】
【発明の効果】
本発明により、新たなGM-CSF分泌促進剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各被検物質のHUVECに対するGM-CSF分泌促進活性を示す図である。
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