JP4317314B2 - ステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ、及び、ステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法 - Google Patents

ステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ、及び、ステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ、及び、ステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステンレス溶銑を脱硫処理するにあたっては、スクラップ等の原料と共に、石灰等の脱硫剤を電気炉に装入し、溶解してステンレス溶銑を形成し、ステンレス溶銑の溶解中または出銑中に脱硫反応を起こさせる。さらに、次工程の転炉、VD炉において石灰、蛍石等を使用して再度脱硫処理を行なう。ステンレス溶銑は主に1350〜1480℃の温度範囲内で出銑される。ステンレス溶銑中の硫黄濃度は、溶銑段階で、一般的には0.001〜0.025重量%程度である。このように溶銑段階における脱硫反応にはバラツキがあり、従ってステンレス溶銑中の硫黄濃度は上記範囲のようになっていた。
【0003】
したがって、ステンレス溶銑中の硫黄濃度が高目であれば、次工程で多量の脱硫剤を用いてさらに脱硫処理する必要があった。この結果、電気炉における石灰類の脱硫剤の使用量が増えるばかりか、後工程における石灰類の脱硫剤の使用量が増える。結果的にスラグの発生量が増えて、スラグの処理が問題となっていた。
【0004】
そこで、本発明者らは、電気炉で溶解したステンレス溶銑を取鍋内に出銑した後に、ガス吹込機能をもつランスパイプをこれの先端部から取鍋内のステンレス溶銑に浸漬させ、ランスパイプからガスを取鍋内のステンレス溶銑に吹き込んで攪拌することにより、ステンレス溶銑の脱硫反応を促進するための方法を開発し、特許出願した(特願平8−79445号、特願平8−335887号)。
【0005】
上記したランスパイプは、吹込ガスが通過する通路をもつ芯金パイプと、芯金パイプの外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層とを有する。上記したステンレス溶銑の取鍋脱硫方法によれば、前記したように、取鍋内のステンレス溶銑へのガス攪拌により、ステンレス溶銑における脱硫反応が促進され、石灰等の脱硫剤の使用量の削減を図り得、ひいてはスラグ量の低減を図り得る。さらにはスラグ量低減による溶解電力の削減等を図り得る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ステンレス溶銑を溶製する場合の脱硫用のスラグの組成は一般的にはCaO、SiO2の他にCaF2を主要成分とするものであることから、ステンレス溶銑を脱硫処理する際に使用するランスパイプのキャスタブル被覆層は、スラグと接触するスラグラインでの溶損が非常に厳しい。
【0007】
このため、ランスパイプの耐用回数、寿命が必ずしも充分ではなかった。故に脱硫コストにおいてランスパイプのコストが占める割合が大きく、これが取鍋脱硫処理方法のデメリットであった。またランスパイプの寿命が短いことから、ランスパイプによる攪拌時間を延長するにも制約があった。
【0008】
そこで本発明者はこのランスパイプが占める脱硫コストを低減することが、上記したステンレス溶銑の取鍋脱硫処理法の効果向上につながる点に着目した。
【0009】
前記したようにCaF2の割合が高い、例えば5〜20%と高いステンレス用スラグが脱硫用スラグとして用いられる場合には、ランスパイプのキャスタブル被覆層を構成するアルミナやシリカ等の耐火材料を非常に浸食しやすく、溶損量が大きい。このため、アルミナやシリカ等で形成された材質では耐用回数が落ち、ランスパイプのコストアップとなる。
【0010】
脱硫処理用のランスパイプのキャスタブル被覆層の材質をマグネシアとすることも考えられる。この場合にはスラグの主要成分が浸食性を有するCaF2であっても、良好な耐食性が得られるが、ステンレス溶銑への浸漬による高温加熱−冷却の繰り返しサイクルが施されると、熱衝撃により亀裂が生成し易く、耐スポーリング性が充分ではない。亀裂がキャスタブル被覆層に発生すると、そこへ溶銑が差し込み、ひいては芯金パイプの穴あきに進展し、ガスや吹込粉体がもれ、ランスパイプの所定の目的が果たせなくなる。
【0011】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、脱硫用のスラグの主要成分がCaF2 であっても、キャスタブル被覆層の長寿命化を図ることができ、耐用回数を増加できるステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ、及び、ステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ステンレス溶銑を脱硫するスラグの主要成分がCaF2 であるとき、脱硫処理に使用するステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプのキャスタブル被覆層の材質について鋭意開発を進めている。そして、CaF2に対して良好な耐食性をもつものの耐スポーリング性が必ずしも充分ではないマグネシア系をキャスタブル被覆層として積極的には用いない着想の元に、開発を進めた。
【0013】
そして、ステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプを構成するキャスタブル被覆層を、MgOを積極的には含まないAl23−SiO2−ZrO2の三元系とし、ZrO2が1〜10重量%、Al23が50〜85重量%、SiO2が10〜30重量%含まれている組成とすれば、ステンレス溶銑を脱硫するスラグの主要成分がCaF2 であるときであっても、脱硫処理用ランスパイプを構成するキャスタブル被覆層の耐溶損性、耐スポーリング性を向上することでき、よって脱硫処理用ランスパイプの長寿命化を図ることができ、脱硫処理用ランスパイプの耐用回数を増加できることを知見し、本発明に係るステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ、及び、ステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法を開発した。
【0014】
即ち、本発明に係るステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプは、溶解炉で溶製したステンレス溶銑を取鍋内に排出し、スラグ存在の状態で取鍋内のステンレス溶銑に不活性ガスを吹き込んでステンレス溶銑を攪拌しつつ取鍋内で脱硫処理する脱硫処理用ランスパイプであって、
吹込ガスが通過する通路をもつ芯金パイプと、芯金パイプの外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層とを有し、
キャスタブル被覆層のうち少なくともステンレス溶銑に浸漬される浸漬部は、Al23−SiO2−ZrO2の三元系であり、ZrO2が1〜10重量%、Al23が50〜85重量%、SiO2が10〜30重量%含まれている組成を有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係るステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法は、電気炉等の溶解炉で溶製したステンレス溶銑を取鍋に排出し、CaO、SiO2、CaF2を主要成分とするスラグの存在の状態で取鍋内のステンレス溶銑に浸漬したランスパイプにより不活性ガスを吹き込んでステンレス溶銑を攪拌しつつ、取鍋内で脱硫処理するステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法であって、
ランスパイプは、吹込ガスが通過する通路をもつ芯金パイプと、芯金パイプの外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層とを有し、
キャスタブル被覆層のうち少なくともステンレス溶銑に浸漬される浸漬部は、Al23−SiO2−ZrO2の三元系であり、ZrO2が1〜10重量%、Al23が50〜85重量%、SiO2が10〜30重量%含まれている組成を有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、脱硫処理の際には、取鍋内のステンレス溶銑の湯面には、CaO、SiO2の他にCaF2を主要成分とする脱硫用のスラグが浮遊する。この脱硫用のスラグを介してステンレス溶銑の脱硫処理が行われる。
【0017】
本発明によれば、脱硫の際には、ランスパイプの先端側である浸漬部は、取鍋内のステンレス溶銑およびスラグ中に浸漬される。このようにランスパイプが浸漬された状態で、ランスパイプの芯金パイプの通路から取鍋内のステンレス溶銑中にガスが吹き込まれ、取鍋内のステンレス溶銑の攪拌が行われる。これによりスラグを利用した脱硫処理が促進される。ガスとしては、一般的には、窒素、アルゴンガス等の不活性ガスが用いられる。
【0018】
本発明によれば、ランスパイプを構成するキャスタブル被覆層の少なくとも浸漬部は、前記したように、Al23−SiO2−ZrO2の三元系であり、ZrO2 が1〜10重量%、Al23が50〜85重量%、SiO2が10〜30重量%の組成を有する。このため後述する試験で示すように、耐溶損性、耐スポーリング性が良好となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係る脱硫処理用ランスパイプによれば、前述したように、キャスタブル被覆層のうち少なくともステンレス溶銑に浸漬される浸漬部は、MgOを積極的には含まないAl23−SiO2−ZrO2の三元系である。
【0020】
浸漬部を100重量%としたとき、浸漬部は、ZrO2 の割合は1〜10重量%であり、なかでも3〜8重量%、4〜7重量%にできる。耐溶損性の向上、耐スポーリング性の向上を考慮したものである。
【0021】
Al23の割合は50〜85重量%、なかでも60〜80重量%、65〜75重量%にできる。Al23が前記下限値よりも少ないと、溶損量が大きくなる傾向がある。Al23が前記上限値よりも多いと、耐スポーリング性が低下し、亀裂が生成し易くなる傾向がある。
【0022】
SiO2の割合は10〜30重量%であり、なかでも15〜35重量%、20〜30重量%にできる。SiO2が前記下限値よりも少ないと、アルミナの割合が相対的に増加するため、スポーリング抵抗が小さくなり、耐スポーリング性が低下する傾向がある。SiO2が前記上限値よりも多いと、溶損量が大きくなる傾向がある。
【0023】
キャスタブル被覆層のバインダ−としてアルミナセメント等のセメントを使用することができるが、場合によってはローセメントタイプあるいはノンセメントタイプでも良い。
【0024】
脱硫処理の対象とするステンレス溶銑は、Cr及びNiを含有する溶銑であり、一般的には、Cr:5〜25%、Ni:0〜25%、Si:0.1〜0.8%、C:2〜6%、残部実質的にFe及び不可避不純物を含む組成を有する溶銑である。
【0025】
脱硫処理の際には、取鍋内のステンレス溶銑の湯面には、CaO、SiO2、CaF2を主要成分とする脱硫用のスラグが浮遊する。この脱硫用のスラグを介してステンレス溶銑の脱硫処理が行われる。スラグの塩基度(CaO/SiO2)は一般的には1.3〜2.5、または、1.5〜2.2にすることができる。
【0026】
なお、脱硫処理用ランスパイプのキャスタブル被覆層の浸漬部を構成するZrO2 の起源となる含有材料としては、バッデライト(ZrO2)、ジルコニア・ムライト(ZrO2・Al23・SiO2)、アルミナ−ジルコニア(Al23・ZrO2 )、ジルコン(ZrO2・SiO2)、アルミナ−ジルコン(Al23・ZrO2・SiO2)などがあげられ、特に限定されない。また、残部のAl23 、SiO2の起源となる含有材料も特に限定されない。
【0027】
【実施例】
本発明の実施例についてラボ試験と実機試験に分けて説明する。
【0028】
(ラボ試験)
このランスパイプは、吹込ガスが通過する通路をもつ芯金パイプと、芯金パイプの外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層とを有する。キャスタブル被覆層の全体は、表1に示すように、Al23−SiO2−ZrO2の三元系であり、キャスタブル被覆層の全体を100重量%としたとき、ZrO2が1〜10重量%に設定されており、残部が不可避不純物とAl23、SiO2からなる組成を有する。具体的には、本実施例に係るキャスタブル被覆層の全体は、表1に示すように、ZrO2が5重量%、Al23が73重量%、SiO2が20重量%含まれている組成をもつ。本実施例に係るキャスタブル被覆層にはMgOは積極的には含まれていない。MgOが含まれていると、CaF2による浸食に対しては有効であるものの、耐スポーリング性が低下する傾向があり、キャスタブル被覆層に亀裂が生成する度合が高くなるためである。
【0029】
キャスタブル被覆層を構成する耐火材料の気孔率について、110℃で24時間加熱したとき、1000℃で3時間加熱したとき、1500℃で3時間加熱したときの値を測定した(JIS−R2205)。同耐火材料の嵩比重について、110℃で24時間加熱したとき、1000℃で3時間加熱したとき、1500℃で3時間加熱したときの値を測定した(JIS−R2205)。同耐火材料の圧縮強さについて、110℃で24時間加熱したとき、1000℃で3時間加熱したとき、1500℃で3時間加熱したときの値を測定した(JIS−R2206)。同耐火材料の線変化率について、1000℃で3時間加熱して常温に戻したとき、1500℃で3時間加熱して常温に戻したときの値を測定した(JIS−R2208)。各測定結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0004317314
【0031】
更に比較例1〜比較例3に係る試験片を用意した。比較例1〜比較例3に係るキャスタブル被覆層の耐火材料についても、実施例と同様に測定を行ない、その測定結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1に係るキャスタブル被覆層は、Al23−MgO−SiO2−C系であり、Al23が84重量%、MgOが5重量%、SiO2が5重量%、Cが4重量%含まれている組成とされている。比較例2に係るキャスタブル被覆層は、Al23−SiO2系であり、Al23が65重量%、SiO2が33重量%含まれている組成とされている。比較例3に係るキャスタブル被覆層は、Al23−SiO2系であり、Al23が90重量%、SiO2が9重量%含まれている組成とされている。なお100重量%に足らない分は実質的にバインダ分である。
【0032】
ラボ試験において、実施例に係るランスパイプ、比較例1〜3に係るランスパイプについての溶損試験、電気炉スポーリング試験を行った。溶損試験は次のようにして行った。
【0033】
溶損試験の条件…試験方法:回転浸食法
ステンレス溶銑の温度:1650℃
試験時間:5時間
脱硫用スラグ:CaO−SiO2 −CaF2 系のスラグ
(CaO/SiO2=スラグ塩基度:2.0)
電気炉スポーリング試験の条件…温度:1400℃
サイクル:加熱15分間 強制空冷15分間を1サイクル
サイクル数:5サイクル
図1はラボ試験における溶損試験、電気炉スポーリング試験の結果を示す。スポーリング指数は比較例1を100とした。図1に示すように、実施例では溶損量は6.6mmと少な目であり、スポーリング指数は60と少な目であった。即ち、Al23−SiO2−ZrO2の三元系である実施例では、耐溶損性及び耐スポーリング性の双方について良好であった。
【0034】
これに対してAl23−MgO−SiO2−C系である比較例1では溶損量は19.6mmとかなり多く、スポーリング指数は100であり、耐溶損性及び耐スポーリング性の双方共に充分ではなかった。また、Al23−SiO2系である比較例2では溶損量が22.4mmと最も多く、スポーリング指数も85とかなり大きく、耐溶損性及び耐スポーリング性の双方が充分ではなかった。また、Al23−SiO2系である比較例3では溶損量は3.6mmと少なかったものの、スポーリング指数が70と大きめであった。つまり比較例3では、耐溶損性は良好であったものの、耐スポーリング性が充分ではなかった。
【0035】
(実機試験)
更に実機試験について説明を加える。実機試験では、電気アーク炉(90トン用)でステンレス溶銑を実際に溶製した。溶製の際には脱硫剤が添加されている。溶製したステンレス溶銑(温度:1350〜1400℃)をスラグとともに取鍋内に排出し、収容した。ステンレス溶銑は、Cr:5〜25%、Ni:0〜25%、Si:0.1〜0.8%、C:2〜6%、残部は実質的にFe及び不可避不純物を含む組成をもつ。
【0036】
ステンレス溶銑の湯面に浮かんでいるスラグは、CaO−SiO2−CaF2系を主成分とするものであり、目標スラグ塩基度(CaO/SiO2)は2.0とした。
【0037】
そしてステンレス溶銑の脱硫処理を取鍋内で実施した。このとき本実施例に係るランスパイプの先端部をステンレス溶銑及びスラグに浸漬させた状態で、ランスパイプから不活性ガス(窒素ガス)を吹き込み、ステンレス溶銑の攪拌処理を行ない、ステンレス溶銑の脱硫処理を促進させた。そしてランスパイプの耐用回数を調べた。なおガス吹込流量は800〜1100NL/分とした。
【0038】
実機試験で用いたランスパイプは、前述したように、吹込ガスが通過する通路をもつ芯金パイプと、芯金パイプの外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層とを有する。キャスタブル被覆層の全体組成は表1の実施例に示す組成に基づいた。
【0039】
比較例1〜比較例3に係るランスパイプについても、同様に実機試験を行った。実機試験の結果を表2に示す。表2においてn数は平均値を採るための試験回数を意味し、平均耐用回数はその試験回数における耐用チャージを意味する。
【0040】
表2に示すように、実施例では平均耐用回数は40回であり、耐用回数が多かった。即ち、Al23−SiO2−ZrO2系の組成をもつ実施例では、亀裂の発生も抑えられ、CaF2 を多量に含む浸食性が高いスラグであっても、ランスパイプのキャスタブル被覆層の溶損が少なかった。
【0041】
これに対して比較例1では耐食性は良好であったが、平均耐用回数は27回であり、ランスパイプの寿命は実施例の寿命の約68%であり短かかった。この比較例1では、加熱・冷却の熱サイクルの繰り返しに伴う亀裂の発生、進展が認められ、キャスタブル被覆層が胴体部から脱落し、ランスパイプの寿命に大きなばらつきがあった。
【0042】
比較例2ではランスパイプの耐用回数は25回であり、同様にランスパイプの寿命が短かった。比較例3では耐用回数は28回であり、同様に寿命が短かった。即ち、Al23−SiO2系の比較例2では、キャスタブル被覆層における亀裂の発生は少なかったが、キャスタブル被覆層におけるスラグラインでの溶損が顕著であり、この部分がランスパイプの耐用を律速する結果となった。また比較例3では、スラグライン部での溶損は少ないものの、キャスタブル被覆層の剥離が廃却原因となった。特にCaF2 を多量に含む(例えば5〜20重量%)スラグを用いた場合には、溶損傾向が著しかった。
【0043】
【表2】
Figure 0004317314
【0044】
なお上記したラボ試験及び実機試験によれば、ZrO2は5重量%であるが、1〜10重量%の範囲内としたAl23−SiO2−ZrO2の三元系の組成であれば、ランスパイプの耐用回数を増加できるものであることが確認されている。即ち、Al23−SiO2−ZrO2の三元系の組成において、ZrO2が2重量%、ZrO2が4重量%、ZrO2が6重量%、ZrO2が8重量%であっても、耐溶損性、耐スポーリング性が改善されるものである。
【0045】
(適用例)
図2は適用例を示す。図2に示すように、このランスパイプ10は、吹込ガスが通過する通路21をもつ芯金パイプ20と、芯金パイプ20の外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層30とを有する。通路21は、不活性ガスを供給するガス供給源40に繋がっている。キャスタブル被覆層30の全体は、表1に示すように、Al23−SiO2 −ZrO2 の三元系であり、上記した表1に示す実施例の組成とされている。そして使用の際には、図3に示すように、取鍋50内に収容されたステンレス溶銑51の湯面にスラグ52を浮遊させて脱硫処理を行いつつ、この状態で、ランスパイプ10を先端側から浸漬させ、芯金パイプ20の通路21から不活性ガスを吹き込むことにしている。これによれば、電気炉等の溶解炉にて調合、溶融したステンレス溶銑の脱硫処理においてランスパイプ10によるガス攪拌を実施しているため、脱硫処理が促進され、脱硫剤の使用量が低減され、ステンレス鋼の製造プロセス全体から出るスラグの発生量を大幅に低減することができる。
【0046】
(付記)本明細書及び図面から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)請求項1または2において、キャスタブル被覆層のうち少なくともステンレス溶銑に浸漬される浸漬部は、MgOを含まないAl23−SiO2−ZrO2の三元系であり、ZrO2 が1〜10重量%、Al2 3 が50〜85重量%、SiO2 が10〜30重量%含まれている組成を有することを特徴とするステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ、及び、ステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法。
(付記項2)請求項1または2において、ステンレス溶銑は、Cr:5〜25%、Ni:0〜25%、Si:0.1〜0.8%、C:2〜6%、残部実質的にFe及び不可避不純物を含む組成を有することを特徴とするステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ、及び、ステンレス溶銑の脱硫処理方法。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、ステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプの長寿命化を図ることができ、ランスパイプの耐用回数を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶損試験及び電気炉スポーリング試験の結果を示す写真である。
【図2】適用例に係り、ランスパイプの断面図である。
【図3】適用例に係り、使用状態を説明する概念図である。
【符号の説明】
図中、10はランスパイプ、21は通路、20は芯金パイプ、30はキャスタブル被覆層を示す。

Claims (2)

  1. 溶解炉で溶製したステンレス溶銑を取鍋内に排出し、スラグ存在の状態で取鍋内のステンレス溶銑に不活性ガスを吹き込んでステンレス溶銑を攪拌しつつ取鍋内で脱硫処理する脱硫処理用ランスパイプであって、
    吹込ガスが通過する通路をもつ芯金パイプと、前記芯金パイプの外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層とを有し、
    前記キャスタブル被覆層のうち少なくともステンレス溶銑に浸漬される浸漬部は、
    Al23−SiO2−ZrO2の三元系であり、ZrO2が1〜10重量%、Al23が50〜85重量%、SiO2が10〜30重量%含まれている組成を有することを特徴とするステンレス溶銑の脱硫処理用ランスパイプ。
  2. 電気炉等の溶解炉で溶製したステンレス溶銑を取鍋に排出し、CaO、SiO2、CaF2を主要成分とするスラグの存在の状態で取鍋内のステンレス溶銑に浸漬したランスパイプにより不活性ガスを吹き込んでステンレス溶銑を攪拌しつつ、取鍋内で脱硫処理するステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法であって、
    前記ランスパイプは、吹込ガスが通過する通路をもつ芯金パイプと、前記芯金パイプの外周面を被覆する耐火キャスタブル材料で形成されたキャスタブル被覆層とを有し、
    前記キャスタブル被覆層のうち少なくともステンレス溶銑に浸漬される浸漬部は、Al23−SiO2−ZrO2の三元系であり、ZrO2が1〜10重量%、Al23が50〜85重量%、SiO2が10〜30重量%含まれている組成を有することを特徴とするステンレス溶銑の取鍋脱硫処理方法。
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