JP4315721B2 - 航空機用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機用空気入りラジアルタイヤ、特に耐カット性および耐ピールオフ性に優れた航空機用空気入りラジアルタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
航空機用ラジアルタイヤは、高い使用内圧、高荷重条件下で使用されるため、高内圧や高速回転中の遠心力作用によりトレッド面の径方向外方への迫り出しが大きくなり、これに伴ってトレッドゴムがタイヤ周方向に引き伸ばされた状態になる。特に、離着陸時に滑走路上の石や金属片のような鈍いまたは鋭利な異物の上を通過する際、トレッドの異物に対する抵抗力が弱くなり、踏みつけた異物によりトレッドゴムにカット傷が生じ、該異物がトレッド内部に容易に侵入してタイヤの損傷をもたらす問題がある。特に、ベルト保護層にアラミドコードを使用している従来の航空機用ラジアルタイヤにおいては、離着陸等の高速走行時に高い遠心力等により上記損傷部を起点としたトレッド剥がれ(所謂ピールオフ)が生ずることがある。
【0003】
一般に、アラミドコードのような芳香族ポリアミド繊維コードは優れた耐カット性を有するため、タイヤを異物等の衝撃から守るベルト保護層(最外層)に使用されることが多い。しかし、高温時のコードとゴム間の接着性はナイロンコードやポリケトン繊維コードよりも低いレベルにあるため、損傷を受けた後の高速回転(高温)時に、ベルト保護層とトレッドとの間でピールオフが生ずるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解消し、後述する特定の有機繊維コードをベルト保護層に使用することによりアラミドコードと同等の耐カット性を保持しつつ、ベルト保護層とトレッド間の耐ピールオフ性を向上させた航空機用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る航空機用空気入りラジアルタイヤは、一対のビードコアと、該ビードコア間にトロイド状に延在する少なくとも1枚のカーカスプライよりなるラジアルカーカスと、該カーカスのクラウン部外周上に配した少なくとも1枚のベルト層よりなるベルトと、該ベルトの外周上に配し、ほぼ円周方向に平行に配向させた有機繊維コードよりなる少なくとも1枚のベルト保護層とを備えた航空機用空気入りラジアルタイヤにおいて、該ベルト保護層を構成する有機繊維コードが下記の式(I):
【化2】
(式中のAはエチレン性結合によって重合されたエチレン性不飽和化合物由来の部分で、各繰り返し単位において同一でも異なっていてもよい)で表される繰り返し単位からなるポリケトン繊維のコードであり、前記ベルト保護層に用いるポリケトン繊維のコードが、5.0cN/dtex以上の引張破断強度と、21cN/dtex以上の初期弾性率と、1.0cN/dtex以上の3%伸長時応力とを有することを特徴とする。
【0007】
さらに。式(I)中のAはエチレンであることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の航空機用空気入りラジアルタイヤは、一対のビードコアと、該ビードコア間にトロイド状に延在する少なくとも1枚のカーカスプライよりなるラジアルカーカスと、該カーカスのクラウン部外周上に配した少なくとも1枚のベルト層よりなるベルトと、該ベルトの外周上に配し、ほぼ円周方向に平行に配向させた有機繊維コードよりなる少なくとも1枚のベルト保護層とを備え、該ベルト保護層を構成する有機繊維コードに下記の式(I):
【化3】
(式中のAはエチレン性結合によって重合されたエチレン性不飽和化合物由来の部分で、各繰り返し単位において同一でも異なっていてもよい)で表される繰り返し単位からなるポリケトン繊維のコードを用いる。
【0009】
式(I)で表されるポリケトンは、分子中にCO単位(カルボニル基)とオレフィン由来の単位とが配列された交互共重合体、すなわち、高分子鎖中で各CO単位の隣に、たとえばエチレン単位等のオレフィン単位が一つずつ位置する構造である。また、このポリケトンは、一酸化炭素と特定のオレフィン一種との共重合体であってもよく、一酸化炭素と特定のオレフィン二種以上との共重合体であってもよい。式(I)におけるAを形成するオレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン。ドデセン等の不飽和炭化水素化合物、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート。ビニルアセテート、ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体、およびウンデセノール、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン、およびスルホニルスルホン酸のジエチルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。特に、重合体の力学特性や耐熱性等の点から、Aはエチレンが好ましい。
【0010】
エチレンと他のオレフィンとを併用する場合、エチレンは全オレフィンに対し80モル%以上になるように用いるのが好ましい。80モル%未満では、得られる重合体の融点が200℃以下になり、該重合体から得られる繊維のコードの耐熱性が不十分となる場合がある。繊維コードの力学特性や耐熱性の点から、エチレンの使用量は、特に全オレフィンに対し90モル%以上が好ましい。
【0011】
式(I)のポリケトンは、公知の方法、たとえばヨーロッパ特許公開第121965号、同第213671号、同第229408号、および米国特許第3914391号明細書に記載された方法に従って製造することができる。
【0012】
本発明に係るポリケトンの重合度は、m−クレゾール中60℃で測定した溶液粘度が1.0−10.0デシリットル/gの範囲、さらに1.2−5.0デシリットル/gの範囲にあるのが好ましい。溶液粘度が1.0デシリットル/g未満の場合、得られる繊維コードの強度が不十分となり、一方10.0デシリットル/gを越えると、繊維形成時の溶融粘度や溶液粘度が高くなりすぎ、紡糸性が劣化する。
【0013】
このポリケトン繊維の形成方法は、特に制限されず、一般的な溶融紡糸法や溶液紡糸法が採用される。溶融紡糸法の場合、たとえば特開平1−124617号公報に記載の方法に従って、重合体をその融点より20℃以上高い温度、好ましくは40℃程度高い温度で溶融紡糸し、次いで融点より10℃以下低い温度、好ましくは40℃程度低い温度で、3倍以上、好ましくは7倍以上の延伸比にて延伸処理を施すことにより所望の繊維を容易に得ることができる。一方、溶液紡糸法の場合、たとえば特開平2−112413号公報に記載の方法に従って、重合体をヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾールに0.25−20質量%、好ましくは0.5−10質量%の濃度で溶解し、紡糸ノズルより押し出し、溶剤を除去して紡糸原糸を得、さらに融点−100℃から融点+10℃、好ましくは融点−50℃から融点の範囲の温度で延伸処理することにより、所望の繊維を得ることができる。なお、ポリケトン繊維を形成する際に、所要に応じて、酸化防止剤、艶消し剤、顔料、帯電防止剤等を配合することができる。
【0014】
このようにして形成したポリケトン繊維を用いてベルト保護層用のコードを形成する場合、該コードは5.0cN/dtex以上の引張破断強度と、21cN/dtex以上の初期弾性率と、1.0cN/dtex以上の3%伸長時応力とを有することが好ましい。
【0015】
ベルト保護層に用いるポリケトン繊維コードが上記範囲の引張破断強度、初期弾性率および3%伸長時応力を有すると、アラミドコード使用時と同等の耐カット性を発揮することができる。しかし、引張破断強度が上記範囲を下回ると、ベルト保護層としての強度が不足し、アラミドコードと同等の耐カット性を実現することが困難になる。また、初期弾性率および3%伸長時応力が上記範囲を下回ると、ベルト保護層としての剛性が不足し、異物に対する抵抗力が弱まり、その結果アラミドコードと同等の耐カット性を実現することが困難になると同時に、トレッドの耐カット性が劣化することになる。
【0016】
上記範囲内の諸物性を有するポリケトン繊維コードをベルト保護層に使用することにより、アラミドコードと同等の耐カット性を保持し、また該ポリケトン繊維コードが高い高温接着性を有するので、ベルト保護層とトレッド間の耐ピールオフ性を著しく向上させることができる。
【0017】
本発明に係る航空機用空気入りラジアルタイヤにおいては、上述したポリケトン繊維のコードをベルトの径方向外周上でほぼ円周方向に平行に配列して少なくとも1枚のベルト保護層を形成する。この場合、ベルト保護層は、一本のポリケトン繊維コードまたは複数本のポリケトン繊維コードよりなるストリップをベルトの一方側端部またはその近傍から他方側端部またはその近傍までタイヤの幅方向にスパイラル状に巻回することにより形成してもよく、または多数のポリケトン繊維コードを所定間隔で互いに平行に配し、所定の幅を有する帯状体をベルトの外周上に巻回することにより形成してもよい。また、複数枚のベルト保護層を用いる場合、少なくとも一枚を両側端部分のみの中抜き保護層としてもよい。
【0018】
【実施例】
次に、本発明を実施例につき説明するが、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0019】
タイヤサイズ:1270x445R22 32PRを有する実施例1および従来例の航空機用空気入りラジアルタイヤを作成する。これらタイヤは、表1に示すようなアラミドコードおよびポリエチレンケトン繊維コードをベルト保護層に用いる以外、すべて同一のタイヤ構造を有する。ここで、ベルト保護層はタイヤ周方向に波状に延びる複数本の有機繊維コードを互いに平行に並べてゴムコーティングした1枚の波状コードプライから構成されており、打込み数は3.6本/10mmである。なお、使用したアラミドコードと、ポリエチレンケトン繊維コードの物性を表2に示す。これらタイヤに対し、後述する方法により耐カット性および耐ピールオフ性を測定し、結果を表1に示す。
【0020】
耐カット性は、幅40mm,刃先角度30度のカッターを1620kPaの内圧充填下の供試タイヤのトレッドセンター部にその幅方向に向けて規定荷重(24860kg)の5%に相当する力で垂直に押し付けた際に生ずるカット深さを測定することにより評価し、従来例タイヤのカット深さの逆数を100として指数表示する。この場合、数値が大きいほど、耐カット性に優れていることを示す。
【0021】
耐ピールオフ性は、1620kPaの内圧充填下の供試タイヤのトレッドセンター部にタイヤ幅方向に幅400mm、深さ15mmのカット傷を形成した後、該タイヤをドラム試験機上で規定荷重(24860kg)下トレッド剥がれ(ピールオフ)を生ずるまで走行させることにより評価し、従来例でピールオフが生じた時のドラム速度を100として指数表示する。この場合、数値が大きいほど、耐ピールオフ性に優れていることを示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
ここで言う初期弾性率とは、伸び−応力曲線において、コードに0.1cN/dtexの初期張力を作用させた時の点をA、さらにそこから0.5%の伸びを与えた点をBとした場合、直線ABの傾きから算出されるものである。また、3%伸張時応力とは、上記同様コードに0.1cN/dtexの初期張力を作用させた後、3%の伸びを与えた時の応力を示す。いずれもタイヤから取り出したコードで測定を行なった。
【0025】
表1の結果から、実施例タイヤは、アラミドコードと同等の耐カット性を保持しつつ、従来例タイヤに比べて耐ピールオフ性が優れていることが分かる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ポリケトン繊維よりなるコードをベルト保護層に用いることにより、航空機用空気入りラジアルタイヤの耐カット性を従来のアラミドコードを用いた場合と同等に保持しつつ、耐ピールオフ性を大幅に向上させることができる。
Claims (2)
- 一対のビードコアと、該ビードコア間にトロイド状に延在する少なくとも1枚のカーカスプライよりなるラジアルカーカスと、該カーカスのクラウン部外周上に配した少なくとも1枚のベルト層よりなるベルトと、該ベルトの外周上に配し、ほぼ円周方向に平行に配向させた有機繊維コードよりなる少なくとも1枚のベルト保護層とを備えた航空機用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト保護層を構成する有機繊維コードが下記の式(I):
前記ベルト保護層に用いるポリケトン繊維のコードが、5.0cN/dtex以上の引張破断強度と、21cN/dtex以上の初期弾性率と、1.0cN/dtex以上の3%伸長時応力とを有することを特徴とする航空機用空気入りラジアルタイヤ。 - 式(I)中のAがエチレンであることを特徴とする請求項1記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
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