JP4314847B2 - 色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素増感型太陽電池モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境問題に対する対応から、クリーンなエネルギーが求められて、太陽電池開発が進められ、その利用も高まっている。太陽電池の中でも、色素増感型太陽電池は、安価に製造できることから注目されている。
【0003】
従来の色素増感型太陽電池の構造について、断面図を示した図2を用いて説明する。
【0004】
従来の色素増感型太陽電池は、ガラス基板(4a)の内側に、透明導電膜(5a)をコートし、その上に金属酸化物多孔質膜(6)を形成し、金属酸化物多孔質膜(6)を構成する金属酸化物微粒子(9)の表面に、色素(10)を吸着させ、もう一枚の透明導電性膜(5b)をコートしたガラス基板(4b)との間に、電解液(7)を封入したサンドイッチ構造になっている。使用されている酸化チタン等の金属酸化物微粒子(9)は、短波長の光しか吸収しないので、太陽光を効率よく電気に変えるために、増感剤として色素(10)が用いられている。この色素(10)は光吸収剤として働き、太陽光を吸収して電子を金属酸化物微粒子(9)に注入して、発電が行われる。
【0005】
シリコン太陽電池の場合には、シリコンのpn接合によってバンドの勾配が形成され、光照射によって生成した電子と正孔が内部電界によって分離され、起電力が発生する。
【0006】
これに対して、色素増感型太陽電池は、太陽光で励起された色素(10)の電子のみが金属酸化物微粒子(9)に注入され、電子と正孔の再結合による損失がほとんどない。そして、金属酸化物微粒子(9)に電子注入したことにより酸化された色素(10)は、電解液(7)に存在するドナーによって速やかに還元され、初期状態へ戻る。
【0007】
シリコン太陽電池では、光エネルギーの吸収と電子の伝達が、同じシリコン半導体の中で行われているのと異なり、前述のように色素増感型太陽電池の場合には、光エネルギーの吸収と電子の伝達が、別々のところで行われており、植物がクロロフィルで光エネルギーを吸収し、細胞膜の中のメディエーターで電子を伝達しているのと、よく似た構造になっている。
【0008】
この型の太陽電池は電解液を用いるため、湿式太陽電池と呼ばれ、特に、色素を増感剤として用いるため、色素増感型太陽電池と呼ばれる。
【0009】
グレッツェル等は、ナノスケールの酸化チタン微粒子を焼結した多孔質の酸化チタン膜を用いることにより、表面積を投影面積の約1000倍とし、酸化チタン膜と相性が良く、太陽光を効率よく吸収するルテニウム錯体(RuL2(NCS)2、L=4,4'-ジカルボキシ-2,2'ビピリジン)を用いたことで、AM1.5(エアマス1.5:地球の中経度における太陽スペクトルの太陽光)の太陽光に対して、10%の変換効率を得ている。このとき、電解液は、アセトニトリル90体積%と、3メチル2オキサゾリジノン10体積%との混合溶媒に、ヨウ素とヨウ化リチウムを加えたもので、I-/I3 -酸化還元対として働いている(M.K.Nazeeruddin et al., J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 6382、および特開平1−220380号公報)。
【0010】
しかしながら、色素増感型太陽電池モジュールを屋根に設置する場合、色素増感型太陽電池モジュールは、ほとんどすべてが平面状であり、また、この色素増感型太陽電池セルを複数組み合わせて、大面積の太陽電池を構成しようとすると、配線の取り出しや、外装上の諸部材により、互いに隣接配置される間に、光電変換に寄与しない額縁部分の形成が必要であり、設置面積に対して光電変換のための有効面積が減少してしまう。従って、個人住宅で実用に供するためには、屋根の広さで制限を受けるため、実用レベルの変換効率の達成には、さらなる光電変換効率の向上が望まれていた。
【0011】
シリコン太陽電池においては、住宅の屋根に太陽電池モジュールを設置した時の発電能力を高める方法として、例えば特開平6−120547号公報に、互いに平行な上下両表面間に太陽電池セルが透明材料で封止されている太陽電池モジュールが記載されている。前記太陽電池セルは、前記両表面に対して傾斜した状態で配置させ、太陽電池モジュールが取り付けられる屋根の傾斜角度に対応して、太陽電池セルの傾斜角度を所要の角度とすることで、太陽電池セルを水平にすることができ、これにより、太陽電池モジュールによる発電能力を、年間を通じて最大にすることができる。
【0012】
一方、色素増感型太陽電池においては、特開2002−260746号公報の図1に示されるように、半導体電極(2)、およびその受光面(F2)の上に配置された透明電極(1)を有する光電極(WE)と、対極(CE)と、スペーサー(S)により光電極(WE)と対極(CE)との間に形成される間隙に充填される電解質(E)とから構成される色素増感型太陽電池が記載されている。透明電極(1)の受光面(F1)の法線方向から、半導体電極(2)の受光面(F2)に入射する光の入射角を30〜80°となるように、半導体電極(2)を断面方向から見て鋸歯状に形成し、透明電極(1)と半導体電極(2)との接触面(F2)も、半導体電極(2)の形状に合わせて鋸歯状に溝を形成する。また、外部から透明電極の受光面に入射する光の進行方向を変化させるライトガイド手段を形成し、透明電極内を進行して前記半導体電極の受光面に、前記同様、斜め入射するように構成することで、光が半導体電極に垂直に入射する場合に比較して入射光利用率が向上し、単位有効面積当たりの発電量が向上した色素増感型太陽電池が提案されている。この発明では、基板として鋸歯状の断面形状を有した透明電極基板を必要とし、対極も同様の透明電極基板を必要とすることから、製造コストの上昇を招いてしまう。また、前記鋸歯状の断面形状を有した透明電極を有する光電極と、同様の対極とを、精度よく対向させることが必要となり、生産性の観点から問題を有している。
【0013】
また、特開2001−35551号公報には、色素の近傍に金属微粒子を配することが記載されている。。
【0014】
【特許文献1】
特開平1−220380号公報
【0015】
【特許文献2】
特開平6−120547号公報
【0016】
【特許文献3】
特開2002−260746号公報
【0017】
【特許文献4】
特開2001−35551号公報
【0018】
【非特許文献1】
M.K.Nazeeruddin et al., J.Am.Chem. Soc. 1993, 115, 6382
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、設置面積が小さく、投影面積当たりの光電変換効率を向上させることができる色素増感型太陽電池モジュールの提供を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、モジュール支持基板と、複数の色素増感型太陽電池セルと、同数の反射鏡とからなり、前記色素増感型太陽電池セルの1つと、前記反射鏡の1つとが、隣接して対になって配置され、かつ、それぞれが角度をなして向き合うように、前記モジュール支持基板に対して同一の所定角度で傾斜する。
【0021】
前記所定角度が、10〜80°であることが望ましく、45〜80°であることがさらに望ましい。
【0022】
前記色素増感型太陽電池セルは、カソード電極と、アノード電極と、それらの間に充填された酸化還元電解質とからなり、前記カソード電極は、第1の透明基板の内側に、第1の透明導電膜を形成し、第1の透明導電膜の表面には、白金微粒子もしくは炭素微粒子が付着され、前記アノード電極は、第2の透明基板の内側に、第2の透明導電膜および金属酸化物薄膜を順次形成し、該金属酸化物薄膜の表面には、色素を担持することが好ましい。
【0023】
あるいは、前記色素増感型太陽電池セルは、カソード電極と、アノード電極と、それらの間に充填された酸化還元電解質とからなり、前記カソード電極は、第1の透明基板の内側に、第1の透明導電膜を形成し、第1の透明導電膜の表面には、白金微粒子もしくは炭素微粒子が付着され、前記アノード電極は、第2の透明基板の内側に、第2の透明導電膜および金属酸化物薄膜を順次形成し、該金属酸化物薄膜の表面には、色素を担持し、該色素の近傍には、Pt、Pt合金、PdおよびPd合金からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属微粒子を配したことが好ましい。
【0024】
前記金属酸化物薄膜が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化錫(SnO2)、または、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)からなることが望ましい。
【0025】
また、前記色素が、ルテニウム錯体、ポルフィリン錯体、キサンテン系色素、メチン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、またはフェニルメタン系色素であることが望ましい。
【0026】
また、前記酸化還元電解質が、ヨウ素、臭素、または、塩素を含む電解液であるか、ヨウ素、臭素、または、塩素を含む固体伝導体であることが望ましい。
【0027】
また、第1の透明基板および第2の透明基板が、ガラス、PETまたはポリイミドからなることが望ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
色素増感型太陽電池モジュールの設置面積を小さくするには、色素増感型太陽電池の光電変換効率を向上させることが求められる。色素増感型太陽電池では、金属酸化物多孔質膜の膜厚を厚くすることにより、投影面積当たりの表面積を増やすことができ、金属酸化物多孔質膜への吸着色素量を増やすことができ、吸着色素量の増加により光電変換効率も向上する。しかしながら、実際には、金属酸化物多孔質膜の膜厚を厚くしても、ある値以上には光電変換効率は向上しない。この現象は、透明導電膜から遠い金属酸化物に、色素から電子が注入されても、透明導電膜に捕集されるまでに、ジュール熱として消費されるためと考えられている。この問題の解決のため、金属酸化物に導電性を持たせたり、導電物質を混合することが考えられる。また、捕集電極を金属酸化物多孔質膜内に形成する試みもあるが、作製プロセスが複雑となることが問題になる。
【0029】
そこで、本発明者は、金属酸化物多孔質膜内で光路長を長くでき、透明導電膜までの距離が短くなる構造に注目し、研究を進めた。
【0030】
図5に、色素増感型太陽電池セルの相対短絡電流密度(△)、色素増感型太陽電池セルに反射鏡を対向させた色素増感型太陽電池モジュールの相対短絡電流密度(○)、アモルファスシリコン(a−Si)太陽電池セルの相対短絡電流密度(□)、太陽光に対する色素増感型太陽電池セル、色素増感型太陽電池モジュールおよびアモルファスシリコン(a−Si)太陽電池セルの相対投影面積(実線)を示す。
【0031】
入射角θ(°)が増加するにつれて、相対投影面積(実線)は、COSθで減少する。アモルファスシリコン(a−Si)太陽電池セルの相対短絡電流密度(□)も、相対投影面積の変化に対応して減少していく。この時、相対投影面積の変化より若干低めに出ているのは、入射角の増加とともに表面での反射ロスが増加していくためである。一方、色素増感型太陽電池セル、色素増感型太陽電池モジュールの相対短絡電流密度(△)、(○)は、入射角30°でもほとんど変化しない。色素増感型太陽電池セルの相対短絡電流密度(△)は、40°付近で低下がみられるが、相対投影面積(実線)の減少に比べて小さい。これは、見かけ上、変換効率が向上していることを示している。
【0032】
これらのことより、傾斜角が10°よりも小さいと、平板状に設置した時と変わらない特性および投影面積当たりの表面積しか得られないし、一方、80°を超えると、設置面積を小さくすることはできるが、入射光を有効に利用できず、利用効率を高くすることができないことがわかる。
【0033】
さらに、色素増感型太陽電池セルに角度をつけて反射鏡を対向させた色素増感型太陽電池モジュールの場合(○)、入射角が30°までは、反射鏡の効果がないが、入射角が30°を超えると、対向する反射鏡で反射した光が、対向する色素増感型太陽電池セルに入射され、発電に寄与する。入射角が45°までは、角度の増加とともに単調に反射光成分が増えてくる。入射角が45°を境として、色素増感型太陽電池セルと反射鏡の間での多重反射成分も寄与するようになり、入射角の増加とともに、急激に光閉じ込め効果が顕著となり、発電効率が増大する。
【0034】
この発電効率の増大を、単位面積あたりの増強率(相対短絡電流/相対投影面積)で表したものが、図6である。
【0035】
アモルファスシリコン(a−Si)太陽電池セルの増強率(□)は60度まで1より少し下回り、傾斜させることによる利得はない。さらに、70度以上では大きく1を下回っている。一方、色素増感太陽電池セルでは、傾斜させることにより入射光路長が電子の移動距離より長くなる効果により、最大30%の利得が得られる(△)。この色素増感太陽電池セルに、さらに反射鏡を対向させることにより(○)、入射角が30°付近から、入射光路長が電子の移動距離より長くなる効果に加えて、反射の効果が現れ、入射角が45°からは、多重反射効果も加わり、急激に利得が増え、入射角が70°付近では、約3倍に達する。反射鏡が、投影面積の半分を占めていることを考えると、単位面積あたり約1.5倍の利得となる。また、投影面積の半分は、色素増感太陽電池セルではなく反射鏡でよいため、コストがほぼ半分になるメリットがある。
【0036】
すなわち、色素増感型太陽電池セルを傾斜させても、投影面積当たりの光電流を大きく減少させず、さらに、色素増感型太陽電池セル1つと、反射鏡1つとを対として、モジュール支持基板の平面に対してそれぞれ同一傾斜角度で向かい合わせて設置することにより、反射鏡による太陽光反射光を、有効に色素増感型太陽電池セルに入射させることができ、投影面積当たりでは変換効率を向上させ、かつ、必要な電力を得るために設置する色素増感型太陽電池モジュールの枚数を減らすことができることを見出した。
【0037】
本発明にかかる短冊状の色素増感型太陽電池セルの構成について、断面図を示した図2を用いて説明する。
【0038】
短冊状色素増感型太陽電池は、ガラス基板(4b)と、透明導電膜(例えば、フッ素ドープ酸化錫)(5b)と、該透明導電膜(5b)に付着させた白金微粒子もしくは炭素微粒子(8)とからなるカソード電極、ガラス基板(4a)と、透明導電膜(例えばフッ素ドープ酸化錫)(5a)と、該透明導電膜(5a)の上に形成した多孔質の金属酸化物多孔質薄膜(6)と、該金属酸化物多孔質薄膜(6)を構成する金属酸化物微粒子(9)の表面に担持した色素(10)とからなり、光電極であるアノード電極、および酸化還元電解質(7)で構成される。
【0039】
酸化還元電解質(7)は、ヨウ素系電解液であるアセトニトリル90体積%と、3メチル2オキサゾリジノン10体積%との混合溶媒に、ヨウ素とヨウ化リチウムを加えたものであり、ヨウ素酸化還元対(I3 -/I-)として働き、カソード電極とアノード電極との間の電子移動に寄与している。
【0040】
金属酸化物微粒子(9)は、例えば酸化チタン微粒子で形成することができる。
【0041】
色素(10)には、例えばルテニウム錯体からなる色素(10)を用いると、色素(10)が光を吸収して、ルテニウム金属・配位子軌道遷移により励起された電子が、酸化チタンの伝導帯に移り、光電流となり、発電が行なわれる。さらに、前述の特開2001−35551号公報に記載するように、色素(10)の近傍に金属微粒子を配することによって、さらに特性を向上させた色素増感型太陽電池セルが一層好ましい。このような金属微粒子には、Pt、Pt合金、Pd、またはPd合金からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属微粒子を用いることが好ましい。これは、該金属微粒子が、ハロゲン系の酸化還元電解液と反応して溶解することがなく、前記金属微粒子を配することによって、Ru色素の吸光度に比べ、吸光度が可視光から近赤外領域にかけて増強されるからである。
【0042】
図3は、従来と同様に、短冊状色素増感型太陽電池セルに、垂直に太陽光が入射した場合を示す断面図である。発電に寄与する入射光の光路長(11)は、金属酸化物多孔質膜(6)の厚さであり、透明導電膜(5a)より最も遠い位置からの電子移動の最短距離(12)も、金属酸化物多孔質膜(6)の厚さと同じである。
【0043】
図4は、本発明のように、短冊状色素増感型太陽電池セルに、角度θをもって太陽光が入射した場合を示す断面図である。色素増感型太陽電池セルに、受光面ガラス基板の法線方向から角度θだけ傾いて太陽光が入射したことになり、発電に寄与する入射光の光路長(11)は、(金属酸化物多孔質膜(6)の厚さ)/COSθとなり、傾斜角θが大きくなるほど、入射光の光路長(11)は長くなる。しかし、透明導電膜(5a)より最も遠い位置からの電子移動の最短距離(12)は、金属酸化物多孔質膜(6)の厚さのままである。
【0044】
このとき、垂直入射光を受光する図3に対し、傾斜角θで斜め入射させる図4の場合に、金属酸化物多孔質膜(6)の膜厚が、見かけ上、厚くなったことになり、一方、金属酸化物多孔質膜(6)の表面で、色素から注入された電子は、入射光方向ではなく最短の膜厚方向に流れるので、ジュール熱による損失は、色素増感型太陽電池セルを角度θだけ傾けても、変わらない。
【0045】
さらに、端部では光路長を長くすることができず、この効果は得られない。従って、酸化物多孔質膜(6)の膜厚に比べて、斜面部が十分長いことが重要である。そのため、前記課題を解決するための本発明の色素増感型太陽電池モジュールでは、短冊状の色素増感型太陽電池セルを、角度をつけて並べる。
【0046】
このように、短冊状色素増感型太陽電池セルを、角度をつけて並べる色素増感型太陽電池モジュールにより、同一性能の色素増感型太陽電池セルで、設置面積を小さくすることができる。この効果は図5に示したようにアモルファスシリコン(a−Si)太陽電池では起こらず、色素増感型太陽電池特有の効果である。
【0047】
本発明では更に、短冊状の色素増感型太陽電池セルと、短冊状の反射鏡の複数の対を、平坦なモジュール支持基板に対して同一角度で傾斜させ、それぞれの短冊状の色素増感型太陽電池セルと短冊状の反射鏡とを向かい合わせて設置し、色素増感型太陽電池モジュールを構成する。この時、前記角度は、10〜80°とすることが望ましく、さらには、45〜80°とすることが望ましい。角度が10°よりも小さいと、平板状に設置した時と変わらない特性と設置面積しか得られない。一方、角度が80°を超えると、設置面積を少なくすることはできるが、入射光を有効に利用できず、利用効率を高くすることができない。45°以上では、前述のように光閉じ込め効果により、発電効率が増大する。
【0048】
本発明の色素増感型太陽電池モジュールの構造を、図面を用いて説明する。
【0049】
図1は、本発明の色素増感型太陽電池モジュールを示す斜視図である。
【0050】
本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、短冊状の色素増感型太陽電池(1)と、短冊状の反射鏡(2)の複数の対を、平坦なモジュール支持基板(13)に対し同一角度で傾斜させて配置し、それぞれの短冊状の色素増感型太陽電池セル(1)と、短冊状の反射鏡(2)とを向かい合わせて設置したことを特徴としている。この場合、反射鏡(2)の受光面からの太陽光反射光を、短冊状の色素増感型太陽電池(1)で受光することができるため、太陽光を有効利用することができ、投影面積当たりの変換効率を向上させ、かつ、必要な電力を得るための色素増感型太陽電池の枚数を減らすことができる。
【0051】
以上のように説明した本発明により、同一性能の色素増感型太陽電池セルで、特に、受光部に特殊な形状を形成したり、特殊な部材を配置することなく、設置面積が小さく、投影面積当たりの光電変換効率を向上させることができるとともに、太陽光反射光をも有効利用することのできる色素増感型太陽電池モジュールを提供することができる。
【0052】
【実施例】
本発明を、以下の実施例により説明する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
以下の条件で、本発明の色素増感型太陽電池モジュールを構成し、その特性を評価した。
【0054】
短冊状色素増感型太陽電池セルについて、透明導電膜を形成した透明基板には市販のフッ素ドープSnO2ガラス(日本板硝子製、導電層膜厚450nm)を用いた。金属酸化物の薄膜には、酸化チタンとして平均粒径15nmのTiO2ペースト(Solaronix社製)を用いた。
【0055】
フッ素ドープSnO2ガラスの上に、酸化チタンペーストを塗布し、自然乾燥後、500℃で30分間、電気炉で焼成を行った。一回の塗布で約2μm厚の酸化チタン多孔質膜が形成され、5回の塗布を繰り返すことにより、約10μm厚とした。酸化チタン多孔質膜を、Ru色素溶液に浸漬し、80℃で2時間、還流を行い、酸化チタン多孔質の表面にRu色素を担持した。Ru色素溶液は、エタノールに3×10-4mol/LのRu色素(Solaronix社製、Ruthenium535)を溶解させることにより作製した。以上のようにして、光電極であるアノード電極を形成した。
【0056】
一方、カソード電極は、フッ素ドープSnO2ガラスの表面にスパッタリング法で白金を付着させることにより形成した。
【0057】
カソード電極とアノード電極を対向保持させて電池構造を形成し、間隙に酸化還元電解質を注入した。酸化還元電解質はヨウ素系電解液であり、アセトニトリル90体積%と、3メチル2オキサゾリジノン10体積%との混合溶媒に、ヨウ素とヨウ化リチウムを加えたものである。
【0058】
色素増感型太陽電池モジュールは、1cm×5cmの前記短冊状色素増感型太陽電池セルと、1cm×5cmの反射鏡との3対を、図1のように、モジュール支持基板に対し、同一傾斜角度で向かい合わせて、設置した。傾斜角θは70°とした。投影面積は10cm2であった。
【0059】
本実施例の色素増感型太陽電池モジュールに対して、AM1.5のソーラーシミュレータで1000W/m2の疑似太陽光を照射して、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流150mA、開放電圧0.7Vを得た。短絡電流値を投影面積で割った短絡電流密度は15mA/cm2であった。
【0060】
後述する比較例1の測定結果との比較から、比較例1と同等の性能を得ながら、色素増感型太陽電池モジュールの設置面積を2/3に縮小できることが確認できた。ここで、短絡電流値とは、色素増感型太陽電池モジュールにソーラーシミュレーターを、光軸が垂直となるように配置して、色素増感型太陽電池モジュールの端子を短絡し、光照射したときに測定される電流値を言う。
【0061】
(実施例2)
傾斜角θを80°とした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。投影面積は5.2cm2であった。
【0062】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流77mA、開放電圧0.7Vを得た。短絡電流値を投影面積で割った短絡電流密度は15mA/cm2であった。
【0063】
後述する比較例1の測定結果との比較から、比較例1と同等の性能を得ながら、色素増感型太陽電池モジュールの設置面積を2/3に縮小できることが確認できた。
【0064】
(実施例3)
傾斜角θを60°とした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。投影面積は15cm2であった。
【0065】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流171mA、開放電圧0.7Vを得た。短絡電流値を投影面積で割った短絡電流密度は11.4mA/cm2であった。
【0066】
後述する比較例1の測定結果との比較から、比較例1と同等の投影面積で、短絡電流値は14%向上した。設置面積に換算すると、12%縮小できることが確認された。
【0067】
(実施例4)
傾斜角θを50°とした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。
【0068】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流175mA、開放電圧0.7Vを得た。
【0069】
(実施例5)
傾斜角θを40°とした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。
【0070】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流154mA、開放電圧0.7Vを得た。
【0071】
(実施例6)
傾斜角θを30°とした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。
【0072】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流149mA、開放電圧0.7Vを得た。
【0073】
(実施例7)
傾斜角θを20°とした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。
【0074】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流153mA、開放電圧0.7Vを得た。
【0075】
(実施例8)
傾斜角θを10°とした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。
【0076】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流151mA、開放電圧0.7Vを得た。
【0077】
以上の実施例1〜8と、後述する比較例1とから、反射鏡を対向させることにより10°以上で、比較例1に比べて短絡電流値の増加が確認された。
【0078】
(比較例1)
傾斜角θを0°、すなわち、平面状にした以外は、実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池モジュールを作製した。投影面積は15cm2であった。
【0079】
実施例1と同様に、電流電圧特性を測定した結果、短絡電流150mA、開放電圧0.7Vを得た。
【0080】
短絡電流値を投影面積で割った短絡電流密度は10mA/cm2であった。
【0081】
【発明の効果】
本発明により、設置面積が小さく、投影面積当たりの光電変換効率を向上させることができ、太陽光反射光をも有効利用可能で、必要な電力を得るための色素増感型太陽電池セルの使用枚数を削減でき、安価な色素増感型太陽電池モジュールを提供可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の色素増感型太陽電池モジュールを示す斜視図である。
【図2】 色素増感型太陽電池セルを示す断面図である。
【図3】 短冊状色素増感型太陽電池セルに、垂直に太陽光が入射した場合を示す断面図である。
【図4】 短冊状色素増感型太陽電池セルに、角度θをもって太陽光が入射した場合を示す断面図である。
【図5】 相対短絡電流密度および相対投影面積の入射角依存性を示すグラフである。
【図6】 短絡電流密度増強率の入射角依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 短冊状色素増感型太陽電池セル
2 反射鏡
3 色素増感型太陽電池モジュール
4a、4b ガラス基板
5a、5b 透明導電膜
6 金属酸化物多孔質膜
7 酸化還元電解質
8 白金微粒子もしくは炭素微粒子
9 金属酸化物微粒子
10 色素
11 金属酸化物多孔質膜中での光路長
12 金属酸化物多孔質膜の膜厚
13 モジュール支持基板
θ 傾斜角
Claims (8)
- モジュール支持基板と、複数の色素増感型太陽電池セルと、同数の反射鏡とからなる色素増感型太陽電池モジュールであって、前記色素増感型太陽電池セルは、カソード電極と、アノード電極と、それらの間に充填された酸化還元電解質とからなり、前記カソード電極は、第1の透明基板と、第1の透明基板の内側に形成され、表面に白金微粒子もしくは炭素微粒子が付着している第1の透明導電膜とからなり、前記アノード電極は、第2の透明基板と、第2の透明基板の内側に順次形成されている第2の透明導電膜および金属酸化物薄膜とからなり、該金属酸化物薄膜の表面に、色素が担持されており、短冊状に形成された前記色素増感型太陽電池セルの1つと、短冊状に形成された前記反射鏡の1つとが、隣接して対になって配置され、かつ、それぞれが斜面部高さを同じにして角度をなして向き合うように、前記モジュール支持基板に対して45〜80°の角度で同一に傾斜していることを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
- 前記傾斜角が50°以上である請求項1に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 前記金属酸化物薄膜の表面に担持されている前記色素の近傍に、Pt、Pt合金、PdおよびPd合金からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属微粒子が配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 前記金属酸化物薄膜が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化錫(SnO2)、または、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)からなることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 前記色素が、ルテニウム錯体、ポルフィリン錯体、キサンテン系色素、メチン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、またはフェニルメタン系色素であることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 前記酸化還元電解質が、ヨウ素、臭素、または、塩素を含む電解液であることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 前記酸化還元電解質が、ヨウ素、臭素、または、塩素を含む固体伝導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 第1の透明基板および第2の透明基板が、ガラス、PETまたはポリイミドからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の色素増感型太陽電池モジュール。
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