JP4311304B2 - 内燃機関用過給システム - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関用過給システムに関する。
従来から、内燃機関用過給システムとして、ターボ過給機に電気モータを付設してターボ過給機の過給をアシストするものが知られている(特許文献1)。また、タービン入口の断面積を変更可能な可変ノズル式のターボ過給機も知られている。その他本発明と関連する先行技術文献として、特許文献2〜4が存在する。
特開平5−240058号公報 特開平1−313626号公報 特開平5−098987号公報 特開平6−288243号公報
これらの文献には、可変ノズル式のターボ過給機と、これによる過給をアシストするアシスト手段とを組合わせ、可変ノズルの開度制御とアシスト手段の動作制御とを効果的に実行する過給システムは開示されていない。
そこで、本発明は、可変ノズルの開度制御とアシスト手段の動作制御とを効果的に実行することにより、目標過給圧の上昇に対する実過給圧の応答遅れが生じる過渡状態のときに十分な過渡性能を得ることが可能な内燃機関用過給システムを提供することを目的とする。
本発明の過給システムは、タービン入口の断面積を変更可能な可変ノズル式のターボ過給機と、電気モータを作動して前記ターボ過給機による過給をアシストする過給アシスト手段と、前記電気モータによるアシスト量及び前記ターボ過給機のノズル開度を制御する制御手段と、を備えた内燃機関用過給システムにおいて、前記制御手段は、目標過給圧の上昇に対する実過給圧の応答遅れが生じる過渡状態のとき、前記ターボ過給機のノズル開度を所定期間最小開度に制御するとともに、前記ノズル開度の前記最小開度への制御の開始に合わせて前記電気モータを作動して過給をアシストするものであり、前記制御手段は、前記実過給圧が前記目標過給圧に達する前の第1設定圧まで上昇したことを条件として前記所定期間が終了したものと判断し、当該所定期間の終了後は前記内燃機関の運転状態に応じた前記ノズル開度の増加を許容するとともに、前記所定期間中にて前記実過給圧が前記第1設定圧よりも低い第2設定圧に達するまで前記電気モータによるアシストを継続し、前記実過給圧が前記第2設定圧まで上昇すると、以降は前記過給に対するアシスト量が減少するように前記電気モータを制御する、ことにより上述した課題を解決する(請求項1)。
この発明によれば、過渡状態のときにターボ過給機のノズル開度を所定期間最小開度に制御されるので、過給圧の立ち上がりを早めることができる。しかも、このノズル開度の最小開度への制御の開始に合わせて電気モータにてターボ過給機による過給がアシストされるので、過給圧の立ち上がりが更に早まる。これにより、過渡性能を大きく向上できる。
また、制御手段は、過給圧が目標過給圧に達する前の第1設定圧まで上昇したことを条件として所定期間が終了したものと判断し、当該所定期間の終了後は内燃機関の運転状態に応じた前記ノズル開度の増加を許容するから、目標過給圧よりも低い第1設定圧に達したときにノズル開度の低減制御が終了することになるので、実過給圧が目標過給圧を超えるオーバーシュートを防止することができる。
給のアシストはノズル開度の制御と比べて電気エネルギーの消費が多いので、電気エネルギーの消費の観点からは過給のアシストを早めに切り上げることが有利である。本発明に係る第2設定圧は第1設定圧よりも低いので、ノズル開度の最小開度への制御の終了よりも先にアシスト量が減少する。これにより、ノズル開度の最小開度への制御の終了と同時に過給のアシストを終了する場合と比較して、無駄なアシストを避けることができるので、電気エネルギーの消費を抑えることができる。本発明の過給システムにおいては、前記実過給圧が前記第1設定圧まで上昇した時点で前記電気モータを停止させてもよい(請求項)。
本発明の過給システムにおいて、内燃機関の排気通路から吸気通路へ排気ガスを還流させるEGR通路と、前記EGR通路を流れる排気ガスの流量を調整するEGRバルブと、前記EGRバルブの開度を制御するEGRバルブ制御手段とを備え、前記内燃機関の運転状態が大量EGR領域から非EGR領域へ移行する際に、前記制御手段は、前記EGR通路の前記吸気通路側の圧力が前記EGR通路の前記排気通路側の圧力よりも高い状態となるように、前記電気モータを作動して過給をアシストするとともに前記ノズル開度を開き側に制御し、前記EGRバルブ制御手段は、前記吸気通路内のガスが前記EGR通路を介して前記排気通路に導かれるように、前記EGRバルブの開度を制御してもよい(請求項)。この形態によれば、EGR通路の吸気通路側の圧力が排気通路側の圧力よりも高い状態でEGRバルブが開かれるため、大量EGR領域から非EGR領域へ移行の際に吸気通路やEGR通路に残留する排気ガスが排気通路へ導かれて吸気通路やEGR通路が掃気される。よって、非EGR領域への移行後、次サイクルの吸気が空気のみとなるため、移行過渡時に吸気通路やEGR通路に残留する排気ガスを原因としたスモークの発生を抑えることができる。
以上説明したように本発明によれば、目標過給圧の上昇に対する実過給圧の応答遅れが生じる過渡状態のとき、ターボ過給機のノズル開度が所定期間最小開度に制御されるとともに、この制御の開始に合わせて電気モータを作動して過給がアシストされるので、過渡性能を大きく向上できる。
(第1の実施形態)
図1は本発明の多段過給システムを内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下エンジンという)1に適用した一実施形態を示した全体構成図である。エンジン1はシリンダブロック2に設けられた4つの気筒3に接続された吸気マニホールド4及び排気マニホールド5をそれぞれ備え、吸気マニホールド4には吸気通路6が、排気マニホールド5には排気通路7がそれぞれ接続されている。吸気通路6には、ターボ過給機8のコンプレッサ8aが設けられ、排気通路7には、ターボ過給機8のタービン8bが設けられている。コンプレッサ8a及びタービン8bは互いに回転軸(不図示)を介して連結されている。
ターボ過給機8はタービン8bの入口の断面積を変更可能な可変ノズル式のターボ過給機である。タービン8bの入口部には複数の可動ベーン8c・・・8cが配置され(図1では模式的に示す)、これにより可変ノズルが構成される。可動ベーン8cの傾きを変更して可変ノズルの開口面積(ノズル開度)を変化させることにより、タービン8bの入口の断面積を変更できる。周知のように、ノズル開度を閉じ側とする(絞る)ことにより、過給圧を上げることができ、反対にノズル開度を開き側にすることにより、エンジン1の背圧を下げることができる。可変ノズル(可動ベーン8c)を動作させるための機構は周知のものと同様でよいのでここでは詳細を省略する。ターボ過給機8は、後述するエンジンコントロールユニット(ECU)20の指示に応じて所定のノズル開度に制御される。
ターボ過給機8には、コンプレッサ8aの駆動をアシストするために、電気モータ9を備えた過給アシスト手段が設けられている。これにより、電気モータ9を作動してターボ過給機8による過給をアシストすることができる。電気モータ9はバッテリ10と接続され、駆動電力としてバッテリ10の電力が用いられる。駆動電力はECU20の指示に応じて調整され、これにより過給に対するアシストの程度(アシスト量)が制御される。
エンジン1にはオルタネータ11が取り付けられている。周知のように、オルタネータ11はバッテリ10から供給される電力を用いて磁界を作り、エンジン1により図示しないロータを駆動して発電を行う。発電された電力は、バッテリ10を充電するために用いられる。オルタネータ11は、図示しない制御回路を備えており、この制御回路により発電を行う発電状態と発電を行わない非発電状態とを選択することができる。発電量の制御はECU20の指示に応じて制御回路にて適宜に行われる。
その他、エンジン1には、コンプレッサ8aの上流側の吸気通路6に設けられ吸気の異物を除去するエアクリーナ12と、コンプレッサ8aの下流側に設けられ圧縮された吸気を冷却するインタークーラ13と、タービン8bの下流側の排気通路7に設けられ排気ガスを浄化する排気浄化装置14と、排気ガスを吸気系に還流するためのEGR装置15と、が設けられている。排気浄化装置14は排気ガス中の粒子状物質と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化可能な装置である。EGR装置15は、EGR通路16と、EGR通路16を流れる排気ガスの流量を調整するEGRバルブ17と、EGR通路16を流れる排気ガスを冷却するEGRクーラ18と、を有している。EGR通路16はタービン8bよりも上流の排気通路7を構成する排気マニホールド5に設定された排気ガスの取出口16aと、コンプレッサ8bの下流の吸気通路6を構成する吸気マニホールド4に設定された排気ガスの導入口16bとを連通する、いわゆるハイプレッシャループを構成するように設けられている。EGRバルブ17はその開度をECU20の指令に従って調整できる周知の電磁制御弁である。なお、吸気通路6のコンプレッサ8aと導入口16bとの間には吸入空気量を調整するスロットル弁が設けられてもよい。その場合、スロットル弁の開度によりEGR率(EGR量)を制御することができる。
本実施形態に係る過給システムは、ECU20により制御される。ECU20はマイクロプロセッサ、ROM、RAM等の周辺装置を備えたコンピュータユニットとして構成され、各種パラメータに基づいてエンジン1を適正な運転状態に制御する。本実施形態の過給システムは、エンジン1の機関回転数(回転速度)を検出する回転数センサ21、図示しないアクセルの開度や開度変化等の位置情報を検出するアクセル開度センサ22、バッテリ10の電圧を検出する電圧センサ23、電気モータ9の温度を検出するモータ温度センサ24、及び吸気マニホールド4内の圧力(過給圧)を検出する過給圧センサ25をそれぞれ備えている。これらのセンサは、対象となる物理量を直接検出してもよいし、他の物理量から推定してもよい。これらのセンサは、それぞれECU20に接続されており、各センサの入力情報は以下に述べる制御に利用される。
図2は、本実施形態に係る制御の一例を示したタイミングチャートである。この図においては、過給圧、ターボ過給機8のノズル開度、及び電気モータ9による過給のアシスト量が同一時間軸によりそれぞれ示されている。ECU20は、所定の制御ルーチンに基づいて目標となる過給圧(目標過給圧)と過給圧センサ25により検出された現在の過給圧(実過給圧)との偏差を監視しており、その偏差が所定値以上になった場合に現在の状態を目標過給圧の上昇に対する実過給圧の応答遅れが生じる過渡状態と判断する。なお、目標過給圧の算出は、例えば、目標過給圧にアクセル開度に基づいて算出される燃料噴射量及び機関回転数を対応させたマップをECU20のROMに記憶させ、これを参照することにより実現できる。アクセル開度及び機関回転数は、アクセル開度センサ22及び回転数センサ21からの入力信号に基づいて取得する。
ECU20が過渡状態と判断した場合には、ECU20は、図2に示すようにノズルの開度を最小開度に制御するとともに、この制御の開始に合わせて電気モータ9を作動させて過給に対するアシストを開始する(時刻t1)。この例ではアシスト量は最大(100%)に設定される。過渡状態のときにノズル開度が強制的に最小開度に制御されるとともに、電気モータ9による過給のアシストが行われるため、過給の立ち上がりの遅れが改善される。なお、以後の説明ではノズル開度を最小開度に制御することを最小開度制御という。
最小開度制御の終了は、実過給圧が目標過給圧に達する前の第1設定圧P2まで上昇したことを条件として判断される。この終了が判断された場合には、ECU20はノズル開度の制御を、最小開度制御からノズル開度の通常制御に移行する(時刻t3)。詳細は後述するが、最小開度制御から通常制御に移行することによりノズル開度がエンジン1の運転状態に応じて制御されるため、図2に示したように、ノズル開度の増加が許容される。一方、電気モータ9に対しては、実過給圧が第1設定圧P2よりも低い第2設定圧P1にまで上昇すると(時刻t2)、それ以降、アシスト量が漸次減少するように電気モータ9が制御され、第1設定圧P2に達すると過給のアシストが停止(アシスト量=0)される(時刻t3)。
第1設定圧P2は、目標過給圧に対して実過給圧が十分に近づいたとみなすことができる圧力として設定される。これにより過給圧のオーバーシュートが防止される。過給のアシストは電気エネルギを消費するので、可能な限り無駄なアシストを避ける必要がある。このため、本実施形態では第2設定圧力P1は第1設定圧力P2よりも低い値に設定され、アシスト量の減量が最小開度制御から通常制御への切り替えよりも先に開始されるように制御される。
以上の制御は、例えば図3及び図4に示す制御ルーチンを実行することにより実現される。図3はECU20が過渡状態であると判定した場合に実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートであり、図4は図3の制御ルーチンと並行して実行される制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。これらの制御ルーチンは、ECU20のROM等に格納されたプログラムに従って繰り返し実行される。これにより、ターボ過給機8のノズル開度及び電気モータ9を制御する本発明の制御手段としてECU20を機能させることができる。図3に示したように、ECU20は、まずステップS1において過渡制御フラグがセットされているか否かを判定する。過渡制御フラグは、制御状態の判別に用いられるものであり、ECU20のRAMに作業領域として割り当てられている。従って、ECU20は過渡制御フラグを参照することにより制御状態を判別することができる。過渡制御フラグがセットされている場合は、最小開度制御が既に行われていることになるので、以降の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
一方、ステップS1において過渡制御フラグがセットされていない場合には、ECU20は最小開度制御を実行し(ステップS2)、次いで、最小開度制御の開始に合わせて過給に対するアシストが行われるように電気モータ9を制御する(ステップS3)。ステップS3では、アシスト量が最大となるように電気モータ9が作動制御される。次いで、ECU20はステップS4において上述した過渡制御フラグをセットして今回のルーチンを終了する。
次に、図3と並行して実行される図4の制御ルーチンについて説明する。このルーチンは、図3の制御ルーチンにより開始された最小開度制御(ステップS2)及び過給のアシスト(ステップS3)の終了を判断するものである。まず、ECU20は、ステップS5において過渡制御フラグがセットされているか否かを判定する。過渡制御フラグがセットされていない場合には、図3の最小開度制御及び過給のアシストが開始されていないことになるので、以降の処理をスキップして今回のルーチンを終える。一方、過渡制御フラグがセットされている場合には、ECU20は続くステップS6において、過給圧センサ25からの入力信号を参照して実過給圧を取得し、その実過給圧が上述した第2設定圧P1に達しているか否かを判定する。実過給圧が第2設定圧P1に達していない場合には、過給のアシストを続行すべく以降の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。一方、実過給圧が第2設定圧P1に達した場合には、ECU20は処理をステップS7に進め、アシスト量を実過給圧に応じて減量し、減量したアシスト量にて過給のアシストが実行されるように電気モータ9の作動を制御する。図2のように、アシスト量を一定の割合で減量してもよいし、減量の割合を変化させてアシスト量を減量してもよい。
次に、ECU20はステップS8において、実過給圧が上述した第1設定圧P2に達しているか否かを判定する。第1設定圧P2に達していない場合は、最小開度制御を続行するため以降の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。一方、第1設定圧P2に達した場合には最小開度制御の終了を判断して、ノズル開度の制御を通常制御に移行する(ステップS9)。そして、過給のアシストが停止されるように電気モータ9を制御する(ステップS10)。次いで、ECU20はステップS11において、過渡制御フラグをクリアして今回のルーチンを終了する。
次に、本実施形態に関連する他の制御について補足的に説明する。
[ノズル開度の通常制御]
ノズル開度の通常制御は、上述した最小開度制御の実行中以外に行われる。この通常制御の一例として、ECU20はエンジン1の運転状態に応じたノズル開度のフィードバック制御を行う。このフィードバック制御の基礎となるノズル開度(ベース開度)は予めエンジン1の運転状態に応じて設定される。例えば、ノズル開度に機関回転数と燃料噴射量とを対応させたマップをECU20のROMに記憶させておき、このマップを参照することによってベース開度を算出してもよい。そして、ECU20は目標過給圧と実過給圧との差に応じたフィードバック量を算出し、算出されたフィードバック量をベース開度に加えることにより最終的なノズル開度の指令値を求める。この指令値をターボ過給機8に指示することにより適正なノズル開度に制御される。
[電気モータの通常制御]
上述した過渡状態以外の通常時においては、ECUは目標過給圧に対する実過給圧の不足分に基づいてアシスト量の要求値を算出し、その要求値にて過給のアシストが実行されるように電気モータ9の動作を制御している。このアシスト量の要求値の算出は、例えば、アシスト量の要求値に目標過給圧と実過給圧との差を対応付けたマップを予めECU20のROMに記憶させておき、これを参照することにより実現してもよい。これにより、目標過給圧に対する実過給圧の不足分に応じた過給のアシストが実行される。
[オルタネータの動作制御]
本実施形態においては、オルタネータ11の動作をエンジン1の機関回転数に応じて制御してもよいし、過給のアシスト、つまり電気モータ9の作動の開始に合わせてオルタネータ11を非発電状態としてもよい。オルタネータ11を非発電状態とした場合には、エンジン1の負荷(フリクション)が低減されるのでエンジン1の回転数が早期に上昇する。従って過給のアシストによる加速性能の向上効果を更に高めることができる。
[EGR装置の制御]
過給のアシスト中においては、EGR通路16の導入口16bの圧力がEGR通路16の取出口16aの圧力よりも高くなる場合がある。この状態でEGRバルブ17が開かれると吸気がEGR通路16を介して排気通路7に抜けるおそれがある。このような問題を回避するため、本実施形態では、過給のアシスト中においてEGRバルブ17を閉じるようにECU20にて制御されている。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る過給システムの第2の実施形態について説明する。この実施形態の過給システムは図1に示したエンジン1に適用され、基本構成は第1の実施形態と同一である。従って基本構成については図1が参照される。第1実施形態との相違点は、上述した過渡状態において、過給のアシスト中に電気モータ9の作動を制限すべき要因が生じた場合、その要因に応じてアシスト量が制限されることである。
図5は、本実施形態に係る制御ルーチンを示したフローチャートである。この制御ルーチンは、第1の実施形態の図4の制御ルーチンに対応し、図3に示したルーチンと並行して実行される。図5から明らかなように、本実施形態の制御ルーチンは、図4のステップS5とステップS6の間にステップS21とステップS22とを追加したものであり、その他は図4と同一である。以下、図4と同一処理についての説明は適宜省略し、追加した処理について詳細に説明する。図5において、ステップS5にて過渡制御フラグがセットされていると判定した場合には、ECU20は処理をステップS21に進めて電気モータ9の作動を制限すべき要因(制限要因)が生じたか否かを判定する。制限要因として、種々の要因を挙げることができるが、本実施形態では、電気モータ9の温度(モータ温度)が所定温度を超えて上昇した場合、又はバッテリ10の電圧(バッテリ電圧)が所定電圧以下に低下した場合に制限要因が生じたものと判断する。モータ温度はモータ温度検出手段としてのモータ温度センサ24から、バッテリ電圧は電圧検出手段としての電圧センサ23からそれぞれ検出される。所定温度や所定電圧は適宜に設定すればよい。本実施形態では、所定温度として、電気モータ9が正常に作動できる上限温度よりも低い値を、所定電圧として、ECU20がリセットする下限電圧よりも高い電圧をそれぞれ設定した。
ステップS21で制限要因の発生を判定した場合には、ECU20は処理をステップS22に進める。ステップS22では、次式によりアシスト量を算出し、その算出したアシスト量にて過給のアシストが実行されるように電気モータ9の動作を制御する。
アシスト量=Min(マップ値,バッテリ電圧F/B値)×モータ温度補正係数
ここで、マップ値とは、上述したアシスト量の要求値であり、目標過給圧に対する実過給圧の不足分に基づいて定められる値である。バッテリ電圧F/B値とは、バッテリ電圧を所定電圧以上に維持する観点から許容されるアシスト量の限界値であり、電圧センサ23により検出される電圧をフィードバックして算出されるアシスト量である。モータ温度補正係数とは、モータ温度の所定温度からの上昇度に応じた低減率であり、温度が高くなるにつれて小さくなるように設定されている。
上記の式によれば、マップ値又はバッテリ電圧F/B値のいずれか小さい値がアシスト量の算出の基礎となるので、過給のアシストによる許容範囲を超えたバッテリ10の電圧降下を防止できる。更に、この基礎となる値にモータ温度補正係数を乗じて最終的なアシスト量が算出されるので、許容範囲を超えた電気モータ9の温度上昇を防止することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る過給システムの第3の実施形態について説明する。本実施形態の基本構成は上記実施形態と同一である。従って基本構成については図1が参照される。以下上述した実施形態との相違点のみを説明する。
この形態のエンジン1は通常の燃焼とは異なる予混合圧縮着火燃焼や低温燃焼等の燃焼制御が可能であり、ECU20はEGRバルブ17に対する開度制御の一つとして、これらの燃焼形態に合わせてEGR量を大幅に増量する制御が行われている。ECU20は、EGR量の増量領域(大量EGR領域)及びEGRをカットする領域(非EGR領域)を規定したマップをROMに保持している。ECU20はこのマップを参照することにより、EGR量の増量及びそのカットが行われるようにEGRバルブ17の開度を制御する。
エンジン1の運転状態が大量EGR領域から非EGR領域へ移行する際、つまり大幅にEGR量を増量している状態からEGRをカットする状態に移行する際には、ECU20は、(1)電気モータ9を作動し、(2)ノズル開度を開き側に制御し、(3)EGRバルブ17を開くように開度制御する。(1)及び(2)の実行により、EGR通路16の導入口16bの圧力(吸気通路6側の圧力)が取出口16aの圧力(排気通路側の圧力)よりも高い状態となる。そして、この状態でEGRバルブ17が開かれるため、吸気通路6(吸気マニホールド4を含む)やEGR通路16内のガスが排気通路7へ導かれる。その結果、大量EGR領域から非EGR領域へ移行の際に、吸気通路6やEGR通路16に残留する排気ガスが排気通路7へ導かれて吸気通路6やEGR通路16が掃気される。よって、非EGR領域への移行後、次サイクルの吸気が空気のみとなるため、移行過渡時に吸気通路6やEGR通路16に残留する排気ガスを原因としたスモークの発生を抑えることができる。ECU20は以上の制御を実行することにより本発明の制御手段及びEGRバルブ制御手段として機能する。
以上本発明の内燃機関用過給システムについて、上記各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、過給アシスト手段としてターボ過給機の上流又は下流の吸気通路に電気モータを備えた電動コンプレッサを設け、これにより過給アシストを行う態様でもよい。この場合の電気モータの制御は上述した制御ルーチンを適用すればよい。
また、上記実施形態では内燃機関としてのディーゼルエンジン1に本発明を適用したが、内燃機関の形式は問わない。従って、本発明を火花点火式のガソリンエンジンに適用してもよいし、他のガソリンエンジンに適用してもよい。
上記の形態では、EGR通路16をハイプレッシャループを構成するように設けているが、本発明はこれに限らず、EGR通路16の取出口16aをタービン8bの下流、より好ましくは排気浄化装置14の下流に設定し、EGR通路16の導入口16bをコンプレッサ8aの上流に設定して、EGR通路16をいわゆるロープレッシャループを構成するように設けてもよい。この場合、導入口16bの上流の吸気通路6にスロットル弁を設けてもよい。また、上述した第3の実施形態においては、ハイプレッシャループを構成するEGR通路と、ロープレッシャループを構成するEGR通路とを併設し、それぞれのEGR通路にEGR弁及びEGRクーラとを設けてもよい。この場合、吸気通路6から排気通路7への排気ガスの掃気時にはロープレシャループ側のEGR弁を閉じる一方で、ハイプレシャループ側のEGR弁を開くことにより、吸気通路6(吸気マニホールド4を含む)に残っている排気ガスを排気通路6に掃気することができる。
本発明の第1の実施形態係る過給システムの全体構成を示す概略図。 第1の実施形態に係る制御の一例を示したタイミングチャート。 第1の実施形態に係る過給システムの制御ルーチンの概要を示したフローチャート。 図3の制御ルーチンと併行して実行される制御ルーチンの概要を示したフローチャート。 図3の制御ルーチンと併行して実行される第2の実施形態に係る制御ルーチンの概要を示したフローチャート。
符号の説明
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)
8 ターボ過給機
9 電気モータ
10 バッテリ
16 EGR通路
17 EGRバルブ
20 ECU(制御手段、EGRバルブ制御手段)
23 電圧センサ(電圧検出手段)
24 モータ温度センサ(モータ温度検出手段)
P1 第2設定圧
P2 第1設定圧

Claims (3)

  1. タービン入口の断面積を変更可能な可変ノズル式のターボ過給機と、電気モータを作動して前記ターボ過給機による過給をアシストする過給アシスト手段と、前記電気モータによるアシスト量及び前記ターボ過給機のノズル開度を制御する制御手段と、を備えた内燃機関用過給システムにおいて、前記制御手段は、目標過給圧の上昇に対する実過給圧の応答遅れが生じる過渡状態のとき、前記ターボ過給機のノズル開度を所定期間最小開度に制御するとともに、前記ノズル開度の前記最小開度への制御の開始に合わせて前記電気モータを作動して過給をアシストするものであり、
    前記制御手段は、前記実過給圧が前記目標過給圧に達する前の第1設定圧まで上昇したことを条件として前記所定期間が終了したものと判断し、当該所定期間の終了後は前記内燃機関の運転状態に応じた前記ノズル開度の増加を許容するとともに、前記所定期間中にて前記実過給圧が前記第1設定圧よりも低い第2設定圧に達するまで前記電気モータによるアシストを継続し、前記実過給圧が前記第2設定圧まで上昇すると、以降は前記過給に対するアシスト量が減少するように前記電気モータを制御する、ことを特徴とする内燃機関用過給システム。
  2. 前記制御手段は、前記実過給圧が前記第1設定圧まで上昇した時点で前記電気モータを停止させることを特徴とする請求項に記載の過給システム。
  3. 内燃機関の排気通路から吸気通路へ排気ガスを還流させるEGR通路と、前記EGR通路を流れる排気ガスの流量を調整するEGRバルブと、前記EGRバルブの開度を制御するEGRバルブ制御手段とを備え、前記内燃機関の運転状態が大量EGR領域から非EGR領域へ移行する際に、前記制御手段は、前記EGR通路の排気ガスの取出口の圧力が前記EGR通路の排気ガスの導入口の圧力よりも低くなるように、前記電気モータを作動して過給をアシストするとともに前記ノズル開度を開き側に制御し、前記EGRバルブ制御手段は、前記吸気通路内のガスが前記EGR通路を介して前記排気通路に導かれるように、前記EGRバルブの開度を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の過給システム。
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