JP4310842B2 - 抗菌剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種工業製品、家庭用品等の被処理物を抗菌または除菌するために用いられる抗菌剤、および、該抗菌剤の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記の被処理物に用いられる抗菌剤のうち、細菌やカビに対して長期間、抗菌性が持続するものとして、亜鉛、銀、銅等の重金属イオンを含むものが用いられている。重金属イオンの中でも、銀イオンは、安全性に優れているため特に広く用いられている。
【0003】
銀イオンを含む抗菌剤としては、特開平10−182326号公報に銀クロロ錯塩を含む抗菌剤が開示されている。上記公報に開示されている抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩は、銀のチオシアン酸錯塩や、チオ硫酸錯塩等とは異なり、S2-イオンを含まない。このため、熱や酸により分解して有毒ガスを発生したり、硫化銀の形成により黒化することがなく、安定である。
【0004】
また、銀クロロ錯塩は、塩化物イオン濃度が高い状態では安定性が高いため、塩化銀の沈殿を生じることなく、水溶性または水易溶性の状態で安定に存在する。一方、銀クロロ錯塩は、水等で希釈されて周囲の塩化物イオン濃度が低くなると、塩化銀または銀メタルを析出し易いという性質を有している。
【0005】
これは、塩化物イオン濃度が低い状態では、銀クロロ錯塩の安定化に直接寄与する塩化物イオンの量が少なくなるためである。銀クロロ錯塩は、このように塩化物イオン濃度が低い状態で析出した塩化銀または銀メタルが、被処理物表面に付着することにより、抗菌性を発揮する。上記公報に記載された抗菌剤は、銀クロロ錯塩の上記性質を利用して各種工業製品、家庭用品等の被処理物表面を抗菌化するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公報に記載された銀クロロ錯塩を含む抗菌剤は、まず、塩化アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩化物を塩化物イオンとして含む水溶液を調製した後、該水溶液に塩化銀または銀メタルを添加して銀クロロ錯塩として溶解させることにより製造される。従って、上記抗菌剤は、溶液すなわち液状の形態で製造、保存、使用がなされる。このため、上記従来の抗菌剤を、たとえば粉末洗剤等の粉体と混合した固体状で保存、使用等ができないという問題点を有している。
【0007】
また、上記従来の抗菌剤は、固体状ではないため、これを微粉砕することにより微粒子化して用いることができない。つまり、樹脂や繊維等からなる各種工業製品、家庭用品等を製造する場合、微粒子化した抗菌剤を予め上記樹脂や繊維中に練り混み(混練)等によって含有させることが困難である。
【0008】
本来、銀クロロ錯塩を含む抗菌剤は、持続性のある抗菌性を有し、たとえば被処理物表面が汚れ等により覆われたり繰り返し洗浄された場合にも、抗菌性が失われないという優れた性質を有している。しかしながら、上記従来の抗菌剤は液状の形態であるために、たとえば、混練により被処理物に含有させることが困難であり、従って用途が限定されてしまうという問題点を有している。
【0009】
本発明は、上記の各問題点を解決するためになされたもので、その目的は、たとえば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、液体という形態をとらずとも、安定した抗菌性を発揮できる固体状の抗菌剤およびその製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
請求項1に記載の抗菌剤は、上記の課題を解決するために、銀クロロ錯塩と、塩化物イオンを供給する塩化物とを含み、固体状であることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、抗菌剤が固体状であるため、たとえば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤を提供することができる。また、持続性のある抗菌性を有する銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための上記塩化物とにより、安定した抗菌性を有する抗菌剤を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の抗菌剤の製造方法は、上記の課題を解決するために、銀または銀塩と、塩化物イオンを供給する塩化物と、水とを混合して混合物を調製する工程と、該混合物から水を除去する工程とを含むことを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、混合物が上記塩化物を含んでいるので、該混合物から水を除去しても、銀クロロ錯塩が安定な状態で存在する。これにより、安定した抗菌性を有し、固体状の抗菌剤を製造することができる。従って、たとえば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤の製造方法を提供することができる。また、混合物中に生成した銀クロロ錯塩が、持続性のある抗菌性を発揮すると共に、上記塩化物が銀クロロ錯塩を安定化させるため、安定した抗菌性を有する抗菌剤の製造方法を提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌剤は、銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための、塩化物イオンを供給する塩化物とを含み、かつ、固体状の形態をとっている。
【0016】
本発明の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩は、構造式、
【0017】
【化1】
【0018】
で表される錯イオン構造を備えた塩であれば、特に限定されない。また、対イオン(陽イオン)は、用途に応じて選択すればよく、特に限定されない。
【0019】
本発明における抗菌剤に含まれ、銀クロロ錯塩を安定化させる、塩化物イオンを供給する塩化物としては、たとえば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンを対イオンとして含む塩化物;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンを対イオンとして含む塩化物;脂肪族4級アンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類;エチレンジアミン塩酸塩、ヘキサメチレンジアミン塩酸塩、ヘキサメチレントリアミン塩酸塩等のポリアミン塩酸塩類;メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩等の1級アミン塩酸塩類;ジメチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩等の2級アミン塩酸塩類;トリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩等の3級アミン塩酸塩類;ピリジン塩酸塩、アニリン塩酸塩、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ピリジニウム、塩化イミダゾリニウム等の芳香族アミン類;等が挙げられる。
【0020】
本発明にかかる銀クロロ錯塩と塩化物イオンを供給する塩化物(以下単に、「塩化物」という)との割合は、銀クロロ錯塩が不安定化して塩化銀を生じることがなく、かつ、抗菌剤が抗菌性を発揮できる所定の範囲であれば特に限定されないが、重量比で、1:108 より銀クロロ錯塩の占める割合が高くなる範囲が好ましい。上記範囲内より銀クロロ錯塩の占める割合が低くなると、抗菌剤の添加量を多くする必要があり、塩化物その他の成分の濃度を実用性を有する範囲内に希釈する必要がある関係上、結果的に銀クロロ錯塩の濃度が極めて低くなるように希釈しなければならなくなるため好ましくない。より具体的には、重量比で、1:105 〜1:10の範囲内であることがより好ましく、1:1000〜1:50の範囲内であることがさらに好ましく、1:200〜3:200の範囲内であることが最も好ましい。尚、上記範囲内より銀クロロ錯塩の占める割合が高くなると、銀クロロ錯塩が不安定化するおそれがある。
【0021】
本発明の抗菌剤を、たとえば、粉末状の洗剤等に含有させた形態で用いる場合、抗菌剤の配合比は、洗剤等が有する洗浄力等の力価、被処理物の種類、量等に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。たとえば、抗菌剤を粉末状の洗剤に含有させて洗濯時に千倍に希釈して使用する場合には、使用時に抗菌性が維持される範囲となるような割合であればよく、銀純分で、0.001〜10重量%の範囲内であることがより好ましく、0.01〜2重量%の範囲内であることがさらに好ましい。尚、上記の場合、洗濯時において優れた除菌・抗菌性を付与するためには、洗浄液中での抗菌剤濃度は、銀濃度で0.01ppm以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の抗菌剤は、上記銀クロロ錯塩および塩化物以外に、必要に応じて他の固体状の成分を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の抗菌剤を添加混合して用いることができる粉体は、使用に際して抗菌性が要求されるものであれば特に限定されず、たとえば、粉末状の洗剤の他、各粉末状の洗濯助剤、界面活性剤、酵素、蛍光増白剤、再汚染防止剤、漂白剤、泡安定化剤、抑泡剤、柔軟化剤、可溶化剤、増粘剤、乳濁剤、香料、色素等が挙げられる。
【0024】
また、抗菌剤を添加混合して用いた粉体には、抗菌性を有する防腐剤、殺菌剤がさらに含まれていてもよい。さらに、本発明の抗菌剤を添加混合して用いる対象は、上記粉体の他、たとえば、固形石鹸等、他の固形物であってもよい。
【0025】
本発明の抗菌剤を、上記各粉体等に添加混合する方法としては、たとえば、抗菌剤を粉末状とした後、上記各粉体に対し直接添加し、ミキサー等により攪拌して均一に混合する方法、予め洗剤等の粉体が溶解した溶液に抗菌剤を添加した後、蒸発等により乾固させる方法が挙げられる。
【0026】
本発明の抗菌剤は、固体状であるため、たとえば、樹脂や繊維等に混練することにより抗菌性樹脂や抗菌性繊維を得ることができる。本発明の抗菌剤を、たとえば樹脂や繊維に混練する方法は、特に限定されないが、たとえば、本発明の抗菌剤を微粉砕して微粒子とし、樹脂や繊維製造時において、原材料と共に混合する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明にかかる抗菌剤によって、あらゆる種類の被処理物を抗菌処理することができる。本発明の抗菌剤を用いて抗菌処理することができる被処理物としては、樹脂、繊維、紙、皮革等を原材料とする各種工業製品、家庭用品の他、コンクリート製の壁面、床面等の建築材料、セラミック製品等が挙げられる。上記被処理物は、それ自体に抗菌性を付与すべきものであればよく、たとえば、各粉末状の化粧品やビルダー等、本発明にかかる抗菌剤を添加混合することによって、抗菌性が付与されるものも含まれる。
【0028】
本発明にかかる抗菌剤を用いて被処理物を処理する方法としては、たとえば、抗菌剤を微粒子の状態で含む粉末状の洗剤や粉末状の洗濯助剤等により被処理物を洗浄する方法、樹脂や繊維等からなる被処理物を製造する場合において微粉砕した抗菌剤を上記樹脂や繊維中に混練等によって含有させる方法等が挙げられる。
【0029】
本発明の抗菌剤の製造方法は、銀または銀塩と、塩化物と、水とを混合して混合物を調製する工程(第一の工程)と、該混合物から水を除去する工程(第二の工程)とを含んでいる。
【0030】
本発明の抗菌剤の製造方法は、具体的には、たとえば、(1)銀または銀塩と塩化物と水とを混合して水溶液の形態とした混合物を調製し、次いで該水溶液から水を蒸発させることにより除去する方法、(2)銀または銀塩および塩化物を湿潤させてペースト状とできる量の水を、上記銀または銀塩と塩化物とに添加し、均一に混合して混合物を調製した後、該混合物から水を蒸発させることにより除去する方法等が挙げられる。
【0031】
上記例示の2方法のうち、(2)の方法は、水溶液の形態を経由することなく、ペースト状すなわち固相状態での反応により銀クロロ錯塩を生成させることができる。(2)の方法によれば、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する塩化物の量を、水溶液の形態を経由する(1)の方法と比較して増やすことができる。このため、銀クロロ錯塩濃度を(1)の方法を用いる場合よりもさらに増やすことができるという利点がある。また、(2)の方法では、(1)の方法で水溶液から水を除去するために必要となる耐食性の濃縮装置が不要であるため、製造コストが低く抑えられるという利点もある。従って、上記2方法のうちでは、(2)の方法を用いることがより好ましい。
【0032】
上記第一の工程において混合される銀は、銀メタルをいう。
【0033】
また、上記第一の工程において混合される銀塩としては、たとえば、塩化銀が用いられる他、塩化銀よりも溶解度の低い硫化銀、セレン化銀、テルル化銀、ヨウ化銀、臭化銀を除くいかなる種類の銀塩も用いることができる。上記銀または銀塩のうち、工業的には銀塩を混合することがより好ましい。また、銀塩のうちでは、塩化銀を用いることがより好ましい。
【0034】
第一の工程で、たとえば、方法(1)のように、混合物が水溶液の形態をとる場合における銀または銀塩の水溶液中の濃度は特に限定されない。
【0035】
また、たとえば、方法(1)のように、上記混合物が水溶液の形態をとる場合における塩化物の水溶液中の濃度は特に限定されないが、1〜40重量%の範囲内が好ましく、5〜30重量%の範囲内がさらに好ましく、10〜20重量%の範囲内が最も好ましい。
【0036】
一方、第一の工程で、たとえば、方法(2)のように、混合物がペースト状の形態をとる場合において、銀または銀塩と、塩化物と、水との割合は、(2)の方法をとることによる上記利点が得られる範囲内であれば特に限定されないが、塩化物の割合は、銀または銀塩を1としたとき、重量比にて1.3以上の範囲であることが好ましい。また、水の割合は、銀または銀塩を1としたとき、重量比にて10〜100の範囲内であることが好ましい。
【0037】
第一の工程における設定温度は、特に限定されないが、60〜110℃の範囲内であることがより好ましい。また、第二の工程における設定温度は、特に限定されないが、20〜200℃の範囲内であることがより好ましい。
【0038】
第一の工程において混合される銀または銀塩と、塩化物と、水との混合の順序は特に限定されず、たとえば、塩化物を水に溶解させて水溶液とし、これに銀または銀塩を添加混合する方法や、塩化物と水とを混合させた後に銀または銀塩を添加混合し、これを、別に混合した塩化物と水との混合物に添加してさらに混合する方法を用いることができる。
【0039】
第二の工程において、混合物から水を除去する方法としては、混合物を水溶液の形態で得た場合には、たとえば、ロータリーバキュームエバポレーター等を用いて、該混合物を室温または加熱下において減圧濃縮した後、室温または加熱下において乾燥させ蒸発乾固する方法を用いることができる。また、混合物をペースト状の形態で得た場合には、該混合物を室温または加熱下において乾燥させ蒸発乾固する方法等を用いることができる。
【0040】
本発明の抗菌剤の製造方法では、上記第一の工程において、銀または銀塩が、塩化物と所定の割合で反応することにより、持続性のある抗菌性を有し、水に可溶な銀クロロ錯塩が生成する。また、上記塩化物が、生成した銀クロロ錯塩を安定化する役割を担う。次に、第二の工程において、混合物から水を除去することにより、固体状の形態を有する本発明の抗菌剤を得ることができる。
【0041】
以下において、本発明の抗菌剤に含まれる銀クロロ錯塩が、被処理物に対して抗菌性を発揮する機構および、本発明にかかる抗菌剤に含まれる塩化物が上記銀クロロ錯塩に対して作用する機構について説明する。
【0042】
一般に、銀イオンの錯塩は、中心原子である銀の存在により、広範囲の種類の細菌やカビに対して抗菌性を有する。このうち、銀クロロ錯塩は、銀のチオシアン酸錯塩や、チオ硫酸錯塩等とは異なり、S2-イオンを含まない。このため、熱や酸により分解して有毒ガスを発生したり、硫化銀の形成により黒化することがなく、持続性のある抗菌性を発揮することができる。すなわち、銀クロロ錯塩は、銀クロロ錯塩または、塩化銀あるいは、銀メタルの形態をとることにより、被処理物に対して抗菌性を発揮する。
【0043】
本発明の抗菌剤を、たとえば、粉末状の洗剤に含有させて洗濯時に使用する場合、水で希釈されるため、銀クロロ錯塩の周囲に存在する塩化物濃度が減少する。塩化物濃度が減少すると、銀クロロ錯塩は不安定化し、塩化銀の微粒子となって析出する。繊維製品等の表面は、表面エネルギーが高いため、この析出した塩化銀の微粒子が該表面に多数吸着し抗菌性を発揮する。尚、吸着した塩化銀の結晶を核として、該結晶が成長することもあるが、その大きさは1μm程度である。
【0044】
また、本発明の抗菌剤を、たとえば、樹脂や繊維等に混練した場合には、繊維から一旦溶出した塩化銀の微粒子が繊維表面に再吸着して、上記繊維表面で抗菌性を発揮する。この現象は、電子顕微鏡写真等による観察により確認することができる。また、上記のようにして繊維表面に再吸着した塩化銀の微粒子による抗菌性は、水洗によっても失われることがなく安定である。
【0045】
また、本発明の抗菌剤の製造方法を用いて、たとえば、銀または銀塩と塩化物とを水溶液の形態とせず、少量の水にてペースト状として混合することにより銀クロロ錯塩を生成させることができる。このため、銀クロロ錯塩の安定化に寄与する塩化物の量を、銀クロロ錯塩が塩化銀に変化することを抑制できる範囲に適宜設定することが容易であり、生成した銀クロロ錯塩の安定化をさらに図ることができる。また、これにより、溶液状の抗菌剤と比較して、生成させる銀クロロ錯塩量を増やすことができる。
【0046】
以上のように、本発明の抗菌剤は、銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための塩化物とを含み、固体状の形態をとっている。抗菌剤が固体状であるため、たとえば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる。また、銀クロロ錯塩を安定化する塩化物を含むことによって、安定した抗菌性を得ることができる。
【0047】
また、銀クロロ錯塩と塩化物との割合を、たとえば、重量比で、1:1000〜1:50の範囲内とすることにより、より安定した固体状の抗菌剤が得られるとともに、銀クロロ錯塩の含有量を増やすことができるため、溶液状の抗菌剤と比較して、抗菌性をより高めることができる。
【0048】
本発明の抗菌剤の製造方法は、銀または銀塩と、塩化物と、水とから銀クロロ錯塩を生成させた混合物から水を除去するため、固体状の抗菌剤を製造することができる。従って、たとえば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤を得ることができる。また、混合物中に生成した銀クロロ錯塩が、持続性のある抗菌性を発揮すると共に、塩化物が銀クロロ錯塩を安定化させるため、安定した抗菌性を有する抗菌剤を得ることができる。
【0049】
【実施例】
以下において、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。尚、実施例に記載の「%」は、「重量%」を示す。
【0050】
<菌数測定方法>
溶液中に含まれるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、Methicillin−resistant Staphylococcus Aureus)の菌数は、以下の方法により測定した。
【0051】
溶液、または、溶液を1/1000希釈トリプトソーヤブイヨン(日水製薬製)で希釈した溶液希釈液を用意した。上記溶液または溶液希釈液1mlを直径9cmのシャーレに入れた。次に、オートクレーブ滅菌した後40℃まで冷却した標準寒天培地(日水製薬製)を上記シャーレに20mlずつ加えた。この培地を十分に攪拌した後、放置して固化させた。上記シャーレを37℃、24時間培養した後、コロニー数を計数し、上記溶液中の菌数を計算した。
【0052】
<粉末状洗剤組成>
抗菌剤を含有した洗剤組成物を調製するために、以下の組成を有する粉末状洗剤を用いた。
【0053】
ドデシルベンゼンスルホン酸 15%
トリポリリン酸ナトリウム 17%
珪酸ナトリウム 10%
炭酸ナトリウム 3%
カルボキシメチルセルロース 1%
硫酸ナトリウム 54%
〔実施例1〕
第一の工程において、混合物が水溶液状態を経由する本発明の抗菌剤の製造方法を用いて、本発明の抗菌剤を製造した。
【0054】
塩化カリウム933gを水に溶解し、全量3lの水溶液とした。次いで、該水溶液に、湿潤した塩化銀2.43g(銀純分として、1.5g含有)を攪拌により分散、溶解させて混合物とし、銀クロロ錯塩水溶液を調製した。この水溶液を、ロータリーバキュームエバポレーターにて80℃で減圧濃縮し、濃縮スラリーを得た。該濃縮スラリーは、105℃にて、空気中で8時間乾燥した。乾燥後、回収できた乾燥物の重量は、936gであった。該乾燥物は、直射日光下で10分以上暴露しても変色が認められず、該乾燥物中に塩化銀が残存していないことが確認された。これにより、該乾燥物を、固体状である本発明の抗菌剤として得た。
【0055】
〔実施例2〕
第一の工程において、混合物が水溶液状態を経由しない本発明の抗菌剤の製造方法を用いて、本発明の抗菌剤を製造した。
【0056】
塩化カリウム20gを粉末化し、これに対し、水3.4mlを添加混合し、ペースト状とした。次いで、湿潤した塩化銀2.6g(銀純分として1.6g含有)をこれに加え、均一になるまで混合した混合物(A)を得た。次に、別の容器に塩化カリウム980gと水60mlを添加して均一になるまで混合し、上記混合物(A)をこれに添加して、再度均一になるまで混合し、新たに混合物(B)を得た。混合物(B)の一部を採取して日光に暴露したところ、迅速に青紫色に変色した。これにより、上記採取時点では、未だ銀クロロ錯塩に変化していない塩化銀が残存することが確認された。そこで、混合物(B)をさらに105℃にて8時間空気中で乾燥した。乾燥後、回収した乾燥物の重量は、1003gであった。該乾燥物は、直射日光下で10分以上暴露しても、もはや何ら変色が認められず、塩化銀が残存していなことが確認された。これにより、水溶液状態を経由せずに、固相にて銀クロロ錯塩が形成されていることが確認できた。該乾燥物を、固体状である本発明の抗菌剤として得た。該抗菌剤は、銀クロロ錯塩を銀濃度として、1595mg/kg含んでおり、銀クロロ錯塩以外の残部として塩化カリウムを含んでいた。
【0057】
上記組成を有する粉末状洗剤に、粉末状にした上記抗菌剤を添加混合した洗剤組成物による布の抗菌化を行った。
【0058】
1lのビーカーに、1.8×1.8cmのポリアセテート製の布を30枚入れた。このビーカーに、500mlの水を加えた後、抗菌剤50mgと上記組成の粉末状洗剤500mgとを混合した洗剤組成物をさらに添加し、旋回させながら5分間洗濯した。次に、布を滅菌水500mlが入った別のビーカーに移し、5分間すすぎを行った。
【0059】
布を滅菌済シャーレ中に取り出し、風乾した後、該布を1枚ずつ別々の50ml遠心チューブに移した。1000倍希釈したトリプトソーヤブイヨン培地(日水製薬製)中にMRSAが5×104 個/mlの割合で含まれるMRSA懸濁液を0.2ml取り、これを布上に接種した。接種後の布をそれぞれ室温(20〜25℃)で18時間処理した。この遠心チューブに、0.85%食塩と、0.2%Tween80(Polyoxyethylene Sorbitan Monooleate)とを含む溶液20mlを添加し、30回振とうして菌を洗い出し、それぞれの溶液中に含まれる菌数を上記菌数測定方法により測定し、布30枚についての平均値として求めた。
【0060】
また、粉末状洗剤を0gとする以外は、上記同様の操作を行い、菌数を測定した。
【0061】
一方、抗菌剤を用いない以外は、上記同様の操作を行い、菌数を測定した。
【0062】
さらに、抗菌剤および粉末状洗剤を用いない以外は、上記同様の操作を行い、菌数を測定した。これら結果を表1に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果から、本発明の抗菌剤または、本発明の抗菌剤を含有した洗剤組成物を用いて洗浄することにより、布の抗菌化が行えることがわかる。これに対し、本発明の抗菌剤を用いず、粉末状洗剤単独で洗浄した場合、または水洗いのみの場合には、植菌した菌が生育し、抗菌化が行われていないことがわかる。
【0065】
【発明の効果】
請求項1に記載の抗菌剤は、以上のように、銀クロロ錯塩と、塩化物とを含み、固体状である構成である。
【0066】
それゆえ、抗菌剤が固体状であるため、たとえば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤を提供することができる。また、持続性のある抗菌性を有する銀クロロ錯塩と、銀クロロ錯塩を安定化させるための塩化物とにより、安定した抗菌性を有する抗菌剤を提供できるという効果を奏する。
【0067】
請求項2に記載の抗菌剤の製造方法は、以上のように、銀または銀塩と、塩化物イオンを供給する塩化物と、水とを混合して混合物を調製する工程と、該混合物から水を除去する工程とを含む構成である。
【0068】
それゆえ、混合物が上記塩化物を含んでいるので、該混合物から水を除去しても、銀クロロ錯塩が安定な状態で存在する。これにより、安定した抗菌性を有し、固体状の抗菌剤を製造することができる。従って、たとえば粉末状の洗剤等の粉体へ混合して使用したり、微粒子の状態で樹脂や繊維等に混練して使用することができる等、幅広い用途に利用できる抗菌剤の製造方法を提供することができる。また、混合物中に生成した銀クロロ錯塩が、持続性のある抗菌性を発揮すると共に、上記塩化物が銀クロロ錯塩を安定化させるため、安定した抗菌性を有する抗菌剤の製造方法を提供できるという効果を奏する。
Claims (2)
- 銀クロロ錯塩と、塩化物イオンを供給する塩化物とを含み、
固体状であり、
上記銀クロロ錯塩と上記塩化物イオンを供給する塩化物との割合は、重量比で1:1000以上1:50以下であり、
上記塩化物イオンを供給する塩化物は、アルカリ金属イオンを対イオンとして含む塩化物、アルカリ土類金属イオンを対イオンとして含む塩化物、4級アンモニウム塩、ポリアミン塩酸塩、1級アミン塩酸塩、2級アミン塩酸塩、3級アミン塩酸塩、及び芳香族アミンの塩化物からなる群より選択される塩化物であることを特徴とする抗菌剤。 - 銀または銀塩と、塩化物イオンを供給する塩化物と、水とを混合して混合物を調製する工程と、
該混合物から水を除去する工程とを含み、
上記混合物を調製する工程において生成される銀クロロ錯塩と上記塩化物イオンを供給する塩化物との割合は、重量比で1:1000以上1:50以下であり、
上記塩化物イオンを供給する塩化物は、アルカリ金属イオンを対イオンとして含む塩化物、アルカリ土類金属イオンを対イオンとして含む塩化物、4級アンモニウム塩、ポリアミン塩酸塩、1級アミン塩酸塩、2級アミン塩酸塩、3級アミン塩酸塩、及び芳香族アミンの塩化物からなる群より選択される塩化物であることを特徴とする請求項1記載の抗菌剤の製造方法。
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