JP4310385B2 - 新規微生物および当該微生物を利用した有機質資材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カフェインを効率よく分解できる微生物、そのスクリーニング方法ならびに当該微生物を利用した有機質資材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
国内の食品工場や外食産業等から排出されるコーヒー抽出残滓の量は、年間約25万トンにも達し、その大部分は焼却処理されている(有機廃棄物資源化大辞典:農山漁村文化協会、1997.3)。ところでコーヒー抽出残滓は、その組成のほとんどが有機物であり、小さな多孔質の粒状形状を有し、通気性も良く、各種微生物の増殖の棲家として適しているものである。さらに有機性廃棄物の堆肥化に際してコーヒー抽出残滓を共存させると、堆肥化のプロセスで発生する悪臭の主原因であるアンモニア等の臭気成分の吸着性が良いなどの特徴があり、コーヒー抽出残滓は有機質資材として非常に優れた素材であるといえる。したがって、環境問題への配慮や、資源の有効利用の点からみれば、焼却処理に代わる有効な再資源化が望まれている。
【0003】
これまでコーヒー抽出残滓の有効利用を図った提案が種々行われており、例えば特開平5−43874には、コーヒー粕および水不溶性の高吸水性樹脂を含有するペレット状または顆粒状の農業、園芸用土壌保水剤が提案されている。この農業、園芸用土壌保水剤は、コーヒー粕の堆肥効果と水不溶性高分子化合物の保水効果を兼ね備えたものであるとされている。
【0004】
また、特開平11−130573には、有機性廃棄物の堆肥化に対して有効な性質をもつ細菌類、真菌類および放線菌類を、コーヒー滓に休眠化させた状態で固定化させた堆肥化促進剤組成物が示されている。しかしながら、例えば生のコーヒー抽出残滓には500〜1,000ppm(乾燥物重量換算)程度のカフェインが含まれており、このカフェインには、作物の生育を阻害する作用がある。上述の再利用方法ではコーヒー滓中のカフェインの分解に十分な対処はなされておらず、したがって、有機性廃棄物に混合し堆肥化する際には、作物の生育阻害の観点から、その使用量は制限される。
【0005】
そこで、コーヒー粕等のカフェイン含有食品産業廃棄物からカフェインを除去させる手段として、特開平10−29884には、カフェイン含有食品産業廃棄物を柿渋と接触させ、含有されるカフェインを柿渋に凝集沈殿させて除去し、堆肥化する方法が示されている。この方法は、作物生育阻害物質であるカフェインを直接除去する方法として優れているが、柿渋の安定的な供給は困難を伴うものと考えられ、また工程も煩雑になるなどの問題が残る。
【0006】
また、コーヒー抽出残滓を鶏糞、汚泥、米糠等の他の資材と混合して発酵させて、作物生育阻害のない有機質資材に変換する方法も採用されている。この方法は、鶏糞、汚泥、米糠等に存在するカフェイン分解能を有する微生物を利用して、カフェイン含有物中のカフェインを分解させ、カフェイン含有量を低下させるものである。
【0007】
事実、カフェインを分解する微生物としては、シュードモナス属細菌、アスペルギルス属およびペニシリウム属等の真菌類が知られており、真菌類の中にはカフェインを唯一の窒素源として生育可能な真菌が存在することも報告されている(M.Hakilら、Enzyme and Microbial Technology 1998,22(5)355−359)。
【0008】
しかしながら、現在用いられている方法では、カフェインの分解能力は必ずしも十分でないことから、被処理物のカフェイン含量を低く押さえる必要があったり、肥料として使用できるようになるまでに、長期間(普通3ヶ月以上)を要するといった問題がある。さらにまた、被処理物中にはカフェインが存在することにより、有機物の分解能力に優れている微生物であっても、カフェイン耐性能の低い微生物は、その働きが阻害されるという問題もある。
【0009】
また肥料以外の用途としての利用を考える場合、コーヒー抽出残滓や茶抽出残滓等に含有されるカフェインを、鶏糞、汚泥、米糠等の他の資材と混合させることなく、微生物を用いて直接分解させることができれば、得られたコーヒー抽出残滓や茶抽出残滓は、作物の生育阻害作用が軽減されたものとなり、それ自体で直接土壌に投入することができ、土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等、農業用の有機質資材として、新たな使用方法が可能となるのである。
【0010】
しかしながら、コーヒー抽出残滓や茶抽出残滓を有効に再利用する確実な手段はいまだ確立しておらず、その大部分は焼却処分せざるを得ない現状下にある。したがって、特に作物の生育阻害物質の主要因であるカフェインを、微生物を用いて効率よく分解し得る技術の確立が切望されているのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の現状を鑑み、コーヒー抽出残滓や茶抽出残滓等のカフェイン含有物を微生物とともに処理をし、そのなかに含有されるカフェインの低減を図り、土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等の有機質資材を製造する方法を提供することを基本的課題とする。
【0012】
本発明はまた、かかる製造方法に使用し得る特異的微生物を提供すること、さらにはそのような微生物を効率よく得るためのスクリーニング方法をも提供することを課題とする。
【0013】
本発明者は、かかる課題を解決するために、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物を使用すれば、カフェイン以外の窒素源および炭素源が豊富に存在する環境中であっても、カフェインを効率的に分解させることができると考えた。
【0014】
かかる考え方の下で鋭意検討した結果、コーヒー抽出残滓を主原料とする発酵処理物中から、カフェインを効率的に分解し得る微生物を分離するスクリーニング方法を確立し、本スクリーニング方法を用いて、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な特異的な微生物を見出した。
【0015】
さらに、発明者はかかる特異的な微生物を利用することにより、作物の生育阻害物質の主要因であるカフェインを速やかに分解して、カフェイン含有物から短期間に有機質資材を製造することを可能にし、本発明を完成させるに至った。
【0016】
【課題を解決するための手段】
したがって本発明は、その一つの態様として、カフェイン含有物から、土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等の有機質資材を効率よく製造するのに使用する、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物を提供する。
【0017】
本発明はそのなかでも、かかる微生物として、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な細菌であり、ミクロコッカス(Micrococcus)属に属する、Micrococcus sp.SAM2240(FERM P−17511)を提供する。
【0018】
さらに本発明は、その別の態様として、カフェイン含有物を、上記で提案される微生物で処理することにより、土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等の有機質資材を製造する方法をも提供する。
【0019】
本発明で使用される微生物は、特に、カフェイン以外の窒素源および炭素源が豊富に存在する環境中でカフェインを効率的に分解させる微生物であり、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物である点に特徴を有する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明が提供する微生物を得るためには、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物を分離、選択すればよい。そのために使用する培地としては、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地であればよく、他の成分は特に限定されない。
【0021】
かかる培地中に含有させるカフェインの濃度は、0.02〜0.2重量%程度、特に0.08〜0.12重量%程度であることが望ましい。そのような培地の例として、例えば、下記表1に示した組成の培地を挙げることができる。なお、培地以外の培養条件等は、当該技術分野で汎用されている常法に従い、設定することができる。
【0022】
【表1】
【0023】
以上のような培地を使用して、本発明で使用する、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物を、効率的に分離、選択することが可能となる。したがって、本発明はまた別の態様として、カフェイン含有物から、土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等の有機質資材を効率よく製造するのに使用する微生物を得るためのスクリーニング方法をも提供するものである。
【0024】
かくして、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な、本発明が提供する微生物を選択、分離し得る。選択される微生物の種類は特に限定されるものではない。これらの微生物は、本発明においては単独で使用することもでき、また同時に複数の種類の微生物を用いてもよい。
【0025】
本発明にあっては、特にこのような微生物として、例えば、豚糞を主原料とする堆肥から分離した微生物群(Y.Ohtaら、Bioresource Technology,1997,60,21−26)を種菌として、後記する実施例に示した方法により分離、選択することにより得られた細菌が挙げられる。
【0026】
そのなかでも、好ましくはミクロコッカス属の細菌が望ましく、例えば、ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)、ミクロコッカス ライレー(Micrococcus lylae)、ミクロコッカス バリアンス(Micrococcus varians)、ミクロコッカス ロゼウス(Micrococcus roseus)、ミクロコッカス アジリス(Micrococcus agilis)などが挙げられる。これらの中から今回本発明者らによって見い出されたSAM2240株が特に望ましい。このSAM2240株の菌学的性質を、下記の表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
以上の菌学的性質から、SAM2240株はミクロコッカス属に属する菌株であり、従来知られていない新株であると判断し、Micrococcus sp.SAM2240と命名し、平成11年8月9日付で工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(受託番号:FERM P−17511)。
【0029】
以下に、Micrococcus sp.SAM2240(以後、本明細書中においては便宜的に単に「SAM2240株」と記すこともある)の生理学的性質についてさらに記載する。培地としては、有機物栄養源としてカフェインのみを配した表1の培地を用いた。
【0030】
なお、カフェイン含量の影響を検討する試験においては、表1の組成中のカフェイン含量を適宜変えた培地を用いた。また、培地のpHの影響を検討する試験では、表1の組成に、適宜1N−塩酸水溶液または1N−水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを調整した培地を用いた。
【0031】
SAM2240株の、培地中のカフェイン濃度に対する影響について、図1および図2にまとめて示した。図中に示されるように、SAM2240株は、培地中のカフェインが0.1%(w/w)(1,000ppm)濃度まで良好に生育し、培養36時間では、培地中のカフェインは完全に消失した。
【0032】
一方、培地のpHの影響について図3にまとめて示した。図中に示されるように、SAM2240株は、培地のpHが7.5〜8.5の範囲内で、カフェインを分解し、良好に生育した。
【0033】
SAM2240株に対する温度の影響についての結果を、図4に示した。図4の結果からも明らかなように、30〜35℃でカフェインを分解し、良好に生育した。
【0034】
これらのSAM2240株の生理学的性質からみれば、SAM2240株は、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物であり、カフェインを資化する非常に強い能力を有するものであるといえる。
【0035】
一方、本発明の上記微生物、特にSAM2240株により処理されるカフェイン含有物は、たとえば、飲料製造工場、あるいは喫茶店、ファーストフード店等の外食産業において発生するコーヒーや茶類の抽出済みの残滓、すなわち、コーヒー抽出残滓や茶抽出残滓等のカフェイン含有物である。
【0036】
これらのコーヒー抽出残滓や茶抽出残滓等のカフェイン含有物は、その種類について特に制限されるものではなく、コーヒー抽出残滓や茶抽出残滓としてのカフェイン含有物単独、あるいは両者の混合物としてのカフェイン含有物であってもよい。なお、そのカフェイン含有率、混合比率等について制限されるものではない。さらに、鶏糞、汚泥、米糠等他の資材と混合させたものであってもよい。
【0037】
なお、本発明の微生物、特にSAM2240株との処理に際しては、水分が低すぎると菌の生育が悪くなり、また高すぎると通気性が悪くなり、嫌気発酵等の発酵不良を生じるため、発酵時の水分含量は40〜70%の範囲であることが望ましい。
【0038】
コーヒー抽出残滓や茶抽出残滓等のカフェイン含有物は、本発明が提供するカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物、特にSAM2240株と処理されることにより、カフェイン含有量が低減された有機質資材となる。
【0039】
この場合、コーヒー抽出残滓や茶抽出残滓等のカフェイン含有物へ添加する細菌の菌数は、被処理物の乾燥重量1g当たり105 セル以上、好ましくは107 セル以上であることが望ましい。菌数が少なすぎる場合は、発酵期間が長くなり、カフェイン含有物中のカフェインを十分に分解できないからである。
【0040】
本発明が提供する微生物、特にSAM2240株を接種したカフェイン含有物は、自然堆積し、適宜切替えしを行うか、撹拌装置、通気装置のついた堆肥製造装置内で、好気的に培養するのがよい。処理温度は23〜37℃の範囲であることが好ましいが、30〜35℃で最も良好な結果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明において、カフェイン含有物から有機質資材を製造するに際しては、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物に加えて、有機性廃棄物の堆肥化に対して通常使用される他の微生物を含む資材、あるいはそのような微生物を、あわせて用いることができる。
【0042】
かくしてカフェインが分解された処理物は、それ自体単独で、あるいは土壌や肥料と混合して、土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等の有機質資材として利用できる。
【0043】
【実施例】
以下に具体的実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施例中においてもMicrococcus sp.SAM2240を便宜的に単に「SAM2240株」と記すこともある。
【0044】
実施例1:Micrococcus sp.SAM2240(FERM P−17511)の分離
(a)カフェイン分解菌の分離:
種菌として、豚糞を主原料とする堆肥から分離した微生物群(Y.Ohtaら、Bioresource Technology,1997,60,21−26)を、108 セル/gの濃度になるように珪藻土などに分散混合させたもの1kgを、コーヒー抽出残滓(水分71%)5kgに混ぜて、炭酸ナトリウムでpHを中性付近に調整した後、底に金網を張った木箱に自然堆積し、発酵を7日間続けた。
【0045】
次いで、下記の表3に示す培地を用い、上記の発酵処理されたコーヒー抽出残滓を分離源として、集積培養を行った。その後、この培養液を同組成の培地を用いた平板培地上に塗抹して、105株を分離した。
【0046】
【表3】
【0047】
(b)カフェイン分解能の測定および生育状態の評価:
上記(a)で得た105株について、有機物栄養源としてカフェインのみが入った前述した表1の培地中で、30℃にて36時間培養し、その時の生育状態、および培地中のカフェインの分解率を評価した。
【0048】
カフェインの分解率は、高速液体クロマトグラフィー分析(HPLC)により評価した。カラムはODA#3056(C−18,5μm,4mmФ×150mm)を用い、移動相1/15Mリン酸緩衝液、流量1.0ml/分、カラム温度40℃、検出波長は254nmの紫外線吸収とした。また、生育状態の評価は、培地の濁りの程度を目視により観察して評価した。
【0049】
その結果、96種の菌株については生育しなかったが、9種類の菌株(下記表中のA〜I)については、カフェイン分解率は53%〜100%であり、生育状態もほぼ良好であった。その結果を表4にまとめた。
【0050】
【表4】
【0051】
したがって、上記表4中の菌株A〜菌株Iの9種類については、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能であり、高いカフェイン分解能を有することが判明した。
【0052】
(c)Micrococcus sp.SAM2240の同定:
上記(b)で得られた9種の菌株のなかで、最も生育状況の良かった菌株AをSAM2240株とし同定を行った。その結果、前記表2に示す菌学的性質から、SAM2240株はミクロコッカス(Micrococcus)属に属する菌であると判断し、Micrococcus sp.SAM2240と命名し、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(受託番号:FERM P−17511)。
【0053】
実施例2:コーヒー抽出残滓の有機質資材化
(a)有機質資材の製造:
コーヒー抽出残滓(水分:62%、乾燥時のカフェイン濃度:980ppm)10kgに、SAM2240株の菌濃度が6×108 セル/mlになるように純水に懸濁した液を100ml加え、35℃で1時間毎に1分間撹拌を行ないながら培養した。その結果、6日後にはコーヒー抽出残滓中のカフェイン濃度は50ppm以下となった。したがって、SAM2240株は、高いカフェイン分解能を有することが判明した。
【0054】
(b)施用効果試験:
上記(a)で得た、コーヒー抽出残滓から製造した有機質資材を用いて、コマツナに対する施用効果を試験評価した。試験区には、SAM2240株でカフェイン分解処理したコーヒー抽出残滓を、一方、比較試験区には、カフェイン分解処理をしないコーヒー抽出残滓を、それぞれ乾燥物重量で5%ならびに10%になるように畑土(ナスやキュウリなどを植え、収穫した後の土壌)と混合して、樹脂製のポット(容積約1リットル)に約800g詰めた。またコントロール区としては、畑土だけを詰めたポットを用意した。
【0055】
1ポット当たり、コマツナの種子を10粒播種して屋外で栽培した。毎日1回ジョウロで散水した。播種後1週間目に発芽率を、また収穫時(栽培28日後)に、地上部の新鮮重量を測定した。
【0056】
(c)施用試験結果:
その結果を表5に示した。
【0057】
【表5】
【0058】
上記した表中の結果からも明らかなように、試験区のコマツナは、比較試験区のコマツナに比べて、発芽率、収穫時の地上部新鮮重量とも大きく勝っていた。このように生のコーヒー抽出残滓に認められる作物の生育障害は、SAM2240株によるカフェインの分解処理で、かなり改善されることが認められた。特に、カフェインを分解処理したコーヒー抽出残滓の混合割合が5%の場合では、畑土だけで栽培した場合(コントロール区)よりも、むしろコマツナの生育を促進する傾向があり、有機質資材としての効果が認められた。
【0059】
実施例3:コーヒー抽出残滓と汚泥混合物の有機質資材化
(a)有機質資材の製造:
実施例2に示した方法でコーヒー抽出残滓から得られた有機質資材2kg(水分:10%)と、飲料工場から排出された汚泥8kg(水分:80%)を混合して、撹拌装置のついた堆肥製造装置内で7週間、3ないし4日に1回撹拌を行って発酵させたものを試験区に用いた。一方、比較試験区として、コーヒー抽出残滓を乾燥して水分を10%としたものを2kgと、前記の汚泥8kgとを混合して、撹拌装置のついた堆肥製造装置内で8週間、3ないし4日に1回撹拌を行って発酵させたものを用いた。
【0060】
(b)施用試験結果:
実施例2と同様に行い、コマツナに対する施用効果を試験評価した。その結果を表6に示した。
【0061】
【表6】
【0062】
上記の表6に示すように、SAM2240株によるカフェイン分解処理をしたコーヒー抽出残滓を混合して発酵させた汚泥を畑土に混合した場合(試験区)は、畑土だけで栽培したコマツナ(コントロール区)に比べ、収穫時の地上部新鮮重量が顕著に大きく、有機質肥料として優れた効果が認められた。一方、コーヒー抽出残滓をカフェイン分解処理せずに汚泥と混合して発酵させた場合(比較試験区)は、発芽率、収穫時の地上部新鮮重量とも著しく不良で、コーヒー抽出残滓に含まれるカフェインの影響と考えられる生育障害が認められた。
【0063】
実施例4:烏龍茶抽出残滓の有機質資材化
(a)有機質資材の製造:
烏龍茶抽出残滓(水分:67%、カフェイン濃度:7,560ppm)10kgに、SAM2240株の菌濃度が、6×108 セル/mlになるように純水に懸濁した液を100ml加え、撹拌装置のついた堆肥製造装置内で4週間、3ないし4日に1回、十分に撹拌を行って発酵させたところ、抽出残滓中にはカフェインが検出されなくなったので、これを畑土に混合し試験区に用いた。一方、比較試験区として、烏龍茶抽出残滓10kgに、前記の微生物を加えずに、撹拌装置のついた堆肥製造装置内で4週間、3ないし4日に1回、十分に撹拌を行って発酵させたものを畑土に混合し用いた。
【0064】
(b)施用試験結果:
実施例2と同様にして、コマツナに対する施用効果を試験評価した。その結果を表7に示した。
【0065】
【表7】
【0066】
上記表7の結果からも明らかなように、試験区のコマツナは、畑土だけで栽培したコマツナ(コントロール区)に比べ、収穫時の地上部新鮮重量が大きく、試験区に用いた有機質資材の肥料としての優れた効果が認められた。これに対して比較試験区のコマツナは、発芽率、収穫時の地上部新鮮重量とも著しく不良であり、烏龍茶抽出残滓に含まれるカフェインの影響と考えられる生育障害が認められた。また、SAM2240株による処理の有無に関わらず、烏龍茶抽出残滓の混合比率が大きくなると、生育が阻害されることも認められた。
【0067】
実施例5:コーヒー抽出残滓と烏龍茶抽出残滓の併用による有機質資材化
(a)有機質資材の製造:
コーヒー抽出残滓(水分:62%、カフェイン濃度:980ppm)5kgと、烏龍茶抽出残滓(水分:67%、カフェイン濃度:7,560ppm)5kgを良く混ぜた後、この混合物にSAM2240株の菌濃度が6×108 セル/mlになるように純水に懸濁した液を100ml加え、撹拌装置のついた堆肥製造装置内で4週間、3ないし4日に1回、十分に撹拌を行って発酵させたところ、抽出残滓混合物中にはカフェインが検出されなくなったので、これを畑土に混合し試験区に用いた。一方、上記コーヒー抽出残滓5kgと、烏龍茶抽出残滓5kgを混合させ、これに前記の微生物を加えることなく、撹拌装置のついた堆肥製造装置内で4週間、3ないし4日に1回、十分に撹拌を行って発酵させたものを畑土に混合し、比較試験区に用いた。
【0068】
(b)施用試験結果:
実施例2と同様にしてコマツナに対する施用効果を試験評価した。その結果を表8に示した。
【0069】
【表8】
【0070】
上記表8中の結果からも明らかなように、試験区のコマツナは、畑土だけで栽培したコマツナ(コントロール区)に比べ、収穫時の地上部新鮮重量が顕著に大きいものであった。実施例4における烏龍茶抽出残滓単独処理に比べても、収穫時の地上部新鮮重量は大きくなることが認められた。その理由としては、コーヒー抽出残滓の添加により被処理物の通気性が改善されるなどして、烏龍茶抽出残滓の分解が促進されたためと考えられる。一方、比較試験区のコマツナは、発芽率、収穫時の地上部新鮮重量とも著しく不良で、コーヒー抽出残滓および烏龍茶抽出残滓に含まれるカフェインの影響と考えられる生育障害が認められた。
【0071】
【発明の効果】
以上記載したように、本発明は、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物、特にMicrococcus sp.SAM2240(FERM P−17511)を提供するものであり、かかる微生物を用いて、コーヒー抽出残滓あるいは茶類抽出残滓等のカフェイン含有物を処理することにより、作物の生育を阻害するカフェインを短時間で有効に軽減化することができる。
【0072】
また本発明により、有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能な微生物を効率的に分離、選択することができ、分離された微生物を用いてコーヒー抽出残滓中に含有される、作物生育阻害作用を有するカフェインを効率的に分解させることが可能となる。したがって、大量に排出され、その多くが焼却処分されていたコーヒー抽出残滓、茶抽出残滓等を、当該微生物と処理することにより、農業、園芸用に使用し得る土壌代替物、土壌改良資材、有機質肥料等の有機質資材へと変換させることができ、有効に再利用することが可能となる利点を有する。
【0073】
さらに、従来提案されているコーヒー抽出残滓の肥料化方法では、カフェインの分解能力は必ずしも十分でないことから、コーヒー抽出残滓を肥料として使用できるようになるまでには3ヶ月以上の長期間を要していたが、本発明方法ではほぼ1ヶ月程度に期間を短縮することが可能となる。また、コーヒー抽出残滓を、約1週間で土壌改良材として利用できるようになる。したがって、本発明が提供する微生物、特にMicrococcus sp.SAM2240(FERMP−17511)は、実用的なカフェイン分解用の微生物として、その有用性は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が提供するSAM2240株の生育について、培地中におけるカフェインの濃度の影響を検討した結果を示す図である。
【図2】本発明が提供するSAM2240株のカフェイン分解能について、培地に添加したカフェインの濃度との関係を、36時間培養して検討した結果を示す図である。
【図3】本発明が提供するSAM2240株の生育について、培地中のpHの影響を検討した結果を示す図である。
【図4】本発明が提供するSAM2240株の生育について、培地温度の影響を検討した結果を示す図である。
Claims (5)
- 有機物栄養源としてカフェインのみを含有する培地で生育可能なMicrococcus sp.SAM2240(FERM P−17511)。
- カフェイン含有物を、請求項1に記載のMicrococcus sp.SAM2240(FERM P−17511)を用いて処理することを特徴とする有機質資材の製造方法。
- カフェイン含有物が、食品産業廃棄物である請求項2に記載の有機質資材の製造方法。
- カフェイン含有物が、コーヒー抽出残滓および/または茶類抽出残滓である請求項2に記載の有機質資材の製造方法。
- カフェイン含有物から有機質資材を製造するための、請求項1に記載のMicrococcus sp.SAM2240(FERM P−17511)の使用。
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