JP4308609B2 - アリル化合物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、触媒の存在下、アリル原料化合物と酸素求核剤とを反応させることにより、原料化合物とは異なる新たなアリル化合物を製造する方法、並びにそれにより製造されたエーテル化合物及びエステル化合物に関する。
アリル化合物を原料として、遷移金属化合物を用いた触媒反応を行なうことにより、様々な種類の新たなアリル化合物を合成することができる。その反応は、下の反応式に示すように、脱離基Xを有するアリル原料化合物が遷移金属化合物にπ配位及び酸化的付加することで、アリル部位の3つの炭素が金属に結合したπ−アリル錯体が形成され、そのπ−アリル錯体の末端アリル炭素がNu−H又はNu-で表される求核剤により攻撃されることによって進行する。
Figure 0004308609
アリル化合物の合成反応の詳細に関しては、非特許文献1に総説的にまとめて記載されているが、反応において求核剤の種類を選ぶことで、求核剤がアリル化された形の様々な生成物を得ることができる。中でも、求核剤がアルコール類やフェノール類、カルボン酸類といった酸素求核剤の場合には、それぞれアリルアルキルエーテルやアリルフェニルエーテル、カルボン酸アリルエステルが生成し、合成化学的に有用な素反応の一つと言える。
しかしながら、アリル原料化合物と酸素求核剤との反応例としては、酸素求核剤がカルボン酸アニオンである場合については一般的に良く知られているものの、他の酸素求核剤との反応例は反応性の低さのためそれほど多くはない。
例えば、フェノール類との反応例としては、非特許文献2に記載されているように、トリフェニルホスファイト等のトリアリール型の単座のホスファイト配位子を持つパラジウム触媒系によるアリルフェニルエーテル類の合成例が知られているが、活性としては十分とは言えない。
また、アルコール類との反応例は、アルコール酸素の求核攻撃性の低さのため非常に限られている。アリル原料化合物とアルコール酸素との分子間の反応例として、非特許文献3及び非特許文献4にトリフェニルホスファイトやトリエチルホスファイト等の単座のホスファイト配位子を用いた触媒系によるアリルアルコールの脱水縮合反応が報告されており、また、一番高活性だと述べられているトリフェニルホスファイトからなる触媒系によるアリルアルコールとアルコール類との反応も同時に報告されている。しかしながら、何れの場合も十分に触媒活性が高いとは言えない。
その他のアルコール酸素によるπ−アリル錯体への攻撃の例としては、反応の進行によってちょうど五員環や六員環が形成できるような位置に存在しているアルコール酸素がπ−アリル末端炭素を攻撃するような分子内で進行する環化反応の例が幾つか知られている。例えば、非特許文献5に記載されているような単座のホスファイト配位子であるトリイソプロピルホスファイトを持つパラジウム触媒系によるモルホリン誘導体の合成例が知られている。また、ペンタン−2,5−ジイル基で構成される両末端が環状の二座ホスファイト配位子を持つパラジウム触媒系による五員環生成物の合成例が非特許文献6に報告されている。しかしながら、これらの反応は、ちょうど環を形成しやすい位置に酸素求核剤が存在する必要があり、分子内での反応だからこそ進むアリル化反応であって、特殊な系と言える。
「Palladium Reagents and Catalysts -Innovations in Organic Synthesis-」John Wiley & Sons社出版 Organometallics, 1995, 14, p4585 日本学術振興会創造機能化学第116委員会2002,6,合同分科会資料p46 日本化学会講演予稿集,2001,Vol.79th,No.2,p1194 Tetrahedron Lett., 1995, 36, p5527 J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, p1732
上述のように、アリル原料化合物とそれとは異なる酸素求核剤との反応により、有機合成上重要なエーテル化合物やエステル化合物を製造することが可能であるにもかかわらず、反応性の低い酸素求核剤を十分に反応させることのできる高活性な触媒系が開発されていないため、実際の反応例は限られたものとなっている。特にアルコールとの反応では、上述のように分子内での環化反応など特殊な環境にしないと反応を十分に進めることができない。そのため、このような反応性の低い酸素求核剤との反応においても十分に高い触媒活性を発現する、新たな触媒系の開発が望まれてきた。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、アリル原料化合物と酸素求核剤とを反応させる際に、反応性の低い酸素求核剤に対しても十分に高い活性を発現する新たな触媒系を用いて、より様々なアリル化合物を効率的に製造できるようにしたアリル化合物の製造方法、並びにそれにより製造されたエーテル化合物及びエステル化合物を提供することに存する。
本発明者らは、様々なアリル原料化合物とそれとは異なる酸素求核剤との分子間反応を効率的に進行させることの可能な触媒系の開発を目指して鋭意検討する中で、周期表の第8〜10族の遷移金属化合物及びトリアルキル型の単座配位ホスファイト化合物からなる触媒系が、従来の単座ホスフィンや二座ホスフィンからなる触媒系及び公知技術として知られているトリフェニルホスファイトからなる触媒系と比較して、意外にも非常に高活性であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる遷移金属を含む一以上の遷移金属化合物と、下記一般式(1)で表わされる構造を有する単座配位ホスファイト化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と、該アリル原料化合物とは異なる構造を有する酸素求核剤とを反応させることによって、該アリル原料化合物とは異なる組成式を示す新たなアリル化合物を製造することを特徴とする、アリル化合物の製造方法に存する。
P(OR1)(OR2)(OR3) ...一般式(1)
(前記一般式(1)において、R1、R2、R3は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を表わす。)
本発明によれば、反応性の低い酸素求核剤に対しても十分に高い触媒活性を発現する新たな触媒系を使用しているので、アリル原料化合物と酸素求核剤とを反応させて新たなアリル化合物を製造する際に、従来の触媒系を使用した場合と比べより効率的に、より様々な種類のアリル化合物を製造することが可能となる。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明に係るアリル化合物の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と略称する。)は、後述する特定の遷移金属化合物と、同じく後述する特定構造の単座配位ホスファイト化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と、該アリル原料化合物とは異なる構造を有する酸素求核剤とを反応させることによって、該アリル原料化合物とは異なる組成式を示す新たなアリル化合物を製造するものである。
まず、本発明の製造方法に使用されるアリル原料化合物について説明する。アリル原料化合物は分子内にアリル基と脱離基とを有するものであれば特に制限されないが、全体の分子量として1500以下のもの(炭素数で約100以下のもの)であり、反応条件下において全量又は一部のアリル原料化合物が、溶媒への溶解、酸素求核剤との相溶、若しくは熱による融解等によって、溶けた状態になり得るものが好ましい。中でも、下の一般式(a)で表わされる、Ra〜Reで表される基を有するアリル基にXで表される脱離基が結合した構造の化合物が好ましい。なお、脱離基とは、母体となる基質骨格(本発明ではアリル骨格)の炭素に結合していて、一般的に電子吸引性基で、電子対を持って基質分子から離れていく原子又は原子団のことを指す。
Figure 0004308609
上記一般式(a)において、Ra〜Reは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、又はアシロキシ基を表わす(なお、本明細書においてアリール基とは、環の上下に芳香族6π電子雲を形成する複素環式化合物を含むものとする。)。これらの例示基のうちアミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシロキシ基は更に、置換基を有していても良い。置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
上記Ra〜Reとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、上記置換基で置換されていてもよい鎖状又は環状のアルキル基、上記置換基で置換されていてもよいアリール基、上記置換基で置換されていてもよいアルコキシ基、上記置換基で置換されていてもよいアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、又はアシロキシ基が挙げられ、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、上記置換基で置換されていてもよい鎖状又は環状のアルキル基、上記置換基で置換されていてもよいアリール基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、又はアシロキシ基が挙げられる。
a〜Reの炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。なお、Ra〜Reが炭素鎖を含む基である場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。
上記例示の中でも、Ra〜Reとしては、それぞれ独立に、水素原子、無置換又は置換のアルキル基、無置換又は置換のアリール基が好ましい。
なお、反応系に悪影響を及ぼす基としては、触媒を被毒させるもの、例えば共役ジエンを含む基や、ホスファイト化合物を酸化消失させるもの、例えばパーオキサイドを含む基などが挙げられる。従って、本明細書全体を通じて、「反応系に悪影響を及ぼす虞の無い」基とは、反応系に悪影響を及ぼすこれらの基を除くということを意味するものである。
一方、脱離基Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、R’2N−で表されるアミノ基、RSO2−で表されるスルホニル基、RSO2O−で表されるスルホネイト基、RC(=O)O−で表されるアシロキシ基、R’OC(=O)O−で表されるカーボネイト基、R’NHC(=O)O−で表されるカルバメイト基、(R’O)2P(=O)O−で表されるホスフェイト基、RO−で表されるアルコキシ基又はアリーロキシ基等を表わす。なお、前記各式中におけるRは一価の有機基を表し、R’は水素原子又は一価の有機基を表わす。有機基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば、その種類は特に制限されないが、アルキル基、アリール基等が好ましい。Rが有機基である場合の炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。なお、脱離基Xが炭素鎖を含む基である場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。
上記例示のうち、Xとしては、−C(=O)O−で表される骨格構造を有するアシロキシ基、カーボネイト基、及びカルバメイト基、=P(=O)−で表される骨格構造を有するホスフェイト基、ならびに−S(=O)2O−で表される骨格構造を有するスルホネイト基が好ましく、中でもアシロキシ基及びカーボネイト基が好ましい。アシロキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、又はイソブチリルオキシ基等のC1〜C6のアシルオキシ基が挙げられる。カーボネイト基の具体例としては、メチルカーボネイト基、エチルカーボネイト基、フェニルカーボネイト基等のC1〜C6のアルキルカーボネート基又はC6〜C12アリールカーボネート基等が挙げられる。特にXとしては、アシロキシ基が好ましく、最も好ましくはアセトキシ基である。
なお、上述のRa〜Re及びXのうち任意の二以上の基が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。但し、Xが安定した環状構造に含まれると、Xが脱離し難くなるので好ましくない。環の数は特に制限されないが、通常0〜3、好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1である。また、個々の環を形成する原子の数も特に制限されないが、通常3〜10員環、好ましくは4〜9員環、特に好ましくは5〜7員環である。複数の環が存在する場合、これらの環が一部を共有することによって縮合環構造を形成していても良い。
a〜Re及びXのうち二以上の基が結合して環状構造を形成している場合、その炭素数は、環状構造の形成に関与している基の数をpとすると、通常0〜40×p、好ましくは0〜30×p、特に好ましくは0〜20×pである。
上記一般式(a)のアリル原料化合物として好ましくは、ハロゲン化アリル類、アリルアルコール類、ニトロアリル類、アリルアミン類、アリルスルホン類、アリルスルホネイト類、カルボン酸のアリルエステル類、アリルカーボネイト類、アリルカルバメイト類、リン酸アリルエステル類、アリルエーテル類、ビニルエチレンオキシド類等が挙げられる。
ハロゲン化アリル類の具体例としては、塩化アリル、臭化−2−ブテニル、1−クロロ−2−フェニル−2−ペンテン等が挙げられる。
アリルアルコール類の具体例としては、2−ブテニルアルコール、2,3−ジメチル−2−ブテニルアルコール、3−ブロモアリルアルコール等が挙げられる。
ニトロアリル類の具体例としては、1−ニトロ−2−ブテン、1−ニトロ−1,3−ジフェニルプロペン、3−ニトロ−3−メトキシプロペン等が挙げられる。
アリルアミン類の具体例としては、アリルジエチルアミン、3−メトキシアリルジフェニルアミン、トリアリルアミン、2−ブテニルジベンジルアミン等が挙げられる。
アリルスルホン類の具体例としては、アリルフェニルスルホン、メチリル−p−トリルスルホン、2−メチル−3−スルホレン、1,3−ジフェニルアリルメチルスルホン等が挙げられる。
アリルスルホネイト類の具体例としては、アリルトルエン−4−スルホネイト、3−チオフェンメタンスルホネイト、4−クロロ−2−ブテニルメタンスルホネイト等が挙げられる。
カルボン酸のアリルエステル類の具体例としては、酢酸アリル、酢酸−2−ヘキセニル、酢酸−2,4−ヘキサジエニル、酢酸プレニル、酢酸ゲラニル、酢酸ファルネシル、酢酸シンナミル、酢酸リナリル、酢酸−3−ブテン−2−イル、酢酸−2−シクロペンテニル、酢酸−2−トリメチルシリルメチル−2−プロペニル、酢酸−2−メチル−2−シクロヘキセニル、プロピオン酸−1−フェニル−1−ブテン−3−イル、酪酸−1−シクロヘキシル−2−ブテン、4−シクロペンテン−1,3−ジオール−1−アセテイト、1,4−ジアセトキシブテン−2、3−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−1等が挙げられる。
アリルカーボネイト類の具体例としては、アリルメチル炭酸エステル、4−アセトキシ−2−ブテニルエチル炭酸エステル、ネリルメチル炭酸エステル等が挙げられる。
アリルカルバメイト類の具体例としては、アリル−N−(4−フルオロフェニル)カルバメイト、2−ブテニル−N−メチルカルバメイト、フルフリル−N−(2−メトキジフェニル)カルバメイト等が挙げられる。
リン酸アリルエステル類の具体例としては、リン酸アリルジメチルエステル、リン酸−3−メチル−2−ブテニルジフェニルエステル、リン酸メチルエチルフルフリルエステル等が挙げられる。
アリルエーテル類の具体例としては、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル、2,3−ジフェニルアリルイソプロピルエーテル、2−ブテニル−4−フルオロフェニルエーテル等が挙げられる。
ビニルエチレンオキシド類の具体例としては、ブタジエンモノオキシド、シクロペンタジエンモノオキシド、1,3−シクロヘキサジエンモノオキシド等が挙げられる。
なお、特に好ましいアリル原料化合物として、下記一般式(b)で表される3,4−二置換ブテン−1、下記一般式(c)で表される1,4−二置換ブテン−2、及びそれらの化合物からなる群より選ばれる二以上の化合物の混合物を挙げることができる。
CH2=CH−CHR1−CH22 ...一般式(b)
上記一般式(b)中、R1,R2は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わし、少なくともいずれか一方はアセトキシ基である。上記一般式(b)で表わされる3,4−二置換ブテン−1の具体例としては、3,4−ジアセトキシブテン−1、3−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−1、4−アセトキシ−3−ヒドロキシブテン−1が挙げられる。
3CH2−CH=CH−CH24 ...一般式(c)
上記一般式(c)中、R3、R4は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わし、少なくともいずれか一方はアセトキシ基である。上記一般式(c)で表わされる1,4−二置換ブテン−2の具体例としては、1,4−ジアセトキシブテン−2、1−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−2が挙げられる。
次に、本発明の製造方法に使用される酸素求核剤について説明する。一般的に求核剤とは、非共有電子対を持ち、塩基性で、炭素核を攻撃する傾向を有している反応体のことを指すが、特に本発明では、酸素原子上に非共有電子対を持ち、その電子対でπ−アリル錯体のアリル位末端炭素核を攻撃する傾向を有するあらゆる反応体が、酸素求核剤として用いられる。
本発明で使用可能な酸素求核剤は、具体的には、求核性の酸素原子を含むAO−Hで表わされるプロトン付加体の化合物、又は、その脱プロトン体であるAO-で表わされるアニオン、更には、反応系の中でそのアニオンとなり得る化合物である。前記式中、Aは、水素原子又は有機基を表わす。有機基としては、炭素原子、窒素原子、リン原子、又は硫黄原子により当該求核性の酸素原子と結合するものであって、反応系で液体となり、且つ、反応系に悪影響を及ぼす虞が無いものが用いられる。これらの有機基の炭素数は、通常は40以下の範囲が、反応系で溶解し易いので好ましい。中でも好ましくは30以下、特に好ましくは20以下である。
求核性酸素原子と炭素原子で結合する有機基としては、無置換又は置換の鎖状又は環状のアルキル基、無置換又は置換のアリール基又はアシル基等が挙げられる。
求核性酸素原子と窒素原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のアミノ基、C=N結合を有する基等が挙げられる。
求核性酸素原子とリン原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のホスホネイト基、無置換又は置換のホスフィネイト基、もしくは無置換又は置換のホスフィノイル基等が挙げられる。
求核性酸素原子と硫黄原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のスルホニル基等が挙げられる。
なお、上記各例示基の置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。上記各例示基がこれらの置換基を有する場合には、置換基も含めた炭素数が上記範囲内となるようにする。
ただし、上述の定義に該当する酸素求核剤であっても、酸素求核剤が反応によってアリル原料化合物から脱離する置換基(上記一般式(a)におけるX若しくはそのアニオンX-)又はそのプロトン付加体(X−H)と同じ場合、見かけ上反応が進行しない状態、又は、アリル原料化合物の異性化物が生成物として得られるのみという状態となるので、そのような酸素求核剤は除外される。また、酸素求核剤がアリル原料化合物と全く同じ場合、例えば酸素求核剤とアリル原料化合物が共にアリルアルコールであるような場合には、従来技術の項で記載しているように得られる生成物は原料が単に脱水縮合したような構造であるジアリルエーテルに限られ、幅広い合成を行なう観点から見ると重要性に欠けるので、そのような酸素求核剤も除外される。
以上説明した酸素求核剤の中でも、全体の分子量が400以下(炭素数が約30以下)であり、反応条件下において全量又は一部の酸素求核剤が、溶媒への溶解、アリル原料化合物との相溶、若しくは熱による融解等によって、溶けた状態になり得るものが好ましい。
酸素求核剤の具体例をプロトン付加体の形態で列挙すると、Aが水素原子の場合は、水である。
Aが求核性酸素と炭素原子で結合した有機基である場合には、ヒドロキシ化合物類、カルボン酸類、チオカルボン酸類、又はセレノカルボン酸類等が挙げられる。
ヒドロキシ化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、2−エチルへキシルアルコール、4−クロロ−1−ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、及び1,4−ブタンジオール等のアルコール類;フェノール、p−メトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフトール、2−ピリジノール、又は2−ブロモ−4−ピリジノール等のフェノール類;及び2−ピリジノール、2−ブロモ−4−ピリジノール等の水酸基を有するヘテロアリール化合物が挙げられる。
カルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、シュウ酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;安息香酸、ナフタレン−2−カルボン酸、m−シアノ安息香酸、o−トルイル酸等の芳香族カルボン酸類が挙げられる。
チオカルボン酸類の具体例としては、CH3C(=S)−OHで表わされる化合物、又はPhC(=S)−OHで表わされる化合物等が挙げられる。
セレノカルボン酸類の具体例としては、CH3(C=Se)−OHで表わされる化合物、又はPhC(=Se)−OHで表わされる化合物等が挙げられる。なお、本明細書において、Phはフェニル基を表わす。
Aが求核性酸素と窒素原子で結合した有機基である場合には、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシアミン等のヒドロキシアミン類;アセトンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロペンタノンオキシム等のオキシム類;t−ブチル−N−ヒドロキシカーバメイト、N−ヒドロキシマレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
Aが求核性酸素とリン原子で結合した有機基である場合には、ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のホスフィン酸類;エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸モノフェニルエステル等のホスホン酸エステル類;及びリン酸ジフェニルエステル、リン酸ジメチルエステル等のリン酸エステル類等が挙げられる。
Aが求核性酸素と硫黄原子で結合した有機基である場合には、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のスルホン酸類;又は、硫酸モノフェニルエステル、硫酸モノオクチルエステル等の硫酸モノエステル類等が挙げられる。
なお、上述の例示は全てプロトン付加体で示したが、各例示化合物の脱プロトン体、また、反応系の中で当該脱プロトン体となり得る化合物も同様に例示される。反応系の中で当該脱プロトン体となり得る化合物としては、当該脱プロトン体がその他の原子又は原子団と結合した化合物が挙げられる。当該脱プロトン体と結合するその他の原子又は原子団としては、各種の一価のカチオン(Na+,K+等)などが挙げられる。
以上例示の中でも、Aが求核性酸素と炭素原子で結合した有機基である場合が特に好ましく、具体的には、以下のタイプ(i)〜(iv)の酸素求核剤が特に好ましい。
(i)RO−H又はRO-(前記式中、Rは、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に二重結合や三重結合を有していても良いアルキル基を表わす。)で表されるアルコール類又はそれらの脱プロトン体。
(ii)ArO−H又はArO-(前記式中、Arは、置換基を有していてもよく、窒素、酸素、リン、硫黄のようなヘテロ元素を含んでいても良いアリール基を表わす。)で表されるヒドロキシアリール類又はそれらの脱プロトン体。
(iii)R’COO−H又はR’COO-(前記式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表し、更に置換基を有していても良く、炭素鎖中に二重結合や三重結合を有していても良い基を表わす。)で表される脂肪族カルボン酸類又はそれらの脱プロトン体。
(iv)Ar’COO−H又はAr’COO-(前記式中、Ar’は、置換基を有していてもよく、窒素、酸素、リン、硫黄のようなヘテロ元素を含んでいても良いアリール基を表わす。)で表される芳香族カルボン酸類又はそれらの脱プロトン体。
タイプ(i)の酸素求核剤としては、飽和又は不飽和のアルコール及びそれらの置換基含有体、飽和又は不飽和のジオールや多置換アルコール又はそれらの置換基含有体等が挙げられる。飽和又は不飽和のアルコール及びそれらの置換基含有体の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、ベンジルアルコール、1−ブロモ−2−プロパノール、2−メチルシクロペンタノール、2−フェニルエタノール、ネオペンチルアルコール、4−シクロヘキセノール、コレステロール等が挙げられる。飽和又は不飽和のジオールや多置換アルコール又はそれらの置換基含有体の具体例としては、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、グリセリン、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(i)の酸素求核剤としては、飽和のアルコール又は飽和のジオールが好ましく、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の炭素数1〜10のジオールが好ましい。
タイプ(ii)の酸素求核剤としては、モノヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体、ジ又は多ヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体等が挙げられる。モノヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体の具体例としては、フェノール、クレゾール、4−ニトロフェノール、2−フルオロフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、3−t−ブチル−2−ナフトール等が挙げられる。ジ又は多ヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体の具体例としては、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、2,4−ジヒドロキシフェニルエチルケトン、4−n−へキシルレソルシノール、1,8−ジヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1−メチル−2,3−ジヒドロキシナフタレン、及び1,2,4−ベンゼントリオール等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(ii)の酸素求核剤としては、モノヒドロキシアリール又はジヒドロキシアリールが好ましく、具体的には、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、又は2,6−ジヒドロキシナフタレン等が好ましい。
タイプ(iii)の酸素求核剤としては、飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体、不飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの置換基含有体等が挙げられる。飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、α−メチル酪酸、γ−クロロ−α−メチル吉草酸、α−ヒドロキシプロピオン酸、γ−フェニル酪酸等が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、2−シクロヘキセンカルボン酸、4−メトキシ−2−ブテン酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(iii)の酸素求核剤としては、飽和脂肪族カルボン酸又は飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のC1〜C20のものが好ましい。
タイプ(iv)の酸素求核剤としては、芳香族カルボン酸及びそれらの置換基含有体、芳香族ジ又は多カルボン酸及びそれらの置換基含有体が挙げられる。芳香族カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、安息香酸、3−シアノ安息香酸、2−ブロモ安息香酸、2,3−ジメトキシ安息香酸、4−フェノキシ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−トルイル酸、o−メトキシ安息香酸、フタル酸モノメチルエステル、テレフタル酸モノエチルエステル、ナフタレン−1−カルボン酸、1−メチルナフタレン−2−カルボン酸、2−エトキシナフタレン−1−カルボン酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、1−ブロモナフタレン−2−カルボン酸、アントラセン−9−カルボン酸、フェナントレン−4−カルボン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−メトキシチオニコチン酸、6−クロロニコチン酸、イソキノリン−1−カルボン酸、キノリン−3−カルボン酸、キノリン−4−カルボン酸、4−メトキシキノリン−2−カルボン酸等が挙げられる。芳香族ジ又は多カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(iv)の酸素求核剤としては、芳香族カルボン酸又はジカルボン酸が好ましく、具体的には、安息香酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、又はテレフタル酸等が好ましい。
続いて、本発明の製造方法で使用される触媒について説明する。本発明で使用される触媒は、一以上の遷移金属化合物と、単座配位ホスファイト化合物とを含む。
遷移金属化合物としては、周期表の第8〜10族(IUPAC無機化学命名法改訂版(1998)による)に属する遷移金属からなる群より選ばれる遷移金属を含む一種以上の化合物が使用される。具体的には、鉄化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、コバルト化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物等が挙げられるが、中でもルテニウム化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましく、更にはニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましく、特にパラジウム化合物が好ましい。これらの化合物の種類は任意であるが、具体例としては、上記遷移金属の酢酸塩、アセチルセトネイト化合物、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合物等が挙げられる。
遷移金属化合物の具体例を列記すると、鉄化合物としては、Fe(OAc)2、Fe(acac)3、FeCl2、Fe(NO33等が挙げられる。ルテニウム化合物としては、RuCl3、Ru(OAc)3、Ru(acac)3、RuCl2(PPh33等が挙げられる。オスミウム化合物としては、OsCl3、Os(OAc)3等が挙げられる。コバルト化合物としては、Co(OAc)2、Co(acac)2、CoBr2、Co(NO32等が挙げられる。ロジウム化合物としては、RhCl3、Rh(OAc)3、[Rh(OAc)22、Rh(acac)(CO)2、[Rh(OAc)(cod)]2、[RhCl(cod)]2等が挙げられる。イリジウム化合物としては、IrCl3、Ir(OAc)3、[IrCl(cod)]2が挙げられる。ニッケル化合物としては、NiCl2、NiBr2、Ni(NO32、NiSO4、Ni(cod)2、NiCl2(PPh33等が挙げられる。パラジウム化合物としては、Pd(0)、PdCl2、PdBr2、PdCl2(cod)、PdCl2(PPh32、Pd(PPh34、Pd2(dba)3、K2PdCl4、K2PdCl6、PdCl2(PhCN)2、PdCl2(CH3CN)2、Pd(dba)2、Pd(NO32、Pd(OAc)2、Pd(CF3COO)2、PdSO4、Pd(acac)2、その他、カルボキシレート化合物、オレフィン含有化合物、Pd(PPh34等のような有機ホスフィン含有化合物、アリルパラジウムクロライド二量体等が挙げられる。白金化合物としては、Pt(acac)2、PtCl2(cod)、PtCl2(CH3CN)2、PtCl2(PhCN)2、Pt(PPh34、K2PtCl4、Na2PtCl6、H2PtCl6が挙げられる。なお、以上の例示において、codは1,5−シクロオクタジエンを、dbaはジベンジリデンアセトンを、acacはアセチルアセトネイトを、Acはアセチル基をそれぞれ表す。
遷移金属化合物の種類は特に制限されず、活性な金属錯体種であれば、単量体、二量体、及び/又は多量体の何れであっても構わない。
遷移金属化合物の使用量については特に制限はないが、触媒活性と経済性の観点から、反応原料であるアリル化合物に対して、通常1×10-8(0.01モルppm)モル当量以上、中でも1×10-7(0.1モルppm)モル当量以上、特に1×10-6(1モルppm)モル当量以上、また、通常1モル当量以下、中でも0.001モル当量以下、特に0.0001モル等量以下の範囲で使用するのが好ましい。
単座配位ホスファイト化合物としては、下記一般式(1)で表わされる構造を有するトリアルキル型のホスファイト化合物が用いられる。
P(OR1)(OR2)(OR3) ...一般式(1)
上記一般式(1)において、R1、R2、R3は、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアルキル基を表す。アルキル基は鎖状でも環状でも良く、鎖状の場合は直鎖状でも分岐鎖状でも良い。また、アルキル基の炭素鎖中には、一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。上記アルキル基の置換基の種類としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
また、R1、R2、R3のうち任意の二以上の基が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。環の数は特に制限されないが、通常0〜3、好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1である。複数の環が存在する場合、これらの環が一部を共有することによって縮合環構造を形成していても良い。また、個々の環を形成する原子の数も特に制限されないが、通常3〜10員環、好ましくは4〜9員環、特に好ましくは5〜7員環である。
1、R2、R3の炭素数は、それぞれ独立に、通常1〜20、好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10の範囲である。R1、R2、R3のうち二以上の基が結合して環状構造を形成している場合、その炭素数は、環状構造の形成に関与している基の数をpとすると、通常1〜40×p、好ましくは1〜30×p、特に好ましくは1〜20×pである。
1、R2、R3の具体例を列挙すると、置換基を有していても良い直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、デシル基、2−クロロエチル基、ベンジル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、5−シアノペンチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、3−(4−ニトロフェニル)プロピル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2,3−ジエチルシクロヘキシル基、4−エトキシシクロヘキシル基、3,5−ジブロモシクロヘキシル基等が挙げられる。
二重結合や三重結合を有する鎖状又は環状のアルキル基としては、アリル基、2−ブテニル基、ゲラニル基、5−クロロ−3−ペンテニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等が挙げられる。環状構造を形成できる鎖状又は環状のアルキル基としては、1,1−ジエチルメチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,3−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、プロパン−1,1,1−トリメチレン基、2−ヒドロキシエタン−1,1,1−トリメチレン基、3−ヒドロキシプロパン−1,1,1−トリエチレン基等が挙げられる。
上記例示の中でも、R1、R2、R3としては、分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基が好ましい。
分岐鎖状アルキル基の具体例としては、i−プロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルへキシル基、イソノニル基、イソデシル基、4,4−ジメチル−1−ペンチル基が挙げられる。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等の炭素数1〜15のものが挙げられる。
更に、上記のうちでも、第二級アルキル基又は第三級アルキル基のように酸素原子に結合した炭素原子の部分で分岐鎖を形成している場合が特に好ましい。第二級アルキル基又は第三級アルキル基の具体例としては、i−プロピル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、ペンタン−3−イル基、ヘプタン−3−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
上述した単座配位ホスファイト化合物の具体例を列挙すると、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリ−i−プロピルホスファイト、トリアリルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、エチルジ−t−ブチルホスファイト、2−エチルへキシルジエチルホスファイト、ジエチルメチルホスファイト、ジベンジル−i−プロピルホスファイト、ジイソデシルアリルホスファイト、トリス(3−メトキシプロピル)ホスファイト、トリス(2−ブテニル)ホスファイト、トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスファイト、トリス(3−クロロプロピル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジイソオクチル−2,3−ジブロモ−1−プロピルホスファイト、トリメチロールプロパンホスファイト、及び下記構造式(L−1)〜(L−10)で表わされる構造の化合物が挙げられる。
Figure 0004308609
上記例示化合物の中でも、トリ−i−プロピルホスファイト、エチルジ−t−ブチルホスファイト、2−エチルヘキシルジエチルホスファイト、ジベンジル−i−プロピルホスファイト、ジイソデシルアリルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジイソオクチル−2,3−ジブロモ−1−プロピルホスファイト、t−ブチルジアリルホスファイト、イソオクチルジベンジルホスファイト、ジ(3−クロロプロピル)ネオペンチルホスファイト、シクロプロピルビス(2−ブテニル)ホスファイト、ジエチル−i−プロピルホスファイト、ジメチル−t−ブチルホスファイト、シクロヘキシルジメチルホスファイト、トリネオペンチルホスファイト、ジイソオクチルネオペンチルホスファイト、ジシクロヘキシルイソブチルホスファイト、及び上記(L−2)、(L−5)、(L−6)、(L−7)で表される化合物が好ましい。
更に、単座配位ホスファイト化合物としては、R1、R2、R3がそれぞれ独立して、炭素数1〜10までの第二級アルキル基又は第三級アルキル基である化合物が特に好ましい。その具体例としては、トリ−i−プロピルホスファイト、エチルジ−t−ブチルホスファイト、ジベンジル−i−プロピルホスファイト、ジ−i−プロピル−t−ブチルホスファイト、トリ−t−ブチルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリシクロヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシル−t−ブチルホスファイト、i−プロピル−t−ブチル−1,1−ジメチルプロピルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、トリ−i−プロピルホスファイトが最も好ましい。
単座配位ホスファイト化合物の使用量は、上記遷移金属化合物に対する比率(モル比)として、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、特に好ましくは1.0以上、また、通常10000以下、好ましくは500以下、特に好ましくは100以下の範囲である。
特に良好な活性を示す触媒としては、パラジウム化合物と、R1,R2,R3のうち少なくとも一つが炭素数1〜15の分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基である単座配位ホスファイトとの組み合わせが挙げられる。
上記の遷移金属化合物と単座配位ホスファイト化合物とは、それぞれ単独に反応系に添加してもよいし、或いは予め錯化した状態で使用してもよい。又は、上記単座配位ホスファイト化合物を何らかの不溶性樹脂担体等に結合させたものに、上記遷移金属化合物を担持させた、不溶性固体触媒の状態として反応に用いても良い。更に、1種類の単座配位ホスファイト化合物のみを使用して反応を行なっても、2種類以上の単座配位ホスファイト化合物を任意の組み合わせで同時に用いて反応を行なっても良い。
以上説明した遷移金属化合物及びトリアルキル型の単座配位ホスファイト化合物からなる触媒を用いて、アリル原料化合物とそれとは異なる酸素求核剤とを反応させることにより、新たなアリル化合物(例えば、エーテル化合物やエステル化合物等)を効率よく製造することができる。
本発明の製造方法を実施するに当たって、通常は液相中で反応を行なう。反応は溶媒の存在下或いは非存在下の何れでも実施し得る。溶媒を使用する場合、触媒及び原料化合物を溶解するものであって、触媒活性に悪影響を及ぼさないものであれば、任意の溶媒を使用可能であり、その種類には特に限定はない。好ましい溶媒の具体例を列挙すると、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸類、メタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、ジグライム、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジアリルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ジ(n−オクチル)フタレイト等のエステル類、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、アリル化反応系内で副生物として生成する高沸物、原料であるアリル化合物、生成物であるアリル化合物、原料アリル化合物の脱離基に由来する化合物等が挙げられる。これらの溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、原料であるアリル化合物の合計量に対して、通常0.1重量倍以上、好ましくは0.2重量倍以上、また、通常20重量倍以下、好ましくは10重量倍以下である。
実際に反応を行なうに当たっては、様々な反応方式を用いることができる。例えば、攪拌型の完全混合反応器、プラグフロー型の反応器、固定床型の反応器、懸濁床型の反応器等を用いて、連続方式、半連続方式又は回分方式のいずれでも行なうことができる。
それぞれについて実際に反応を行なう時には、反応基質や生成物により適宜条件を検討すれば良いが、例えば攪拌型の完全混合反応器の場合には、アリル原料化合物と酸素求核剤ならびに場合によっては溶媒を加えた混合液に、別途、触媒調製槽で調製した触媒液を加えたものを、反応器に連続的又は半連続的に導入し、ある反応温度下で攪拌しながら滞留させることで酸素求核剤のアリル化反応を進行させ、一部の反応液を連続的又は半連続的に反応器から抜き出しながら反応を実施することができる。また、プラグフロー型の反応器の場合には、上記の原料ならびに触媒を含む反応液を、ある反応温度に保った管状の反応器に流通させながら反応を進行させることができる。この場合、原料の高転化率の実現に適した方式である。更に、触媒を担持した不溶性の固体触媒を用いる場合には、触媒が充填された反応器に原料を含む溶液を通過させながら反応を行なうような固定床反応方式を採用したり、粒子状の不溶性触媒と原料を含む溶液とを反応器内で攪拌混合させ、懸濁状態に保って反応を行なうような懸濁床反応方式を採用したりすることもできる。
反応温度は、触媒反応が進行する温度であれば特に限定されないが、パラジウム等の貴金属化合物を触媒として使用する場合は、高温になり過ぎるとメタル化が起こり有効な触媒濃度が低減する危険性がある。また、高温ではホスファイト化合物の分解も懸念されることから、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、更に好ましくは50℃以上、また、通常180℃以下、好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下が推奨される。
反応器内の雰囲気としては、溶媒、原料化合物、反応生成物、反応副生物、触媒分解物等に由来する蒸気以外は、アルゴンや窒素等の反応系に不活性なガスで満たされていることが望ましい。特に注意を払うべき点として、空気の漏れ込み等による酸素の混入は、触媒の劣化、特にホスファイト化合物の酸化消失の原因となることから、その量を極力低減させることが望ましい。
反応器内の溶液の滞留時間、すなわち反応時間は、目指すべき原料の転化率の値によって左右されるが、一定の触媒濃度の下では、高転化率を求めるほど反応時間を長する必要がある。一方で、高転化率のまま反応時間を短くしたければ、用いる触媒濃度を高めたり、触媒量を多くしたり、反応温度を高温にしたりすることによって触媒活性を上げる必要がある。しかしながら、触媒の熱履歴による劣化や副反応を抑制するためにも、必要以上に長い反応時間や高温での反応を採用することは避けた方が望ましい。
また、反応により得られたアリル化合物と触媒の分離には、慣用の液体触媒再循環プロセスで用いられるあらゆる分離操作を採用することができる。分離操作の具体例としては、単蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸留、水蒸気蒸留等の蒸留操作のほか、気液分離、蒸発(エバポレーション)、ガスストリッピング、ガス吸収及び抽出等の分離操作が挙げられる。各成分の分離操作を各々独立の工程で行なってもよく、2以上の成分の分離を単一の工程で同時に行なってもよい。一部のアリル原料化合物や求核剤が未反応で残っている場合には、同様の分離方法で回収し、再び反応器にリサイクルするとより経済的である。更に分離された触媒もそのまま反応器にリサイクル若しくは回収して再活性化後再利用する方が経済的で望ましい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
<実施例1,2及び比較例1〜3>
アリル原料化合物としてアリルメチルカーボネイトを用い、酸素求核剤としてフェノールを用いたアリルフェニルエーテルの合成反応に、本発明を適用した。
遷移金属化合物としてパラジウム含有量21.5重量%のトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.0149g(0.0151mmol)を、また、トリアルキル型の単座配位ホスファイト化合物としてトリイソプロピルホスファイト(実施例1)又はトリエチルホスファイト(実施例2)をパラジウムに対して8等量(0.2408mmol)シュレンクに入れ、アルゴン置換後、2.0mlのテトラヒドロフランを加えて室温で攪拌することで、パラジウム濃度15.05mmol/lの触媒液を調製した。続いて、反応を行なうために別途用意したシュレンクをアルゴン置換し、0.1720g(1.481mmol)のアリルメチルカーボネイト及び0.2707g(2.877mmol)のフェノールを含むテトラヒドロフラン溶液5.0mlをアルゴン下で加えた。そこに上記の触媒液をマイクロシリンジで20.0μl加え、60℃で加熱することで反応を行なった。30分間の反応後、溶液組成をガスクロマトグラフィーで分析することによって、アリルフェニルエーテルの収率を求めた。
また、比較として、従来から用いられている二座ホスフィン配位子の1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、トリアリール型の単座配位ホスファイト配位子のトリフェニルホスファイト配位子及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを用いて同様に反応を行なった(比較例1,比較例2及び比較例3)。ただし、二座配位子であるdppbを用いたときには、パラジウムに対して4等量ほど加えた。
Figure 0004308609
<実施例3及び比較例4〜7>
アリル原料化合物として酢酸アリルを用い、酸素求核剤として1−オクタノールを用いたアリルオクチルエーテルの合成反応に本発明を適用した。
遷移金属化合物としてパラジウム含有量21.5重量%のトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.0048g(0.0048mmol)を、また、トリアルキル型の単座配位ホスファイト化合物としてパラジウムに対して4等量のトリイソプロピルホスファイト(0.0389mmol)をシュレンクに入れ、アルゴン置換した後、0.943g(9.420mmol)の酢酸アリル及び2.422g(18.594mmol)の1−オクタノールをアルゴン下で加えて100℃で加熱することで反応を行なった。60分間の反応後、溶液組成をガスクロマトグラフィーで分析することによってアリルオクチルエーテルの収率を求めた。
また、比較として、従来から用いられている二座ホスフィン配位子の1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、単座ホスフィン配位子のトリフェニルホスフィン及び単座配位ホスファイト配位子のトリフェニルホスファイト配位子及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを用いて同様に反応を行なった。ただし、二座配位子であるdppbを用いたときには、パラジウムに対して2等量ほど加えた。
Figure 0004308609
<実施例4及び比較例8〜9>
アリル原料化合物として酢酸アリルを用い、酸素求核剤として安息香酸を用いた安息香酸アリルの合成反応に本発明を適用した。
遷移金属化合物としてパラジウム含有量21.5重量%のトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.0149g(0.0151mmol)を、また、トリアルキル型の単座配位ホスファイト化合物としてパラジウムに対して8等量のトリイソプロピルホスファイト(0.2409mmol)をシュレンクに入れ、アルゴン置換後、2.0mlのテトラヒドロフランを加えて室温で攪拌することで、パラジウム濃度15.05mmol/lの触媒液を調製した。続いて、反応を行なうために別途用意したシュレンクをアルゴン置換し、0.1208g(1.206mmol)の酢酸アリル及び0.3083g(2.525mmol)の安息香酸を含むテトラヒドロフラン溶液4.0mlをアルゴン下で加えた。そこに上記の触媒液をマイクロシリンジで60.0μl加え、60℃で加熱することで反応を行なった。30分間の反応後、溶液組成をガスクロマトグラフィーで分析することによって安息香酸アリルの収率を求めた。
また、比較として、従来から用いられている二座ホスフィン配位子の1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)及び単座配位ホスファイト配位子のトリフェニルホスファイト配位子を用いて同様に反応を行なった。ただし、二座配位子であるdppbを用いたときには、パラジウムに対して4等量ほど加えた。
Figure 0004308609

Claims (5)

  1. ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる遷移金属を含む一以上の遷移金属化合物と、下記一般式(1)で表わされる構造を有する単座配位ホスファイト化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と、該アリル原料化合物とは異なる構造を有する酸素求核剤とを反応させることによって、該アリル原料化合物とは異なる組成式を示す新たなアリル化合物を製造することを特徴とする、アリル化合物の製造方法。
    P(OR1)(OR2)(OR3) ...一般式(1)
    (前記一般式(1)において、R1、R2、R3は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を表わす
  2. 該アリル原料化合物が、下記一般式(a)で表される構造を有することを特徴とする、請求項1記載のアリル化合物の製造方法。
    Figure 0004308609
    (上記一般式(a)において、Ra〜Reは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基(環の上下に芳香族6π電子雲を形成する複素環式化合物を含む。以下同様。)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、又はアシロキシ基を表す。これらの基のうちアミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシロキシ基は、更に置換基を有していても良い。Ra〜Reの何れかが炭素鎖を含む場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。
    Xは、ハロゲン原子、電子吸引性基が少なくとも一つ結合した炭素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、スルホネイト基、アシロキシ基、カーボネイト基、カルバメイト基、ホスフェイト基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基を表す。これらの基のうちアミノ基、スルホニル基、スルホネイト基、アシロキシ基、カーボネイト基、カルバメイト基、ホスフェイト基、アルコキシ基、アリーロキシ基は、更に置換基を有していても良い。Xが炭素鎖を含む場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。また、Ra〜Re及びXのうち任意の二以上が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。)
  3. 該酸素求核剤が、反応によってアリル原料化合物から脱離する置換基X及びそのプロトン付加体X−Hとは異なる化合物であって、酸素原子をAO−H又はその脱プロトン体であるAO-(前記式中、Aは、水素原子、又は、有機基であって炭素原子、窒素原子、リン原子、又は硫黄原子で当該酸素原子と結合するものを表わす。)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のアリル化合物の製造方法。
  4. 該単座配位ホスファイト化合物において、前記一般式(1)中のR1、R2、R3のうち少なくとも一つが、分岐鎖状アルキル基であることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のアリル化合物の製造方法。
  5. 該遷移金属化合物がパラジウム化合物であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のアリル化合物の製造方法。
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