JP2004115506A - アリル化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 遷移金属化合物及び三価のリン化合物からなる触媒の下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させて新たなアリル化合物を製造する方法において、触媒系に変更を加えることなく、簡便な手法によって触媒活性を上昇させ、アリル化合物の製造効率を向上させる。
【解決手段】 周期表の第8〜10族に属する遷移金属からなる群より選ばれる一以上の遷移金属を含む遷移金属化合物と、三価のリン化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させることによって新たなアリル化合物を製造する方法において、ホスホニウム化合物を反応系に存在させる。
【選択図】 なし
【解決手段】 周期表の第8〜10族に属する遷移金属からなる群より選ばれる一以上の遷移金属を含む遷移金属化合物と、三価のリン化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させることによって新たなアリル化合物を製造する方法において、ホスホニウム化合物を反応系に存在させる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、触媒の存在下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させることにより、新たなアリル化合物を製造する方法に関する。
アリル化合物を原料として、遷移金属化合物を用いた触媒反応を行なうことにより、様々な種類の新たなアリル化合物を合成することができる。その反応は、下の反応式に示すように、脱離基Xを有するアリル原料化合物が遷移金属化合物にπ配位及び酸化的付加することで、アリル部位の3つの炭素が金属に結合したπ−アリル錯体が形成され、そのπ−アリル錯体の末端アリル炭素がNu−H又はNu-で表される求核剤により攻撃されることによって進行する。
アリル化合物の合成反応の詳細に関しては、非特許文献1に総説的にまとめて記載されているが、反応において求核剤の種類を選ぶことで、求核剤がアリル化された形の様々な生成物を得ることができる。中でも、求核剤がアルコール類やフェノール類、カルボン酸類といった酸素求核剤の場合には、それぞれアリルアルキルエーテルやアリルフェニルエーテル、カルボン酸アリルエステルが生成し、合成化学的に有用な素反応の一つと言える。
上述した触媒を用いたアリル化反応を工業的スケールで実施する場合には、貴金属である高価なパラジウムの使用量を減らす目的や反応器サイズを小さくして建設費コストを削減する目的等のために、反応性の向上が強く望まれる。そうした反応性を向上させる試みの一つとして、求核剤のカウンターカチオンを反応系中に存在させる方法が知られている。効果としては、そうしたカウンターカチオンとペアもしくは共存状態にある求核剤は、その求核攻撃力が増加しそれに伴って反応性が向上することである。
具体的な例を幾つか示すと、非特許文献2において、シクロペンタジエンモノオキシドと酢酸アニオンの反応が報告されているが、この反応においては、反応性の向上のために酢酸アニオンのカウンターカチオンとしてナトリウムイオンが用いられている。しかしながら、こうしたアルカリ金属がカウンターカチオンの場合、+1価の電荷が小さな一つの金属イオン上に集中しているため、カウンターアニオンの求核剤と強いイオン対を形成する傾向にあるため、求核剤の攻撃力は十分に高いものとなっていない。
また、アリルアルキル化反応の例として、様々なアリル原料化合物とマロン酸ジエステル誘導体類との反応が、数多くの学術論文で報告されているが、通常、マロン酸ジエステルの状態では反応性が低いため、水素化アルカリ金属等との反応により、カウンターカチオンとしてナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンを持つマロン酸ジエステルのカルボアニオンの状態で反応を行なわせている。これらの方法においては、上記の観点から活性が十分に高められているとは考えられない上、工業化プロセスへの適用を考えた場合、危険物第3類に該当する禁水性物質であり、水素ガスが発生するような水素化アルカリ金属等を大量に使用するのは望ましいとは言えない。
上述したように、アリル化反応において反応性を促進させる目的で共存させるカウンターカチオンとして主にアルカリ金属カチオンが知られているが、ホスホニウムをカウンターカチオンとして系中に共存させた反応例はこれまでのところ報告されていない。π−アリル錯体と関連したホスホニウムの記載例としては、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5にあるように、パラジウム−トリフェニルホスフィン−(π−アリル)錯体にトリフェニルホスフィンが求核攻撃した結果、アリル基を有するホスホニウムが生成した例や、非特許文献6に記載されているように、ロジウム−トリフェニルスチビン−(π−アリル)錯体に同じくトリフェニルホスフィンが求核攻撃してアリル基を有するホスホニウムが生成した例が知られている。しかしながら、これらの例は、ホスフィンやスチビンが配位したπ−アリル錯体からホスホニウムが生成した例であって、ホスホニウムを触媒反応の促進に利用した例ではない。
また、アリル化反応に関連したホスホニウムの利用例としては、特許文献1や非特許文献7に記載されているブタジエンの水和二量化反応による2,7−オクタジエン−1−オールの製造が知られている。しかしながら、ホスホニウムはパラジウム触媒の配位子として用いられているだけであり、実際の求核剤との反応を促進するカウンターカチオンは、別途添加する第3級アミンに由来するアンモニウムである。
上で述べてきたように、アリル原料化合物と求核剤との反応による種々のアリル化合物の製造を工業的スケールで実施するためには、触媒コストの削減が重要な項目の一つとなってくる。触媒コストの削減方法としては、反応性の向上による触媒使用量の低減を主に挙げることができるが、反応性の向上を目的とした新たな高活性型の触媒の創出には、膨大な開発コストや検討期間を有する場合がしばしばである。そのため、触媒系に変更を加えることなく、第3成分的な化合物の共存といった簡便な手法によって触媒活性を向上させる方法が提示されれば、有効な手法の一つとなり、非常に重要性が高いと言える。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、遷移金属化合物及び三価のリン化合物からなる触媒の下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させて新たなアリル化合物を製造する方法において、触媒系に変更を加えることなく、第3成分的な化合物の共存といった簡便な手法によって触媒の活性を向上させ、効率的にアリル化合物を製造できるようにした、アリル化合物の製造方法を提供することに存する。
本発明者らは、周期表の第8〜10族の遷移金属化合物及び三価のリン化合物からなる触媒を用いて、様々なアリル化反応を鋭意検討していく中で、求核剤のカウンターカチオンとしてホスホニウムを反応系中に存在させるといった簡便な手法によって反応性を数倍に高めることに成功し、本発明に到達した。本発明は、ホスホニウムという緩いイオン対しか形成できないカウンターカチオンの存在によって、求核剤の求核攻撃性が高められたことが反応性向上の理由であると考えられるが、そうした理由から、π−アリル錯体に求核剤が攻撃することによって進行する、あらゆる種類のアリル化合物の製造方法に適用可能であると考えられる。
すなわち、本発明の要旨は、周期表の第8〜10族に属する遷移金属からなる群より選ばれる一以上の遷移金属を含む遷移金属化合物と、三価のリン化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させることによって新たなアリル化合物を製造する方法において、ホスホニウム化合物を反応系に存在させることを特徴とする、アリル化合物の製造方法に存する。
本発明によれば、周期表の第8〜10族の遷移金属化合物及び三価のリン化合物からなる触媒を用いて、アリル原料化合物と求核剤とを反応させて新たなアリル化合物を製造する際に、求核剤のカウンターカチオンとしてホスホニウムを反応系中に存在させることにより、極めて簡便に触媒活性を上昇させ、アリル化合物の製造効率を大幅に向上させることが可能となるので、工業的に極めて有利である。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明に係るアリル化合物の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と略称する。)は、周期表の第8〜10族に属する遷移金属からなる群より選ばれる一以上の遷移金属を含む遷移金属化合物と、三価のリン化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させることによって新たなアリル化合物を製造するものであって、ホスホニウム化合物を反応系に存在させることをその特徴としている。
本発明に係るアリル化合物の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と略称する。)は、周期表の第8〜10族に属する遷移金属からなる群より選ばれる一以上の遷移金属を含む遷移金属化合物と、三価のリン化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させることによって新たなアリル化合物を製造するものであって、ホスホニウム化合物を反応系に存在させることをその特徴としている。
まず、本発明の製造方法の特徴となる、反応系に存在させるホスホニウム化合物について説明する。本発明に用いることのできるホスホニウム化合物は、基本的にリンに4つの置換基が結合した構造であれば、特に限定されるものではない。そうした構造によって、従来からしばしば用いられているアルカリ金属イオンよりも緩いイオン対しか形成できないカウンターカチオンとなることから、それに伴って求核剤の攻撃性、すなわち反応性を高めることができる。その理由は、アルカリ金属イオンでは小さなアルカリ金属イオンの表面に+1価の電荷が集中するのに対し、ホスホニウム化合物では分子全体で+1価であり、電荷が集中しているリン原子は4つの置換基によって隠された構造となっているためであると考えられる。
ホスホニウム化合物としては、反応条件下で安定であり、反応系中で溶解しており、且つ、触媒被毒しないもの(触媒被毒する化合物の例としては、共役ジエンを含む化合物や、ホスファイト化合物を酸化消失させるもの、例えばパーオキサイドを含む化合物等が挙げられる。)であれば特に限定されない。その分子量は、反応系での溶解性の観点から、通常3000以下、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下であり、通常40以上、好ましくは70以上、より好ましくは100以上である。
中でも、下記一般式(1)で表される構造を有するホスホニウム化合物が好ましい。
PX1X2X3X4 ...一般式(1)
PX1X2X3X4 ...一般式(1)
上記一般式(1)中、X1〜X4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基(なお、本明細書においてアリール基とは、環の上下に芳香族6π電子雲を形成する複素環式化合物を含むものとする。)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、若しくはアリールチオ基を表わす。これらの例示基は、更に置換基を有していても良い。置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞の無いものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。これらの無置換又は置換の例示基が炭素鎖を含む場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。
X1〜X4の炭素数は、それぞれ独立に、通常40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。X1〜X4のうち任意の二以上の基が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。環の数は特に制限されないが、通常0〜3、好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1である。X1〜X4のうち二以上の基が結合して環状構造を形成している場合、その炭素数は、環状構造の形成に関与している基の数をpとすると、通常0〜40×p、好ましくは0〜30×p、特に好ましくは0〜20×pである。また、個々の環を形成する原子の数も特に制限されないが、通常3〜10員環、好ましくは4〜9員環、特に好ましくは5〜7員環である。複数の環が存在する場合、これらの環が一部を共有することによって縮合環構造を形成していても良い。
上記例示の中でも、X1〜X4としては、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有しても良い鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、もしくはアリーロキシ基が好ましく、更には、置換基を有しても良い鎖状又は環状のアルキル基もしくはアリール基がより好ましい(この場合も上述の様に、これらのX1〜X4のアルキル基又はアリール基のうち任意の二以上が結合して一以上の環状構造を形成しても良い。)。
特に、X1〜X4のうち少なくとも一つは、ホスホニウム化合物のリン上の+1価の電荷を共鳴効果によって分散できる基が好ましい。なぜならば、ホスホニウム化合物はこうした基を有することによって、イオン対を形成するカウンターカチオンとなり得るためである。この様なカチオンの共鳴安定化を行なうことのできる基の例としては、無置換又は置換の、アリール基又はビニル基が挙げられ、具体的には、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、ビニル基、1−ブテニル基等が例示される。中でも、共鳴安定化の効果の強さやホスホニウムの合成のし易さ等を考慮すると、無置換又は置換のアリール基がとりわけ好ましい。
本発明に使用可能なホスホニウム化合物の具体例を示すと、ヒドロトリメトキシホスホニウム、ヒドロメトキシジメチルホスホニウム、クロロヒドロキシジシクロヘキシルホスホニウム、ブロモトリエトキシホスホニウム、トリクロロ−3−フェノキシ−1−プロペニルホスホニウム、ジクロロヒドロキシフェニルホスホニウム、トリ(t−ブトキシ)シクロヘキシルホスホニウム、フルオロトリス(4−メトキシフェニル)ホスホニウム、メチルトリ(フェノキシ)ホスホニウム、ジメチルアミノトリス(4−エチルフェニル)ホスホニウム、トリ(エチルチオ)ヒドロホスホニウム、ジエトキシエチルフェニルチオホスホニウム、トリフルオロメチルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム、テトラ(t−ブチル)ホスホニウム、トリメチル−1−プロピニルホスホニウム等を挙げることができる。
中でも、安定性や溶解性の観点から、X1〜X4がそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有しても良い、鎖状または環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アリーロキシ基、若しくはアルキルアリーロキシ基であるホスホニウム化合物であることが好ましい。この様なホスホニウム化合物の具体例としては、テトラ(n−ドデシル)ホスホニウム、テトラキス(2−オクテニル)ホスホニウム、シクロヘキシルトリス(2−メチル−2−ブテニル)ホスホニウム、メトキシメチルジ(n−ブチル)ホスホニウム、アリル−t−ブチルエチルフェノキシホスホニウム、4−アセトキシ−2−ブテニルフェニルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)ホスホニウム、t−ブトキシ−3−ブロモ−1−ナフトキシビス(4−ニトロフェニル)ホスホニウム、ジ(1−ナフトキシ)−2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェノキシ−2−アセトキシ−3−ブテニルホスホニウム、2−ブテン−1,4−ビス(トリス(2−メトキシフェノキシ)ホスホニウム)、テトラキス(2,4,6−トリメトキシフェノキシ)ホスホニウム等が挙げられる。
更には、X1〜X4が、鎖状又は環状の、且つ、無置換又は置換の、アルキル基又はアリール基であるホスホニウム化合物が好ましい。これらは、ホスホニウムの4つの置換基がすべてP−C結合でリンと結合した構造のホスホニウム化合物と言い直すことができる。この様なホスホニウム化合物の具体例としては、テトラメチルホスホニウム、テトラ(n−ブチル)ホスホニウム、テトラ(メチロール)ホスホニウム、4−アセトキシブチルジエチル−2−メトキシエチルホスホニウム、ネオペンチルトリフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラキス(4−フルオロフェニル)ホスホニウム、2−ブテニルビス(4−t−ブチルフェニル)−3−シアノプロピルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、4−メチルシクロヘキシルトリ(i−プロピル)ホスホニウム、ジメチルペンタメチレンホスホニウム、4−アセトキシ−2−ブテニルトリフェニルホスホニウム、2−ブテニル−1,4−ビス(トリフェニルホスホニウム)、ナフタレン−1,8−ビス(トリメチルホスホニウム)、ビフェニル−2,2’−ビス(ジフェニルメチルホスホニウム)等が挙げられる。また、ホスフィンとアリル化合物との反応によって誘導されるアリル基を持つホスホニウム化合物全般も、具体例として加えることができる。
特に、X1〜X4のうち少なくとも一つが、上述の様に、リン原子上の+1価の電荷を共鳴効果によって分散できる基であるホスホニウム化合物が好ましい。この様なホスホニウム化合物の具体例を示すと、トリメチルフェニルホスホニウム、4−アセトキシ−2−ブテニルジシクロヘキシルフェニルホスホニウム、2−ブテニル−1,4−ビス(ジシクロヘキシルフェニルホスホニウム)、トリエチル−1−ナフチルホスホニウム、トリ−n−ブチル−1−メチル−2−ナフチルホスホニウム、ジエチルホスフィンドリウム、4−アセトキシ−2−ブテニルジフェニル−i−プロピルホスホニウム、2−ブテニル−1,4−ビス(ジフェニル−i−プロピルホスホニウム)、ジメチルビス(2,4−ジメチルフェニル)ホスホニウム、t−ブチル−1−アセトキシメチル−2−プロペニルビス(2−ナフチル)ホスホニウム、ジフェニルイソホスフィンドリウム、メチルトリフェニルホスホニウム、4−アセトキシ−2−ブテニルトリフェニルホスホニウム、2−ブテニル−1,4−ビス(トリフェニルホスホニウム)、1−ブテン−3,4−ビス(トリフェニルホスホニウム)、1−アセトキシメチル−2−プロペニルトリス(4−メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ジ(1−ナフチル)ジフェニルホスホニウム、テトラキス(2−ナフチル)ホスホニウム、ナフタレン−2,6−ビス(トリフェニルホスホニウム)等が挙げられる。
更に補足するならば、ホスホニウムのカチオン性を一層弱めるためにも、そうしたアリール基にアルキル基やメトキシ基といった電子供与性の置換基が結合していることがなお好ましいと言える。
上で述べてきたようなホスホニウム化合物を、アリル化反応を実施する反応系中に存在させると、反応性の向上といった効果が発現する。この場合、何れか一種のホスホニウム化合物を単独で用いて良いし、数種類のホスホニウム化合物を任意の組み合わせで混合して用いてもよい。
ホスホニウム化合物を反応系に存在させる方法は特に限定されるものではないが、例としては、ホスホニウム化合物を積極的に反応系に添加する方法や、反応系中においてホスホニウム化合物を調製する方法が挙げられる。これらの方法について、以下、更に具体例を示しながら説明する。
まず、ホスホニウム化合物を積極的に反応系に添加する方法については、アリル化合物や求核剤、触媒、反応媒体等と共にホスホニウム化合物を反応器内にフィードする方法で、このホスホニウム化合物は新しいホスホニウム化合物であっても、反応プロセスにおいてリサイクルされてきたホスホニウム化合物であっても構わない。注意すべき点として、通常、市販品として入手できるホスホニウム化合物は、一つのリンにつき+1価の電荷に帯電しているため、それに対応するカウンターアニオンとの塩の形となっているが、反応系中においてはホスホニウムに対応するこのカウンターアニオンがアリル原料化合物と反応する求核剤であることが望ましい。仮に、カウンターアニオンが求核剤ではなく、別のカウンターアニオンと塩の形になっているホスホニウム化合物を添加する場合には、別のカウンターアニオンが、触媒を被毒することなく、反応系中でアリル化合物との反応等により自ずと消失し、新たに求核剤がカウンターアニオンとなることが望まれる。通常の市販品のホスホニウム化合物のカウンターアニオンとしては、クロライド、ブロマイド、アイオダイドなどのハロゲン化物イオンのほか、ヘキサフルオロホスフェイト、ヘキサクロロホスフェイト、ハイドロジェンサルフェイト、テトラクロロボレイト、トリフルオロメタンスルホネイト、パークロレイト等が知られているが、これらの中で、一般的にハロゲン化物イオンが遷移金属触媒を被毒する可能性が高いと考えられる。そのようなハロゲン化物ホスホニウム化合物を反応に用いる場合には、事前にアニオン交換反応等によって除去しておくとよい。この際、望ましくは新しいカウンターアニオンをアリル化反応で用いる求核剤にしておくと一層好ましい。
一方、反応系中においてホスホニウム化合物を調製する方法については、ホスホニウムの原料となる3価のリン化合物を添加する方法が挙げられる。これは、先の「従来の技術」の中で述べた非特許文献3〜5等に記載されている反応を利用したもので、遷移金属のπ−アリル錯体の末端アリル炭素に3価のリン化合物が求核攻撃し、その結果、新たにアリル基が結合したホスホニウムが生成する反応である。実際に、後述する実施例のように、パラジウム−二座配位ホスファイト触媒及びパラジウムに対して200当量のトリフェニルホスフィンの存在下、アリル原料化合物の3,4−ジアセトキシブテン−1と求核剤のアセトキシドの反応による1,4−ジアセトキシブテン−2の製造過程を31P−NMRスペクトルで追跡すると、−6ppmのトリフェニルホスフィンのシグナルは反応初期において速やかに消失し、17〜25ppmにかけて観測される複数のホスホニウムのシグナルに変換される。ケミカルシフト値から考えて、これらのシグナルはホスホニウムによるものと考えられ、複数観測される理由は、[PPh3(CH2CH=CHCH2OAc)]+[OAc]-、[PPh3CH(CH2OAc)(CH=CH2)]+[OAc]-、[PPh3(CH2CH=CHCH2)PPh3]2+2[OAc]-、[PPh3CH(CH2PPh3)(CH=CH2)]2+2[OAc]-等の異性体類が生成していることに由来している。このような方法を実施する際の注意点について述べると、ホスホニウムの原料として加える3価のリン化合物の遷移金属化合物に対する配位力があまりに高い場合には、元々遷移金属化合物に配位していた配位子を脱離させてしまい、触媒活性が低下してしまう場合があり得る。そのような場合には、やはり事前に系外でホスホニウム化合物の形に変換してフィードするか、プロセスの運転中に徐々にホスホニウム化合物に変化していくことを待つことなどが対策として挙げられる。
上記のホスホニウム化合物の使用量は、経済性を考えると少ないほど有利であるが、後述の実施例でも示される様に、ホスホニウム化合物の存在量が多くなると触媒活性の向上は徐々に緩やかになるので、後で詳しく述べるアリル化反応触媒である金属化合物に対する比率(モル比)として、通常0.1以上、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、最も好ましくは15以上であり、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは500以下である。
続いて、本発明の製造方法のその他の要件について説明する。
まず、本発明の製造方法に使用されるアリル原料化合物について説明する。
アリル原料化合物は、分子内にアリル基と脱離基とを有するものであれば特に制限されないが、全体の分子量として1500以下のもの(炭素数で約100以下のもの)であり、反応条件下において全量又は一部のアリル原料化合物が、溶媒への溶解、酸素求核剤との相溶、若しくは熱による融解等によって、溶けた状態になり得るものが好ましい。中でも、下の一般式(a)で表わされる、Ra〜Reで表される基を有するアリル基にXで表される脱離基が結合した構造の化合物が好ましい。なお、脱離基とは、母体となる基質骨格(本発明ではアリル骨格)の炭素に結合していて、一般的に電子吸引性基で、電子対を持って基質分子から離れていく原子又は原子団のことを指す。
まず、本発明の製造方法に使用されるアリル原料化合物について説明する。
アリル原料化合物は、分子内にアリル基と脱離基とを有するものであれば特に制限されないが、全体の分子量として1500以下のもの(炭素数で約100以下のもの)であり、反応条件下において全量又は一部のアリル原料化合物が、溶媒への溶解、酸素求核剤との相溶、若しくは熱による融解等によって、溶けた状態になり得るものが好ましい。中でも、下の一般式(a)で表わされる、Ra〜Reで表される基を有するアリル基にXで表される脱離基が結合した構造の化合物が好ましい。なお、脱離基とは、母体となる基質骨格(本発明ではアリル骨格)の炭素に結合していて、一般的に電子吸引性基で、電子対を持って基質分子から離れていく原子又は原子団のことを指す。
上記一般式(a)において、Ra〜Reは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、又はアシロキシ基を表わす(なお、本明細書においてアリール基とは、環の上下に芳香族6π電子雲を形成する複素環式化合物を含むものとする。)。これらの例示基のうちアミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシロキシ基は更に、置換基を有していても良い。置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
上記Ra〜Reとして好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、上記置換基で置換されていてもよい鎖状又は環状のアルキル基、上記置換基で置換されていてもよいアリール基、上記置換基で置換されていてもよいアルコキシ基、上記置換基で置換されていてもよいアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、又はアシロキシ基が挙げられ、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、上記置換基で置換されていてもよい鎖状又は環状のアルキル基、上記置換基で置換されていてもよいアリール基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、又はアシロキシ基が挙げられる。
Ra〜Reの炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。なお、Ra〜Reが炭素鎖を含む基である場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。
上記例示の中でも、Ra〜Reとしては、それぞれ独立に、水素原子、無置換又は置換のアルキル基、無置換又は置換のアリール基が好ましい。
上記例示の中でも、Ra〜Reとしては、それぞれ独立に、水素原子、無置換又は置換のアルキル基、無置換又は置換のアリール基が好ましい。
なお、反応系に悪影響を及ぼす基としては、触媒を被毒させるもの、例えば共役ジエンを含む基や、ホスファイト化合物を酸化消失させるもの、例えばパーオキサイドを含む基などが挙げられる。従って、本明細書全体を通じて、「反応系に悪影響を及ぼす虞の無い」基とは、反応系に悪影響を及ぼすこれらの基を除くということを意味するものである。
一方、脱離基Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、R’2N−で表わされるアミノ基、RSO2−で表わされるスルホニル基、RSO2O−で表わされるスルホネイト基、RC(=O)O−で表わされるアシロキシ基、R’OC(=O)O−で表わされるカーボネイト基、R’NHC(=O)O−で表わされるカルバメイト基、(R’O)2P(=O)O−で表わされるホスフェイト基、RO−で表わされるアルコキシ基又はアリーロキシ基を表わす。なお、前記各式中におけるRは一価の有機基を表わし、R’は水素原子又は一価の有機基を表わす。有機基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば、その種類は特に制限されないが、アルキル基又はアリール基等が好ましい。R及びR’が有機基である場合の炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。これらの例示基のうちアミノ基、スルホニル基、スルホネイト基、アシロキシ基、カーボネイト基、カルバメイト基、ホスフェイト基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基は、更に上記置換基を有していても良い。なお、脱離基Xが炭素鎖を含む基である場合は、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。
上記例示のうち、Xとしては、ヒドロキシ基、−C(=O)O−で表わされる骨格構造を有するアシロキシ基、カーボネイト基、及びカルバメイト基、=P(=O)−で表わされる骨格構造を有するホスフェイト基、並びに−S(=O)2O−で表わされる骨格構造を有するスルホネイト基が好ましく、中でもヒドロキシ基、アシロキシ基及びカーボネイト基が好ましい。アシロキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、又はイソブチリルオキシ基等のC1〜C6のアシルオキシ基が挙げられる。カーボネイト基の具体例としては、メチルカーボネイト基、エチルカーボネイト基、フェニルカーボネイト基等のC1〜C6のアルキルカーボネート基又はアリールカーボネート基が挙げられる。特にXとしては、ヒドロキシ基及びアシロキシ基が好ましく、最も好ましくはアセトキシ基である。
なお、上述のRa〜Re及びXのうち任意の二以上の基が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。但し、Xが安定した環状構造に含まれると、Xが脱離し難くなるので好ましくない。環の数は特に制限されないが、通常0〜3、好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1である。また、個々の環を形成する原子の数も特に制限されないが、通常3〜10員環、好ましくは4〜9員環、特に好ましくは5〜7員環である。複数の環が存在する場合、これらの環が一部を共有することによって縮合環構造を形成していても良い。
Ra〜Re及びXのうち二以上の基が結合して環状構造を形成している場合、その炭素数は、環状構造の形成に関与している基の数をpとすると、通常0〜40×p、好ましくは0〜30×p、特に好ましくは0〜20×pである。
上記一般式(a)で表わされるアリル原料化合物として、好ましくは、ハロゲン化アリル類、アリルアルコール類、ニトロアリル類、アリルアミン類、アリルスルホン類、アリルスルホネイト類、カルボン酸のアリルエステル類、アリルカーボネイト類、アリルカルバメイト類、リン酸アリルエステル類、アリルエーテル類、ビニルエチレンオキシド類等が挙げられる。
ハロゲン化アリル類の具体例としては、塩化アリル、臭化−2−ブテニル、1−クロロ−2−フェニル−2−ペンテン等が挙げられる。
アリルアルコール類の具体例としては、2−ブテニルアルコール、2,3−ジメチル−2−ブテニルアルコール、3−ブロモアリルアルコール、シンナミルアルコール、クロチルアルコール、3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、ゲラニオール、2−ペンテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、1−ヘキセン−3−オール、2−メチル−3−フェニル−2−プロペン−1−オール、1−アセトキシ−4−ヒドロキシシクロペンテン−2、1,2−ジヒドロカテコール、3−ヘキセン−2,5−ジオール等が挙げられる。
ニトロアリル類の具体例としては、1−ニトロ−2−ブテン、1−ニトロ−1,3−ジフェニルプロペン、3−ニトロ−3−メトキシプロペン等が挙げられる。
アリルアルコール類の具体例としては、2−ブテニルアルコール、2,3−ジメチル−2−ブテニルアルコール、3−ブロモアリルアルコール、シンナミルアルコール、クロチルアルコール、3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、ゲラニオール、2−ペンテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、1−ヘキセン−3−オール、2−メチル−3−フェニル−2−プロペン−1−オール、1−アセトキシ−4−ヒドロキシシクロペンテン−2、1,2−ジヒドロカテコール、3−ヘキセン−2,5−ジオール等が挙げられる。
ニトロアリル類の具体例としては、1−ニトロ−2−ブテン、1−ニトロ−1,3−ジフェニルプロペン、3−ニトロ−3−メトキシプロペン等が挙げられる。
アリルアミン類の具体例としては、アリルジエチルアミン、3−メトキシアリルジフェニルアミン、トリアリルアミン、2−ブテニルジベンジルアミン等が挙げられる。
アリルスルホン類の具体例としては、アリルフェニルスルホン、メチリル−p−トリルスルホン、2−メチル−3−スルホレン、1,3−ジフェニルアリルメチルスルホン等が挙げられる。
アリルスルホネイト類の具体例としては、アリルトルエン−4−スルホネイト、3−チオフェンメタンスルホネイト、4−クロロ−2−ブテニルメタンスルホネイト等が挙げられる。
アリルスルホン類の具体例としては、アリルフェニルスルホン、メチリル−p−トリルスルホン、2−メチル−3−スルホレン、1,3−ジフェニルアリルメチルスルホン等が挙げられる。
アリルスルホネイト類の具体例としては、アリルトルエン−4−スルホネイト、3−チオフェンメタンスルホネイト、4−クロロ−2−ブテニルメタンスルホネイト等が挙げられる。
カルボン酸のアリルエステル類の具体例としては、酢酸アリル、酢酸−2−ヘキセニル、酢酸−2,4−ヘキサジエニル、酢酸プレニル、酢酸ゲラニル、酢酸ファルネシル、酢酸シンナミル、酢酸リナリル、酢酸−3−ブテン−2−イル、酢酸−2−シクロペンテニル、酢酸−2−トリメチルシリルメチル−2−プロペニル、酢酸−2−メチル−2−シクロヘキセニル、プロピオン酸−1−フェニル−1−ブテン−3−イル、酪酸−1−シクロヘキシル−2−ブテン、4−シクロペンテン−1,3−ジオール−1−アセテイト、1,4−ジアセトキシブテン−2、3−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−1等が挙げられる。
アリルカーボネイト類の具体例としては、アリルメチル炭酸エステル、4−アセトキシ−2−ブテニルエチル炭酸エステル、ネリルメチル炭酸エステル等が挙げられる。
アリルカルバメイト類の具体例としては、アリル−N−(4−フルオロフェニル)カルバメイト、2−ブテニル−N−メチルカルバメイト、フルフリル−N−(2−メトキジフェニル)カルバメイト等が挙げられる。
アリルカルバメイト類の具体例としては、アリル−N−(4−フルオロフェニル)カルバメイト、2−ブテニル−N−メチルカルバメイト、フルフリル−N−(2−メトキジフェニル)カルバメイト等が挙げられる。
リン酸アリルエステル類の具体例としては、リン酸アリルジメチルエステル、リン酸−3−メチル−2−ブテニルジフェニルエステル、リン酸メチルエチルフルフリルエステル等が挙げられる。
アリルエーテル類の具体例としては、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル、2,3−ジフェニルアリルイソプロピルエーテル、2−ブテニル−4−フルオロフェニルエーテル等が挙げられる。
ビニルエチレンオキシド類の具体例としては、ブタジエンモノオキシド、シクロペンタジエンモノオキシド、1,3−シクロヘキサジエンモノオキシド等が挙げられる。
アリルエーテル類の具体例としては、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル、2,3−ジフェニルアリルイソプロピルエーテル、2−ブテニル−4−フルオロフェニルエーテル等が挙げられる。
ビニルエチレンオキシド類の具体例としては、ブタジエンモノオキシド、シクロペンタジエンモノオキシド、1,3−シクロヘキサジエンモノオキシド等が挙げられる。
なお、特に好ましいアリル原料化合物として、下記一般式(b)で表わされる3,4−二置換ブテン−1、下記一般式(c)で表わされる1,4−二置換ブテン−2、及びそれらの化合物からなる群より選ばれる二以上の化合物の混合物を挙げることができる。
CH2=CH−CHR1−CH2R2 ...一般式(b)
上記一般式(b)中、R1,R2は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わす。上記一般式(b)で表わされる3,4−二置換ブテン−1の具体例としては、3,4−ジアセトキシブテン−1、3−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−1、4−アセトキシ−3−ヒドロキシブテン−1、及び3,4−ジヒドロキシブテン−1が挙げられる。
上記一般式(b)中、R1,R2は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わす。上記一般式(b)で表わされる3,4−二置換ブテン−1の具体例としては、3,4−ジアセトキシブテン−1、3−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−1、4−アセトキシ−3−ヒドロキシブテン−1、及び3,4−ジヒドロキシブテン−1が挙げられる。
R3CH2−CH=CH−CH2R4 ...一般式(c)
上記一般式(c)中、R3、R4は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わす。上記一般式(c)で表わされる1,4−二置換ブテン−2の具体例としては、1,4−ジアセトキシブテン−2、1−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−2、及び1,4−ジヒドロキシブテン−2が挙げられる。
上記一般式(c)中、R3、R4は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わす。上記一般式(c)で表わされる1,4−二置換ブテン−2の具体例としては、1,4−ジアセトキシブテン−2、1−アセトキシ−4−ヒドロキシブテン−2、及び1,4−ジヒドロキシブテン−2が挙げられる。
次に、本発明の製造方法に使用される求核剤について説明する。一般的に求核剤とは、非共有電子対を持ち、塩基性で、炭素核を攻撃する傾向を有している反応体のことを指すが、本発明ではその種類に特に制限は無く、基本的にあらゆる種類の求核剤を用いることができる。しかし、π−アリル錯体に求核攻撃してアリル化合物を生成させるという目的から、本発明で使用する求核剤としては、それぞれ酸素原子、炭素原子、及び窒素原子上の非共有電子対が求核攻撃を行なう酸素求核剤、炭素求核剤、及び窒素求核剤が好ましい。なお、反応速度を向上させるためには、反応条件下において全量又は一部の求核剤が、溶媒への溶解、アリル原料化合物との相溶、若しくは熱による融解等によって、溶けた状態になり得るものが好ましい。この様な観点で、通常分子量600以下の求核剤を用いる。
本発明で使用可能な酸素求核剤は、具体的には、求核性の酸素原子を含むE1O−Hで表わされるプロトン付加体の化合物、又は、その脱プロトン体であるE1O-で表わされるアニオン、更には、反応系の中でそのアニオンとなり得る化合物である。前記式中、E1は、水素原子又は有機基を表わす。有機基としては、炭素原子、窒素原子、リン原子、又は硫黄原子により当該求核性の酸素原子と結合するものであって、反応系で液体となり、且つ、反応系に悪影響を及ぼす虞が無いものが用いられる。
E1が有機基の場合、その炭素数は、通常は30以下の範囲が、反応系で溶解し易いので好ましい。中でも好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。また、酸素求核剤の分子量は通常400以下、好ましくは300以下、特に好ましくは200以下である。
求核性酸素と炭素原子で結合する有機基としては、無置換又は置換の鎖状アルキル基、無置換又は置換の環状アルキル基、無置換又は置換のアリール基等が挙げられる。
求核性酸素と窒素原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のアミノ基、C=N結合を有する基等が挙げられる。
求核性酸素とリン原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のホスホネイト基、ホスフィネイト基、ホスフィノイル基等が挙げられる。
求核性酸素と硫黄原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のスルホニル基等が挙げられる。
なお、上記各例示基の置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。上記各例示基がこれらの置換基を有する場合には、置換基も含めた炭素数が上記範囲内となるようにする。
求核性酸素と窒素原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のアミノ基、C=N結合を有する基等が挙げられる。
求核性酸素とリン原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のホスホネイト基、ホスフィネイト基、ホスフィノイル基等が挙げられる。
求核性酸素と硫黄原子で結合する有機基としては、無置換又は置換のスルホニル基等が挙げられる。
なお、上記各例示基の置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。上記各例示基がこれらの置換基を有する場合には、置換基も含めた炭素数が上記範囲内となるようにする。
ただし、上述の定義に該当する酸素求核剤であっても、それを反応に用いた場合に、反応によってアリル原料化合物から脱離する置換基(上記一般式(a)におけるX若しくはそのアニオンX-)又はそのプロトン付加体(X−H)と同じであると、見かけ上反応が進行しない、又は、アリル原料化合物と組成式が同じで構造が異なるような異性化物が生成した状態となるので、そのような酸素求核剤は除外される。
酸素求核剤の具体例をプロトン付加体の形態で列挙すると、E1が水素原子の場合は、水である。
E1が求核性酸素と炭素原子で結合した有機基である場合には、ヒドロキシ化合物類、カルボン酸類、チオカルボン酸類、セレノカルボン酸類等が挙げられる。
ヒドロキシ化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、2−エチルへキシルアルコール、4−クロロ−1−ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;フェノール、p−メトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフトール、2−ピリジノール、又は2,−ブロモ−4−ピリジノール等のフェノール類;及び2−ピリジノール、2−ブロモ−4−ピリジノール等の水酸基を有するヘテロアリール化合物が挙げられる。
カルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、シュウ酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;安息香酸、ナフタレン−2−カルボン酸、m−シアノ安息香酸、o−トルイル酸等の芳香族カルボン酸類が挙げられる。
チオカルボン酸類の具体例としては、CH3C(=S)−OHで表わされる化合物、PhC(=S)−OHで表わされる化合物等が挙げられる。
セレノカルボン酸類の具体例としては、CH3(C=Se)−OHで表わされる化合物、PhC(=Se)−OHで表わされる化合物等が挙げられる。なお、本明細書において、Phはフェニル基を表わす。
E1が求核性酸素と炭素原子で結合した有機基である場合には、ヒドロキシ化合物類、カルボン酸類、チオカルボン酸類、セレノカルボン酸類等が挙げられる。
ヒドロキシ化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、2−エチルへキシルアルコール、4−クロロ−1−ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;フェノール、p−メトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフトール、2−ピリジノール、又は2,−ブロモ−4−ピリジノール等のフェノール類;及び2−ピリジノール、2−ブロモ−4−ピリジノール等の水酸基を有するヘテロアリール化合物が挙げられる。
カルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、シュウ酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類;安息香酸、ナフタレン−2−カルボン酸、m−シアノ安息香酸、o−トルイル酸等の芳香族カルボン酸類が挙げられる。
チオカルボン酸類の具体例としては、CH3C(=S)−OHで表わされる化合物、PhC(=S)−OHで表わされる化合物等が挙げられる。
セレノカルボン酸類の具体例としては、CH3(C=Se)−OHで表わされる化合物、PhC(=Se)−OHで表わされる化合物等が挙げられる。なお、本明細書において、Phはフェニル基を表わす。
E1が求核性酸素と窒素原子で結合した有機基である場合には、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシアミン等のヒドロキシアミン類;アセトンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロペンタノンオキシム等のオキシム類;t−ブチル−N−ヒドロキシカーバメイト等のカーバメイト類;N−ヒドロキシマレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド等のイミド類;又は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
E1が求核性酸素とリン原子で結合した有機基である場合には、ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のホスフィン酸類;エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸モノフェニルエステル等のホスホン酸エステル類;又は、リン酸ジフェニルエステル、リン酸ジメチルエステル等のリン酸エステル類等が挙げられる。
E1が求核性酸素と硫黄原子で結合した有機基である場合には、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のスルホン酸類;又は、硫酸モノフェニルエステル、硫酸モノオクチルエステル等の硫酸モノエステル類が挙げられる。
なお、上述の例示は全てプロトン付加体で示したが、各例示化合物の脱プロトン体、また、反応系の中で当該脱プロトン体となり得る化合物も同様に例示される。反応系の中で当該脱プロトン体となり得る化合物としては、当該脱プロトン体がその他の原子又は原子団と結合した化合物が挙げられる。当該脱プロトン体と結合するその他の原子又は原子団としては、各種の一価のカチオン(Na+,K+等)などが挙げられる。
以上例示の中でも、E1が求核性酸素と炭素原子で結合した有機基である場合が特に好ましく、具体的には以下のタイプ(i)〜(iv)の酸素求核剤が特に好ましい。
(i)RO−H又はRO-(前記式中、Rは、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に二重結合や三重結合を有していても良いアルキル基を表わす。)で表わされるアルコール類又はそれらの脱プロトン体。
(ii)ArO−H又はArO-(前記式中、Arは、置換基を有していてもよく、窒素、酸素、リン、硫黄のようなヘテロ元素を含んでいても良いアリール基を表わす。)で表わされるヒドロキシアリール類又はそれらの脱プロトン体。
(iii)R’COO−H又はR’COO-(前記式中、R’は、水素原子又はアルキル基を表わし、更に置換基を有していても良く、炭素鎖中に二重結合や三重結合を有していても良い基を表わす。)で表わされる脂肪族カルボン酸類又はそれらの脱プロトン体。
(iv)Ar’COO−H又はAr’COO-(前記式中、Ar’は、置換基を有していてもよく、窒素、酸素、リン、硫黄のようなヘテロ元素を含んでいても良いアリール基を表わす。)で表わされる芳香族カルボン酸類又はそれらの脱プロトン体。
タイプ(i)の酸素求核剤としては、飽和又は不飽和のアルコール及びそれらの置換基含有体、飽和又は不飽和のジオールや多置換アルコール又はそれらの置換基含有体等が挙げられる。飽和又は不飽和のアルコール及びそれらの置換基含有体の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、ベンジルアルコール、1−ブロモ−2−プロパノール、2−メチルシクロペンタノール、2−フェニルエタノール、ネオペンチルアルコール、4−シクロヘキセノール、コレステロール等が挙げられる。飽和又は不飽和のジオールや多置換アルコール又はそれらの置換基含有体の具体例としては、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、グリセリン、又は、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(i)の酸素求核剤としては、飽和のアルコール又は飽和のジオールが好ましく、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−エチルヘキサノール、又は、n−オクタノール等の炭素数1〜10のアルコール;1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、又は、1,4−ブタンジオール等の炭素数1〜10のジオール等が好ましい。
タイプ(ii)の酸素求核剤としては、モノヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体、ジ又は多ヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体等が挙げられる。モノヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体の具体例としては、フェノール、クレゾール、4−ニトロフェノール、2−フルオロフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、3−t−ブチル−2−ナフトール等が挙げられる。ジ又は多ヒドロキシアリール及びそれらの置換基含有体の具体例としては、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、2,4−ジヒドロキシフェニルエチルケトン、4−n−へキシルレソルシノール、1,8−ジヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1−メチル−2,3−ジヒドロキシナフタレン、又は、1,2,4−ベンゼントリオール等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(ii)の酸素求核剤としては、モノヒドロキシアリール又はジヒドロキシアリールが好ましく、具体的には、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、又は、2,6−ジヒドロキシナフタレン等の炭素数1〜15のものが好ましい。
タイプ(iii)の酸素求核剤としては、飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体、不飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの置換基含有体等が挙げられる。飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、α−メチル酪酸、γ−クロロ−α−メチル吉草酸、α−ヒドロキシプロピオン酸、γ−フェニル酪酸等が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、2−シクロヘキセンカルボン酸、4−メトキシ−2−ブテン酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪族カルボン酸及びそれらの置換基含有体等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(iii)の酸素求核剤としては、飽和脂肪族カルボン酸又は飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の炭素数1〜20のものが好ましい。
タイプ(iv)の酸素求核剤としては、芳香族カルボン酸及びそれらの置換基含有体、芳香族ジ又は多カルボン酸及びそれらの置換基含有体が挙げられる。芳香族カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、安息香酸、3−シアノ安息香酸、2−ブロモ安息香酸、2,3−ジメトキシ安息香酸、4−フェノキシ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−トルイル酸、o−メトキシ安息香酸、フタル酸モノメチルエステル、テレフタル酸モノエチルエステル、ナフタレン−1−カルボン酸、1−メチルナフタレン−2−カルボン酸、2−エトキシナフタレン−1−カルボン酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、1−ブロモナフタレン−2−カルボン酸、アントラセン−9−カルボン酸、フェナントレン−4−カルボン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−メトキシチオニコチン酸、6−クロロニコチン酸、イソキノリン−1−カルボン酸、キノリン−3−カルボン酸、キノリン−4−カルボン酸、4−メトキシキノリン−2−カルボン酸等が挙げられる。芳香族ジ又は多カルボン酸及びそれらの置換基含有体としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、タイプ(iv)の酸素求核剤としては、芳香族カルボン酸又はジカルボン酸が好ましく、具体的には、安息香酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の炭素数6〜15のものが好ましい。
炭素求核剤としては、E2E3E4C-で表わされるカルボアニオン類、又はE2E3E4CHで表わされるそのプロトン付加体が、好ましい例として挙げられる。前記式において、E2〜E4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、カルボキシ基、鎖状若しくは環状のアルキル基、アリール基、アシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イソシアノ基、アルキリデンアミノ基、又はジアルコキシホスホリル基を表わす。上記各例示基は更に置換基を有していても良い。置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。
なお、E2〜E4として上に例示した置換基及びそれらの付属的な置換基が炭素鎖を含む基である場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。また、E2〜E4のうち任意の二以上の基が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。更に、E2〜E4のうち少なくとも一つは、電子吸引基である必要がある。中でもE2〜E4のうち二つ以上が電子吸引基であることが好ましい。ここで、電子吸引基とは、水素原子よりも電子吸引性が高い基をいう。
炭素求核剤の炭素数は、通常50以下、好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。また、その分子量は通常600以下、好ましくは500以下、特に好ましくは400以下である。
上述の炭素求核剤のうち、カルボアニオン類は、非共有電子対にプロトン等の置換基が結合した電荷を帯びていない化合物から生成されるが、そうした元の化合物のまま反応に用いてもよいし、プロトン等を引き抜いてカルボアニオンの状態にしてから反応に用いてもよい。後者の場合、一般的に、カルボアニオンのカウンターカチオンとしてアルカリ金属イオンを用いると、より高い反応活性で反応を行なうことができる。通常、炭素求核剤は、元の化合物からプロトンが引き抜かれて初めて、求核性を示すカルボアニオンという構造を取るので、元の化合物は活性プロトン、即ち酸性のプロトンを有する化合物(プロトン付加体)であることが望ましい。
炭素求核剤として好ましいものとしては、具体例を水素付加体の形式で列挙すると、マロン酸ジエチル、又はメチルマロン酸ジエチル等のマロン酸エステル誘導体;α−ブロモプロピオン酸エチル、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、イソシアノ酢酸ベンジル、フェニルスルホニル酢酸エチル、ニトロ酢酸ブチル、又はフェニルチオイソシアノ酢酸−t−ブチル等のα−置換酢酸エステル誘導体;ニトロエタン、又はジニトロメタン等の置換ニトロメタン誘導体;ヘプタン−3,5−ジオン、又はペンタン−2,4−ジオン等のジアシルメタン誘導体;ジメチルスルホニルメタン、又はフェニルスルホニルアリル等のスルホニルメタン誘導体;フェニルアセトニトリル、又はフェノキシフェニルチオアセトニトリル等の置換アセトニトリル;シクロヘキシリデンアミノメチルホスホン酸ジエチル、又はビス(2−プロピリデンアミノ)メタン等のアルキリデンアミノメタン誘導体;若しくはフルオレン等が挙げられる。
炭素求核剤としてより好ましいのは、E2〜E4のうち少なくとも一つがアルコキシカルボニル基である化合物である。こうした化合物の具体例としては、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチルが挙げられる。中でも、E2〜E4のうち二つがアルコキシカルボニル基である化合物が特に好ましい。こうした化合物の具体例としては、マロン酸ジエチルが挙げられる。
窒素求核剤としては、HNE5E6で表わされる、少なくとも一つの水素原子と結合したアミン類が、好ましい例として挙げられる。前記式において、E5又はE6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、カルボキシ基、鎖状若しくは環状のアルキル基、アリール基、アシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシロキシ基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基を表わす。上記各例示基は更に置換基を有していても良い。置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。
なお、E5及びE6として上に例示した置換基及びそれらの付属的な置換基が炭素鎖を含む基である場合には、その炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合が存在していても良い。また、E5及びE6が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。
窒素求核剤の炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、特に好ましくは20以下である。また、その分子量は通常500以下、好ましくは400以下、特に好ましくは300以下である。
アミン類との反応の場合、アミンの窒素上の非共有電子対がπ−アリル錯体の末端アリル炭素に求核攻撃することによって、中間体としてアンモニウムカチオン状態となるが、そこからプロトンが抜けて電荷的に中性のアリルアミン類が生成するために、水素原子が少なくとも一つ結合したアミン類である必要がある。しかしながら、アミン類の求核性を一層高める目的で、事前にプロトンを化学処理等により引き抜いて、E5E6N―のようなアニオン化されたアミン類の形で反応に使用してもよい。その場合、アニオン化されたアミン類のカウンターカチオンとして、アルカリ金属イオン等を挙げることができる。
窒素求核剤として好ましいものとしては、具体例を水素付加体の形式で列挙すると、アンモニア;エチルアミン、n−ブチルアミン、i−プロピルアミン、3−クロロ−n−プロピルアミン、t−ブチルアミン、n−オクチルアミン、アリルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、フェニルアミン、又はフェノキシアミン等の第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ(2−ブテニル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジフェノキシアミン、ジ(4−ブロモシクロヘキシル)アミン、メチルエチルアミン、t−ブチル−n−ブチルアミン、メチルフェニルアミン、4−シアノ−n−デシルネオペンチルアミン、2−エトキシエチル−t−ブチルアミン、N−クロロ−N−フェニルアミン、N−エトキシ−N−エチルアミン、N−n−オクチル−N−ヒドロキシアミン、N−3,5−ジメチルヘキシル−N−2−エチルヘキシルアミン等の第二級アミン;カプロアミド、3−ブロモベンズアミド、エトキシカルボニルアミン、N−ブロモアセトアミド、4−フルオロアセトアニリド、シクロヘキシルジ−i−プロピルアミノカルボニルアミン、メトキシカルボニルプロピルアミン、カルボキシルグリシン、又はフェノキシカルボニルフェニルアミン等のN−無置換又は一置換アミド化合物類;ピロール、イミダゾール、ピロリジン、インドール、2,5−ジメチルピロリジン、モルホリン、又は4−クロロ−2,5−ジヒドロキノリン等の複素環式環状アミン類;若しくは、テトラメチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、又は1,3,5−トリアミノベンゼン等のジアミン又は多アミン類等が挙げられる。
窒素求核剤としてより好ましいのは、E5及びE6の少なくとも一方が無置換又は置換のアルキル基である第一級アミン又は第二級アミンである。こうした化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ(2−ブテニル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(4−ブロモシクロヘキシル)アミン、メチルエチルアミン、t−ブチル−n−ブチルアミン、4−シアノ−n−デシルネオペンチルアミン、2−エトキシエチル−t−ブチルアミン、N−3,5−ジメチルヘキシル−N−2−エチルヘキシルアミン等が挙げられる。
続いて、本発明の製造方法で使用される触媒について説明する。本発明で使用される触媒は、一以上の遷移金属化合物と、三価のリン化合物とを含む。
遷移金属化合物としては、周期表の第8〜10族(IUPAC無機化学命名法改訂版(1998)による)に属する遷移金属からなる群より選ばれる遷移金属を含む1種以上の化合物が使用される。具体的には、鉄化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、コバルト化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物等が挙げられるが、中でもルテニウム化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましく、更にはニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましく、特にパラジウム化合物が好ましい。これらの化合物の種類は任意であるが、具体例としては、上記遷移金属の酢酸塩、アセチルセトネイト化合物、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合物等が挙げられる。
遷移金属化合物の具体例を列記すると、鉄化合物としては、Fe(OAc)2、Fe(acac)3、FeCl2、Fe(NO3)3等が挙げられる。ルテニウム化合物としては、RuCl3、Ru(OAc)3、Ru(acac)3、RuCl2(PPh3)3等が挙げられる。オスミウム化合物としては、OsCl3、Os(OAc)3等が挙げられる。コバルト化合物としては、Co(OAc)2、Co(acac)2、CoBr2、Co(NO3)2等が挙げられる。ロジウム化合物としては、RhCl3、Rh(OAc)3、[Rh(OAc)2]2、Rh(acac)(CO)2、[Rh(OAc)(cod)]2、[RhCl(cod)]2等が挙げられる。イリジウム化合物としては、IrCl3、Ir(OAc)3、[IrCl(cod)]2が挙げられる。ニッケル化合物としては、NiCl2、NiBr2、Ni(NO3)2、NiSO4、Ni(cod)2、NiCl2(PPh3)3等が挙げられる。パラジウム化合物としては、Pd(0)、PdCl2、PdBr2、PdCl2(cod)、PdCl2(PPh3)2、Pd(PPh3)4、Pd2(dba)3、K2PdCl4、K2PdCl6、PdCl2(PhCN)2、PdCl2(CH3CN)2、Pd(dba)2、Pd(NO3)2、Pd(OAc)2、Pd(CF3COO)2、PdSO4、Pd(acac)2、その他、カルボキシレート化合物、オレフィン含有化合物、Pd(PPh3)4等のような有機ホスフィン含有化合物、アリルパラジウムクロライド二量体等が挙げられる。白金化合物としては、Pt(acac)2、PtCl2(cod)、PtCl2(CH3CN)2、PtCl2(PhCN)2、Pt(PPh3)4、K2PtCl4、Na2PtCl6、H2PtCl6が挙げられる。なお、以上の例示において、codは1,5−シクロオクタジエンを、dbaはジベンジリデンアセトンを、acacはアセチルアセトネイトを、Acはアセチル基をそれぞれ表わす。
遷移金属化合物の種類は特に制限されず、活性な金属錯体種であれば、単量体、二量体、及び/又は多量体の何れであっても構わない。
遷移金属化合物の使用量については特に制限はないが、触媒活性と経済性の観点から、反応原料であるアリル化合物に対して、通常1×10-8(0.01モルppm)モル当量以上、中でも1×10-7(0.1モルppm)モル当量以上、特に1×10-6(1モルppm)モル当量以上、また、通常1モル当量以下、中でも0.001モル当量以下、特に0.0001モル等量以下の範囲で使用するのが好ましい。
続いて、本発明に用いられる三価のリン化合物について述べる。本発明に使用できる三価のリン化合物については、反応条件下で安定であり、反応系中で遷移金属にリン原子で配位するもので、且つ、触媒被毒しないもの(触媒被毒する化合物の例は前述の通りである。)であれば特に限定されず、ホスフィン化合物、ホスフィナイト化合物、ホスホナイト化合物、ホスファイト化合物を初めとしたあらゆる三価のリン化合物を用いることができる。また、それらを有したP−P型、P−N型、P−S型、P−O型などの二座配位型の化合物も等しく用いることができる。特に、触媒活性を上げるためには、反応系で溶解しているものが良く、その分子量は、通常3000以下、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下であり、通常50以上、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。
三価のリン化合物の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィン類;P(OEt)Me2、P(OPh)Ph2、Ph2POCH2CH2OPPh2等のホスフィナイト類;P(t−Bu)(O−n−Bu)2、PMe(OPh)2等のホスホナイト類;P(OEt)3、P(OMe)(OPh)2、P(OMe)(O−t−Bu)(O−i−Pr)等のホスファイト類;PPh2(NEt2)、P(NMe2)3、P(OPh)(NPh2)2等のアミノホスフィン類;及びその他のものとしてP(SPh)3、P(SMe)(NEt2)(OPh)、P(OCOMe)3、P(SiMe3)2(OPh)、P(SeMe)3等の他、下記の(M−1)〜(M−12)で表わされる構造の化合物等、三価のリン化合物を有する種々の二座キレート性配位子を挙げることができる。なお、本明細書において、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、i−Prはi−プロピル基を、t−Buはt−ブチル基を、n−Buはn−ブチル基をそれぞれ表わす。
上記の三価のリン化合物の中でも、ホスファイト化合物又はホスフィン化合物が好ましい。特に、ホスファイト化合物の方が、配位子として使用した場合により優れた触媒活性が得られること、並びに、合成がし易くコスト的に有利であること等の理由から、より好ましい。
ホスファイト化合物の種類は特に制限されないが、好ましいものとしては、下記一般式(I)〜(VI)で表わされる構造の化合物が挙げられる。
上記一般式(I)〜(V)において、R10〜R21は、それぞれ独立に、鎖状又は環状のアルキル基、若しくはアリール基を表わす。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、及びデシル基等の鎖状アルキル基;又は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の環状アルキル基が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ジ−t−ブチルナフチル基、ピリジル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等が挙げられる。
なお、上述のアルキル基及びアリール基は、更に置換基を有していても良い。置換基の数は特に限定されないが、通常6以下、好ましくは4以下である。この置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、具体的には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。
R10〜R21の炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。上述のアルキル基又はアリール基が更に置換基を有している場合には、この置換基を含めた全体の炭素数が上記範囲となるようにする。
上記例示基のうち、上述のホスファイトの安定性を考えると、R10〜R21としては、無置換又は置換のアリール基が好ましい。無置換又は置換のアリール基の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、4−ニトロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−t−ブチル−2−ナフチル基、3−メチロキシカルボニル−2−ナフチル基、3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル基、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イル基等が挙げられる。
上記一般式(III)において、Tは、四価の有機基を表わす。四価の有機基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、炭素原子、無置換又は置換のアルカンテトライル基、無置換又は置換のベンゼンテトライル基、又はT1−(Q2)n−T2で表わされる構造の基が好ましい。T1及びT2は、それぞれ独立に、三価の有機基を表わす。三価の有機基としては、無置換又は置換のアルカントリイル基、無置換又は置換のベンゼントリイル基が好ましい。Q2は、−CR22R23−(R22及びR23はそれぞれ独立に、鎖状又は環状のアルキル基、若しくはアリール基を表す)、−O−、−S−又は−CO−を表わす。nは、0又は1である。R22、R23のアルキル基及びアリール基としては、上述のR10〜R21と同様の基が挙げられる。
上記一般式(II)〜(VI)において、Z1〜Z4及びA1〜A3は、それぞれ独立に、二価の有機基を表わす。その種類としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、アルキレン基、アリーレン基、アルキレン−アリーレン基、又はジアリーレン基が好ましい。これらの有機基は、反応系に悪影響を及ぼす虞のない限りにおいて、更に置換基を有していても良い。置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
Z1〜Z4及びA1〜A3の各々の炭素数は、通常1〜60である。中でも、無置換又は置換のアルキレン基、無置換又は置換のアリーレン基、無置換又は置換のアルキレン−アリーレン基の場合には、その炭素数は通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。一方、無置換又は置換のジアリーレン基の場合には、その炭素数は通常60以下、好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。
無置換又は置換のアルキレン基の具体例としては、エチレン基、テトラメチルエチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
無置換又は置換のアリーレン基の具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基、1,4−ジ−t−ブチル−2,3−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基等が挙げられる。
無置換又は置換のアルキレン−アリーレン基の具体例としては、下記式(D−1)〜(D−12)で表わされる構造の置換基が挙げられる。
一方、ジアリーレン基とは、二つのアリーレン基が直接、又は二価の有機基を介して連結された基のことであり、具体的には−Ar1−(Q1)n−Ar2−で表わされる構造を有する基である。ここで、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していても良いアリーレン基を表わす。Q1は、二価の有機基を表わす。その具体例としては、−O−、−S−、−CO−、又は−CR24R25−で表わされる基が挙げられる。ここで、R24及びR25は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い鎖状若しくは環状のアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表わす。nは、0又は1を表わす。Ar1,Ar2のアリーレン基、並びに、R24,R25のアルキル基及びアリール基が、それぞれ有していても良い置換基は、反応系に悪影響を及ぼす虞のない限り特に制限されないが、好ましい具体例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
置換基を有しても良いジアリーレン基の具体例としては、下記式(A−1)〜(A−48)で表わされる構造の基が挙げられる。
置換基を有しても良いジアリーレン基の具体例としては、下記式(A−1)〜(A−48)で表わされる構造の基が挙げられる。
以上述べてきたように、上記一般式(I)〜(VI)で示されるホスファイト化合物を構成する置換基の組合せにより、様々な構造のホスファイトを用いることができるが、その中でも好ましい具体例としては、一般式(I)の例としてトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−i−プロピルホスファイト、トリアリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、エチルジ−t−ブチルホスファイト、2−エチルへキシルジエチルホスファイト、ジベンジル−i−プロピルホスファイト、ジイソデシルアリルホスファイト、トリス(3−メトキシプロピル)ホスファイト、トリ(2−ブテニル)ホスファイト、トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスファイト、トリス(3−クロロプロピル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジイソオクチル−2,3−ジブロモ−1−プロピルホスファイト、トリメチロールプロパンホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、エチルフェニル(n−プロピル)ホスファイト、ベンジルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、2−t−ブチルフェニル−1−ナフチル−4−メトキシフェニルホスファイト、一般式(II)の例として下記式(P−1)〜(P−20)で表わされる構造の単座配位ホスファイトを、一般式(III)の例として下記式(L−1)〜(L−5)を、一般式(IV)の例として下記式(L−6)〜(L−32)で表される化合物、一般式(V)の例として下記式(L−33)〜(L−47)、一般式(VI)の例として下記式(L−48)〜(L−57)で表わされる構造の二座配位ホスファイトをそれぞれ挙げることができる。
上に例示したホスファイト化合物の中でも、上記一般式(IV)〜(VI)で表される構造の二座配位ホスファイト化合物が好ましい。その具体例としては、上記式(L−6)〜(L−57)で表わされる構造の化合物が挙げられる。更に、そうしたホスファイト化合物の安定性を向上させるためにも、R16〜R21がそれぞれ独立に無置換又は置換のアリール基であるか、又は、Z1〜Z4がそれぞれ独立に無置換又は置換のジアリーレン基であり、A1〜A3がそれぞれ独立に無置換又は置換のアルキレン基、アリーレン基、アルキレン−アリーレン基、又はジアリーレン基であることがとりわけ好ましい。その具体例としては、上記式(L−8)、(L−10)〜(L−12)、(L−14)、(L−15)、(L−18)〜(L−20)、(L−24)〜(L−30)、(L−32)、(L−36)〜(L−39)、(L−45)〜(L−47)、(L−51)、(L−53)〜(L−57)で表わされる構造の化合物を挙げることができる。
一方、ホスフィン化合物の種類も特に制限されないが、好ましいものとしては、下記の一般式(VII)又は一般式(VIII)で表わされる構造の化合物が挙げられる。
上記の一般式(VII)及び一般式(VIII)において、R31〜R37は、それぞれ独立に、鎖状又は環状のアルキル基若しくはアリール基を表わす。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ジ−t−ブチルナフチル基、ピリジル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等が挙げられる。
また、R31〜R33の何れか2つ以上、R34及びR35、並びにR36及びR37は、それぞれ直接又はヘテロ原子を解して結合し、環構造を形成してもよい。
また、R31〜R33の何れか2つ以上、R34及びR35、並びにR36及びR37は、それぞれ直接又はヘテロ原子を解して結合し、環構造を形成してもよい。
なお、上述のアルキル基及びアリール基は、更に置換基を有していても良い。置換基の数は特に限定されないが、通常6以下、好ましくは4以下である。この置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、具体的には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が好ましい。
R31〜R37の炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。上述のアルキル基又はアリール基が更に置換基を有している場合には、この置換基を含めた全体の炭素数が上記範囲となるようにする。
また、R31〜R33の何れか2つ以上、R34及びR35、若しくはR36及びR37が結合して形成した環構造の炭素数は通常60以下、好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。
また、R31〜R33の何れか2つ以上、R34及びR35、若しくはR36及びR37が結合して形成した環構造の炭素数は通常60以下、好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。
上記例示基のうち、上述のホスファイトの安定性を考えると、R31〜R37としては、無置換又は置換のアリール基が好ましい。無置換又は置換のアリール基の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、4−ニトロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−t−ブチル−2−ナフチル基、3−メチロキシカルボニル−2−ナフチル基、3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル基、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イル基等が挙げられる。
また、A11は、二価の有機基を表わす。その種類としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、無置換又は置換の、アルキレン基、アリーレン基、アルキレン−アリーレン基、又はジアリーレン基が好ましい。
これらの基は反応系に悪影響を及ぼす虞のない限りにおいて、さらに置換基を有していても良い。置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
これらの基は反応系に悪影響を及ぼす虞のない限りにおいて、さらに置換基を有していても良い。置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。
A11の炭素数は、通常1以上60以下である。中でも、無置換又は置換のアルキレン基、無置換又は置換のアリーレン基、無置換又は置換のアルキレン−アリーレン基の場合には、その炭素数は通常40以下、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。一方、無置換又は置換のジアリーレン基の場合には、その炭素数は通常60以下、好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。
アルキレン基は、鎖状であっても環状であっても良い。アルキレン基が有していても良い置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基、又はアリーロキシカルボニル基等が挙げられる。無置換又は置換のアルキレン基の具体例としては、エチレン基、テトラメチルエチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
アリーレン基が有していても良い置換基の好ましい例としては、上述のアルキレン基が有していても良い置換基の好ましい例と同一の基が挙げられる。無置換又は置換のアリーレン基の具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基、1,4−ジ−t−ブチル−2,3−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基等が挙げられる。
アルキレン−アリーレン基が有していても良い置換基の好ましい例としては、上述のアルキレン基が有していても良い置換基の好ましい例と同一の基が挙げられる。無置換又は置換のアルキレン−アリーレン基の具体例としては、上述した(D−1)〜(D−12)等が挙げられる。
ジアリーレン基としては、二つのアリーレン基の間及び両端に二価の連結基を有していても良いジアリーレン基、具体的には−(Q11)a−Ar11−(Q20)c−Ar12−(Q12)b−で表わされる構造を有する基が挙げられる。ここで、Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。Q11及びQ12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良いメチレン基を表わす。Q20は、二価の有機基を表わす。その具体例としては、−O−、−S−、−CO−、又は−CR41R42−を表わす。ここで、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表わす。a、b、及びcは、それぞれ独立に、0又は1を表わす。Ar11、Ar12のアリーレン基、並びに、R41、R42のアルキル基及びアリール基が、それぞれ有していても良い置換基の好ましい具体例としては、上述のアルキレン基が有していても良い置換基の好ましい例と同一の基が挙げられる。中でも、A11として好ましい基の具体例としては、a=b=0の場合、上述した式(A−1)〜(A−48)の化合物等が挙げられ、それ以外の場合、下記式(B−1)〜(B−20)で表わされる構造の基が挙げられる。
以上述べてきたように、上記の一般式(VII)及び(VIII)で示されるホスフィン化合物を構成する置換基の組合せにより、様々な構造のホスフィンを用いることができるが、その中でも好ましい具体例として、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ノニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジ−n−オクチル−2−ナフチルホスフィン、ビス(4−フルオロフェニル)イソプロピルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、2−クロロフェニル−4−メトキシフェニル−3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチルホスフィン、下記の(P−21)〜(P−36)等のような単座ホスフィン及び1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジメチルホスフィノ)−1,1,4,4−テトラメチルブタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン、下記の(L−58)〜(L−81)等のような二座ホスフィンを挙げることができる。
上で例示したホスフィンの中でも、上記一般式(VIII)で表される構造の二座ホスフィンが好ましく、具体的には上記式(L−58)〜(L−81)の化合物が好ましい。
上述の三価のリン化合物の使用量は、上記遷移金属化合物に対する比率(モル比)として、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、特に好ましくは1.0以上、また、通常10000以下、好ましくは500以下、特に好ましくは100以下の範囲である。
上記の遷移金属化合物と三価のリン化合物とは、それぞれ単独に反応系に添加してもよいし、或いは予め錯化した状態で使用してもよい。又は、上記三価のリン化合物を何らかの不溶性樹脂担体等に結合させたものに、上記遷移金属化合物を担持させた、不溶性固体触媒の状態として反応に用いても良い。更に、1種類の三価のリン化合物のみを使用して反応を行なっても、2種類以上の三価のリン化合物を任意の組み合わせで同時に用いて反応を行なっても良い。
以上説明した遷移金属化合物及び三価のリン化合物からなる触媒を用いて、上述のホスホニウム化合物の存在下、同じく上述のアリル原料化合物と求核剤とを反応させることにより、新たなアリル化合物を効率よく製造することができる。
本発明の製造方法を実施するに当たって、通常は液相中で反応を行なう。反応は溶媒の存在下或いは非存在下の何れでも実施し得る。溶媒を使用する場合、上述のホスホニウム化合物と触媒及び原料化合物とを溶解するものであって、触媒活性に悪影響を及ぼさないものであれば、任意の溶媒を使用可能であり、その種類には特に限定はない。好ましい溶媒の具体例を列挙すると、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸類、メタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、ジグライム、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジアリルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ジ(n−オクチル)フタレイト等のエステル類、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、アリル化反応系内で副生物として生成する高沸物、原料であるアリル化合物、生成物であるアリル化合物、原料アリル化合物の脱離基に由来する化合物等が挙げられる。これらの溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、原料であるアリル化合物の合計量に対して、通常0.1重量倍以上、好ましくは0.2重量倍以上、また、通常20重量倍以下、好ましくは10重量倍以下である。
実際に反応を行なうに当たっては、様々な反応方式を用いることができる。例えば、攪拌型の完全混合反応器、プラグフロー型の反応器、固定床型の反応器、懸濁床型の反応器等を用いて、連続方式、半連続方式又は回分方式のいずれでも行なうことができる。
それぞれについて実際に反応を行なう時には、反応基質や生成物により適宜条件を検討すれば良いが、例えば攪拌型の完全混合反応器の場合には、アリル原料化合物と求核剤並びに場合によっては溶媒を加えた混合液に、別途、触媒調製槽で調製した触媒液を加えたものを、反応器に連続的又は半連続的に導入し、ある反応温度下で攪拌しながら滞留させることで求核剤のアリル化反応を進行させ、一部の反応液を連続的又は半連続的に反応器から抜き出しながら反応を実施することができる。また、プラグフロー型の反応器の場合には、上記の原料ならびに触媒を含む反応液を、ある反応温度に保った管状の反応器に流通させながら反応を進行させることができる。この場合、原料の高転化率の実現に適した方式である。更に、触媒を担持した不溶性の固体触媒を用いる場合には、触媒が充填された反応器に原料を含む溶液を通過させながら反応を行なうような固定床反応方式を採用したり、粒子状の不溶性触媒と原料を含む溶液とを反応器内で攪拌混合させ、懸濁状態に保って反応を行なうような懸濁床反応方式を採用したりすることもできる。何れの場合も、上述のホスホニウム化合物が反応時に反応系中に存在しているようにすれば良い。
反応温度は、触媒反応が進行する温度であれば特に限定されないが、パラジウム等の貴金属化合物を触媒として使用する場合は、高温になり過ぎるとメタル化が起こり有効な触媒濃度が低減する危険性がある。また、高温ではホスファイト化合物の分解も懸念されることから、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、更に好ましくは50℃以上、また、通常180℃以下、好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下が推奨される。
反応器内の雰囲気としては、溶媒、原料化合物、反応生成物、反応副生物、触媒分解物等に由来する蒸気以外は、アルゴンや窒素等の反応系に不活性なガスで満たされていることが望ましい。特に注意を払うべき点として、空気の漏れ込み等による酸素の混入は、触媒の劣化、特に三価のリン化合物の酸化消失の原因となることから、その量を極力低減させることが望ましい。
反応器内の溶液の滞留時間、すなわち反応時間は、目指すべき原料の転化率の値によって左右されるが、一定の触媒濃度の下では、高転化率を求めるほど反応時間を長する必要がある。一方で、高転化率のまま反応時間を短くしたければ、用いる触媒濃度を高めたり、触媒量を多くしたり、反応温度を高温にしたりすることによって触媒活性を上げる必要がある。しかしながら、触媒の熱履歴による劣化や副反応を抑制するためにも、必要以上に長い反応時間や高温での反応を採用することは避けた方が望ましい。
また、反応により得られたアリル化合物と触媒の分離には、慣用の液体触媒再循環プロセスで用いられるあらゆる分離操作を採用することができる。分離操作の具体例としては、単蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸留、水蒸気蒸留等の蒸留操作のほか、気液分離、蒸発(エバポレーション)、ガスストリッピング、ガス吸収及び抽出等の分離操作が挙げられる。各成分の分離操作を各々独立の工程で行なってもよく、2以上の成分の分離を単一の工程で同時に行なってもよい。一部のアリル原料化合物や求核剤が未反応で残っている場合には、同様の分離方法で回収し、再び反応器にリサイクルするとより経済的である。更に分離された触媒もそのまま反応器にリサイクル若しくは回収して再活性化後再利用する方が経済的で望ましい。
本発明では、触媒及びホスホニウムの存在下、上で示してきた様々なアリル原料化合物と求核剤とを反応させることにより、数多くのアリル化合物を製造することが可能であるが、中でも好適な反応例について以下に記載する。
好ましい反応例としては、アリル原料化合物として上記一般式(b)で表される構造の化合物(3,4−二置換ブテン−1)を用い、且つ、求核剤として酢酸(CH3COOH)若しくはその脱プロトン体(CH3COO-)、又は、水(H2O)若しくはその脱プロトン体(HO-)を用いることによって、上記一般式(c)で表される構造の化合物(1,4−二置換ブテン−2)を良好に製造する反応、及び、アリル原料化合物として上記一般式(c)の1,4−二置換ブテン−2を用い、且つ、求核剤として酢酸(CH3COOH)若しくはその脱プロトン体(CH3COO-)、又は、水(H2O)若しくはその脱プロトン体(HO-)を用いることによって、上記一般式(b)の3,4−二置換ブテン−1を良好に製造する反応を挙げることができる。
中でも特に好ましい反応例は、アリル原料化合物として3,4−ジアセトキシブテン−1を用い、且つ、求核剤として酢酸(CH3COOH)又はその脱プロトン体(CH3COO-)を用いた1,4−ジアセトキシブテン−2の製造、及び、アリル原料化合物として1,4−ジアセトキシブテン−2を用い、且つ、求核剤として酢酸(CH3COOH)又はその脱プロトン体(CH3COO-)を用いた3,4−ジアセトキシブテン−1の製造である。
これらの反応では、脱離基が酢酸の脱プロトン体(CH3COO-)であり、求核剤も酢酸の脱プロトン体(CH3COO-)であるため、脱離基が脱離した炭素とは違う末端アリル炭素を求核剤が攻撃した場合には、結果的に異性化反応が進行したこととなる。求核剤の攻撃が、脱離基が脱離した炭素に起こった場合には元のアリル原料化合物となるため、この手の反応は平衡反応であり、その平衡組成は温度と圧力が一定の場合には両化合物の自由エネルギー差によって決定される。因みに120℃での平衡組成は、1,4−ジアセトキシブテン−2が約63%、3,4−ジアセトキシブテン−1が約37%である。
上記の好ましい反応を実施するのに特に適した触媒は、パラジウム化合物及び上記一般式(IV)〜(VI)で示される二座配位ホスファイト化合物からなる触媒で、特に上記一般式(IV)で示される二座配位ホスファイト化合物との組合せが触媒安定性の点からも好ましい。その触媒系に更に上記式(1)で表されるホスホニウムが存在することによって反応性が数倍に高められる。更に、上記異性化反応においては、酢酸が共存することによって反応が促進される。そのため、反応溶媒として酢酸を採用することが好ましい実施形態と言える。酢酸の存在量は、触媒活性、触媒の安定性及び経済性の観点から、酢酸/アリル原料化合物の重量比で、通常1/1000以上、好ましくは1/100以上、更に好ましくは1/10以上、また、通常5/1以下、好ましくは4/1以下、更に好ましくは2/1以下の範囲内である。
本発明は、ブタジエンを、酢酸及び酸素の存在下に触媒によってジアセトキシ化反応させて得られた目的物の1,4−ジアセトキシブテン−2と副生成物の3,4−ジアセトキシブテン−1を含む反応生成物から、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを主成分とする反応液を分離して、続いて本発明の方法により異性化することで1,4−ジアセトキシブテン−2を得るプロセスに採用する場合に特に有効である。かかる異性化反応によって収率が高められた1,4−ジアセトキシブテン−2は、その後、水添反応、加水分解反応を経て、ポリエステルやポリウレタン原料となる1,4−ブタンジオールや、溶剤またはPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)ポリマー用の原料となるテトラヒドロフランを製造するための重要な中間体である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
<実施例1〜4及び比較例1〜3>
パラジウム−二座配位ホスファイト(L−26)触媒の存在下、アリル原料化合物として3,4−ジアセトキシブテン−1(以下34DABEと略す)を用い、求核剤として酢酸アニオンを用いたアリル化反応(異性化反応)を行なって、1,4−ジアセトキシブテン−2(以下14DABEと略す)を製造する反応に本発明を適用した。
パラジウム−二座配位ホスファイト(L−26)触媒の存在下、アリル原料化合物として3,4−ジアセトキシブテン−1(以下34DABEと略す)を用い、求核剤として酢酸アニオンを用いたアリル化反応(異性化反応)を行なって、1,4−ジアセトキシブテン−2(以下14DABEと略す)を製造する反応に本発明を適用した。
遷移金属化合物としてパラジウム含有量21.5重量%のトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.0087g(0.0088mmol)を、二座配位ホスファイト化合物としてパラジウムに対して4等量の上記式(L−26)の化合物0.0753g(0.0703mmol)をともにシュレンクに入れ、アルゴン置換後、0.7mlの34DABE及び1.4mlのトルエンを加えて110℃で10分間加熱し、パラジウム濃度8.37mmol/lの触媒液を調製した。続いて、反応を行なうために別途用意したシュレンクをアルゴン置換し、3mlの34DABE及び3mlの酢酸を加えた。そこに上記の触媒液をマイクロシリンジで12.5μl加え、120℃で加熱することで反応を行なった(比較例1:ホスホニウム化合物非存在系反応)。反応速度の評価は、反応前後の溶液組成をガスクロマトグラフィーで分析することによって34DABEの残存率及び14DABEの生成率を算出し、その値を下記の計算式に当てはめて平衡反応における反応速度定数を計算し、比較することで行なった。
見かけ上、34DABEから14DABEが生成していく平衡反応における反応速度定数をk(34D→14D)とすると、k(34D→14D)は以下の計算式により算出される。ただし、[14D]eは平衡時の14DABEの平衡濃度(120℃反応では63%)であり、[34D]0は反応初期の34DABE濃度(本反応条件では100%)であり、[14D]tは反応時間t時間後における14DABEの生成濃度であり、tは反応時間(単位:時間)である。
k(34D→14D)=([14D]e/[34D]0*ln([14D]e/([14D]e−[14D]t)))/t
また、上記反応において、Pdに対して200当量の種々のホスホニウム化合物の存在下で、同様に反応を行ない、同様に分析した(実施例1〜4:ホスホニウム存在系)。
また、上記反応において、Pdに対して200当量のアルカリ金属塩の存在下で、同様に反応を行ない、同様に分析した(比較例2及び3:アルカリ金属カチオン存在系)。
上の結果から明らかな様に、ホスホニウム化合物を反応系に存在させると、カウンターカチオン非存在系よりも活性が向上し、従来公知の求核剤のカウンターカチオンであるアルカリ金属カチオンと比べても、その効果は大きい。
<実施例5〜9>
実施例1〜4でパラジウムに対して200当量のホスホニウム化合物を用いた代わりに、表2記載の種々のホスフィンを200当量ずつ加え、反応系内で同じく表2記載の対応するホスホニウム化合物を調製したこと以外は同様の条件とし、反応を行なった。
実施例1〜4でパラジウムに対して200当量のホスホニウム化合物を用いた代わりに、表2記載の種々のホスフィンを200当量ずつ加え、反応系内で同じく表2記載の対応するホスホニウム化合物を調製したこと以外は同様の条件とし、反応を行なった。
上の結果より明らかなように、ホスフィンを添加して反応を行なっても反応初期において系中で容易にホスホニウム化合物に変換され、反応活性が向上していることが分かる。また、濃い触媒液を用い、トリフェニルホスフィンを加えた系での溶液の変化を、31P−NMRスペクトルの測定によって追跡すると、室温においても−6ppmのケミカルシフト値を示すトリフェニルホスフィンのシグナルは比較的速く消費されて最終的に消失し、17〜25ppmの領域にホスホニウム化合物と考えられる複数のシグナルに変化していく挙動も観測された。
<実施例11〜13及び比較例4〜6>
実施例5における触媒の配位子を(L−26)からそれぞれ(L−25)、(L−27)、(L−55)に変更して、同様に200当量のトリフェニルホスフィンを加え、反応系内でホスホニウム化合物を調製した系で反応を実施した(実施例11〜13)。また、比較として、実施例11〜13の条件において、ホスホニウム化合物が存在しない系でも同様に反応を行なった(比較例4〜6)。
実施例5における触媒の配位子を(L−26)からそれぞれ(L−25)、(L−27)、(L−55)に変更して、同様に200当量のトリフェニルホスフィンを加え、反応系内でホスホニウム化合物を調製した系で反応を実施した(実施例11〜13)。また、比較として、実施例11〜13の条件において、ホスホニウム化合物が存在しない系でも同様に反応を行なった(比較例4〜6)。
上の結果から明らかなように、他の二座配位ホスファイト配位子を用いた系においても、ホスホニウムの存在によって同様に活性が2.1〜2.9倍に向上していることが分かる。
<実施例14>
実施例5と同様に、パラジウム−二座配位ホスファイト(L−26)触媒系の下、トリフェニルホスフィンを加え、反応系内でホスホニウム化合物を調製した系で34DABEの異性化反応を行なったが、ホスホニウム化合物の存在量をパラジウムに対して100、50、20、10、5、0当量と変化させて活性の比較を行なった。横軸にパラジウムに対するホスホニウム化合物の存在量を、縦軸に反応速度定数を取った場合の相関を表わすグラフを図1に示す。
実施例5と同様に、パラジウム−二座配位ホスファイト(L−26)触媒系の下、トリフェニルホスフィンを加え、反応系内でホスホニウム化合物を調製した系で34DABEの異性化反応を行なったが、ホスホニウム化合物の存在量をパラジウムに対して100、50、20、10、5、0当量と変化させて活性の比較を行なった。横軸にパラジウムに対するホスホニウム化合物の存在量を、縦軸に反応速度定数を取った場合の相関を表わすグラフを図1に示す。
図から明らかなように、パラジウムに対して5当量のホスホニウム化合物の存在によって、活性は約2倍にまで高められ、約20当量の存在でほぼ活性向上率は頭打ち状態となっていることが分かる。
<実施例15及び比較例7>
パラジウム−二座配位ホスファイト(L−26)触媒の存在下、アリル原料化合物としてアリルメチル炭酸エステルを用い、求核剤としてフェノキシドを用いたアリル化反応を行なうことでアリルフェニルエーテルを製造する反応に本発明を適用した。
パラジウム−二座配位ホスファイト(L−26)触媒の存在下、アリル原料化合物としてアリルメチル炭酸エステルを用い、求核剤としてフェノキシドを用いたアリル化反応を行なうことでアリルフェニルエーテルを製造する反応に本発明を適用した。
遷移金属化合物としてパラジウム含有量21.5重量%のトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム0.0149g(0.0151mmol)を、二座配位ホスファイト化合物としてパラジウムに対して4等量の上記式(L−26)の化合物0.1291g(0.1205mmol)をともにシュレンクに入れ、アルゴン置換後、2.0mlのテトラヒドフランを加えて室温で攪拌し、パラジウム濃度15.05mmol/lの触媒液を調製した。続いて、反応を行なうために別途用意したシュレンクをアルゴン置換し、3.85重量%のアリルメチル炭酸エステル及び6.06重量%のフェノールを含有するテトラヒドロフラン溶液4.45gを加えた。そこに上記の触媒液をマイクロシリンジで5μl加え、60℃で加熱することで反応を行った(比較例7:ホスホニウム化合物非存在系反応)。反応速度の評価は、反応前後の溶液組成をガスクロマトグラフィーで分析することによってアリルメチル炭酸エステルの転換率を求め、その値を下記の計算式に当てはめて反応速度定数を計算した。ここでは、反応を、フェノールの濃度変化による影響を無視した擬一次的な反応とみなし、反応速度:kを下記式より算出した。なお、下記式において、conv.はアリルメチル炭酸エステルの転換率を表し、tは、その時の反応時間(単位:時間)である。
k=−ln(1−conv.)/t
また、上記の比較例7の条件に、更にパラジウムに対して200当量のテトラ(n−ブチル)ホスホニウム酢酸塩を加えた系で反応を行なった(実施例15:ホスホニウム化合物存在系)。
上の結果から明らかなように、本発明を適用すると、他のアリル化反応の系においても同様に反応性を向上させることが可能であることが分かる。
Claims (9)
- 周期表の第8〜10族に属する遷移金属からなる群より選ばれる一以上の遷移金属を含む遷移金属化合物と、三価のリン化合物とを含む触媒の存在下、アリル原料化合物と求核剤とを反応させることによって新たなアリル化合物を製造する方法において、ホスホニウム化合物を反応系に存在させることを特徴とするアリル化合物の製造方法。
- 該アリル原料化合物が、下記一般式(a)で表される構造を有することを特徴とする、請求項1記載のアリル化合物の製造方法。
- 該遷移金属化合物が、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物、及び白金化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のアリル化合物の製造方法。
- 該三価リン化合物が、ホスファイト化合物であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のアリル化合物の製造方法。
- 該ホスホニウム化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のアリル化合物の製造方法。
PX1X2X3X4 ...一般式(1)
(上記一般式(1)中、X1〜X4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表わす。これらの基は、更に置換基を有していても良く、炭素鎖を含む場合にはその炭素鎖中に一以上の炭素−炭素二重結合又は三重結合を有していても良い。また、X1〜X4のうち任意の二以上が互いに結合して、一以上の環状構造を形成していても良い。) - 上記一般式(1)におけるX1〜X4が、それぞれ独立に、無置換又は置換のアルキル基又はアリール基であることを特徴とする、請求項5記載のアリル化合物の製造方法。
- 上記一般式(1)におけるX1〜X4のうち少なくとも一つが、無置換若しくは置換のアリール基であることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載のアリル化合物の製造方法。
- 該遷移金属化合物が、パラジウム化合物であり、該三価リン化合物が、下記一般式(IV)で示される二座配位ホスファイト化合物であり、該アリル原料化合物が、下記一般式(b)で表される構造の化合物であり、該求核剤が、酢酸(CH3COOH)若しくはその脱プロトン体(CH3COO-)、又は、水(H2O)若しくはその脱プロトン体(HO-)であり、製造される該アリル化合物が、下記一般式(c)で表される構造の化合物であることを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載のアリル化合物の製造方法。
(R16O)(R17O)P−O−A1−O−P(R18O)(R19O)...一般式(IV)
(上記一般式(IV)中、R16〜R19は、それぞれ独立に、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を表わす。A1は、二価の有機基を表わす。)
CH2=CH−CHR1−CH2R2 ...一般式(b)
R3CH2−CH=CH−CH2R4 ...一般式(c)
(上記の一般式(b)及び一般式(c)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わす。) - 該遷移金属化合物が、パラジウム化合物であり、該三価リン化合物が、下記一般式(IV)で示される二座配位ホスファイト化合物であり、該アリル原料化合物が、下記一般式(c)で表される構造の化合物であり、該求核剤が、酢酸(CH3COOH)若しくはその脱プロトン体(CH3COO-)、又は、水(H2O)若しくはその脱プロトン体(HO-)であり、製造される該アリル化合物が、下記一般式(b)で表される構造の化合物であることを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載のアリル化合物の製造方法。
(R16O)(R17O)P−O−A1−O−P(R18O)(R19O)...一般式(IV)
(上記一般式(IV)中、R16〜R19は、それぞれ独立に、置換基を有していても良いアルキル基又はアリール基を表わす。A1は、二価の有機基を表わす。)
CH2=CH−CHR1−CH2R2 ...一般式(b)
R3CH2−CH=CH−CH2R4 ...一般式(c)
(上記の一般式(b)及び一般式(c)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、アセトキシ基又はヒドロキシ基を表わす。)
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