JP4306865B2 - 新規生理活性ペプチドおよびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラニン・レセプターに対する活性化因子(リガンドペプチド等)に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラニン(galanin)は、ブタ小腸抽出液中に最初に見出された29アミノ酸残基からなる生理活性ペプチドであり〔フェブス・レター(FEBS Lett.),164, pp124-128 (1983)〕、ブタ以外にも、多くの哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類にわたって見出されている。ガラニンのアミノ酸配列は、ヒト(FEBS Lett., 283, pp189-194 (1991))、ウシ(FEBS Lett., 234, pp400-406 (1988))、ラット(J. Biol. Chem., 262, pp 16755-16758 (1987))、ヒツジ(Peptides, 12, pp855-859 (1991))などで報告されており、N末端からの15アミノ酸残基は種間で保存されている。
ブタ・ガラニンには、123アミノ酸残基からなる前駆体蛋白質〔preprogalanin(1-123); Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83, pp6287-6291 (1986)〕、また、ガラニンに比べてN端に9残基長い前駆体preprogalanin(24-61) amide、ガラニンのN端4残基を欠落したpreprogalanin(37-61) amideが知られている(Peptides, 13, pp1055-1060 (1992))。
ガラニンの生理作用としては、脳海馬でのアセチルコリン遊離阻害作用(Brain Research, 709, pp81-87 (1996))、脳視床下部での節食中枢促進作用(Obesity Research, 3, pp5735-5895 (1995))、脳下垂体での下垂体ホルモン放出促進作用(Neuroscience Letter, 75, pp49-54 (1987); Endocrinology, 134, pp529-536 (1994); Peptides, 7, pp51-53, (1986))、膵臓でのインスリン分泌阻害作用(Acta Physiol. Scand., 139, pp591-596 (1990))などが知られており、その生理作用はガラニンレセプターを介して発揮されるものと考えられている。ガラニン・レセプターには、3種類のサブタイプ(GALR1、GALR2、GALR3)が存在しており、GALR1についてはヒト、ラットおよびマウス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA , 90, pp3845-3849 (1993); J. Mol. Neurosci., 6, pp33-41 (1995); FEBS Lett., 411, pp225-230 (1997))、GALR2 についてはラット(FEBS Lett., 405, pp285-290 (1997); Mol. Pharmacol., 52, pp337-343 (1997); J. Biol. Chem., 272, pp24612-24616 (1997))、GALR3についてはラット(J. Biol. Chem., 272, pp31949-31952 (1997))の各遺伝子がクローニングされている。また、これら3種類のガラニン・レセプターは、Gタンパク質共役型レセプターに特徴的な7個の疎水的領域(膜貫通ドメイン)を有しており、Gタンパク質を活性化することにより細胞内情報伝達系を刺激するものと考えられる。
ガラニンは、これら3種類のいずれのサブタイプのガラニン・レセプターとも結合することが確認されている。ガラニンの結合親和性はGALR1に対して最も強く、次いでGALR2、GALR3の順に強く、GALR3に対する親和性はGALR1に対する親和性に比べて約10倍弱い(J. Biol. Chem. 272, 31949-31952, 1997)。また、ガラニンは、GALR1発現細胞ではcAMPの産生阻害を引き起こすこと(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 3845-3849, 1993)、GALR2発現細胞ではcAMPの産生阻害を引き起こすこと(Mol. Pharmacol., 52, pp337-343 (1997))、イノシトール・りん酸代謝系の亢進や細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を引き起こすこと(J. Biol. Chem. 272, 24612-24616, 1997)が報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
現在までのところ、ガラニン・レセプターに対する内因性アゴニストとしては、ガラニンしか見出されていない。また、ガラニン・レセプターにおけるアゴニスト依存的なGタンパク質(G蛋白共役型レセプター蛋白質)活性化反応、例えば35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸([35S]GTPgS)結合量増加反応(Methods in Enzymology, 237, pp3-13 (1994))あるいはGTPの水解促進反応(Methods in Enzymology 237, 13-26, 1994)などの方法を、ガラニン・レセプターのリガンド探索に使用することについては報告はない。
ガラニン・レセプターのサブタイプに対する選択性(特異性)がガラニンとは異なる新たな内因性アゴニストを見出すことが望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ガラニン・レセプターGALR2発現細胞およびガラニン・レセプターGALR1発現細胞を構築し、これらを用いることにより、ガラニン・レセプターのそれぞれのサブタイプに対するアゴニスト活性を測定する簡便なアッセイ法、即ち、[35S]GTPγS結合試験法を完成した。このアッセイ法により、GALR2アゴニストをスクリーニングした結果、 ガラニン・レセプターのそれぞれのサブタイプに対する活性化作用がガラニンとは異なる新規活性化因子を見出すことに成功した。さらに、本発明者らは、この知見に基づきこの新規活性化因子とガラニン・レセプターとの結合性を変化させる化合物のスクリーニングが可能であることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:35で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に結合する能力を有するペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(2)配列番号:35で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質を活性化する能力を有する上記(1)記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(3)配列番号:36で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(4)ペプチドが、配列番号:11、12、15、16または43で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドである上記(1)または上記(3)記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(5)ペプチドが、配列番号:11、12、15、16または43で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有し、分子量が5000〜10000であるペプチドである上記(1)または上記(3)記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(6)ペプチドが配列番号:31、33または34で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(1)または上記(3)記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(7)前駆体が配列番号:29で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチドである上記(1)または上記(3)記載のペプチドの前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(8)実質的に同一のアミノ酸配列が配列番号:30、37または38で表されるアミノ酸配列である上記(6)記載のペプチドの前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(9)上記(1)または上記(3)記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNA、
(10)配列番号:31、33または34で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチドをコードする上記(9)記載のDNA、
(11)配列番号:32、39または40で表される塩基配列を有する上記(10)記載のDNA、
(12)配列番号:29、30、37または38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有する上記(1)または上記(3)記載のペプチドの前駆体をコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNA、
(13)配列番号:27、28、41または42で表される塩基配列を含有するDNAを含有する上記(12)記載のDNA、
(14)上記(9)記載のDNAを含有する組換えベクター、
(15)上記(14)記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体、
(16)上記(15)記載の形質転換体を培養し、上記(1)または上記(3)記載のペプチドを生成せしめることを特徴とする上記(1)または上記(3)記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造法、
(17)上記(1)または上記(3)記載のペプチドまたはその前駆体に対する抗体、
(18)上記(17)記載の抗体を含有してなる診断薬、
(19)上記(1)または上記(3)記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬、
(20)記憶機能改善剤、食欲調節剤、子宮機能調節剤、腎臓機能調節剤、前立腺機能調節剤、精巣機能調節剤または骨格筋機能調節剤である上記(19)記載の医薬、
(21)上記(1)または上記(3)記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とする、配列番号:1、2または3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法、および
(22)上記(21)記載のスクリーニング方法によって得られる化合物またはその塩などに関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本明細書において、「実質的に同一」とは蛋白質の活性、例えばレセプターに対するアゴニスト活性、即ち、リガンドの有するレセプターを活性化させる活性、リガンドのレセプターへの結合活性などが、実質的に同じことを意味する。アミノ酸の置換、欠失、付加あるいは挿入は、しばしばペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな変化をもたらさないが、こうした場合その置換、欠失、付加あるいは挿入を施されたペプチドは、そうした置換、欠失、付加あるいは挿入のされていないものと実質的に同一であるとされるであろう。該アミノ酸配列中のアミノ酸の実質的に同一な置換物としては、例えば、そのアミノ酸が属するクラスのうちの他のアミノ酸類から選ぶことができる。非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンなどがあげられる。極性(中性)アミノ酸としてはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなどがあげられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としてはアルギニン、リジン、ヒスチジンなどがあげられる。負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などがあげられる。
本発明のペプチドは、ガラニンレセプターに対して結合能を有するペプチドである。好ましくはガラニンレセプターに対する活性化作用を有し、公知のガラニン以外のリガンドペプチドである。なお、ガラニンレセプターについては後述のとおりである。
【0006】
本発明のペプチドとしては、例えば、配列番号:35で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号:13など)を含有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合する能力(好ましくはレセプター蛋白質を活性化する能力など)を有するペプチド、具体的には、
(I)配列番号:35で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号:13など)を含有し、かつ配列番号:11、配列番号:12、配列番号:15、配列番号:16または配列番号:43で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合する能力(好ましくはレセプター蛋白質を活性化する能力など)を有するペプチド、
(II)分子量が5000〜10000である上記(I)記載のペプチド、
(III)分子量が5000〜8000である上記(I)記載のペプチド、
(IV)配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合する能力(好ましくはレセプター蛋白質を活性化する能力など)を有し、さらに分子量が5000〜10000であるペプチド、
(V)配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合する能力(好ましくはレセプター蛋白質を活性化する能力など)を有するペプチドなどがあげられる。
さらに、本発明のペプチドとしては、例えば、
(VI)配列番号:36で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、
(VII)配列番号:11、配列番号:12、配列番号:15、配列番号:16または配列番号:43で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する上記(VI)記載のペプチド、
(VIII)分子量が5000〜10000である上記(VII)記載のペプチド、
(IX)分子量が5000〜8000である上記(VII)記載のペプチド、
(X)配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、
(XI)配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、
(XII)配列番号:35で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号:13など)を含有し、かつ配列番号:11、配列番号:12、配列番号:15、配列番号:16または配列番号:43で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド、
(XIII)分子量が5000〜10000である上記(X)〜(XII)記載のペプチド、
【0007】
本発明のペプチド、その製造法および用途を以下にさらに詳細に説明する。
本発明の上記ペプチドの由来は特に限定されないが、例えば、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の組織(例えば、下垂体、膵臓、脳、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓、精巣など)または細胞などに由来するペプチドであってもよく(例えば、マウス脳、ラット脳、ブタ脳、ウシ脳、ブタ視床下部、ウシ視床下部、ブタ肺、ウシ肺、ウシ胃、ヒト視床下部、ブタ精巣、ウシ精巣、ラット精巣、ヒト精巣またはヒト肺由来のものが好ましい)、また合成ペプチドであってもよい。
例えば、本発明のペプチドとしては、
▲1▼配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表わされるアミノ酸配列を含有するペプチドなどの他に、配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表わされるアミノ酸配列と約50〜99.9%(好ましくは70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%、最も好ましくは95〜99.9%)の相同性を有するアミノ酸配列を含有するペプチドと実質的に同質の活性を有するペプチド(ただし、配列番号:7,8,9もしくは10で表されるガラニンまたはその前駆体の配列を除く)などがあげられる。
【0008】
「実質的に同質の活性」としては、例えばガラニン・レセプターGALR1、GALR2またはGALR3に結合する活性、ガラニン・レセプターGALR1、GALR2またはGALR3を活性化する活性、またはそれに伴い引き起こされるアラキドン酸遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成阻害、イノシトールリン酸産生(阻害)、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質の燐酸化、細胞内pHの変化などのシグナル伝達活性系を活性化させる能力において同質であることを示す。従って、これら活性の強弱やペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
本発明のペプチドとして具体的には、次のようなものがあげられる(ただし、配列番号:7,8,9もしくは10で表されるアミノ酸配列を有するガラニンまたはその前駆体を除く)。
(I)配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表わされるアミノ酸配列もしくはその部分配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列で表わされるアミノ酸配列を含有するマウス脳、ラット脳、ブタ脳、ウシ脳、ブタ視床下部、ウシ視床下部、ブタ肺、ウシ肺、ウシ胃、ヒト視床下部、ブタ精巣、ウシ精巣、ラット精巣、ヒト精巣またはヒト肺由来のペプチド。
(II)配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはその部分ペプチドに対して、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加あるいは挿入されているアミノ酸配列を含有するペプチドは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしてあげられる。例えば、(1)配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列に1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下のアミノ酸が付加した(または挿入された)アミノ酸配列、(3)配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するペプチドなどがあげられる。
「実質的に同質のアミノ酸配列」としては、その配列と70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%、最も好ましくは95〜99.9%の相同性を有するアミノ酸配列があげられる。
【0009】
本発明のペプチドの分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー法等で測定する場合、約5000〜約10000ダルトン、好ましくは約5000〜約8000ダルトン、より好ましくは約5500〜約8000ダルトン、さらに好ましくは約6000〜約7000ダルトンである。
本明細書におけるペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。
本発明のペプチドは、C末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。エステルのRとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリルなどのフェニル−C1-2アルキル、もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキルなどのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などがあげられる。
本発明のペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のペプチドに含まれる。この時のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルと同様なエステルなどが用いられる。
【0010】
本発明のペプチドの塩としては、生理学的に許容される塩基(例えばアルカリ金属など)や酸(有機酸、無機酸)との塩が用いられるが、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のペプチドは、ヒトや温血動物の組織または細胞からペプチドを精製する方法によって製造することもできるし、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
また、本発明のペプチドは、それをコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。 該ペプチドをコードするDNAは、公知のクローニング方法〔例えば、Molecular Cloning(2nd ed.;J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法など〕に従って作成することができる。
該クローニング方法とは、(1)該ペプチドのアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプローブまたはDNAプライマーを用い、cDNAライブラリーからハイブリダイゼーション法により該ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法、または(2)該ペプチドのアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプライマーを用い、PCR法により該ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法があげられる。
本発明のペプチドをヒトや温血動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや温血動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸、またはアルコールなどで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0011】
上記したように本発明のペプチドは、(1)自体公知のペプチドの合成法に従って、または(2)本発明のペプチドを含有するペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としてはたとえば、以下の▲1▼〜▲2▼に記載された方法があげられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて本発明のペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0012】
本発明のペプチドのアミド体は、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などをあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、必要に応じて高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のペプチドを取得する。
上記した保護されたアミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としてはDCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどがあげられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護されたアミノ酸の活性化を行ったのちに樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどの三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜約50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常約1.5ないし約4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、たとえば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどがあげられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばRとして上記したC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C7-14アラルキル基の他、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル基およびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどがあげられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などがあげられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、Cl2-Bzl、2−ニトロベンジル、Br-Z、ターシャリーブチルなどがあげられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどがあげられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]などがあげられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応するリン酸アミドがあげられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd黒あるいはPd炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元などもあげられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0013】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
本発明のペプチドのアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
本発明のペプチドのエステル体を得るにはカルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ペプチドのアミド体と同様にして所望のペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明のペプチドとしては、上記した配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドと同様の作用(例、GALR1アゴニスト活性、GALR2アゴニスト活性またはGALR3アゴニスト活性など)を有しているものであれば、どのようなペプチドであってもよい。このようなペプチドとしてはたとえば、上記した配列番号:17、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34(好ましくは、配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34)で表されるアミノ酸配列もしくはその部分配列、から1ないし5個以下のアミノ酸が欠失、付加(挿入)または置換したアミノ酸配列を有するペプチドをあげることができる。
本発明のペプチドの前駆体とは、本発明のリガンドペプチドをその部分配列としてコードするペプチド(ただし、配列番号:7,8,9もしくは10で表されるアミノ酸配列を有するガラニンまたはその前駆体を除く)であればいかなるものであってもよい。
【0014】
本発明のペプチドの前駆体として、具体的には、例えば、配列番号:29で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(またはポリペプチド)などがあげられる。
ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、配列番号:29で表されるアミノ酸配列と70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%、最も好ましくは95〜99.9%の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
また、「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、(i)配列番号:29で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、(ii) 配列番号:29で表されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(iii) 配列番号:29で表されるアミノ酸配列に1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が付加(または挿入)したアミノ酸配列などがあげられる。「置換、欠失、付加(または挿入)」の位置は本発明のリガンドペプチドをその部分配列としてコードする領域以外であれば、特に限定はされない。
配列番号:29で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(またはポリペプチド)の具体例としては、例えば、
(1)配列番号:30で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(またはポリペプチド)、
(2)配列番号:37で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(またはポリペプチド)、または
(3)配列番号:38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(またはポリペプチド)などがあげられる。
本発明のペプチドは、さらに抗リガンドペプチド抗体の調製のための抗原として用いることができる。このような抗原としてのペプチドは上記した本発明のペプチドの他に、例えば、上記本発明のペプチドのN末端ペプチド、C末端ペプチド、中央部分のペプチドなどの部分ペプチドなどが用いられる。
部分ペプチドとしては、本発明ペプチドの個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
また、上記の部分ペプチドは、抗リガンドペプチド抗体の調製のための抗原として用いることができればよいため、(i)上記本発明のペプチドのN末端ペプチド、C末端ペプチド、中央部分のペプチドなどの部分ペプチドに1ないし数個(好ましくは1ないし3個,より好ましくは1または2個)の他のアミノ酸残基が付加(または挿入)した部分ペプチド、(ii)上記本発明のペプチドのN末端ペプチド、C末端ペプチド、中央部分のペプチドなどの部分ペプチドから1ないし数個(好ましくは1ないし3個,より好ましくは1または2個)のアミノ酸残基が欠失した部分ペプチド、(iii)上記本発明のペプチドのN末端ペプチド、C末端ペプチド、中央部分のペプチドなどの部分ペプチドの構成アミノ酸の1ないし数個(好ましくは1ないし3個,より好ましくは1または2個)が他のアミノ酸残基で置換された部分ペプチドなども含まれる。
【0015】
上記の部分ペプチドとしてより具体的には、例えば、後述の実施例9などで用いられる(i) Ala Pro Ala His Arg Gly Arg Gly Gly Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドがあげられる他、
(ii) 配列番号:11で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(iii) 配列番号:12で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(iv) 配列番号:13で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(v) 配列番号:15で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(vi) 配列番号:16で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(vii) 配列番号:17で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(viii) 配列番号:35で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(ix) 配列番号:36で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
(x) 配列番号:43で表されるアミノ酸配列からなるペプチドなどがあげられる。
本明細書における部分ペプチドもC末端がアミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)であってもよい。ここでエステル基の例としては上記したペプチドの場合と同様である。該部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この時のエステルとしては、例えば、上記したC末端のエステルなどが用いられる。
本発明のペプチドの部分ぺプチドはそれ自体で本発明のペプチドが有する活性(例えば、ガラニンレセプターに対する活性化作用など)を有していてもよい。本発明のペプチドまたはその部分ペプチドは、さらに、機能あるいは性質がよく知られているタンパク質との融合タンパク質であってもよい。
該融合タンパク質の具体例としては、例えば、後述の実施例11などで用いられる Ala Pro Ala His Arg Gly Arg Gly Gly Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)で表されるアミノ酸配列を含有してなるペプチドとKeyhole Limpet Hemocyanin(KLH)との融合タンパク質などがあげられる。
【0016】
本発明のペプチドの部分ペプチドの塩としては、前述のペプチドの塩と同様のものが用いられる。
本発明のペプチドの部分ペプチドまたはそのアミド、エステルもしくはその塩は、上記したペプチドの場合と同様の合成法に従って、あるいは本発明のペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
本発明のペプチドをコードするDNAとしては、(I)配列番号:35で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号:13など)を含有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対する結合する能力(好ましくはレセプター蛋白質を活性化する能力など)を有するペプチド、または(II)配列番号:36で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなどをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAであればいかなるものであってもよい。
さらには上記に具体的に記載された本発明のペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAであればいかなるものであっていてもよい。
また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した組織・細胞由来のcDNA、前記した組織・細胞由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターはバクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した組織・細胞よりRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction (以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
より具体的には、
(1)配列番号:31、配列番号:33または配列番号:34で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNA (2)ストリンジェントな条件下で(1)で規定された配列とハイブリダイズする哺乳動物由来のDNA、(3)遺伝コードの縮重のため(1)および(2)に定められている配列とハイブリッド形成しないが、同一アミノ酸配列をもつポリペプチドをコードするDNAなどが用いられる。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じた方法に従って行うことができる。上記ストリンジェントな条件としては、例えば42℃、50%ホルムアミド、4×SSPE(1×SSPE=150mM NaCl, 10mM NaH2PO4・H2O, 1mM EDTA pH7.4)、5×デンハート溶液、0.1%SDSである。
配列番号:31で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAの具体例としては、配列番号:32で表される塩基配列を含有するDNAを含有するDNAなどがあげられ、配列番号:33で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAの具体例としては、配列番号:39で表される塩基配列を含有するDNAを含有するDNAなどがあげられ、配列番号:34で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAの具体例としては、配列番号:40で表される塩基配列を含有するDNAを含有するDNAなどがあげられる。
また、本発明のペプチドまたはその部分ペプチドをコードするDNAの中で例えば6個以上51個以下(好ましくは9個以上30個以下、さらに好ましくは12個以上30個以下)の部分塩基配列を含有するDNA断片はDNA検出プローブとしても好ましく用いられる。
本発明のペプチドの前駆体をコードするDNAとしては、上記の本発明のペプチドの前駆体、具体的には、配列番号:29で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、配列番号:30、配列番号:37または配列番号:38で表されるアミノ酸配列など)を含有するペプチド(ポリペプチド)などをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAであればいかなるものであってもよい。
配列番号:29で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(ポリペプチド)をコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAの具体例としては、配列番号:27で表される塩基配列を含有するDNAを含有するDNAなどがあげられ、配列番号:30で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAの具体例としては、配列番号:28で表される塩基配列を含有するDNAを含有するDNAなどがあげられ、配列番号:37で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAの具体例としては、配列番号:41で表される塩基配列を含有するDNAを含有するDNAなどがあげられ、配列番号:38で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNAの具体例としては、配列番号:42で表される塩基配列を含有するDNAを含有するDNAなどがあげられる。
【0017】
本発明のペプチドなどをコードするDNAは、以下の遺伝子工学的手法によっても製造することができる。 該遺伝子工学的手法は、例えば Molecular Cloning(2nd ed.;J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などがあげられる。また、市販のライブラリーやキットを使用する場合には、添付の使用説明書に記載の方法に従って行えばよい。
本発明のペプチドなどをコードするDNAは、そのペプチドのアミノ酸配列またはその一部に基づきDNA断片を合成し標識したプローブを、ゲノムDNAまたはcDNAのライブラリー等とハイブリダイゼーションにすることよって選別することができる。
本発明のペプチドなどを完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のペプチドの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて、自体公知のPCR法によってゲノムDNAまたはcDNAのライブラリー等から目的とするDNAを増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを例えば本発明のペプチドなどの一部あるいは全領域を有するDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。
クローン化された本発明のペプチドなどをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のペプチドなどの発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。
【0018】
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが利用できる。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、CHO(dhfr-)細胞を用いてDHFR遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、ペプチドまたはその部分ペプチドのN末端側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、phoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、メイテイングファクターα(MFα)・シグナル配列、インベルターゼ・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、例えばインシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築されたペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0019】
宿主としては、たとえばエシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫または昆虫細胞、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、たとえばバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、たとえばサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12などが用いられる。
昆虫としては、例えばカイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来の High FiveTM 細胞、Mamestra brassicae 由来の細胞または Estigmena acrea 由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞〔以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィトロ(in Vitro),13巻,213−217頁(1977年)〕などが用いられる。
動物細胞としては、たとえばサルCOS−7細胞,Vero細胞,チャイニーズハムスター細胞CHO,DHFR遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(CHO/dhfr- 細胞),マウスL細胞,マウス3T3細胞、マウスミエローマ細胞,ヒトHEK293細胞、ヒトFL細胞、293細胞、C127細胞、BALB3T3細胞、Sp−2/O細胞などが用いられる。
【0020】
エシェリヒア属菌を形質転換するには、たとえばプロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なわれる。
バチルス属菌を形質転換するには、たとえばモレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行われる。
酵母を形質転換するには、たとえばプロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)に記載の方法に従って行なわれる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、たとえばバイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6巻, 47−55頁(1988年)などに記載の方法に従って行なわれる。
動物細胞を形質転換するには、たとえばヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なわれる。
発現ベクターの細胞への導入方法としては、例えば、リポフェクション法〔Felgner, P.L. et al. プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proceedings of the Natinal Academy of Sciences of the United States of America),84巻,7413頁(1987年)〕、リン酸カルシウム法〔Graham, F. L. and van der Eb, A. J.ヴィロロジー(Virology),52巻,456−467頁(1973年)〕、電気穿孔法〔Nuemann, E. et al. エンボ・ジャーナル(EMBO J.),1巻,841−845頁(1982年)〕等があげられる。
このようにして、本発明のペプチドなどをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
なお、動物細胞を用いて、本発明のペプチド等を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のペプチド等の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、dhfr遺伝子を選択マーカーとして用いた場合、MTX濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、dhfr遺伝子とともに、本発明のペプチドなどをコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
上記の形質転換体を本発明のペプチド等をコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のペプチド等を生成、蓄積せしめることによって、本発明のペプチド等を製造することができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、たとえばアンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としてはたとえば塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えばグルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、たとえば3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、たとえば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Seience),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Jounal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
特にCHO(dhfr-)細胞およびdhfr遺伝子を選択マーカーとして用いる場合には、チミジンをほとんど含まない透析ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いるのが好ましい。
上記培養物から本発明のペプチドなどを分離精製するには、例えば下記の方法により行なうことができる。
【0021】
本発明のペプチドなどを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用い得る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのたんぱく変性剤や、トリトンX−100(登録商標。以下、TMと省略することがある。)などの界面活性剤が含まれていてもよい。
培養液中にペプチドが分泌される場合には、培養終了後、自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明のペプチドなどの精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法やクロマトフォーカシングなどの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られる本発明のペプチドなどが遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、形質転換体が産生する本発明のペプチドなどを、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明のペプチドなどの存在は特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
本発明のペプチドなどをコードするDNAまたは本発明のペプチドは、▲1▼ガラニン・レセプター蛋白質のリガンドの一部、あるいは全長の合成、▲2▼本発明のペプチドなどの有する生理作用の探索、▲3▼合成オリゴヌクレオチドプローブあるいはPCRのプライマーの作成、▲4▼G蛋白質共役型レセプター蛋白質のリガンドや前駆体蛋白質をコードするDNAの入手、▲5▼組換え型レセプター蛋白質の発現系を用いたレセプター結合アッセイ系の開発と医薬品候補化合物のスクリーニング、▲6▼抗体および抗血清の入手、▲7▼DNA、RNA、抗体または抗血清を用いた診断薬の開発、▲8▼記憶機能改善剤(向知能薬)、食欲調節剤、糖尿病治療薬、下垂体機能改善薬、子宮機能調節剤、腎臓機能調節剤、前立腺機能調節剤、精巣機能調節剤または骨格筋機能調節剤(好ましくは、記憶機能改善剤(向知能薬)、食欲調節剤、子宮機能調節剤、腎臓機能調節剤、前立腺機能調節剤、精巣機能調節剤または骨格筋機能調節剤)などの医薬の開発、▲9▼遺伝子治療等に用いることができる。
【0022】
特に、後述の組換え型G蛋白質共役型レセプター蛋白質の発現系を用いたレセプター結合アッセイ系によって、ヒトなどの温血動物に特異的なG蛋白質共役型レセプターアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングすることができ、該アゴニストまたはアンタゴニストを各種疾病の予防・治療剤などとして使用することができる。
さらに、上記▲8▼に関し、本発明のペプチドまたはそれをコードするDNAは、海馬、視床下部、子宮、腎臓、前立腺、骨格筋、膵臓、精巣、脾臓、心臓、下垂体などで発現しているガラニン・レセプター(GALR)蛋白質がリガンドとして認識するものであるので、安全で低毒性な医薬として有用であり、例えば、記憶機能改善剤(向知能薬)、食欲調節剤、糖尿病治療薬、下垂体機能改善薬、食欲調節剤、子宮機能調節剤、腎臓機能調節剤、前立腺機能調節剤または骨格筋機能調節剤(好ましくは、記憶機能改善剤(向知能薬)、食欲調節剤、子宮機能調節剤、腎臓機能調節剤、前立腺機能調節剤または骨格筋機能調節剤)などとして用いることができる。
本発明のペプチドまたはそれをコードするDNAを上述の医薬として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
本発明のDNAを用いる場合は、該DNAを単独またはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80(TM)、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0023】
また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えばヒトや哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、など)に対して投与することができる。
本発明のペプチドまたはそれをコードするDNAの投与量は、症状などにより差異はあるが、該ペプチドを経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。該ペプチドを非経口的に投与する(例えば、静脈注射で投与する)場合は、その1回投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01から30mg程度、好ましくは約0.1から20mg程度、より好ましくは約0.1から10mg程度である。
他の動物の場合も、上記60kg当たりの投与量をその動物の体重に換算した量を投与することができる。
上記本発明において、ガラニン・レセプターとしては、ヒトや温血動物(例えば、哺乳温血動物(例、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ウマ、ブタ)、鳥類(例、ニワトリ、ハト、アヒル、ガチョウ、ウズラ)など)のあらゆる組織(例えば、下垂体、膵臓、脳、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓など)または細胞などに由来するG蛋白質共役型レセプター蛋白質であって、GALR1としては配列番号:1、GALR2としては配列番号:2、GALR3としては配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。即ち、該レセプター蛋白質としては、配列番号:1、2または3で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質などの他に、配列番号:1、2または3で表わされるアミノ酸配列と約90〜99.9%の相同性を有するアミノ酸配列を含有し、配列番号:1、2または3で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などがあげられる。
【0024】
これらの蛋白質が示す活性としては、例えばリガンド結合活性、シグナル伝達活性などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。従って、リガンド結合活性やシグナル伝達活性の強さなどの強弱、レセプター蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
さらに、該レセプター蛋白質には、N末端のMetが保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基など)で保護されているもの、N末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの分子内のアミノ酸の側鎖が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
該レセプター蛋白質の塩としては、上記したペプチドの塩と同様のものがあげられる。
該レセプター蛋白質またはその塩またはその部分ペプチドは、ヒトや温血動物の組織または細胞から自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することもできるし、前述のペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養する方法と同じ方法によっても製造することができる。また、前述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
該レセプター蛋白質の部分ペプチドとしては、例えば、G蛋白質共役型レセプター蛋白質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位などが用いられる。すなわちG蛋白質共役型レセプター蛋白質の疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
該レセプター蛋白質の部分ペプチドの塩としては、上記したペプチドの塩と同様のものが用いられる。
【0025】
該ガラニン・レセプター蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:1、2または3のアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するガラニン・レセプター蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、それらは、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、組織・細胞由来のcDNA、組織・細胞由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターはバクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、組織・細胞よりRNA画分を調製したものを用いて直接自体公知のRT-PCR法によって増幅することもできる。
配列番号:1、2および3のアミノ酸配列を含有するガラニン・レセプターをコードするDNAとして具体的には、それぞれ配列番号:4、5および6で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
GALR2(ガラニン・レセプター・タイプ2)は海馬、視床下部、子宮、腎臓、前立腺、骨格筋などに多く分布しており、従って、GALR2活性化能を有するアゴニストである本発明のペプチド(あるいはGALR2に対するアンタゴニスト、及び本発明のペプチドに対する中和抗体)は記憶機能改善剤、食欲改善剤、または子宮、腎臓、前立腺もしくは骨格筋の機能改善剤として用いることができる。
GALR1(ガラニン・レセプター・タイプ1)は、視床下部、海馬、膵臓などに多く分布しており、従って、GALR1活性化能を有するアゴニストである本発明のペプチド(あるいはGALR1に対するアンタゴニスト、及び本発明のペプチドに対する中和抗体)は、抗肥満薬、向知能薬、インスリン分泌薬として用いることができる。
GALR3(ガラニン・レセプター・タイプ3)は、精巣、脾臓、心臓、視床下部、下垂体などに分布しており、従って、GALR3活性化能を有するアゴニストである本発明のペプチド(あるいはGALR3に対するアンタゴニスト、及び本発明のペプチドに対する中和抗体)は、精巣、脾臓、心臓の機能改善剤として用いることができる。
本発明は、(1)上記のガラニン・レセプターをコードするDNAを含有する形質転換体(細胞)を培養して得られる該ガラニン・レセプターを発現している細胞膜画分に、▲1▼ 被検物質を接触させる場合と、▲2▼ 被検物質を接触させない場合における、例えば 35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸の該細胞膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするガラニンレセプター活性化物質(アゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法、および(2)上記のガラニン・レセプターをコードするDNAを含有する形質転換体(細胞)を培養して得られる該ガラニン・レセプターを発現している細胞膜画分に、▲1▼ ガラニンまたは本発明ペプチドを接触させる場合と、▲2▼ ガラニンまたは本発明ペプチドを被検物質存在下で接触させる場合における、例えば 35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸の該細胞膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするガラニンレセプター活性化阻害物質(アンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法などを提供する。
【0026】
本発明のスクリーニング方法を以下に具体的に説明する。
上記ガラニン・レセプター蛋白質としては、GALR1、GALR2またはGALR3のいずれのガラニン・レセプター蛋白質またはその部分ペプチドを含有し、そのレセプター機能を有するものであれば何れのものであってもよいが、形質転換体(細胞)を用いて該ガラニン・レセプター蛋白質を大量発現している培養細胞より調製した細胞膜画分(その調製法は後述する)などが好ましい。
該ガラニン・レセプター蛋白質を含有する細胞としては、ガラニン・レセプター蛋白質を発現する宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、例えば、前述の酵母、昆虫細胞、動物細胞などがあげられるが、動物細胞が好ましい。
該膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などがあげられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分は主として膜蛋白質と細胞膜を構成するりん脂質から成り、発現したガラニン・レセプターと同時に該細胞が本来発現しているG蛋白も含まれている。
該ガラニン・レセプターを含有する細胞や膜画分中のガラニンレセプターの量は、膜画分蛋白質 1 mg 当たり1-100 pmolであるのが好ましく、5-20 pmolであるのがより好適である。該ガラニン・レセプターの発現量が多いほど膜画分当たりのレセプターを活性化する活性(リガンド結合活性、比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
ガラニン・レセプターを活性化する化合物(アゴニスト)のスクリーニング方法として具体的には、まずガラニン・レセプターを含有する細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することにより該レセプター標品を調製する。該バッファーとしては、pH約4〜約10(望ましくはpH約6〜約8)の約1〜5mMのマグネシウムイオンを含むリン酸バッファーまたはトリス−塩酸バッファーなどのいずれでも良く、さらにグアノシン二りん酸(GDP)を約0.1nM〜100μM、好ましくは約0.1〜1μM添加するとよい。また、プロテアーゼによる該レセプターや被検物質の分解を抑える目的で、PMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加してもよい。 約0.01〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000cpm〜50000cpm)の35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸、および被検物質を添加する。一方、被検化合物を加えず、35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸のみを添加した反応系(対象群)も用意する。反応は約0〜50℃、好ましくは約4℃〜37℃で約20分〜24時間、好ましくは約30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸の放射活性を液体シンチレーションカウンターで計測する。被検化合物を加えない場合の放射活性に比べて被検化合物を加えた場合の放射活性の増加分の高い化合物であれば、それを該ガラニン・レセプターを活性化する能力のある候補化合物として選択することができる。
該ガラニン・レセプターの活性化を阻害する化合物(アンタゴニスト)のスクリーニングを行うには、上記アゴニストのスクリーニングの場合と同様に細胞膜画分を用意し、これに一定量(5000cpm〜50000cpm)の35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸、および10-4〜10-6 Mのガラニンあるいは本発明によるペプチド、および被検物質を添加する。 また、35S標識グアノシン-5'-O-3-チオ三りん酸とガラニンあるいは本発明によるペプチドを添加し被検化合物を加えない反応系(対象群)も用意する。上記と同様に反応を行い、被検化合物を加えない場合の放射活性に比べて被検化合物を加えた場合の放射活性の減少の大きい化合物であれば、それを該ガラニン・レセプターの活性化を阻害する能力のある候補化合物として選択することができる。
【0027】
該被検物質としては、例えばペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
ガラニン・レセプター・アゴニストは、ガラニン・レセプターに対する本発明のペプチドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、本発明のペプチドと同様に安全で低毒性な医薬として有用である。
逆に、ガラニン・レセプター・アンタゴニストは、ガラニン・レセプター蛋白質に対する本発明のペプチドが有する生理活性を抑制することができるので、該レセプター活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
上記のスクリーニング方法を用いて得られる物質の塩としては、例えば、薬学的に許容可能な塩などが用いられる。例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などがあげられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩あげられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。
有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩があげられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる物質またはその塩を上述の医薬として使用する場合、上記の本発明のペプチドを医薬として実施する場合と同様にして実施することができる。
本発明のペプチドに対する抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)または抗血清は、本発明のペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0028】
例えば、ポリクローナル抗体は、後述の方法に従って製造することができる。
[ポリクローナル抗体の作製]
本発明のペプチドに対するポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(ペプチド等抗原)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、後述のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物(例えば、哺乳温血動物(例、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ウマ、ブタ)、鳥類(例、ニワトリ、ハト、アヒル、ガチョウ、ウズラ)など)に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のペプチドに対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテン(本発明のペプチドまたはその部分ペプチド)との混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等のキャリアー・タンパク質を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカップリングさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカップリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオピリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、上記温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取される。
抗血清中の本発明のペプチドに対する抗体価の測定は、後述のハイブリドーマ培養上清の抗体価の測定と同様にして測定できる。抗体の分離精製は、後述のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0029】
また、モノクローナル抗体は、後述の方法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクロナール抗体産生細胞の作製
本発明のペプチドは、温血動物(例えば、哺乳温血動物(例、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ウマ、ブタ)、鳥類(例、ニワトリ、ハト、アヒル、ガチョウ、ウズラ)など)に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された上記の温血動物、たとえばマウスなどから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば後記の標識剤で標識化されたペプチドまたはその部分ペプチドと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。融合操作は既知の方法、たとえばケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕等に従い実施できる。融合促進剤としてはポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどがあげられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などがあげられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
本発明のペプチドに対する抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、たとえば本発明のペプチド抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した本発明のペプチドに対するモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した本発明のペプチドを加え、固相に結合した本発明のペプチドに対するモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。
本発明のペプチドに対するモノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なわれる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なわれる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の本発明のペプチドに対する抗体価の測定と同様にして測定できる。
(b)モノクロナール抗体の精製
本発明のペプチドに対するモノクローナル抗体の分離精製は通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行われる。
【0030】
上記の(a)および(b)の方法に従って製造させる本発明のペプチドに対する抗体は、それぞれ本発明のペプチドを特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のペプチドの定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。すなわち、本発明は、例えば、
(i)本発明のペプチドに反応する抗体と、被検液および標識した本発明のペプチドとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識した本発明のペプチドの割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のペプチドの定量法、
(ii)被検液と担体上に不溶化した抗体および標識化された抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のペプチドの定量法において、一方の抗体が、本発明のペプチドのN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のペプチドのN端部以外の部位(例えば、C端部)に反応する抗体であることを特徴とする被検液中の本発明のペプチドの定量法を提供する。
本発明のペプチドを認識するモノクローナル抗体を用いて本発明のペプチドの測定を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2 、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。本発明の抗体を用いる測定法は、 特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えばリガンドペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などがあげられる。放射性同位元素としては、例えば〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが、上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等が、蛍光物質としては、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが、発光物質としては、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどがそれぞれあげられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常蛋白質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のペプチドに対する抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化された本発明のペプチドに対する抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のペプチド量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。
標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
【0031】
本発明のサンドイッチ法による本発明のペプチドの測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のペプチドに対する抗体は本発明のペプチドの結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。即ち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のペプチドのC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC末端部以外、例えばN末端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のペプチドに対する抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原と(F)と抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のペプチドまたはその部分ペプチドの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照〕。以上のように、本発明のペプチドに対する抗体を用いることによって、本発明のペプチドを感度良く定量することができる。
【0032】
さらには、本発明の抗体を用いて本発明のペプチド等の濃度を定量することによって、診断薬として用いることもできる。即ち、
(1)本発明のタンパク質等の濃度の変化が検出された場合、例えば、肥満症、痴呆、糖尿病、または下垂体腫瘍などの疾病である、または将来罹患する可能性が高いと、と診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のタンパク質等を検出するために使用することができる。また、本発明のタンパク質等を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のタンパク質等の検出、被検細胞内における本発明のタンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
Y :チミンまたはシトシン
N :チミン、シトシン、アデニンまたはグアニン
R :アデニンまたはグアニン
M :シトシンまたはアデニン
W :チミンまたはアデニン
S :シトシンまたはグアニン
I :イノシン
H :アデニン、チミンまたはシトシン
D :グアニン、アデニンまたはチミン
B :グアニン、チミンまたはシトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
EIA :エンザイムイムノアッセイ
GlyまたはG :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI :イソロイシン
SerまたはS :セリン
ThrまたはT :スレオニン
CysまたはC :システイン
MetまたはM :メチオニン
GluまたはE :グルタミン酸
AspまたはD :アスパラギン酸
LysまたはK :リジン
ArgまたはR :アルギニン
HisまたはH :ヒスチジン
PheまたはF :フェニルアラニン
TyrまたはY :チロシン
TrpまたはW :トリプトファン
ProまたはP :プロリン
AsnまたはN :アスパラギン
GlnまたはQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Tos:p−トルエンスルフォニル
HONB:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネンー2,3−ジカルボキシイミド
Bzl:ベンジル
Cl2−Bzl:ジクロルベンジル
Z:ベンジルオキシカルボニル
Br−Z:2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Cl−Z:2−クロルベンジルオキシカルボニル
Boc:t−ブチルオキシカルボニル
HOBt:1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC:N、N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA:トリフルオロ酢酸
Fmoc:N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
DNP:ジニトロフェニル
Bum:ターシャリーブトキシメチル
Trt:トリチル
PAM:フェニルアセトアミドメチル
BHA:ベンツヒドリルアミン
Bom:ベンジルオキシメチル
OcHex:シクロヘキシルエステル
MeBzl:4−メチルベンジル
CHO:ホルミル
NMP:N−メチルピロリドン
【0033】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ラット型のGALR1(ガラニン・レセプター・タイプ1)の全アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
ラット型のGALR2(ガラニン・レセプター・タイプ2)の全アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ラット型のGALR3(ガラニン・レセプター・タイプ3)の全アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ラット型のGALR1(ガラニン・レセプター・タイプ1)のcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
ラット型のGALR2(ガラニン・レセプター・タイプ2)のcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
ラット型のGALR3(ガラニン・レセプター・タイプ3)のcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
ブタ型のガラニンの全アミノ酸配列(29残基)を示す。
〔配列番号:8〕
ブタ型のガラニン前駆体 preprogalanin(1-123)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
ブタ型のガラニン前駆体 preprogalanin(24−61)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
ブタ型のガラニン前駆体 preprogalanin(37−61)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:11〕
ブタ型の本発明ペプチドの部分アミノ酸配列(N末端から34残基)を示す。
〔配列番号:12〕
ブタ型の本発明ペプチドの部分アミノ酸配列(N末端から32残基)を示す。
〔配列番号:13〕
ブタ型の本発明ペプチドのキモトリプシン消化断片(CHY−1)の部分アミノ酸配列(N末端から9残基)を示す。
〔配列番号:14〕
ブタ型の本発明ペプチドのキモトリプシン消化断片(CHY−4)の部分アミノ酸配列(6残基)を示す。
〔配列番号:15〕
ブタ型の本発明ペプチドのキモトリプシン消化断片(CHY−3)の部分アミノ酸配列(27残基)を示す。
〔配列番号:16〕
ブタ型の本発明ペプチドのキモトリプシン消化断片(CHY−2)の部分アミノ酸配列(11残基)を示す。
〔配列番号:17〕
ブタ型の本発明ペプチドの部分アミノ酸配列(44残基)を示す。
〔配列番号:18〕
ラット型のGALR2をコードするcDNAの塩基配列のスクリーニングに使用した合成DNA(プライマー1)を示す。
〔配列番号:19〕
ラット型のGALR2をコードするcDNAの塩基配列のスクリーニングに使用した合成DNA(プライマー2)を示す。
〔配列番号:20〕
デジェネレートPCR(Degenerated PCR)法で使用した合成DNA(プライマー pGAL4-7F)を示す。
〔配列番号:21〕
デジェネレートPCR(Degenerated PCR)法で使用した合成DNA(プライマー pGAL9-3F)を示す。
〔配列番号:22〕
デジェネレートPCR(Degenerated PCR)法で使用した合成DNA(プライマー pGAL34-1R)を示す。
〔配列番号:23〕
pCR100-6中の nested PCR 産物の塩基配列を示す。
〔配列番号:24〕
pCR100-7中の nested PCR 産物の塩基配列を示す。
〔配列番号:25〕
ハイブリダイゼーションプローブ作製に使用した合成DNA(プライマー pGAL9-3F)を示す。
〔配列番号:26〕
ハイブリダイゼーションプローブ作製に使用した合成DNA(プライマー pGAL34-8R)を示す。
〔配列番号:27〕
実施例5で得られたpGR2PL6中のcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:28〕
実施例5で得られた pGR2PL3中のcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:29〕
pGR2PL6中のcDNAの塩基配列から推定される本発明ペプチドの前駆体の配列を示す。
〔配列番号:30〕
pGR2PL3中のcDNAの塩基配列から推定される本発明ペプチドの前駆体の配列を示す。
〔配列番号:31〕
pGR2PL6およびpGR2PL3中のcDNAの塩基配列から推定される本発明ペプチドの成熟蛋白質(ブタ型)の配列を示す。
〔配列番号:32〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質をコードするcDNA配列(ブタ型)を示す。
〔配列番号:33〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ラット型)の配列を示す。
〔配列番号:34〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ヒト型)の配列を示す。
〔配列番号:35〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ラット型・ヒト型共通)の部分アミノ酸配列(N末端から9残基)を示す。
〔配列番号:36〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ラット型・ヒト型共通)の部分アミノ酸配列(N末端から21残基)を示す。
〔配列番号:37〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ラット型)の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:38〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ヒト型)の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:39〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ラット型)をコードするcDNA配列を示す。
〔配列番号:40〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ヒト型)をコードするcDNA配列を示す。
〔配列番号:41〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ラット型)の前駆体タンパク質をコードするcDNA配列を示す。
〔配列番号:42〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ヒト型)の前駆体タンパク質をコードするcDNA配列を示す。
〔配列番号:43〕
本発明ペプチドの成熟蛋白質(ブタ型)の部分アミノ酸配列(N末端から30残基)を示す。
〔配列番号:44〕
実施例9で用いられた免疫原としてのペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:45〕
実施例18で用いられたプラスミドpGR2PL6のEcoRI/BglII消化断片のDNA配列を示す。
〔配列番号:46〕
実施例18で用いられたプライマーpGAL1-1FのDNA配列を示す。
〔配列番号:47〕
実施例18で用いられたプライマーpGAL88-1RのDNA配列を示す。
〔配列番号:48〕
実施例19で用いられたプライマーF/R120のDNA配列を示す。
〔配列番号:49〕
実施例19で用いられたプライマーR/R120のDNA配列を示す。
〔配列番号:50〕
実施例19のPCRの結果得られたのcDNA配列を示す。
〔配列番号:51〕
実施例19で用いられたプライマー1F/H120のDNA配列を示す。
〔配列番号:52〕
実施例19で用いられたプライマー1R/H120のDNA配列を示す。
〔配列番号:53〕
実施例19で用いられたプライマー1F/H470のDNA配列を示す。
〔配列番号:54〕
実施例19で用いられたプライマー1R/H470のDNA配列を示す。
〔配列番号:55〕
実施例20で用いられたプライマー1のDNA配列を示す。
〔配列番号:56〕
実施例20で用いられたプライマー2のcDNA配列を示す。
〔配列番号:57〕
実施例20で用いられたプライマー3のDNA配列を示す。
〔配列番号:58〕
実施例20で用いられたプライマー4のDNA配列を示す。
〔配列番号:59〕
実施例21で用いられた合成DNA配列を示す。
〔配列番号:60〕
実施例21で用いられた合成DNA配列を示す。
〔配列番号:61〕
ラットガラニンのアミノ酸配列を示す(ラットガラニンは配列番号:61のC末端がアミド化されたものである)。
【0034】
後述の実施例5で得られた形質転換体 Escherichia coli TOP10/pGR2PL6 は、財団法人発酵研究所(IFO)に1998年8月21日から寄託番号 IFO 16201 として、また、日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH,日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に1998年9月4日から寄託番号 FERM BP-6486 として寄託されている。
後述の実施例19で得られた形質転換体 Escherichia coli TOP10/pGR2HL14 は、財団法人発酵研究所(IFO)に1999年2月5日から寄託番号IFO16256として、また、日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH,日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に1999年2月22日から寄託番号 FERM BP-6657 として寄託されている。
後述の実施例18で得られた形質転換体 Escherichia coli TOP10/pGR2RL4 は、財団法人発酵研究所(IFO)に1999年2月5日から寄託番号IFO16257として、また、日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH,日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に1999年2月22日から寄託番号 FERM BP-6658 として寄託されている。
後述の実施例21で得られた形質転換体 Escherichia coli MM294(DE3)/pTFCGALは、財団法人発酵研究所(IFO)に1999年2月26日から寄託番号IFO16260として、また、日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH,日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に1999年3月10日から寄託番号 FERM BP-6678として寄託されている。
後述の実施例21で用いられた形質転換体 Escherichia coli MM294(DE3)/pTB960−11は、財団法人発酵研究所(IFO)に1997年6月25日から寄託番号IFO16100として、また、日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH,日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に1998年6月15日から寄託番号 FERM BP-6388 として寄託されている。
後述の実施例21で用いられた形質転換体 Escherichia coli MM294(DE3)/pTCIId23−MPIF1は、財団法人発酵研究所(IFO)に1998年10月27日から寄託番号IFO16212として、また、日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH,日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に1998年11月23日から寄託番号 FERM BP-6582 として寄託されている。
後述の実施例13で用いられたGR2−1Nは、財団法人発酵研究所(IFO)に1999年3月11日から寄託番号IFO 50515として、また、日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH,日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に1999年3月17日から寄託番号 FERM BP-6682として寄託されている。
【0035】
【実施例】
以下に、参考例および実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
実施例1 ガラニン・レセプター(GALR1、GALR2)活性化作用の検出
(1−1)ラット型ガラニン・レセプター(GALR1、GALR2)発現細胞の構築
ラットGALR2遺伝子を得るために、ラット視床下部cDNA(CLONTECH社)を2μl、10μMの
プライマー1(5'-GTCGACATGAATGGCTCCGGCAGCCAG-3'、配列番号:18)および
プライマー2(5'-ACTAGTTTAACAAGCCGGATCCAGGGTTCTAC-3'、配列番号:19)
を各1μl、10倍濃縮緩衝液(CLONTECH社製 Klen Taq Polymeraseに添付のもの)を5μl、10mMのデオキシヌクレオチドミクスチャー(Invitrogen社)を1μl、Klen Taq DNA polymerase(CLONTECH社)を1μl、注射用蒸留水(大塚製薬)を39μlを混合し、PCR反応溶液を調製した。PCR反応は、Gene Amp PCR System 9700(PERKIN ELMER社)を用いて、▲1▼(95℃、5分)を1サイクル、▲2▼(95℃、30秒; 76℃、15秒; 72℃、2分)を3サイクル、▲3▼(95℃、30秒; 72℃、15秒; 72℃、2分)を3サイクル、▲4▼(95℃、30秒; 68℃、15秒; 72℃、2分)を3サイクル、▲5▼(95℃、30秒; 64℃、15秒; 72℃、2分)を3サイクル、▲6▼(95℃、30秒; 60℃、15秒; 72℃、2分)を3サイクル、▲7▼(95℃、30秒; 56℃、15秒; 72℃、2分)を20サイクルと設定して反応を行なった。該PCR反応後の溶液10μlを、1%低融点アガロースゲル(Sea Plaque GTG:FTN社)上で電気泳動を行い、PCR反応産物をエチジウムブロマイド染色により確認した。該PCR反応産物として得られた約1.2kbp付近のDNAバンドを公知の方法により、アガロースゲルから回収した。即ち、アガロースゲル断片を0.5mlのサンプリングチューブに移し70℃に加温し融解後、40℃に平衡化した後、アガロースを分解させるためにベータアガラーゼ(ニッポンジーン社)を0.5μl加え60分間反応させた。該反応液から公知のエタノール沈殿法により目的のDNA断片を回収し、PCR-SCRIPT(STRATAGENE社)プラスミド・ベクターとライゲーション反応を行なった。該反応液をCompetent High(JM109:TOYOBO社)に加え、形質転換を行ない、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地(和光純薬社)で一晩培養した。該培地上のコロニーをコロニ-PCR法にて目的DNA断片の挿入の有無を確認した。挿入DNA断片を有するコロニーを100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地(和光純薬社)で一晩培養し、その培養液からPlasmid Mini Kit(QIAGEN社)を用いて挿入DNA断片を有するプラスミドを回収した。塩基配列解析のための反応は、Dye primer cycle sequencing ready reaction(ABI社)を用いて行い、蛍光式自動シークエンサーによる塩基配列解析により、該プラスミド中の挿入DNA断片が 1119 bp からなるGALR2をコードするDNAであることを確認した。
特開平7-304797号公報の実施例4に記載の方法により、動物細胞用発現ベクター pAKKO-1.11 を作製した。公知の方法により、該プラスミドからGALR2をコードするDNA断片を回収し、ベクター pAKKO-1.11に連結し、大腸菌DH5αに導入して形質転換体を得た。この形質転換体を培養してGALR2をコードするDNAを含むプラスミドを調製した。
該プラスミドをCellPhect Transfection kit(ファルマシア社)を用いて次の手順でCHO細胞へ形質導入し、目的のGALR2発現細胞を得た。まず、蒸留水240μlに溶解したプラスミドDNA 9.6 mgに対してBuffer A(CellPhect Transfection Kitに添付)240 μlを添加し、撹拌し、10分間静置後、Buffer B(CellPhect Transfection Kitに添付)480 μlを添加し、激しく撹拌し該DNAを含有するリポソームを形成させた。 4 x 105個のCHO/dhfr- 細胞(ATCCより入手)を60 mmシャーレに播き、10%のウシ胎児血清(BIO WHITTAKER 社)を含む Ham's F-12培地(日水製薬株式会社)中で37℃、5%炭酸ガス中で2日間培養した後、該リポソーム480 μl をシャーレの該細胞上に滴下させた。これを、37℃、5%炭酸ガス中にて6時間培養した後、血清を含まない Ham's F-12培地で2回細胞を洗浄し、シャーレの該細胞上に15%グリセロール3mlを添加し2分間処理した。これを、再度、血清を含まないHam's F-12培地で2回洗浄した後、10%のウシ胎児血清を含む Ham's F-12培地中で37℃、5%炭酸ガス中で15時間培養した。該細胞をトリプシン処理により分散させてシャーレから回収し、1.25 x 104個ずつ6-well plateに播き、透析済み10%ウシ胎児血清(JRH BIOSCIENCES 社)を含む Dulbecco's modified Eagle medium (DMEM) 培地(日水製薬株式会社)中にて37℃、5%炭酸ガス中にて培養を開始した。 プラスミドの導入された形質転換CHO細胞は該培地中で生育するが非導入細胞は次第に死滅していくので、培養開始1日目、および2日目に培地を交換して死滅細胞を除去した。培養開始8日後に生育してきた形質転換CHO細胞のコロニーを20個(20種のCHO細胞クローン)選んだ。 それぞれ選択された細胞(20種のCHO細胞クローン)を回収し、後述の実施例(1-2)に記載の方法で膜画分を調製した。膜画分に対する ブタ125I-galanin(New England Nuclear 社)の結合量を公知の方法(例えば、EP-0711830Aの実施例に記載の方法)により測定し、GALR2の発現量の高い細胞株を選別し、以降の実験に用いた。
GALR1をコードするcDNAは、上記GALR2をコードするcDNAの取得法と同様にして取得した。 プライマー3および4ラットを用い、脳 cDNA ライブラリー(CLONTECH社)から、PCR反応により 1486bp からなるラットGALR1 cDNAを取得し、pUC119( TAKARA SHUZO 株式会社)に挿入し、プラスミドpRGR2 と命名した。
このプラスミドを制限酵素 EcoRIおよびPst Iで二重消化して得られた cDNA 断片を、動物細胞用発現プラスミドベクター pcDNA I (Invitrogen社)を制限酵素 EcoRI および NsiI で二重消化した部分に組み込み、プラスミドpRGRPC と命名した。このプラスミドpRGRPC を制限酵素 Hind III および Xba Iで二重消化して得られた cDNA断片を動物細胞用発現プラスミドベクター pRc/CMV ( Invitrogen社 ) の Hind III および Xba I で二重消化したベクターに組み込み、ラットGALR1 cDNA 発現プラスミド pRGR 1を得た。
CellPhect Transfection Kit(Pharmacia社)を使用する公知のリン酸カルシウム法により、Ham's F12 培地(日水製薬株式会社)で培養した CHO-K1 細胞(ATCCより入手)にラットGALR1 cDNA発現プラスミド pRGR 1を導入し、最終的に 500μg/ml G-418 耐性の 24 クローンをステンレスシリンダーを用いて単離した。このようにして単離した 24 クローンの一部の細胞を 6 ウェルプレートにまき、飽和状態にまで培養した後、100pM ブタ・125I-ガラニン(New England Nuclear 社)に対する結合実験(例えば、EP-0711830Aの実施例に記載の方法)を行い、24 クローンにおけるラットガラニン受容体の発現量を調べた。その結果、No. 3 の細胞がブタ・125I-ガラニンとの結合活性が最も高く、GALR1の発現量が最も多いと考えられた。そこで、限界希釈法により No. 3 の細胞を 96ウェルマイクロプレート中 2 ウェルに 1 個の割合でまき、1 個の細胞から増殖させた。単一にした細胞から 12 個のクローン細胞を単離し、その一部の細胞を用いて再度同様の結合実験を行った。その結果、No.3-10 のクローン細胞が 1 25I-ブタガラニンとの結合活性が最も高く、GALR1の発現量が最も多いと考えられたので、以後、このクローンをGALR1発現細胞として使用した。
【0037】
(1−2)ガラニン・レセプター(GALR1、GALR2)発現細胞膜画分の調製
上記(1−1)で得たGALR2発現細胞を、10%ウシ胎児血清、グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地中でサブ・コンフルエント(80〜90%コンフルエント)になるまで培養した。培養後の細胞を、2.7mM エチレンジアミン-N,N,N',N'-四酢酸(EDTA)を含むリン酸緩衝液〔2.7mM EDTA / Phosphate-buffer saline(138mM NaCl, 2.7mM KCl, 8mM Na2HPO4, 1mM KH2PO4)〕を加え懸濁することにより培養器から遊離させ、遠心操作により該細胞を回収した。該細胞をプロテアーゼ・インヒビター・ミクスチュアー(終濃度はそれぞれ、0.5 mM フェニルメチルサルフォニルフルオライド、20 μg/mlロイペプチン、4 μg/ml E-64、10 μg/mlペプスタチン)を含む 10 mM炭酸水素ナトリウム、5 mM EDTA (pH 7.3)緩衝液中で、ポリトロン・ホモジェナイザーを用いてホモジェナイズした。ホモジェネートを、高速遠心機(CR26H、RR24A型ローター:日立株式会社)を用いて2500 rpm、 10分間遠心し、得られた上清を、超遠心機(SCP70H、RP42型ローター:日立株式会社)を用いて30,000 rpm、1時間遠心して沈殿を得た。この沈殿を再度プロテアーゼ・インヒビター・ミクスチュアー(0.5 mM フェニルメチルサルフォニルフルオライド、20 μg/ml ロイペプチン、4 μg/ml E-64、10 μg/mlペプスタチン)を含む10 mM炭酸水素ナトリウム、5 mM EDTA (pH 7.3)緩衝液に懸濁し、ガラニン・レセプター活性化作用の検出用の膜画分とした(-70℃に保存)。
【0038】
(1−3)[35S]GTPγS結合試験によるガラニン・レセプター活性化作用の検出
上記(1―2)で調製した膜画分を、濃度が40μg/ml(GALR1膜画分の場合)または32μg/ml(GALR2膜画分の場合)になるように、1 μM グアノシン-5’-二りん酸(GDP)、0.1% ウシ血清アルブミン(BSA)、5 mM MgCl2、 150 mM NaClを含む50 mMトリス緩衝液 (pH 7.4)に懸濁し、各0.2 mlごとポリプロピレン製小試験管(Falcon 2053)に分注した。分注した膜画分に50 nM [35S]GTPγS(New England Nuclear)を2 μl, およびアゴニストとしてブタ・ガラニン(100 μM、10 μM 、1 μM 、100 nM、10 nM、1 nM、100 pM、または10 pMの各濃度で)2μlを添加し、25℃で60分間反応した。該反応液に、1.5 mlの0.05% 3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルンモニオ]プロパンスルフォン酸(CHAPS)、0.1% BSA、 5 mM MgCl2、 1 mM EDTAを含む50 mMトリス緩衝液(pH 7.4)を加え、GF/Fガラス繊維ろ紙(ワットマン社)でろ過した。このろ紙を、1.5 mlの同緩衝液で洗浄し乾燥させた後、液体シンチレーション・カウンターにより放射活性を計測した。
その結果、ガラニン濃度依存的に[35S]GTPγS結合量の増加がみとめられ〔図1〕、本法によりガラニンレセプターのアゴニスト活性を測定できることが明らかになった。
ラット・ガラニンのEC50値(最大結合量の半分の結合量を与える濃度)は、GALR1の場合で約3 nM、またGALR2の場合で約10 nMであった。
【0039】
実施例2 GALR2(ガラニン・レセプター・タイプ2)を活性化する化合物のスクリーニング
(2―1)ブタ視床下部抽出液の調製
ブタ視床下部を東京芝浦臓器(株)で購入し、3時間以内に以下の操作を行い抽出液を調製した。
先ず、ブタ視床下部35個(約500 g)を包丁を用いて細かく切り刻み、沸騰した1250mlの蒸留水を含む3000 mlビーカーに入れ、10分間煮沸した。煮沸後の視床下部をビーカーごと水浴、次いで氷浴して、温度を約4℃まで下げた。該視床下部を煮沸に用いた蒸留水とともに、ポリトロン・ホモジェナイザーを用いて10分間ホモジェナイズした。得られたホモジェネートに終濃度が1 Mになるように酢酸90 mlを滴下し、1時間攪拌した。ホモジェネートを、高速遠心機(CR26H、RR10A型ローター:日立株式会社)を用いて、10,000 rpm、 30分間遠心し上清(1)を得た。一方、遠心後に得られた沈殿を、再度1 M酢酸2000 mlを加えてポリトロン・ホモジェナイザーを用いて10分間ホモジェナイズした。このホモジェネートを、攪拌翼を用い一晩(約16時間)攪拌した後、ポリトロン・ホモジェナイザーを用いて10分間ホモジェナイズし上清(2)を得た。上清(1)と上清(2)を混合し、その2倍容量のアセトンを加え、4℃にて1時間攪拌し、次いで高速遠心機(CR26H、RR10A型ローター:日立株式会社)を用いて10,000 rpm, 15分間遠心し上清を得た。得られた上清をロータリー・エバポレーターにかけ、アセトンを除去し、最終的に4000 mlまで濃縮した。この濃縮液を、超遠心機(SCP70H、日立RPZ35T型ローター:日立株式会社)を用いて、35,000 rpm、1時間遠心し、清澄な上清を得た。得られた上清を、1000 mlごとに500 mlのジエチルエーテルと混合し、分液ロート中にて激しく混和し、2相分離後、水相を得た。得られた水相を、ロータリーエバポレーターを用いて1000 mlまで濃縮し、最終的な抽出液を得た。
【0040】
(2―2)ブタ視床下部抽出液のオクタドデシル逆相クロマトグラフィーによる精製
オクタドデシル基を固定したシリカゲルODS-AM 120-S50(YMC社)をメタノールで膨潤後、直径5 cmのガラスカラムに容量が130 mlになるように充填し、1M酢酸で平衡化した。このカラムに、(2―1)で調製した抽出液(視床下500 g分)を流速400 ml/hで添着した。続いて、このカラムに、約500mlの1 M酢酸、次いで約500 mlの20% アセトニトリル/0.1 % トリフルオロ酢酸を、流速400ml/hで流し、ゲルを洗浄した。最後に、このカラムに、約500 mlの50% アセトニトリル/0.1 % トリフルオロ酢酸を流速400 ml/hで流し、目的とする粗ペプチド成分を溶出した。得られた溶出液を、エバポレーターを用いて濃縮した後、凍結乾燥機(12EL; VirTis社)にて凍結乾燥した。
【0041】
(2―3)ブタ視床下部抽出液のTSKgel ODS80TM逆相高速液体クロマトグラフィーによる精製
TSKgel ODS80TM逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー株式会社、22.5 mm x 30 cm)を、40℃にて、流速8 ml/minで A液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)を流し、平衡化した。上記(2―2)で得られた凍結乾燥物を、1 M酢酸に40 mlに溶解し、各10 mlずつ4回のクロマトグラフィー操作を行った。即ち、凍結乾燥物の酢酸溶液10 mlを該カラムに添着した後、流速8 ml/minで、60分間かけてA液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)容量80%/B液(0.1% トリフルオロ酢酸/100% アセトニトリル)容量20%から、A液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)容量40%/B液(0.1% トリフルオロ酢酸/100% アセトニトリル)容量60% まで直線的グラジエントで上昇させた。
溶出液を、8 mlずつフラクションNo.をつけて分取し、各1 mlずつに分注し真空濃縮機(サーバント社)で濃縮乾燥させた。この乾燥物に、ジメチルスルフォキサイド0.03 mlを加えて溶解し、 GALR1 および GALR2活性化作用を測定するアッセイ用サンプルとした。
(2―4)[35S]GTPγS結合試験によるGALR2(ガラニン・レセプター・タイプ2)を活性化する化合物の単離と精製
上記(2―3)で得られたアッセイ用サンプルを、上記(1―3)に記載したGALR1 またはGALR2膜画分を用いる[35S]GTPγS結合試験によりガラニン・レセプター活性化作用を測定した。
GALR1発現細胞膜画分を用いた[35S]GTPγS結合試験では、フラクションNo.36-39 および No.42-43に[35S]GTPγS結合促進活性が認められ、一方、GALR2発現細胞膜画分を用いた[35S]GTPγS結合試験では、フラクションNo.36-39, No.42-43、及びNo.46-49に[35S]GTPγS結合促進活性が認められた〔図2〕。
さらに、アッセイ用サンプルをジメチルスルフォキサイドで100倍希釈し、この希釈サンプル3 mlをブタ・ガラニン・ラジオイムノアッセイキット(Peninsula社)により分析した結果、フラクションNo.36-38にガラニン免疫活性が検出された〔図3〕。
以上の結果より、フラクションNo.36-39のGALR1およびGALR2活性化作用を有する成分はブタ・ガラニンであると判断された。一方、フラクションNo.46-49のGALR2活性化作用を有する成分はガラニンとは異なる化合物であることが予想された。
【0042】
(2―5)GALR2(ガラニン・レセプター・タイプ2)を活性化する化合物の分子量測定
公知のゲルろ過高速液体クロマトグラフィー法により、上記(2―4)で得られたGALR2活性化成分(フラクションNo.46-49)の分子量を測定した。
フラクションNo.46-49のサンプル混合液の 0.02 mlを0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水0.08 mlに希釈し、その0.05 mlをG2000SWXL(東ソー株式会社)カラムに添着し、0.1% トリフルオロ酢酸/10%アセトニトリル を流速0.5 ml/minで流し、溶出液を各0.25 ml (0.5分ごとに)分取した。分取したフラクションを濃縮乾燥(SpeedVac Plus SC210A; Savant社)し、膜画分の懸濁液に直接溶解した後、50nM [35S]GTPγS(New England Nuclear社)を2 μL添加し、以下(1―3)に記載した方法により[35S]GTPγS結合量を測定した。
その結果、 GALR2活性化作用([35S]GTPγS結合促進活性)を有する成分は、フラクションNo.35(リテンション・タイム 17〜17.5分)に溶出された〔図4〕。同一条件で分析した公知のペプチド(Adrenomedulin, Gastric inhibitory peptide, PACAP38, Neuropeptide Y, β-endorphine, Galanin, SRIF28(Somatostatin 28), Bovine Serum Albumin, Trypsin inhibitor, Lysozyme)を用いて比較解析した結果〔図5〕、 フラクションNo.46-49のGALR2活性化作用を有する成分の分子量は約5000〜約7000と推測された。
一方、公知のブタ・ガラニン(ペプチド研究所)の分子量は 3157.4(リテンション・タイム 18.858分)である。従って、フラクションNo.46-49として得られたGALR2活性化作用を有する化合物は、公知のガラニンとは異なる物質であることが示唆された。
【0043】
実施例3 GALR2(ガラニン・レセプター・タイプ2)活性化作用を有する化合物の精製
(3―1)ブタ視床下部抽出液の調製
大量の視床下部抽出液を調製するために、上記(2―1)の方法を以下のとおり簡略化した。
ブタ視床下部凍結品(東京芝浦臓器株式会社)を50個(約1 kg)を包丁を用いて薄い切片にスライスし、沸騰した2500mlの蒸留水を含む5000 mlビーカーに加え、10分間煮沸した。煮沸した視床下部をビーカーごと水浴、及び氷浴して、温度を約4℃まで下げ、視床下部を煮沸に用いた蒸留水とともに、ポリトロン・ホモジェナイザーを用いて10分間ホモジェナイズした。得られたホモジェネートに、酢酸 150 ml、および 6N塩酸を 8 ml滴下し、それぞれの終濃度を1 Mおよび20 mMとし、次に攪拌翼を用いて一晩(約16時間)攪拌した。ホモジェネートを高速遠心機(CR26H、日立RR10A型ローター:日立株式会社)を用いて 8000 rpm, 30分間遠心し、得られた上清を、ガーゼでろ過し、脂質片を取り除いた。以上の操作を4回繰り返し行うことにより、約4kgの視床下部から抽出液を調製した。
【0044】
(3―2)ブタ視床下部抽出液の濃縮と粗分画
(3―2―1)オクタドデシル逆相クロマトグラフィーによる精製
オクタドデシル基を固定したシリカゲル(YMC社、ODS-AM 120-S50)をメタノールで膨潤後、直径5 cmのガラスカラムに容量が400 mlになるように充填し、1 M酢酸で平衡化した。
このカラムに(3―1)で調製した抽出液の半分量(視床下部2kg分)を流速400 ml/hで添着した後、流速400 ml/hで、約1000mlの1 M酢酸、次いで約1200 mlの20% アセトニトリル/0.1 % トリフルオロ酢酸を流し、ゲルを洗浄した。最後に、流速400 ml/hで、約2000 mlの60% アセトニトリル/0.1 % トリフルオロ酢酸をカラムに流し、目的とする粗ペプチド画分を溶出した。得られた溶出液を、エバポレーターを用いて濃縮した後、凍結乾燥機(12EL; VirTis社)にて凍結乾燥した。以上の操作を2回実施し、約4kg(200個)分の視床下部の抽出液の凍結乾燥粉末を調製した。
(3―2―2)SP-Sephadexイオン交換クロマトグラフィーによる精製
直径5 cmのガラスカラムに、10 mM塩酸中で膨潤させたSP-Sephadex C25(Pharmacia Biotech 社)を、容量が120 mlになるよう充填し、100 mM塩酸で洗浄した後、1 M酢酸で平衡化した。(3―2―1)により得られた視床下部抽出液の凍結乾燥粉末を、約800 mlの1 M酢酸に溶解し、平衡化したSP-Sephadex C25カラムに流速400 ml/hで添着した。約600 mlの1 M酢酸、約600 mlの1 Mピリジン、約600 mlの1 Mピリジン・酢酸(pH 5.0)を流速400 ml/hで順次カラムに流し、溶出液を40mlづつ分取し、これを各0.2 mlづつに分注し真空濃縮機(サーバント社)で濃縮乾燥させた。この乾燥物に、ジメチルスルフォキサイド0.04 mlを加えて溶解し、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。
その結果、目的とするGALR2活性化作用を有する成分は、1 Mピリジン・酢酸(pH 5.0)により溶出されていることが判明した。本結果より、GALR2活性化作用を有する成分(化合物)は強塩基性物質であると考えられた。
(3―2―3)Sephadex G50ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製
上記(3―2―2)で得られた1 Mピリジン・酢酸(pH 5.0)溶出液分取品をエバポレーターを用いて100 mlになるまで濃縮し、1 M酢酸で平衡化したSephadex G50 (Pharmacia Biotech 社)カラム(直径6 cm、容量3000 ml)に流速400ml/hで添着した後、流速400 ml/hで1 M酢酸をカラムに流し、溶出液を33 mlづつフラクションNo.をつけて分取し、これを各0.25 mlづつに分注し真空濃縮機(Savant社)で濃縮乾燥させた。この乾燥物に、ジメチルスルフォキサイド0.03 mlを加えて溶解し、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。
その結果、目的とするGALR2活性化作用を有する成分は主として、分取フラクションNo.66-80に溶出されていることが判明した。また、フラクションNo.55-65および No.45-54にも弱い活性が検出された。フラクションNo.66-80、55-65 および 45-54をそれぞれ混合して凍結乾燥した。
(3―3)HPLCを用いるGALR2活性化作用を有する化合物の精製
(3―3―1)TSKgel ODS80TM逆相高速液体クロマトグラフィーによる精製
TSKgel ODS80TM逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー、22.5 mm x 30 cm)を、40℃にて、流速4 ml/minでA液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)を流し、平衡化した。
上記(3―2―3)で得られたSephadex G50分取フラクションの各凍結乾燥物を1 M酢酸に溶解し、それぞれカラムに添着した後、流速4 ml/minで、120分間かけて A液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)容量67%/B液(0.1% トリフルオロ酢酸/60% アセトニトリル)容量33%から、B液(0.1% トリフルオロ酢酸/60% アセトニトリル)容量100% まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。
溶出液を、8 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。なお、フラクションNo.66-80の凍結乾燥物は2回に分けてクロマトグラフィーを実施し、またフラクションNo. 55-65、45-54はそれぞれ1回のクロマトグラフィーで分離した。
分取フラクション4 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、いずれのクロマトグラフィーにおいても主に3種の活性ピークが見られた。フラクションNo.35-38に見られた活性化作用を有する成分の溶出位置は実施例2に記載したガラニンの溶出位置にほぼ一致した。また、フラクションNo.47-50に見られた活性化成分は実施例2に記載したGALR2活性化作用を有する成分(GALR1を活性化せず、また前述のブタ・ガラニン・ラジオイムノアッセイ・キットで検出されない)の溶出位置にほぼ一致した。従って、フラクションNo.47-50を用いてGALR2活性化作用を有する成分の精製を実施することとし、これらフラクションを混合して凍結乾燥した。
(3―3―2)TSKgel CM-2SWイオン交換高速液体クロマトグラフィーによる精製
TSKgel CM-2SWイオン交換高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー、 0.46 cm x 25 cm)を、20℃にて、流速1 ml/minで A液(10 mMぎ酸アンモニウム/40% アセトニトリル)を流速1 ml/minで流し、平衡化した。
(3―3―1)で得られた逆相高速液体クロマトグラフィー分取フラクションの凍結乾燥物をA液に溶解し、カラムに添着した後、流速1 ml/minで、60分間かけて A液(10 mMギ酸アンモニウム/40% アセトニトリル)容量100%から、B液(500 mMギ酸アンモニウム/40% アセトニトリル)容量100% まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。
溶出液を、0.5 mlづつフラクションNo.をつけて分取した。分取フラクション1μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、主な活性ピークはフラクションNo.89-92に検出された。これらのフラクションをまとめて以降の精製に用いた。
【0045】
(3―3―3)ジフェニル逆相高速液体クロマトグラフィーによる精製
ジフェニル逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(Vydak 219TP54、 0.46 cm x 25 cm)を、40℃にて、流速1 ml/minでA液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)を流し、平衡化した。
上記(3―3―2)で得られたイオン交換高速液体クロマトグラフィー分取フラクションを直接カラムに添着した後、流速 1ml/minで 1分間で A液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)容量100%から B液(0.1% トリフルオロ酢酸/60% アセトニトリル)容量を50%まで急速に上昇させ、これを次に、流速1 ml/minで、60分間かけてB液濃度を100% まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。
溶出液を、1 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。分取フラクション1 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、主な活性ピークはフラクションNo.24-26に検出された。これらのフラクションをまとめて以降の精製に用いた。
(3―3―4)Super Phenyl逆相高速液体クロマトグラフィーによる精製
TSKgel Super Phenyl逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー、 0.46 cm x 10 cm)を、40℃にて、流速1 ml/minで A液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)を流し、平衡化した。
(3―3―3)で得られたジフェニル逆相高速液体クロマトグラフィー分取フラクションを直接カラムに添着した後、流速 1ml/minで 1分間で A液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)容量100%から B液(0.1% トリフルオロ酢酸/60% アセトニトリル)容量45%まで急速に上昇させ、これを次に、流速1 ml/minで、80分間かけてB液濃度を55% まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。
溶出液を、1 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。分取フラクション1 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、主な活性ピークはフラクションNo.44-45 および No.50-52に検出された。フラクションNo.44−45を混合して同条件にて再クロマトグラフィー操作を実施し、0.5 mlずつ溶出フラクションを分取した。一方、No.50、51および52はそれぞれ別個に同条件にて再クロマトグラフィー操作を実施し、0.5 mlずつ溶出フラクションを分取した。
各分取フラクション2 μlを直接使用し、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、 No.44−45の再クロマトグラフィー操作で得られたフラクションNo.93-95、および、フラクションNo.50の再クロマトグラフィー操作で得られたフラクションNo.105-107に活性ピークが検出された。フラクションNo.51の再クロマトグラフィー操作で得られたフラクションNo.105-107に主たる活性ピークと、フラクションNo.108-109に弱い活性ピークが検出された。さらに、フラクションNo.52の再クロマトグラフィー操作で得られたフラクションNo.106-110には主たる活性ピークがブロードに検出された。
【0046】
(3―3―5)Super ODS逆相高速液体クロマトグラフィーによる精製
(3―3―5―1)GALR2 活性化主成分の精製
(3―3―5―1―1)トリフルオロ酢酸存在下でのクロマトグラフィー
TSKgel Super ODS逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー株式会社、 0.46 cm x 10 cm)を、40℃にて、流速1 ml/minでA液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)を流し、平衡化した。
(3―3―4)で得られたSuper Phenyl逆相高速液体クロマトグラフィー分取フラクションNo93-95を直接カラムに添着した後、流速 1ml/min、1分間で、A液(0.1% トリフルオロ酢酸/蒸留水)容量100%から B液(0.1% トリフルオロ酢酸/60% アセトニトリル)容量を50%まで直線的グラジエントで上昇させ、これを次に流速1 ml/minで、84分間かけてB液濃度を62.5% まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。
溶出液を、0.5 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。分取フラクション2 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、活性ピークはフラクションNo.96-97に検出された。
得られたフラクションNo.96-97を混合して同条件にて再クロマトグラフィー操作を実施し、0.5 mlずつフラクションを分取した。210 nmの紫外(UV)吸収で検出されたピークは単一ではあったが、不純物の混入を示唆するピークの肩が認められた。各分取フラクション2 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、活性ピークはフラクションNo.98-100に検出され、これらは210 nmの紫外吸収で検出されたピーク肩部分を除く部分に一致した。該ピーク肩部分に含まれる不純物を除去するために、(3―3―5―1―2)に記載の方法によりさらに精製を行った。
(3―3―5―1―2)ヘプタフルオロ酪酸存在下でのクロマトグラフィー
TSKgel Super ODS逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー株式会社、 0.46 cm x 10 cm)を、40℃にて、流速1 ml/minで A液(0.1% ヘプタフルオロ酪酸/蒸留水)を流し、平衡化した。
(3―3―5―1―1)で得られたフラクションNo98-100を直接カラムに添着した後、 流速 1ml/min、1分間で A液(0.1% ヘプタフルオロ酪酸/蒸留水)容量100%から B液(0.1% ヘプタフルオロ酪酸/100% アセトニトリル)容量を35%まで急速に上昇させ、これを次に流速1 ml/minで、60分間かけてB液濃度を50% まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。
溶出液を、0.5 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。分取フラクション2 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、活性ピークはフラクションNo.67-69に検出された。この活性ピークは、2本に分離された210nmの紫外吸収ピークのうち、早く溶出された方の紫外吸収ピークに完全に一致し、単一ペプチドにまで精製されたものと判断した。本活性化作用を有する成分をGALR2活性化主成分と呼ぶ。
(3―3―5―2)GALR2活性化副成分(1)の精製
TSKgel Super ODS逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー株式会社、 0.46 cm x 10 cm)を、40℃にて、流速1 ml/minで A液(0.1% ヘプタフルオロ酪酸/蒸留水)を流し、平衡化した。
(3―3―4)で得られたSuper Phenyl逆相高速液体クロマトグラフィー分取フラクションNo.105-107(フラクションNo.50由来)、フラクションNo.105-107(フラクションNo.51由来)、フラクションNo.106-107(フラクションNo.52由来)を混合し、直接カラムに添着した後、流速 1ml/min、1分間で、A液(0.1%トリフルオロ酢酸/蒸留水)容量100%から B液(0.1% トリフルオロ酢酸/60% アセトニトリル)容量を52.5%まで急速に上昇させ、これを次に流速1 ml/minで、84分間かけてB液濃度を65%まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。溶出液を、0.5 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。
分取フラクション2 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、活性ピークはフラクションNo.75-76に検出された。得られたフラクションNo.75-76を混合し、同条件にて再度同じクロマトグラフィーを実施し、0.5 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。溶出液は、210 nmの紫外吸収では単一なピークとして検出された。分取フラクション3 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、活性ピークはフラクションNo.76-78に検出された。この活性ピークは210 nmの紫外吸収ピークと一致し、活性成分は単一ペプチドにまで精製されたものと判断した。本活性化作用を有する成分をGALR2活性化副成分(1)と呼ぶ。
【0047】
(3―3―5―3)GALR2活性化副成分(2)の精製
TSKgel Super ODS逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(東ソー株式会社、 0.46 cm x 10 cm)を、40℃にて、流速1 ml/minで A液(0.1% ヘプタフルオロ酪酸/蒸留水)を流し、平衡化した。
(3―3―4)で得られたSuper Phenyl逆相高速液体クロマトグラフィー分取フラクションNo.108-109(フラクションNo.51由来)、フラクションNo.108-110(フラクションNo.52由来) を混和し、直接カラムに添着した後、流速 1 ml/min、1分間で、A液容量100%から B液(0.1% トリフルオロ酢酸/60% アセトニトリル)容量を52.5%まで急速に上昇させ、これを次に流速1 ml/minで、84分間かけてB液濃度を65%まで直線的グラジエントで上昇させ溶出液を回収した。溶出液を、0.5 mlずつフラクションNo.をつけて分取した。
分取フラクション2μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、活性ピークはフラクションNo.79-80に検出された。
得られたフラクションNo.79-80を混合して同条件にて再度同じクロマトグラフィーを実施し、0.5 mlずつ分取したところ、210 nmの紫外吸収で単一なピークとして検出された。
分取フラクション3 μlを直接用い、上記(1−3)の試験法により、 GALR2活性化作用を測定した。その結果、活性ピークはフラクションNo.79-81に検出された。この活性ピークは210 nmの紫外吸収ピークと一致し、活性成分は単一ペプチドにまで精製されたものと判断した。本活性化作用を有する成分をGALR2活性化副成分(2)と呼ぶ。
【0048】
実施例4 アミノ酸配列分析
(4―1)GALR2活性化作用を有する主成分のN末端アミノ酸配列分析
上記(3―3―5―1―2)で得られたフラクションNo.67-69のGALR2活性化主成分を20μlの0.1% トリフルオロ酢酸/30% アセトニトリルに溶解し、ペプチドサポートディスク(ベックマン社)に滴下した後、窒素ガスにより該ディスクを乾燥させた。これをプロテインシーケンサー(ベックマン社、LF3400DT)にセットし、標準分析法(プロシージャ40)により自動エドマン分解反応を行ないアミノ酸配列解析を行った。各サイクルごとに同定されたPTHアミノ酸を〔表1〕に示した。
【表1】
表1より、GALR2活性化主成分のN末端から34残基目までのアミノ酸配列を以下のように決定することができた(28残基目Xは未同定であることを表す)。
APVHRGRGGWTLNSAGYLLGPVLHPPSXAEGGGK (GALR2活性化主成分のN末端アミノ酸配列、配列番号:11)
得られたアミノ酸配列中のN末端から9残基〜21残基目の13残基からなる配列は、公知のブタ・ガラニンのN末端アミノ酸配列に一致した。しかし、その前後のアミノ酸配列はブタ・ガラニンおよびその前駆体のいずれの配列とも一致しなかった。また、本アミノ酸配列と一致する公知のペプチドは見出されなかったので、得られたGALR2活性化主成分は新規ペプチドであると推測された。
(4―2) GALR2活性化作用を有する副成分(1)のN末端アミノ酸配列分析
上記(3―3―5―2)で得られたフラクションNo.76-78のGALR2活性化副成分は、(4―1)と同様にして分析した。各サイクルごとに同定されたアミノ酸を〔表2〕に示した。
【表2】
表2より、GALR2活性化副成分(1)のN末端から32残基目までのアミノ酸配列を以下のように決定することができた(28残基目Xは未同定であることを表す)。
APVHRGRGGWTLNSAGYLLGPVLHPPSXAEGG (GALR2活性化副成分(1)のN末端配列、配列番号:12)
このアミノ酸配列は上記(4―1)で得られたGALR2活性化主成分のN末端アミノ酸配列32残基に完全に一致した。
【0049】
(4―3) GALR2活性化作用を有する副成分(2)のN末端アミノ酸配列分析
上記(3―3―5―3)で得られたフラクションNo.79-81のGALR2活性化副成分(2)を、20μlの0.1% トリフルオロ酢酸/30% アセトニトリルに溶解し、重炭酸アンモニウム(終濃度1%)、TLCK-キモトリプシン(終濃度10pmolシグマ社)および蒸留水を添加して 50μlとし、37℃で1時間反応させた。
Spheri-5 RP-18逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(ブラウンリー社、 2.1 mm x 30 mm)を、25℃にて、流速300μl/minで A液(0.1%トリフルオロ酢酸)を流し、平衡化した。
酵素反応液全量をカラムに添着した後、流速300μl/minで、30分間かけてA液(0.1%トリフルオロ酢酸)容量100%から B液(0.1%トリフルオロ酢酸/70% アセトニトリル)容量を70% まで上昇させ、210nmの紫外吸収を示す溶出ピーク4つ(CHY-1、CHY-2、CHY-3 および CHY-4)を溶出フラクションとして回収した。
分取した4つのフラクション(キモトリプシン消化断片)を、窒素気流下で50μl以下になるまで濃縮した後、(4―1)と同様にしてプロテインシーケンサーによりN末端アミノ酸配列分析を行なった。なお、CHY-3 については、ベックマン社 LF3400DTプロテインシーケンサーを、CHY-1、CHY-2、および CHY-4 については、アプライドバイオシステムズ社 477Aプロテインシーケンサーを使用した。
N末端アミノ酸配列解析により以下の配列が得られた。
CHY-1: APVHRGRGG(配列番号:13)
CHY-2: XAIDGLPYPQS (Xは未同定)(配列番号:16)
CHY-3: LLGPVLHPPSXAEGGGKTALGILDL (Xは未同定)(配列番号:15)
CHY-4: TLNSAG (配列番号:14)
上記(4―1)で得られたGALR2活性化主成分または上記(4―2)で得られたGALR2活性化副成分(1)のN末端アミノ酸配列結果を参考にして、GALR2活性化副成分(2)は次のN末端アミノ酸配列を有しているものと推測された。
APVHRGRGGWTLNSAGYLLGPVLHPPSXAEGGGKTALGILDL(配列番号:17)
【0050】
実施例5 ブタ型リガンドペプチド(1−60)をコードするcDNA
1)デジェネレートPCR(Degenerated PCR)法によるブタGALR2活性化因子遺伝子断片のクローニング
ブタ全脳からTRIZOL reagent(Gibco BRL社)を用い、添付されたマニュアルに記載された方法に従ってtotal RNAを抽出した。次いでオリゴdTセルロースカラム(mRNA Purification Kit, Pharmacia社)を用い、添付されたマニュアルに記載された方法に従って該total RNAからpoly(A)+ RNAを調製した。さらに、3' RACE System for rapid amplification of cDNA ends (Gibco BRL 社) を用い、添付されたマニュアルに記載された方法に従って、該Poly (A)+ RNAから first strand cDNA を合成した。また、ブタGALR2活性化成分の部分アミノ酸配列を基にデザインした次の degenerate primerを合成した。
pGAL4-7F: 5'-CAYMGNGGIMGNGGIGGSTGGAC-3' (配列番号:20)
pGAL9-3F: 5'-GGHTGGACNCTNAAYAGYGC-3' (配列番号:21)
pGAL34-1R: 5'-ATICCNAGIGCNGTYTTICCYTT-3' (配列番号:22)
前述の first strand cDNA を鋳型として用い、pGAL4-7FおよびpGAL34-1Rをプライマーとして用いて初段のPCR反応を実施した。該PCR反応における反応液は、Taq polymerase(宝酒造株式会社)を0.5 μl、それぞれ添付の10x PCR buffer(500 mM KCl-100 mM Tris・HCl, pH 8.3)を10 μl、25 mM MgCl2を6 μl、2.5 mM dNTP mixtureを8 μl、プライマーpGAL4-7FおよびプライマーpGAL34-1R(ともに10 μM)を各10 μl、および該鋳型cDNA(前述の first strand cDNA)を8 μl、蒸留水を47.5 μlを混合して作製した。該PCRとして、1)初期変性(94℃・30秒間)、2)32回のサイクル反応(94℃・20秒間-55℃・30秒間-72℃・30秒間)の後3)最終伸長反応(72℃・4分間)を行い初段PCR産物を得た。
得られた初段PCR産物を鋳型として第2段のPCR反応(nested PCR)を行った。該反応液は、Taq polymerase(宝酒造株式会社)を0.5 μl、添付の10x PCR buffer(500 mM KCl-100 mM Tris・HCl, pH 8.3)を10 μl、25 mM MgCl2を6 μl、2.5 mM dNTP mixtureを8 μl、プライマーpGAL9-3FおよびpGAL34-1R(ともに10 μM)を各10 μl、および該鋳型cDNA(初段PCR産物)を5 μl、蒸留水を50.5 μlを混合して作製した。該PCRとして、1)初期変性(94℃・30秒間)、2)32回のサイクル反応(94℃・20秒間-55℃・30秒間-72℃・30秒間)の後3)最終伸長反応(72℃・10分間)を行い nested PCR 産物を得た。
さらに nested PCR 産物を2.0%アガロースゲル電気泳動を行い、サイバーグリーン染色される約100 bpのバンドを含むゲル片を剃刀で切り出した。該ゲル片より Gene Clean DNA 抽出キット(BIO 101社)を用いてnested PCR 産物であるDNA断片を回収した。このDNA断片をTOPO TA Cloning Kit (Invitrogen社)を用いて、添付のマニュアルに記載された方法に従ってキットに添付されたプラスミドベクターpCRIIに連結した。得られたプラスミドをQIAwell 8 Ultra plasmid purification kit(QIAGEN社)を用いて精製した。該プラスミド中の nested PCR 産物の塩基配列決定のための反応は、Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems、パーキンエルマー社)を用いて行い、蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism 377:Applied Biosystems、パーキンエルマー社)を用いて nested PCR 産物の塩基配列を解読した。その結果、ブタGALR2活性化因子の部分ペプチドをコードする98 bpのDNA断片を有する数種類のプラスミドを得ることができた。PCR反応にdegenerate primersを用いたため、これらの数種類のプラスミドにおけるDNAはプライマーに対応する部分で塩基配列に差異が見られた。以下に代表的な2クローン、pCR100-6およびpCR100-7中の nested PCR 産物の塩基配列を示す。
pCR100-6:
GGCTGGACTT TAAATAGTGC TGGTTACCTC CTGGGTCCCG TACTCCATCC GCCCTCCAGG
GCTGAAGGAG GCGGGAAGGG CAAAACAGCC CTGGGCAT (配列番号:23)
pCR100-7:
GGTTGGACTT TGAACAGTGC TGGTTACCTC CTGGGTCCCG TACTCCATCC GCCCTCCAGG
GCTGAAGGAG GCGGGAAGGG CAAAACCGCC CTAGGCAT (配列番号:24)
2)ブタ型リガンドペプチド(1−60)をコードするcDNAのクローニング
ブタ全脳より得られた前述の poly (A)+ RNAより、ZAP-cDNA Gigapack III Gold cloning kit (STRATAGENE社)を用いて、ブタ全脳cDNAファージライブラリーを作製した。方法はキットに添付されたマニュアルに従った。得られたファージ(2,200,000 plaque forming units)を該マニュアルの方法で大腸菌XL1-Blue MRF'(STRATAGENE社)に感染させた後、NZY培地アガープレート120枚にまき、37℃で8時間培養した。得られた大腸菌プラークよりファージをHybond-N+ナイロンメンブレン(アマシャム社)に写し取った。このナイロンメンブレンを1.5 M塩化ナトリウムを含む0.5 N水酸化ナトリウム溶液、1.5 M 塩化ナトリウムを含む0.5 Mトリス緩衝溶液(pH 7.0)、および2x SSC液に順次浸した後、風乾させた。
得られたナイロンメンブレンをハイブリダイゼーション緩衝液(5x SSPE, 5x Denhardt's液、0.5% SDS, 0.1 mg/ml サケ精子DNA)中にて60℃に24時間保温し、次いで、ハイブリダイゼーションプローブ(5 x 105 cpm/ml)を含むハイブリダイゼーション緩衝液(同上)中にて、60℃に24時間保温した。該ハイブリダイゼーションプローブは、前述のプラスミドpCR100-6とpCR100-7の1:1混合物を鋳型として、次に示す2個のプライマーpGAL9-3FおよびpGAL34-8Rにより増幅したDNA断片を用いた。
pGAL9-3F: 5'-GGHTGGACNCTNAAYAGYGC-3' (配列番号:25)
pGAL34-8R:5'-ATDCCBAGGGCDGTTTTGCCCTT-3' (配列番号:26)
即ち、該増幅反応〔反応液組成は、ExTaq(宝酒造株式会社)を0.5 ml、添付の10x Ex Taq buffer(20 mM MgCl2を含む。)を5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、[α-32P]dCTP (6000 Ci/mmol)を10 μl、プライマーpGAL9-3FおよびpGAL34-8R(それぞれ10 μM)を各0.5 μl、および鋳型cDNAを1 μl、蒸留水を29 μlを混合して作製〕として、96℃・30秒間の初期変性後、94℃・20秒間-55℃・30秒間-72℃・30秒間のサイクル反応を32回、および72℃・4分間の最終伸長反応を行い増幅DNA断片を得た。
該ハイブリダイゼーション反応後のナイロンメンブレンを、0.1% SDSを含む0.2x SSC緩衝液を用いて50℃にて30分間洗浄した後、X線フィルム(Kodak社、BioMax MS)を用いて増感スクリーンの存在下でオートラジオグラフィーに処した(曝露条件:-70℃、3日間)。該オートラジオグラフィーの結果から検出された陽性プラークを単離し、クロロフォルム0.1 mlを含むSM 緩衝液(100 mM NaCl, 8 mM MgSO4, 0.01% gelatin, 50 mM Tris・HCl, pH 7.5)5 ml中にファージを抽出した。
得られたファージを再度大腸菌XL1-Blue MRF'に感染させた後、NZY培地アガープレートにまき、37℃で8時間培養した。得られた大腸菌プラークよりファージをナイロンメンブレン(アマシャム社、Hybond-N+)に写し取り、前述と同様の方法によりハイブリダイゼーションを行った。オートラジオグラフィーにより、陽性の単一クローンを単離し、前述と同様の一連の操作をもう一度繰り返し実施し、完全に単一なファージクローンを取得した。
【0051】
次に、該ファージクローンからプラスミドを以下の方法で単離精製した。ファージ液(1 μl)を大腸菌XPORT(50 μl)、ヘルパーファージ(10 μl)、大腸菌XLOLR(5 μl)と混合し、NZY アガープレートにまき、37℃で8時間培養した。大腸菌XPORTプラーク中に生じた大腸菌XLOLRの小コロニーをつま楊枝でピックアップし、アンピシリンとテトラサイクリンを含むLB培地アガープレートにて37℃、一晩培養した。単一コロニーより大腸菌XLOLRをピックアップし、LB培地中にて液体培養した。培養終了後、大腸菌XLOLRを集菌し、プラスミド精製キット(キアゲン社、QIAwell 8 Ultra)を用いてプラスミドを精製した。
該プラスミド中のブタGALR2活性化因子をコードするcDNAの塩基配列決定のための反応は、Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems、パーキンエルマー社)を用いて行い、蛍光式自動シークエンサー(DNA sequencer Prism 377:Applied Biosystems、パーキンエルマー社)を用いてブタGALR2活性化因子をコードするcDNAの塩基配列を解読した。その結果、ブタGALR2活性化因子の全長ペプチドをコードする974 bpのDNA断片を有するプラスミドpGR2PL6、および1007 bpのDNA断片を有するプラスミドpGR2PL3を得ることができた。両者のDNA配列によりコードされるGALR2活性化因子の前駆体の鎖長およびアミノ酸配列には大きな差異が見られたが、プロセシングにより産生されると予想される成熟活性化因子(mature peptide)部分の配列は同一であった。
得られた2個のプラスミドを公知の方法により大腸菌TOP10に導入し、形質転換体それぞれTOP10/pGR2PL6、TOP10/pGR2PL3を得た。
【0052】
実施例6 ブタ型リガンドペプチド(1−60):Ala-Pro-Val-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Trp-Thr-Leu-Asn-Ser-Ala-Gly-Tyr-Leu-Leu-Gly-Pro-Val-Leu-His-Pro-Pro-Ser-Arg-Ala-Glu-Gly-Gly-Gly-Lys-Gly-Lys-Thr-Ala-Leu-Gly-Ile-Leu-Asp-Leu-Trp-Lys-Ala-Ile-Asp-Gly-Leu-Pro-Tyr-Pro-Gln-Ser-Gln-Leu-Ala-Ser(配列番号:31)の製造
市販Boc-Ser(Bzl)l-OCH2-PAM樹脂(0.73 m mole/g resin) 0.5 m mole 分をペプチド合成機ABI 430Aの反応曹に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt)ペプチド合成方法でBoc-Ala, Boc-Leu, Boc-Gln, Boc-Ser(Bzl), Boc-Pro, Boc-Tyr(Br-Z), Boc-Gly, Boc-Asp(OcHex), Boc-Ile, Boc-Lys(Cl-Z), Boc-Trp(CHO), Boc-Thr(Bzl), Boc-Glu(OcHex), Boc-Arg(Tos), Boc-His(Bom), Boc-Val, Boc-Asn, を所望のアミノ酸配列順に導入し目的の保護ペプチド樹脂を得た。 この樹脂0.105gをp-クレゾール1.1g、1,4-ブタンジチオール1.2 mlと共に無水弗化水素10 ml中、0℃ 60分撹袢した後、弗化水素を減圧留去し、残留物へジエチルエーテルを加え沈殿を濾過した。 この沈殿に50%酢酸水を加え抽出し、不溶部分を除き、抽出液を十分に濃縮後、50%酢酸水で充填したセファデックスョG-25カラム(2.0 x 80 cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集めLiChroprepョ RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 60 cm)に付け0.1%TFA水 200mlで洗浄、0.1%TFA水 300mlと0.1%TFA含有50%アセトニトリル水 300mlを用いた線型勾配溶出を行い、主要画分を集め濃縮、凍結乾燥し白色粉末39mgを得た。 これを更にCM−セルロファインョを充填したイオン交換クロマトカラムに付け50mMから200mM酢酸アンモニウム濃度の線形勾配溶出を行い主要画分を集め凍結乾燥を繰り返し、白色粉末10mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 6204.7 (計算値 6205.2)
HPLC溶出時間 21.8分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0053】
実施例7 ラット型リガンドペプチド(1−60):Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Trp-Thr-Leu-Asn-Ser-Ala-Gly-Tyr-Leu-Leu-Gly-Pro-Val-Leu-His-Leu-Ser-Ser-Lys-Ala-Asn-Gln-Gly-Arg-Lys-Thr-Asp-Ser-Ala-Leu-Glu-Ile-Leu-Asp-Leu-Trp-Lys-Ala-Ile-Asp-Gly-Leu-Pro-Tyr-Ser-Arg-Ser-Pro-Arg-Met-Thr(配列番号:33)およびヒト型リガンドポリペプチド(1−60): Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Trp-Thr-Leu-Asn-Ser-Ala-Gly-Tyr-Leu-Leu-Gly-Pro-Val-Leu-His-Leu-Pro-Gln-Met-Gly-Asp-Gln-Asp-Gly-Lys-Arg-Glu-Thr-Ala-Leu-Glu-Ile-Leu-Asp-Leu-Trp-Lys-Ala-Ile-Asp-Gly-Leu-Pro-Tyr-Ser-His-Pro-Pro-Gln-Pro-Ser(配列番号:34)の製造
市販Boc-Thr(Bzl)l-OCH2-PAM樹脂を用い実施例1と同様に合成と精製を行い取得できる。
【0054】
実施例8 モノクロナル抗体作製に用いた抗原ペプチドAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)の製造
市販p-メチルMBH樹脂(0.77 m mole/g resin)を用い実施例1と同様にBoc-Cys(MeBzl), Boc-Gly, Boc-Arg(Tos), Boc-His(Bom), Boc-Ala, Boc-Proを所望のアミノ酸配列順に縮合、弗化水素処理、50%酢酸水で充填したセファデックスョG-25カラム(2.0 x 80 cm)で精製の後凍結乾燥し、白色粉末50mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 980.5(計算値 980.5)
HPLC溶出時間 5.2分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い B液濃度0から50%へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0055】
実施例9 Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly(配列番号:35)を含む免疫原の作製
上記実施例8で得られたAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)で表示のペプチドとKeyhole Limpet Hemocyanin(KLH)との複合体を作製し、免疫原とした。すなわち、KLH20mgを、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)1.4mlに溶解させ、N−(γ−マレイミドブチリロキシ)サクシニミド(GMBS)2.2mg(8μmol)を含むDMF溶液100μlと混合し、室温で40分反応させた。反応後、セファデックスG−25カラムで分画したのち、マレイミド基の導入されたKLH15mgとAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)で表示のペプチド1.6 mgとを混合し、4℃で2日間反応させた。反応後、生理食塩水に対し、4℃で2日間透析した。
【0056】
実施例10 免疫
6〜8週令のBALB/C雌マウスに上記実施例9記載の免疫原Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を、約30μg/匹を完全フロイントアジュバントとともに皮下免疫した。以後3週間おきに同量の免疫原を不完全フロイントアジュバントとともに2回追加免疫した。
【0057】
実施例11 酵素標識化抗原の作製
西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識化Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)で表示のペプチドの作製
上記実施例8で得られたAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)で表示のペプチドとHRP(酵素免疫測定法用、ベーリンガーマンハイム社製)とを架橋し、酵素免疫測定法(EIA)の標識体とした。すなわち、HRP 6mg(150nmol)を0.95mlの0.1Mリン酸緩衝液、pH6.5に溶解させ、GMBS0.42mg(1.5μmol)を含むDMF溶液50μlと混合し、室温で30分間反応させたのち、セファデックスG−25カラムで分画した。このようにして作製した、マレイミド基の導入されたHRP4.2mg(105nmol)と実施例9で作製されたAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)で表示のペプチド 0.31mg(315nmol)とを混合し、4℃で1日反応させた。反応後ウルトロゲルAcA44(LKB−ファルマシア社製)カラムで分画し、HRP標識化Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2を得た。
【0058】
実施例12 Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を免疫したマウスの抗血清中の抗体価の測定
上記実施例9で得られたAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を免疫中のマウス抗血清中の抗体価を以下の方法により測定した。抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートを作製するため、まず抗マウスイムノグロブリン抗体(IgG画分、カッペル社製)を100μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液、pH9.6溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。次に、プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄したのち、ウェルの余剰の結合部位をふさぐため25%ブロックエース(雪印乳業社製)を含むPBSを300μlずつ分注し、4℃で少なくとも24時間処理した。
上記、抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートの各ウエルにバッファーC[1%BSA、0.4M NaCl、および2mM EDTAを含む0.02Mリン酸緩衝液、pH7.0] 50μl、バッファーCで希釈したAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体抗血清100μlを加え4℃で16時間反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、上記実施例11で作製したHRP標識化Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(バッファーCで500倍希釈)100μlを加え室温で1日反応させた。次に、該プレートをPBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性をTMBマイクロウェルパーオキシダーゼ基質システム(KIRKEGAARD&PERRY LAB, INC、 フナコシ薬品取り扱い)100μlを加え室温で10分間反応させることにより測定した。反応を1Mリン酸100μlを加え停止させたのち、450nmの吸収をプレートリーダー(BICHROMATIC、大日本製薬社製)で測定した。結果を〔図7〕に示す。免疫した8匹のマウス全てにAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体に対する抗体価の上昇が認められた。
【0059】
実施例13 ラット型リガンドぺプチド(1−60)(配列番号:33)のモノクローナル抗体の作製
比較的高い抗体価を示したマウスに対して200〜300μgの免疫原を生理食塩水0.25〜0.3mlに溶解させたものを静脈内に接種することにより最終免疫を行なった。 最終免疫3〜4日後のマウスから脾臓を摘出し、ステンレスメッシュで圧迫、ろ過し、イーグルズ・ミニマム・エッセンシャルメデイウム(MEM)に浮遊させ、脾臓細胞浮遊液を得た。細胞融合に用いる細胞として、BALB/Cマウス由来ミエローマ細胞P3−X63.Ag8.U1(P3U1)を用いた〔カレント トピックス イン マイクロバイオロジー アンド イムノロジー、81、1(1978)〕。細胞融合は、原法〔ネイチャー、256、495(1975)〕 に準じて行なった。すなわち、脾臓細胞およびP3U1をそれぞれ血清を含有しないMEMで3度洗浄し、脾臓細胞とP3U1数の比率を10:1になるよう混合して、800回転で15分間遠心を行なって細胞を沈澱させた。上清を充分に除去した後、沈殿を軽くほぐし、45%ポリエチレングリコール(PEG)6000(コッホライト社製)を0.3ml加え、37℃温水槽中で7分間静置して融合を行なった。融合後細胞に毎分2mlの割合でMEMを添加し、合計15mlのMEMを加えた後600回転15分間遠心して上清を除去した。この細胞沈殿物を10%牛胎児血清を含有するGITメデイウム(和光純薬)(GIT−10% FCS)にP3U1が1ml当り2×105個になるように浮遊し、24穴マルチディッシュ(リンブロ社製)に1ウェル1mlずつ192ウェルに播種した。播種後、細胞を37℃で5%炭酸ガスインキュベーター中で培養した。24時間後HAT(ヒポキサンチン1×10-4M、アミノプテリン4×10-7M、チミジン1.6×10-3M)を含んだGIT−10% FCS培地(HAT培地)を1ウェル当り1mlずつ添加することにより、HAT選択培養を開始した。HAT選択培養は、培養開始3、6、9日後に旧液を1ml捨てたあと、1mlのHAT培地を添加することにより継続した。ハイブリドーマの増殖は、細胞融合後9〜14日で認められ、培養液が黄変したとき(約1×106セル/ml)、上清を採取し、実施例5に記載の方法に従って抗体価を測定した。
Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を免疫したマウス由来のハイブリドーマのスクリーニングの典型例として、マウスNo.8(図7参照)を用いて得られた結果を〔図8〕に示した。
次に、これらの高い抗体価を示したハイブリドーマを限界希釈法によるクローニングに付した。クローニングに際しては、フィーダー細胞としてBALB/Cマウスの胸腺細胞をウェル当り5×105個になるように加えた。クローニング後、ハイブリドーマを、あらかじめミネラルオイル0.5mlを腹腔内投与されたマウス(BALB/C)に1〜3×106セル/匹を腹腔内投与したのち、6〜20日後に抗体含有腹水を採取した。
モノクローナル抗体は得られた腹水よりプロテイン−Aカラムにより精製した。即ち、腹水6〜20mlを等量の結合緩衝液(3.5M NaCl、0.05%NaN3を含む1.5Mグリシン、pH9.0)で希釈したのち、あらかじめ結合緩衝液で平衡化したリコンビナントプロテイン−A−アガロース(Repligen社製)カラムに供し、特異抗体を溶離緩衝液(0.05%NaN3を含む0.1Mクエン酸緩衝液、pH3.0)で溶出した。溶出液はPBSに対して4℃、2日間透析したのち、0.22μmのフィルター(ミリポア社製)により除菌濾過し4℃あるいは−80℃で保存した。モノクローナル抗体のクラス・サブクラスの決定に際しては、精製モノクローナル抗体結合固相を用いるエンザイム−リンクトイムノソーベントアッセイ(ELISA)法を行った。すなわち、抗体2μg/mlを含む0.1M炭酸緩衝液、pH9.6溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。上記実施例12で述べた方法に従って、ウェルの余剰の結合部位をブロックエースでふさいだのち、アイソタイプタイピングキット(Mouse-TyperTM Sub-Isotyping Kit バイオラッド社製)を用いるELISAによって固相化抗体のクラス、サブクラスを調べた。
【0060】
実施例14 競合法酵素免疫測定法 (競合法−EIA)
Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を免疫原として作製したモノクローナル抗体の反応特異性を以下の方法により調べた。まず、各モノクローナル抗体溶液の抗体価を実施例12に記載の方法により調べ、競合法−EIAに用いる抗体濃度として、標識体の結合量が飽和結合量の約50%となる抗体濃度(約30〜50ng/ml)を決定した。次に、上記実施例12に記載の抗マウスイムノグロブリン抗体結合マイクロプレートに、決定された濃度にバッファーCで希釈された抗体溶液50μl、Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)、ブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)およびラット型ガラニン(配列番号:61)の0.05% CHAPSを含むバッファーC溶液50μl、および上記実施例11に記載のHRP標識化Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(バッファーCで250倍希釈)を50μl加え、4℃で16時間反応させた。反応後、PBSで洗浄したのち固相上の酵素活性を上記実施例12に記載の方法により測定した。 結果を表3に示す。
【表3】
典型例として、ブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)に対して最も高い反応性を示したモノクローナル抗体GR2−1N(IgG2b,κ)の競合法-EIAの結果を〔図9〕に示す。GR2−1Nは、Cys-Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly(配列番号:44)、ブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)に対して同程度の反応性を有し、ラット型ガラニン(配列番号:61)と反応しないことがわかる。GR2−1Nのブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)の標準曲線から、(B/B。)=0.5を与えるブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)濃度は、6 nM、4.95 ng/wellであり、その検出感度は、約0.1nM[(B/Bo)=0.8]であることが分かった。したがって、GR2−1Nを用いた競合法EIAは、配列番号X(ラットガラニン)と交差反応することなく、Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Glyを有するラット型リガンドペプチド(配列番号:33)、ブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)またはヒト型リガンドペプチド(配列番号:44)を約0.1nMまで特異的に測定することが可能である。
【0061】
実施例15 ブタ型リガンドペプチド(1−34)(配列番号:11)の調製
5nmolのブタ型リガンドペプチド(1−60)は16%のアセトニトリルを含有する1% 重炭酸アンモニウム250μlの反応液中50pmolのリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬社製)と37℃で3.5時間保温した。
Spheri-5 RP-18逆相高速液体クロマトグラフィー用カラム(ブラウンリー社製 、 2.1 mm x 30 mm)はあらかじめA液(0.1%トリフルオロ酢酸)を流速300μl/minで流し、25℃にて平衡化しておく。酵素反応液をカラムに打ち込んだ後、流速300μl/minを保ちながら、30分間かけてB液(0.1%トリフルオロ酢酸/70% アセトニトリル)濃度を70% まで上昇させる。溶出液は210nmの吸光度でモニターし、ピークは手動で分取した。
20.2分に溶出したピークフラクションは質量分析でM+H+3466.5を与え、アミノ酸分析からもブタ型リガンドペプチド(1−60)の断片リガンドペプチド(1−34)であることが確認された。
【0062】
実施例16 ブタ型リガンドペプチド(1−30)(配列番号:43)の調製
5nmolのブタ型リガンドペプチド(1−60)は8%のアセトニトリルを含有する1% 重炭酸アンモニウム250μlの反応液中50pmolのエンドプロテイナーゼGlu-C(ベーリンガーマンハイム社製)と37℃で6時間、次いで25℃で13時間保温した。
酵素反応液はブタ型リガンドペプチド(1−34)の場合と同様の条件で分離した。
19.8分に溶出したピークフラクションは質量分析でM+H+3167.2を与え、アミノ酸分析からもブタ型リガンドペプチド(1−60)の断片リガンドペプチド(1−30)であることを確認した。
【0063】
実施例17 [125I]ラットガラニンを用いたガラニン・レセプター結合実験
上記(1―2)で調製した膜画分を、濃度が13μg/ml(GALR1膜画分の場合)または15μg/ml(GALR2膜画分の場合)になるように、0.1% ウシ血清アルブミン(BSA)、5 mM MgCl2、0.5 mMフェニルメチルサルフォニルフルオライド、20 μg/ml ロイペプチン、10 μg/ml ペプスタチン、8 μg/ml E-64を含む50 mMトリス緩衝液 (pH 7.3)に懸濁し、各0.1 mlごとポリプロピレン製小試験管(Falcon 2053)に分注した。分注した膜画分に、5 nM [125I] ラットガラニン(New England Nuclear)を4 μl, および可変濃度(100 μMから100 pMのジメチルサルフォキシド溶液)の本発明ペプチド合成品(ブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)、本発明ペプチド合成品の限定分解物(ブタ型リガンドペプチド(1−30)(配列番号:43)、ブタ型リガンドペプチド(1−34)(配列番号:11)、あるいはラットガラニン(ペプチド研究所社製)(配列番号:61) 1μlを添加し、25℃で60分間反応した。該反応液に、1.5 mlの0.05% 3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルンモニオ]プロパンスルフォン酸(CHAPS)、0.1% BSA、 5 mM MgCl2、 1 mM EDTAを含む50 mMトリス緩衝液(pH 7.4)を加え、GF/Fガラス繊維ろ紙(ワットマン社製)でろ過した。このろ紙を、1.5 mlの同緩衝液で洗浄した後、ガンマー・カウンターにより放射活性を計測した。
100 μMラットガラニン 1 μlを添加した際に得られた結合量を非特異的結合量(NSB)、またジメチルサルフォキシド 1 μlを添加した際に得られた結合量を最大結合量(B0)とし、最大特異的結合量(B0-NSB)を50%に阻害するペプチドの濃度IC50を求めた(表4)。
【表4】
実施例18 ラット型リガンドペプチド(1−60)をコードするcDNAのクローニング
実施例5と同様の方法により、ラット視床下部からTRIZOL reagent (Gibco BRL社製)を用いてtotal RNAを調製した。該total RNAからオリゴdTセルロースカラム(mRNA Purification Kit, Pharmacia社)を用いてpoly (A)+ RNAを精製した。該poly (A)+ RNAからZAP-cDNA Gigapack III Gold cloning kit (Stratagene社製)を用いて、ラット視床下部cDNAファージライブラリーを作成した。得られたファージ(2,200,000 plaque forming units)を大腸菌XL1-Blue MRF'(Stratagene社製)に感染させた後、NZY培地アガープレート130枚にまき、37℃で8時間培養した。得られた大腸菌プラークよりファージをHybond N+ナイロンメンブレン(アマシャム社)に写し取った。このナイロンメンブレンを1.5 M 塩化ナトリウムを含む0.5 N水酸化ナトリウム溶液、1.5 M 塩化ナトリウムを含む0.5 Mトリス緩衝溶液(pH 7.0)、及び2x SSC液に順次浸した後、風乾させた。
得られたナイロンメンブレンをハイブリダイゼーション緩衝液(5x SSPE, 5x Denhardts液,0.1% SDS, 0.1 mg/ml サケ精子DNA)中にて60℃に24時間保温し、次いで、ハイブリダイゼーションプローブ(2.8 x 106 cpm/ml)を含むハイブリダイゼーション緩衝液(同上)中にて、60℃に18時間保温した。ハイブリダイゼーションプローブはプラスミドpGR2PL6のEcoRI/BglII消化断片(配列番号:45)を鋳型として、下記のプライマーpGAL1-1F、pGAL88-1Rにより増幅されるDNA断片(356塩基対)を用いた。増幅反応の反応液組成はExTaq(宝酒造株式会社)を0.5μl、添付の10x PCR buffer(500 mM KCl-25 mM MgCl2-100 mM Tris・HCl, pH 8.3)を10 μl、2.5 mM dNTP mixtureを8 μl、[α-32P]dCTP (6000 Ci/mmol)を25 μl、プライマーpGAL9-3FおよびpGAL34-8R(それぞれ10 μM)を各1 μl、および鋳型cDNAを1 μl、蒸留水を54 μlを混合して作製し、反応条件は94℃・30秒の初期変性後、94℃・20秒-60℃・30秒-72℃・30秒のサイクル反応を32回、および72℃・4分の最終伸長反応とした。
pGAL1-1F : 5'- ATGGCTCTGACTGTCCCTCTGATCGTTCT -3'(配列番号:46)
pGAL88-1R: 5'- TGAAACCTCGTAGTTCCTGGTCGGATTCG -3'(配列番号:47)
ハイブリダイゼーションの終了したナイロンメンブレンは0.1% SDSを含む2x SSC緩衝液を用いて50℃にて洗浄した後、X線フィルム(Kodak社、BioMax MS)を用いて増感スクリーンの存在下でオートラジオグラフィーに処した(曝露条件:-70℃、3日間)。オートラジオグラフィーの結果から明らかになった陽性プラークを抜き取り、クロロフォルム0.1 mlを含むSM 緩衝液(100 mM NaCl, 8 mM MgSO4, 0.01% gelatin, 50 mM Tris・HCl, pH 7.5)5 ml中にファージを抽出した。得られたファージを再度大腸菌XL1-Blue MRF'に感染させNZY培地アガープレートにまき、37℃で8時間培養した。得られた大腸菌プラークよりファージをナイロンメンブレン(アマシャム社、Hybond N+)に写し取り、上記と同様の方法によりハイブリダイゼーションを行った。オートラジオグラフィーにより、陽性の単一クローンを選択し、これをキャピラリーで抜き取った。同様の一連の操作をもう一度繰り返し実施し、完全に単一なファージクローンを取得した。
次に、クローニングされたファージからプラスミドを以下の方法で単離した。ファージ液(1 μl)を大腸菌XPORT(50 μl)、ヘルパーファージ(10 μl)、大腸菌XLOLR(5 ml)と混合し、NZY アガープレートにまき、37℃で8時間培養した。大腸菌XPORTプラーク中に生じた大腸菌XLOLRの小コロニーをつま楊枝でピックアップし、アンピシリンとテトラサイクリンを含むLB培地アガープレートにて37℃、一晩培養した。単一コロニーより大腸菌XLOLRをピックアップし、LB培地中にて液体培養した。培養終了後、大腸菌XLOLRを集菌し、プラスミド精製キット(キアゲン社、QIAgen 8Well Ultra)を用いてプラスミドを精製した。
得られたプラスミドをDye terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems、パーキンエルマー社)を用いたシークエンシング反応に処し、次いでシークエンシング反応物をDNA sequencer Prism 377(Applied Biosystems、パーキンエルマー社 )を用いて解析した。その結果、ラット型リガンド全長ペプチド(1−60)をコードする974 bpのDNA断片(配列番号:39)を有するpGR2RL4を得ることができた。該プラスミドによりトランスフォームさせた大腸菌TOP10をTOP10/pGR2RL4と命名した。
【0064】
実施例19 ヒト型リガンドぺプチド(1−60)のクローニング
ヒト脳poly(A)+ RNA(CLONTECH社)から、ZAP-cDNA Synthesis Kit (Stratagene社)を用いて、ヒト脳cDNAライブラリーを作成した。得られたcDNAを鋳型としてプライマー F/R120とR/R120を用いてPCRを実施した。
F/R120: 5'-AGGCTGGACCCTCAATAGTGCTGGTTAC-3' (配列番号:48)
R/R120: 5'-CCATCTATGGCCTTCCACAGGTCTAGGA-3' (配列番号:49)
PCR反応液組成はTaq(宝酒造株式会社)を0.5μl、添付の10x PCR buffer(500 mM KCl-25 mM MgCl2-100 mM Tris・HCl, pH 8.3)を5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4μl、25 mM MgCl2 を3 μl、プライマーF/R120およびR/R120(それぞれ100 μM)を各0.25 ml、および鋳型cDNAを1 μl、蒸留水を36 μlを混合して作製し、反応条件は94℃・30秒の初期変性後、94℃・30秒-60℃・30秒-72℃・60秒のサイクル反応を35回、および72℃・10分の最終伸長反応とした。得られたDNA断片をTOPO TA Cloning Kit (Invitrogen社)を用いて添付のマニュアルに記載された方法に従ってクローニングした。クローニングされたDNA配列を実施例5に記載された方法により解読し、配列番号:50の配列を得た。
AGGCTGGACC CTCAATAGTG CTGGTTACCT TCTGGGTCCC GTCCTCCACC TTCCCCAAAT 60
GGGTGACCAA GACGGAAAGA GGGAGACAGC CCTTGAGATC CTAGACCTGT GGAAGGCCAT 120
AGATGG 126
(配列番号:50)
得られた配列よりプライマー 1F/H120(配列番号:51)、1R/H120(配列番号:52)を作成し、以下に記した5'RACE及び3'RACE実験に用いた。
1F/H120: 5'-CAAATGGGTGACCAAGACGGAAAGAGGG-3' (配列番号:51)
1R/H120: 5'-GGTCTAGGATCTCAAGGGCTGTCTCCCT-3' (配列番号:52)
5'RACE及び3'RACEのPCR反応液はTaq(宝酒造株式会社)を0.5 μl、添付の10x PCR buffer(500 mM KCl-25 mM MgCl2-100 mM Tris・HCl, pH 8.3)を5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、25 mM MgCl2 を3 μl、10 μMプライマーF/R120(3'RACEの場合)あるいは10 μMプライマーR/R120(5'RACEの場合)を 1 ml、10 μMプライマーAP1(プライマーAP1はCLONTECH社のMarathon-Ready cDNA Kitに添付のもの)を1 μl、鋳型cDNA(CLONTECH社、Marathon-Ready cDNA Kit、Human Hypothalamus)を5 μl、及び蒸留水を31 μlを混合して作製した。反応条件は94℃・60秒の初期変性後、94℃・30秒-72℃・120秒のサイクル反応を5回、94℃・30秒-70℃・120秒のサイクル反応を5回、94℃・30秒-68℃・120秒のサイクル反応を25回および68℃・10分の最終伸長反応とした。
続いて、該PCR反応の反応液を鋳型としてnested PCRを実施した。反応液はTaq(宝酒造株式会社)を0.5 μl、添付の10x PCR buffer(500 mM KCl-25 mM MgCl2-100 mM Tris・HCl, pH 8.3)を5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、25 mM MgCl2 を3 μl、10 μMプライマー1F/H120(3'RACEの場合)あるいは10 μMプライマー1R/H120(5'RACEの場合)を 1 μl、10 μMプライマーAP2(プライマーAP2はCLONTECH社のMarathon-Ready cDNA Kitに添付のもの)を1 μl、鋳型DNA(該PCR反応液50倍希釈液)を5 μl、及び蒸留水を31 μlを混合して作製した。反応条件は94℃・60秒の初期変性後、94℃・30秒-72℃・120秒のサイクル反応を5回、94℃・30秒-70℃・120秒のサイクル反応を5回、94℃・30秒-68℃・120秒のサイクル反応を25回および68℃・10分の最終伸長反応とした。
得られたDNA断片をTOPO TA Cloning Kit (Invitrogen社)を用いて添付のマニュアルに記載された方法に従ってクローニングした。クローニングされたDNA配列を実施例5(ブタcDNA cloningの項)に記載された方法により解読し、5'端、3'端の配列情報を得た。この配列情報よりプライマー1F/H470、1R/H450を作成した。
1F/H470: 5'-GAGGAGCCAGAGAGAGCTGCGGAGAG-3' (配列番号:53)
1R/H470: 5'-GAGCTGGAGAAGAAGGATAGGAACAGGG-3' (配列番号:54)
該ヒト脳cDNAライブラリーを鋳型としてプライマー F/H450とR/H450を用いてPCRを実施した。PCR反応液はPfu turbo DNA polymerase(Stratagene社)を0.5 μl、添付の10x PCR buffer(500 mM KCl-25 mM MgCl2-100 mM Tris・HCl, pH 8.3)を5 μl、2.5 mM dNTP mixtureを4 μl、10 μMプライマーF/H470及びR/H470を各2.5 ml 、鋳型ヒト全脳cDNAを0.5 μl、及び蒸留水を35 μlを混合して作製した。反応条件は94℃・30秒の初期変性後、94℃・30秒-70℃・5分のサイクル反応を35回、および72℃・10分の最終伸長反応とした。得られたDNA断片をpPCR-Script Amp SK(+) vector (Stratagene社)を用いて添付のマニュアルに記載された方法に従ってクローニングした。クローニングされたDNA配列を実施例5(ブタcDNA cloningの項)に記載された方法により解読し、ヒト型リガンド全長ペプチド(1−60)をコードする473 bpのDNA断片(配列番号:40)を有するpGR2HL14を得ることができた。該プラスミドによりトランスフォームさせた大腸菌TOP10を、それぞれTOP10/pGR2HL14と命名した。
【0065】
実施例20 ブタ型リガンドペプチド(1−60)の構造遺伝子の調製(図10参照)
本発明の(1−60)ペプチドの構造遺伝子は、実施例5で得られたプラスミドpGR2PL6より、構造遺伝子の上流に隣接してNde I切断部位及びメチオニンを持つプライマー1:5'-AGCATATGGCTCCGGTCCACAGG-3'(配列番号:55 キコーテック社製)と、下流に隣接して終始コドン及びBamH I切断部位を持つプライマー2:5'-CTGGATCCTCAGGAGGCCAACTGAGAC-3'(配列番号:56 グライナー・ジャパン社製)を用いて、PCRで増幅した。この遺伝子をTOPO TA Cloning Kit(インヴィトロジェン社製)を用いてpCRII-TOPOベクターに連結し、 pCRII/GALを作成した。このプラスミドをTOP10 One Shotコンピテントセルに形質転換し、X-gal(5-Bromo-4-Chloro-3-Indolyl-b-D-Galactose)を塗布した50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地(1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、2%寒天)上に播き、37℃で1日培養し、テトラサイクリン耐性とβ−ガラクトシダーゼ活性を指標として形質転換体を選択した。この形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地(1%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム)で一晩培養し、QIAprep8 Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドを回収した。またプライマー3: 5'-CAGCCCTCGGCATCCTGGACC-3'(配列番号:57 グライナー・ジャパン社製)およびプライマー4: 5'-GGTCCAGGATGCCGAGGGCTG-3' (配列番号:58 グライナー・ジャパン社製)を用いて、部位特異的変異導入(Quick Change, STRATAGENE社製)により本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)構造遺伝子中のBamH Iと隣接して存在するAva I認識部位を欠損させたpCRII/GALdesBamを作成した。プラスミドの本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)構造遺伝子部分の塩基配列は、アプライドバイオシステムズ社モデル377DNAシークエンサーを用いて確認を行った。 塩基配列を確認したpCRII/GALdesBam 2μgをNde Iで切断し、T4 DNAポリメラーゼ(DNA Blunting Kit、宝酒造社製)で末端を平滑化した。次にEcoR Vで切断後、3%アガロースゲル電気泳動を行い、約200bpのDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出し、25μLのTE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解した。
【0066】
実施例21 ブタ型リガンドペプチド(1−60)発現プラスミドの調製
a)融合蛋白質発現用ベクターの調製(図11参照)
1998年6月15日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に FERM BP−6388として寄託されており、1997年6月25日から財団法人発酵研究所(IFO)にIFO 16100として寄託されている形質転換体 Escherichia coli MM294(DE3)/pTB960−11に保持されているプラスミドpTB960-11 1μgをXba IとAva Iで切断後1%アガロースゲル電気泳動を行い、約4.4kbpのDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社)を用いて抽出し、50μLのTE緩衝液に溶解した。hFGFムテインCS23構造遺伝子の欠損部分と、その上流に隣接してNde I切断部位及び開始コドンが挿入されるようにデザインされた合成DNA( 5'-CTAGACATATGCCAGCATTGC-3'(配列番号:59)および5'-TCGGGCAATGCTGGCATATGT-3'(配列番号:60)共にグライナー・ジャパン社製)の各1μgを100μLのリン酸化反応液[50mM Tris-HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、5mMジチオスレイトール、0.1mMスペルミジン、0.1mM EDTA、1mM ATP、10 unit T4ポリヌクレオチドキナーゼ(日本ジーン社製)]中で37℃・1時間反応させ、5'末端のリン酸化を行った。反応終了後、フェノール・クロロフォルム抽出、エタノール沈殿を行った。沈殿をTE緩衝液50μLに溶解し、この溶液を80℃で10分間保持した後、室温で徐冷しアニーリングした。Xba I-Ava I DNA断片とアニーリング液は、Takara DNA Ligation Kit Ver2(宝酒造)を用いてライゲーションが行われた。すなわち、Xba I-Ava I DNA断片1μLとアニーリング液1μLに蒸留水3μLとライゲーション I液5μLを加え、16℃・30分間反応させた。このライゲーション液10μLを用いて大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡製)を形質転換し、10μg/mLのテトラサイクリンを含むLB寒天培地上に播き、生じたテトラサイクリン耐性のコロニーを選択した。この形質転換体をLB培地で一晩培養し、QIAprep8 Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドを調製した。このプラスミドをNde Iで切断後、1%アガロースゲル電気泳動を行い、Nde Iの切断部位が新たに生じていることを確認し、プラスミドpTBNdeとした。
次に、プラスミドpTBNde 1μgをPst Iで切断し、T4 DNAポリメラーゼ(DNA Blunting Kit、宝酒造)で末端を平滑化した後、フェノール・クロロフォルム抽出、エタノール沈殿を行った。得られた沈殿をTE緩衝液10μLに溶解し、Nde Iで切断後、3%アガロースゲル電気泳動を行い、約470bpのDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出し、25μLのTE緩衝液に溶解した。1998年11月24日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6582として、1998年10月27日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16212として寄託されている形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)MM294(DE3)/pTCIId23−MPIF1に保持されているプラスミドpTCII 1μgをBsm IとPvu IIで切断後、1%アガロースゲル電気泳動を行い、約3.7kbpのDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kitを用いて抽出し、25μLのTE緩衝液に溶解した。このDNA断片をDNA Blunting Kitを用いT4 DNAポリメラーゼで末端を平滑化後ライゲーションを行った。ライゲーション終了液をフェノール・クロロフォルム抽出した後、エタノール沈殿を行いTE緩衝液10μLに溶解した。この溶液をBamH Iで切断し、 T4 DNAポリメラーゼで末端を平滑化した後、更にNde Iで切断し、1%アガロースゲル電気泳動を行い、約3.7kbpのDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kitを用いて抽出し、50μLのTE緩衝液に溶解した。上記約470bpのNde I-Blunt DNA断片4μLと約3.7kbpのNde I-Blunt DNA断片1μLにライゲーション I液5μLを加え、16℃・30分間反応させた。ライゲーション液10μLを用いて大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換し、10μg/mLのテトラサイクリンを含むLB寒天培地上に播き、生じたテトラサイクリン耐性のコロニーを選択した。この形質転換体をLB培地で一晩培養後、QIAprep8 Miniprep Kitを用いてプラスミドを調製し、融合蛋白質発現用ベクターpTFCとした。
b)ブタ型リガンドペプチド(1−60)発現株の構築(図12参照)
融合蛋白質発現用ベクター pTFC 1μgをBamH Iで切断し、T4 DNAポリメラーゼ(DNA Blunting Kit、宝酒造社製)で末端を平滑化した後、1%アガロースゲル電気泳動を行い、約4.2kbpのDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出し、50μLのTE緩衝液に溶解した。この断片と実施例20で調製した本発明のペプチドの構造遺伝子をTakara DNA Ligation Kit Ver2(宝酒造社製)を用いてライゲーションを行った。すなわちpTFCのBamH I切断平滑化溶液1μLと本発明のペプチドの構造遺伝子溶液4μLを混合し、更にライゲーション I液5μLを加え、16℃・30分間反応させた。ライゲーション液10μLを用いて大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換し、10μg/mLのテトラサイクリンを含むLB寒天培地上に播き、37℃で1日培養し、生じたテトラサイクリン耐性のコロニーを選択した。
この形質転換体をLB培地で一晩培養し、QIAprep8 Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドを回収し、 本発明のペプチド発現プラスミドpTFCGALとした。このプラスミドの融合蛋白質の構造遺伝子部分の塩基配列は、アプライドバイオシステムズ社モデル377DNAシークエンサーを用いて確認を行った。この発現プラスミドpTFCGALを大腸菌MM294(DE3)に形質転換し、10μg/mLのテトラサイクリンを含むLB寒天培地上に播き、37℃で1日培養し、テトラサイクリン耐性の形質転換株を選択し、本発明のペプチド発現株MM294(DE3)/ pTFCGALを取得した。この形質転換大腸菌MM294(DE3)/pTFCGALは受託番号FERM BP-6678で1999年3月10日付で通産省工業技術院微生物工業研究所に寄託された。また1999年2月26日付受託番号IFO 16260として財団法人発酵研究所(IFO)に寄託された。
【0067】
実施例22 ブタ型リガンドペプチド(1−60)発現株の培養
実施例21で得た本発明のペプチド発現株MM294(DE3)/ pTFCGALを5mg/Lのテトラサイクリンを含むLB培地1Lで37℃・16時間振とう培養した。得られた培養液を20Lの主発酵用培地(1.68%リン酸一水素ナトリウム、0.3%リン酸二水素カリウム、0.1%塩化アンモニウム、0.05%塩化ナトリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.0005%塩酸チアミン、1.5%グルコース、1.0%カザミノ酸、1.0%イーストエキス)を仕込んだ50L容発酵槽に移植して、37℃、通気量20L/min、攪拌回転数200rpmで通気攪拌培養を行った。培養液の濁度が約1200クレット単位になった時点で、最終濃度23.8mg/Lとなるようにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加した。IPTG添加後30分及び150分後に0.75%グルコースを添加し培養開始10時間後まで培養を行った。培養液を5000rpm・30minの遠心分離を行い、菌体約830gを得た。
【0068】
実施例23 ブタ型リガンドペプチド(1−60)の精製
実施例22で得た菌体200gに600mlの150mM 塩化ナトリウム、0.1mM p-アミジノフェニルメタンスルホニルフルオリド塩酸塩(APMSF)、0.1mM EDTAを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を加え懸濁し、超音波処理(BRANSON SONIFIER MODEL450)をした後、遠心分離(10000rpm・10分間)を行い、上清を廃棄し封入体を得た。この封入体を60mLの蒸留水に懸濁し、140mLのぎ酸を加え溶解後、融合蛋白質のCS23と本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)を連結しているメチオニンのC末端側のペプチド結合での切断反応を行うため、2gの臭化シアンを加え室温で24hr処理を行った。反応終了後、この溶液を蒸留水に一晩透析し、遠心分離(10000rpm・10分間)した。上清を50mM Tris-HCl(pH7.5)に再度一晩透析後、塩酸でpH6.0に調整し、遠心分離(10000rpm・10分間)い、遠心上清液約400mLを得た。この遠心上清液を50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したCM-TOYOPEARL 650M(3.0cmID×10cmL、東ソー社製)に10mL/minで吸着させ、平衡化に用いた緩衝液でよく洗浄した後、0-100%B(B = 50mM 酢酸ナトリウム緩衝液+1M 塩化ナトリウム、pH6.0)の段階勾配により溶出を行い、本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)を含む画分を得た。この画分の1/3量を0.1%トリフルオロ酢酸で平衡化したC4P-50(2.15cmID×30cmL、昭和電工社製)に5mL/minで吸着させた後、33-43%B(B = 80% アセトニトリル/ 0.1% トリフルオロ酢酸)の段階勾配により溶出を行った。同様の操作を残り2/3量についても行い、 本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)を含む画分を回収し、凍結乾燥を行い、本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)精製品67mgを得た。
a)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いた分析
本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)精製品を2% SDS、10% グリセロール、5% 2-メルカプトエタノール、0.001% ブロムフェノールブルーを含む0.0625 Tris-HCl(pH6.8)[Laemmli, U. K. : Nature, 227, 680(1979)]で溶解し、3分間煮沸後、マルチゲル15/25(第一化学薬品社製)で電気泳動を行った。泳動後のゲルをラピッドCBB KANTO(関東化学)で染色したところ、単一バンドであった(図13参照)。
b)アミノ酸組成分析
本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)精製品を1% フェノールを含む6N塩酸で110℃、24及び48時間気相加水分解を行い、アミノ酸分析計(日立L-8500A Amino Acid Analyzer)を用いてアミノ酸組成を決定した。その結果、表5に示されるようにcDNA塩基配列から予想されるアミノ酸組成と一致した。
【表5】
c)N末端アミノ酸配列分析
N末端アミノ酸配列を気相プロテインシーケンサー(アプライドバイオシステム モデル477A)を用いて決定した。この結果、表6に示されるようにcDNA塩基配列から予想されるアミノ酸組成と一致した。
【表6】
d)C末端アミノ酸分析
本発明のブタ型リガンドペプチド(1−60)精製品を無水ヒドラジンで100℃、3.5時間気相加水分解を行い、アミノ酸分析計(日立L-8500A Amino Acid Analyzer)を用いてC末端を決定した。この結果、表7に示されるようにcDNA塩基配列から予想されるアミノ酸と一致した。
【表7】
【0069】
実施例24 摂食試験
ペントバルビタール麻酔下のWistar雄性ラット(8W)の第三脳室(AP:-7.1、L:0.0、H:2.0 mm)にガイドカニューレを挿入した。術後、1週間回復させてから摂食実験を行った。明暗周期12時間(明:8時から20時)で飼育し、摂食実験は16時から開始した。ラットに無麻酔、無拘束下でマイクロインジェクションカニューレを取り付け、PBSに溶解させたブタ型ペプチド(1-60)(配列番号:31)またはPBSのみを2.5μl/minで4分間投与した。投与終了から1分後にマイクロインジェクションカニューレを取り外し、自由に標準飼料を摂食させた。投与終了から90分内間に摂食した餌を計量し、摂食量とした(図14)。
【発明の効果】
【0070】
本発明のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩は、ガラニン・レセプターを活性化する能力を有する。従って、ガラニン・レセプターが多く分布している視床下部、下垂体、子宮、腎臓、前立腺または骨格筋における、副作用の少ない機能調節剤などの医薬の開発等に用いることができる。
本発明のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることによって、ガラニン・レセプターとの結合性を変化させる化合物のスクリーニングが可能になる。
【0071】
【配列表】
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】 [35S]GTPγS結合試験によるガラニン・レセプター活性化作用の検出結果を示す。
【図2】 実施例2(2−3)で得られたサンプル・フラクションのGALR2発現細胞膜画分を用いた[35S]GTPγS結合試験結果を示す。
【図3】 実施例2(2−3)で得られたサンプル・フラクションのブタ・ガラニン・ラジオイムノアッセイキット(Peninsula社)による分析結果を示す。
【図4】 実施例2(2−4)で得られた GALR2活性化作用([35S]GTPγS結合促進活性)を有する成分のゲルろ過高速液体クロマトグラフィー法による分子量解析結果を示す。
【図5】 実施例2(2−4)における、公知のペプチドのゲルろ過高速液体クロマトグラフィー法による分子量解析結果を示す。
【図6】 本発明ペプチドとガラニン前駆体のアミノ酸配列における比較を示す。
【図7】 Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を免疫したマウスの抗体価をHRP標識化Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2を用いて調べた結果を示す。
【図8】 Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を免疫したマウスを用いた場合の細胞融合後のハイブリドーマのスクリーニングの典型例を示す。
【図9】 Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys(-NH2)−KLH複合体を免疫原として作製したモノクローナル抗体GR2−1NのAla-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2(配列番号:44のアミド体)、ブタ型リガンドペプチド(1−60)(配列番号:31)およびラットガラニン(配列番号:61)に対する反応性をHRP標識化Ala-Pro-Ala-His-Arg-Gly-Arg-Gly-Gly-Cys-NH2を用いる競合法−EIAで調べた結果を示す。
【図10】 実施例20に記載のブタ型リガンドペプチドの構造遺伝子の調製法に関する図を示す。
【図11】 実施例21に記載の融合蛋白質発現用ベクターの構築図を示す。
【図12】 実施例21に記載のブタ型リガンドペプチド発現株の構築図を示す。
【図13】 実施例23に記載のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いた分析結果(電気泳動図)を示す。
【図14】 実施例24で行われた摂食試験の結果を示す図を示す。
Claims (20)
- 配列番号:11、31または43で表わされるアミノ酸配列、または配列番号:11、31または43で表わされるアミノ酸配列において、1ないし5個のアミノ酸残基が置換、欠失、付加または挿入されたアミノ酸配列を含有し、かつ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に結合する能力を有するペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- ペプチドが、配列番号:11、12、または43で表されるアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- ペプチドが、配列番号:11、または43で表されるアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1に記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- ペプチドが、配列番号:17、31、33または34で表されるアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- 前駆体が配列番号:29で表されるアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1に記載のペプチドの前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- 配列番号:29で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- 配列番号:30、37または38で表されるアミノ酸配列からなる請求項1記載のペプチドの前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- 配列番号:30、37または38で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
- 請求項1に記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNA。
- 配列番号:31、33または34で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする請求項9記載のDNA。
- 配列番号:32、39または40で表される塩基配列からなる請求項9記載のDNA。
- 配列番号:29、30、37または38で表されるアミノ酸配列からなる請求項1に記載のペプチドの前駆体をコードする塩基配列を含有するDNAを含有するDNA。
- 配列番号:27、28、41または42で表される塩基配列を含有するDNAを含有する請求項9記載のDNA。
- 請求項9記載のDNAを含有する組換えベクター。
- 請求項14記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
- 請求項15記載の形質転換体を培養し、請求項1に記載のペプチドを生成せしめることを特徴とする請求項1に記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造法。
- 請求項1に記載のペプチドまたはその前駆体に対する抗体。
- 配列番号:35または44で表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する抗体。
- 請求項17または18記載の抗体を含有してなる診断薬。
- 請求項1に記載のペプチドもしくはその前駆体またはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とする、配列番号:1、2または3で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法。
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