JP4305399B2 - 多層プリント配線板の製造方法及び多層プリント配線板 - Google Patents

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Description

本発明は、複数のプリント配線板が積層された多層プリント配線板の製造方法、及びその製造方法により製造された多層プリント配線板に関する。
多層プリント配線板は、部品の高密度の実装を可能とし、部品間を最短距離で接続(電気的に導通することを意味する。以下単に接続と言う。)できる技術として知られている。IVH(Interstitial Via Hole)は、より高密度の実装が要求される多層プリント配線板の製造に適用される技術であり、隣接層間に開けた孔に導電性材料を充填して、隣接層同士を接続することを特徴とする。IVHによれば、必要な部分のみに層間接続を形成することができ、ビアホール上にも部品を搭載できるので、自由度の高い高密度配線を可能にする。
例えば、フジクラ技報第103号、49−51頁(2002年10月発表)には、ポリイミドに代表される耐熱フィルムを、IVHにより積層して製造した多層プリント配線板が記載されている。図8は、この多層プリント配線板の製造プロセスを示す工程図である。
先ず、ポリイミド樹脂からなる樹脂フィルム20(絶縁性基板)の片面を、銅貼り層21で被覆した片面銅貼り積層板22(Cupper Crad Laminate:CCL、図8a)の銅貼り層21を、エッチングして回路を形成する(図8b)。次に他の面にポリイミド系の接着剤シート層23を貼り合せた(図8c)後、レーザにより穴あけ加工を行い、ビアホール24を形成する(図8d)。このビアホールに、スクリーン印刷により導電ペースト25を充填して得られた配線板基材26(図8e)及び、回路が形成された銅貼り積層板27を、位置合わせしながら積層し(図8f)、キュアプレスにより加圧して層間接着をすることにより多層プリント配線板28が得られる(図8g)。
この方法においては、樹脂フィルム20上への接着剤シート層23の貼り合せ後に、ビアホール24の形成やスクリーン印刷が行われる。そこで、樹脂フィルム20と接着剤シート層23との貼り合せの際に両者を接着する必要があり、そのため、接着剤シート層23のガラス転移点(Tg)以上に加熱する必要がある。すなわちこの方法においては、樹脂フィルム20と接着剤シート層23の貼り合せの段階及び層間接着の段階の2回、加熱が必要であった。
又この方法において、接着剤シート層23にTgの低い熱可塑性樹脂を用いた場合は、配線板として完成した後にリフロー等の加熱により再び可塑化し、剥がれが生じる場合がある。一方Tgの高い熱可塑性樹脂を用いた場合は、樹脂フィルム20と接着剤シート層23の貼り合せの際の加熱を高温で行う必要があるので、導電ペースト25の劣化を生じる。又、熱硬化樹脂系の接着剤を使用した場合には、貼り合せの段階ですでに一部が硬化しているので、層間接着の段階で充分な層間接着強度を得ることが難しいとの問題がある。
さらに、銅貼り層21や銅貼り積層板22と接着剤シート層23とでは、弾性率や熱膨張率が通常大きく異なるため、樹脂フィルム20と接着剤シート層23の貼り合せの際に反りや応力歪みが生じる。その結果、ビアホール形成段階等で位置ずれが生じやすく、不良率が高まる問題があった。
この問題を解決する方法として、接着剤シート層に、熱硬化機能を付与した熱可塑性ポリイミドシートを用い、このシートと銅貼り積層板との貼り合せの際には、熱可塑性ポリイミドのTg以上で、かつ熱硬化成分の硬化開始温度(Ts)よりも低温で加熱し、層間接着の際には、Tsよりも高温で加熱する方法が、特開2004−95963号公報に開示されている(請求項12)。この方法により、リフロー等による剥がれを防ぐとともに、充分な層間接着強度を得ることができる。又、特開2004−95963号公報では、貼り合せの際の反りを防ぐために、Tgが110℃以下、常温弾性率が1300MPa以下の樹脂からなるフィルムを使用することが提案されている(段落0035)。
しかし、特開2004−95963号公報記載の方法によっても、貼り合せの段階及び層間接着の段階の2回の加熱が必要であり、しかもそれぞれの温度を変えなければならないので、工程は複雑となり、コスト増の原因となる。さらに、使用される樹脂は、特定の種類のものであり、しかもTgや常温弾性率が特定の範囲のものに限られるので、その選択の範囲が狭い。
そこで、IVHによる多層プリント配線板の製造方法であって、前記の従来技術の問題を解決した、多層プリント配線板の製造方法の開発が望まれていた。
特開2004−95963号公報(請求項12、段落0035) フジクラ技報第103号、49−51頁(2002年10月発表)
本発明は、IVHによる多層プリント配線板の製造方法であって、より簡易な工程により多層プリント配線板を製造することができ、かつ貼り合せの際の反りの問題等を生ぜず、大きな層間接着強度も得ることができる多層プリント配線板の製造方法、及びその製造方法により製造された多層プリント配線板を提供することを課題とする。
本発明者は、検討の結果、絶縁性基板に、導体回路に至るビアホールを形成し、さらにこのビアホールに形成された導電物のバンプを有する配線板基材と、前記ビアホールに対応する位置にビアホールより大きい貫通孔を有する接着剤シート層と、他の配線板基材を重ねて、一括して積層プレスする方法により、より簡易な工程により多層プリント配線板を製造することができ、かつ貼り合せの際の反りの問題等を生ぜず、大きな層間接着強度も得ることができることを見出し、本発明を完成した。
本発明の、請求項1に記載の態様は、
絶縁性基板、その1表面上に設けられた導電層回路、及び、前記絶縁性基板内に前記導電層回路に至り他表面で開口するように形成されたビアホールに、導電物を充填して得られた導電物のバンプを有する片面配線板基材、
前記ビアホールに対応する位置に前記ビアホールより大きい径の貫通孔を有する接着剤シート層及び
前記ビアホールに対応する位置に導電層回路を有する他の配線板基材の、
少なくとも3層を、
前記接着剤シート層が前記配線板基材間に挟持され、かつ前記バンプが前記貫通孔内に挿入されるように重ね、これらを一括して積層プレスすることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
前記片面配線板基材は、導電層が一表面に貼り付けられた絶縁性基板に、ビアホール、バンプ、及び導電層回路を形成して製造することができる。ここで、導電層が一表面に貼り付けられた絶縁性基板としては、銅箔が片面に貼付けられた銅箔付きポリイミド樹脂基材(CCL)が例示される。
ビアホール(有底穴)は、この絶縁性基板の層間接続が所望される位置に、レーザ等を用いて穴あけ加工を行うことにより形成することができる。ビアホールは絶縁性基板を貫通するものであり、一端は導電層が貼り付けられている表面とは反対の表面に開口し、他端は導電層に達している。なお、銅箔等の導電層にも小径の孔を形成してもよい。この孔を形成すれば、スクリーン印刷により導電物をビアホールに充填する際に、ビアホール内の空気を抜くためのエアブリード孔として機能し、充填が容易になる。
ビアホールの形成後、このビアホール内に導電物が充填され、バンプが形成される。導電物の充填方法は特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷により、導電物を充填する方法が挙げられる。導電物としては、銀ペーストや、銅フィラーやカーボン混合物のペースト、はんだクリーム、低融点金属等が挙げられる。
導電物のバンプとは、ビアホール上に形成された導電物の突起であり、他の配線板基材の導電層回路と、接続するために形成される。導電物のバンプを形成する方法は特に限定されないが、例えば、絶縁性基板上に離型層を形成して、この絶縁性基板及び離型層を貫通するビアホールを形成し、このビアホールに導電物を充填した後、離型層を剥がして、突出部を形成する方法が例示される。離型層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)のマスキングフィルム等が挙げられ、これらを絶縁性基板上に貼付けて離型層を形成する。導電物のバンプを形成する他の方法として、ビアホールに導電物を充填した後、さらにその上に導電性ペースト等をスクリーン印刷で塗布する方法も挙げられる。
導電層回路は、例えば、前記導電層にエッチング加工を施すことにより形成することができる。例えば、導電層上に、レジスト層の回路パターンを形成した後、導電層を腐食するエッチャントに浸漬して、回路パターン以外の部分を取り除き、その後レジスト層を除去する化学エッチング(湿式エッチング)が例示される。この場合のエッチャントとしては、塩化第二鉄が主成分である塩化第二鉄系エッチャントや、塩化第二銅系エッチャント、アルカリエッチャント等が挙げられる。通常、回路の形成は、ビアホール形成前に行われるが、ビアホール形成後やバンプ形成後に行ってもよい。
接着剤シート層は、接着剤シートに、前記ビアホールの径より大きい径を有する貫通孔を、前記ビアホールに対応する位置に形成して得られる。貫通孔をビアホールに対応する位置に形成するとは、前記片面配線板基材と接着剤シート層を重ねたときに、各ビアホールの出口が貫通孔の開口部に含まれること、すなわち、バンプが貫通孔内に挿入されるように貫通孔を形成することを意味する。貫通孔の形成方法は特に限定されず、レーザによる穴あけ加工や、ドリル等を用いて機械的に穴あけを行う方法等を採用することができる。接着剤シート層を形成するための接着剤シートとしては、厚みは10μm〜100μm程度のものが通常用いられ、好ましくは15μm〜70μmである。厚みが10μm未満では、層間接着の積層プレスの際に接着剤シート層が充分拡がらず、バンプと接着剤シートの間の間隙が解消しにくくなる。一方、100μmを越えると、この厚みに対応する突起の長さを有するバンプの形成が困難になる。
接着剤シート層は、前記のバンプを有する片面配線板基材の、バンプ側に重ねられ、さらにその上には、前記ビアホールに対応する位置に導電層回路を有する他の配線板基材を重ね、これらを一括して積層プレスし、多層プリント配線板が製造される。すなわち、バンプが形成された片面配線板基材と導電層回路を有する他の配線板基材が、それらの間にはさまれた接着剤シート層により接着されて多層プリント配線板が製造される。導電層回路を有する他の配線板基材とは、絶縁性基板と、その1表面又は両表面上に設けられた導電層回路を有し、かつその導電層回路の一部は前記バンプに対応する位置に設けられている配線板基材である。
他の配線板基材は、例えば、片面又は両面に銅箔が貼り付けられたポリイミド樹脂フィルムの銅箔に、エッチング等を施して回路を形成して製造することができる。又、後述するように、他の配線板基材としては、絶縁性基板及びその両表面上に設けられた導電層回路を有し、両表面上の導電層回路間が、スルーホール内に充填された導電物により、接続されている両面配線板基材も例示することができる。
本発明の多層プリント配線板は、前記片面配線板基材、接着剤シート層、及び他の配線板基材の少なくとも3層を、前記接着剤シート層が前記配線板基材間に挟持され、かつ前記バンプが前記貫通孔内に挿入されるように重ね、これらを一括して積層プレスすることにより製造される。すなわち、一回の積層プレスにより、本発明の多層プリント配線板を製造することができるので、高い生産性が得られる。
積層プレスは、キュアプレス等により、加熱、加圧することにより行うことができる。接着剤シート層に形成された貫通孔の径は、ビアホールの径より大きいので、積層プレスの開始前では、接着剤シート層とバンプとの間に間隙があるが、積層プレスにより接着剤シート層がバンプの導電物に接触するまで拡がってこの間隙は解消する。又、バンプが塑性変形をする場合は、積層プレスによりバンプも変形して、この間隙を解消する作用をする場合もある。このようにして、バンプが形成された配線板基材と導電層回路を有する他の絶縁性基板が、接着剤シート層により強固に接着される。
片面配線板基材、接着剤シート層及び他の配線板基材を重ねる際には、積層中や積層プレス中のずれを防ぐために簡易な接着である仮貼りをすることが好ましいが、仮貼りは、従来技術での貼り合せに比べるとはるかに温和な条件で行われる。例えばエポキシ系接着剤の場合は、120〜140℃程度の温度で、10〜60秒程度の加熱時間で充分であり、ポリイミド系接着剤の場合は、170〜200℃程度の温度で、10〜60秒程度の加熱時間で充分である。その結果、前記の従来の方法より、加熱の回数は減りより簡易な工程により多層プリント配線板を製造することができる。又、前記の従来技術の問題であった貼り合せの際の加熱による反りが生じることもない。さらに、接着剤として熱硬化性樹脂を用いた場合でも、貼り合せの段階で加熱されて一部硬化することがないので、層間接着の際に大きな接着強度を得ることができる。
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、前記片面配線板基材及び接着剤シート層等が複数ある場合にも適用できる。この場合は、前記接着剤シート層と前記配線板基材を交互に重ねてこれらを一括して積層プレスする。ここで、配線板基材とは、前記片面配線板基材及び前記他の配線板基材のいずれをも含む意味である。すなわち、前記接着剤シート層は、前記片面配線板基材間、又は前記片面配線板基材と前記他の配線板基材間に、前記バンプが前記貫通孔内に挿入されるように挟持され、一括して積層プレスが行われる。請求項2はこの態様に該当する。
この本発明の製造方法によれば、加熱による接着は積層プレスの1回のみでよく、従来の方法のように各配線板基材の形成の毎に、加熱による貼り合せを行う必要はない。従って、製造工程を大きく簡略化でき、また反り等が生じないので、位置ずれ等の問題も生じない。
前記他の配線板基材としては、絶縁性基板及びその両表面上に導電層回路を有し、前記絶縁性基板を貫通するスルーホール内に充填された導電物により、両表面上の導電層回路間が接続されている両面配線板基材を用いることができる。請求項3は、この態様に該当する。
このような、両面配線板基材は、例えば、両表面に銅箔が貼り付けられたポリイミド樹脂フィルムの銅箔に、エッチング等を施して回路を形成する工程、及び、両表面の銅箔(導電層)及びポリイミド樹脂フィルム(絶縁性基板)を貫通するスルーホールを形成し、このスルーホールに導電物を充填して、両表面の銅箔間を接続する工程を有する方法により製造することができる。回路を形成する工程と銅箔間の接続の工程は、いずれが先であってもよい。又、回路の形成、スルーホールの形成、導電物の充填は、前記と同様にして行うことができる。
前記他の配線板基材が、片面配線板基材の場合及び両表面上の導電層回路間が接続されていない両面配線板基材の場合は、この他の配線板基材は、最上部の接着剤シート層の上に重ねられ一括して積層プレスされる。最上部の接着剤シート層とは、回路間が互いに接続している多層間の接着に用いられる接着剤シート層の中で、最も外側に近い層を意味する。
前記他の配線板基材が、両表面上の導電層回路間が接続されている両面配線板基材の場合は、この他の配線板基材は、最上部の接着剤シート層の上に重ねられてもよいし、最上部以外の接着剤シート層の上に重ねられてもよい。最上部以外の接着剤シート層の上に重ねられた両面配線板基材上には他の接着剤シート層が重ねられ、さらに前記片面配線板基材が、そのバンプが前記他の接着剤シート層の貫通孔に挿入されるように重ねられ、場合によりさらに接着剤シート層及び前記片面配線板基材の重ね合わせを繰返し、その後これらは一括して積層プレスされる。
接着剤シート層の貫通孔の径は、配線板基材のビアホールの径、すなわちバンプの径の1.5〜5倍であることが好ましく、より好ましくは3〜5倍である。1.5倍未満であると、接着剤シート層と配線板基材を重ねる際の位置合わせが容易でなくなり、バンプが接着剤シート層の貫通孔に挿入しなくなる場合が生じやすい。一方5倍以上であると、積層プレス時に、接着剤シート層がバンプに接触するまで拡がりにくくなり、この両者間の間隙が解消しない可能性がある。請求項4は、この好ましい態様に該当する。
前記片面配線板基材及び他の配線板基材の導電層回路を形成する材質としては、通常、銅を主体とする材質が用いられる。請求項5は、この態様に該当する多層プリント配線板の製造方法を提供するものである。銅を主体とする材質としては、銅又は銅を主成分とする合金が例示される。導電層回路の材質としては、銅以外にも、銀ペースト、銅ペーストに銅めっきしたもの等が用いられる。
前記片面配線板基材を構成する絶縁性基板としては、PETやポリイミドを主体とする樹脂フィルムが例示される。ポリイミドを主体とする樹脂フィルムは耐熱フィルムであり、鉛フリーはんだ採用に対応した高耐熱化の要求に応えることができる。又、セラミック、ガラスクロス入りの樹脂に比べ高周波伝送における損失が小さく、かつ絶縁性基板の薄厚化、高強度化を達成できる。請求項6は、この好ましい態様に該当する。なお、前記他の配線板基材を構成する絶縁性基板についても、ポリイミドを主体とする樹脂フィルムが好ましく例示される。
接着剤シート層を形成する接着剤シートの材質(接着剤)としては、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミドを主体として熱硬化機能を一部有する樹脂、エポキシ樹脂やイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。請求項7はこの態様に該当する。前記の例示の中でも、熱可塑性ポリイミドを主体として熱硬化機能を一部有する樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂及び熱硬化性イミド系樹脂の場合は、加熱硬化後、充分な接着力が確保されるので好ましい。
熱硬化性エポキシ樹脂を主体として形成された接着剤シートを用いる場合は、これらは吸水性が低いので、高温高湿雰囲気に曝された後でも抵抗(ビアホールに充填された導電物と導電層との接触抵抗)がほとんど上昇することはない。従って、多層プリント配線板として完成した後に高温高湿雰囲気に曝され、回路全体の抵抗が上昇して多層プリント配線板の機能に重大な影響を及ぼすことがないので、この観点からは、熱硬化性エポキシ樹脂を主体とする接着剤シートを用いることが好ましい。請求項8は、このより好ましい態様に該当する。
なお、接着剤シート層を形成する接着剤シートは、2種類以上の樹脂の層を積層したものでもよい。例えば、熱硬化性エポキシ樹脂に、銅貼り積層板等に使用されている高Tg(200℃以上)の硬化済ポリイミド樹脂を積層し、さらにその上に熱硬化性エポキシ樹脂を積層した3層からなる接着剤シートが例示される。
又、接着剤シートの縦弾性率が、3GPa以下であるとリフロー試験時の応力が小さくなるため有利である。一方、縦弾性率が0.001GPa未満では、伸びが大きくなりすぎ扱いが困難となる場合がある。従ってこの観点からは、縦弾性率(ヤング率)が0.001GPa以上かつ3GPa以下である接着剤シートを用いることが好ましい。請求項9はこの好ましい態様に該当する。
又、部品の実装を容易にするためには、多層プリント配線板は平坦であることが望まれるが、弾性率の小さい接着剤シートを用いると、プレス時にそり等の変形が大きく、多層プリント配線板に凸部が生じるという問題があった。そこで、この問題を生じない接着剤シートが望まれ、特に部品の実装部分に近い最外層の接着剤シートにはこの要請が強い。この観点からは、高い剛性を有し変形しにくい材料からなり弾性率の大きい接着剤シートが好ましく用いられる。
しかし、その一方で、高い剛性を有する材料の単体で形成された接着剤シートは、伸びが小さく熱応力に弱いという問題があった。この問題は、高い剛性を有する材料と柔軟な接着剤を組合わせた複合材料により解決することができる。請求項10及び請求項11は、この複合材料により形成された接着剤シートを用いる形態に該当するものであり、平坦な多層プリント配線板を形成しやすく、又伸びが小さく熱応力に弱いという問題も解決された好ましい態様を提供するものである。
すなわち、請求項10は、前記の多層プリント配線板の製造方法であって、接着剤シートが、高剛性の多孔性材料に接着剤を含浸させてなるシートであることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法を提供するものであり、請求項11は、前記の多層プリント配線板の製造方法であって、接着剤シートが、2層の接着剤層間に、高剛性の絶縁フィルム層を挟持させてなるシートであることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法を提供するものである。
この場合でも、接着剤としては、前記と同様な接着剤を用いることができる。高剛性を有する多孔性材料としては、弾性率50GPa〜200GPaの材料が好ましい。具体的には、例えばアラミド等の剛性を有する繊維やガラス繊維等からなるもの、例えば不織布が挙げられる。含浸の方法としては特に限定されないが、例えば、接着剤を溶剤に溶解して含浸させた後、溶剤を蒸発して除去する方法が挙げられる。
高剛性の絶縁フィルム層とは、絶縁性で、弾性率5GPa〜10GPaの材料からなるフィルム好ましい。具体的には、例えば、ユーピレックス−25S(宇部興産製)等の商品名で市販されているポリイミドフィルムが挙げられる。
本発明は、さらに前記の多層プリント配線板の製造方法により製造されることを特徴とする多層プリント配線板を提供する(請求項12)。本発明の多層プリント配線板は、部品の高密度の実装が可能な配線板として、種々の電気製品の製造に用いられる。
本発明のIVHによる多層プリント配線板の製造方法によれば、複数の配線板基材からなる多層プリント配線板を一回の積層プレスで製造することができるので、従来のIVHによる製造方法と比べて、簡易な工程により高い生産性で多層プリント配線板を製造することができる。さらに導電層を設けた絶縁性基板と接着剤シート層を貼り合せる際の反りの問題等を生ぜず、大きな層間接着強度も得ることができる。特に、前記片面配線板基材を2以上積層する場合等、多数の配線板基材からなる多層プリント配線板を製造する場合であっても、加熱積層工程は一回でよいので、特にこの場合、従来技術と比べての生産性の向上効果が大きい。
次に本発明を実施するための最良の形態を、図を用いて説明する。なお、本発明はこの形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態への変更も可能である。
図1は、多層プリント配線板の形成に用いられる片面配線板基材の一例の製造工程を示す工程図である。厚み25μmのポリイミド樹脂シート1(絶縁性基板)の片面に、厚み12.5μmの銅貼り層2(銅箔、導電層)を設ける片面銅貼り積層板3(CCL、図1a)を使用し、銅貼り層2をマスキングして湿式エッチングをし、銅貼り層2に回路パターンを形成する(図1b)。
次に、ポリイミド樹脂シート1の、銅貼り層2が設けられている面とは反対の面に、PETからなる厚み50μmの離型層4を貼付け(図1c)、その後、レーザ加工により、径100μmのビアホール5(有底穴、ブラインドビア)を、所定位置に、1〜8箇所形成する(図1d)。この例のレーザ加工には、UV−YAGレーザを用いたが、これに限定されるものではなく、他のレーザを用いることもできるし、又レーザ加工以外の方法によりビアホールを形成することも可能である。
次に、ビアホール5内に残存している穿孔による樹脂や銅箔の酸化物等のスミアを除去するデスミア処理を施してビアホール5内を清掃後、銀ペーストからなる導電物を、スクリーン印刷で使用するスクイジプレートを使用し、離型層4の面側からスクイジングによりビアホール5内に穴埋め充填し、導電物充填部6を形成する(図1e)。その後、離型層4を除去することにより、40μmの突起部を有する導電物のバンプ7を形成し(図1f)、片面配線板基材Aを得る。なお、前記のような離型層4の貼り付けを行わなくても、ビアホール5内に穴埋め充填した後、乾燥、バンプ印刷、乾燥を行うことにより、バンプ7を形成することもできる。
図2は、本発明の多層プリント配線板の製造方法に使用される接着剤シート層の一例の製造工程を示す工程図である。厚み25μmの接着剤シート11(図2a)の配線板基材Aのバンプ7に対応する位置に、径250〜400μmの貫通孔12を、ドリルを用いて開け、接着剤シート層Bを得る(図2b)。なお、接着剤シートの厚みが100μm程度以下の場合は、このような貫通孔の形成にドリルの代りにレーザを用いることも可能である。
図3は、前記の片面配線板基材A及び接着剤シート層Bと積層される、他の配線板基材の製造工程を示す工程図である。この例では、厚み25μmのポリイミド樹脂シート14(絶縁性基板)の両面に、厚み12.5μmの銅貼り層13(銅箔、導電層)を設ける両面銅貼り積層板(CCL)を使用する(図3a)。両面の銅貼り層13を、それぞれマスキングしかつ湿式エッチングをすることにより、ポリイミド樹脂シート14の両面に銅貼り層13からなる回路を設けた両面配線板基材Cを得る(図3b)。なお例えば、両面銅貼り積層板の代りに片面銅貼り積層板を用い、片面のみに回路を設けた片面配線板基材を得、これを使用することも可能である。
図4は、前記のようにして得られた片面配線板基材A、接着剤シート層B及び両面配線板基材Cを積層し、本発明の多層プリント配線板を製造する工程を示す工程図である。先ず、片面配線板基材Aのバンプ7(ビアホール)、接着剤シート層Bの貫通孔12及び両面配線板基材Cの回路を形成した銅貼り層13(銅ランド)が、各位置で直列となるよう、位置決めのための孔に位置決めピンを通して重ね合わせ、接着剤が完全硬化しない温度範囲内で仮貼りを実施する(図4a)。位置決めのための孔(図示されていない)は、積層前に、レーザ加工等により、片面配線板基材A、接着剤シート層B及び両面配線板基材Cに開けられる。
この後、真空プレス機もしくは真空プレス機に準ずる機械により、180〜220℃、10〜40Kg/cmで、加熱、加圧する。接着剤シート層Bの貫通孔12は、バンプ7の径(ビアホール径)より大きいため、プレス初期には、接着剤シート11とバンプ7とは接触しないが、加熱により接着剤シート11、バンプ7を形成する導電物共に流動して、接着剤シート11とバンプ7が接触するようになり、本発明の多層プリント配線板15が形成される(図4b)。加熱終了後は冷却しながら加圧は継続するため、反り等はほとんど生じない。
図4の例は、1層の片面配線板基材と他の配線板基材とを接着剤シート層を用いて貼り合せ本発明の多層プリント配線板を製造する例であるが、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、2層以上の片面配線板基材を用いる場合にも適用できる。図5は、2層の片面配線板基材を用い、本発明の多層プリント配線板を製造する工程を示す工程図である。
片面配線板基材Aと同様にして製造された片面配線板基材A1、A2、接着剤シート層Bと同様にして製造された接着剤シート層B1、B2、及び両面配線板基材Cと同様にして製造された両面配線板基材C’を図5aに示すように積層し、前記の図4の例の場合と同様にして、真空プレス機もしくは真空プレス機に準ずる機械により、一括して加圧、加熱することにより、本発明の多層プリント配線板16が形成される(図5b)。
図6は、図5の例と同様の、2層の片面配線板基材を用い本発明の多層プリント配線板を製造する工程を示す工程図であるが、図5の例の場合の両面配線板基材C’の代りに、絶縁性基板を貫通するビアホール内に充填された導電物により、両表面上の導電層回路(銅貼り層)間が接続されている両面配線板基材であるC”を用いた例を示す。C’の代りにC”を用いる以外は、図5の例と同様にして本発明の多層プリント配線板17が形成される(図6b)。
図7は、3層の片面配線板基材及び両表面上の導電層回路間が接続されている両面配線板基材を用い本発明の多層プリント配線板を製造する工程を示す工程図であるが、図6の例とは異なり、両面配線板基材C”を断面の内側に用いた例である。片面配線板基材A1、接着剤シート層B1、片面配線板基材A2、接着剤シート層B2、両面配線板基材C”の順に重ねるまでは、図6の例と同様である。その後、両面配線板基材C”の上に、接着剤シート層B3と片面配線板基材A3を、A3のバンプがB3の貫通孔に挿入されるように重ね、これらを一括して、前記の図4〜6の例の場合と同様、真空プレス機もしくは真空プレス機に準ずる機械により加圧、加熱することにより、本発明の多層プリント配線板18が形成される(図7b)。
試験例
図1a、bに示す工程で作成した10cm角の試料(接着剤シート層の貼り合せなし)と、図8a、b、cに示す工程で作成した10cm角の試料(接着剤シート層の貼り合せあり)を、180℃、30Kg/cm、30分の条件でプレスした後の、寸法変化率(10点平均)を測定し、反りの状態を目視判定した。
接着剤シート層の貼り合せがない試料の寸法変化率は0.01%であり、反りは見られなかった。一方、接着剤シート層の貼り合せがある試料の寸法変化率は0.12%であり、反りが見られた。この結果は、接着剤シート層の貼り合せがない場合は、寸法変化が小さく、また反りもなく優れていることを示している。
銀ペーストからなる導電物として、エポキシ系ペースト樹脂(ビスフェノールAの70重量部とビスフェノールFの30重量部との混合物に、平均粒径2.6μmのりん片状銀を、全体の体積に対し55体積%、及び潜在硬化剤を加え混合したもの)を用い、かつ接着剤シートとして表1に示すものを用いた以外は、図1〜図4に示す前記の態様と同様(ただし離型層4の貼り付けは行わない態様、又ビアホール5の個数は8、貫通孔12の径300μm)にして、多層プリント配線板を作成した。得られた多層プリント配線板について、リフロー良品率、リフロー後の信頼性(高温高湿放置後の抵抗変化)を測定した結果を表1に示す。併せて、接着剤シートの縦弾性率(ヤング率)を測定した結果も表1に示す。
なお、各評価値は次のようにして測定、評価した。
リフロー良品率: 多層プリント配線板を、ピーク時は、温度260℃で5秒間、全加熱時間300秒で加熱し、抵抗変化が10%以内の多層プリント配線板の割合を求めた。
リフロー後の信頼性(高温高湿放置後の抵抗変化): 85℃、湿度85%の雰囲気に1000時間保持した後の抵抗変化率(%)の範囲を求めた。ここで、抵抗値は、8個のビアホール内に充填された銀ペーストで結合された回路の抵抗値を、4端子法で測定した値であり、銀ペーストの抵抗、導電層(回路)の抵抗、及び銀ペーストと導電層の接触抵抗の合計と考えられる。なお、抵抗変化が20%以下の多層プリント配線板を良品とし、抵抗変化率の範囲及び良品の割合を表1に示した。
縦弾性率(ヤング率): IPC−TM−650 2.4.19,テンシロン法に基づき、引張速度50mm/min.で測定した。
Figure 0004305399

*1: 新日鐵化学株式会社製熱可塑性ポリイミド系ボンディングシート
*2: 巴川製紙製熱硬化性エポキシ系ボンディングシート(低弾性高接着フィルム)
*3: 巴川製紙製熱硬化性イミド系ボンディングシート(高耐熱性接着フィルム)
*4: 味の素ファインテクノ製ボンディングシート
なお、前記の多層プリント配線板のリフロー後の信頼性について、次に示す評価も行ったが、いずれも100%の良品率が得られている。
ヒートサイクル: −40℃で30分保持し、昇温して125℃で30分保持するサイクルを1000回繰り返した後の、抵抗変化が10%以内の多層プリント配線板を良品とした。
高温放置: 85℃で1000時間放置した後の、抵抗変化が10%以内の多層プリント配線板を良品とした。
低温放置: −40℃で1000時間放置した後の、抵抗変化が10%以内の多層プリント配線板を良品とした。
高温高湿放置後のマイグレーション: 85℃、湿度85%で1000時間放置した後の、抵抗が10Ω以上の多層プリント配線板を良品とした。
前記の試験例の結果から、本発明の多層プリント配線板では、その製造工程の貼り合せの際にそりの問題を生じないことが明らかである。又、本発明の多層プリント配線板は、大きな層間接着強度を有するが、表1等に示される結果から明らかなように、優れたリフロー良品率、リフロー後の信頼性も有する。特に、接着剤シートとして、熱硬化性エポキシ樹脂を用いた場合であっても、熱可塑性ポリイミド樹脂や熱硬化性ポリイミド樹脂を用いた場合と同等以上の優れたリフロー良品率、リフロー後の信頼性が得られることが、表1等の結果から明らかである。
又、縦弾性率が、0.001GPa以上かつ3GPa以下の範囲にある、エスパネックスSPB−035A、TLF−Y、TLF−Bからなる接着剤シートを用いた場合は、特に優れたリフロー良品率が得られている。さらに、熱硬化性エポキシ樹脂のTLF−Yからなる接着剤シートを用いた場合は、特に優れたリフロー後の信頼性が得られている。
本発明の製造方法の一例の、一工程を示す工程図である。 本発明の製造方法の一例の、一工程を示す工程図である。 本発明の製造方法の一例の、一工程を示す工程図である。 本発明の製造方法の一例の、一工程を示す工程図である。 本発明の製造方法の他の一例の、一工程を示す工程図である。 本発明の製造方法の他の一例の、一工程を示す工程図である。 本発明の製造方法の他の一例の、一工程を示す工程図である。 従来の多層プリント配線板の製造方法の、工程を示す工程図である。
符号の説明
1、14 ポリイミド樹脂シート
2、13、21 銅貼り層
3、22 銅貼り積層板
4 離型層
5、24 ビアホール
6 導電物充填部
7 バンプ
11 接着剤シート
12 貫通孔
20 樹脂フィルム
25 導電ペースト
27 銅貼り積層板
26、A、A1、A2、A3 片面配線板基材
23、B、B1、B2、B3 接着剤シート層
C、C’、C” 両面配線板基材
15、16、17、18、28 多層プリント配線板

Claims (10)

  1. 樹脂フィルムである絶縁性基板、その1表面上に設けられた導電層回路、及び、前記絶縁性基板内に前記導電層回路に至り他表面で開口するように形成されたビアホールに、導電性ペーストからなる導電物を充填して得られた導電物のバンプを有する片面配線板基材、
    前記ビアホールに対応する位置に前記ビアホールの径の、1.5〜5倍である径の貫通孔を有し、その縦弾性率が、0.001GPa以上かつ3GPa以下である接着剤シート層及び
    前記ビアホールに対応する位置に導電層回路を有する他の配線板基材の、
    少なくとも3層を、
    前記接着剤シート層が前記配線板基材間に挟持され、かつ前記バンプが前記貫通孔内に挿入されるように重ね、これらを一括して積層プレスすることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
  2. 前記片面配線板基材の2以上、前記接着剤シート層の2以上、及び前記他の配線板基材を、前記接着剤シート層が配線板基材間に挟持され、かつ前記バンプが前記貫通孔内に挿入されるように交互に重ね、これらを一括して積層プレスすることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  3. 前記他の配線板基材が、絶縁性基板及びその両表面上に導電層回路を有し、前記絶縁性基板を貫通するスルーホール内に充填された導電物により、両表面上の導電層回路間が接続されている両面配線板基材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  4. 導電層回路が、銅を主体とする材質からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
  5. 樹脂フィルムである絶縁性基板が、ポリイミドを主体とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
  6. 接着剤シートが、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂又は熱硬化性イミド系樹脂を主体とすることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
  7. 接着剤シートが、熱硬化性エポキシ樹脂を主体とすることを特徴とする請求項6に記載の多層プリント配線板の製造方法。
  8. 接着剤シートが、高剛性の多孔性材料に接着剤を含浸させてなるシートであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
  9. 接着剤シートが、2層の接着剤層間に、高剛性の絶縁フィルム層を挟持させてなるシートであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法により製造されることを特徴とする多層プリント配線板。
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