JP4304895B2 - 油圧制御弁および燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピエゾアクチュエータを駆動源とする油圧制御弁、およびこの油圧制御弁を用いた内燃機関の燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムでは、各気筒に共通のコモンレール(蓄圧室)を設けて、高圧ポンプから圧送される高圧燃料を蓄圧し、所定の噴射時期に各気筒に燃料を噴射している。その燃料噴射弁に、近年、応答性の良好なピエゾアクチュエータを駆動源とし、油圧を介して弁体を駆動する油圧制御弁を用いることが提案されている。かかる油圧制御弁は、例えば、ピエゾアクチュエータの伸縮に伴って変位する大径ピストンと小径ピストンの間に作動油を充填した変位拡大室を備え、油圧のてこによって変位を拡大して弁体に伝達する。変位拡大率は、大径ピストンの受圧面積S(mm)と小径ピストンの受圧面積(mm)の比(S/s)で表される。
【0003】
弁体は、ドレーン通路に連通する低圧ポートと、コモンレールに連通する高圧ポートのいずれか一方を選択的に閉鎖して、燃料噴射弁のノズルニードルに背圧を与える制御室の圧力を制御するように構成される。すなわち、弁体が低圧ポートを開いて制御室とドレーン通路を導通させ、さらに高圧ポートを閉じると、制御室の圧力が低下してノズルニードルが上昇し、噴孔から燃料が噴射される。次に、弁体が高圧ポートを開いて制御室とコモンレールを導通させ、さらに低圧ポートを閉じると、制御室の圧力が再び上昇してノズルニードルが下降し、燃料噴射が停止される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ピエゾ素子をアクチュエータとして使用する場合、一般に、電圧一定の条件下(ここでは許容電圧)での変位と発生力の関係は、図3上段に示すようになる。許容電圧は、外部からのエネルギー投入経路となる電気回路やピエゾ素子自身が壊れないための許容可能な最高電圧で(例えば150V)、ピエゾアクチュエータの変位は、電圧一定であれば発生力に反比例し、ある発生力(最大発生力)で変位がゼロとなる。また、ピエゾアクチュエータの仕事量は、投入エネルギーに比例するとともに発生力とも相関し、ピエゾアクチュエータの最大仕事量と最大負荷時の発生力の関係は、図3下段のようになる。このピエゾ特性から、一般に、最大負荷時の発生力が、最大発生力の1/2となるように設計するのがエネルギー効率の点で優れている、すなわち、同じ供給エネルギーで最大の仕事を取り出すことができると考えられている。
【0005】
しかしながら、この知見に基づいて上記構成の燃料噴射弁の設計を行ったところ、以下の問題が発生した。油圧のてこによって変位を拡大する上記構成の燃料噴射弁では、通常、弁体が低圧ポートを開く時に負荷が最大となる。低圧ポートの開弁時に必要な発生力Fは、F=SL ・P・(S/s);〔式中、SL :低圧ポートのシート面積(mm2 )、P:コモンレール圧力P(Kg/mm2 )、S/s:変位拡大率〕で表されるため、これが最大発生力の1/2となるように変位拡大率(S/s)を設定すればよいことになる。ところが、このように変位拡大率(S/s)を選択したにもかかわらず、弁体のリフト量が上記図3から予測されるリフト量に達しない不具合が生じた。高圧ポートを閉弁するために必要な発生力(この発生力は、通常、低圧ポートの開弁時に必要な発生力よりも小さい)が最大発生力の1/2となるように変位拡大率(S/s)を選択した場合も同様で、いずれも予期した弁体リフトを得ることができなかった。
【0006】
この問題について解析を行った結果、予期した弁体リフトが得られない理由は、油圧のてこによって変位を拡大する上記燃料噴射弁の構成にあることが判明した。上記構成では、ピエゾアクチュエータにエネルギーを投入すると、大径ピストンを介して変位拡大室の油圧が上昇し、その油圧が小径ピストンに作用する力が、弁体が高圧ポートから受ける燃料圧の作用力を上回った時に、弁体がリフトを開始する。そこで、この時のピエゾ電圧が上記許容電圧となるように、投入エネルギーが制御されるが、開弁時にはピエゾ素子内部に発生力に比例した電荷が生じており、そのエネルギー分だけ、外部から投入できるエネルギーが減少している。リフトとともに発生力が低下すると、上記電荷が消滅していくため、ピエゾ電圧が低下する。この電圧の変化が、許容電圧から見込まれる弁体リフトが得られない原因となっている。
【0007】
本発明は、弁体の開弁時にピエゾアクチュエータに最大の発生力が要求され、その後は発生力が減じられつつ弁体のリフト量が大きくなる構造の油圧制御弁において、当初に印加される電圧を許容範囲に抑えつつ、最大のリフトを可能にすることを第1の目的とする。さらに、そのための変位拡大率の最適な範囲を見出し、コンパクトかつ高性能な燃料噴射弁の実現を第2の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の油圧制御弁は、ピエゾアクチュエータの変位を油圧に変換し、該油圧を増減させることによって弁体を駆動するとともに、該弁体の開弁時に上記ピエゾアクチュエータに最大の発生力が要求され、開弁後は上記ピエゾアクチュエータの発生力が減じられつつ上記弁体のリフト量が大きくなる構造の油圧制御弁において、上記弁体を開弁させる時に上記ピエゾアクチュエータに必要とされる発生力を、使用最大電圧における最大発生力の1/2を下回らせたことを特徴とする油圧制御弁。
【0009】
油圧を介して上記弁体を駆動する構成では、上記弁体の開弁時に、上記ピエゾアクチュエータ内部に発生力に比例した電荷が発生するため、その分のエネルギーを外部から注入できなくなってしまう。よって、開弁時に必要とされる発生力を大きくすると、それだけ外部から注入できるエネルギーが減少して、開弁後に十分な弁体リフトが得られない。これを回避するには、開弁時に必要とされる発生力を使用最大電圧(許容電圧)での最大発生力の1/2を下回らせるのがよく、注入したエネルギーで最大のリフトを可能にする。また、発生力は変位拡大率に比例するため、変位拡大率の設定によって、この発生力を最適に選ぶことが可能である。
【0010】
請求項2のように、具体的には、上記ピエゾアクチュエータの変位を大径ピストンによって油圧に変換し、該油圧を小径ピストンに作用させることによって上記弁体を駆動する構成とすることができる。そして、上記弁体を開弁させる時に上記ピエゾアクチュエータに必要とされる発生力が使用最大電圧における最大発生力の1/2を下回らせるように、上記大径ピストンと上記小径ピストンの径の比すなわち変位拡大率を設定することで、上記効果が容易に得られる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の油圧制御弁を備え、上記弁体の駆動によって燃料噴射の開始および停止を制御する燃料噴射弁である。例えば、上記弁体を噴孔を開閉するノズルニードルとすることもでき、コンパクトな構成で、エネルギー効率の良好な燃料噴射弁が得られる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の油圧制御弁を備える燃料噴射弁であり、ノズルニードルに閉弁または開弁方向の油圧を作用させる制御室を低圧通路に導通させる導通路を、上記弁体で開閉することにより、上記ノズルニードルを昇降させて噴孔を開閉する構成を有する。
【0013】
このように、上記油圧制御弁を適用することによって、駆動部の体格を大きくすることなく、エネルギー効率の良好な燃料噴射弁が得られる。
【0014】
請求項5のように、より具体的には、上記アクチュエータの変位によって油圧を増減させる油圧室を設けて、該油圧室の油圧を受けて上記弁体が駆動されるようにする。そして、上記ノズルニードルに背圧を与える上記制御室を、上記弁体の開弁によって上記低圧通路に導通させて減圧することにより、上記噴孔を開放する構成とすることができる。
【0015】
請求項6の発明では、上記弁体を開弁させる時に上記ピエゾアクチュエータに必要とされる上記発生力を、使用最大電圧における最大発生力の1/4以上とする。開弁時に上記ピエゾアクチュエータに必要とされる上記発生力があまり小さいと、(すなわち、変位拡大率を小さくし過ぎると、)上記ピエゾアクチュエータが変位しても上記弁体のリフトを大きくすることができない。よって、好ましくは、上記発生力の下限を、使用最大電圧における最大発生力の1/4とし、効率よくエネルギーをリフトに変換することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に従って説明する。図1は、本発明を適用した油圧制御弁1を備える燃料噴射弁Vの構成を示す図で、例えば、ディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムに好適に使用される。燃料噴射弁Vは、ノズルボディB1の先端に設けた噴孔11をノズルニードル12の上下動により開閉して、燃料の噴射を開始ないし停止する。噴孔11は、ノズルニードル12が上端位置にある時に開となり、高圧通路3に続く燃料溜まり31と導通して燃料が供給される一方、ノズルニードル12が下端位置にある時は閉となり、燃料溜まり31との導通が遮断されて燃料の供給が停止される。ノズルニードル12の下端位置は、ノズルニードル12が着座するノズルシート13によって決定され、上端位置はノズルボディB1上方のオリフィスプレートP1によって決定される。
【0017】
ノズルボディB1は、バルブ駆動装置1のハウジングHの下端にオリフィスプレートP1、P2を介して配設され、筒状のノズルホルダB2にて油密に固定される。高圧通路3は、燃料溜まり31から上方へ延び、オリフィスプレートP1、P2およびハウジングH内を経て外部のコモンレール(図略)に連通している。ハウジングH内には、また、外部の燃料タンク(図略)に連通する燃料戻し用の低圧通路としてのドレーン通路2が形成されている。ノズルニードル12の上端部とオリフィスプレートP1の間には、制御室4が形成され、ノズルニードル12は、制御室4内に配したスプリング41のばね力と制御室4の油圧によって常に閉方向(下方)へ付勢されている。
【0018】
制御室4の油圧は、油圧制御弁1の一部をなす3方弁5によって制御される。3方弁5は、ハウジングHの下端に形成した略円錐形の弁室51と略球形の弁体52からなり、弁室51はオリフィスプレートP1、P2を貫通する通路とその下端に設けたメインオリフィス42を介して制御室4と常に連通している。弁室51は、低圧通路への導通路となるドレーンポート21と高圧ポート32の2つのポートを有し、弁室51内の弁体52が上方または下方に移動して上記2つのポートの一方を選択的に閉塞すると、他方が開放されて制御室4と導通する。ドレーンポート21は弁室51上方に設けたスピル室22を介してドレーン通路2に連通し、オリフィスプレートP2を上下に貫通する高圧ポート32は、オリフィスプレートP2下端面に径方向に設けた溝33を介して高圧通路3に連通している。
【0019】
よって、弁体52がドレーンポート21を開いて高圧ポート32を閉じると、制御室4の燃料が弁室51からドレーンポート21を経て流出する。これにより、制御室4の圧力が低下してノズルニードル12の開弁圧以下となると、ノズルニードル12がノズルシート13から離れて燃料が噴射される。一方、弁体52が高圧ポート32を開いてドレーンポート21を閉じると、高圧ポート32から流入する燃料で制御室4の圧力が上昇し、ノズルニードル12が下降してノズルシート13に着座する。
【0020】
なお、制御室4は、高圧ポート32の下端に連通させてオリフィスプレートP1に設けたサブオリフィス43によって、3方弁5を介さずに高圧通路3と常に連通している。このサブオリフィス43は、高圧通路3からサブオリフィス43を経て制御室4に燃料を流入させることによって、噴射開始時には制御室4の圧力低下を緩和してノズルニードル12を緩やかに開弁させ、噴射終了時には圧力上昇を促進してノズルニードル12を迅速に閉弁させる作用がある。
【0021】
ここで、ドレーンポート21の弁室51への開口部は、円錐形状のドレーンシート53を形成しており、高圧ポート32の弁室51への開口部は、フラット形状の高圧シート54を形成している。このように一方をフラット形状とするのは、弁体52の軸ずれを許容するためである。弁体52は、いずれかのシート53、54に着座することにより対応するポートを閉塞するが、弁室51の圧力は常にドレーンポート21の圧力より高いため、弁体52はドレーンシート53に着座しているのが常態である。高圧シート54への着座力は、油圧制御弁1の小径ピストン18によって与えられる。次に、油圧制御弁1の詳細について説明する。
【0022】
油圧制御弁1は、ハウジングHの上端部内に収容されるピエゾアクチュエータ14を駆動源として有している。ピエゾアクチュエータ14の変位は、その下端に接して一体に設けたピエゾピストン15に伝達され、さらに大径ピストン17および油圧室である変位拡大室6を介してピストン部材である小径ピストン18に伝達される。ピエゾアクチュエータ14は公知の構成で、PZT等の圧電体を積層したピエゾスタックからなり、外部からエネルギーを供給することによって伸長し、注入されたエネルギーを放出することによって収縮して、ピエゾピストン15を駆動する。ピエゾピストン15は、ピエゾシリンダH1内に摺動自在に配設され、細径のロッド16によって大径ピストン17に連結されている。大径ピストン17および小径ピストン18は、シリンダ形成部材H2に同軸的に形成した大径シリンダH3、小径シリンダH4内にそれぞれ摺動自在に配設され、ロッド16は大径ピストン17の上面より上方に延びて、ピエゾピストン15の下面に圧入固定される。
【0023】
ピエゾピストン15下方の、ロッド16周りに形成される空間は、ドレーン通路2に連通する油溜まり室7となしてあり、スプリング71が収容されてピエゾピストン15を上方に付勢している。同時に、ピエゾピストン15と一体に連結される大径ピストン17もスプリング71によって上方に付勢される。これにより、ピエゾピストン15および大径ピストン17は、ピエゾアクチュエータ14の伸縮に応じて一体に上下動する。なお、ピエゾピストン15の外周には、油溜まり室62内の作動油がピエゾアクチュエータ14を汚染するのを防止するためにOリング73が設けられる。また、油溜まり室7をドレーン通路2に連通させるための通路は、ハウジングH側壁から径方向に油溜まり室7に貫通穴を形成した後、盲栓74で閉鎖することにより形成される。
【0024】
シリンダ形成部材H2は、小径ピストン18の上部に縮径部を有し、小径ピストン18の上方への移動を規制するストッパ61を形成している。大小シリンダH3、H4は、この縮径部を介して連通しており、縮径部と小径ピストン18の間に形成される油圧室A、および大径ピストン17との間に形成される油圧室Bによって変位拡大室6が形成される。変位拡大室6は、ピエゾアクチュエータ14の変位を油圧変換し、大小ピストン17、18の径差に応じた変位拡大率で増幅して、小径ピストン18に伝達する。小径ピストン18の下端部は、シリンダ形成部材H2の下方に形成されるスピル室22内に位置し、細径の先端部がドレーンポート21内に挿通されて弁体52に当接している。
【0025】
大径ピストン18内には、軸方向に通路72が設けられ、通路72の上端はロッド16の基端部内に延びてT字形に分岐し、油溜まり室7に開口している。通路72の下端は、大径ピストン18の下端面に開口し、大径ピストン18の下端に装着した逆止弁8を介して変位拡大室6に連通するようになっている。逆止弁8は、変位拡大室6の燃料がリーク等により減少した時に、油溜まり室7から変位拡大室6へ燃料を補充するためのもので、通路72の下端開口を閉鎖するフラット弁81と、フラット弁81を上方に付勢する皿バネ82からなる。これらフラット弁81と皿バネ82は、大径ピストン18の下端部外周に圧入固定される有底筒状のホルダ83内に収納保持される。ホルダ83底面には貫通穴85が設けられ、ホルダ83内空間と変位拡大室6の間で燃料は自由に流通する。
【0026】
フラット弁81は、円盤状の薄板(厚さ:0.1〜0.2mm)の上下2箇所を平行に切り欠いたもので、中心にピンホール84(直径:0.02〜0.5mm)を設けている。このピンホール84により、燃料噴射中に通電回路に異常が発生しても変位拡大室6の燃料を油溜まり室7へリークさせることができるため、燃料噴射を停止することができる。また、燃料噴射弁Vの組み立て後に、ピンホール84を介して変位拡大室6を容易に真空にし、燃料を充填することができるので、空気が残って不具合を生じることがない。
【0027】
上記構成の燃料噴射弁の作動を説明する。燃料噴射の開始に当たって、ピエゾアクチュエータ14には、ドレーンポート21を開とするために十分な電圧(例えば100〜150V)が印加される。ピエゾアクチュエータ14は電圧に比例した変位(例えば40μm)を生じて、ピエゾピストン15、大径ピストン17を同じ変位量だけ下方に移動させ、変位拡大室6の油圧を上昇させる。この変位拡大室6の油圧上昇により小径ピストン18が下降し、弁体52をドレーンシート53から押し下げてリフトさせ、高圧シート54に着座させる。この時、弁体52のリフトは、ピエゾアクチュエータ14の変位に対して、予め設定された変位拡大率(大径ピストン17と小径ピストン18の受圧面積比)で拡大される。この変位拡大率の最適範囲については後述する。
【0028】
弁体52のリフトに伴ってドレーンポート21が開き、次いで高圧ポート32が閉じるために、弁室51の圧力が低下する。弁室51と連通する制御室4の圧力が低下し、ノズルニードル12に上向きに作用する燃料溜まり31の油圧力が、制御室4の油圧力およびスプリング41のバネ力に勝ると、ノズルニードル12がノズルシート13からリフトし、燃料の噴射が開始される。
【0029】
燃料噴射の停止に当たっては、ピエゾアクチュエータ14の電荷を放出させることによってその電圧をゼロにする。この間に、ピエゾアクチュエータ14は、電圧印加時の変位量だけ収縮して元の長さに戻り、ピエゾピストン15がスプリング71に付勢されて上昇する。ロッド16によりピエゾピストン15と連結されている大径ピストン17もピエゾピストン15とともに上昇し、変位拡大室6の油圧を低下させる。変位拡大室6の油圧低下により小径ピストン18は、弁体52を高圧ポート32の高圧に逆らって高圧シート54に押し付ける力を失い、弁体52とともに上昇する。
【0030】
弁体52が再びドレーンシート53に着座し、そのリフト位置が初期状態に戻ると、高圧ポート32が開き、次いで、ドレーンポート21が閉じるために、弁室51および制御室4の圧力が回復する。制御室4の圧力が上昇し、ノズルニードル12に下向きに作用する力が、燃料溜まり31の油圧力に勝ると、ノズルニードル12が降下して再びノズルシート13に着座し、燃料噴射を停止する。
【0031】
ここで、本発明では、弁体52がドレーンポート21を開弁するためにピエゾアクチュエータ14に必要な発生力Fが、使用最大電圧における最大発生力の1/2以下となるように、変位拡大率を選択する。好適には、開弁時のピエゾ発生力Fが、使用最大電圧における最大発生力の1/4以上であり、かつ1/2を下回るようにする。使用最大電圧は、電圧印加によるピエゾアクチュエータ14や電気回路の破損を防止するために設定される許容可能な最大電圧を表す。また、ドレーンポート21の開弁時に必要な発生力Fは、下記式(1)で表される。
(1)F=SL ・P・(S/s)
ここで、SL はドレーンポート21のシート面積(mm2 )、Pは高圧通路3の圧力(=コモンレールの圧力;Kg/mm2 )、Sは大径ピストン17の受圧面積(mm2 )、sは小径ピストン18の受圧面積(mm2 )であり、(S/s)は変位拡大率を表す。
【0032】
つまり、ドレーンポート21の開弁時の発生力Fは、変位拡大率(S/s)に比例するので、SL 、Pが一定値である時、変位拡大率(S/s)を適切に設定すれば、開弁時の発生力Fが上記所定範囲となる。このようにすることで、ピエゾアクチュエータ14や電気回路の許容電圧の範囲内で、投入されたエネルギーを効率よく弁体52のリフトに変換することができる。この詳細を以下に説明する。
【0033】
ピエゾアクチュエータ14にエネルギーを投入すると、ピエゾアクチュエータ14に変位が生じ、大径ピストン17を介して変位拡大室6の油圧が上昇して、p・s=SL ・P(p:変位拡大室6圧力)となった時に、弁体52がリフトを開始する。一方、図2(a)のように、仮にピエゾアクチュエータ14への投入エネルギーを一定(大、小)(なお小は開弁に必要な最小エネルギである。)としたとする時、ピエゾスタックの端子電圧(ピエゾ電圧V)は、発生力の増加とともに急激に高くなる。これは、ピエゾスタック内部に発生力に比例した電荷が発生して、外部からエネルギーとして注入された電荷に加算されるためである。
【0034】
従って、負荷が最大となる開弁時のピエゾ電圧が上記許容電圧となるように、投入エネルギーEを制御した場合、「供給したエネルギーが一定のままでピエゾアクチュエータ14の発生力が低下するとピエゾ電圧も低下する」ことになる。上記構成で言えば、弁体52がリフトを開始して弁室51の油圧が低下すると、開弁を維持するためにピエゾアクチュエータ14に要求される発生力が減少するので、これに伴いピエゾ電圧も低下することになる。この現象を逆に言うと、許容電圧が決まっている場合、開弁時の発生力を高く設定するほど、ピエゾアクチュエータ14に供給可能なエネルギーは小さくなってしまう。これを図2(b)に示す。
【0035】
図2(c)は、電圧一定(許容電圧)の条件での発生力とピエゾ変位δの関係を表すもので、発生力が減少するとその分ピエゾ変位δが大きくなり、弁体リフトが大きくなることが予測される。ところが、図2(c)の特性では、リフト後のピエゾ電圧の低下が考慮されていないことから、開弁時のピエゾ発生力が大きくなるように変位拡大率(S/s)を選択すると、投入できるエネルギーが小さいため、図2(a)のように、リフト後の発生力の減少によってピエゾ電圧が低下する。例えば、図2(a)の投入エネルギー(小)の場合のように、開弁時の発生力Fが大きい(変位拡大率(S/s)が大きい)と、実際の投入エネルギーが小さくなるために、開弁は可能であってもその後のリフトが小さく、高圧ポート32に着座することができなくなる。
【0036】
それでは、開弁時の発生力Fを小さくするために変位拡大率(S/s)を小さくすればよいかというと、ピエゾアクチュエータ14がいくら変位しても小径ピストン18はあまり変化しないということになり、この場合も弁体52のリフトを大きくすることはできない。弁体52のリフトLは、ピエゾ変位をδとすると、L=δ・(S/s)=δ・F/(SL ・P)となるため、これにより、開弁時の発生力Fを変化させた時の、弁体52の可能な最大リフトLは、図2(d)のようになる。すなわち、最大リフトLは、開弁時の発生力Fが最大発生力の3/8付近にある時にピークを有し、最大リフト量Lを大きくするには、最大発生力の1/4以上であり、かつ1/2を下回る範囲とすると有利であることが分かる。
【0037】
以下に、具体的な実施例を示す。上記構成の燃料噴射弁Vにおいて、例えば、ピエゾ発生力0の時のピエゾ変位δ=0.04mm、ピエゾ発生力200kgの時のピエゾ変位δ=0mmとすると、最大発生力は200kgとなる。よって、最大発生力の1/4以上であり、かつ1/2を下回るピエゾ発生力、すなわち、50〜100kgの範囲で弁体52が開弁してドレーンポート21を開くことが望ましい。ドレーンポート21の開弁時に必要な発生力Fの式:F=SL ・P・(S/s)において、ドレーンシート53の直径dL =1.65(mm)から、ドレーンポート21のシート面積SL =2.14(mm)、高圧通路3の圧力P(=コモンレールの圧力)=20kg/mm2 とすると、
50kg≦42.8(S/s)kg<100kg
50/42.8<(S/s)<100/42.8
から、変位拡大率(S/s)の最適範囲は、
1.17≦(S/s)<2.3
となる。
【0038】
変位拡大率(S/s)を上記最適範囲の中央値(S/s)=1.8とした時、開弁時のピエゾ発生力は、75kgとなる。この時、150Vでピエゾアクチュエータ14に投入できるエネルギーは、図2(b)から開弁に必要なエネルギーの2.7倍であり、図2(d)のようにそのエネルギーをリフトに効率よく変換することができる。なお、リフトが可能な最大リフトより大きくない状態で、高圧ポート32のシートに着座する場合であれば、その分のエネルギーはシート力に変換されるので、確実なシールが可能になる効果がある。
【0039】
上記実施の形態では、大小ピストンと変位拡大室により3方弁の弁体を駆動する油圧制御弁を用いた場合について説明したが、3方弁に限らず、2方弁等を用いてもよい。また、3方弁等を介さず、ピエゾアクチュエータ14により、ノズルニードルを駆動する油圧室の油圧を直接増減する構成(直動式)の燃料噴射弁に適用することも可能で、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における燃料噴射弁の全体構成を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は第1の実施の形態における燃料噴射弁の作用効果を説明するためのピエゾアクチュエータ特性図である。
【図3】ピエゾアクチュエータの一般的特性を示す図である。
【符号の説明】
H ハウジング
B1 バルブボディ
1 油圧制御弁
11 噴孔
12 ノズルニードル
13 ノズルシート
14 ピエゾアクチュエータ
15 ピエゾピストン
16 ロッド
17 大径ピストン
18 小径ピストン
2 ドレーン通路(低圧通路)
21 ドレーンポート(導通路)
22 スピル室
3 高圧通路
31 燃料溜まり
32 高圧ポート
4 制御室
5 3方弁
51 弁室
52 弁体
53 ドレーンシート
54 高圧シート
6 変位拡大室(油圧室)
7 油溜まり室
8 逆止弁
Claims (6)
- ピエゾアクチュエータの変位を油圧に変換し、該油圧を増減させることによって弁体を駆動するとともに、該弁体の開弁時に上記ピエゾアクチュエータに最大の発生力が要求され、開弁後は上記ピエゾアクチュエータの発生力が減じられつつ上記弁体のリフト量が大きくなる構造の油圧制御弁において、上記弁体を開弁させる時に上記ピエゾアクチュエータに必要とされる発生力を、使用最大電圧における最大発生力の1/2を下回らせたことを特徴とする油圧制御弁。
- 上記ピエゾアクチュエータの変位を大径ピストンによって油圧に変換し、該油圧を小径ピストンに作用させることによって上記弁体を駆動するとともに、上記弁体を開弁させる時に上記ピエゾアクチュエータに必要とされる発生力が使用最大電圧における最大発生力の1/2を下回らせるように、上記大径ピストンと上記小径ピストンの径の比を設定する請求項1記載の油圧制御弁。
- 請求項1または2記載の油圧制御弁を備え、上記弁体の駆動によって燃料噴射の開始および停止を制御することを特徴とする燃料噴射弁。
- 請求項1または2記載の油圧制御弁を備え、ノズルニードルに閉弁または開弁方向の油圧を作用させる制御室を低圧通路に導通させる導通路を、上記弁体で開閉することにより、上記ノズルニードルを昇降させて噴孔を開閉することを特徴とする燃料噴射弁。
- 上記アクチュエータの変位によって油圧を増減させる油圧室を設けて、該油圧室の油圧を受けて上記弁体が駆動されるようになし、上記ノズルニードルに背圧を与える上記制御室を、上記弁体の開弁によって上記低圧通路に導通させて減圧することにより、上記噴孔を開放する請求項4記載の燃料噴射弁。
- 上記弁体を開弁させる時に上記ピエゾアクチュエータに必要とされる上記発生力を、使用最大電圧における最大発生力の1/4以上としたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の油圧制御弁または燃料噴射弁。
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