JP4304786B2 - 消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置 - Google Patents
消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、消耗電極式アーク溶接のアークスタート時の短絡状態を極めて簡単に検出できる消耗電極式アーク溶接の検出方法および溶接装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ワイヤを略定速度で送給し、短絡とアークを交互に繰り返しながら溶接をするCO2あるいはマグ溶接ではアークスタート時に母材とワイヤが短絡した状態を検出する方法が数種ある。
【0003】
(従来技術1)
まず、第一の従来技術にアークスタート時の短絡した状態を検出する方法に出力電流検出器を使用したものがある。
【0004】
出力電流検出器は出力回路と溶接出力を行うための出力端子の間に接続されたケーブルに組み込まれ、前記ケーブルに電流が流れた際にケーブルのまわりに磁束が発生し、その磁束を電圧に変換している。
【0005】
第一の従来技術では磁束を電圧に変換した際の電圧変化を判定することによりアークスタート時の短絡状態を検出している。
【0006】
(従来技術2)
また、第2の従来技術では前記出力端子と出力回路との間にシャント抵抗を挿入し、シャント抵抗に電流が流れた際のシャント抵抗間の電圧変化を判定することにより短絡状態を検出している。
【0007】
また、従来技術1または従来技術2の方法は元来出力電流値を測定するために溶接装置内に具備されている。
【0008】
(従来技術3)
また、溶接状態を検出するものとして特開平5−329640号がある。
【0009】
この場合、溶接途中に二次巻き線を備えるリアクタの二次側の電圧の変化を判定することにより短絡期間とアーク期間を判別している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術1または従来技術2は、溶接装置の電流出力に応じた出力電流検出器またはシャント抵抗を用いているため、アークスタート時の短絡状態を検出する判定レベルを外部ノイズからの影響を無くすために高くしており、ワイヤが母材に短絡してから数msの遅れを生じる。
【0011】
そのため、アークスタート時の制御が遅れてしまう。
【0012】
また、前記短絡状態の検出レベルを低くした場合、従来技術1ではアークスタート時の無負荷電圧発生時のノイズ等に反応し易いため短絡状態の判定間違いが発生しやすい。
【0013】
そのため、アークスタート時の制御にばらつきが生じてしまう。
【0014】
また、従来技術1または従来技術2を行うためには、主回路とは関係のない電流検出器またはシャント抵抗を溶接装置に特別に具備しなければならないうえに、実際に使用するためには温度上昇テストを行ったり、固定する方法を思案する等の手間がかかってしまう。
【0015】
また、従来技術3では溶接出力中の短絡期間とアーク期間を判定するためにリアクタに2次巻き線を施し、アーク中を含む出力電流に増減変化のない時の電圧を拾っているため、無負荷電圧出力中に励時電流がリアクタに流れた際の電圧に反応する場合がある。
【0016】
また、二次巻き線側からの電圧で判定を行っているため、溶接機内に具備されている変圧器などの磁束による影響を受けやすくなってしまう。
【0017】
また、従来技術3は溶接中の短絡期間とアーク期間の判定を行うのが主の方法であるので、リアクタに巻かれた2次巻き線の巻き数はアーク期間の判定を行うためにリアクタの巻き数よりも多くなる。
【0018】
よって、更に、溶接機内部または外部の磁束の影響やノイズの影響を受けやすくなる。
【0019】
本発明はこれら従来の課題を解決するもので、簡単かつ正確に短絡状態を検出できる検出方法および溶接装置を提供するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明では、出力回路に接続された直流リアクタに発生する端子間電圧を測定し、測定した端子間電圧と予め定めた値とを比較することによりアークスタート時の短絡状態を検出している。
【0021】
本発明により、直流リアクタ間電圧を測定しているので別途短絡状態を検出するための部品を具備する必要が無く、アークスタート時にワイヤが母材に短絡するまでの期間は常に同電位であるため、無負荷電圧発生時のノイズに影響されない。
【0022】
また、本発明では短絡状態の判定を一定期間保持している。
【0023】
本発明により、アークスタート時の短絡状態の判定を一定期間保持しているので、微少短絡が行われた場合でもアークスタート時の短絡状態を保持しており、短絡開始時から多少も遅れることなく、また安定して制御することができる。
【0024】
また、本発明では検出された前記短絡状態によりアークスタート開始期間と溶接期間とを切り換えている。
【0025】
本発明により、アークスタート時の制御を円滑に行うことができ、スタート時の制御をより確実に行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、本発明の消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。
【0027】
本実施の形態1は請求項1および請求項2に係わる。
【0028】
2は交流電圧を変圧するための変圧器、3は変圧された交流電圧を直流電圧に整流するための整流ダイオード、4は溶接出力電圧を出力するための出力回路部、5は前記出力回路部4から出力される直流電圧のリップルを平滑にするためのリアクタ、6は溶接するためのワイヤ、7は前記ワイヤ6を送給するためのモータ、8は母材、9は前記リアクタから発生する逆起電圧を検出するための電圧検出部、10は前記電圧検出部から検出された電圧とあらかじめ定めた値とを比較することにより短絡状態を判定するための短絡状態判定部、11は前記短絡状態判定部から判定される状態を得て制御を行うための制御回路部、1は前記制御回路部11からの信号を受け溶接出力を調整する駆動回路部、12は前記制御回路部11からの指令により前記モータ7を駆動するためのモータ駆動回路部である。
【0029】
本実施の形態1は、以上のように構成され、動作について次に説明する。
【0030】
溶接開始時に出力回路部3は駆動回路部1が制御回路部11からの出力指令信号を受けることでワイヤ6と母材8との間に無負荷電圧を出力する。
【0031】
前記無負荷電圧出力と同時に前記制御回路部11はモータ駆動回路部12に駆動指令を送り、前記駆動指令を受けたモータ駆動回路部12はモータ7にモータ電圧を印可することでモータを回転させ、ワイヤ6を送給する。
【0032】
前記ワイヤ6が母材8に短絡した際、リアクタ5に短絡電流が流れ込み前記リアクタ5は逆起電圧を発生する。
【0033】
前記逆起電圧を電圧検出部9で検出し電圧信号を短絡状態判定部10に送る。
【0034】
前記短絡状態判定部10は予め定めた値である0Vと前記電圧信号を比較し、前記電圧信号が0Vより高い電圧信号である場合には短絡状態であると判定する。
【0035】
前記短絡状態判定部10が短絡である場合に、前記制御回路部11に信号を送り、前記制御回路部11は前記信号を受けてスタートの制御を行う。
【0036】
以上の動作により、アークスタート時の短絡状態を判定する。
【0037】
以上のように本実施の形態1によれば、ワイヤ6と母材8間に無負荷電圧を出力された状態からワイヤ6と母材8が短絡した瞬間に短絡状態を検出することができるので短絡を早期に検出できる。
【0038】
また、ワイヤ6と母材8が短絡を行っていない開放状態であるときにはリアクタ5には逆起電圧は発生しない。
【0039】
また、前記開放状態の時はリアクタ間に電流が流れないためリアクタ間の電位は常に同電位となりアークスタート時にノイズが発生していても、影響を受けない。
【0040】
(実施の形態2)
以下、本発明の消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置の実施の形態2について図面を参照しながら説明する。本実施の形態2は請求項3に係わる。
【0041】
図2は消耗電極式アーク溶接機の構成並びに本実施の形態2を行うための回路構成を表している。
【0042】
尚、実施の形態1で示した図1と同じ構成要素には同一番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、短絡状態判定部10からの信号を短絡状態保持回路13で受ける事にある。
【0044】
本実施の形態2は、以上のように構成され、動作について次に説明する。
【0045】
アークスタート時の前記無負荷電圧状態からワイヤ6と母材8が短絡した状態で短絡時間の短い微少短絡が発生した場合、電圧検出部9は短絡時間に適応した短い時間の電圧を検出する。
【0046】
そこで短絡状態判定部10は前記電圧検出部9からの信号を受けて短絡状態を判定するので短い前記微少短絡が発生した場合には短い期間のみ短絡状態であると判定する。
【0047】
前記短い期間の短絡状態の判定信号を短絡状態保持回路部13が受け前記ワイヤ6と前記母材8が短絡し、溶接が開始したことを保持しているので、短絡状態保持回路部13からの信号を制御回路部11が受け、制御回路部11はスタート制御をアークスタート時の短絡の大小に係わらず確実に行うことができる。
【0048】
(実施の形態3)
以下、本発明の消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置の実施の形態3について図面を参照しながら説明する。本実施の形態3は請求項4に係わる。
【0049】
図1においてワイヤ6と母材8が開放状態であるアークスタート時に制御回路部11はモータ駆動回路部12に対し溶接開始直前の初期モータ駆動指令信号を送る。
【0050】
前記モータ駆動指令信号により前記モータ駆動回路部12はモータ7に初期モータ指令電圧を送る。
【0051】
前記ワイヤ6は前記モータ7により送給され、母材8に接触し、短絡が起こる。
【0052】
前記短絡が発生した場合に短絡状態判定部10が短絡状態である信号を制御回路部11に送る。
【0053】
前記信号を受けた前記制御回路部11はモータ駆動回路部12に溶接条件のモータ駆動指令信号を送る。
【0054】
前記モータ駆動回路部12は前記モータ指令信号を受け前記モータ7に溶接条件のモータ指令電圧を送る。
【0055】
このようにして、本発明では、検出された前記短絡状態によりアークスタート開始期間と溶接期間とで条件を切り替えて制御することができる。また、スタート時の制御を円滑かつ確実に行うことができる。
【0056】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1ないし請求項2に係わる本発明の消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置はワイヤと母材間に無負荷電圧を出力された状態から前記ワイヤと前記母材が短絡した瞬間に短絡状態を検出することができるので短絡を早期に検出でき、アークスタート時にノイズが発生していても、影響を受けない。
【0057】
また、請求項3に係わる本発明の消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置はスタート制御をアークスタート時の短絡の大小に係わらず確実に行うことができる。
【0058】
また、請求項4に係わる本発明の消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法および溶接装置は検出された短絡状態によりアークスタート開始期間と溶接期間とで条件を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1,3における溶接装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態2における溶接装置のブロック図
【符号の説明】
1 駆動回路部
2 変圧器
3 整流ダイオード
4 出力回路部
5 リアクタ
6 ワイヤ
7 モータ
8 母材
9 電圧検出部
10 短絡状態判定部
11 制御回路部
12 モータ駆動回路部
13 短絡状態保持回路
Claims (4)
- ワイヤを略定速度で送給し、スタート時に短絡が発生する消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法において、前記ワイヤと母材との間に無負荷電圧を出力し、出力回路に接続された直流リアクタに発生する端子間電圧を測定し、測定した端子間電圧と予め定めた値とを比較することによりアークスタート時の短絡状態を検出することを特徴とする消耗電極式アーク溶接の短絡状態検出方法。
- ワイヤを略定速度で送給し、スタート時に短絡が発生する消耗電極式アーク溶接の溶接装置において、前記ワイヤと母材との間に無負荷電圧を出力する出力回路と、前記出力回路に接続された直流リアクタに発生する端子間電圧を測定する手段と、測定した端子間電圧と予め定めた値とを比較することによりアークスタート時の短絡状態を検出する手段を備えたことを特徴とする消耗電極式アーク溶接装置。
- 短絡状態の判定を一定期間保持することを特徴とする請求項2記載の消耗電極式アーク溶接装置。
- 検出された前記短絡状態によりアークスタート開始期間と溶接期間とを切り換えることを特徴とした請求項2または請求項3記載の消耗電極式アーク溶接装置。
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