JP4304349B2 - イソブテン重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、三フッ化ホウ素基材触媒系並びに液体沸騰反応器系を用いた場合のイソブテン含有供給原料のカチオン重合化によりポリイソブテンを製造する改良方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ルイス酸[Lewis Acid]触媒を用いた純粋なイソブテンもしくはC4ラフィネート流等の異性体混合物中のイソブテンの重合化方法は、周知でありかつ先行技術において広く開示されている。そのような触媒の典型は、アルミニウム、鉄、チタン、錫、水銀並びにホウ素のハロゲン化物である。これらの触媒は、随意に水、アルコール、エーテル、有機酸、鉱酸並びにハロゲン化アルキルなどの助触媒と組み合わせて使用し、触媒活性を高めることができる。重合化反応は、液相において、バッチ又は連続的に、−100℃〜+100℃の範囲の温度で実施するのが典型的である。
【0003】
更に、前述の触媒系を使用したイソブテンの重合化過程における連鎖停止工程[chain termination step]は、一般的に「最終[final] 」二重結合を生じさせ、結果として起きる機能化反応[functionalisation reaction]、例えばエポキシ化反応によって対応するエポキシドを生成する又は無水マレイン酸とのエン[ene] 付加反応によって対応するポリイソブテニルスクシネート無水物を生成させることは公知である。しかし、停止工程は、正確に制御されない場合、下記するような相対的に反応性の低い内部位置、例えば1,2,2−3置換の位置又はより望ましい位置、高い反応性の末端1,1−2置換の位置(以後、末端ビニリデン基)ある最終二重結合を結果として生じさせる;
CH2=C(CH3)R 1,1−二置換
(CH3)2C=CHR 三置換
(CH3)2C=C(CH3)R 四置換
[Rは各々アルキル基]。
【0004】
上述の観点において、ポリイソブテンの末端ビニリデン基の数を最大にするような方法でイソブテンを重合化し得る触媒を特定することにより、ポリイソブテンの反応性を向上させることは、長い間の当業界における研究の課題であった。今日まで、この課題を達成するために特定された最も有効な触媒が三フッ化ホウ素である。三フッ化ホウ素を用いた方法は、例えばUS-A-4605808、US-A-5068490、DE-A-4033196並びにEP-A-0628575に記載されている。例えば1種以上のアルコール又はエーテル並びにこれらの複合体と複合した三フッ化ホウ素よりなる、これらの刊行物における触媒系の全ては、反応器に添加する前に生成させ得るもしくは反応器内の現場で調製し得ることは注目すべきことである。
【0005】
ポリイソブテンの製造に用いる典型的な反応器の1つは、沸騰液体系[boiling liquid system] である。反応器は、一般的に液体重合化反応媒体及びこの液体媒体の上方の蒸気空間[vapour space]を包含し、液体媒体は炭化水素供給原料、生成したポリマー並びに触媒からなり、重合化反応の発熱性により沸騰する。蒸気空間は、凝縮し得る気体を含む。一般的に、これらの気体は、コンデンサーにおいて液体の形態に凝縮する。この型の反応器は、絶えず少なくとも1つのコンデンサーを接続させ、反応温度及び圧力を制御する。このコンデンサーは、普通反応器の頂部[top] 又は反応器の上に配置させ、1本以上のパイプを介して反応器と接続する。コンデンサーの主な目的は、反応器中で生成する気化したC4モノマーを液化させることである。液化したC4モノマーを包含する凝縮物は、コンデンサーの底部にあるパイプ又はラインを介して反応器に戻すことができる。三フッ化ホウ素基材触媒を用いた場合にこの反応器系により生じる主な不利益は、バルク[bulk]反応液体から若干の三フッ化ホウ素気体が蒸気相に逃げ、反応器と接続したコンデンサー(以後、「コンデンサー」という)に達することである。これらのコンデンサーに達すると直ぐ、凝縮するイソブテン(及び存在する他の任意のC4オレフィンモノマー)の少なくとも一部が触媒され、結果として所望されかつ反応器内で生成するポリマーとは分子量が異なる、所望しないポリマーがコンデンサー中で生成する。コンデンサー中で生成した所望しないポリマーは、通常は次に未反応の液化したC4モノマーと一緒に反応器に戻され、反応器内で製造される所望のポリマーと混合される。コンデンサー中で生成するポリマーと反応器内で生成するポリマーの分子量における相違は、コンデンサーからの所望しないポリマーが無い場合より、全反応器ポリマー生成物の分子量分散(以後、「分散指数」という)を極めて広範囲なものにする。最終生成物の分散指数が広範囲になることは、生成物の品質の不一致が生じる、例えば最終生成物の分子量/粘度の相関関係が低くなる(即ち、最終生成物ポリマーがコンデンサーからの混入ポリマーが無いものと比較して、与えられた分子量に対してより高い粘度を有する)との理由から所望し得ない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
電子供与体を反応液体の水位より高い位置で反応器に導入し、例えば遊離した三フッ化ホウ素気体がコンデンサーに達するのを防ぐことにより、コンデンサー内での所望しないポリマーの生成を実質的に減少もしくは完全に削除し、これにより分散指数が狭いポリマー生成物の製造が可能となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明は、接続したコンデンサーを備える反応器中の液相中における三フッ化ホウ素を含む触媒の存在下でのイソブテンからなる炭化水素供給原料の液相カチオン重合化過程中に生成されるポリマーの分散指数の制御方法であって、前記方法は、反応器中の液体の水位より高い位置で電子供与体を導入してコンデンサー中でのイソブテンと遊離した三フッ化ホウ素気体との反応を最小限に抑え、これにより所望しないポリマーの形成を最小限に抑えることからなるポリマーの分散指数の制御方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
イソブテンの供給源として用いる炭化水素供給原料は、純粋なイソブテンもしくはイソブテンを含むC4ラフィネート流とすることができる。炭化水素供給原料中のイソブテンの量は、少なくとも10重量%が適しており、少なくとも25重量%が好適である。炭化水素供給原料は、随意に1種以上のアルカン又はシクロアルカンを包含し得る。典型的な供給原料は、蒸気分解法[steam cracking process]又は1,3−ブタジエンの選択的分離後の液体触媒分解法[fluid-catalytic cracking process]からのブタジエンラフィネート流(以後、「ラフィネートI」)である。イソブテンの供給源として用いる炭化水素供給原料は、主に触媒的分解装置からのブタン及びブテン(以後、「製油所B−B」という)からなる粗製油の精製過程で得られる炭化水素流とすることができる。これらの供給原料の同定の一部は、例えば「C4−炭化水素及び誘導体、資源、製造、市場取引」、シュルツとホーマン [Schulze & Homann] 著、スプリンガーバーラグ[Springer-Verlag] 出版(1989年)に見い出すことができる。全組成物の重量当たりの適する組成を表1に示す。
【0009】
【表1】
【0010】
理想的には、反応器及びコンデンサー内に存在する遊離した三フッ化ホウ素気体触媒とイソブテンとの接触を完全に抑制することが所望される。これは、電子供与体をコンデンサーの表面にできるだけ均等に供与体が分配するような量で反応器の液体の水位より高い位置において導入し、コンデンサーに入る全ての遊離の三フッ化ホウ素気体の作用を阻害することにより達成することができる。従って、電子供与体を反応器の液体の水位より高い位置において導入し、コンデンサーの表面に分配させることができる。従って、電子供与体は、反応器の液体の水位より高い任意の位置において、液体及び/又は気化状態で1個以上のノズルを介して導入し、コンデンサーの脆弱な部分、例えばその表面における電子供与体の均一な分配を促進させ、これによりコンデンサー及び接続するラインに入る三フッ化ホウ素の触媒活性を最小限にすることができる。コンデンサーの脆弱な部分に達する電子供与体の量を最大にする為に、電子供与体を反応液体の水位より高い位置で十分な数のノズルを通じて反応器に噴霧するのが好適である。ノズルは十分に小さい開口部(口径)を有しているものが適しており、コンデンサーへ達する前に電子供与体の完全な気化を促進させるもしくは反応体及び/又は生成物の蒸気が反応混合物の上方に上昇することにより、小滴の全てをコンデンサーに到達させるような大きさになるように、電子供与体の小滴を制御する。電子供与体は、小滴及び/又は蒸気の形態で、反応液体の水位より高い任意の位置で反応器に導入するのが適している。本発明の特徴は、反応器からの最終生成物の分散指数に対する悪影響を及ぼす所望しないポリマーの形成を少なくともある程度抑制する最小限の量で電子供与体を添加することである。しかし、そのような所望しないポリマーの形成を実質的に完全に阻害するためには、コンデンサー及び接続するパイプで生じることが予期される遊離の三フッ化ホウ素気体1モル当たり少なくとも2モルの電子供与体を反応器の液体の水位より高い位置で反応器に添加する、好ましくはコンデンサー及び接続するパイプで生じることが予期される遊離の三フッ化ホウ素気体1モル当たり少なくとも3モルの電子供与体を反応器の液体の水位より高い位置で反応器に添加する。電子供与体は、その小滴及び/又は蒸気がコンデンサー及び接続するパイプに達してそれらの表面を完全に被覆し、電子供与体自体がコンデンサーに達する前に凝縮しかつ反応液体中に滴下することがないようなノズルを通じて反応器に導入する。電子供与体が重合化反応に悪影響を有し、これを凝縮物と一緒に反応器に戻す場合、この悪影響が許容し得るような少量で電子供与体を用いることができる。
【0011】
使用し得る電子供与体の例には、(a)1種以上のアルコール、中でも1〜20個の炭素原子を有する第1又は第2アルコールが適しており、特にメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール等のエーテルアルコール;(b)1種以上の直鎖−枝分かれ鎖又は環状エーテル、ヒドロカルビル基がエーテルと結合している1〜20個の炭素原子を有するものが適しており、特にアルキル第3ブチルエーテル、例えばメチル第3ブチルエーテル、エチル第3ブチルエーテル、プロピル第3ブチルエーテル、ブチル第3ブチルエーテル、イソプロピル第3ブチルエーテル又は第2ブチル−第3ブチルエーテル;(c)1種以上のエステル、特に脂肪族エステル;(d)1種以上の酸、特に酢酸並びにプロピオン酸等のカルボン酸;(e)1種以上のアルデヒド;(f)1種以上のケトン;(g)1種以上のアミン;(h)1種以上のアミド;(i)1種以上のアミノアルコール等から選択される1種以上が包含される。
【0012】
本発明の方法は、三フッ化ホウ素を含む任意の触媒系に適用することができる。適する触媒系は、第1及び/又は第2アルコール及び/又はエーテル等の複合体生成剤と複合した三フッ化ホウ素を含むものである。特に適するアルコールは、1〜20個の炭素原子を有するものであり、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第2ブタノールである。適するエーテルは、エーテルと結合しているヒドロカルビル基が1〜20個の炭素原子を有する直鎖、枝分かれ鎖又は環状エーテルであり、特にアルキル第3ブチルエーテル、例えばメチル第3ブチルエーテル、エチル第3ブチルエーテル、プロピル第3ブチルエーテル、ブチル第3ブチルエーテル、イソプロピル第3ブチルエーテル又は第2ブチル−第3ブチルエーテルである。
【0013】
三フッ化ホウ素複合体は、予め生成させる又は現場で生成させることができ、後者の場合は三フッ化ホウ素と複合体生成剤とを別々に反応器に添加する。
【0014】
本発明の方法は、バッチもしくは連続的に実施することができる。反応は、沸騰液体中において−40℃から+40℃の範囲の温度で実施するのが適している。反応器内の圧力は、0.2〜4.0バールの絶対[absolute]圧力が好適である。
【0015】
本発明の方法は、好ましくは350〜5000の数平均分子量、更に好ましくは500〜3000の数平均分子量を有するポリイソブテンの製造に適する。
【0016】
数平均分子量が350〜5000である場合、分子量分布(重量平均分子量を数平均分子量で割る)は1.2〜2.5の範囲であり、好ましくは1.0〜2.0の範囲であり、更に好ましくは1.2〜1.5の範囲である。
【0017】
下記する実施例を参照して本発明の方法を説明する。
【0018】
【実施例】
実施例1
コンデンサーを備えた連続攪拌タンク沸騰液体反応器を使用し、三フッ化ホウ素とエタノールの1:1のモル比の複合体を用いて、混合炭素−4ヒドロ異性化[carbon-4 hydroisomerised]ラフィネートI供給原料(1,3−ブタジエンの選択的分離後の蒸気分解装置から得られ、約36〜42%の範囲のイソブテン及び約3〜5%の範囲のブテン−1を含有する)の連続カチオン重合化を−10℃の反応温度及び15〜25分の典型的な反応滞留時間で実施した。反応器に添加する生成前の1:1の三フッ化ホウ素/エタノール複合体の量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり1.6〜1.9kgの範囲である。これと同時に、エタノールを、コンデンサーに通じる反応器オーバーヘッドラインに噴霧系を介して添加した。添加したエタノールをコンデンサーの有効な表面にできるだけ均等に分配させるために、噴霧ノズルは十分に小さいものでありかつ噴霧ノズルの位置は噴霧ノズルを介して反応器オーバーヘッドラインに適切に添加されたエタノールのほとんど全てが気化し、コンデンサーに送られると予測される程度にコンデンサーから十分に離間させた。反応器に添加したエタノールの量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり0.45〜0.6kgの範囲である。
【0019】
反応が完了した後、三フッ化ホウ素を不活化し、これにより重合化反応を停止させるアルカリ塩基[alkaline base] を粗製反応器生成物に添加した。反応停止に続いて、粗製不活化生成物を水洗浄により洗浄し、不活化三フッ化ホウ素触媒残留物及び過剰のアルカリ塩基残留物を除去した。最後に、粗製生成物を蒸留し、軽いポリマーを除去した。上記の反応条件で調製されたポリマー生成物に対して、幾つかの典型的数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)(蒸気圧浸透圧法[vapour pressure osmometry] によってキャリブレーションしたポリイソブテン標準を用いたガスクロマトグラフィーにより決定)が得られ、これらを表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
比較試験例1(本発明ではない)
上記の実施例1で使用したものと同じ反応器系を使用し、三フッ化ホウ素とエタノールの1:1のモル比の複合体を用いて、混合炭素−4ヒドロ異性化[carbon-4 hydroisomerised]ラフィネートI供給原料(1,3−ブタジエンの選択的分離後の蒸気分解装置から得られ、約36〜42%の範囲のイソブテン及び約3〜5%の範囲のブテン−1を含有する)の連続カチオン重合化を−10℃の反応温度及び15〜25分の典型的な反応滞留時間で実施した。反応器に添加する生成前の1:1の三フッ化ホウ素/エタノール複合体の量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり1.6〜1.9kgの範囲である。これと同時に、反応液体の水位より高い位置で噴霧系を介して適切に添加するのではなく、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料を反応液体の水位より低い位置で反応器に導入する前に、エタノールをヒドロ異性化ラフィネートI供給原料に添加した。反応器に添加したエタノールの量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり0.45〜0.6kgの範囲である。
【0022】
反応が完了した後、上記の実施例1と同じ条件において、重合化反応を停止させ、次いで処理した。上記の反応条件で調製したポリマー生成物に対して、幾つかの典型的数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)(蒸気圧浸透圧法[vapour pressure osmometry] によってキャリブレーションしたポリイソブテン標準を用いたガスクロマトグラフィーにより決定)が得られ、これらを表3に示す。
【表3】
【0023】
表2及び3の結果は、エタノールの噴霧をコンデンサーの有効な表面を被覆し得るような方法で反応液体の水位より高い位置で反応器に導入した場合に製造された生成物に対して、生成物の分子量分布は顕著に狭いものであることを示している。この発見は、図1(a)並びに図1(b)において更に示されている。図1(a)は、実施例1の試料の1つ、即ちエタノールを反応液体の水位より高い位置で噴霧系を介して反応器に添加した場合に調製されるポリマーに対するGPCトレース[trace] である。図1(b)は、比較試験例1の試料の1つ、即ち供給原料を反応液体の水位より低い位置で反応器に導入する前に、エタノールを供給原料に添加した場合に調製されるポリマーに対するGPCトレースである。図1(a)において、Mnは966、Mwは1392であり、Mw/Mn(生成物の分子量分布)は1.44である。図1(b)において、Mnは925、Mwは1635であり、Mw/Mn(生成物の分子量分布)は1.77である。図1(b)において、エタノールを供給原料に添加した場合に製造されるポリマー生成物が「高分子量テール[high molecular weight tail]」を有する[A]ことが示唆され、図1(a)において、エタノールがコンデンサーの有効な表面を被覆し得るような方法で反応液体の水位より高い位置で反応器に導入した場合に調製されるポリマー試料ではこの特徴は存在しないことが示唆され得る。
【0024】
実施例2
コンデンサーを備えた連続攪拌タンク沸騰液体反応器を使用し、三フッ化ホウ素とエタノールの1:1のモル比の複合体を用いて、混合炭素−4ヒドロ異性化[carbon-4 hydroisomerised]ラフィネートI供給原料(1,3−ブタジエンの選択的分離後の蒸気分解装置から得られ、約36〜42%の範囲のイソブテン及び約3〜5%の範囲のブテン−1を含有する)の連続カチオン重合化を−5℃の反応温度及び15〜25分の典型的な反応滞留時間で実施した。反応器に添加する生成前の1:1の三フッ化ホウ素/エタノール複合体の量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり1.5〜2.1kgの範囲である。これと同時に、2−プロパノールを、コンデンサーに通じる反応器オーバーヘッドラインに噴霧系を介して添加した。添加した2−プロパノールをコンデンサーの有効な表面にできるだけ均等に分配させるために、噴霧ノズルは十分に小さいものでありかつ噴霧ノズルの位置は噴霧ノズルを介して反応器オーバーヘッドラインに適切に添加された2−プロパノールのほとんど全てが気化し、コンデンサーに送られると予測される程度にコンデンサーから十分に離間させた。反応器に添加した2−プロパノールの量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり0.24〜0.34kgの範囲である。
【0025】
反応が完了した後、三フッ化ホウ素を不活化し、これにより重合化反応を停止させるアルカリ塩基[alkaline base] を粗製反応器生成物に添加した。反応停止に続いて、粗製不活化生成物を水洗浄により洗浄し、不活化三フッ化ホウ素触媒残留物及び過剰のアルカリ塩基残留物を除去した。最後に、粗製生成物を蒸留し、軽いポリマーを除去した。上記の反応条件で調製されたポリマー生成物に対して、幾つかの典型的数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)(蒸気圧浸透圧法[vapour pressure osmometry] によってキャリブレーションしたポリイソブテン標準を用いたガスクロマトグラフィーにより決定)が得られ、これらを下記の表4に示す。
【0026】
【表4】
【0027】
比較試験例2(本発明ではない)
上記の実施例2で使用したものと同じ反応器系を使用し、三フッ化ホウ素とエタノールの1:1のモル比の複合体を用いて、混合炭素−4ヒドロ異性化[carbon-4 hydroisomerised]ラフィネートI供給原料(1,3−ブタジエンの選択的分離後の蒸気分解装置から得られ、約36〜42%の範囲のイソブテン及び約3〜5%の範囲のブテン−1を含有する)の連続カチオン重合化を−5℃の反応温度及び15〜25分の典型的な反応滞留時間で実施した。反応器に添加する生成前の1:1の三フッ化ホウ素/エタノール複合体の量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり2.1kgである。これと同時に、反応液体の水位より高い位置で噴霧系を介して適切に添加するのではなく、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料を反応液体の水位より低い位置で反応器に導入する前に、2−プロパノールをヒドロ異性化ラフィネートI供給原料に添加した。反応器に添加した2−プロパノールの量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり0.4kgである。
【0028】
反応が完了した後、上記の実施例2と同じ条件において、重合化反応を停止させ、次いで処理した。上記の反応条件で調製したポリマー生成物に対して、幾つかの典型的数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)(蒸気圧浸透圧法[vapour pressure osmometry] によってキャリブレーションしたポリイソブテン標準を用いたガスクロマトグラフィーにより決定)が得られ、これらを表5に示す。
【表5】
【0029】
表4及び5の結果は、2−プロパノールの噴霧がコンデンサーの有効な表面を被覆し得るような方法で反応液体の水位より高い位置で反応器に導入した場合に製造される生成物に対して、生成物の分子量分布は顕著に狭くなることを示している。この発見は、図2(a)並びに図2(b)において更に示されている。図2(a)は、実施例1の試料の1つ、即ち2−プロパノールが反応液体の水位より高い位置で噴霧系を介して反応器に添加した場合に調製されるポリマーに対するGPCトレース[trace] である。図2(b)は、比較試験例1の試料の1つ、即ち供給原料を反応液体の水位より低い位置で反応器に導入する前に、2−プロパノールを供給原料に添加した場合に調製されるポリマーに対するGPCトレースである。図2(a)において、Mnは1039、Mwは1517であり、Mw/Mn(生成物の分子量分布)は1.46である。図2(b)において、Mnは1027、Mwは1981であり、Mw/Mnは1.93である。図2(b)において、2−プロパノールが供給原料に添加した場合に製造されるポリマー生成物が「高分子量テール[high molecular weight tail]」を有する[B]ことが示唆され、図1(a)において、コンデンサーの有効な表面を被覆し得るような方法で2−プロパノールを反応液体の水位より高い位置で反応器に導入した場合に調製されるポリマー試料ではこの特徴は存在しないことが示唆され得る。
【0030】
実施例3
コンデンサーを備えた連続攪拌タンク沸騰液体反応器を使用し、三フッ化ホウ素とエタノールの1:1のモル比の複合体を用いて、混合炭素−4ヒドロ異性化[carbon-4 hydroisomerised]ラフィネートI供給原料(1,3−ブタジエンの選択的分離後の蒸気分解装置から得られ、約36〜42%の範囲のイソブテン及び約3〜5%の範囲のブテン−1を含有する)の連続カチオン重合化を−12℃の反応温度及び15〜25分の典型的な反応滞留時間で実施した。反応器に添加する生成前の1:1の三フッ化ホウ素/エタノール複合体の量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり1.6kgである。これと同時に、2−プロパノールを、コンデンサーに通じる反応器オーバーヘッドラインに噴霧系を介して添加した。添加した2−プロパノールをコンデンサーの有効な表面にできるだけ均等に分配させるために、噴霧ノズルは十分に小さいものでありかつ噴霧ノズルの位置は噴霧ノズルを介して反応器オーバーヘッドラインに適切に添加された2−プロパノールのほとんど全てが気化し、コンデンサーに送られると予測される程度にコンデンサーから十分に離間させた。反応器に添加した2−プロパノールの量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり0.34kgである。
【0031】
反応が完了した後、三フッ化ホウ素を不活化し、これにより重合化反応を停止させるアルカリ塩基[alkaline base] を粗製反応器生成物に添加した。反応停止に続いて、粗製不活化生成物を水洗浄により洗浄し、不活化三フッ化ホウ素触媒残留物及び過剰のアルカリ塩基残留物を除去した。最後に、粗製生成物を蒸留して未反応C4モノマーを除去し、次いで減圧蒸留して軽いポリマーを除去した。上記の反応条件で調製されたポリマー生成物に対して、幾つかの典型的数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)(蒸気圧浸透圧法[vapour pressure osmometry] によってキャリブレーションしたポリイソブテン標準を用いたガスクロマトグラフィーにより決定)が得られ、これらを表6に示す。
【0032】
【表6】
【0033】
比較試験例3(本発明ではない)
上記の実施例2で使用したものと同じ反応器系を使用し、三フッ化ホウ素とエタノールの1:1のモル比の複合体を用いて、混合炭素−4ヒドロ異性化[carbon-4 hydroisomerised]ラフィネートI供給原料(1,3−ブタジエンの選択的分離後の蒸気分解装置から、約36〜42%の範囲のイソブテン及び約3〜5%の範囲のブテン−1を含有)の連続カチオン重合化を−12℃の反応温度及び15〜25分の典型的な反応滞留時間で実施した。反応器に添加する生成前の1:1の三フッ化ホウ素/エタノール複合体の量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり1.4kgである。これと同時に、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料を反応液体の水位より低い位置で反応器に導入する前に、2−プロパノールをヒドロ異性化ラフィネートI供給原料に添加した。反応器に添加した2−プロパノールの量は、ヒドロ異性化ラフィネートI供給原料1トン当たり0.3kgである。
【0034】
反応が完了した後、上記の実施例2と同じ条件において、重合化反応を停止させ、次いで処理した。上記の反応条件で調製したポリマー生成物に対して、幾つかの典型的数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)(蒸気圧浸透圧法[vapour pressure osmometry] によってキャリブレーションしたポリイソブテン標準を用いたガスクロマトグラフィーにより決定)が得られ、これらを表7に示す。
【0035】
【表7】
【0036】
表6及び7の結果は、2−プロパノールの噴霧がコンデンサーの有効な表面を被覆し得るような方法で反応液体の水位より高い位置で反応器に導入される場合に製造された生成物に対して、生成物の分子量分布は顕著に狭くなることを示している。この発見は、図3(a)並びに図3(b)において更に示されている。図3(a)は、実施例3の試料の1つ、即ち2−プロパノールを反応液体の水位より高い位置で噴霧系を介して反応器に添加した場合に調製されるポリマーに対するGPCトレース[trace] である。図3(b)は、比較試験例1の試料の1つ、即ち供給原料を反応液体の水位より低い位置で反応器に導入する前に、2−プロパノールを供給原料に添加した場合に調製されるポリマーに対するGPCトレースである。図3(a)において、Mnは1558、Mwは2243であり、Mw/Mn(生成物の分子量分布)は1.44である。図3(b)において、Mnは1520、Mwは2376であり、Mw/Mnは1.56である。図2(b)において、2−プロパノールが供給原料に添加される場合に製造されるポリマー生成物が「高分子量テール[high molecular weight tail]」を有する[C]ことが示唆され、図3(a)において、2−プロパノールがコンデンサーの有効な表面を被覆し得るような方法で反応液体の水位より高い位置で反応器に導入した場合に調製されるポリマー試料ではこの特徴は存在しないことが示唆され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1並びに比較試験例1における生成物の分子量の分布を示すグラフである。
【図2】実施例2並びに比較試験例2における生成物の分子量の分布を示すグラフである。
【図3】実施例3並びに比較試験例3における生成物の分子量の分布を示すグラフである。
Claims (13)
- 接続したコンデンサーを備える反応器中の液相中における三フッ化ホウ素からなる触媒の存在下でのイソブテンを含む炭化水素供給原料の液相カチオン重合化過程中に生成されるポリマーの分子量分布の制御方法であって、前記方法は、反応器中の液体の水位より高い位置で電子供与体を導入してコンデンサー中でのイソブテンと遊離した三フッ化ホウ素気体との反応を最小限に抑え、これにより所望しないポリマーの形成を最小限に抑えることからなるポリマーの分子量分布の制御方法。
- 電子供与体を反応器の液体の水位より高い位置で導入してコンデンサーの表面に分配させる請求項1記載の方法。
- 炭化水素供給原料中のイソブテンの量が少なくとも10重量%である請求項1又は2記載の方法。
- 電子供与体を1個以上のノズルを介して反応器の液体の水位より高い位置で導入する請求項1〜3のいずれか一つの項に記載の方法。
- コンデンサー及びこれに接続したパイプ中で発生すると考えられる遊離した三フッ化ホウ素気体1モル当たり少なくとも2モルの電子供与体を液体の水位より高い位置で反応器に導入する請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の方法。
- コンデンサー及びこれに接続したパイプ中で発生すると考えられる遊離した三フッ化ホウ素気体1モル当たり少なくとも3モルの電子供与体を液体の水位より高い位置で反応器に導入する請求項1〜5のいずれか一つの項に記載の方法。
- 電子供与体の小滴及び/又は蒸気が、コンデンサーに達する前に凝縮しバルク反応液体中に滴下することなく、コンデンサー及びこれに接続するパイプの表面に達してその表面を完全に被覆するように、ノズルを通じて電子供与体を反応器に導入する請求項1〜6のいずれか一つの項に記載の方法。
- 電子供与体が、アルコール、直鎖、枝分かれ鎖又は環状エーテル、エステル、酸、アルデヒド、ケトン、アミン、アミド及びアミノ−アルコールよりなる群から選択される1種以上である請求項1〜7のいずれか一つの項に記載の方法。
- 電子供与体が第1もしくは第2アルコールである請求項8記載の方法。
- 電子供与体が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール又は2−ブタノールから選択される請求項9記載の方法。
- 電子供与体がアルキル第3ブチルエーテルである請求項8記載の方法。
- 電子供与体が、メチル第3ブチルエーテル、エチル第3ブチルエーテル、プロピル第3ブチルエーテル、ブチル第3ブチルエーテル、イソプロピル第3ブチルエーテル又は第2ブチル−第3ブチルエーテルから選択される請求項11記載の方法。
- 生成されるポリマーが350〜5000の範囲の数平均分子量を有する請求項1〜12のいずれか一つの項に記載の方法。
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