JP4302312B2 - 一方向クラッチ - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置、特にスターターの回転動力をクランク軸に伝達する装置における一方向クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来の車両用動力伝達装置の一例を示す横断面図(図4のIII−III矢視断面図)、図4は図3のIV−IV矢視断面図である。
【0003】
これらの図において、内燃機関のクランク軸01のまわりにブッシュ02を介してボス03が回転自在に取付けられており,このボス03の端部にドリブンギヤ017が溶接結合されている。このドリブンギヤ017はドライブギヤ018と噛合っていて,図示しないスターターの回転動力が伝達される。
【0004】
また、上記ボス03を囲んで半径方向に間隔をへだててクラッチアウター05が配されている。そして、これら両部材03、05は、クラッチアウター05に形成された空間08内に保持された円柱状の転動体04を介して互いに連結され、一方向クラッチを形成する。
【0005】
この一方向クラッチ部について詳述すると、空間08の最奥部、すなわち転動体04が接するクラッチアウター05内周面に、カム面05aが形成されている。また、クラッチアウター05の外周から空間08内までスプリングホルダー穴012が穿設されており、このスプリングホルダー穴012にスプリングストッパー013が圧入されている。そしてそのスプリングストッパー013と転動体04との間にスプリング010とスプリングホルダー011がはめ込まれ、転動体04を図3の反時計方向に付勢している。なお014は板金製のカバーである。
【0006】
上記クラッチアウター05には、ジェネレーターのマグネットローター022にリベット021で固定されたフランジ020が、ボルト019によって取付けられており、このフランジ020の中心ボス部は前記クランク軸01に回転不能に固着されている。
【0007】
このような車両用動力伝達装置において、図示しないスターターによりドライブギヤ018が回転駆動され、このドライブギヤ018と噛合うドリブンギヤ017、更にはこのドリブンギヤ017と溶接結合されたボス03が図3の矢印P方向(反時計方向)に回転すると、転動体04もスプリング010により付勢されて反時計方向に移動する。そうすると転動体04は、ボス03の外周面とクラッチアウター05のカム面05aとの間に形成されたくさび状の空間で、ボス03とクラッチアウター05に緊密に押しつけられるから、ボス03の回転はそのままクラッチアウター05に伝達される。そしてクラッチアウター05の回転は更にフランジ020を介してクランク軸01やジェネレーターのマグネットローター022にも伝達される。
【0008】
一方、ボス03が図3の矢印Q方向(時計方向)に回転すると、転動体04はスプリング010の力に抗して時計方向に移動する。そうすると転動体04は、ボス03の外周面とクラッチアウター05のカム面05aのいずれとも、緊密には当接しなくなり、ボス03の回転はクラッチアウター05に伝達されない。ボス03に対してクランク軸01、したがってクラッチアウター05が、相対的に反時計方向に回転した場合も同様である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の車両用動力伝達装置にあっては、一方向クラッチのクラッチアウター05にジェネレーターのマグネットローター022を専用のフランジ020を介して取付けるので、部品点数が多く,軸方向の寸法が広くなる上、レイアウト上の制約も大きかった。加えてドリブンギヤ017をボス03の方に固着するので、軸方向寸法が更に大きくなっていた。
【0010】
また、一方向クラッチのクラッチアウター05のカム面05aは強度と硬度が要求されるが、それを満足する材料は高価であり、加工も困難であった。更にスプリングホルダー穴012はクラッチアウター05の外周側からしか穿設できないから、スプリング010を止めるためにスプリングストッパー013を圧入する必要があり、手数がかかっていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、ボスと該ボスを囲んで半径方向に間隔をへだてて配されたクラッチアウターとの間に保持された転動体を介して、上記ボスと上記クラッチアウターとが互いに連結され、上記クラッチアウターが軸心側のリテナーと該リテナーの外側に接するアウターボディとから成り、上記アウターボディには内周の一部にカム面が形成されるとともに、上記リテナーが回転軸線と交わる分割面により2分割され、その分割面に沿って、上記転動体を収容する空間と、該転動体を付勢するスプリングを保持するスプリングホルダー穴とが形成され、上記スプリングホルダー穴のスプリングに当接する底は、上記アウターボディの内周面に形成され、上記リテナーの外周面が、上記分割面から両側端面に向かって徐々に直径が増加する円錐台状に形成されるとともに、それに対応して上記アウターボディの内周面が2つの円錐台面に形成されたたことを特徴とする一方向クラッチである。
【0012】
請求項1記載の発明は前記のとおり構成され、スターターの回転により駆動される動力伝達部材がクラッチアウターと一体に構成されるので、軸方向の寸法が格段に小さくなる。また、ボスがクランク軸に回転不能に取付けられるので、部品点数が少なく、またジェネレーターのレイアウトが自由になる。
【0014】
請求項記載の発明では、クラッチアウターが軸心側のリテナーと該リテナーの外側に接するアウターボディとから成り、上記アウターボディには内周の一部にカム面が形成されているから、カム面が形成されるアウターボディのみを強度と硬度が大きい高価な材料で製作するとともに、転動体を収容・保持する役割だけでよいリテナーの方には、安価でかつ加工容易な材料を用い、また簡略設計するなどして、コストを節約するとともに、軽量化することができる。また、アウターボディの加工の主要部は主として浅いカムとなるから、加工費は更に低減される。
【0015】
請求項記載の発明ではまた、転動体を付勢するスプリングホルダー穴の底を、アウターボディの内周面に形成させるから、従来のようにスプリングホルダー穴を外方から穿設して別体のスプリングストッパーを圧入するなどの工程を廃することができる。
【0016】
請求項1の発明によれば、上記リテナーが回転軸線と交わる分割面により2分割され、その分割面に沿って、上記転動体を収容する空間と、該転動体を付勢するスプリングを保持するスプリングホルダー穴とが形成されたから、転動体を収容する空間と、その転動体を付勢するスプリングのスプリングホルダー穴の加工が容易となる。
【0017】
また、請求項1記載の一方向クラッチにおいては、上記リテナーの外周面が、上記分割面から両側端面に向かって徐々に直径が増加する円錐台状に形成されるとともに、それに対応して上記アウターボディの内周面が2つの円錐台面に形成されたことにより、クラッチアウターを組み立てる際、分割されたリテナーの一方、アウターボディ、リテナーの他方の順に重ねていけば、極めて容易に位置決めができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態を示す一部切欠ぎ側面図(図2のI−I矢視図)、図2は図1のII−II矢視断面図であって、図1中の転動体4、スプリング10、スプリングホルダー11を取去った状態を示す。
【0019】
これらの図において、内燃機関のクランク軸1にボス3がキー2により回転不能に取付けられている。このボス3を囲んで半径方向に間隔をへだててクラッチアウター5が配されている。そして、これらボス3、クラッチアウター5の間に保持された円柱状の転動体4を介して、ボス3とクラッチアウター5が互いに連結され、一方向クラッチを形成している。
【0020】
上記クラッチアウター5は、軸心側のリテナー6とそのリテナー6の外周に接するアウターボディ7とから成る。そして、アウターボディ7の内周の一部にはカム面7aが形成されている。一方リテナー6には、上記カム面7aに対応する位置に、上記転動体4を収容する空間8が形成されている。
【0021】
本実施形態では、上記リテナー6が回転軸線9に直交する平面6cにより左リテナー6aと右リテナー6bに2分割され、ねじ15によって結合されている。そして、その分割面6cに沿って上記転動体4を収容する空間8とスプリングホルダー穴12が形成されている。更にそのスプリングホルダー穴12内にスプリング10とスプリングホルダー11が挿入され、転動体4を図1の反時計方向に付勢するようになっている。
【0022】
本実施形態ではまた、上記左リテナー6a、右リテナー6bの外周面6dが分割面6cから両側端面に向かって徐々に直径が増加する円錐台状に形成されている。そして、それに対応してアウターボディ7の内周面が2つの円錐台面を形成している。
【0023】
さらに本実施形態では、アウターボディ7の外周にドリブンギヤ7bが形成され、図示しないスターターで回転駆動されるドライブギヤ18と噛合っている。
【0024】
このような車両用動力伝達装置において、図示しないスターターによりドライブギヤ18が回転駆動され、このドライブギヤ18と噛合うドリブンギヤ7bが図1の矢印R方向(時計方向)に回転した時、転動体4はスプリング10により反時計方向に付勢されているから移動を妨げられ、ボス3の外周面とアウターボディ7のカム面7aとの間に形成されたくさび状の空間で、ボス3とアウターボディ7に緊密に押し付けられる。こうしてアウターボディ7の回転はそのままボス3に伝達され、クランク軸1が回転する。
【0025】
一方、アウターボディ7が図1の矢印S方向(反時計方向)に回転すると、転動体4はボス3の外周面とアウターボディ7のカム面7aとのいずれとも、緊密には当接しなくなり、アウターボディ7の回転はボス3、クランク軸1に伝達されない。アウターボディ7に対してクランク軸1、したがってボス3が、相対的に時計方向に回転した場合も同様である。
【0026】
こうして、スタータによるクラッチアウター5の時計方向回転はクランク軸1に伝達されるが、機関始動後のクランク軸1の時計方向回転はクラッチアウター5に伝達されない。
【0027】
本実施形態においては、ドリブンギヤ7bがボス3ではなくアウターボディ7と一体に構成されているので、従来のものと比較して、軸方向の寸法が格段に小さくなる。またボス3が直接クランク軸1に回転不能に取付けられ、従来のようなフランジ020がないので、部品点数が少なく、またジェネレーターのレイアウトが自由になる。
【0028】
本実施形態ではまた、クラッチアウター5が、内部に転動体4を収容する空間8が形成されるリテナー6と、そのリテナー6の外周に接し内周の一部にカム面7aが形成されるアウターボディ7とに分割されているので、強度と硬度が要求されるアウターボディ7のみを強固な材料で製造するとともに、転動体4を収容・保持する役割りだけを持つリテナー6の方には、例えばプラスチックのような安価でかつ加工容易な材料を使用することができる。したがってコストが節減されるばかりでなく、軽量化にも貢献できる。
【0029】
また、スプリングホルダー穴12がリテナー6内に形成され、そのスプリングホルダー穴12の底はアウターボディ7の内周面に形成されるから、従来のようにスプリングホルダー穴012を外方から穿設してスプリングストッパー013を圧入するなどの工程が不要になる。そして強固な材料から成るアウターボディ7の加工の主要部はカム面7aだけであり、空間8は加工容易な材料を使用できるリテナー6内に形成されるから、従来のようにクラッチアウター05全体から空間08を深く削り込む場合と比較すれば、加工費が格段に低減される。
【0030】
本来実施形態ではまた、リテナー6を回転軸線9に直交する平面6cにより2分割し、その分割面6cに沿って転動体4を収容する空間8とスプリング10、スプリングホルダー11を挿入するスプリングホルダー穴12とを形成するので、その点でも加工が容易となる。
【0031】
加えて本実施形態では、分割されたリテナー6a,6bの各外周面6dが分割面6cから両側端面に向かって徐々に直径が増加する円錐台状に形成され、それに対応してアウターボディ7の内周面が2つの円錐台面を形成しているので、アウターボディ7を組立てる際は、分割されたリテナー6a,6bの一方、アウターボディ7、リテナーの他方、の順に重ねてゆけば、極めて容易に位置決めができる。
【0032】
なお本実施形態においては、スターターの回転により駆動される動力伝達部材としてドリブンギヤ7bが使用されているが、これは必ずしもギヤである必要はなく、例えばスプロケットとチェーンとの組み合わせ、プーリーとベルトとの組合わせ等、場合に応じて種々のものを用いることができる。またこのドリブンギヤ7bはアウターボディ7と一体に形成されているが、アウターボディ7とドリブンギヤ7bを別々に形成した後、これらを互いに固着して一体に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の一形態を示す横断一部切欠ぎ側面図(図2のI−I矢視図)である。
【図2】図2は図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図3は従来の車両用動力伝達装置の一例を示す横断面図(図4のIII−III矢視断面図)である。
【図4】図4は図3のIV−IV矢視断面図である。
【符号の説明】
1…クランク軸、2…キー、3…ボス、4…転動体、5…クラッチアウター、6…リテナー、6a…左リテナー、6b…右リテナー、6c…分割面、6d…外周面、7…アウターボディ、7a…カム面、7b…ドリブンギヤ、8…空間、9…回転軸線、10…スプリング、11…スプリングホルダー、12…スプリングホルダー穴、15…ねじ、18…ドライブギヤ。

Claims (1)

  1. ボスと該ボスを囲んで半径方向に間隔をへだてて配されたクラッチアウターとの間に保持された転動体を介して、上記ボスと上記クラッチアウターとが互いに連結され、上記クラッチアウターが軸心側のリテナーと該リテナーの外側に接するアウターボディとから成り、上記アウターボディには内周の一部にカム面が形成されるとともに、上記リテナーが回転軸線と交わる分割面により2分割され、その分割面に沿って、上記転動体を収容する空間と、該転動体を付勢するスプリングを保持するスプリングホルダー穴とが形成され、上記スプリングホルダー穴のスプリングに当接する底は、上記アウターボディの内周面に形成され、上記リテナーの外周面が、上記分割面から両側端面に向かって徐々に直径が増加する円錐台状に形成されるとともに、それに対応して上記アウターボディの内周面が2つの円錐台面に形成されたたことを特徴とする一方向クラッチ。
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