JP4302272B2 - ヒドロシリル化反応の促進方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素化珪素化合物とアルケニル基を有する重合体とのヒドロシリル化反応に関するものであり、更に詳しくは、ヒドロシル化反応の促進方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Si−H基を有する水素化珪素化合物が、アルケニル基に付加する反応は、一般にヒドロシリル化反応とよばれている(なお、本発明のアルケニル基とは、炭素−炭素不飽和結合を有する基を表す)。
【0003】
この反応を利用する技術分野で知られている主要な問題点として、それぞれの反応条件下において、反応中に触媒の活性が低下する等の理由により、反応途中でヒドロシリル化反応の速度が低下したり、あるいは反応が停止することが挙げられる。反応速度の低下により、反応に要する時間が長くなるばかりでなく、副反応の割合が相対的に増大して所望のヒドロシリル化反応の選択性が低下することがある。高価な金属触媒の添加量を増やすことにより反応を加速することは可能であるが、反応生成物中に残留する触媒量が増えるためその後の利用にとって好ましくない場合もある(例えば高分子重合体のヒドロシリル化反応の場合は、触媒由来の黒色粉末を除去することが困難であるため、製品が黒く濁ってしまうという問題がある)。
【0004】
ヒドロシリル化反応を促進する種々の方法が知られている。例えばOnopchenko.A.ら(J.Org.Chem.,52,4118,(1987))やLewis.L.N.ら(J.Am.Chem.Soc.,112,5998,(1990))、あるいは特開平5−213972や特開平8−283339で報告されているように、白金触媒が失活した場合、触媒を再活性化する為に酸素を使用する方法が知られている。
【0005】
また、反応を促進する有効な物質についても、アセチレンアルコール類(特開平8−231563)、不飽和の第二及び第三アルコール類(特開平8−291181)、第三アルコール類(特開平8−333373)、不飽和ケトン類(特開平8−208838)、エン−イン不飽和化合物(特開平9−25281)、カルボン酸化合物(特開平11−246770)等を添加する方法が知られている。
【0006】
更に、Karsted触媒の配位子(テトラメチルビニルシロキサン)をメチルナフトキノンなどに変換し、活性を高めた白金触媒を用いる方法(Jean Fisherら、Chem.Eur.J.,4,2008-2017,(1998))が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルケニル基を含有する有機重合体のヒドロシリル化反応に関するものである。低分子化合物とは異なって、有機重合体等の高分子化合物の反応では反応活性の低下が起こりやすいという問題がある(本発明では、反応活性が低下するとは、反応速度が小さい又は反応収率が低い又は触媒が失活するという現象が起こることをいう。)。特に、不飽和基濃度が低い場合、反応液の粘性が高い場合、末端オレフィンよりも活性が低い内部オレフィンの反応をおこなう場合に反応活性の低下が起こりやすい。あるいは反応原料や溶媒に反応阻害物質が含まれる場合にも反応活性が低下する傾向がある。さらに反応活性が低下する系では、反応時間を長くすると、副反応物が多く生成する傾向がある。
【0008】
ヒドロシリル化により、メトキシシリル基等の加水分解性シリル基を重合体に導入する反応は重要である。加水分解性シリル基を有する重合体は、重合体同士のシラノール縮合反応により高分子量化して架橋体を形成することが可能であり、このような架橋性の重合体は有用である。重合体に加水分解性シリル基を導入するヒドロシリル化反応の反応率が低下すれば、最終的には架橋点密度が低下して、架橋体の強度が低下してしまう。
【0009】
反応収率を上げるためには高価な貴金属触媒や珪素化合物を多量に用いる方法もあるが、経済的に好ましくない。しかし、従来から知られているヒドロシリル化反応の促進方法は完全なものではなく、問題を十分に解決できないことがあった。
【0010】
また、ヒドロシリル化反応をおこなう際には、可燃性物質取り扱いの安全性の観点から反応器気相部は窒素やヘリウムなどの不活性ガスの存在下で実施することがある。しかし、反応器気相部を窒素やヘリウムなどの不活性ガスに置換した反応条件下でヒドロシリル化反応をおこなった場合には、反応速度が低下する場合があるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、ヒドロシリル化反応を、より効果的に促進するための新たな方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが鋭意検討をおこなった結果、キノン化合物の存在下でヒドロシリル化反応を行なうことにより、低酸素分圧下あるいは酸素非存在下で、ヒドロシリル化反応が促進されることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
【発明の実施の形態】
すなわち本発明は、(A)一般式(1):
abcSi (1)
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはトリオルガノシロキシ基であり、aが2以上の場合Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Xはハロゲン、アルコキシ基、アシロキシ基または水酸基であり、bが2以上の場合Xはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。a、bは0〜3の整数、cは1〜3の整数で、a+b+c=4となる。)
で表される珪素化合物と、
(B)アルケニル基を含有する重合体とのヒドロシリル化反応を、
(C)第8族金属を含む触媒、および
(D)キノンの存在下
で行なうことを特徴とするヒドロシリル化反応方法に関する。
【0014】
本発明を実施する具体的な様態について詳しく説明する。
【0015】
本発明における最大の特徴はヒドロシリル化反応系中にキノン化合物を存在させることである。Jean Fisherら(Chem.Eur.J.,4,2008-2017,(1998))はKarsted触媒の配位子(テトラメチルビニルシロキサン)を予めPt触媒と当モルの化合物を用いて配位子を変換させているが、本発明は単にキノン化合物を反応系中添加するだけで良い。キノン化合物としては、具体的には、1、4−ベンゾキノン、2−メチル−1、4−ベンゾキノン、ナフトキノン、メナキノン(2−メチルナフトキノン)等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0016】
キノン化合物を反応系へ添加する際には、キノン化合物をそのまま加えても良いが、キノン化合物を溶媒で均一な希釈溶液にすれば、取扱を容易にでき、反応液全体に一様に分散させることもでき、さらに好都合である。また、添加方法は一括、分割、連続のどの方法でも良い。
【0017】
本発明において、キノン化合物を種々の溶媒に溶解希釈する場合、好ましい溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素、アルコール、グリコール類、エーテル類、エステル類等を挙げることができる。
【0018】
キノン化合物の添加量は、通常、触媒量に対してモル比で5〜5×108倍であるが、10〜5×107倍が好ましく、100〜5×106倍がより好ましく、500〜5×105倍がさらに好ましい。5倍よりも少ないと有機重合体のヒドロシリル化の反応活性が低下し、5×108倍よりも多くしてもその効果は同じである。また、アルケニル基を含有する重合体のアルケニル基に対するキノン化合物の添加量については、通常、アルケニル基量に対してモル比で0.00001〜100倍であるが、0.0001〜10倍が好ましく、0.001〜1倍がさらに好ましい。Jean Fisherら(Chem.Eur.J.,4,2008-2017,(1998))のように触媒と等モルのキノン化合物のように添加量が少ないと本発明の効果が十分に達成されない場合がある。
【0019】
本発明において一般式(1)で表される珪素化合物としては、従来知られている化合物を特に制限無く用いることが出来るが、具体的には例えば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメチルシロキシジクロロシランなどのハロゲン化シラン類、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、メトキシジメチルシラン、ジメトキシフェニルシラン、1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチル−1,1−ジメトキシテトラシロキサンなどのアルコキシシラン類、メチルジアセトキシシラン、トリメチルシロキシメチルアセトキシシランなどのアシロキシシラン類、ジメチルシラン、トリメチルシロキシメチルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンなどの分子中にSi−H結合を2個以上有するハイドロシラン類、メチルジ(イソプロペニルオキシ)シランなどのアルケニルオキシシラン類などが挙げられ、これらの中では、メチルジクロロシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0020】
本発明の一般式(1)で表される珪素化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、通常、アルケニル基1モルに対して0.1〜20モルであるが、0.5〜3モルであることが経済的にも好ましい。
【0021】
本発明に使用する(B)成分は、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含有し、(A)成分とのヒドロシリル化反応が可能なヒドロシリル化活性のあるアルケニル基を有していれば特に制限はなく、各種の重合体を用いることができる。1分子中に存在するアルケニル基の数は少なくとも1.1個以上であり、10.0個程度まで有するものが好ましい。このアルケニル基の具体的な例としては、ビニル基、アリル基などであり、アリルエーテル基として存在するものでも良く、分子末端にあるものでも分子中にあるものでも良い。重合体の数平均分子量は500〜200,000であるものが好適に使用できるが、好ましくは1,000〜100,000であり、特に5,000〜50,000である。また、重合体の製造方法について特に制限はなく、任意の製造方法で製造された重合体がすべて有効に適用できる。なお、本発明における数平均分子量は、クロロホルムを移動相とするGPC(ポリスチレン換算値)により求めることができる。
【0022】
本発明の(B)成分の重合体としては、特に制限はないが、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、炭化水素系重合体、飽和炭化水素系重合体を挙げることができ、これらの中ではポリエーテル、ポリイソブチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンが好ましい。
【0023】
本発明に使用する(B)成分の重合体を構成する主鎖は、線状でも、枝分かれ状でも良く、特に制限はないが、不飽和単量体、特に不飽和炭化水素の重合によって形成されたものが好ましい。本発明方法の目的物である官能基含有重合体の工業的利用価値を考慮すると、主鎖が飽和炭化水素で構成されていることが耐熱性や耐候性の面から好ましい。その中でも主鎖がイソブチレンに基づく繰り返し単位を有するポリイソブチレンや水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレンで構成されているものが特に好ましい。
【0024】
本発明で使用される第8族金属を含む触媒は、通常、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、プラチナ(白金)を有するものであり、これらの第8族金属の単体、金属塩あるいは有機化合物との錯体として用いられる。具体的には、例えば白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させた担体上の白金金属、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体などの白金化合物、白金−オレフィン錯体[例えばPt(CH2=CH22(PPh3)、Pt(CH2=CH22Cl2]、白金−ビニルシロキサン錯体[Pt{(vinyl)Me2SiOSiMe2(vinyl)}、Pt{Me(vinyl)SiO}4]、白金−ホスフィン錯体[Ph(PPh34、Pt(PBu34]、白金−ホスファイト錯体[Pt{P(OPh)34]等の白金錯体等が好ましい。ジカルボニルジクロロ白金やAshbyの米国特許第3159601および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金−アルコラート触媒も好ましい。さらに、Modicの米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も有効である。
【0025】
これらの触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アセチルアセトナート錯体、白金−ビニルシロキサン錯体は、比較的反応活性が高いため好ましい。
【0026】
触媒の使用量には特に制限はないが、通常、アルケニル基1モルに対して白金触媒を10-1から10-8モル使用し、10-3から10-6モルの範囲で使用することが好ましい。触媒の量が10-8モルより少ない場合は、ヒドロシリル化反応が十分に進行しないことがある。また触媒量が多すぎると、原料コストの増大や、触媒残さの混入により製品の着色や透明度の低下などの問題が発生する。
【0027】
本発明においては、触媒を種々の溶媒に溶解し希釈することにより、触媒を安定化し、触媒の取扱を容易にすることが好ましい。好ましい溶媒として、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素、アルコール、グリコール類、エーテル類、エステル類等を挙げることができる。
【0028】
本発明のヒドロシリル化反応は無溶媒系でも、溶媒存在下でもおこなうことができる。ヒドロシリル化反応の溶媒としては、通常、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、エステル類を用いることができるが、ヘプタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いることが好ましい。
【0029】
本発明においては、硫黄化合物を存在下でヒドロシリル化反応をおこなうことが好ましい。
【0030】
本発明において、ヒドロシリル化反応をおこなう際の反応器気相部は、窒素やヘリウムなどの不活性ガスのみから成ってもよいし、酸素等が存在してもよい。
【0031】
ヒドロシリル化反応をおこなう際には、可燃性物質取り扱いの安全性の観点から反応器気相部は窒素やヘリウムなどの不活性ガスの存在下で実施することがある。しかし、反応器気相部を窒素やヘリウムなどの不活性ガスに置換した反応条件下でヒドロシリル化反応をおこなった場合には、反応速度が低下する場合があるという問題がある。気相部に酸素が存在すると、ヒドロシリル化が促進されることがある。本発明では、反応器気相部の酸素濃度を、爆発性混合組成を与えない範囲に設定することにより、酸素存在下で反応を促進しつつ、安全にヒドロシリル化反応をおこなう場合にも使用が可能である。反応器気相部の酸素濃度は、通常0.1%以上であるが、0.5〜10%とすることが好ましい。
【0032】
さらに本発明で気相部に酸素を導入する場合には、反応溶媒や可塑剤が酸素により酸化されることを抑えるために、酸化防止剤の存在下でヒドロシリル化反応をおこなうことができる。酸化防止剤としては、ラジカル連鎖禁止剤の機能を有するフェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス{メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどを用いることができる。同様のラジカル連鎖禁止剤としてアミン系酸化防止剤、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどを用いることも出来るがこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明のヒドロシリル化反応温度は、通常、30℃以上200℃以下であり、好ましくは、50℃以上150℃以下に設定することができる。
【0034】
【実施例】
次に本発明の方法の実施例をあげて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
特開昭63−105005の方法に準じて製造されたアリル基末端ポリイソブチレン(分子量15000、重合体1分子当たりのアリル基数が2.0)60gに酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを0.006g添加した。反応器気相部を真空ポンプを用い、気相部の酸素を完全に除去し、窒素で置換した。窒素気流下、反応系を90℃にし、1、4−ベンゾキノン0.13gをトルエン1gで溶解し反応器に添加し、続いて触媒として白金ビニルシロキサン錯体(8.31×10-6mmol/μLトルエン溶液)を4.86μLを反応器に添加した。5分後ジメトキシメチルシラン2.1gを反応器に添加した。ジメトキシメチルシランを添加して反応を開始してから5時間混合攪拌を継続した。
【0035】
アリル基のヒドロシリル化反応転化率を評価するために反応液のサンプルを採取して赤外分光光度計によってアリル官能基の濃度を測定した結果、残存アリル基は検出されず従って反応転化率は100%であった。このサンプルについて1H−NMR測定でジメトキシメチルシラン導入率を測定したところ、ポリマー1分子当たり1.6個のシリル基が導入されていた。後述する比較例1に比べ反応速度が大幅に改善されたことがわかる。
【0036】
こうして調整されたシリル基末端ポリマーを縮合架橋させて定型(JIS3号ダンベル:幅5mm×厚さ2mm)のゴム状硬化物を作製し、伸張試験によって硬化物モジュラスを評価した。縮合架橋はシリル基末端ポリマーと可塑剤PS−32の混合物重量100に対して水0.67及びオクチル酸錫2.5の重量比率で混合して50℃にて20時間かけて硬化させた(ここで、シリル基末端ポリマーと可塑剤PS−32の混合比は、重量比で100:50である)。このゴム状硬化物の引っ張り試験をして、50%伸張における引っ張り応力は1.4kg/cm2であった。
実施例2
実施例1と同様の条件にて、ただし1、4-ベンゾキノンを0.0325gとしてヒドロシリル化反応を6時間実施した。
【0037】
実施例1と同様に反応液のサンプルを採取して残存アリル官能基の濃度を測定した結果、反応転化率は100%であった。このサンプルについて、ジメトキシメチルシラン導入率を測定したところ、ポリマー1分子当たり1.5個のシリル基が導入されていた。こうして調整されたシリル基末端ポリマーを縮合架橋させて定型のゴム状硬化物を作製し、伸張試験によって硬化物モジュラスを評価した。このゴム状硬化物の引っ張り試験をして、50%伸張における引っ張り応力は1.3kg/cm2であった。
比較例1
実施例1と同様の条件にて、ただし1、4-ベンゾキノンを添加すること無くヒドロシリル化反応を5時間実施した。
【0038】
実施例1と同様に反応液のサンプルを採取して残存アリル官能基の濃度を測定した結果、反応転化率は5%であった。
【0039】
さらにヒドロシリル化を継続して反応開始から10時間後に反応液のサンプルを採取して残存アリル官能基の濃度を測定した結果、反応転化率は10%であった。
実施例3
実施例1と同様の条件にて、ただし反応器の気相部分には酸素を5vol%含有する窒素としてヒドロシリル化反応を5時間実施した。
【0040】
実施例1と同様に反応液のサンプルを採取して残存アリル官能基の濃度を測定した結果、反応転化率は100%であった。このサンプルについて、ジメトキシメチルシラン導入率を測定したところ、ポリマー1分子当たり1.5個のシリル基が導入されていた。こうして調整されたシリル基末端ポリマーを縮合架橋させて定型のゴム状硬化物を作製し、伸張試験によって硬化物モジュラスを評価した。このゴム状硬化物の引っ張り試験をして、50%伸張における引っ張り応力は1.3kg/cm2であった。
【0041】
本発明の方法では、実施例1、2で示したように、1、4−ベンゾキノンを存在させることで、窒素下でヒドロシリル化反応を行うことが可能となった。比較例1では、ヒドロシリル化反応は10時間で10%しか反応が進まなかった。これによって本発明方法の反応促進効果が示されている。また、Jean Fisherら(Chem.Eur.J.,4,2008-2017,(1998))は、酸素が1%存在するとヒドロシリル化反応の促進効果が少ないと述べているが、実施例3で示したように酸素が5%存在しても何ら促進効果に影響しないことが分かる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の方法でアルケニル基を有する重合体のヒドロシリル化を行うことによって従来の反応促進法では不十分であった系について、窒素下で十分な反応速度を得ることが可能になった。

Claims (8)

  1. (A)一般式(1):
    abcSi (1)
    (式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはトリオルガノシロキシ基であり、aが2以上の場合Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Xはハロゲン、アルコキシ基、アシロキシ基または水酸基であり、bが2以上の場合Xはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。a、bは0〜3の整数、cは1〜3の整数で、a+b+c=4となる。)
    で表される珪素化合物と、
    (B)アルケニル基を含有する重合体とのヒドロシリル化反応を、
    (C)第8族金属を含む触媒、および
    (D)キノン化合物の存在下
    で行なうことを特徴とするヒドロシリル化反応方法。
  2. (B)アルケニル基を含有する重合体の主鎖が飽和炭化水素で構成される重合体である請求項1記載の反応方法。
  3. (B)アルケニル基を含有する重合体の主鎖を構成する繰り返し単位がイソブチレンに起因する単位である重合体である請求項1に記載の反応方法。
  4. (B)アルケニル基を含有する重合体の主鎖がポリエーテルで構成された重合体である請求項1に記載の反応方法。
  5. (B)アルケニル基を含有する重合体が、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレンである請求項1に記載の反応方法。
  6. 硫黄化合物の存在下で行なう請求項1〜5のいずれか1項に記載の反応方法。
  7. ヒドロシリル化反応を、酸化防止剤の存在下でおこない、ヒドロシリル化反応時の気相部に酸素を0.1%以上含有させる請求項1〜6のいずれか1項に記載の反応方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の反応方法を使用する、アルケニル基を含有する有機重合体のヒドロシリル化反応による加水分解性シリル基を有する重合体の製造方法。
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