以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態の電磁波透過性部品の正面図である。図2は、図1に示す電磁波透過性部品が車両のフロントグリルに設置された状態における正面図である。図3は、図1に示す電磁波透過性部品を備えた車両の概念図である。図4は、図1に示す電磁波透過性部品の線4−4の断面図である。図5は、図4に示す電磁波透過性部品の点線5で囲まれた部分の拡大図である。
図6は、図1に示す電磁波透過性部品の電磁波の透過状態を示す概念図である。図7は、本発明に係る第2実施態様の電磁波透過性部品の断面図である。図8は、図7に示す電磁波透過性部品の点線8で囲まれた部分の拡大図である。図9は、本発明に係る第3実施態様の電磁波透過性部品の断面図である。図10は、本発明に係る第4実施態様の電磁波透過性部品の断面図である。図11は、図10に示す電磁波透過性部品の点線11で囲まれた部分の拡大図である。図12は、従来技術の電磁波透過性部品の断面図である。
図1に示すように、電磁波透過性部品100は、第1ベース層110と構造体120とを有する。第1ベース層110は、略板状の部材を有する。第1ベース層110の一方の表面110aには、凹部113が形成されている。構造体120は、これの一部が凹部113に配置されている。凹部113及び構造体120は、略H字状に形成されている。構造体120の他の一部は、表面110aから突出して凸部123を形成している。凸部123は、略H字状のエンブレムを形成している。
図2に示すように、電磁波透過性部品100は、車両900(図3参照)のフロントグリル190の略中央に配置される。
図3に示すように、フロントグリル190は、電磁波透過性部品100の表面すなわち第1ベース層110の表面110aが車両900の前方に向くように、車両900の前方部に配置される。これにより、電磁波透過性部品100は、車両900の前方部にかつ車両900の左右方向の略中央に配置される。
車両900の内部であり、かつ、電磁波透過性部品100の裏面には、電磁波送受信手段160が配置されている。電磁波送受信手段160は、公知の電磁波の送信手段161及び受信手段165を備えている。送信手段161は、電磁波162を送信し、送信された電磁波162は、電磁波透過性部品100を介して、例えば、車両900の前方に位置する他の車両150に到達し、反射される。反射された電磁波162は電磁波163として受信手段165に向かって進み、電磁波透過性部品100を介して、受信手段165に受信される。したがって、電磁波162と電磁波163とは、互いにほぼ平行になるように進む。つまり、電磁波透過性部品100は、電磁波162及び電磁波163が進む方向を送受信方向αとすると、電磁波の送受信方向αが第1ベース層110の表面110aに直交するようにフロントグリル190に配置されている。
<電磁波透過性部品>
図4に示すように、電磁波透過性部品100は、第1ベース層110の表面110aに形成された凹部113に、略H型のエンブレム状に形成された構造体120の一部を嵌合している。構造体120は、凹部113に嵌合する嵌合部123b及び第1ベース層110の表面110aから突出する凸部123を有する。凸部123は、第1ベース層110の表面110aに立体的な略H型のエンブレムを形成する。しかし、構造体120は、インサート成型又は貼り合わせにより第1ベース層110に一体的に配置しても良い。
図5は、図4の点線5の部分の拡大図である。図5に示すように、第1ベース層110は、第1材料で構成されている。第1ベース層110は、所定の厚さ寸法dを有する第1部分A1と、所定の厚さ寸法cを有する第2部分B1とを有する。したがって、第1ベース層110の凹部113の底面113aは、第2部分B1の一方の面でもある。また、第1ベース層110の表面110aは、第1部分A1の一方の面でもある。第1部分A1の下面と第2部分B1の下面とは、共同して、第1ベース層110の下面110bを形成している。
構造体120は、第1材料とは異なる誘電特性の第2材料で構成されている。構造体120は、所定の厚さ寸法aを有する第3部分B2を有する。したがって、構造体120の上面120aは、第3部分B2の一方の面である。また、構造体120の下面120bは、第3部分B2の一方の面である。
第2部分B1及び第3部分B2は、電磁波の送受信方向αに積層的に配置されて、第2部Bを構成している。したがって、下面120bと底面113aとは、ほぼ密着している。ここで、第1位置P1は、電磁波の送受信方向αにおいて、電磁波透過性部品100における電磁波送受信手段160に最も近い位置を示す。また、第2位置P2は、電磁波透過性部品100における電磁波送受信手段160に最も遠い位置を示す。
電磁波透過性部品100は、第1材料で構成される第1部分A1を有する第1部Aと、第1材料で構成される第2部分B1及び第2材料で構成される第3部分B2を有する第2部Bと、を備える。
第1部Aと第2部Bとは互いに重ならないように並んで配置されている。本実施例では、第1部Aと第2部Bとは、送受信方向又はベース層に略垂直な方向において互いに重ならないように並んで配置される。したがって、構造体120の一部は、第2部Bが第1部Aよりも電磁波送受信手段160の反対側すなわち車両900の前方にある車両150がある側に突出して、所定の凸部123を形成している。
したがって、電磁波透過性部品100は、電磁波の送受信方向αにおいて、第1位置P1から第2位置P2までの透過領域Yを形成する。透過領域Yは、第1位置P1から第2位置P2までの間に第1部Aを含む第1透過領域Y1と、第1位置P1から第2位置P2までの間に第2部Bを有する第2透過領域Y2とを含む。ここで、第1透過領域Y1は、第2部Bを含まず、また、第2透過領域Y2は、第1部Aを含まない。また、第1透過領域Y1は空気領域A2を含む。
電磁波の送受信方向αにおいて、第1部Aの厚さ寸法f1は、第1部分A1の厚さ寸法dと同じ寸法である。電磁波の送受信方向αにおいて、第2部Bの厚さf2は、第2部分B1の厚さcと第3部分B2の厚さaとの合計厚さ寸法と同じ寸法である。
第2部Bの厚さf2は、第1部Aの厚さf1よりも厚く形成されている。また、第3部分B2のうち、車両900の前方に走行している他の車両150側の部分Cが、第1ベース層110の表面110aから突出して凸部123を形成している。
第1位置P1から第2位置P2までの間に第1部Aを含む第1透過領域Y1における電磁波の第1透過特性と、第1位置P1から第2位置P2までの間に第2部Bを含む第2透過領域Y2における電磁波の第2透過特性と、が略同一に設計される。
<電磁波の透過特性>
透過領域Yの電磁波の送受信方向αにおいて、電磁波透過性部品100より、電磁波送受信手段160側に空間部X、別の車両150側に空間部Zが、それぞれ、存在する。空間部Zは開放空間であり、電磁波透過性部品100は開放空間に露出された状態で配置される。電磁波透過性部品100は車両900の外側に取り付けられ外部から視認可能に配置される。したがって、空気領域A2と空間部Zとは、同じ電磁波の透過特性を有する。
電磁波送受信手段160から送信された電磁波162のうち、第1部Aを通過する電磁波103及び第2部Bを通過する電磁波104は、空間部Xを伝播して電磁波透過性部品100に到達し、電磁波透過性部品100の第1位置P1から入射して第2位置P2まで透過し、電磁波透過性部品100の第2位置P2を通過して空間部Zを伝播する。
具体的には、電磁波103は、第1透過領域Y1を以下のように伝播する。
先ず、電磁波送受信手段160から送信された電磁波103Xは、空間部Xを伝播して第1位置P1に到達する。次に、第1位置P1に到達した電磁波103Xは、電磁波103Y1となり、第1透過領域Y1のうち、第1部分A1の厚さ寸法dを伝播して第1ベース層110の表面110aに到達する。次に、第1部分A1を伝播した電磁波103Y1は、電磁波103Y2となり、空気領域A2の厚さ寸法eを伝播して、第2位置P2に到達する。そして、第2位置P2に到達した電磁波103Y2は、電磁波103Zとなり、空間部Zに伝播して、別の車両150に到達する。
又、電磁波104は、第2透過領域Y2を以下のように伝播する。
先ず、電磁波送受信手段160から送信された電磁波104Xは、空間部Xを伝播して第1位置P1に到達する。次に、第1位置P1に到達した電磁波104Xは、電磁波104Y1となり、第2透過領域Y2のうち、第2部分B1の厚さ寸法cを伝播して第1ベース層110の底面113aに到達する。次に、第2部分B1を伝播した電磁波104Y1は、電磁波104Y2となり、第3部分B2の厚さ寸法aを伝播して、第2位置P2に到達する。そして、第2位置P2に到達した電磁波104Y2は、電磁波104Zとなり、空間部Zに伝播して、別の車両150に到達する。
透過領域Yを透過する電磁波103Y1、103Y2、104Y1及び104Y2の伝播速度は、それぞれ、透過領域を構成する第1部分A1、空気領域A2、第2部分B1及び第3部分B2における誘電特性に応じて、遅くなる。
第1透過領域Y1を透過する電磁波103Y1は、第1部分A1の厚さ寸法dに相当する距離を第1伝播速度v1で伝播して透過する。そして、電磁波103Y2は、空気領域A2の厚さ寸法eに相当する距離を、第2伝播速度v2で伝播して透過する。すなわち、電磁波103は、距離dを第1伝播速度v1で伝播し、距離eを第2伝播速度v2で伝播する。
また、第2透過領域Y2を透過する電磁波104Y1は、第2部分B1の厚さ寸法cに相当する距離を第1伝播速度v1で伝播して透過する。そして、電磁波104Y2は、第3部分B2の厚さ寸法aに相当する距離を、第3伝播速度v3で伝播して透過する。すなわち、電磁波104は、距離cを第1伝播速度v1で伝播し、距離aを第3伝播速度v3で伝播する。
電磁波透過性部品100は、第1透過領域Y1の電磁波の第1透過特性と、第2透過領域Y2の電磁波の第2透過特性とが同一になるように設定されている。つまり、第1透過領域Y1を透過する電磁波103Y1及び103Y2の透過時間の合計と、第2透過領域Y2を透過する電磁波104Y1及び104Y2の透過時間の合計とは、透過領域全体で、略同一になる。換言すると、電磁波の送受信方向αにおける第1透過領域Y1の距離と、第2透過領域Y2の距離とが略同一であるから、第1透過領域Y1における電磁波103Y1及び103Y2の全体の伝播速度と、第2透過領域Y2における電磁波104Y1及び104Y2の全体の伝播速度とは、略同一になる。
図6を参照して、電磁波透過性部品100の第1透過領域Y1及び第2透過領域Y2を透過する電磁波について、以下に説明する。第1透過領域Y1を透過する電磁波401及び第2透過領域Y2を透過する電磁波402は、空間部Xにおける伝播速度で伝播されて、第1位置P1からそれぞれ第1部分A1及び第2部分B1に入射する。
第1透過領域Y1において第1位置P1から入射して第1部分A1を伝播する電磁波401は、第1部分A1を構成する第1材料の誘電特性に応じて遅くなった第1伝播速度v1で、第1位置P1から底面113aの位置である第1A位置P1Aまで伝播する。
これに対し、第2透過領域Y2において第1位置P1から入射して第2部分B1を伝播する電磁波402は、第2部分B1を構成する第1材料に応じて遅くなった第1伝播速度v1で第1位置P1まで伝播する。電磁波401と電磁波402は、第1位置P1から第1A位置P1Aまで同時に伝播する。
そして、第1透過領域Y1の電磁波401は、更に、第1A位置P1Aから第1部分A1の表面110aである第1B位置P1Bまで第1伝播速度v1のままで伝播する。
これに対し、第2透過領域Y2の電磁波402は、第3部分B2を構成する第2材料の第2誘電特性に応じて遅くなった第2伝播速度v2で伝播する。
ここで、第2材料は、第1材料の第1誘電特性よりも低い誘電率である材料を選択している。例えば、第2材料は、第1材料の比誘電率よりも低い誘電率である材料を選択している。これにより、第2伝播速度v2は、第1伝播速度v1よりも速い伝播速度となるので、第1透過領域Y1の電磁波401が第1B位置P1Bに到達した時には、第2透過領域Y2の電磁波402は、第1B位置P1Bよりも更に第2位置P2側に近づいた位置まで伝播している。
第1透過領域Y1において、電磁波401は、第1B位置P1Bから第2位置P2までの空気領域A2を、第2伝播速度v2よりも速い伝播速度である第3伝播速度v3で伝播する。これにより、第1透過領域Y1の電磁波401は、車両150側に先行して伝播している電磁波402に追いついて、この電磁波402が第2位置P2に到達するのと同時に第2位置P2に到達する。
以上の説明は、図6中に示された電磁波の波長を示す点線450によっても説明できる。また、電磁波透過性部品100の透過中において、電磁波401と電磁波402の波数が同一であることが説明できる。換言すると、電磁波透過性部品100の第1透過領域Y1と第2透過領域Y2とにそれぞれ同時に入射した2つの電磁波は、電磁波透過性部品100を同時に透過することが説明できる。
電磁波透過性部品100は、第1ベース層110と、これと異なる誘電特性の材料により形成されるエンブレム等を構成する構造体120とを、その厚さ等を調整して組み合わせることで、第1ベース層110の一面に凸部123を形成すると共に、これを透過する電磁波の伝播速度を同一にさせていることが分かる。
ここで、第1材料及び第2材料は特に制限されないが、電磁波の透過損失が少なく、所定形状に加工しやすいことが好ましい。例えば、第1材料としてはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)、第2材料としてはポリプロピレン(PP)を使用しても良い。
電磁波透過性部品100’は、例えば、車両等の搭載された場合には開放空間に露出されるので、雨等に対応するため、その表面に公知の撥水処理を施すことができる。
図7において、本発明の第2実施形態による電磁波透過性部品100aは、第1ベース層110における電磁波送受信手段160側の面に形成された凹部113と、この凹部113が形成された面とは反対側の面に配置された構造体120を有する。この構造体120は、凹部113が形成された位置と対向する位置に配置される。そして、この構造体120は、第1ベース層110における構造体120が配置される面から電磁波の送受信方向(矢印)の一方に突出して凸部123を形成する。
図8において、本発明の第2実施形態による電磁波透過性部品100aは、第1材料で構成される厚さが寸法b及びcの合計寸法の第1部分A1を有する第1部Aと、第1材料で構成される厚さ寸法cの第2部分B1及び第1材料とは異なる誘電特性の第2材料で構成される第3部分B2を有する第2部Bと、を備える。この第2部Bは、積層的に配置される第2部分B1及び第3部分B2を有する。第1部Aと第2部Bとは互いに重ならないように並んで配置され、第2部Bが第1部Aよりも車両150側に突出して所定の凸部123を形成する。本実施例では、第1部Aと第2部Bとは、送受信方向又はベース層に略垂直な方向において互いに重ならないように並んで配置される。
また、電磁波透過性部品100aは、電磁波の送受信方向αにおいて、第1部A及び第2部Bにおける電磁波送受信手段160に最も近い第1位置P1から電磁波送受信手段160に最も遠い第2位置P2までの透過領域Yを有する。電磁波透過性部品100aは、第1位置P1から第2位置P2までの間に第1部Aを含む第1透過領域Y1における電磁波の第1透過特性と、第1位置P1から第2位置P2までの間に第2部Bを含む第2透過領域Y2における電磁波の第2透過特性と、が略同一になるように設計される。
第1部分A1は、第1材料で構成される第1ベース層110における凹部113が形成されていない部分である。第2部分B1は、第1ベース層110における凹部113が形成された部分である。第3部分B2は、凹部113と反対側の面であって凹部113に対向する位置に配置された構造体120である。この構造体120は第2材料で構成される。
第1部Aは、第1部分A1を有する。第2部Bは、第2部分B1及び第3部分B2を有する。第2部分B1と第3部分B2は電磁波の送受信方向αに積層的に配置されている。第1部Aは第1材料のみで構成され、第2部Bは第1材料と第2材料とで構成される。
電磁波の送受信方向αにおける第1部Aの厚さ寸法は第1部分A1の厚さ寸法と同じ寸法であり、その厚さ寸法は寸法b及びcの和の値に等しい。第2部Bの電磁波の送受信方向αにおける厚さ寸法は、第2部分B1の厚さ寸法bと第3部分B2の厚さ寸法aとの合計厚さと同じである。
第1透過領域Y1については、電磁波103Xが空間部Xを伝播し、第1位置P1から入射して第1部分A1である第1部Aを透過し、車両150側に存在する空気領域A2を透過し(電磁波103Y)、第2位置P2を通過して空間部Zを伝播する(電磁波103Z)。また、第2透過領域Y2については、電磁波104Xが空間部Xを伝播し、第1位置P1を通過して空間部B3を伝播し、第2部分B1に入射すると共にこれを透過し、車両150側に存在する第3部分B2を透過し(電磁波104Y)、第2位置P2を通過して空間部Zに伝播する(電磁波104Z)。
透過領域Yを透過する電磁波103Y、電磁波104Yは、透過する各部分を構成する材料の誘電特性に応じて伝播速度が遅くなった状態で透過領域Yを透過する。
第1透過領域Y1を透過する電磁波103Yは、第1部分A1を、この第1部分A1を構成する第1材料の誘電特性に応じて遅くなった第1伝播速度v1で、厚さ寸法b及びcの合計寸法に等しい距離を伝播して透過する。そして、車両150側に存在する空気領域A2を、空間部Xを伝播した空間の第3伝播速度v3で伝播して透過する。
第2透過領域Y2を透過する電磁波104Yは、空間部B3を空間における第3伝播速度v3で、厚さ寸法cに等しい距離を伝播し、第2部分B1を、この第2部分B1を構成する第1材料の誘電特性に応じて遅くなった第1伝播速度v1で、厚さ寸法bに等しい距離を伝播して透過する。そして、車両150に存在する第3部分B2を、この第3部分B2を構成する第2材料の誘電特性に応じて遅くなった第2伝播速度v2で、厚さ寸法aに等しい距離を伝播して透過する。
電磁波透過性部品100aは、第1透過領域Y1の電磁波の第1透過特性と、第2透過領域Y2の電磁波の第2透過特性とが同一になるように設定されている。つまり、第1透過領域Y1を透過する電磁波103Yの透過時間と、第2透過領域Y2を透過する電磁波104Yの透過時間は略同一になる。換言すると、電磁波の送受信方向αにおける第1透過領域Y1の距離と、第2透過領域Y2の距離とが略同一であるから、第1透過領域Y1における電磁波103Yの伝播速度と、第2透過領域Y2における電磁波104Yの伝播速度とは、略同一になる。
また、第2部Bを構成する第3部分B2が、第1ベース層110から車両150側に突出して凸部123を形成する。この凸部123が連続的に所定形状を形成するように凹部113や構造体120を形成することで、立体的なエンブレムを有する、意匠性にも優れた電磁波透過性部品100aを形成することができる。
図9において、本発明の第3実施形態による電磁波透過性部品100bは、第1材料で構成される厚さが寸法b及びcの合計寸法の第1部分A1及び、第2材料で構成される厚さ寸法kの補完部F1を有する第1部Aと、第1材料で構成される厚さ寸法cの第2部分B1及び第1材料とは異なる誘電特性の第2材料で構成され電磁波が送信される送受信方向αにおいて第2部分B1と積層配置される厚さ寸法a及びkの合計寸法である第3部分B2を有する第2部Bとを備える。第1部Aと第2部Bとは電磁波の送受信方向αに互いに重ならないように並んで配置される。第2部Bが車両150側に突出して所定の凸部123を形成する。
また、電磁波透過性部品100bは、第1位置P1と第2位置P2との間に第1部Aを含む第1透過領域Y1における電磁波の第1透過特性と、第1位置P1と第2位置P2との間に第2部Bを含む第2透過領域Y2における電磁波の第2透過特性と、が略同一になるように設計されている。ここで、第1位置P1は、電磁波の送受信方向αにおいて、第1部A及び第2部Bにおける電磁波送受信手段160に最も近い位置である。第2位置P2は、電磁波の送受信方向αにおいて、第1位置P1から電磁波送受信手段160に最も遠い位置である。
第1部分A1は、第1材料で構成される第1ベース層110における凹部113が形成されていない部分であり、第2部分B1は、第1ベース層110における凹部113が形成された部分である。第3部分B2は、凹部113に嵌合された構造体120である。この構造体120は第2材料で構成される。
第1部Aは、補完部F1と第1部分A1を有する。補完部F1は第1部分A1の電磁波送受信手段160側に電磁波の送受信方向αに積層的に配置されている。第2部Bは、第2部分B1及び第3部分B2を有する。第2部分B1と第3部分B2は電磁波が送信される電磁波の送受信方向αに積層的に配置されている。
第2部Bの厚さは第2部分B1の厚さ寸法cと第3部分B2の厚さ寸法a及びkとの合計厚さ寸法と同じ寸法である。そして、第1部Aの厚さ寸法は、第1部分A1の厚さ寸法b及びcと補完部F1の厚さ寸法kとの合計厚さ寸法と同じ寸法である。
電磁波透過性部品100bは、電磁波透過性部品100における第3部分B2の厚さ寸法を厚さ寸法kだけ厚く形成された電磁波透過性部品である。この第3部分B2が厚く形成された寸法kの分だけ、第1ベース層110の反対側の面であり、第3部分B2が配置された位置と対向する位置に隣接する位置に同じ第2材料で形成した厚さ寸法が寸法kの補完部を配置する。第1ベース層110の電磁波送受信手段160側に補完部127が形成されるように配置する。これにより、透過領域Yにおける電磁波の第1透過特性と電磁波の第2透過特性とを略同一にしている。
電磁波透過性部品100bは、補完部F1、第1部分A1、空気領域A2で構成される第1透過領域Y1の電磁波の第1透過特性と、空間部F2、第2部分B1,第3部分B2で構成される第2透過領域Y2の電磁波の第2透過特性とが略同一になるように設定されている。前述のように、電磁波透過性部品100bは、第2透過領域Y2において第1透過領域Y1に対して過剰となった第3部分B2における厚さ分を第3部分B2と同じ材料で同じ厚さの補完部F1を上述した所定の位置に配置することで、第1透過領域Y1の電磁波の第1透過特性と第2透過領域Y2における電磁波の第2透過特性とを略同一に調整している。これにより、第1透過領域Y1を透過する電磁波103Yの透過時間と、第2透過領域Y2を透過する電磁波104Yの透過時間は同一になる。換言すると、電磁波の送受信方向αにおける第1透過領域Y1の距離と、第2透過領域Y2の距離とが略同一であるから、第1透過領域Y1における電磁波103Yの伝播速度と、第2透過領域Y2における電磁波104Yの伝播速度とは、略同一になる。
ここで、補完部F1は、凸部123を車両150側により突出させたい場合において、より厚くした第3部分B2に対応してはじめから形成されることができる。また、所定の仕様で電磁波透過性部品100bを製造した後に、第1透過領域Y1における電磁波の第1透過特性と、第2透過領域Y2における電磁波の第2透過特性とが異なった場合においても、補完部F1を用いることで、事後的に、電磁波の透過特性を調整することができる。
第2部Bを構成する第3部分B2が、第1ベース層110から車両150に突出して凸部123を形成する。この凸部123が連続的に所定形状を形成するように凹部113や構造体120を形成することで、立体的なエンブレムを有する、意匠性にも優れた電磁波透過性部品100を形成することができる。
図10において、本発明の第4実施形態による電磁波透過性部品100cは、第2ベース層115と、この第2ベース層115の電磁波の送受信方向αにおける車両150側に配置されるエンブレム状に形成された構造体120と、第2ベース層115に対し、この構造体120が配置された側とは反対側である電磁波送受信手段160側における構造体120が配置された位置と対向する位置に隣接する位置に配置される補完部125とを有する。そして、この構造体120は、第2ベース層115の面から車両150側に突出して凸部123を形成する。
図11において、電磁波透過性部品100cは、第3部D1と第4部D2とを備える。第3部D1は、第2材料で構成される厚さ寸法gの補完部である第5部分G1及び第1材料で構成される厚さ寸法hの第2ベース層115である第4部分H1を有する。第4部D2は、第1材料で構成される厚さ寸法hの第2ベース層とである第6部分H2及び第2材料で構成される厚さ寸法gの構造体120である第7部分G2を有する。第3部D1と第4部D2とは電磁波の送受信方向αに互いに重ならないように並んで配置され、第4部D2が車両150側に突出して所定の凸部123を形成する。
ここで、第3部D1と第4部D2における第1材料の合計厚さと第2材料の合計厚さは略同一である。また、電磁波透過性部品100における第3部D1の厚さと第4部D2の厚さも略同一である。これらより、透過領域Yにおいて第3部D1を含む第3透過領域Y3における電磁波の第3透過特性と、第4部D2を含む第4透過領域Y4における電磁波の第4透過特性とは略同一である。これにより、第3透過領域Y3を透過する電磁波105Yの透過時間と、第4透過領域Y4を透過する電磁波106Yの透過時間は同一になる。換言すると、電磁波の送受信方向αにおける第3透過領域Y3の距離と、第4透過領域Y4の距離とが略同一であるから、第3透過領域Y3における電磁波105Yの伝播速度と、第4透過領域Y4における電磁波106Yの伝播速度とは、略同一になる。換言すると、電磁波の送受信方向αにおける第3透過領域Y3の距離と、第4透過領域Y4の距離とが略同一であるから、第3透過領域Y3における電磁波105Yの伝播速度と、第4透過領域Y4における電磁波106Yの伝播速度とは、略同一になる。
電磁波透過性部品100cは、その厚さが略均一である略板状の第2ベース層115の一方の面に構造体120は配置し、他方の面であって構造体120が配置されている位置と対向する位置に隣接する位置に、この構造体120と同じ材料で同じ厚さに形成された補完部125を配置する。これにより。電磁波透過性部品100cの電磁波の送受信方向αにおける各材料の合計厚さを同一にすることで、電磁波の透過特性を略同一にしている。電磁波透過性部品100cは、非常に簡易な構成であると共に、簡易に製造することができる。
<設計例>
図5における電磁波透過性部品100の第1設計例を以下に説明する。ここで、電磁波の空気中における波長、各材料の比誘電率は以下の通りとする。
<条件>
電磁波の空気中における波長:λ0
第1材料の比誘電率:ε1
第2材料の比誘電率:ε2
第1材料の誘電損失:tanσ1
第2材料の誘電損失:tanσ2
第1ベース層110の厚さ寸法d(寸法bと寸法cとの合計寸法)、第1ベース層110に形成される凹部113の深さ寸法b、この凹部113に嵌合されると共に凸部123を形成する第3部分B2の厚さ寸法aのそれぞれの寸法は、下記のように設計される。
まず、本発明による電磁波透過性部品100は、第1透過領域Y1における波数と、第2透過領域Y2における波数とが同一である。これを達成するには、電磁波透過性部品100は、下記数式1の式で示される条件を満たす必要がある。なお、第1透過領域Y1及び第2透過領域Y2において、凹部113の底面113aの位置(換言すると、第1位置P1から寸法cだけ電磁波の送受信方向αにおける車両150に進んだ位置)までは、双方とも第1材料で形成された第1ベース層110を透過しており電磁波の波数に差異はないので、底面113aの位置から第2位置P2までの波数について考慮すればよい。すなわち、底面113aの位置から第2位置P2までの、第1透過領域Y1における波数と第2透過領域Y2における波数とを同じにする。
b(ε1)1/2/λ0+(a−b)/λ0=a(ε2)1/2/λ0 …(数式1)
ここで、電磁波透過性部品100は、好ましい条件として下記数式2、数式3に示す式で示され条件を満たす必要がある。数式2は、第1部における波数が1/2の整数倍であること示し、数式3は、第2部における波数が1/2の整数倍であることを示す。
(b+c)×(ε1)1/2/λ0=K/2 但し、Kは整数 …(数式2)
c×(ε1)1/2/λ0+a×(ε2)1/2/λ0=L/2 但し、Lは整数 …(数式3)
数式1から数式3で示す式を基に、使用する材料等や整数K、Lに応じて厚さ寸法a、b、cが定まる。この定まった寸法a、b、cを実際の電磁波透過性部品100に当てはめて、その強度が所定の使用態様において十分であるか、電磁波の透過損失の大きさがレーダ装置等における検知性能に悪影響を与えない程度であるか等を検討し、適正な値を特定することで設計が行われる。
透過損失については、透過損失が少ないことが好ましいことに加え、第1透過領域Y1における第1透過損失と、第2透過領域Y2における第2透過損失とが同一であることが好ましい。これにより、レーダ装置等の検知性能はより好適となる。具体的には、第1部側の透過損失と第2部側の透過損失とが等しい、以下に示す数式4で示される条件を満たすことが好ましい。この場合も数式1と同様に、凹部113の底面部の位置(第1位置から寸法cだけ電磁波の送受信方向αに進んだ位置)から第2位置までの波数について考慮すればよい。
b×tan(σ1)=a×tan(σ2) …(数式4)
電磁波透過性部品100における誘電特性は、例えば、第1ベース層110に形成された凹部113の深さを調整することで調整することができる。これと同様に、第3部分B2の厚さaによっても同様に電磁波の透過特性を調整することができる。
電磁波透過性部品100の誘電特性は、図7における第1ベース層110において構造体120が配置された面の反対側に形成された凹部113の深さを調整することによっても調整することができる。構造体120が配置された面とは反対側の面の凹部113を調整するため、外観の意匠性に影響を与えることなく電磁波の透過特性を調整することができる。
また、構造体120を嵌合させるために形成する凹部と、電磁波の透過特性を調整するために形成する凹部とが分離されているため、設計の自由度が広くなる。また、電磁波透過性部品100は、構造体120を第1ベース層110に貼り合わせて、構造体120が配置された面と反対側の面に形成される凹部113の深さを適宜調整して電磁波の透過特性を調整することで形成することもできる。
電磁波透過性部品100における誘電特性は、例えば、図9に示されるように構造体120が配置された面とは反対側の面に配置された補完部127により、電磁波の透過特性が調整される。構造体120を嵌合させるために形成する凹部と、電磁波の透過特性を調整するために形成する凹部とが分離されているため、設計の自由度が広くなる。
また、構造体120が過剰な高さである場合において、構造体120が配置された面とは反対側の面に、構造体120と同じ材料でありその過剰分の厚さと同じ厚さの補完部127を配置することで、構造体120の厚さを調整することなく、簡易に電磁波の透過特性を調整することができる。ここで、補完部127は構造体120と同じ材料でなくても、電磁波の透過特性を調整可能であり、これも本発明による電磁波透過性部品100に含まれる。
また、電磁波透過性部品100は、構造体120を第1ベース層110(又は第2ベース層115)に貼り合わせて、構造体120が配置された面と反対側の面に所定厚さの補完部127(又は125)を配置して電磁波の透過特性を調整することができる。
電磁波透過性部品100における各部分の電磁波の送受信方向αの厚さは、各材料の比誘電率によって設定される。各透過領域における波数が同一であることを示す数式1をまとめると、数式5で示される。この数式5から、この厚さ寸法a及びbは、第1及び第2材料の比誘電率ε1及びε2に基づいて設定されることが分かる。
b/a=((ε2)1/2−1)/((ε1)1/2−1) …(数式5)
電磁波透過性部品100の電磁波の送受信方向αにおける厚さ寸法は、電磁波の誘電損失量により設定される。電磁波透過性部品100における各部分の厚さが厚すぎると、レーダ装置等の検知性能に悪影響を与えるので、この誘電損失量ができるだけ少なくなるように、この厚さを設定する。さらに、第1透過領域Y1と第2透過領域Y2における誘電損失量が均等である場合、よりレーダ装置等における検知性能は好ましい。この場合には、この数式4により示される式から、厚さ寸法a及びbが各材料における誘電損失に基づいて定められることが分かる。
第1材料としてアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)を用い、第2材料としてはポリプロピレン(PP)を用いることで、各部材の厚みを立体感のある厚みに設定することができる。
また、第1材料と、第2材料の比誘電率の差異を大きくすることで凸部123をより立体的にすることができる。換言すると、電磁波の送受信方向αの厚さ寸法がa−bの値である凸部123の高さを大きくすることができる。例えば、図5による電磁波透過性部品100の場合、第3部分B2である構造体120を構成する材料の比誘電率を小さくし、第1ベース層110を構成する材料の比誘電率を大きくすることで、より凸部123を立体的にすることができる。
ここで、構造体120等は意匠の部品であるため、完全に厚さを均一にすることができない場合がある。この場合には、構造体120等の厚さの平均が上記の値になるようにして設計・製造がされる。
以上、本発明の実施形態における電磁波透過性部品について説明したが、本発明の電磁波透過性部品は前記実施の形態には制限されない。例えば、自動車のフロントグリル自体やスクーターのボディー前面のエンブレム等でも実施することができる。
図3において、物体を検知する物体検知システム800は、電磁波を送信する送信手段161と、送信手段161により送信された電磁波162が車両150のような物体によって反射された電磁波163を受信する受信手段165と、送信手段161及び受信手段165により送受信される電磁波162、163の経路内に配置される上述の電磁波透過性部品100、100a,100b又は100cと、受信手段165で受信された電磁波163に基づいて少なくとも物体との距離及び相対速度を含む物体情報を検知する検知手段170とを備える物体検知システム800である。物体とは、例えば、この物体検知システム800が搭載された車両等の前方を走行する他の車両150や、前方に存在する障害物をいう。
物体検知システム800は、送信手段161及び受信手段165で送受信される電磁波162、163が電磁波透過性部品100を透過しても、この電磁波162、163の波数が異なることや位相がずれることが抑制されているため、車両150との距離及び相対速度を含む物体情報を好適に検知することができる。
本発明による電磁波透過性部品100は透過領域における電磁波の透過特性が略同一になるように調整され、好ましくは透過領域全体の電磁波の透過特性が均一になるように形成されているので、検知手段170で正しい物体情報を取得することができる。