JP4301585B2 - エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法に関し、特にエンブレムプレートなどのシート体をエアバッグカバーに取り付ける方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の自動車には、衝突時にドライバーその他の乗員の負傷を最小限にとどめるためのエアバッグ装置が設けられている。この種のエアバッグ装置は、図7に示すようにドライバーとステアリングホイール1との間あるいは助手席の乗員とインストルメントパネル2との間に空気袋3を瞬時に膨らませるものであり、ステアリングホイール1内やインストルメントパネル2内に空気袋3が折り畳まれた状態で内蔵されている。また、側面衝突による乗員の負傷を防ぐために、図8に示すようにシートサイド4(あるいはドアの内側)に空気袋3を内蔵したサイドエアバッグ装置も知られている。
【0003】
こうしたエアバッグ装置は、衝突時の衝撃をGセンサで検出し、空気袋を展開すべき場合には、ステアリングホイール1内、インストルメントパネル2内、あるいはシートサイド4内に装着されたインフレータに電気信号を送出してガス発生剤を燃焼させ、空気袋3を膨張させるものであり、このとき空気袋3が収納されたエアバッグカバー1a,2a,4aを押し開く。
【0004】
このため、ステアリングホイール1、インストルメントパネル2あるいはシートサイド4に設けられるエアバッグカバー1a,2a,4aは、空気袋3が膨張する際に円滑に開くように切り込みが形成されるとともに、その破片が飛び散らないようにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーやポリスチレン系熱可塑性エラストマーなどの弾性体から構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ステアリングホイール1やインストルメントパネル2などのように室内の目立つ部位に、商標その他をあしらったエンブレムプレートを取り付けることが少なくないが、この種のエンブレムプレートは、塗装、ポットスタンプ、メッキ、真空蒸着などの処理を施した硬度の高いポリエステル系エラストマーやPP製不織布からなるため、上述したエアバッグカバーを構成するポリオレフィン系熱可塑性エラストマーやポリスチレン系熱可塑性エラストマーとの接着性に問題があって、空気袋が膨張してエアバッグカバーが押し開かれる際に、当該エンブレムプレートがエアバッグカバーから剥離して飛び散るおそれがあるので、安全性の点から別体のエンブレムプレートを取り付けることができなかった。
【0006】
このため、従来のステアリングホイール1やインストルメントパネル2のエアバッグカバー1a,2aに商標などをあしらう場合には、当該エアバッグカバーに一体成形により凹凸状の文字、図形あるいは記号を形成することで代用するか、あるいはエアバッグカバー以外の部位にエンブレムプレートを取り付けていた。
【0007】
ところが、単なる凹凸状のエンブレムでは意匠的に高級感が現出できず、商品価値を高めることができないといった問題があった。また、ステアリングホイールなどではその大部分がエアバッグカバーから構成されているので、これを避けてエンブレムプレートを設けることは現実的には無理であった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、エンブレムプレートなどのシート体をエアバッグカバーに優れた接着性で取り付けることができる方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも極性ポリマーと非極性ポリマーをブレンドしたポリマー組成物で構成される介在層を介して、極性材料からなるシート体を、非極性材料からなるエアバッグカバーに取り付けることを特徴とする、エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法が提供される。
また本発明によれば、少なくとも極性ポリマーと非極性ポリマーをブレンドしたポリマー組成物で構成される介在層を介して、非極性材料からなるシート体を、極性材料からなるエアバッグカバーに取り付けることを特徴とする、エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法が提供される。
また本発明によれば、少なくとも極性ポリマーと非極性ポリマーをブレンドしたポリマー組成物で構成される介在層を介して、少なくとも極性ポリマーと非極性ポリマーをブレンドしたポリマー組成物で構成されるシート体を、非極性材料または極性材料からなるエアバッグカバーに取り付けることを特徴とする、エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法が提供される。
本発明によれば、少なくとも極性ポリマーと非極性ポリマーをブレンドしたポリマー組成物で構成される介在層を介して、エンブレムプレートその他のシート体が、エアバッグカバーの一主面に熱融着してあるエアバッグカバー組立体が提供される。
前記ポリマー組成物は、(i)ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体、またはポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と、(ii)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とを、主成分とすることが好ましい。
【0010】
本発明は、極性材料または非極性材料の一方からなるシート体を極性材料または非極性材料の他方からなるエアバッグカバーに良好な接着性をもって複合化し、エアバック膨張時においてもシート体が飛散しないように、しかも当該シート体を自由な位置に設定できる製造方法を追求した結果完成されたものである。
【0011】
極性材料または非極性材料の一方からなるシート体を極性材料または非極性材料の他方からなるエアバッグカバーにそのままインサート成形して熱融着せしめても、エアバッグカバーに必要とされる接合力は得られないが、本発明のように非極性である付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と極性を有する縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とを主成分とする介在層をシート体とエアバッグカバーとの間に介在させることにより、シート体とエアバッグカバーとは、当該エアバッグカバーに要求される以上の充分な接合力で熱融着される。
【0012】
すなわち、本発明に係る介在層は、極性を有する成形体にも良好な接合力で熱融着するとともに、非極性の成形体に対しても良好な接合力で熱融着するので、結果的に、シート体とエアバッグカバーとの接合力を充分なものとすることができる。
【0013】
シート体とエアバッグカバーとの間に介在層を形成する手法は特に限定されず、シート体に介在層を形成したのち、このシート体をエアバッグカバーの成形型内にセットしてインサート成形によりエアバッグカバーを製造しても良いし、逆にエアバッグカバーに介在層を形成したのち、このエアバッグカバーをシート体の成形型内にセットしてインサート成形によりシート体を製造しても良い。ただし、エアバッグカバーの方がシート体より大きい場合には、前者の方法の方が成形型が小さくでき、かつ効率的に製造することができる。
【0014】
本発明によれば、介在層を介してシート体とエアバッグカバーとを十分強固に熱融着できるが、介在層の主面に凹凸部を形成すれば、その接合力がさらに高まることになる。
すなわち、本発明に係るエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法は、表面に凹凸部を持つ介在層をシート体の一主面に有するインサート部材を、成形型内に、前記シート体が型内面に対向するように配置し、型締めすることで型内にキャビティを形成し、このキャビティ内に、エアバッグカバーを構成する材料を注入することが好ましい。
【0015】
シート体
本発明において、前記シート体は、たとえばエンブレムプレートである。また、こうしたエンブレムプレートは、たとえばポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セラミックスおよび金属からなる群より選ばれる材料で形成された板状体、または天然繊維もしくは合成繊維で形成された布状体から構成される。
【0016】
介在層
本発明においてより好ましくは、前記介在層は、
(i)ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体、またはポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と、
(ii)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体と、を主成分とする。
【0017】
また、前記介在層は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とをブレンドした組成物で構成されることが好ましいが、特に縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体100重量部に対し、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体を3〜100重量部混合することがより好ましい。
【0018】
(i)付加重合系熱可塑性ブロック弾性体
本発明において、介在層を構成する一方の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ポリスチレンブロック(以下、単にSともいう。)と水添または非水添のポリイソプレンブロック(以下、単にIともいう。)とからなるブロック共重合体、またはポリスチレンブロック(S)と水添または非水添のポリブタジエンブロック(以下、単にBともいう。)とからなるブロック共重合体の何れかである。
【0019】
この付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、(S−I)や(S−B)で表されるジブロックのもの、あるいはS−(I−S)nやS−(B−S)n,(ただしn=1〜5)の一般式で表されるトリブロックおよびそれ以上のものである。
【0020】
本発明に係る付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、たとえば全体の数平均分子量が5,000〜500,000の範囲にあり、Sブロック単位の含有量が5〜70wt%であり、かつIブロック単位またはBブロック単位の二重結合の70%以上が水添されたものがより好ましく用いられる。また、Sブロック単位の重量平均分子量としては5,000〜125,000、Iブロック単位またはBブロック単位の重量平均分子量としては15,000〜250,000のものを例示することができる。
【0021】
さらに具体的には、ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体として、飽和型のジブロックおよびトリブロックタイプのスチレンエンチレンプロピレン(SEP)やスチレンエチレンプロピレンスチレン(SEPS)が好適に用いられる。市販品では、たとえばクラレ社製「セプトン」が例示できる。
【0022】
また、ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体としては、スチレンエンチレンブタジエン(SEB)やスチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS)が好適に用いられる。市販品では、たとえば、水素添加物として三菱油化社製「ラバロン」、旭化成社製「タフテック」、シェル化学社製「クラトンG」、非水素添加物としてアロン化成社製「エラストマーAR」、シェル化学社製「クラトンカリフレックスTR」、日本合成ゴム社製「JSR TR」が例示できる。
【0023】
(ii)縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体
次に、本発明において、介在層を構成する他方の縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック弾性体であり、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれるセグメント化熱可塑性エラストマーである。
【0024】
このうちポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ジカルボン酸と短鎖グリコールとから調製されたハードセグメント(ポリエステルセグメント)と、芳香族ジカルボン酸とポリアルキレングリコール(長鎖グリコール)とから調製されたソフトセグメント(ポリエーテルセグメント)とを有するポリエーテル・エステル型コポリマーを例示することができる。
【0025】
また、他のポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ジカルボン酸と短鎖グリコールとから調製されたハードセグメント(ポリエステルセグメント)と、ポリカプロラクトンから調製されたソフトセグメント(ポリエステルセグメント)とを有するポリエステル・エステル型コポリマーを例示することができる。
【0026】
こうしたポリエステル系熱可塑性エラストマーの典型的なものとしては、テレフタル酸ジメチル1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールを出発原料として重縮合反応およびエステル交換反応させることにより調製された図9の一般式で示される組成物がある。
【0027】
本発明において、介在層を構成するポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン6,66,11,12などのポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテルまたはポリエステルからなるソフトセグメントとを有するものを例示することができる。さらに具体的には、図10に一般式で示すポリエーテルブロックアミドを例示できる。同図において、「PA」はハードセグメントであるポリアミドのブロックを示し、「PE」はソフトセグメントであるポリエーテルのブロックを示す。このポリエーテルブロックアミドは、たとえば(1)ジアミンとジカルボン酸の塩、ラクタム類、またはアミノジカルボン酸(上記「PA」を構成する成分)、(2)ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール(上記「PE」を構成する成分)、(3)ジカルボン酸、を重縮合させることにより調製することができる。
【0028】
本発明において、介在層を構成するポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、ジイソシアネートと短鎖グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAなど)とから調製されたハードセグメントと、ジイソシアネートと長鎖ポリオールとから調製されたソフトセグメントとを有するものを例示することができる。
【0029】
この場合、長鎖ポリオールとしては、ポリアルキレングリコールのようなポリエーテル系ポリオール、またはポリアルキレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートなどのようなポリエステル系ポリオールが好ましく用いられる。この種のポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、図11の一般式で示され、同図において、「A」はジイソシアネートと短鎖グリコールとから調製されたハードセグメントを示し、「B」はジイソシアネートと長鎖ポリオールとから調製されたソフトセグメントを示している。また、「Y」はAセグメントとBセグメントとを連結するウレタン結合のジイソシアネート化合物の残基を示している。このジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを例示することができる。
【0030】
ちなみに、本発明に係る介在層は、上述した付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体が主成分であるが、他の弾性体成分や他の充填剤などの配合成分を含んでも何ら問題はない。こうした他の弾性体成分としては、たとえばSBSブロックポリマーあるいは水添SBSブロックポリマー、EPRなどのオレフィン系エラストマー、SBRなどのジエン系エラストマー、ウレタン系エラストマーあるいは可塑剤配合の弾性に富んだ可塑性ポリ塩化ビニルを例示できる。
【0031】
エアバッグカバー
一方、本発明において、上述した介在層の一方の主面に熱融着される前記エアバッグカバーは、たとえば熱可塑性エラストマーから構成され、こうした熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーまたはポリスチレン系熱可塑性エラストマーを例示することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも極性ポリマーと非極性ポリマーをブレンドしたポリマー組成物で構成される介在層、たとえば付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とを主成分とする介在層を、シート体とエアバッグカバーとの間に介在させたので、シート体とエアバッグカバーとを、当該エアバッグカバーに要求される以上の充分な接合力で熱融着することができる。
【0033】
その結果、エアバッグが膨張してもシート体が飛散することがなく、安全性を確保できるとともに、自由な材質で意匠性に富んだシート体をエアバッグカバーに取り付けることができ、商品性を高めることが可能となる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の方法によりシート体を取り付けたエアバッグカバーを示す縦断面図(図7の I-I線に沿う断面図)、図2は図1のII部の拡大断面図、図3は本実施形態に係るエンブレムプレートを示す斜視図、図4は図3のエンブレムプレートに介在層を形成する工程を示す断面図、図5は図4により得られたエンブレムプレートをインサートしてエアバッグカバーに取り付ける工程を示す断面図、図6は本発明の他の実施形態を示す断面図(図1のII部相当図)である。
【0035】
以下の実施形態では、便宜的にエアバッグカバーとしてステアリングホイールカバーを、シート体としてエンブレムプレートをそれぞれ例に挙げて本発明の方法を説明するが、本発明の方法は、ステアリングホイールに内蔵されたエアバッグ装置以外にも、インストルメントパネルやシートサイドあるいはドアインナに内蔵されたエアバッグ装置のエアバッグカバーにもそのまま適用することができる。また、エンブレムプレート以外のシート体にも適用することができる。
【0036】
図1に示すように、エアバッグカバー1a(以下、ステアリングホイールカバー1aともいう。)には、内部に折り畳まれた空気袋3(図7参照)が円滑に膨張するように切り込み11aが形成されており、同図に二点鎖線で示すようにこの切り込み11aを押し開くことにより空気袋3がドライバーとステアリングホイールとの間に膨張される。また、空気袋が膨張したときに、当該エアバックカバー1aの破片が乗員に向かって飛散しないように、エアバッグカバー1aはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーあるいはポリスチレン系熱可塑性エラストマーなどの弾性体から構成されている。
【0037】
ステアリングホイールカバー1aの表面には、製造メーカの商標や車種の商標、あるいはデザインをあしらったエンブレムプレート(シート体)5が装着されている。当該エンブレムプレート5は、図3に示すように、高硬度のポリエステル系エラストマーからなる基材層51の一主面に、塗装、ポットスタンプ、メッキ、真空蒸着あるいははめ込みなどの諸処理を施すことにより所望の商標その他の図形、記号53(以下、図柄等ともいう。)などが表されており、さらにこの一主面を保護するために、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂あるいはアクリル樹脂からなる透明の保護層52がたとえばポッティング処理により形成されている。この保護層52を設けることで、基材層51に形成された図柄等53の剥がれや劣化が防止される。ただし、基材層51に形成される図柄等53の耐久性が充分であれば省略することもできる。
【0038】
また、基材層51は、高硬度のポリエステル系エラストマー以外にも、たとえばポリプロピレン製不織布に図柄等の処理を施したエンブレムプレート5であっても適用することができる。要するに、後述する介在層6との熱融着性に優れた材質であればよい。
【0039】
次に、こうして得られた図柄等53が形成された基材層51および保護層52からなるエンブレムプレート5の裏面に、本発明に係る介在層6が形成される。これは、たとえば図4に示すように成形型7内にエンブレムプレート5を位置決めしてセットしたのち、注入口71からキャビティ72内に介在層6を構成する樹脂を射出成形することにより製造することができる。
【0040】
本実施形態で用いられる介在層6を構成する樹脂は、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とを主成分とするブレンドポリマーであり、縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体100重量部に対し、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体を3〜100重量部といった混合比でブレンドする。
【0041】
この付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなるブロック共重合体、またはポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなるブロック共重合体の何れかである。
【0042】
ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体としては、飽和型のジブロックおよびトリブロックタイプのスチレンエンチレンプロピレン(SEP)やスチレンエチレンプロピレンスチレン(SEPS)が好適に用いられる。
【0043】
ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体としては、スチレンエンチレンブタジエン(SEB)やスチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS)が好適に用いられる。
【0044】
一方、縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック弾性体であり、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれるセグメント化熱可塑性エラストマーである。
【0045】
このうちポリエステル系熱可塑性エラストマーの典型的なものとしては、テレフタル酸ジメチル1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールを出発原料として重縮合反応およびエステル交換反応させることにより調製された図9の一般式で示される組成物が挙げられる。
【0046】
また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン6,66,11,12などのポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテルまたはポリエステルからなるソフトセグメントとを有するものを例示することができ、さらに具体的には、図10に一般式で示すポリエーテルブロックアミドを例示できる。
【0047】
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、ジイソシアネートと短鎖グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAなど)とから調製されたハードセグメントと、ジイソシアネートと長鎖ポリオールとから調製されたソフトセグメントとを有するものを例示することができ、図11の一般式で示されるものが例示できる。
【0048】
次に、図5に示すように一主面に介在層6が熱融着されたエンブレムプレート5を成形型8内にセットし、通孔81から真空引きすることにより位置決めしたのち、図外の注入口からキャビティ82内へエアバッグカバー1aを構成する樹脂を射出成形する。これにより、介在層6とエアバッグカバー1aとが熱融着され、充分な接合強度で複合化されたエアバッグカバー組立体が得られる。
【0049】
エアバッグカバー1aを構成する樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーまたはポリスチレン系熱可塑性エラストマーを例示することができる。
【0050】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
たとえば、介在層6とエアバッグカバー1aとは充分な接合強度で熱融着されるが、図6に示すように、介在層6のエアバッグカバー1a側の主面に凹凸部61を成形したうえで両者を複合化すればさらに接合強度が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法によりシート体を取り付けたエアバッグカバーを示す縦断面図である。
【図2】図1のII部の拡大断面図である。
【図3】実施形態に係るエンブレムプレートを示す斜視図である。
【図4】図3のエンブレムプレートに介在層を形成する工程を示す断面図である。
【図5】図4により得られたエンブレムプレートをインサートしてエアバッグカバーに取り付ける工程を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す断面図(II部相当図)である。
【図7】運転席および助手席のエアバッグ装置を示す斜視図である。
【図8】サイドエアバッグ装置を示す斜視図である。
【図9】本発明に係るポリエステル系熱可塑性エラストマーの一例を示す化学式である。
【図10】本発明に係るポリアミド系熱可塑性エラストマーの一例を示す化学式である。
【図11】本発明に係るポリウレタン系熱可塑性エラストマーの一例を示す化学式である。
【符号の説明】
1…ステアリングホイール
1a…エアバッグカバー
2…インストルメントパネル
2a…エアバッグカバー
3…空気袋(エアバッグ)
4…シートサイド
4a…エアバッグカバー
5…エンブレムプレート(シート体)
51…基材層
52…保護層
6…介在層
61…凹凸部
7,8…成形型
Claims (13)
- (i)ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体、またはポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と、
(ii)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とを、主成分とする介在層を介して、
極性材料からなるシート体を、非極性材料からなるエアバッグカバーに取り付けることを特徴とする、エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。 - (i)ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体、またはポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と、
(ii)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とを、主成分とする介在層を介して、
非極性材料からなるシート体を、極性材料からなるエアバッグカバーに取り付けることを特徴とする、エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。 - 下記(i)及び(ii)を主成分とする介在層を介して、
下記(i)及び(ii)を主成分とするシート体を、極性材料または非極性材料からなるエアバッグカバーに取り付けることを特徴とする、エアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
(i)ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体、またはポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体、
(ii)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体。 - 表面に凹凸部を持つ介在層をシート体の一主面に有するインサート部材を、成形型内に、前記シート体が型内面に対向するように配置し、型締めすることで型内にキャビティを形成し、このキャビティ内に、エアバッグカバーを構成する材料を注入することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記介在層は、前記縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体100重量部に対し、前記付加重合系熱可塑性ブロック弾性体3〜100重量部が混合されてなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記介在層を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーは、芳香族ジカルボン酸と短鎖グリコールとから調製されたハードセグメントと、芳香族ジカルボン酸とポリアルキレングリコールとから調製されたソフトセグメントとを有するポリエーテル・エステル型コポリマーであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記介在層を構成する前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、芳香族ジカルボン酸と短鎖グリコールとから調製されたハードセグメントと、ポリカプロラクトンから調製されたソフトセグメントとを有するポリエステル・エステル型コポリマーであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記介在層を構成するポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテルまたはポリエステルからなるソフトセグメントとを有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記介在層を構成するポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ジイソシアネートと短鎖グリコールとから調製されたハードセグメントと、ジイソシアネートと長鎖ポリオールとから調製されたソフトセグメントとを有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記長鎖ポリオールは、ポリエーテル系ポリオールまたはポリエステル系ポリオールであることを特徴とする請求項9に記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記非極性材料からなるエアバッグカバーは、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーまたはポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする請求項1、3〜10の何れかに記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- 前記極性材料からなるシート体は、エンブレムプレートであることを特徴とする請求項11に記載のエアバッグカバーにシート体を取り付ける方法。
- (i)ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体、またはポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体と、
(ii)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる縮合重合系熱可塑性ブロック弾性体とを、主成分とする介在層を介して、
エンブレムプレートその他のシート体が、エアバッグカバーの一主面に熱融着してあるエアバッグカバー組立体。
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