JP4301328B2 - ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体を阻止する方法 - Google Patents
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Description
配列番号:1 ブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの部分塩基配列及び部分予想アミノ酸配列。
材料と方法
細胞
ブタの細胞と組織は屠殺場で屠殺直後の動物から入手した。全血を800×gで遠心して、赤血球(RBC)を得てリン酸塩類緩衝溶液(PBS)で3回洗浄し、ブタ末梢血中リンパ球(PBL)はISOPAQUEFICOLLを用いた密度勾配遠心法で単離した(Vaughan他,Transplantation 36:446-450,1983)。ブタ脾細胞は脾臓全体から得たもので、組織を篩に通すことでバラバラに細切して単細胞懸濁液とした。内皮細胞(EC)の培養は、無菌ブタ大動脈をコラゲナーゼ・タイプ4(Worthington Biochemical Corp.社製,米国ニュージャージー州)で処理した後、単離した細胞をゼラチン被覆平板上ダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)(ICN Biochemicals Australasia Pty Ltd.社製,オーストラリア国ニューサウスウェールズ州セブンヒルズ)中37℃で増殖させることにより、確立した。これらのEC培養細胞が内皮細胞由来のものであることは、ウサギ抗ヒトフォンビルブランド因子抗体(Dako A/S社製,コペンハーゲン)及び間接免疫蛍光法で確認した。用いたCOS細胞は完全補足DMEM培地中で維持した。
ヒト血清は一群の健常献血者から得たもので、使用前に加熱不活化してプールしておいたものである。mAb HuLy-m3(CD48)を陰性対照として用いた(上掲のVaughan他の報文)。IgMの破壊には、ヒト血清を同じ体積の5〜200mMの2-メルカプトエタノールと37℃で1時間インキュベートした。
プールしておいた血清を同体積の洗浄充填細胞に37℃で15分間、4℃で15分間吸収させ、得られた血清について同じ操作を3回繰り返した。メリビオース-アガロース(Sigma社製,米国ミズーリ州セントルイス)及びセファロース(Pharmacia LKB Biotechnology社製,スウェーデン国ウプサラ)を用いた吸収の場合は、同体積の充填ビーズと血清を37℃で16時間インキュベートして、遠心でビーズを除去し、この吸収操作を数回繰り返した。
a)血球凝集反応:96穴プレートに入ったヒト血清50μlに0.1%ブタRBCを50μl加え、37℃で30分間、室温で30分間及び氷浴上で60分間インキュベートしてから、血球凝集の有無について巨視的及び顕微鏡学的に判定した。b)ロゼット形成:塩化第二クロムでヒツジ抗ヒトIgGをヒツジRBCにカップリングして、ロゼット形成アッセイ(Parish他,J.Immunol.Methods 20:173-183,1978)に用いた。c)サイトフルオログラフィ分析はFACScan(Becton Dickinson社製,米国カリフォルニア州サンホセ)で行った(Vaughan他,Immunogenetics 33:113-117,1991)。d)間接免疫蛍光分析は、フルオレセイン標識ヒツジ抗ヒトIgM又はIgG(Silenus Laboratories Pty Ltd社製,オーストラリア国ヴィクトリア州ホーソーン)を用いて、6穴組織培養平板上の細胞単層で行った(上掲のVaughanの報文)。
次の2通りの糖阻害アッセイを行った。a)96穴プレートに入ったヒト血清2倍稀釈系列50μlに50μlの糖を加え、46℃で一晩インキュベートし、次いで0.1%ブタRBCを50μl加えて血球凝集アッセイを行った。b)血球凝集力価が50%となる稀釈率よりも低い稀釈率でPBS中に稀釈したヒト血清を糖2倍稀釈系列(300mMから開始)に加えて、46℃で一晩インキュベートし、しかる後に0.1%ブタRBCを50μl加えて血球凝集アッセイを行った。
マウスα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼの公知の配列(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を利用して、マウスα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするcDNAクローンを生産した。簡単に述べると、成熟αGTの最初の6個のアミノ酸をコードしたセンスオリゴヌクレオチドであってHindIII制限酵素部位を含んでいるαGT-1(5′-GAATTCAAGC TTATGATCAC TATGCTTCAAG-3′)と、成熟αGTの最後の5個のアミノ酸とインフェーズ終結コドンをコードしたアンチセンスオリゴヌクレオチドであってPstI制限酵素部位を含んでいるαGT-2(5′-GAATTCCTGC AGTCAGACAT TATTCTAAC-3′)の2種類のオリゴヌクレオチドを合成した。このオリゴヌクレオチド対を使用して、C57BL/6脾細胞cDNAライブラリー(Sandrin他,J.Immunol.194:1636-1641,1992)から1185bpフラグメントを増幅した。この1185bpフラグメントを低ゲル化点アガロースゲルで精製し、HindIII及びPstI(Pharmacia社製)制限エンドヌクレアーゼで消化して、T4リガーゼ(Pharmacia社製)を用いてHindIII/pstI消化CDM8ベクター(Seed,B.,Nature 329:840-842,1987)に指向的にクローニングした。この連結産物でMC1061/p3を形質転換して、生成コロニーから以降の研究用DNAを調製した。以降の研究のために、1185bpフラグメントを有する1種類のプラスミド(paGT-3)を選択した。プラスミドDNAを調製して、正しいDNA配列であることを確認するためにその配列を決定し、DEAE/デキストランを利用したCOS細胞トランスフェクション実験(Vaughan他,Immunogenetics33:113-117,1991;Sandrin他,J.Immunol.194:1636-1641,1992;Seed,B.,Nature329:840-842,1987)に使用した。
ヒト抗ブタ抗体による各種細胞に存在するエピトープの検出
ヒト血清中にブタ細胞に対する抗体が含まれていて、それが主にIgMクラスからなっていることを確認するために、ヒト血清のプール(10人のドナーから得た)を調製し、ブタ赤血球(血球凝集テストによる)、ブタリンパ球(ロゼット形成テスト及びフローサイトメトリーによる)、ブタ脾細胞(ロゼット形成テストによる)及びブタ内皮細胞(フローサイトメトリーによる)と反応する抗体が含まれていることを見出だした(図1及び図2)。吸収試験の結果は、RBC・脾細胞又はPBLで吸収処理すると他の細胞との反応性が除かれることから(図1A及び図2)、これらの組織すべてに同一の異種抗原が存在していることを示していた(図1及び図2)。ECを用いて血清プールを吸収処理すると、EC反応性抗体がすべて除かれる(図2a)と同時に、すべてのPBL反応性抗体が完全に除かれ、かつRBC血球凝集性抗体がほとんどすべて除かれる(力価が1/128〜1/2に落ちる)(図1A)。RBCで吸収処理するとEC反応性抗体の75%が除かれ(図2B)、脾細胞で吸収処理するとEC反応性抗体が完全に除かれる(図2C)ことが、フローサイトメトリーで判明した。このようにブタの赤血球、PBL、脾細胞及び内皮細胞には共通のエピトープが存在している。
主に末端ガラクトース残基に対するヒト抗ブタ抗体の反応
様々な炭水化物による血球凝集反応の阻止能力を調べた(図4)。力価の減少で阻止能力を測定すると、テストした糖のうち、500mMのガラクトース、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、メリビオース及びスタキオースで阻止が観察され(これらすべてについて血清プールの力価が75%低下した)(図4)、300mMのD-ガラクトサミンで力価が50%低下したのが観察された(図4)。これら以外のテストした単糖類(図4の中の説明に記載)では、いずれも、血球凝集力価には何の影響もなかった(図4)。メリビオースもスタキオースも末端ガラクトース残基を有していることから、上記の結果はガラクトースがエピトープの一部であることを示している。興味深いことに、α(メチル-α-D-ガラクトピラノシド、メリビオース及びスタキオース)型の立体配置とβ(メチル-β-D-ガラクトピラノシド)型の立体配置のガラクトースでは血清阻止能力に差がある(β型立体配置のものは血清を阻止する能力がない)。
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼでトランスフェクションしたCOS細胞とヒト抗ブタ抗体との反応
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(末端の次のガラクトースにα(1,3)結合した末端ガラクトース残基を転移する酵素)をコードするcDNAは、マウス(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)及びウシ(Joziasse他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)の両方で既にクローニングされている。そのデータを利用して、我々はGalα(1,3)Galエピトープの役割を調べるためのトランスフェクション実験を他の単離に用いた。マウストランスフェラーゼをPCR技術を用いてcDNAライブラリーから単離して、そのPCR産物をCDM8ベクターに指向的にクローニングしてCOS細胞中での発現実験を行った。このcDNAインサートは、報告されているヌクレオチド配列(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)と同一であった。旧世界ザル由来のCOS細胞を選んだのは、この細胞がヒト血清ともIB-4レクチン(このレクチンはGalα(1,3)Galエピトープに対して特異的である)とも反応しないからである(表1)。α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼでCOS細胞をトランスフェクションした後、IB-4レクチンとの結合によって、その細胞表面にGalα(1,3)Galエピトープが検出されたが(表1)、この細胞は血清プールとも強い反応性を有していた。ヒト血清をブタRBCで吸収処理すると、Galα(1,3)Gal+COS細胞に対する反応性が除去された(表1)。血清をプロテインA-セファロースカラムに通しても、FITC抱合ヒツジ抗ヒトIgMを第2抗体として用いたときの血清のGalα(1,3)Gal+COS細胞に対する反応性には何の影響も現れなかった(この結果は反応性細胞の数、染色強度及び血清の力価が同じことに反映されている(表1))。この結果とは対照的に、上記カラムから溶離させた抗体はGalα(1,3)Gal+COS細胞とはほんの少ししか反応せず、そうした反応もFITC抱合ヒツジ抗ヒトIgG又はFITC抱合ヒツジ抗ヒトIgを第2抗体として用いたときにだけ観察され、FITC抱合ヒツジ抗ヒトIgMを用いたときには観察されなかった(表1)。このように、ヒト血清は、Galα(1,3)Gal+COS細胞で発現したGalα(1,3)Galエピトープに対するIgM抗体を有している。CD48+COS細胞が血清ともIB-4レクチンとも反応しないこと(表1)から分かる通り、こうした血清とGalα(1,3)Gal+COS細胞の反応は特異的なものであり、トランスフェクション操作によるものではない。さらに、ブタのRBC(血球凝集法で検出)及びEC(FACS分析で検出)に対する反応性がGalα(1,3)Gal+COS細胞での吸収処理で除去されるのに対して、未トランスフェクションCOS細胞での吸収処理では除去されない。このように、ヒト血清プールにはGalα(1,3)Galエピトープに対する反応性をもつIgM抗体が含まれている。
ブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのクローニング
ネズミのα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのcDNAクローンをハイブリダイゼーションプローブとして利用して、λGT11ブタ脾cDNAライブラリー(Clontech Laboratories社製,カリフォルニア州パロアルト)からSambrook他の文献(上掲)に記載された常法に従いブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをクローニングした。このクローンpPGT-4はAGALに寄託されており、その受託番号はN94/9030である。配列番号:1は、クローンpPGT-4の配列解析によって決定したブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの部分塩基配列及び部分予想アミノ酸配列である。この配列は5′末端側が不完全である。
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするブタ遺伝子の性質並びにその単離
ブタ脾組織から調製したゲノムDNAをEcoRI、BamHI、PstI、HindIII、KpnI及びBstEIIで消化して、0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、ナイロンフィルターに移して、最終洗浄を0.1×SSC,0.1%SDS中65℃で行った。図7に示す通り、ゲノムのサザーンブロッティングの結果は単純なパターンを示しており、この遺伝子がゲノムサイズ約25kbの単コピーとして存在していることが示唆される。
ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体に対する抗イディオタイプ抗体の生産
ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体に対するポリクローナル抗イディオタイプ抗体は、上掲のColigan他の1992年の報文、上掲のHarlow及びLaneの1988年の報文並びに上掲のLiddell及びCryerの1991年の報文に記載された手順にしたがって、調製される。プールしておいたヒト血清からヒト抗Galα(1,3)Gal抗体を実施例3に記載した通り固定化メリビオース(メリビオース-セファロース又はメリビオース-アガロース)に吸収させる。抗体を、常法(高pH)低pH、高塩濃度及び/又はカオトロピック試薬など)を用いて溶離する。適当な緩衝液中で透析した後Fab′フラグメントを調製する。Fab′フラグメントを慣用のアジュバントと共に用いてウサギ、ヤギその他の適当な動物を免疫する。
上記のクローンpPGT-4、pPGT-2、λPGT-g1及びλPGT-g5は、それぞれ、受託番号N94/9030、N94/9029、N94/9027、N94/9028として、Australian Goverment Analytical Laboratories(略号AGAL;住所:1Suakin Street,Pymble,N.S.W.2073,Australia)に寄託されている。これらの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(1977)に基づいて行われたものである。これらの寄託は1994年3月11日になされた。
Claims (12)
- Galα(1,3)Galエピトープとそれに反応するヒト抗体との免疫反応が阻止されたブタ細胞の作成方法であって、配列番号1または配列番号2のクローン化変異体を前記細胞内に導入することを含む、前記ブタ細胞の作成方法。
- クローン化変異体が、配列番号1のクローン化変異体である、請求項1に記載の方法。
- クローン化変異体が、配列番号2のクローン化変異体である、請求項1に記載の方法。
- 変異が、野生型α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼに対してヌクレオチドの欠失、挿入、置換、及び付加から選択される、請求項1に記載の方法。
- 変異が、ヌクレオチドの欠失である、請求項4に記載の方法。
- 変異が、挿入である、請求項4に記載の方法。
- 変異が、置換である、請求項4に記載の方法。
- 変異が、付加である、請求項4に記載の方法。
- クローン化変異体が、機能的なα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードしない、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
- ブタ細胞が、機能的なα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを発現しない、請求項9に記載の方法。
- クローン化変異体が、標的とするネイティブのα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子を機能的に破壊する、請求項1に記載の方法。
- ブタ細胞が、Galα(1,3)Galエピトープを産生しない、請求項10に記載の方法。
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