JP4301328B2 - ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体を阻止する方法 - Google Patents

ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体を阻止する方法 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
本発明は異種移植(異なる生物種間の移植)に関するものであり、特に異種移植片拒絶反応を軽減する方法、動物個体内での異種移植組織の維持、異種移植治療に有用なヌクレオチド配列、拒絶反応耐性を示すトランスジェニック臓器並びにその組織が異種移植に際して拒絶反応耐性を示すようなトランスジェニック動物に関する。
人間の移植用の組織が不足している現状から、臓器源としての可能性をもつ異種移植片について綿密に調査されるようになってきた。しかし、ヒト以外の生物種の組織を人間に対して移植した場合、その生物種に存在する抗原に対して反応する自然抗体が人間の血清中に存在するために超急性拒絶反応を起こしてしまう。かかる超急性拒絶反応は移植して10〜15分以内に起こる。この現象は、一般に、抗体・補体・好中球・血小板その他の炎症メディエーターの幾つか又はこれらすべての存在に依存する。「不調和(discordant)」種間(自然抗体の生ずる種同士)での血管形成臓器の移植において、自然抗体に最初に遭遇する細胞は血管内壁の内皮細胞であり、抗体が異種抗原その他の因子に結合することによってこれらの細胞が活性化され、その結果超急性拒絶反応を引き起こしている可能性が高い。
異種移植組織上で標的となり得る異種抗原の素性については余り判然としていない。Platt他(Transplantation 50:817-822,1990)及びYang他(Transplant.Proc.24:593-594,1992)は様々な分子量の3つの糖タンパク質の組合せ(トリアド)がブタ内皮細胞の表面に存在する主要な標的であるとしている。他の研究者ら(Holgersson他,Transplant.Proc.24:605-608,1992)は糖脂質が最も重要な異種抗原であるとしている。
今回、我々は、異種移植片拒絶反応、特にブタ組織についての異種移植片拒絶反応が、ガラクトースとα(1,3)結合したガラクトース(Galα(1,3)Galエピトープ)に対する反応性抗体と関連していることを発見した。異種移植組織のGalα(1,3)Galエピトープに対する反応性抗体の作用を変化させると拒絶反応に変化が生ずる。
本発明の最初の態様によれば、治療の対象たる動物における異種移植片拒絶反応を防止する方法にして、ガラクトースとα(1,3)結合したガラクトースをもつ異種移植抗原に結合する抗体のアンタゴニストの有効量を当該動物に投与することを含んでなる方法が提供される。
本発明は、別の態様では、動物個体内で異種移植組織を維持する方法にして、異種移植抗原エピトープGalα(1,3)Galに結合する抗体のアンタゴニストの移植片拒絶有効量を当該動物に投与することを含んでなる方法に関する。
本発明のまた別の態様では、Galα(1,3)Galエピトープと抗体の結合を抑止する方法にして、Galα(1,3)Galエピトープに対する抗体の結合を阻止(ブロック)するアンタゴニストを用いて、抗体とエピトープとの相互作用を変化させることを含んでなる方法が提供される。
好ましくは、異種移植の受容者は人間である。年齢は異種移植についての決定因子ではないが、75歳を超える年配者に対しては移植は普通行われない。本発明は特に異種移植組織の人間への移植を主題とする。
異種移植する組織はブタ由来のものが好ましい。ブタ以外の哺乳動物由来の組織についても本発明での使用が見込まれる。異種移植する組織は、例えば腎臓・心臓・肺又は肝臓のような器官(臓器)であるのが好ましい。異種移植組織は、また、器官の一部・細胞集塊・腺などであってもよい。その具体例は、水晶体・ランゲルハンス島細胞・皮膚及び角膜組織などである。Galα(1,3)Galエピトープをもつ抗原を発現する異種移植組織であればどんなものでも本発明に使用することができるので、異種移植組織の素性それ自体は決定的な重要性をもたない。
異種移植組織上にて発現するGalα(1,3)Galエピトープに対して抗体が結合すると、体液性免疫のみならず細胞性免疫による組織片拒絶反応を引き起こして、非常に短時間のうちに(例えば、1時間も経たないうちに)組織片の拒絶をもたらす。抗体とGalα(1,3)Galエピトープの結合反応に拮抗するアンタゴニストは抗体の結合を阻止して、異種移植片拒絶反応を阻害する。抗体の結合が阻止されるため、組織片拒絶反応を引き起こす免疫応答が抑止される。
本発明のさらに別の態様によれば、Galα(1,3)Galに対する抗体の作用を変化させるアンタゴニストが提供される。
Galα(1,3)Gal結合に対する抗体の作用を変化させることのできるアンタゴニストであればどんなものでも本発明に利用し得る。ここでいう「変化」とは、抗体の結合を阻止すること或いはGalα(1,3)Galエピトープに対する抗体の親和反応性を減少させることを意味する。種々の機構が、こうしたエピトープに対する抗体の結合の阻止又は抗体の親和性の減少と結び付き得る。そうした機構には、抗体反応性部位との結合又は会合並びに抗体反応性部位のコンホメーション変化などが含まれ、例えば、活性部位に関与する残基又は活性部位に隣接する残基又は活性部位から遠位にある残基との結合によって、活性部位のコンホメーションが変わり、その結果Galα(1,3)Galエピトープと結合できなくなったり或いはエピトープに対する結合の親和性が低下する場合が挙げられる。例えば、当業者に周知の技術(Coligan他編,CurrentProtocols In Immunology,John Wiley & Sons(ニューヨーク),1992;Harlow及びLane著,Antibodies,ALaboratory Manual,ColdSpring Harbor Laboratory(ニューヨーク),1988;並びにLiddell及びCryer著,A Practical GuideTo Monoclonal Antibodies,John Wiley & Sons(英国ウェストサセックス州チチェスター),1991などを参照)によれば、自然抗体又はそのフラグメントに対して作製した抗イディオタイプ抗体を用いることによって、抗体反応部位のこうしたコンホメーション変化を引き起こすことができる。
同じく当業者に周知の事項であるが、かかる抗イディオタイプ抗体の臨床的有用性を高めるために、例えばFab′フラグメントの調製のような酵素的手法或いはキメラ抗体・人体適応抗体又は単鎖抗体の調製のような組換え技術を用いて、抗イディオタイプ抗体を修飾することもできる。
本発明は特定のアンタゴニストには限定されず、Galα(1,3)Galエピトープに対する特異的抗体の相互作用を変化させるアンタゴニストで非毒性のものであればどんなものでも本発明に使用し得る。好適なアンタゴニストの具体例には、D-ガラクトース、メリビオース、スタキオース、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、D-ガラクトサミン及びこれらの誘導体が含まれる。「誘導体」という用語には、例えば、アルキル・アルコキシ・アルキルコキシ・アラルキルアミン・ヒドロキシ・ニトロ・ヘテロ環・硫酸及び/又はシクロアルキル置換基を単独又はそれらの組合せとして含むもので、アンタゴニスト活性をもつ誘導体が包含される。アンタゴニスト活性の有無は本明細書中に記載された方法によって評価することができる。上記の炭水化物又は誘導体の1種類以上が構成成分として含まれる高分子炭水化物も本発明に利用し得る。
Galα(1,3)Galエピトープとの反応性をもつ抗体の相互作用を変化させるのに有効なアンタゴニストの量は数多くの要因に左右される。かかる要因には、治療すべき動物の種類、移植される組織の生物種、移植受容者の体力(年齢・体重・性別及び健康状態)などが含まれる。人間の移植受容者に例えばブタなどの組織を移植する場合、アンタゴニストの投与量は一般に顧問医師の判断に委ねられるであろう。一例として、人間が被術者である場合のアンタゴニストの移植片拒絶有効量は、単位投与量にして0.01mgから1000gmのオーダーであり、好ましくは、単位投与量にして、10mg〜500mg、さらに好ましくは50mg〜300mg、さらに一段と好ましくは50mg〜200mgである。
拒絶反応を防止して異種移植片を維持するためのアンタゴニストの投与スケジュールは上述の通り様々な要因に左右される。毎日、毎週或いは毎月といった具合に様々な投与体制が考えられる。
アンタゴニストの投与方式及びその投与量は本発明においては決定的な重要性をもたない。アンタゴニストは、非経口投与(静脈内、筋肉内又は臓器内注射)、経口投与、経皮投与、或いは膣腔又は肛門経由で投与してもよいし、或いは当業者に周知のその他の投与法で投与してもよい。アンタゴニストは固形でも液状でもよく、通常は医薬的又は獣医学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含んでいる。本発明において用いることのできる投与形態の具体例は上述の通り当業者には周知であり、例えばRemington’s PharmaceuticalSciences(Mack Publishing Company,10th Edition;この文献は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす)などに記載されている。
本発明のさらに別の態様では、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列並びにその変異体が提供される。当該ヌクレオチド配列としてはブタのα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするものが好ましい。
ヌクレオチド配列はDNAでもRNAでもそれらの混合物であってもよい。当業者に周知の通り、ヌクレオチド配列又は単離核酸は、プラスミドやウイルスベクターなどの、複製用DNA・RNA又はDNA/RNAベクターに挿入することができる(Sambrook他,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(ニューヨーク),Second Edition,1989)。
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター、エンハンサー、及び発現・転写・翻訳に必要なその他の調節配列を含んでいてもよい。かかる配列を含むベクターは、追加遺伝子及び/又は選択マーカー(さらには細胞内でのベクターの増殖及び維持に必要な因子)の挿入のための制限酵素部位を含んでいてもよい。
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列の変異体が特に好ましい。その理由は、かかる変異体を当業者に周知の相同的組換え技術(Capecchi M.R.,“Altering the Genome by Homologous Recombination”,Science 244:1288-1292,1989;Merlino G.T.,“Transgenic Animals in Biomedical Research”,FASEB J.5:2996-3001,1991;Cosgrove他,“Mice Lacking MHC Class IIMolecules”,Cell 66:1051-1066,1991;Zijlstra他,“Germ-line Transmission of adisrupted B2-microglobulin geneproduced by homologous recombination in embryonic stem cells”,Nature 342:435,1989)に利用すれば、野生型α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子を不活性化することができるからである。
変異型α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列には、野生型α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼに対して生成変異体が機能的ガラクトシルトランスフェラーゼをコードしなくなるようにヌクレオチドの欠失・挿入・置換・付加処理を行ったものが含まれる。こうした変異型ヌクレオチド配列を相同的組換え技術に利用することができる。こうした相同的組換え技術においては、変異型配列が、1〜約500個の細胞からなる幹細胞・卵又は新受精細胞中の野生型ゲノム配列と組換えを起こす。相同的組換えに利用されるヌクレオチド配列は単離されたヌクレオチド配列であってもよいし、ベクターに組込まれた形であってもよい。組換えは無秩序に起こる事象であって、組換えに際して機能的遺伝子の破壊が起こる。
野生型遺伝子の機能を破壊するための相同的組換え及びその他の技術で生み出したトランスジェニック動物も、それから得られる器官と同様に、本発明の範囲に含まれる。一例として、非機能的なα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼゲノム配列を有するトランスジェニック動物を生み出すための相同的組換え技術を利用してトランスジェニックブタを作り出すことができる。こうしたトランスジェニック動物から得られる組織を人間の患者への異種移植に利用すれば、Galα(1,3)Galエピトープとそれに対して反応性をもつ循環中のヒト抗体との免疫反応をなくすことができる。このような移植片は移植受容者によって十分に受け入れられると考えられる。移植組織にはGalα(1,3)Galエピトープ関連抗原以外にも免疫反応を誘発する抗原が含まれている可能性があるが、かかる移植組織に対する免疫反応の主原因を取り除けば、普通の拒絶反応治療(シスロスポリンのような免疫抑制剤による治療)と併用することによって異種移植片は比較的十分に受け入れられるようになるはずである。
以下、本発明を非限定的な図面及び実施例を参照して説明する。
配列表の簡単な説明
配列番号:1 ブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの部分塩基配列及び部分予想アミノ酸配列。
配列番号:2 ブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの全塩基配列及び全予想アミノ酸配列。
配列番号:3 PCRプライマーαGT-1の塩基配列。
配列番号:4 PCRプライマーαGT-2の塩基配列。
配列番号:1及び配列番号:2に関して、本発明はこれらに示す特定の配列に限定されるものではなく、上述の変異体に加え、ブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の天然に産する対立型変異体、さらにこれらの配列に示したアミノ酸配列を変えないような核酸変異(例えば、縮重コドンの3番目のヌクレオチドの変更)も含まれる。
実施例1
材料と方法
細胞
ブタの細胞と組織は屠殺場で屠殺直後の動物から入手した。全血を800×gで遠心して、赤血球(RBC)を得てリン酸塩類緩衝溶液(PBS)で3回洗浄し、ブタ末梢血中リンパ球(PBL)はISOPAQUEFICOLLを用いた密度勾配遠心法で単離した(Vaughan他,Transplantation 36:446-450,1983)。ブタ脾細胞は脾臓全体から得たもので、組織を篩に通すことでバラバラに細切して単細胞懸濁液とした。内皮細胞(EC)の培養は、無菌ブタ大動脈をコラゲナーゼ・タイプ4(Worthington Biochemical Corp.社製,米国ニュージャージー州)で処理した後、単離した細胞をゼラチン被覆平板上ダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)(ICN Biochemicals Australasia Pty Ltd.社製,オーストラリア国ニューサウスウェールズ州セブンヒルズ)中37℃で増殖させることにより、確立した。これらのEC培養細胞が内皮細胞由来のものであることは、ウサギ抗ヒトフォンビルブランド因子抗体(Dako A/S社製,コペンハーゲン)及び間接免疫蛍光法で確認した。用いたCOS細胞は完全補足DMEM培地中で維持した。
抗体
ヒト血清は一群の健常献血者から得たもので、使用前に加熱不活化してプールしておいたものである。mAb HuLy-m3(CD48)を陰性対照として用いた(上掲のVaughan他の報文)。IgMの破壊には、ヒト血清を同じ体積の5〜200mMの2-メルカプトエタノールと37℃で1時間インキュベートした。
吸収
プールしておいた血清を同体積の洗浄充填細胞に37℃で15分間、4℃で15分間吸収させ、得られた血清について同じ操作を3回繰り返した。メリビオース-アガロース(Sigma社製,米国ミズーリ州セントルイス)及びセファロース(Pharmacia LKB Biotechnology社製,スウェーデン国ウプサラ)を用いた吸収の場合は、同体積の充填ビーズと血清を37℃で16時間インキュベートして、遠心でビーズを除去し、この吸収操作を数回繰り返した。
血清学的アッセイ
a)血球凝集反応:96穴プレートに入ったヒト血清50μlに0.1%ブタRBCを50μl加え、37℃で30分間、室温で30分間及び氷浴上で60分間インキュベートしてから、血球凝集の有無について巨視的及び顕微鏡学的に判定した。b)ロゼット形成:塩化第二クロムでヒツジ抗ヒトIgGをヒツジRBCにカップリングして、ロゼット形成アッセイ(Parish他,J.Immunol.Methods 20:173-183,1978)に用いた。c)サイトフルオログラフィ分析はFACScan(Becton Dickinson社製,米国カリフォルニア州サンホセ)で行った(Vaughan他,Immunogenetics 33:113-117,1991)。d)間接免疫蛍光分析は、フルオレセイン標識ヒツジ抗ヒトIgM又はIgG(Silenus Laboratories Pty Ltd社製,オーストラリア国ヴィクトリア州ホーソーン)を用いて、6穴組織培養平板上の細胞単層で行った(上掲のVaughanの報文)。
糖阻害
次の2通りの糖阻害アッセイを行った。a)96穴プレートに入ったヒト血清2倍稀釈系列50μlに50μlの糖を加え、46℃で一晩インキュベートし、次いで0.1%ブタRBCを50μl加えて血球凝集アッセイを行った。b)血球凝集力価が50%となる稀釈率よりも低い稀釈率でPBS中に稀釈したヒト血清を糖2倍稀釈系列(300mMから開始)に加えて、46℃で一晩インキュベートし、しかる後に0.1%ブタRBCを50μl加えて血球凝集アッセイを行った。
ネズミGalα(1,3)トランスフェラーゼcDNA構築体
マウスα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼの公知の配列(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を利用して、マウスα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするcDNAクローンを生産した。簡単に述べると、成熟αGTの最初の6個のアミノ酸をコードしたセンスオリゴヌクレオチドであってHindIII制限酵素部位を含んでいるαGT-1(5′-GAATTCAAGC TTATGATCAC TATGCTTCAAG-3′)と、成熟αGTの最後の5個のアミノ酸とインフェーズ終結コドンをコードしたアンチセンスオリゴヌクレオチドであってPstI制限酵素部位を含んでいるαGT-2(5′-GAATTCCTGC AGTCAGACAT TATTCTAAC-3′)の2種類のオリゴヌクレオチドを合成した。このオリゴヌクレオチド対を使用して、C57BL/6脾細胞cDNAライブラリー(Sandrin他,J.Immunol.194:1636-1641,1992)から1185bpフラグメントを増幅した。この1185bpフラグメントを低ゲル化点アガロースゲルで精製し、HindIII及びPstI(Pharmacia社製)制限エンドヌクレアーゼで消化して、T4リガーゼ(Pharmacia社製)を用いてHindIII/pstI消化CDM8ベクター(Seed,B.,Nature 329:840-842,1987)に指向的にクローニングした。この連結産物でMC1061/p3を形質転換して、生成コロニーから以降の研究用DNAを調製した。以降の研究のために、1185bpフラグメントを有する1種類のプラスミド(paGT-3)を選択した。プラスミドDNAを調製して、正しいDNA配列であることを確認するためにその配列を決定し、DEAE/デキストランを利用したCOS細胞トランスフェクション実験(Vaughan他,Immunogenetics33:113-117,1991;Sandrin他,J.Immunol.194:1636-1641,1992;Seed,B.,Nature329:840-842,1987)に使用した。
実施例2
ヒト抗ブタ抗体による各種細胞に存在するエピトープの検出
ヒト血清中にブタ細胞に対する抗体が含まれていて、それが主にIgMクラスからなっていることを確認するために、ヒト血清のプール(10人のドナーから得た)を調製し、ブタ赤血球(血球凝集テストによる)、ブタリンパ球(ロゼット形成テスト及びフローサイトメトリーによる)、ブタ脾細胞(ロゼット形成テストによる)及びブタ内皮細胞(フローサイトメトリーによる)と反応する抗体が含まれていることを見出だした(図1及び図2)。吸収試験の結果は、RBC・脾細胞又はPBLで吸収処理すると他の細胞との反応性が除かれることから(図1A及び図2)、これらの組織すべてに同一の異種抗原が存在していることを示していた(図1及び図2)。ECを用いて血清プールを吸収処理すると、EC反応性抗体がすべて除かれる(図2a)と同時に、すべてのPBL反応性抗体が完全に除かれ、かつRBC血球凝集性抗体がほとんどすべて除かれる(力価が1/128〜1/2に落ちる)(図1A)。RBCで吸収処理するとEC反応性抗体の75%が除かれ(図2B)、脾細胞で吸収処理するとEC反応性抗体が完全に除かれる(図2C)ことが、フローサイトメトリーで判明した。このようにブタの赤血球、PBL、脾細胞及び内皮細胞には共通のエピトープが存在している。
プロテインA-セファロースカラム(IgMは結合しない)に血清を通しても血清の力価が変化せず(図3)、プロテインA-セファロースカラムから溶離したIgG抗体がほんのわずかしかRBCと反応しないことから分かる通り、血清プール中の活性のほとんどはIgGではなくてIgMによるものであった。さらに、IgMは破壊するがIgGを損なうことのない2-メルカプトエタノールで血清を処理すると、抗体活性が完全に失われた(図3)。血清をセファクリルゲルクロマトグラフィーで分画すると、高分子量画分(IgM)はRBCと反応性を有していたが、低分子量画分(IgG)は反応性を有していなかった(データは示さず)。このように、様々なブタ細胞が同じようなエピトープを有しており、すべてがIgM抗体と反応し、我々のアッセイではブタ細胞に対するヒト血清中にはIgG活性は少ししか見出だせなかった。
実施例3
主に末端ガラクトース残基に対するヒト抗ブタ抗体の反応
様々な炭水化物による血球凝集反応の阻止能力を調べた(図4)。力価の減少で阻止能力を測定すると、テストした糖のうち、500mMのガラクトース、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、メリビオース及びスタキオースで阻止が観察され(これらすべてについて血清プールの力価が75%低下した)(図4)、300mMのD-ガラクトサミンで力価が50%低下したのが観察された(図4)。これら以外のテストした単糖類(図4の中の説明に記載)では、いずれも、血球凝集力価には何の影響もなかった(図4)。メリビオースもスタキオースも末端ガラクトース残基を有していることから、上記の結果はガラクトースがエピトープの一部であることを示している。興味深いことに、α(メチル-α-D-ガラクトピラノシド、メリビオース及びスタキオース)型の立体配置とβ(メチル-β-D-ガラクトピラノシド)型の立体配置のガラクトースでは血清阻止能力に差がある(β型立体配置のものは血清を阻止する能力がない)。
凝集を阻止する糖に対する抗体の相対的な結合活性を、凝集力価を50%阻止する糖の濃度から、評価した。こうした阻止は、D-ガラクトース及びメリビオースでは1.5mM未満で達成され、スタキオース及びメチル-α-D-ガラクトピラノシドでは4.7mMで達成され、D-ガラクトサミンでは18.7mMで達成された(図5)。対照的に、D-グルコース及びメチル-β-D-ガラクトピラノシドでは300mM濃度でも何の影響もみられなかった。このように、D-ガラクトースは低濃度(<1.15mM)でも異種抗体の強い阻害剤であるので、D-ガラクトースがエピトープの重要な部分である。また、メチル-α-D-ガラクトピラノシドが低濃度(<1.15mM)で凝集を阻止する能力をもち、それとは対照的にメチル-β-D-ガラクトピラノシド(300mM)が阻止能力をもっていなかったことは、ガラクトース残基(これが末端糖残基である可能性が高い)が次の残基とβ結合ではなくてα結合で結合していることを示している。α結合した末端ガラクトース残基を有するメリビオース(Galα(1,6)Glc)及びスタキオース(Galα(1,6)Galα(1,6)Glcβ(1,2)Fru)で得られた結果は、この結論に一致する。ガラクトサミン(ガラクトースにアミン側鎖の付加したもの)で観察された血球凝集阻止(18.7mMにおいて力価の50%が阻止)は、エピトープに関与する2番目の炭水化物によるためか或いはこの糖に対する異種抗体の親和性が低いことによるためであると考えられる。
ガラクトースとの反応をさらに詳しく調べるために、血清プールを同じ体積のメリビオースセファロース又はセファロース(対照)で4回吸収処理し、メリビオースセファロースで1回吸収処理すると抗体の力価が1/32〜1/4まで下がり、2回連続して吸収処理するとそのさらに1/2まで低下した(図6)。セファロースビーズを用いても何の効果もみられなかった(図6)ことから分かる通り、このような吸収はメリビオースに特異的であった。このように、異種抗原と反応性をもつ抗体の大多数(=94%)はα結合したガラクトースと反応する。
実施例4
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼでトランスフェクションしたCOS細胞とヒト抗ブタ抗体との反応
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(末端の次のガラクトースにα(1,3)結合した末端ガラクトース残基を転移する酵素)をコードするcDNAは、マウス(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)及びウシ(Joziasse他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)の両方で既にクローニングされている。そのデータを利用して、我々はGalα(1,3)Galエピトープの役割を調べるためのトランスフェクション実験を他の単離に用いた。マウストランスフェラーゼをPCR技術を用いてcDNAライブラリーから単離して、そのPCR産物をCDM8ベクターに指向的にクローニングしてCOS細胞中での発現実験を行った。このcDNAインサートは、報告されているヌクレオチド配列(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)と同一であった。旧世界ザル由来のCOS細胞を選んだのは、この細胞がヒト血清ともIB-4レクチン(このレクチンはGalα(1,3)Galエピトープに対して特異的である)とも反応しないからである(表1)。α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼでCOS細胞をトランスフェクションした後、IB-4レクチンとの結合によって、その細胞表面にGalα(1,3)Galエピトープが検出されたが(表1)、この細胞は血清プールとも強い反応性を有していた。ヒト血清をブタRBCで吸収処理すると、Galα(1,3)Gal+COS細胞に対する反応性が除去された(表1)。血清をプロテインA-セファロースカラムに通しても、FITC抱合ヒツジ抗ヒトIgMを第2抗体として用いたときの血清のGalα(1,3)Gal+COS細胞に対する反応性には何の影響も現れなかった(この結果は反応性細胞の数、染色強度及び血清の力価が同じことに反映されている(表1))。この結果とは対照的に、上記カラムから溶離させた抗体はGalα(1,3)Gal+COS細胞とはほんの少ししか反応せず、そうした反応もFITC抱合ヒツジ抗ヒトIgG又はFITC抱合ヒツジ抗ヒトIgを第2抗体として用いたときにだけ観察され、FITC抱合ヒツジ抗ヒトIgMを用いたときには観察されなかった(表1)。このように、ヒト血清は、Galα(1,3)Gal+COS細胞で発現したGalα(1,3)Galエピトープに対するIgM抗体を有している。CD48+COS細胞が血清ともIB-4レクチンとも反応しないこと(表1)から分かる通り、こうした血清とGalα(1,3)Gal+COS細胞の反応は特異的なものであり、トランスフェクション操作によるものではない。さらに、ブタのRBC(血球凝集法で検出)及びEC(FACS分析で検出)に対する反応性がGalα(1,3)Gal+COS細胞での吸収処理で除去されるのに対して、未トランスフェクションCOS細胞での吸収処理では除去されない。このように、ヒト血清プールにはGalα(1,3)Galエピトープに対する反応性をもつIgM抗体が含まれている。
ヒト血清中に含まれるGalα(1,3)Gal反応性抗体のレベルは、ブタ異種移植片に対して患者が超急性拒絶を起こす傾向を求めるのに利用することができる。さらに、このような抗体レベルは、このような異種移植の前に患者に投与すべき抗体アンタゴニストの量の決定に利用することもできる。
こうした抗体のレベルは、上述のトランスフェクションCOS細胞及び未トランスフェクションCOS細胞をGalα(1,3)Gal+及びGalα(1,3)Gal-吸収剤として用いて、次いでブタのRBC及び/又はECに対する吸収処理血清の反応性を測定することによって、効果的に決定することができる。血清抗体のレベルが高いほど、Galα(1,3)Gal+吸収剤に吸収させた血清の反応性とGalα(1,3)Gal-吸収剤に吸収させた血清の反応性との差が大きくなる。他の生物種由来の細胞(例えばヒトの細胞)もこうしたアッセイに使用することができる。また、ネズミのトランスフェラーゼをコードするDNA配列を用いる代りに、ブタのトランスフェラーゼをコードするDNA配列(実施例5参照)を用いることもできる。ネズミとブタのトランスフェラーゼではそれらの作用に差異(例えば、酵素のガラクトース基質の巨大分子環境に対する感受性の違い)がみられる可能性があり、ブタの異種移植に関して問題となるのはブタの巨大分子環境下でのGalα(1,3)Galエピトープに対する抗体のレベルであるので、こうしたブタのトランスフェラーゼが好ましい。
上述の事項に加え、上記のトランスフェクションしたGalα(1,3)Gal-細胞は、ヒト血清から抗Galα(1,3)Gal抗体を除去するための吸収剤として用いることもでき、例えば、こうした細胞を固体担体に結合して、その固定化細胞に血清を通せばよい。
実施例5
ブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのクローニング
ネズミのα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのcDNAクローンをハイブリダイゼーションプローブとして利用して、λGT11ブタ脾cDNAライブラリー(Clontech Laboratories社製,カリフォルニア州パロアルト)からSambrook他の文献(上掲)に記載された常法に従いブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをクローニングした。このクローンpPGT-4はAGALに寄託されており、その受託番号はN94/9030である。配列番号:1は、クローンpPGT-4の配列解析によって決定したブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの部分塩基配列及び部分予想アミノ酸配列である。この配列は5′末端側が不完全である。
pPGT-4クローンのcDNAインサートをハイブリダイゼーションプローブとして利用して、λGT10中の5′STRECHブタ肝cDNAライブラリーからSambrook他の文献(上掲)に記載された常法に従いブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼの5′末端をクローニングした。上記インサートは、λオリゴヌクレオチド及びブタの配列に合わせて作製したオリゴヌクレオチドを用いたPCR技術で得た。このPCR産物をSmaI切断pBLUESCRIPTKS+にクローニングした。このクローンpPGT-2はAGALに寄託されており、その受託番号はN94/9029である。
配列番号:2は、クローンpPGT-4及びpPGT-2の配列解析によって決定したブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの全塩基配列及び全予想アミノ酸配列である。このブタのトランスフェラーゼの配列はネズミ及びウシα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のいずれとも高い相同性を示す。
配列番号:1及び配列番号:2の部分cDNA及び全cDNAのいずれも、上述の異種移植治療に用いることができる。例えば、当業者に周知の技術を利用して、配列番号:1又は配列番号:2のいずれかのヌクレオチド配列の全体又は一部を、複製DNA・RNA又はDNA/RNAベクターに挿入すれば、これを用いてトランスジェニック細胞又は動物中でアンチセンスRNAが発現するように仕向けることによって、ブタ細胞中でのGalα(1,3)トランスフェラーゼの発現を低下させることができる。Biotechniques,6(10):958-976,1988などを参照。
さらに、次の実施例で説明する通り、配列番号:1又は配列番号:2の配列は、ブタα(1,3)トランスフェラーゼをコードするゲノムクローンの性状分析や単離のためのハイブリダイゼーションプローブとして用いることもできる。ゲノムヌクレオチド配列の変異体も、上述した通りブタ細胞中で機能的遺伝子の破壊を起こすような相同的組換え技術に用いることができる。
実施例6
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするブタ遺伝子の性質並びにその単離
ブタ脾組織から調製したゲノムDNAをEcoRI、BamHI、PstI、HindIII、KpnI及びBstEIIで消化して、0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、ナイロンフィルターに移して、最終洗浄を0.1×SSC,0.1%SDS中65℃で行った。図7に示す通り、ゲノムのサザーンブロッティングの結果は単純なパターンを示しており、この遺伝子がゲノムサイズ約25kbの単コピーとして存在していることが示唆される。
pPGT-4クローンのcDNAインサートをハイブリダイゼーション用のプローブとして利用して、ブタゲノムDNAEMBLライブラリー(Clontech Laboratories社製,カリフォルニア州パロアルト)からSambrook他の文献(上掲)に記載された常法に従いブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子をクローニングした。このクローニングの結果、ブタトランスフェラーゼ遺伝子の異なる領域を含んだλPGT-g1とλPGT-g5の2つのλファージクローンを単離した。
上述の通り、相同的組換え技術を利用して目標とする酵素のネイティブな遺伝子を破壊するために、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼの遺伝子を用いることができる。この技術で用いられる慣用技術によれば、このような遺伝子破壊は、この実施例で得られたようなゲノムクローンから得られるフラグメントを利用して行われる。遺伝子破壊は体細胞又は幹細胞で行うことができる(上掲のCapecchiの1989の報文参照)。このような遺伝子操作を施した細胞はGalα(1,3)Galエピトープを産生しないので、こうした細胞自体又はその子孫はヒトの体内で超急性拒絶反応を誘起する可能性が少なく、人間の患者への異種移植に適している。
実施例7
ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体に対する抗イディオタイプ抗体の生産
ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体に対するポリクローナル抗イディオタイプ抗体は、上掲のColigan他の1992年の報文、上掲のHarlow及びLaneの1988年の報文並びに上掲のLiddell及びCryerの1991年の報文に記載された手順にしたがって、調製される。プールしておいたヒト血清からヒト抗Galα(1,3)Gal抗体を実施例3に記載した通り固定化メリビオース(メリビオース-セファロース又はメリビオース-アガロース)に吸収させる。抗体を、常法(高pH)低pH、高塩濃度及び/又はカオトロピック試薬など)を用いて溶離する。適当な緩衝液中で透析した後Fab′フラグメントを調製する。Fab′フラグメントを慣用のアジュバントと共に用いてウサギ、ヤギその他の適当な動物を免疫する。
得られたポリクローナル抗血清がヒト抗体の反応性部位のコンホメーションを変えてGalα(1,3)Galエピトープに対するその親和性を低下させる能力を有しているか否かについて試験する。そうした親和性を低下させる血清が所望の抗イディオタイプ抗体を構成する。
モノクローナル抗体は、同じFab′フラグメントをマウスの適当な株を免疫するための抗原として用いることによって生産される。こうして免疫したマウスの脾細胞をマウスのミエローマ細胞と融合することによってハイブリドーマを作る。上清を試験して、ヒト抗体の反応性部位のコンホメーションを変えてGalα(1,3)Galエピトープに対するその親和性を低下させる能力をもつ抗体の有無を確認する。そうした親和性を低下させる抗体が所望のモノクローナル抗イディオタイプ抗体を構成する。
異種反応性IgMのほとんどが一種類のトランスフェラーゼに対するものであるという今回の知見から、相同的組換え技術を利用しての標的α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の破壊によって、当該エピトープを欠いたトランスジェニックブタを生産できる見込みが増した。このような遺伝的に改変したブタは移植に用いることができるはずである。上記遺伝子を破壊しても、通常は当該遺伝子がなくてもブタ及びヒトの生命には何の悪影響も及ぼさないであろう。
本発明を例示するために説明してきたが、本発明は本明細書中に記載された特定の実施例に限定されるものではない。
寄託
上記のクローンpPGT-4、pPGT-2、λPGT-g1及びλPGT-g5は、それぞれ、受託番号N94/9030、N94/9029、N94/9027、N94/9028として、Australian Goverment Analytical Laboratories(略号AGAL;住所:1Suakin Street,Pymble,N.S.W.2073,Australia)に寄託されている。これらの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(1977)に基づいて行われたものである。これらの寄託は1994年3月11日になされた。
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図1Aは、プールしておいたヒト血清の、吸収処理の前後における力価である。力価は、RBC(斜線を付した棒)に対する血球凝集反応並びにPBL(中抜きの棒)及び脾細胞(黒塗りの棒)に対するロゼット形成アッセイで得た。吸収試験の結果は、RBC・脾細胞・PBLで吸収処理すると他の細胞との反応性が除かれることから(図1A及び図2)、これらの組織すべてに同一の異種抗原が存在していることを示している(図1及び図2)。ECを用いて血清プールを吸収処理すると、EC反応性抗体がすべて除かれる(図2A)と同時に、すべてのPBL反応性抗体が完全に除かれ、かつRBC血球凝集性抗体がほとんどすべて除かれる(力価が1/128〜1/2に落ちる)(図1A)。RBCで吸収処理するとEC反応性抗体の75%が除かれ(図2B)、脾細胞で吸収処理するとEC反応性抗体が完全に除かれる(図2C)ことが、フローサイトメトリー(流動細胞計測法)で判明した。このようにブタの赤血球、PBL、脾細胞及び内皮細胞には共通のエピトープが存在している。ECで吸収処理した血清は、PBL及び脾細胞に対しては試験しなかった。図1Bについては、図3参照。 吸収処理の前後における、プールしておいたヒト血清とブタECの試験。各グラフにおいて、吸収処理した血清(点線)又は未吸収血清(実線)を用いてECを試験した。血清の吸収処理は、EC(グラフA)、RBC(グラフB)及び脾細胞(グラフC)を用いて行った。ヒト抗体の結合は、ヒツジ抗ヒトIgMで検出し、フローサイトメトリーで分析した。 処理済ヒト血清及び未処理ヒト血清の血球凝集力価。未処理ヒト血清(A);プロテインA非結合免疫グロブリン(B);プロテインA溶離免疫グロブリン(C);2-メルカプトエタノールで処理した血清(D)。図1Bは、同じデータを示すとともに、高分子量免疫グロブリン画分を用いて得られた追加データも示してある。図1B:未処理ヒト血清(A):プロテインA非結合免疫グロブリン(B);高分子量免疫グロブリン画分(C);プロテインA溶離免疫グロブリン(D);2-メルカプトエタノールで処理した血清(E)。 正常ヒト血清の血球凝集反応の炭水化物による阻止。ヒト血清の力価を各種の300mM炭水化物溶液の存在下で測定した。 正常ヒト血清の血球凝集力価を50%阻止する炭水化物濃度。図4で血球凝集を阻止した炭水化物だけをこの実験に使用し、グルコース及びメチル-β-ガラクトピラノシドを陰性対照として用いた。 メリビオースカラムによる吸収処理の前後におけるヒト血清の、ブタRBCに対する血球凝集力価。同じ体積のメリビオースセファロース(黒塗りの棒)又はセファロース(中抜きの棒)でヒト血清を吸収させ、その吸収処理の回数を図の横軸に示す。 クローンpPGT-4のcDNAインサートをプローブとして用いたブタゲノムDNAのサザーンブロッティングの結果。

Claims (12)

  1. Galα(1,3)Galエピトープとそれに反応するヒト抗体との免疫反応が阻止されたブタ細胞の作成方法であって、配列番号1または配列番号2のクローン化変異体を前記細胞内に導入することを含む、前記ブタ細胞の作成方法。
  2. クローン化変異体が、配列番号1のクローン化変異体である、請求項1に記載の方法。
  3. クローン化変異体が、配列番号2のクローン化変異体である、請求項1に記載の方法。
  4. 変異が、野生型α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼに対してヌクレオチドの欠失、挿入、置換、及び付加から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 変異が、ヌクレオチドの欠失である、請求項4に記載の方法。
  6. 変異が、挿入である、請求項4に記載の方法。
  7. 変異が、置換である、請求項4に記載の方法。
  8. 変異が、付加である、請求項4に記載の方法。
  9. クローン化変異体が、機能的なα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードしない、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
  10. ブタ細胞が、機能的なα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを発現しない、請求項9に記載の方法。
  11. クローン化変異体が、標的とするネイティブのα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子を機能的に破壊する、請求項1に記載の方法。
  12. ブタ細胞が、Galα(1,3)Galエピトープを産生しない、請求項10に記載の方法。
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