JP2006136332A - 異種移植治療におけるブタGa1α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼの使用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ブタGalα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするDNA配列並びに当該配列を含んだクローンが提供される。ブタGalα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼはブタ細胞表面にGalα(1,3)Galエピトープを生じさせる。このエピトープはヒト抗Galα(1,3)Gal抗体によって認識され、このヒト抗Galα(1,3)Gal抗体が異種移植されたブタの細胞、組織及び器官の超急性拒絶反応の原因となる。このような超急性拒絶を軽減する方法として抗体の作用を変化させるアンタゴニストも提供される。
【選択図】なし
Description
、経口投与、経皮投与、或いは膣腔又は肛門経由で投与してもよいし、或いは当業者に周知のその他の投与法で投与してもよい。アンタゴニストは固形でも液状でもよく、通常は医薬的又は獣医学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含んでいる。本発明において用いることのできる投与形態の具体例は上述の通り当業者には周知であり、例えばRemington’s PharmaceuticalSciences(Mack Publishing Company,10th Edition;この文献は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす)などに記載されている。
配列番号:1 ブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの部分塩基配列及び部分予想アミノ酸配列。
材料と方法
細胞 ブタの細胞と組織は屠殺場で屠殺直後の動物から入手した。全血を800×gで遠心して、赤血球(RBC)を得てリン酸塩類緩衝溶液(PBS)で3回洗浄し、ブタ末梢血中リンパ球(PBL)はISOPAQUEFICOLLを用いた密度勾配遠心法で単離した(Vaughan他,Transplantation 36:446-450,1983)。ブタ脾細胞は脾臓全体から得たもので、組織を篩に通すことでバラバラに細切して単細胞懸濁液とした。内皮細胞(EC)の培養は、無菌ブタ大動脈をコラゲナーゼ・タイプ4(Worthington Biochemical Corp.社製,米国ニュージャージー州)で処理した後、単離した細胞をゼラチン被覆平板上ダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)(ICN Biochemicals Australasia Pty Ltd.社製,オーストラリア国ニューサウスウェールズ州セブンヒルズ)中37℃で増殖させることにより、確立した。これらのEC培養細胞が内皮細胞由来のものであることは、ウサギ抗ヒトフォンビルブランド因子抗体(Dako A/S社製,コペンハーゲン)及び間接免疫蛍光法で確認した。用いたCOS細胞は完全補足DMEM培地中で維持した。
ヒト抗ブタ抗体による各種細胞に存在するエピトープの検出 ヒト血清中にブタ細胞に対する抗体が含まれていて、それが主にIgMクラスからなっていることを確認するために、ヒト血清のプール(10人のドナーから得た)を調製し、ブタ赤血球(血球凝集テストによる)、ブタリンパ球(ロゼット形成テスト及びフローサイトメトリーによる)、ブタ脾細胞(ロゼット形成テストによる)及びブタ内皮細胞(フローサイトメトリーによる)と反応する抗体が含まれていることを見出だした(図1及び図2)。吸収試験の結果は、RBC・脾細胞又はPBLで吸収処理すると他の細胞との反応性が除かれることから(図1A及び図2)、これらの組織すべてに同一の異種抗原が存在していることを示していた(図1及び図2)。ECを用いて血清プールを吸収処理すると、EC反応性抗体がすべて除かれる(図2a)と同時に、すべてのPBL反応性抗体が完全に除かれ、かつRBC血球凝集性抗体がほとんどすべて除かれる(力価が1/128〜1/2に落ちる)(図1A)。RBCで吸収処理するとEC反応性抗体の75%が除かれ(図2B)、脾細胞で吸収処理するとEC反応性抗体が完全に除かれる(図2C)ことが、フローサイトメトリーで判明した。このようにブタの赤血球、PBL、脾細胞及び内皮細胞には共通のエピトープが存在している。
主に末端ガラクトース残基に対するヒト抗ブタ抗体の反応 様々な炭水化物による血球凝集反応の阻止能力を調べた(図4)。力価の減少で阻止能力を測定すると、テストした糖のうち、500mMのガラクトース、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、メリビオース及びスタキオースで阻止が観察され(これらすべてについて血清プールの力価が75%低下した)(図4)、300mMのD-ガラクトサミンで力価が50%低下したのが観察された(図4)。これら以外のテストした単糖類(図4の中の説明に記載)では、いずれも、血球凝集力価には何の影響もなかった(図4)。メリビオースもスタキオースも末端ガラクトース残基を有していることから、上記の結果はガラクトースがエピトープの一部であることを示している。興味深いことに、α(メチル-α-D-ガラクトピラノシド、メリビオース及びスタキオース)型の立体配置とβ(メチル-β-D-ガラクトピラノシド)型の立体配置のガラクトースでは血清阻止能力に差がある(β型立体配置のものは血清を阻止する能力がない)。
は、エピトープに関与する2番目の炭水化物によるためか或いはこの糖に対する異種抗体の親和性が低いことによるためであると考えられる。
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼでトランスフェクションしたCOS細胞とヒト抗ブタ抗体との反応 α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(末端の次のガラクトースにα(1,3)結合した末端ガラクトース残基を転移する酵素)をコードするcDNAは、マウス(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)及びウシ(Joziasse他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)の両方で既にクローニングされている。そのデータを利用して、我々はGalα(1,3)Galエピトープの役割を調べるためのトランスフェクション実験を他の単離に用いた。マウストランスフェラーゼをPCR技術を用いてcDNAライブラリーから単離して、そのPCR産物をCDM8ベクターに指向的にクローニングしてCOS細胞中での発現実験を行った。このcDNAインサートは、報告されているヌクレオチド配列(Larsen他,J.Biol.Chem.264:14290-14297,1989)と同一であった。旧世界ザル由来のCOS細胞を選んだのは、この細胞がヒト血清ともIB-4レクチン(このレクチンはGalα(1,3)Galエピトープに対して特異的である)とも反応しないからである(表1)。α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼでCOS細胞をトランスフェクションした後、IB-4レクチンとの結合によって、その細胞表面にGalα(1,3)Galエピトープが検出されたが(表1)、この細胞は血清プールとも強い反応性を有していた。ヒト血清をブタRBCで吸収処理すると、Galα(1,3)Gal+COS細胞に対する反応性が除去された(表1)。血清をプロテインA-セファロースカラムに通しても、FITC抱合ヒツジ抗ヒトIgMを第2抗体として用いたときの血清のGalα(1,3)Gal+COS細胞に対する反応性には何の影響も現れなかった(この結果は反応性細胞の数、染色強度及び血清の力価が同じことに反映されている(表1))。この結果とは対照的に、上記カラムから溶離させた抗体はGalα(1,3)Gal+COS細胞とはほんの少ししか反応せず、そうした反応もFITC抱合ヒツジ抗ヒトIgG又はFITC抱合ヒツジ抗ヒトIgを第2抗体として用いたときにだけ観察され、FITC抱合ヒツジ抗ヒトIgMを用いたときには観察されなかった(表1)。このように、ヒト血清は、Galα(1,3)Gal+COS細胞で発現したGalα(1,3)Galエピトープに対するIgM抗体を有している。CD48+COS細胞が血清ともIB-4レクチンとも反応しないこと(表1)から分かる通り、こうした血清とGalα(1,3)Gal+COS細胞の反応は特異的なものであり、トランスフェクション操作によるものではない。さらに、ブタのRBC(血球凝集法で検出)及びEC(FACS分析で検出)に対する反応性がGalα(1,3)Gal+COS細胞での吸収処理で除去されるのに対して、未トランスフェクションCOS細胞での吸収処理では除去されない。このように、ヒト血清プールにはGalα(1,3)Galエピトープに対する反応性をもつIgM抗体が含まれている。
ブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのクローニング ネズミのα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼのcDNAクローンをハイブリダイゼーションプローブとして利用して、λGT11ブタ脾cDNAライブラリー(Clontech Laboratories社製,カリフォルニア州パロアルト)からSambrook他の文献(上掲)に記載された常法に従いブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをクローニングした。このクローンpPGT-4はAGALに寄託されており、その受託番号はN94/9030である。配列番号:1は、クローンpPGT-4の配列解析によって決定したブタGalα(1,3)トランスフェラーゼの部分塩基配列及び部分予想アミノ酸配列である。この配列は5′末端側が不完全である。
α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするブタ遺伝子の性質並びにその単離 ブタ脾組織から調製したゲノムDNAをEcoRI、BamHI、PstI、HindIII、KpnI及びBstEIIで消化して、0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、ナイロンフィルターに移して、最終洗浄を0.1×SSC,0.1%SDS中65℃で行った。図7に示す通り、ゲノムのサザーンブロッティングの結果は単純なパターンを示しており、この遺伝子がゲノムサイズ約25kbの単コピーとして存在していることが示唆される。
ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体に対する抗イディオタイプ抗体の生産 ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体に対するポリクローナル抗イディオタイプ抗体は、上掲のColigan他の1992年の報文、上掲のHarlow及びLaneの1988年の報文並びに上掲のLiddell及びCryerの1991年の報文に記載された手順にしたがって、調製される。プールしておいたヒト血清からヒト抗Galα(1,3)Gal抗体を実施例3に記載した通り固定化メリビオース(メリビオース-セファロース又はメリビオース-アガロース)に吸収させる。抗体を、常法(高pH)低pH、高塩濃度及び/又はカオトロピック試薬など)を用いて溶離する。適当な緩衝液中で透析した後Fab′フラグメントを調製する。Fab′フラグメントを慣用のアジュバントと共に用いてウサギ、ヤギその他の適当な動物を免疫する。
Claims (26)
- 下記の配列を含んでなる単離核酸分子。
(a)配列番号:1の連続するヌクレオチドからなるセンス配列であって、当該センス配列がブタゲノムに特有のものであると同時にブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の同定及び/又は単離のためのPCRプライマー又はハイブリダイゼーションプローブとして十分に役立つ鎖長をもつものであるセンス配列;又は
(b)上記配列(a)に相補的なアンチセンス配列;又は
(c)上記配列(a)と(b)の両方。 - 請求項1記載の単離核酸分子にして、前記センス鎖が配列番号:1の少なくとも21個の連続するヌクレオチドを含んでいることを特徴とする単離核酸分子。
- 下記の配列を含んでなる単離核酸分子。
(a)配列番号:2の連続するヌクレオチドからなるセンス配列であって、当該センス配列がブタゲノムに特有のものであると同時にブタα(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の同定及び/又は単離のためのPCRプライマー又はハイブリダイゼーションプローブとして十分に役立つ鎖長をもつものであるセンス配列;又は
(b)上記配列(a)に相補的なアンチセンス配列;又は
(c)上記配列(a)と(b)の両方。 - 請求項3記載の単離核酸分子にして、前記センス鎖が配列番号:1の少なくとも21個の連続するヌクレオチドを含んでいることを特徴とする単離核酸分子。
- ブタゲノムに特有のヌクレオチドの配列を含んでなるクローン化ブタゲノムDNA分子にして、当該DNA分子が請求項1記載の単離核酸分子と特異的にハイブリダイズすることを特徴とするクローン化ブタゲノムDNA分子。
- ブタゲノムに特有のヌクレオチドの配列を含んでなるクローン化ブタゲノムDNA分子にして、当該DNA分子が請求項3記載の単離核酸分子と特異的にハイブリダイズすることを特徴とするクローン化ブタゲノムDNA分子。
- ブタゲノムに特有のヌクレオチドの配列を含んでなるクローン化ブタゲノムDNA分子にして、当該DNA分子が配列番号:1に示すヌクレオチド配列をもつ核酸プローブと特異的にハイブリダイズすることを特徴とするクローン化ブタゲノムDNA分子。
- ブタゲノムに特有のヌクレオチドの配列を含んでなるクローン化ブタゲノムDNA分子にして、当該DNA分子が配列番号:2に示すヌクレオチド配列をもつ核酸プローブと特異的にハイブリダイズすることを特徴とするクローン化ブタゲノムDNA分子。
- ヒト抗Galα(1,3)Gal抗体を阻止する方法にして、当該抗体の反応性部位のコンホメーションを変化させて当該抗体のGalα(1,3)Galエピトープに対する親和性を低下させることを含んでなる方法。
- 請求項9記載の方法において、前記抗体の反応性部位のコンホメーションを抗イディオタイプ抗体を用いて変化させることを特徴とする方法。
- 請求項1記載の単離核酸分子のコピーを含んでなる哺乳動物細胞にして、当該コピーがネイティブな細胞には存在しないものであることを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項11記載の哺乳動物細胞において、前記コピーと当該細胞のゲノムDNAとの間の相同的組換えの結果として、当該細胞が機能的α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを産生しないことを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項3記載の単離核酸分子のコピーを含んでなる哺乳動物細胞にして、当該コピーがネイティブな細胞には存在しないものであることを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項13記載の哺乳動物細胞において、前記コピーと当該細胞のゲノムDNAとの間の相同的組換えの結果として、当該細胞が機能的α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを産生しないことを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項5記載のクローン化ブタゲノムDNA分子のコピーを含んでなる哺乳動物細胞にして、当該コピーがネイティブな細胞には存在しないものであることを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項15記載の哺乳動物細胞において、前記コピーと当該細胞のゲノムDNAとの間の相同的組換えの結果として、当該細胞が機能的α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを産生しないことを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項6記載のクローン化ブタゲノムDNA分子のコピーを含んでなる哺乳動物細胞にして、当該コピーがネイティブな細胞には存在しないものであることを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項17記載の哺乳動物細胞において、前記コピーと当該細胞のゲノムDNAとの間の相同的組換えの結果として、当該細胞が機能的α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを産生しないことを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項7記載のクローン化ブタゲノムDNA分子のコピーを含んでなる哺乳動物細胞にして、当該コピーがネイティブな細胞には存在しないものであることを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項19記載の哺乳動物細胞において、前記コピーと当該細胞のゲノムDNAとの間の相同的組換えの結果として、当該細胞が機能的α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを産生しないことを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項8記載のクローン化ブタゲノムDNA分子のコピーを含んでなる哺乳動物細胞にして、当該コピーがネイティブな細胞には存在しないものであることを特徴とする哺乳動物細胞。
- 請求項20記載の哺乳動物細胞において、前記コピーと当該細胞のゲノムDNAとの間の相同的組換えの結果として、当該細胞が機能的α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼを産生しないことを特徴とする哺乳動物細胞。
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