JP4300857B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学用途に利用される光学フィルムの製造方法、とくに輝点異物といわれる異物の少ない光学フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
また本発明は、特に液晶画像表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、あるいはまた、有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルムなどの各種機能フィルム等にも利用することができる光学フィルムの製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
従来、液晶画像表示装置(LCD)は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。ところで、このLCDの基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。そして、このような偏光板の保護フィルムとして、セルロースエステルフィルムが広く用いられている。
【0004】
光学フィルムとしての例えばセルローストリアセテートフィルムは、一般に、溶液流延製膜法により製造されている。このセルローストリアセテートフィルムの製造方法は、まず、セルローストリアセテートを、例えばメチレンクロライド等のセルローストリアセテートに対する良溶媒と、例えばメタノール、エタノール、ブタノールあるいはシクロヘキサン等のセルローストリアセテートに対する貧溶媒とを加えた混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加して、セルローストリアセテート溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を調製し、ドープを、鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体(例えばベルトあるいはドラム、以下、支持体とも呼ぶ)上に流延ダイから均一に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥装置あるいはテンターを通して乾燥させ、セルローストリアセテートフィルムを得るものである。
【0005】
このようなLCDの偏光板用の保護フィルムとしては、主に上記のセルローストリアセテート(TAC)フィルムが用いられているが、その厚みは比較的厚いものであった。
【0006】
ところで、近年、液晶画像表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶画像表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶画像表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。しかしながら、セルローストリアセテートフィルムの薄膜品では、輝点異物といわれる異物が発生しやすいという問題があり、このような輝点異物が多く存在するセルローストリアセテートフィルムは、偏光板用保護フィルムとして好ましくないという問題があった。
【0007】
ここで、従来の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムの異物の発生に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−313766号公報
本出願人は、先に、セルロースエステルフィルム中に含有されるカルシウム及びマグネシウムの量を規定することにより、偏光板用保護フィルムに用いられセルロースエステルフィルムの輝点異物、特に偏光板の直交状態(クロスニコル状態)下で観察される輝点異物といわれる異物を減少させるセルロースエステルフィルムの発明を提案した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明のように、セルロースエステルフィルムの原料中の不純物(Ca成分やMg成分)の量を低減させる方法では、セルロースエステルフィルムの製造コストが非常に高くつくという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法において、輝点異物といわれる異物の少ない光学フィルムを得ることができ、しかも製造コストが非常に安くつく、光学フィルムの製造方法を提供しようとすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法であって、光学フィルムのドープ(原料樹脂溶液)を、70〜80%の空隙率及び6〜10μmの濾過精度を有する金属製フィルタで濾過し、該金属製フィルタに使用されるファイバーの直径が2〜15μmであることを特徴としている。
【0012】
上記において、金属製フィルタの空隙率とは、濾材の見かけの総体積からその濾材内に存在する繊維の総体積を差し引いた空隙の割合を表すものである。
【0013】
ここで、本発明における金属製フィルタの空隙率が70%未満であれば、フィルタ圧力損失の上昇が早く、フィルタの交換頻度が増加して、生産効率が低下するので、好ましくない。また金属製フィルタの空隙率が80%を超えると、フィルタの強度が低下してしまうので、好ましくない。
【0014】
また上記において、金属製フィルタの濾過精度とは、コンタミナント(エアクリーナーファインテストダスト:ACFTD)を水に懸濁した液(懸濁液)を濾材に導いて一定圧力(−30mmHg)下で吸引濾過し、濾過前後の懸濁液について各粒径の粒子の個数を測定して捕集効率を算出し、この捕集効率が95%に対応する粒径をもって濾過精度とする。
【0015】
ここで、本発明における金属製フィルタの濾過精度が6μm未満であれば、必要以上に小さな異物を捕集してしまうので、フィルタ圧力損失の上昇が早くなり、生産効率が低下するので、好ましくない。また金属製フィルタの濾過精度が10μmを超えると、捕集すべき異物が捕集されず、所期の効果が得られないので、好ましくない。
【0016】
本発明の光学フィルムの製造方法における金属製フィルタに使用されるファイバーの直径が2μm未満であれば、フィルタの強度が保てないので、好ましくない。また金属製フィルタに使用されるファイバーの直径が15μmを超えると、大きな異物のみしか捕集できないので、好ましくない。
【0017】
本発明の上記の光学フィルムの製造方法によれば、フィルム中の輝点異物の発生を大幅に減少させることができるものである。
【0018】
ここで、輝点異物とは、直交状態(クロスニコル状態)で配置した2枚の偏光子の間に例えばセルローストリアセテートフィルムを置き、一方の偏光子の外側から光を当て、他方の偏光子の外側から顕微鏡で観察すると、異物部分で光が漏れ、星が輝くように光って見える異物である。従って、このような輝点異物が多く存在するセルローストリアセテートフィルムは、偏光板用保護フィルムとして好ましくないものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0020】
本発明の光学フィルムの製造方法において対象となるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートはベース強度が強く、より好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0021】
このセルロースエステルを溶解する溶剤(溶媒)としては、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましい。
【0022】
ここで、本発明の方法において用いる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
【0023】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0024】
ドープを調製する時のセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法があげられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、「ゲル」や「ママコ」と呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
【0025】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
【0026】
溶解後、ドープは冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0027】
光学フィルム中に、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、加工安定剤、及びマット剤などを含有させることにより、光学フィルムに起因する液晶画像表示装置の性能を向上させることができる。
【0028】
これらの可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0029】
本発明で用いる可塑剤としては、特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れた光学フィルムが得られるため、特に好ましい。
【0030】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量は、セルロースエステルに対して1〜15重量%である。液晶画像表示部材用としては、寸法安定性の観点から5〜15重量%がさらに好ましく、特に好ましくは、7〜12重量%である。また、セルロースエステルに対して凝固点が20℃以下の可塑剤の含有量は1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは、3〜7重量%である。
【0031】
本発明による光学フィルムの製造方法において、好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたもので、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0032】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0033】
また本発明による光学フィルムの製造方法において、光学フィルムに滑り性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。
【0034】
本発明に用いられる微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0035】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0036】
本発明の光学フィルムの製造方法においては、溶液流延製膜法により光学フィルムのドープ(原料樹脂溶液)を、70〜80%の空隙率及び6〜10μmの濾過精度を有する金属製フィルタで濾過するものである。
【0037】
また、金属製フィルタに使用されるファイバーの直径が2〜15μmである。
【0038】
前述したように、濾過精度とは、コンタミナント(ACFTD)を水に懸濁した液(懸濁液)を濾材に導いて一定圧力(−30mmHg)下で吸引濾過し、濾過前後の懸濁液について各粒径の粒子の個数を測定して捕集効率を算出し、この捕集効率が95%に対応する粒径をもって濾過精度とする。
【0039】
また、空隙率とは、濾材の見かけの総体積からその濾材内に存在する繊維の総体積を差し引いた空隙の割合を表すものである。
【0040】
このような金属製フィルタに使用されるファイバー(濾材)としては、例えばステンレス鋼製繊維の焼結体よりなるファイバー、ステンレス鋼製粉末の焼結体よりなるファイバーなどがあげられるが、これらのファイバーに限定されない。
【0041】
本発明においては、上記のように、金属製フィルタで濾過したセルロースエステルのドープを支持体上に流延(キャスト工程)した後、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0042】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0043】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0044】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5〜20℃がより好ましい。
【0045】
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
【0046】
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
【0047】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、従来よりも薄膜化されている本発明の製造方法による光学フィルムは、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
【0048】
フィルムの乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。
【0049】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40℃〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80℃〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0050】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0051】
本発明によるセルロースエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、LCDに使用される液晶画像表示素子すなわち偏光板用の保護フィルムに用いられることから、通常、100μm以下であることが好ましく、中でも、厚み50μm以下のセルロースエステルフィルムが好ましい。その理由は、厚み50μm以下のセルロースエステルフィルムは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いられる際に、より品質に対して厳しい性能が求められるためである。
【0052】
上記の本発明の光学フィルムの製造方法によれば、輝点異物といわれる異物の少ない偏光板の保護フィルムに適した品質の良い光学フィルムを製造することができるものである。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
実施例1及び比較例1〜3
(ドープの調製)
セルローストリアセテートのドープを、以下のように調製した。
【0055】
セルローストリアセテート(TAC) 100質量部
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)
ベンゾトリアゾール 2質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
メチレンクロライド 475質量部
エタノール 50質量部
これらを密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら完全に溶解させた。ついで、このドープを、下記の表1に示す4種類の金属製フィルタを用いて濾過し、それぞれを実施例1及び比較例1〜3のドープ試料とした。
【0056】
なお、この場合に使用した金属製フィルタは、3層構成であって、ドープ導入側のファイバー層と中間ファイバー層とドープ排出のファイバー側層とを構成する金属ファイバーの直径(μm)が、下記の表1に示す通りのものである。
【0057】
ここで、金属製フィルタとして、ステンレス鋼製繊維の焼結体よりなるファイバーにより作製したフィルタを使用した。この金属製フィルタの総目付は1600g/m であり、金属製フィルタを構成する3層のうち、ドープ導入側のファイバー層の総目付を300g/m とし、及び中間ファイバー層の総目付を同じく300g/m とし、さらに、ドープ排出のファイバー側層の総目付を1000g/m とした。
【0058】
そして、各金属製フィルタについて、空隙率と濾過精度を、下記の表1にあわせて記載した。
【0059】
【表1】
Figure 0004300857
【0060】
ここで、上記表1から明らかなように、本発明による実施例1において使用する金属製フィルタの空隙率と濾過精度は、本発明の範囲に属するものであり、比較例1〜3において使用する金属製フィルタの空隙率と濾過精度は、本発明の範囲外のものである。
【0061】
(光学フィルムの作製)
つぎに、図示しない溶液流延製膜装置により、上記4種類の金属製フィルタにより濾過した実施例1及び比較例1〜3のドープ試料を用いて、液晶画像表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルムに用いるセルローストリアセテートフィルムを作成した。
【0062】
すなわち、上記のように4種類の金属製フィルタを用いて濾過した温度33℃のドープ試料を、流延ダイから、表面温度が15℃に調整されかつ1500mm幅のステンレス鋼製エンドレスベルト上に流延して、ドープ膜(ウェブ)を形成し、エンドレスベルト上で剥離可能となるまでウェブの溶媒を蒸発させた後、エンドレスベルト上からウェブを剥離した。剥離後のセルローストリアセテートフィルムを1300mm幅にスリットし、その後、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、乾燥フィルムを1100mm幅にスリットし、それぞれ膜厚80μmの実施例1及び比較例1〜3のセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0063】
こうして作製した4種類のセルローストリアセテートフィルムについて、以下の方法により輝点異物の検査を行なった。
【0064】
(フィルムの輝点異物の測定法)
偏光板2枚を直交状態(クロスニコル状態)に配置し、その間に上記4種類の試料をそれぞれ置き、一方の偏光子の外側から光を当て、他方の偏光子の外側から顕微鏡で観察すると、異物部分で光が漏れ、星が輝くように光って見える異物が輝点異物である。この実施例では、顕微鏡で25mm あたりの輝点異物(白く抜けて見える直径10μm以上の異物)の数を100ヶ所測定し、その平均値を求めた。この時の顕微鏡の条件は倍率30倍で透過光源であった。得られた結果を、下記の表2にまとめて示した。輝点異物の数は少ないほど良好な特性である。
【0065】
なお、輝点異物を測定する際に用いる偏光板は、ガラス製のものが好ましい。セルロースエステルフィルムより作製された偏光板は、偏光板自身に輝点異物が含まれているため、試料中の輝点異物と判別しづらいからである。
【0066】
【表2】
Figure 0004300857
【0067】
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1のセルローストリアセテートフィルムによれば、輝点異物の発生個数が非常に少なく、偏光板の保護フィルムに適した光学フィルムとしての品質が改善されていることが判る。
【0068】
これに対し、比較例1〜3では、輝点異物の発生個数が非常に多く、いずれも光学フィルムとしての品質が劣るものであった。
【0069】
【発明の効果】
本発明は、上述のように、溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法であって、光学フィルムのドープ(原料樹脂溶液)を、70〜80%の空隙率及び6〜10μmの濾過精度を有する金属製フィルタで濾過し、該金属製フィルタに使用されるファイバーの直径が2〜15μmであることを特徴とするもので、本発明の光学フィルムの製造方法によれば、輝点異物といわれる異物の少ない偏光板の保護フィルムに適した品質の良い光学フィルムを製造することができ、しかも製造コストが非常に安くつくという効果を奏する。

Claims (1)

  1. 溶液流延製膜法により光学フィルムを製造する方法であって、光学フィルムのドープ(原料樹脂溶液)を、70〜80%の空隙率及び6〜10μmの濾過精度を有する金属製フィルタで濾過し、該金属製フィルタに使用されるファイバーの直径が2〜15μmであることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
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