JP2004323550A - セルロースエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】液晶画像表示装置(LCD)における偏光板の保護フィルムとして好適なセルロースエステルフィルムについて、液晶表示素子の薄膜化に伴い、偏光板用保護フィルムを薄膜化した場合においても、結晶状異物の発生を抑えることができて、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを提供する。
【解決手段】セルロースエステルフィルムは、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過した後、溶液流延製膜法により製造したことを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】セルロースエステルフィルムは、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過した後、溶液流延製膜法により製造したことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶画像表示装置(LCD)における偏光板の保護フィルムとして好適なセルロースエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶画像表示装置(LCD)は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。ところで、このLCDの基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。そして、このような偏光板の保護フィルムとして、セルローストリアセテートフィルムが広く用いられている。
【0003】
ところで、近年、液晶画像表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶画像表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶画像表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。
【0004】
このようなセルロースエステルフィルムは、一般に、溶液流延製膜法により製造されている。このセルロースエステルフィルムの製造方法は、まず、セルロースエステルを、例えばメチレンクロライド等のセルロースエステルに対する良溶媒と、例えばメタノール、エタノール、ブタノールあるいはシクロヘキサン等のセルロースエステルに対する貧溶媒とを加えた混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加して、セルロースエステル溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を調製し、ドープを、鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体(例えばベルトあるいはドラム、以下、支持体とも呼ぶ)上に流延ダイから均一に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥装置あるいはテンターを通して乾燥させ、セルロースエステルフィルムを得るものである。
【0005】
このように、セルロースエステルフィルムの製造方法としては、溶液流延製膜法が一般的であるが、このプロセスにおいてセルロースエステル中に残留する遊離酸や金属イオンが原因となり、異物粒子が発生するという問題があった。とくに上記のように、液晶表示素子としての偏光板の薄膜化に伴い、セルロースエステルフィルムの薄膜化が進み、薄膜での高生産性化が進むと、フィルム中に、結晶状の異物が発生しやすいという問題があった。
【0006】
ところで、従来、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを製造する方法の一つに、短時間に目的の酢化度まで反応を進行させ、素早くその酢化反応を停止させる方法がある。この場合、高濃度の無水酢酸・硫酸が系内に存在する結果となり、従来より多くの遊離酸や金属イオンがセルロースエステルフィルムの製品中に残留する場合がある。
【0007】
そして、セルロースエステル中に残留する遊離酸や金属イオンが原因となって、これを用いたフィルム中に異物粒子が発生することがある。これは遊離酸や金属イオンがフィルム製膜中あるいは製膜後に、フィルム表面近傍に物質移動して結晶が形成されるためにおきるものと考えられる。
【0008】
また、フィルム形成後の湿度の影響などにより、フィルムの内部に残留している遊離酸や金属が表面近傍に拡散し、同様な異物粒子が発生する場合がある。
【0009】
本来、セルロースエステルに含有される遊離酸や金属が少なければ少ないほど、異物の発生が少なくなるが、偏光板用保護フィルムとしては、ある面積に対して一つでも異物が発生すれば、たちまちそれが偏光板用保護フィルムの欠陥となってしまう。つまり、セルロースエステル中に含まれる遊離酸や金属を、極限まで減少させることよりも、いかにフィルム表面上でこれらを粒子化させないかということが、最も重要な課題となる。
【0010】
ここで、従来の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムの異物発生に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−313766号公報
本出願人は、先に、セルロースエステルフィルム中に含有されるカルシウム及びマグネシウムの量を規定することにより、偏光板用保護フィルムに用いられセルロースエステルフィルムの輝点異物、特に偏光板の直交状態(クロスニコル状態)下で観察される輝点異物といわれる異物を減少させるセルロースエステルフィルムの発明を提案した。
【0012】
【特許文献2】
特開平9−40792号公報
従来、高濃度で調製してもドープ粘度が高くならず、成形性のよいセルロースエステルを用いたフィルムの製造方法の発明が提案されている。この先提案のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明では、酢化度、ドープ濃度、ドープ粘度などが規定されており、セルローストリアセテートフィルムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布:Mw/Mn=1.0〜1.7が開示されている。
【0013】
【特許文献3】
特開2000−314811号公報
また本出願人は、先に、液晶ディスプレイなどの偏光板の保護フィルムとして適したセルロースエステルフィルムの発明を提案した。この先提案のセルロースエステルフィルムの発明では、特にフィルムの面品質及び光学的等方性の問題を改良すること、フィルムの加工性の改善、具体的には、製造時にフィルムを所望の形に打ち抜く際のカッティング特性を改善することを目的としていた。そして、この先提案のセルロースエステルフィルムの発明では、セルローストリアセテートフィルムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布:Mw/Mn=3.0〜5.0が開示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1〜3記載の発明では、セルロースエステルフィルム表面への異物粒子の析出を充分に抑制することはできないという問題があった。
【0015】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを使用することによって、フィルム表面への異物粒子の析出を抑制し得ることを見い出した。またセルロースエステルの分子量分布を狭くするための製造方法では、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、その場合は、一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果が高まることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子の薄膜化に伴い、偏光板用保護フィルムを薄膜化した場合においても、結晶状異物の発生を抑えることができて、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを提供しようとすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるセルロースエステルフィルムは、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過した後、溶液流延製膜法により製造したことを特徴としている。
【0018】
このような本発明によるセルロースエステルフィルムによれば、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを使用することによって、フィルム表面への異物粒子の析出を抑制し得るものである。また、セルロースエステルの分子量分布が狭い場合には、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、本発明では、一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果を高めているものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0020】
本発明のセルロースエステルフィルムの主成分であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のベース強度が強くより好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0021】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0022】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないうに定められる。
【0023】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0024】
セルロースエステルと溶剤のほかに必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0025】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0026】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用して用いる場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0027】
本発明のセルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0028】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0029】
また本発明のフィルムに滑り性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。添加液に添加し、フィルムに含有せしめる。また、主ドープに含有せしめてもよいが、微粒子としてはいかなるものも用いることができる。
【0030】
本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0031】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0032】
本発明においては、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過するものである。
【0033】
本発明において、セルロースエステルは、実質的にセルローストリアセテートであるのが、好ましく、セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(分子量分布)Mw/Mnが1.8〜3.0である。
【0034】
平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を算出することができる。
【0035】
平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
【0036】
下記に示す装置、材料を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)および平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布Mw/Mnを算出した。
【0037】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
溶媒(溶離液):ジクロロメタン
カラム名:昭和電工製 GPCk806−GPCk805−GPCk803 (3本)
試料濃度:0.1(重量%)
流量:1.0(ml/分)
試料注入量:100(μl)
標準試料:ポリスチレン(Mw:5,000,000〜6,700,000)
温度:25℃
検出:RI(示唆屈折率計)
ここで、セルロースエステルの分子量分布(Mw/Mn)が1.8未満であれば、セルロースエステルの成形性(特に平面性)に支障をきたすことがあり、製造上、適さない。また分子量分布(Mw/Mn)が3.0を超えると、フィルム中に含まれる微量金属が表面に移動しやすいため、好ましくない。
【0038】
またこのように、セルロースエステルの分子量分布を狭くすると、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、本発明によれば、上記の一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果が高まることを見い出したものである。
【0039】
上記において、本発明で用いる濾紙としては、例えば木材パルプや綿花リンターなどの天然繊維、あるいはレーヨンやポリエステル繊維、あるいはまた木材パルプとレーヨンの複合繊維などを主原料としたものである。そして、通常は、この濾紙を1枚または複数枚重ね合わせて使用する。
【0040】
そして、この濾紙の空隙率が76%未満であると、濾過抵抗が高くなりすぎ、高流量濾過を連続的に行なうことが困難である。一方、空隙率が95%を超えると、濾紙の強度が充分でなく、高流量濾過では濾紙が破壊されてしまうおそれがある。
【0041】
また、本発明において、濾紙の捕集粒子径が0.5μm未満であると、濾紙の表層濾過となるため、急激に濾圧が上昇し、セルローストリアセテートドープの濾過には適さない。また捕集粒子径が5μmを超えると、空隙率に関わらず、除去したい異物が通過してしまうため、不適当である。
【0042】
本発明においては、上記のように、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを溶解して得られるドープを特定の濾紙で濾過した後、このドープを支持体上に流延(キャスト工程)し、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、さらに支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0043】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0044】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40℃〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55℃〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0045】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60%〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0℃〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5℃〜20℃がより好ましい。
【0046】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0047】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40℃〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80℃〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0048】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0049】
本発明によるセルロースエステルフィルムの厚さは、LCDに使用される偏光板の薄膜化、軽量化が要望から、20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは、20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。セルロースエステルフィルムの厚さが20μm未満であれば、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板作成工程上でシワ等の発生によるトラブルが発生しやすくなるので、好ましくない。またセルロースエステルフィルムの厚さが100μmを超えると、LCDの薄膜化に対する寄与が少ないので、好ましくない。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
実施例1
(ドープ1の調製)
数平均分子量Mn=120000、重量平均分子量Mw=250000、分子量分布Mw/Mn=2.1、マグネシウムイオン含有量20ppm、カルシウムイオン含有量50ppmのセルローストリアセテートを使用し、下記の組成物を溶解した。
【0052】
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7重量部
メチレンクロライド 394重量部
エタノール 34重量部
上記の組成物を密閉釜に順次投入し、釜内温度を35℃まで昇温したのち、2時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートを溶解した。
【0053】
(ドープ1の濾過)
濾過面積が170cm2 の濾過器を使用し、レーヨン(平均繊維径10μm)100%の濾紙(空隙率83%、捕集粒子径0.5μm、厚み1.2mm、透気度10秒)により濾過を行なった。そのときのドープ温度は35℃とし、5kgf/cm2 の定圧濾過を行なった。
【0054】
実施例2
(ドープ2の調製)
Mn=120000、Mw=350000、Mw/Mn=2.9、マグネシウムイオン含有量35ppm、カルシウムイオン含有量25ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0055】
実施例3
(ドープ3の調製)
Mn=140000、Mw=255000、Mw/Mn=1.8、マグネシウムイオン含有量50ppm、カルシウムイオン含有量70ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0056】
実施例4
(ドープ4の調製)
Mn=120000、Mw=350000、Mw/Mn=2.9、マグネシウムイオン含有量50ppm、カルシウムイオン含有量50ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0057】
比較例1
(比較ドープ1の調製)
Mn=120000、Mw=380000、Mw/Mn=3.2、マグネシウムイオン含有量50ppm、カルシウムイオン含有量50ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0058】
比較例2
(比較ドープ2の調製)
Mn=180000、Mw=300000、Mw/Mn=1.6、マグネシウムイオン含有量10ppm、カルシウムイオン含有量70ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0059】
(ドープの濾過)
上記実施例2〜4及び比較例1と2の各ドープについて、実施例1の場合と同様に、濾過面積が170cm2 の濾過器を使用し、空隙率83%、捕集粒子径0.5μmの濾紙により濾過を行なった。そのときのドープ温度は35℃とし、5kgf/cm2 の定圧濾過を行なった。
【0060】
なお、上記実施例1〜4及び比較例1と2の全てのセルローストリアセテートにおいて、硫酸イオンは100ppm未満であった。
【0061】
(フィルム試料の作製)
上記のように濾過した実施例1〜4及び比較例1と2のセルローストリアセテートのドープを、それぞれ鏡面に磨き上げたステンレス板(図示略)上に流延(キャスト)し、ナイフコーターでのレベリングを行なった。キャスト膜(ドープ膜=ウェブ)の表面及びステンレス裏面から40℃の熱風を吹き付け、キャスト膜に含まれる溶媒を徐々に揮発させた後、ステンレス板上から剥がし取った。このときのキャストから剥離までの時間を調整し、キャスト膜剥離時の残留溶媒量が90%とした。なお、乾燥後のセルローストリアセテートフィルムの膜厚が全て80μmとなるように、流延ダイのナイフコーターとステンレス板間の流延間隙を調整した。
【0062】
(異物粒子の計測)
上記のようにして、実施例1〜4及び比較例1と2のセルローストリアセテートフィルムを各10枚ずつ作製し、これら10枚を重ね合わせた状態で、温度40℃、及び湿度90%RHの条件とした恒温恒湿槽内に3日間保存した。
【0063】
保存後、各セルローストリアセテートフィルムを恒温恒湿槽から取り出し、顕微鏡観察による異物粒子の計測を行ない、得られた結果を、下記の表1にまとめて示した。
【0064】
【表1】
この表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4の分子量分布(Mw/Mn)が1.8〜3.0と狭い範囲にあるセルローストリアセテートを使用することによって、フィルム表面への結晶状の異物の析出を抑えることができた。これに対し、分子量分布(Mw/Mn)が本発明の範囲外にあるセルローストリアセテートを使用した比較例1と2のセルローストリアセテートフィルムでは、フィルム表面への結晶状異物の析出数が非常に多いものであった。
【0065】
実施例5〜7及び比較例3
(ドープ5の調製)
数平均分子量Mn=120000、重量平均分子量Mw=300000、分子量分布Mw/Mn=2.5、カルシウムイオン含有量100ppm、マグネシウムイオン含有量30ppmのセルローストリアセテートを使用し、下記の組成物を、実施例1の場合と同様の方法で溶解した。
【0066】
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7重量部
メチレンクロライド 394重量部
エタノール 34重量部
(ドープ5の濾過)
上記実施例1の場合と同様に、濾過面積が170cm2 の濾過器を使用するが、空隙率及び捕集粒子径が、下記の4種類の濾紙により濾過を行なった。そのときのドープ温度は35℃とし、5kgf/cm2 の定圧濾過を行なった。
【0067】
濾紙1(実施例5):木材パルプ(平均繊維径20μm)100%の濾紙(空隙率76%、捕集粒子径2μm、厚み1.0mm、透気度19秒)。
【0068】
濾紙2(実施例6):木材パルプ(平均繊維径20μm)40重量%とレーヨン(平均繊維径10μm)60重量%である濾紙(空隙率83%、捕集粒子径5μm、厚み2.0mm、透気度14秒)。
【0069】
濾紙3(実施例7):ポリエステル繊維(平均繊維径10μm)100%の濾紙(空隙率95%、捕集粒子径2μm、厚み2.8mm、透気度7秒)。
【0070】
比較用濾紙(比較例3):綿花リンター(平均繊維径15μm)20%と木材パルプ80%を混抄した濾紙(空隙率69%、捕集粒子径7μm、厚み1.5mm、透気度35秒)。
【0071】
(フィルム試料の作製)
上記のように濾過した実施例5〜7及び比較例3のセルローストリアセテートのドープについて、実施例1との場合し同様の方法で、セルローストリアセテートフィルムの製膜を行なった。
【0072】
(異物粒子の計測)
このようにして得られた実施例5〜7及び比較例3のセルローストリアセテートフィルムについて、実施例1の場合と同様の方法で、顕微鏡観察による異物粒子の計測を行ない、得られた結果を、下記の表2にまとめて示した。
【0073】
【表2】
この表2の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜7の空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの範囲の濾紙を用いて濾過することにより、セルローストリアセテートフィルム表面に異物を発生させない効果が一段と向上することが判った。これに対し、比較例3の空隙率及び捕集粒子径が本発明の範囲外にある濾紙を用いて、ドープを濾過すると、セルローストリアセテートフィルム表面への異物の発生個数が、非常に多いことが判った。
【0074】
【発明の効果】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、上述のように、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過した後、溶液流延製膜法により製造したことを特徴とするもので、本発明によれば、液晶表示素子の薄膜化に伴い、偏光板用保護フィルムを薄膜化した場合においても、結晶状異物の発生を抑えることができて、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果を奏する。
【0075】
またこのように、セルロースエステルの分子量分布を狭くすると、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、本発明によれば、上記の一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果が高まって、結晶状異物の発生を抑えることができ、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶画像表示装置(LCD)における偏光板の保護フィルムとして好適なセルロースエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶画像表示装置(LCD)は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。ところで、このLCDの基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。そして、このような偏光板の保護フィルムとして、セルローストリアセテートフィルムが広く用いられている。
【0003】
ところで、近年、液晶画像表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶画像表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶画像表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。
【0004】
このようなセルロースエステルフィルムは、一般に、溶液流延製膜法により製造されている。このセルロースエステルフィルムの製造方法は、まず、セルロースエステルを、例えばメチレンクロライド等のセルロースエステルに対する良溶媒と、例えばメタノール、エタノール、ブタノールあるいはシクロヘキサン等のセルロースエステルに対する貧溶媒とを加えた混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加して、セルロースエステル溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を調製し、ドープを、鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体(例えばベルトあるいはドラム、以下、支持体とも呼ぶ)上に流延ダイから均一に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥装置あるいはテンターを通して乾燥させ、セルロースエステルフィルムを得るものである。
【0005】
このように、セルロースエステルフィルムの製造方法としては、溶液流延製膜法が一般的であるが、このプロセスにおいてセルロースエステル中に残留する遊離酸や金属イオンが原因となり、異物粒子が発生するという問題があった。とくに上記のように、液晶表示素子としての偏光板の薄膜化に伴い、セルロースエステルフィルムの薄膜化が進み、薄膜での高生産性化が進むと、フィルム中に、結晶状の異物が発生しやすいという問題があった。
【0006】
ところで、従来、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを製造する方法の一つに、短時間に目的の酢化度まで反応を進行させ、素早くその酢化反応を停止させる方法がある。この場合、高濃度の無水酢酸・硫酸が系内に存在する結果となり、従来より多くの遊離酸や金属イオンがセルロースエステルフィルムの製品中に残留する場合がある。
【0007】
そして、セルロースエステル中に残留する遊離酸や金属イオンが原因となって、これを用いたフィルム中に異物粒子が発生することがある。これは遊離酸や金属イオンがフィルム製膜中あるいは製膜後に、フィルム表面近傍に物質移動して結晶が形成されるためにおきるものと考えられる。
【0008】
また、フィルム形成後の湿度の影響などにより、フィルムの内部に残留している遊離酸や金属が表面近傍に拡散し、同様な異物粒子が発生する場合がある。
【0009】
本来、セルロースエステルに含有される遊離酸や金属が少なければ少ないほど、異物の発生が少なくなるが、偏光板用保護フィルムとしては、ある面積に対して一つでも異物が発生すれば、たちまちそれが偏光板用保護フィルムの欠陥となってしまう。つまり、セルロースエステル中に含まれる遊離酸や金属を、極限まで減少させることよりも、いかにフィルム表面上でこれらを粒子化させないかということが、最も重要な課題となる。
【0010】
ここで、従来の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムの異物発生に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−313766号公報
本出願人は、先に、セルロースエステルフィルム中に含有されるカルシウム及びマグネシウムの量を規定することにより、偏光板用保護フィルムに用いられセルロースエステルフィルムの輝点異物、特に偏光板の直交状態(クロスニコル状態)下で観察される輝点異物といわれる異物を減少させるセルロースエステルフィルムの発明を提案した。
【0012】
【特許文献2】
特開平9−40792号公報
従来、高濃度で調製してもドープ粘度が高くならず、成形性のよいセルロースエステルを用いたフィルムの製造方法の発明が提案されている。この先提案のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明では、酢化度、ドープ濃度、ドープ粘度などが規定されており、セルローストリアセテートフィルムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布:Mw/Mn=1.0〜1.7が開示されている。
【0013】
【特許文献3】
特開2000−314811号公報
また本出願人は、先に、液晶ディスプレイなどの偏光板の保護フィルムとして適したセルロースエステルフィルムの発明を提案した。この先提案のセルロースエステルフィルムの発明では、特にフィルムの面品質及び光学的等方性の問題を改良すること、フィルムの加工性の改善、具体的には、製造時にフィルムを所望の形に打ち抜く際のカッティング特性を改善することを目的としていた。そして、この先提案のセルロースエステルフィルムの発明では、セルローストリアセテートフィルムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布:Mw/Mn=3.0〜5.0が開示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1〜3記載の発明では、セルロースエステルフィルム表面への異物粒子の析出を充分に抑制することはできないという問題があった。
【0015】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを使用することによって、フィルム表面への異物粒子の析出を抑制し得ることを見い出した。またセルロースエステルの分子量分布を狭くするための製造方法では、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、その場合は、一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果が高まることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子の薄膜化に伴い、偏光板用保護フィルムを薄膜化した場合においても、結晶状異物の発生を抑えることができて、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを提供しようとすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるセルロースエステルフィルムは、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過した後、溶液流延製膜法により製造したことを特徴としている。
【0018】
このような本発明によるセルロースエステルフィルムによれば、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを使用することによって、フィルム表面への異物粒子の析出を抑制し得るものである。また、セルロースエステルの分子量分布が狭い場合には、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、本発明では、一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果を高めているものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0020】
本発明のセルロースエステルフィルムの主成分であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のベース強度が強くより好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0021】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0022】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないうに定められる。
【0023】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0024】
セルロースエステルと溶剤のほかに必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0025】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0026】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用して用いる場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0027】
本発明のセルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0028】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0029】
また本発明のフィルムに滑り性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。添加液に添加し、フィルムに含有せしめる。また、主ドープに含有せしめてもよいが、微粒子としてはいかなるものも用いることができる。
【0030】
本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0031】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0032】
本発明においては、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過するものである。
【0033】
本発明において、セルロースエステルは、実質的にセルローストリアセテートであるのが、好ましく、セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(分子量分布)Mw/Mnが1.8〜3.0である。
【0034】
平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を算出することができる。
【0035】
平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
【0036】
下記に示す装置、材料を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)および平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布Mw/Mnを算出した。
【0037】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
溶媒(溶離液):ジクロロメタン
カラム名:昭和電工製 GPCk806−GPCk805−GPCk803 (3本)
試料濃度:0.1(重量%)
流量:1.0(ml/分)
試料注入量:100(μl)
標準試料:ポリスチレン(Mw:5,000,000〜6,700,000)
温度:25℃
検出:RI(示唆屈折率計)
ここで、セルロースエステルの分子量分布(Mw/Mn)が1.8未満であれば、セルロースエステルの成形性(特に平面性)に支障をきたすことがあり、製造上、適さない。また分子量分布(Mw/Mn)が3.0を超えると、フィルム中に含まれる微量金属が表面に移動しやすいため、好ましくない。
【0038】
またこのように、セルロースエステルの分子量分布を狭くすると、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、本発明によれば、上記の一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果が高まることを見い出したものである。
【0039】
上記において、本発明で用いる濾紙としては、例えば木材パルプや綿花リンターなどの天然繊維、あるいはレーヨンやポリエステル繊維、あるいはまた木材パルプとレーヨンの複合繊維などを主原料としたものである。そして、通常は、この濾紙を1枚または複数枚重ね合わせて使用する。
【0040】
そして、この濾紙の空隙率が76%未満であると、濾過抵抗が高くなりすぎ、高流量濾過を連続的に行なうことが困難である。一方、空隙率が95%を超えると、濾紙の強度が充分でなく、高流量濾過では濾紙が破壊されてしまうおそれがある。
【0041】
また、本発明において、濾紙の捕集粒子径が0.5μm未満であると、濾紙の表層濾過となるため、急激に濾圧が上昇し、セルローストリアセテートドープの濾過には適さない。また捕集粒子径が5μmを超えると、空隙率に関わらず、除去したい異物が通過してしまうため、不適当である。
【0042】
本発明においては、上記のように、ある範囲の分子量分布のセルロースエステルを溶解して得られるドープを特定の濾紙で濾過した後、このドープを支持体上に流延(キャスト工程)し、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、さらに支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0043】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0044】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40℃〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55℃〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0045】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60%〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0℃〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5℃〜20℃がより好ましい。
【0046】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0047】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40℃〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80℃〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0048】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0049】
本発明によるセルロースエステルフィルムの厚さは、LCDに使用される偏光板の薄膜化、軽量化が要望から、20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは、20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。セルロースエステルフィルムの厚さが20μm未満であれば、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板作成工程上でシワ等の発生によるトラブルが発生しやすくなるので、好ましくない。またセルロースエステルフィルムの厚さが100μmを超えると、LCDの薄膜化に対する寄与が少ないので、好ましくない。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
実施例1
(ドープ1の調製)
数平均分子量Mn=120000、重量平均分子量Mw=250000、分子量分布Mw/Mn=2.1、マグネシウムイオン含有量20ppm、カルシウムイオン含有量50ppmのセルローストリアセテートを使用し、下記の組成物を溶解した。
【0052】
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7重量部
メチレンクロライド 394重量部
エタノール 34重量部
上記の組成物を密閉釜に順次投入し、釜内温度を35℃まで昇温したのち、2時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートを溶解した。
【0053】
(ドープ1の濾過)
濾過面積が170cm2 の濾過器を使用し、レーヨン(平均繊維径10μm)100%の濾紙(空隙率83%、捕集粒子径0.5μm、厚み1.2mm、透気度10秒)により濾過を行なった。そのときのドープ温度は35℃とし、5kgf/cm2 の定圧濾過を行なった。
【0054】
実施例2
(ドープ2の調製)
Mn=120000、Mw=350000、Mw/Mn=2.9、マグネシウムイオン含有量35ppm、カルシウムイオン含有量25ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0055】
実施例3
(ドープ3の調製)
Mn=140000、Mw=255000、Mw/Mn=1.8、マグネシウムイオン含有量50ppm、カルシウムイオン含有量70ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0056】
実施例4
(ドープ4の調製)
Mn=120000、Mw=350000、Mw/Mn=2.9、マグネシウムイオン含有量50ppm、カルシウムイオン含有量50ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0057】
比較例1
(比較ドープ1の調製)
Mn=120000、Mw=380000、Mw/Mn=3.2、マグネシウムイオン含有量50ppm、カルシウムイオン含有量50ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0058】
比較例2
(比較ドープ2の調製)
Mn=180000、Mw=300000、Mw/Mn=1.6、マグネシウムイオン含有量10ppm、カルシウムイオン含有量70ppmのセルローストリアセテートを使用した以外はドープ1と同様の組成で溶解した。
【0059】
(ドープの濾過)
上記実施例2〜4及び比較例1と2の各ドープについて、実施例1の場合と同様に、濾過面積が170cm2 の濾過器を使用し、空隙率83%、捕集粒子径0.5μmの濾紙により濾過を行なった。そのときのドープ温度は35℃とし、5kgf/cm2 の定圧濾過を行なった。
【0060】
なお、上記実施例1〜4及び比較例1と2の全てのセルローストリアセテートにおいて、硫酸イオンは100ppm未満であった。
【0061】
(フィルム試料の作製)
上記のように濾過した実施例1〜4及び比較例1と2のセルローストリアセテートのドープを、それぞれ鏡面に磨き上げたステンレス板(図示略)上に流延(キャスト)し、ナイフコーターでのレベリングを行なった。キャスト膜(ドープ膜=ウェブ)の表面及びステンレス裏面から40℃の熱風を吹き付け、キャスト膜に含まれる溶媒を徐々に揮発させた後、ステンレス板上から剥がし取った。このときのキャストから剥離までの時間を調整し、キャスト膜剥離時の残留溶媒量が90%とした。なお、乾燥後のセルローストリアセテートフィルムの膜厚が全て80μmとなるように、流延ダイのナイフコーターとステンレス板間の流延間隙を調整した。
【0062】
(異物粒子の計測)
上記のようにして、実施例1〜4及び比較例1と2のセルローストリアセテートフィルムを各10枚ずつ作製し、これら10枚を重ね合わせた状態で、温度40℃、及び湿度90%RHの条件とした恒温恒湿槽内に3日間保存した。
【0063】
保存後、各セルローストリアセテートフィルムを恒温恒湿槽から取り出し、顕微鏡観察による異物粒子の計測を行ない、得られた結果を、下記の表1にまとめて示した。
【0064】
【表1】
この表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4の分子量分布(Mw/Mn)が1.8〜3.0と狭い範囲にあるセルローストリアセテートを使用することによって、フィルム表面への結晶状の異物の析出を抑えることができた。これに対し、分子量分布(Mw/Mn)が本発明の範囲外にあるセルローストリアセテートを使用した比較例1と2のセルローストリアセテートフィルムでは、フィルム表面への結晶状異物の析出数が非常に多いものであった。
【0065】
実施例5〜7及び比較例3
(ドープ5の調製)
数平均分子量Mn=120000、重量平均分子量Mw=300000、分子量分布Mw/Mn=2.5、カルシウムイオン含有量100ppm、マグネシウムイオン含有量30ppmのセルローストリアセテートを使用し、下記の組成物を、実施例1の場合と同様の方法で溶解した。
【0066】
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7重量部
メチレンクロライド 394重量部
エタノール 34重量部
(ドープ5の濾過)
上記実施例1の場合と同様に、濾過面積が170cm2 の濾過器を使用するが、空隙率及び捕集粒子径が、下記の4種類の濾紙により濾過を行なった。そのときのドープ温度は35℃とし、5kgf/cm2 の定圧濾過を行なった。
【0067】
濾紙1(実施例5):木材パルプ(平均繊維径20μm)100%の濾紙(空隙率76%、捕集粒子径2μm、厚み1.0mm、透気度19秒)。
【0068】
濾紙2(実施例6):木材パルプ(平均繊維径20μm)40重量%とレーヨン(平均繊維径10μm)60重量%である濾紙(空隙率83%、捕集粒子径5μm、厚み2.0mm、透気度14秒)。
【0069】
濾紙3(実施例7):ポリエステル繊維(平均繊維径10μm)100%の濾紙(空隙率95%、捕集粒子径2μm、厚み2.8mm、透気度7秒)。
【0070】
比較用濾紙(比較例3):綿花リンター(平均繊維径15μm)20%と木材パルプ80%を混抄した濾紙(空隙率69%、捕集粒子径7μm、厚み1.5mm、透気度35秒)。
【0071】
(フィルム試料の作製)
上記のように濾過した実施例5〜7及び比較例3のセルローストリアセテートのドープについて、実施例1との場合し同様の方法で、セルローストリアセテートフィルムの製膜を行なった。
【0072】
(異物粒子の計測)
このようにして得られた実施例5〜7及び比較例3のセルローストリアセテートフィルムについて、実施例1の場合と同様の方法で、顕微鏡観察による異物粒子の計測を行ない、得られた結果を、下記の表2にまとめて示した。
【0073】
【表2】
この表2の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜7の空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの範囲の濾紙を用いて濾過することにより、セルローストリアセテートフィルム表面に異物を発生させない効果が一段と向上することが判った。これに対し、比較例3の空隙率及び捕集粒子径が本発明の範囲外にある濾紙を用いて、ドープを濾過すると、セルローストリアセテートフィルム表面への異物の発生個数が、非常に多いことが判った。
【0074】
【発明の効果】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、上述のように、分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過した後、溶液流延製膜法により製造したことを特徴とするもので、本発明によれば、液晶表示素子の薄膜化に伴い、偏光板用保護フィルムを薄膜化した場合においても、結晶状異物の発生を抑えることができて、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果を奏する。
【0075】
またこのように、セルロースエステルの分子量分布を狭くすると、遊離酸や金属イオンが多く残留するケースが多いが、本発明によれば、上記の一定の空隙率及び捕集粒子径を有する特定の濾紙で濾過することにより、異物粒子析出の抑制の効果が高まって、結晶状異物の発生を抑えることができ、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果を奏する。
Claims (1)
- 分子量分布:Mw/Mn(セルロースエステルの重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比)が1.8〜3.0であるセルロースエステルを溶解したドープを、空隙率76〜95%及び捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙で濾過した後、溶液流延製膜法により製造したことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
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