JP2004323549A - セルロースエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルムとして好適なセルロースエステルフィルムであって、セルロースエステルドープの濾過において、高空隙・小捕集粒子径を特徴とする濾紙により、砂目状異物故障の大幅な改善と濾過時の圧力抵抗低減化、濾紙交換時のドープ除去性アップを図る。目開きを起こしにくい濾紙を用いることにより、砂目状異物故障が改善されたセルロースエステルフィルムを提供する。
【解決手段】セルロースエステルのドープを1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、濾紙が空隙率76〜95%、及び捕集粒子径0.5〜5μmを有するものである。また上記濾紙の1500KPa加圧濾過時の捕集粒子径が、500KPa加圧濾過時の捕集粒子径の4倍以下であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶表示装置(LCD)における偏光板の保護フィルムとして好適なセルロースエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置(LCD)は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。このLCDの基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものであり、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。そして、このような偏光板の保護フィルムとして、セルローストリアセテートフィルムが広く用いられている。
【0003】
このようなセルロースエステルフィルムは、一般に、溶液流延製膜法により製造されている。このセルロースエステルフィルムの製造方法は、まず、セルロースエステルを、例えばメチレンクロライド等のセルロースエステルに対する良溶媒と、例えばメタノール、エタノール、ブタノールあるいはシクロヘキサン等のセルロースエステルに対する貧溶媒とを加えた混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加して、セルロースエステル溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を調製し、ドープを、鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体(例えばベルトあるいはドラム、以下、支持体とも呼ぶ)上に流延ダイから均一に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥装置あるいはテンターを通して乾燥させ、セルロースエステルフィルムを得るものである。
【0004】
近年、液晶表示装置の高画質化、高精細化が一段と加速している。それに伴って液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムに対しても、フィルムに含まれる異物の低減に対する要求が強くなってきている。偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルは半合成高分子であるため、エステル化工程の不均一反応による不要成分の生成だけでなく、出発原料品質の影響を強く受ける。そのため、一般的な合成高分子に比べて、不要成分除去の必要性が高い。
【0005】
セルロースエステルフィルムから検出される異物には、▲1▼用いる添加剤に起因するもの、▲2▼製造工程において混入するゴミに起因するもの、及び▲3▼セルロースエステル中に含まれる未酢化もしくは低酢化度のセルロースエステル繊維に起因するもの等が挙げられる。
【0006】
ここで、従来の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムの異物発生に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−313766号公報
本出願人は、先に、セルロースエステルフィルム中に含有されるカルシウム及びマグネシウムの量を規定することにより、偏光板用保護フィルムに用いられセルロースエステルフィルムの輝点異物、特に偏光板の直交状態(クロスニコル状態)下で観察される輝点異物といわれる異物を減少させるセルロースエステルフィルムの発明を提案した。
【0008】
【特許文献2】
特開平9−40792号公報
従来、高濃度で調製してもドープ粘度が高くならず、成形性のよいセルロースエステルを用いたフィルムの製造方法の発明が提案されている。この先提案のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明では、酢化度、ドープ濃度、ドープ粘度などが規定されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1及び2記載の発明では、セルロースエステルフィルム表面への異物粒子の析出を充分に抑制することはできないという問題があった。
【0010】
ところで、異物の中でもセルロースエステルフィルム全面に微小な凹凸として未溶解物が点在する、いわゆる「砂目状」の異物は、照射光の反射により白色の異物として観察され、クロスニコル状態での発光現象として観察されるいわゆる輝点異物とは区別されるものである。また、上記「砂目状」の異物は、輝点異物に対し検討がなされているドープ溶解条件を最適化する方法では解決が困難であることが分かってきており、濾過による除去が非常に重要となる。
【0011】
例えば、フィルタープレスによるドープの濾過において、濾紙の捕集粒子径をより小さくしていくことで濾過精度を向上する方法によって、より細かい異物を捕集することによって高精度の濾過ができる。しかし、単に捕集粒子径を細かくすることだけを行なうと液体の流動抵抗が非常に高くなってしまい、ポンプによる押し出しが困難となるだけでなく、濾紙の破壊やフィルタープレス装置自体の故障を招くおそれがある。特にこの現象はセルロースエステルドープのような高粘度の液体を濾過したい場合には、非常に重要な課題である。
【0012】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、高濾過圧状態では濾過捕集精度が劣化する(捕集粒子径が大きくなる)ことが明らかになり、高濾過圧状態でも小さな捕集粒子径を維持できる濾紙が、この分野の濾過には好適であることが分かってきた。
【0013】
本発明は、濾過抵抗を大きくすることなく、より細かい異物をより多く捕集することを第一の目的として、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、濾過抵抗を下げつつ濾過精度を向上させるという本来相反する2つの効果を同時に達成し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、セルロースエステルドープの濾過において、高空隙・小捕集粒子径を特徴とする濾紙により、砂目状異物故障の大幅な改善と濾過時の圧力抵抗低減化、濾紙交換時のドープ除去性アップを図るとともに、目開きを起こしにくい濾紙を用いることにより、砂目状異物故障が改善されたセルロースエステルフィルムを提供しようとすることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載のセルロースエステルフィルムの発明は、セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、濾紙が、空隙率76〜95%及び捕集粒子径0.5〜5μmを有するものであることを特徴としている。
【0016】
ここで、空隙率は、次式により定義される。
【0017】
空隙率(%)={1−濾紙の坪量(g/cm)/繊維の比重(g/cm)/濾紙厚み(cm)} ×100
また、濾紙の捕集粒子径とは、90%以上捕集可能な粒子のうち、最も小さい粒子径をいうものとする。
【0018】
このように、セルロースエステルドープの濾過において、濾紙の空隙率76〜95%かつ捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙(高空隙・小捕集粒子径を特徴とする濾紙)により、砂目状異物故障の大幅な改善と濾過時の圧力抵抗低減化、濾紙交換時のドープ除去性アップを図ることができる。
【0019】
本発明の請求項2記載のセルロースエステルフィルムの発明は、セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、上記濾紙の1500KPa加圧濾過時の捕集粒子径が、500KPa加圧濾過時の捕集粒子径の4倍以下であることを特徴としている。
【0020】
このように、目開きを起こしにくい濾紙を用いることにより、砂目状異物故障の改善には非常に大きな効果を発揮する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0022】
本発明のセルロースエステルフィルムの主成分であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のベース強度が強くより好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0023】
本発明において、セルロースエステルは、実質的にセルローストリアセテートであるのが、好ましい。
【0024】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0025】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないうに定められる。
【0026】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0027】
セルロースエステルと溶剤のほかに必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0028】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0029】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用して用いる場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0030】
本発明のセルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0031】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0032】
また本発明のフィルムに滑り性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。添加液に添加し、フィルムに含有せしめる。また、主ドープに含有せしめてもよいが、微粒子としてはいかなるものも用いることができる。
【0033】
本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため、特に好ましい。
【0034】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0035】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、濾紙が、空隙率76〜95%及び捕集粒子径0.5〜5μmを有するものである。
【0036】
上記において、本発明で用いる濾紙としては、例えば木材パルプや綿花リンターなどの天然繊維、あるいはレーヨンやポリエステル繊維、あるいはまた木材パルプとレーヨンの複合繊維などを主原料としたものである。そして、通常は、この濾紙を1枚または複数枚重ね合わせて使用する。
【0037】
そして、この濾紙の空隙率が76%未満であると、濾過抵抗が高くなりすぎ、高流量濾過を連続的に行なうことが困難である。一方、空隙率が95%を超えると、濾紙の強度が充分でなく、高流量濾過では濾紙が破壊されてしまうおそれがある。
【0038】
また、本発明において、濾紙の捕集粒子径が0.5μm未満であると、濾紙の表層濾過となるため、急激に濾圧が上昇し、セルローストリアセテートドープの濾過には適さない。また捕集粒子径が5μmを超えると、空隙率に関わらず、除去したい異物が通過してしまうため、不適当である。
【0039】
本発明によれば、セルロースエステルドープの濾過において、濾紙の空隙率76〜95%かつ捕集粒子径が0.5〜5μmの濾紙(高空隙・小捕集粒子径を特徴とする濾紙)により、砂目状異物故障の大幅な改善と濾過時の圧力抵抗低減化、濾紙交換時のドープ除去性アップを図ることができる。
【0040】
ここで、濾過時の圧力抵抗低減化は、ドープを濾過する際、設備上の圧力上限値が決まっているうえ、濾過がすすむにつれて、濾紙が異物を捕集していき、徐々に圧力が上昇していく中で、濾過時の圧力抵抗の低減化を果たすことができれば、より長くその濾紙を使用できるという利点がある。
【0041】
また、濾紙交換時のドープ除去性アップは、使用済みの濾紙をフィルタプレスから取り外す前にエアや溶媒で洗浄するが、その際、ドープ残りが少ないほど、環境上好ましく、濾紙交換時のドープの除去性をアップすることができるものである。
【0042】
また、本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、上記濾紙の1500KPa加圧濾過時の捕集粒子径が、500KPa加圧濾過時の捕集粒子径の4倍以下である。
【0043】
このように、目開きを起こしにくい濾紙を用いることにより、砂目状異物故障の改善には非常に大きな効果を発揮し得るものである。
【0044】
ここで、セルロースエステルフィルムから検出される異物には、用いる添加剤に起因するもの、製造工程において混入するゴミに起因するもの、セルロースエステル中に含まれる未酢化もしくは低酢化度のセルロースエステル繊維に起因するもの等が挙げられる。
【0045】
異物の中でもセルロースエステルフィルム全面に微小な凹凸として未溶解物が点在する、いわゆる「砂目状」の異物は、照射光の反射により白色の異物として観察され、クロスニコル状態での発光現象として観察されるいわゆる輝点異物とは区別されるものである。また、上記「砂目状」の異物は、輝点異物に対し検討がなされているドープ溶解条件を最適化する方法では解決が困難であることが分かってきており、濾過による除去が非常に重要となる。
【0046】
濾過による異物の除去方法にはいくつもの手段がある。本発明に関わる高粘度のセルロースエステルドープの濾過では、フィルタープレスやディスクフィルターが適しており、特に濾過面積を広くとれる点で、フィルタープレス方式の濾過が、生産性の観点から適している。
【0047】
フィルタープレスによるドープの濾過において、濾紙の捕集粒子径をより小さくして濾過精度を向上する方法によって、より細かい異物を捕集することができ、高精度の濾過を果たし得る。しかし、単に捕集粒子径を細かくすることだけを行なうと液体の流動抵抗が非常に高くなってしまい、ポンプによる押し出しが困難となるだけでなく、濾紙の破壊やフィルタープレス装置自体の故障を招くおそれがある。特にこの現象はセルロースエステルドープのような高粘度の液体を濾過する場合には、非常に重要な課題である。
【0048】
また、高濾過圧状態では、濾過捕集精度が劣化する(捕集粒子径が大きくなる)ことが、本発明の検討の中で明らかになり、高濾過圧状態でも小さな捕集粒子径を維持できる濾紙が、この分野の濾過には好適であることが分かってきた。
【0049】
本発明は、濾過抵抗を大きくすることなく、より細かい異物を、より多く捕集することを第一の目的として、発明者が鋭意検討を重ねた結果、濾過抵抗を下げつつ濾過精度を向上させるという本来相反する2つの効果を同時に達成したものである。
【0050】
本発明においては、上記のようにして、ドープを特定の濾紙で濾過した後、このドープを支持体上に流延(キャスト工程)し、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、さらに支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0051】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0052】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため、好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0053】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため、好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため、好ましく、5〜20℃がより好ましい。
【0054】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために、好ましい。
【0055】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0056】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0057】
本発明によるセルロースエステルフィルムの厚さは、LCDに使用される偏光板の薄膜化、軽量化が要望から、20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは、20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。セルロースエステルフィルムの厚さが20μm未満であれば、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板作成工程上でシワ等の発生によるトラブルが発生しやすくなるので、好ましくない。またセルロースエステルフィルムの厚さが100μmを超えると、LCDの薄膜化に対する寄与が少ないので、好ましくない。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
実施例1〜4及び比較例1
<ドープの調製>
セルローストリアセテートを使用し、下記のドープ組成物を調製した。
【0060】
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7重量部
メチレンクロライド 394重量部
エタノール 34重量部
上記の組成物を耐圧性の密閉釜に順次投入し、釜内温度を40℃まで昇温したのち、40℃で4時間攪拌を行なって、各組成物を溶解した。その後、攪拌を停止し、ドープ温度を35℃まで低下させて、直ちに、密閉釜からこれに連結した配管を経て濾過装置であるフィルタープレスに送液した。
【0061】
<ドープの濾過および濾圧の測定>
濾過面積が40mのフィルタープレスを使用し、これに、下記の表1に記載する本発明の範囲内の特性値を有する4種類のフィルターペーパー(濾紙)(実施例1〜4)、及び本発明の範囲外の特性値を有する1種類のフィルターペーパー(濾紙)(比較例1)をそれぞれ装填し、上記のように調製したドープを毎時1200リットルの流速で濾過を行ない、濾過開始5時間後および50時間後のフィルタープレス入り側での送液圧と、同出側の液圧との差圧(ΔP)を測定し、得られた結果を、下記の表1にまとめて示した。
【0062】
ここで、定速濾過の場合、濾紙の種類(抵抗の大きさ)と濾紙面積によって入り側での送液圧が変化し、一方、出側の液圧は、その流量と配管径などからほゞ決まる。従って、濾紙の抵抗によって圧が上昇した分が、入り側での送液圧から出側の液圧を引いた差圧(ΔP)に相当することになる。濾紙には抵抗があるため、常に入り側での送液圧の方が、出側の液圧よりも高くなるものである。
【0063】
濾紙1(実施例1):木材パルプ(平均繊維径20μm)100%の濾紙(空隙率76%、捕集粒子径2μm、厚み1.0mm、透気度19秒)を1枚使用。
【0064】
濾紙2(実施例2):レーヨン(平均繊維径10μm)100%の濾紙(空隙率83%、捕集粒子径0.5μm、厚み1.2mm、透気度10秒)を6枚重ね合わせて使用。
【0065】
濾紙3(実施例3):木材パルプ(平均繊維径20μm)40重量%とレーヨン(平均繊維径10μm)60重量%である濾紙(空隙率83%、捕集粒子径5μm、厚み2.0mm、透気度14秒)を4枚重ね合わせて使用。
【0066】
濾紙4(実施例4):ポリエステル繊維(平均繊維径10μm)100%の濾紙(空隙率95%、捕集粒子径2μm、厚み2.8mm、透気度7秒)を3枚重ね合わせて使用。
【0067】
比較用濾紙(比較例1):綿花リンター(平均繊維径15μm)20%と木材パルプ80%を混抄した濾紙(空隙率69%、捕集粒子径7μm、厚み1.5mm、透気度35秒)を2枚重ね合わせて使用。
【0068】
<セルローストリアセテートフィルムの作製>
表1に示した濾過50時間後のドープを、流延ダイより、ステンレス鋼製のエンドレスベルトよりなる支持体上に流延した。その後、支持体で充分乾燥させた後、ウェブ(ドープ膜)を剥離し、多数のロールで構成された乾燥ゾーンを通過させることにより、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0069】
<セルローストリアセテートフィルムの評価>
上記の方法で作製したフィルムについて、フィルムの長手方向の長さが20μm以上ある異物の個数を測定し、実際のフィルム製造方法での濾紙の性能を評価した。
【0070】
【表1】
Figure 2004323549
この表1の結果から明らかなように、本発明の特徴を有する実施例1〜4のフィルターペーパー(濾紙)を使用して濾過することにより、圧力上昇が低く抑えられ、砂目状異物が少ない高品質なセルローストリアセテートフィルムを得ることができた。これに対し、本発明の範囲外の特性値を有するフィルターペーパー(濾紙)を用いた比較例1では、フィルム表面に多くの異物が確認された。
【0071】
実施例5と6及び比較例2
実施例1と同様に溶解したドープを用いて、表2に示すように、初期濾過圧500Pka、及び初期濾過圧1500Pkaとなるように濾過流量を調整し、その流量で24時間濾過を実施した時点でのドープをサンプリングし、実験室において溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを製造した。ここで、実施例5の濾紙として、上記実施例2で用いたものと同じ濾紙を使用し、実施例6の濾紙としては、上記実施例3で用いたものと同じ濾紙を使用した。また比較例2の濾紙としては、上記比較例1で用いたものと同じ濾紙を使用した。
【0072】
実験室において25℃に保温されたガラス板(支持体)上にドープを流延した後、ナイフコーターによりドープをレベリングし、ゆっくり自然乾燥させた。その後、フィルム残溶が40%になったところでガラス板(支持体)から剥離し、フィルムが収縮してシワにならない程度にフィルムを固定した状態で乾燥させた。このときの乾燥温度を120℃とした。できあがったセルローストリアセテートフィルムの砂目状異物の顕微鏡観察をし、発見された砂目状異物のうちの最も大きいものの径(砂目状異物の形が棒状である場合はその短軸方向)を、濾紙の捕集粒子径とみなした。こうして、濾紙そのものの捕集精度の変化を観察し、得られた結果を、下記の表2に示した。
【0073】
【表2】
Figure 2004323549
この表2の結果から明らかなように、本発明の実施例5と6では、濾紙の初期濾過圧500kPa時の捕集粒子径に対して、同濾紙の初期濾過圧1500kPa時の捕集粒子径が4倍以下であるため、該濾紙によってセルロースエステルフィルムの砂目状異物を除去する能力が高く、高品質なセルローストリアセテートフィルムを得ることができることが判った。これに対し、比較例2では、濾紙の初期濾過圧500kPa時の捕集粒子径に対して、同濾紙の初期濾過圧1500kPa時の捕集粒子径が4倍を越えるものであるため、該濾紙によってセルロースエステルフィルムの砂目状異物を除去する能力が低く、品質の良いセルローストリアセテートフィルムを得ることができなかった。
【0074】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の発明は、上述のように、セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、濾紙が、空隙率76〜95%及び捕集粒子径0.5〜5μmを有するものであることを特徴とするもので、本発明によれば、セルロースエステルドープの濾過において、濾紙の空隙率76%以上95%以下かつ捕集粒子径が0.5μm以上5μm以下の濾紙(高空隙・小捕集粒子径を特徴とする濾紙)により、砂目状異物故障の大幅な改善と濾過時の圧力抵抗低減化、濾紙交換時のドープ除去性アップを図ることができ、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果を奏する。
【0075】
また、本発明の請求項2記載の発明は、上述のように、セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、上記濾紙の1500KPa加圧濾過時の捕集粒子径が、500KPa加圧濾過時の捕集粒子径の4倍以下であることを特徴とするもので、本発明によれば、目開きを起こしにくい濾紙を用いることにより、砂目状異物故障の改善に非常に大きな効果を発揮することができ、砂目状異物の発生を抑えることができて、偏光板用保護フィルムに適した品質の良いセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果を奏する。

Claims (2)

  1. セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、濾紙が、空隙率76〜95%及び捕集粒子径0.5〜5μmを有するものであることを特徴とする、セルロースエステルフィルム。
  2. セルロースエステルを溶解したドープを、1枚または複数枚重ね合わせた濾紙を使用して濾過した後、該ドープを用いて溶液流延製膜法により製造したセルロースエステルフィルムであって、上記濾紙の1500KPa加圧濾過時の捕集粒子径が、500KPa加圧濾過時の捕集粒子径の4倍以下であることを特徴とする、セルロースエステルフィルム。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2007094117A1 (ja) * 2006-02-17 2007-08-23 Konica Minolta Opto, Inc. 光学フィルムの製造方法、該方法により得られた光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板、および該偏光板を用いた液晶表示装置
WO2007108189A1 (ja) * 2006-03-20 2007-09-27 Konica Minolta Opto, Inc. 光学フィルムの製造方法、光学フィルムおよび偏光板

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