JP2006206627A - ドープの濾過方法、及びその方法を用いて製造したセルロースエステルフィルム - Google Patents

ドープの濾過方法、及びその方法を用いて製造したセルロースエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 液晶表示装置(LCD)に用いられる偏光板用保護フィルム等に利用するセルロースエステルフィルムを製造する際に適用するドープの濾過方法で、微粒子を含有するドープの濾過工程において、フィルムでの異物になる微粒子凝集物や樹脂未溶解物等を捕捉しながらも、濾過ライフが充分長く、生産性に優れたドープの濾過方法を提供する。また大画面液晶表示装置の部材として優れた異物故障の無いセルロースエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ドープの濾過方法は、ドープに添加する微粒子の分散溶液を事前に濾過し、またはドープに添加する微粒子の分散溶液及びその他の液状添加剤を事前に濾過し、ドープに、事前濾過後の微粒子分散溶液、またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して、微粒子含有ドープを作製し、該微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で、濾過する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ドープの濾過方法、及びその方法を用いて製造したセルロースエステルフィルムに関する。より詳しくは、光学用途に利用されるセルロースエステルフィルム(以下、単にフィルムともいう)を製造する際に適用するセルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)の濾過方法、及びその方法を用いて製造したセルロースエステルフィルムに関するものであり、特に液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルムまた有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができるセルロースエステルフィルムを製造する際に適用するドープの濾過方法、及びその方法を用いて製造したセルロースエステルフィルムに関するものである。
近年、ノートパソコンの薄型軽量化、大型画面化、高精細化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶偏光板用の保護フィルムにもますます薄膜化、広幅化、高品質化の要求が強くなってきている。偏光板用保護フィルムには、一般的にセルロースエステルフィルムが広く使用されている。セルロースエステルフィルムは通常巻芯に巻かれてフィルム原反となされ、保存、輸送されている。
最近の大画面化に伴って、フィルム幅が広く、長い巻長のフィルム原反が、要望されている。フィルム原反幅が広く、巻長が長くなるとフィルム原反での保存性が問題となる。例えばフィルム同士がくっついてフィルムが変形してしまうハリツキ故障や異物がフィルムの間に挟まったように凸状の変形になってしまう凸状故障などが発生しやすくなる。特にフィルム原反が広幅化して1.4m幅以上になると、フィルムの両サイドに設けたナーリングの効果が小さくなり、フィルム原反の保存性が悪化しやすくなるという問題があった。
また、近年の高画質化に伴ってフィルムの異物要求レベルも厳しくなり、今までは問題にされなかった小さい異物も問題視されるようになっている。
特開2001−114907号公報 特許文献1には、これらを防止するために、微粒子を添加する方法が提案されている。すなわち、特許文献1には、マット剤を溶剤中で分散し、樹脂を含んだ溶液中に添加し、微粒子添加液を作製し、これをインラインで主ドープに添加する方法が開示されている。 特開平7−11055号公報 また、特許文献2には、微粒子と紫外線吸収剤を一緒に分散し、主ドープ釜に添加している方法が開示されている。 特開2004−105865号公報 特許文献3には、ドープの異物を除去する方法として、ドープの濾過工程で多段濾過を行ない、さらに濾材の孔径を徐々に小さくする方法が開示されている。 特開2004−113897号公報 また、特許文献4には、ドープ濾過工程で同一孔径濾材を直列に配置する方法が開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1に記載の方法では、添加量を増加させると、セルロースエステルフィルムの異物が増えてしまうという問題があった。そして、特許文献1に記載の方法のように、異物を減らそうとして微粒子添加液を細かいフィルターで濾過すると、フィルターで微粒子の凝集物同士がくっついてさらに凝集し、フィルターに詰まって濾過圧が急激に上昇したりすることが多く問題であった。またこの方法では、主ドープに微粒子添加液をインラインで添加する時に発生するショックで、さらに微粒子凝集が発生し、これを除去することはできなかった。
また、特許文献2に記載の方法では、微粒子と紫外線吸収剤の混合割合を容易に変更できないという問題があった。また、樹脂や紫外線吸収剤と微粒子を一緒にしてから分散すると、微粒子の分散状態が悪いという問題もあった。さらに主ドープを濾過している濾材について、何ら検討されていないため、微粒子の数μm以上の凝集物だけを除去することは困難であった。
また、上記の特許文献3及び4に記載の方法では、樹脂中の異物は除去できるが、さらに小さい微粒子を含有している場合は、濾材への目詰まりが早く、生産性が劣るという問題があった。
本発明の目的は、微粒子を含有するドープの濾過工程において、フィルムでの異物になる微粒子凝集物や樹脂未溶解物等を捕捉しながらも、濾過ライフが充分長く、生産性に優れたドープ(樹脂溶液)の濾過方法を提供することにある。さらに、大画面液晶表示装置の部材として優れた異物故障の無いセルロースエステルフィルムを提供することにある。
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、目視で50μm程度に見える異物も、電子顕微鏡などを使って解析すると、異物の核となっているものは数μm程の大きさで、異物の周辺が盛り上がっているため、目視では大きく見えていることが分った。また核となっている異物のほとんどが、微粒子の凝集物であることも分った。そのため、微粒子の添加量を増加させて滑り性を向上し、かつ数μm以上の微粒子の凝集物だけを除去して、異物故障を低減するという両方の特性を満足することは困難であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
上記の目的を達成するために、請求項1によるドープの濾過方法の発明は、微粒子を含有するセルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)の濾過方法であって、ドープに添加する微粒子の分散溶液を事前に濾過し、またはドープに添加する微粒子の分散溶液及びその他の液状添加剤を事前に濾過し、ドープに、事前濾過後の微粒子分散溶液、またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して、微粒子含有ドープを作製し、該微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で、濾過することを特徴としている。
請求項2によるドープの濾過方法の発明は、上記請求項1記載のドープの濾過方法であって、微粒子を含有するセルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)の作製からドープ流延までの間に、少なくとも2カ所以上で濾過処理を行ない、そのうち上流側の濾過処理に用いる濾材が、濾紙であり、その濾紙を通過する微粒子含有ドープ中の微粒子濃度が、0.05〜0.1重量%であることを特徴としている。
請求項3によるドープの濾過方法の発明は、上記請求項1または2記載のドープの濾過方法であって、事前濾過後の微粒子分散溶液またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して作製した微粒子含有ドープを濾過する濾過器を、直列に2段以上設置することを特徴としている。
請求項4によるセルロースエステルフィルムの発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の濾過方法により濾過した微粒子含有ドープを、金属支持体上に流延することにより製膜したセルロースエステルフィルムであって、TEM(透過型電子顕微鏡)断層写真の観察による微粒子の粒径分布で250nm以上の比率が0.1〜4%であることを特徴としている。
本発明のドープの濾過方法によれば、ドープに添加する微粒子の分散溶液を事前に濾過し、またはドープに添加する微粒子の分散溶液及びその他の液状添加剤を事前に濾過し、ドープに、事前濾過後の微粒子分散溶液、またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して、微粒子含有ドープを作製し、該微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で、濾過するものであるから、微粒子を含有するドープの濾過工程において、フィルムでの異物になる微粒子凝集物や樹脂未溶解物等を捕捉しながらも、濾過ライフが充分長く、生産性に優れたドープ(樹脂溶液)の濾過方法を提供することができるという効果を奏する。
また、本発明のセルロースエステルフィルムによれば、TEM(透過型電子顕微鏡)断層写真の観察による微粒子の粒径分布で250nm以上の比率が0.1〜4%であるから、異物故障の無く、大画面液晶表示装置の部材として優れた光学性能を具備するものであるという効果を奏する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明によるドープの濾過方法は、微粒子を含有するセルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)の濾過方法であって、ドープに添加する微粒子の分散溶液を事前に濾過し、またはドープに添加する微粒子の分散溶液及びその他の液状添加剤を事前に濾過し、ドープに、事前濾過後の微粒子分散溶液、またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して、微粒子含有ドープを作製し、該微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で、濾過するものである。
(濾材)
本発明では、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材を使用する。この濾材は濾紙でも良いし、金属焼結フィルターのような濾材でも良い。特に濾紙の場合は10〜50倍が好ましく、金属焼結フィルターの場合は50〜100倍が好ましい。平均粒径の10倍未満では、フィルムの滑り性付与を目的としている微粒子までフィルターで捕捉してしまい、フィルターの圧力が上昇するだけではなく、フィルムの微粒子含有量も減少しフィルム滑り性が劣化し、好ましくない。平均粒径の100倍を越えるとフィルムで異物の原因となるような微粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を通してしまうため、好ましくない。ここでの微粒子の平均粒径は、上記濾過前のドープ中に含有される微粒子の平均粒径であり、この平均粒径は、濾過前のドープをそのまま製膜したフィルムの断面写真をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察して求めても良いし、濾過前のドープを同溶媒で希釈して動的光散乱法で測定しても良い。
濾紙を使用する場合は、捕集粒子径が0.5〜5μmで、濾水時間が10〜240sec/100mlが好ましい。
この濾紙を使用することで、異物の原因となる微粒子などの凝集物だけを除去し、高粘度の主ドープを連続的に濾過できるため、異物故障がなく、原反保存性にも優れ、高速製膜が可能となり、生産性が向上するものである。濾紙の捕集粒子径とはJIS Z 8901に準拠して測定されるものであって、90%以上捕集可能な粒子のうち最も小さい粒子径をいうものである。
本発明において、濾紙の捕集粒子径は、0.5〜5μmが好ましく、1〜3μmが最も好ましい。濾紙の捕集粒子径が0.5μm未満では、異物ではない微粒子まで捕捉してしまい、急激に濾圧が上昇するため、好ましくなく、捕集粒子径が5μmを越えると異物の原因となる微粒子の凝集物まで通過してしまうため、好ましくない。濾紙の濾水時間とは、JIS P 3801に準拠して測定されるものであって、ヘルツベルヒ濾過速度試験器を使用し、10cmの濾過面において、温度20℃で、100mlの蒸留水を0.98kPaの圧力により濾過する時間をいうものである。濾水時間が大き過ぎると、濾過抵抗が高くなり過ぎ、高流量濾過を連続的に行なうことができない。また濾水時間が短過ぎると濾紙の強度が充分ではなく、高圧力時に濾紙が目開きして異物の原因となる凝集物が通過してしまったり、濾紙が破壊されてしまうおそれがあるため、前記の範囲が好ましい。濾紙の捕集粒子径や濾水時間は濾紙の繊維の太さ、材質(綿花リンター、木材パルプ、レーヨン、ポリエステル繊維など)などの繊維材の選定、繊維材を叩解機での叩解度合い、填料の添加など、濾紙の製造方法によって、任意に調整できるものである。
本発明において、濾紙は1枚でも効果を発揮するが、濾紙は、2〜7枚程度重ね合わせて使用すると、濾過効率が高くなるため、さらに好ましい。同じ濾紙を組み合わせても構わないし、内側に保留粒子径の小さい濾紙を組み合わせても良い。また、外側に大きなゴミを除去するためのガード濾紙を使用することが、好ましい。ガード濾紙は保留粒子径が20μm以上と大きく、柔らかい綿のような濾紙が濾過圧力に影響せず大きなゴミの除去ができ、また、濾過器の液漏れ防止もできるため、好ましい。
また本発明では、事前濾過後の微粒子分散溶液またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して作製した微粒子含有ドープを濾過する濾過器を、直列に2段以上設置する。これにより凝集物除去効果が大きく、好ましい。
濾材に金属焼結フィルターを使用する場合、その形状はプリーツ型円筒フィルター、フラット型円筒フィルター、チューブ型フィルター、リーフディスクフィルターの何れのタイプでも良いが、濾過面積の調整や再生の容易性等の観点から、プリーツ型フィルターやリーフディスクフィルターが好ましい。濾過精度はJIS B8356によるフィルターメディアを通過した最大グラスビーズの粒径で見た場合、3μm〜40μmが好ましい。また温度25℃の空気における差圧30mmHO時の透過空気量で見た場合、0.15〜6.4L/cm・minが好ましい。
本発明では、濾材に濾紙と金属焼結フィルターを使用した濾過器をそれぞれ樹脂の溶解工程から流延工程の間に設ける場合には、濾紙を使用する濾過器を上流側にするのが、好ましい。
また濾紙を使用する濾過器も金属焼結フィルターを使用する濾過器もそれぞれ2台以上並列に設置し、通常はそのうちの1台を使用して、濾圧上昇が見られた場合には、濾材を交換した未使用の濾過器に切り換えるのが、好ましい。
微粒子の樹脂への添加は、前記濾過の前であれば、どこでも構わない。例えば、主ドープの溶解釜へ直接添加しても良いし、主ドープ溶解釜とは別に、主ドープと微粒子添加液の混合釜を設けて混合しても良い。または濾過前の配管中にインラインで添加し、スタチックミキサーなどの混合機で混合しても良い。
本発明では、微粒子の分散溶液やその他の液状添加剤を事前に濾過して樹脂溶液に添加する。この時に使用するフィルターは特に制限が無いが、微粒子の分散液ではその濾過前後での液中の微粒子濃度の減量が5%以下であることが、好ましい。また濾過前後の液中での平均粒径の変動が、−20%〜+10%以内であることが、好ましい。
また本発明では、ドープ中での微粒子の含有量が0.05〜0.1重量%であるドープを濾過する。ドープ中での微粒子の含有量を、この範囲にすることで、所望のフィルム中の微粒子含有量を得ることができる。ここで、ドープ中での微粒子含有量が0.05重量%未満では、フィルム中の微粒子含有量が少なく、充分な滑り性を得ることができない。0.1重量%を越えると、いかに濾過寿命を考慮した本発明でも濾圧上昇が早くなり、生産性に劣るため、好ましくない。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50重量%程度含まれることがある。返材には微粒子が含まれているため、返材の添加量に合わせて微粒子添加液の添加量をコントロールする必要がある。コントロールが容易な点で、バッチ管理のできる主ドープの溶解釜へ直接添加の方法と主ドープと微粒子添加液の混合釜を設けて混合する方法がより好ましい。主ドープと微粒子添加液の混合に充分な時間が取りやすく、生産性に優れるため、主ドープの溶解釜へ直接添加の方法が最も好ましい。
ここで、返材とは、光学用樹脂フィルムを細かく粉砕した物で、光学用樹脂フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした光学用樹脂フィルム原反が使用される。
微粒子の分散溶液には、微粒子の他にセルロースエステルが含まれていても、微粒子と溶媒の分散液を希釈したものでもよい。微粒子添加液にセルロースエステルを含有させる場合のセルロースエステルの濃度は、2〜5重量%が好ましく、3〜4重量%がさらに好ましい。セルロースエステルは、主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わないが、好ましくは下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが分散性に優れ、微粒子の凝集が抑えられるため、より好ましい。分散性に優れる理由として、セルロースエステルのプロピオニル基やブチリル基が微粒子の表面に吸収するなど分散剤的な効果を示すためと推定される。
式(I) 2.6≦X+Y≦2.9
式(II) 0≦X≦2.5
ここで、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基及び/またはブチリル基の置換度である。中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
微粒子添加液に含有されるセルロースエステルは、例えば特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号公報等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。これらの中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることもできる。
本発明において、使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmがより好ましく、5〜12nmがさらに好ましい。1次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く、好ましい。見掛け比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため、好ましい。
微粒子の添加量はフィルム中の含有量にして、0.06〜0.5重量%が好ましく、0.08〜0.4重量%がさらに好ましく、0.1〜0.3重量%が最も好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため、特に好ましい。
本発明では、フィルム中での微粒子の平均粒径を測定した場合に微粒子の粒径分布より得られる250nm以上の比率が0.1〜4%が好ましい。0.1%未満の場合では、一部粗大粒子が滑り性に寄与するため、その量が不足し、フィルムの滑り性が劣化し、好ましくない。4%を越えると、元々の微粒子の粒径分布で粗大粒子が多いことを意味しており、濾過器での圧力上昇が早くなる傾向があり、好ましくない。さらにはフィルムでの異物故障も多くなり、好ましくない。
微粒子の分散溶液の作製方法は、以下ような方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(作製方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行なう。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液を溶剤で希釈し、その後少量のセルロースエステルまたは主ドープを加え、充分撹拌する。
(作製方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行なう。これを微粒子分散液とする。これに溶剤を加えて微粒子添加液とする。
微粒子を分散するときに使用する溶剤は、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることができる。特にアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8の等が挙げられる。
微粒子を溶剤と混合して分散するときの微粒子の濃度は5〜30重量%が好ましく、8〜25重量%がさらに好ましく、10〜15重量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため、好ましい。
微粒子を分散する分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作り出す装置である。高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が100kgf/cm以上であることが、好ましい。さらに好ましくは200kgf/cm以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidicsCorporation社製超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザー、あるいはウルトラタラックスがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、三和機械株式会社製UHN−01等が挙げられる。
フィルムには偏光子を保護するため、紫外線吸収剤を添加しても良い。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長380nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
用いられる紫外線吸収剤は、20℃の温度下で液体である紫外線吸収剤が好ましい。20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤を使用すると、フィルムを延伸したときにリタデーション値Rtの変化が少なく、好ましい。紫外線吸収剤の構造は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が、特に好ましい。本発明において、用いられる紫外線吸収剤の具体例として、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバスペシャルティケミカルズ社製の市販品であり、好ましく使用できる。これらの中で、チヌビン109、チヌビン171は20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤であり、さらに好ましく使用することができる。
本発明に係わるセルロースエステルフィルムは、紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜4.0重量%が好ましく、0.6〜2.0重量%がさらに好ましい。
本発明では、紫外線吸収剤の添加方法として、主ドープに微粒子と一緒に添加する方法、微粒子と分離してドープにインライン添加する方法による。主ドープを微粒子と一緒に添加する方法は、工程の簡素化の観点で、好ましい。インライン添加する方法は、フィルムの紫外線吸収率の調整が容易であるため、好ましい。
紫外線吸収剤を含有した添加液とは、下記に示す紫外線吸収剤を含有し、主ドープへインライン添加される液のことであり、紫外線吸収剤を1〜30重量%含有していることが好ましく、5〜20重量%含有していることがさらに好ましく、10〜15重量%含有していることが最も好ましい。紫外線吸収剤の含有量の少ない方が、セルロースエステルの溶解性に優れ、紫外線吸収剤の含有量の多い方が、添加量が少なく、インライン添加が容易になるため、上記の範囲が好ましい。
紫外線吸収剤添加液には、紫外線吸収剤の他にセルロースエステルが含まれていることが、添加液の粘度を調整する点で、好ましい。セルロースエステルは、主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わない。
本発明では、紫外線吸収剤添加液を事前に濾過してドープに添加する。この時に使用するフィルターは特に制限が無いが、紫外線吸収剤添加液ではその濾過前後での液中の紫外線吸収剤濃度の減量が5%以下であることが好ましい。
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために例えば青色染料等を添加剤として用いてもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としては、置換されても良いアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。これらの染料のフィルムへの添加量はフィルムの透明性を維持するため、0.1〜1000μg/m、好ましくは10〜100μg/mである。
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために蛍光増白剤を添加剤として使用しても良い。
青色染料や蛍光増白剤は、紫外線吸収剤の添加液中に添加することがフィルムの色味を調整しやすく、好ましい。これら添加剤も微粒子や紫外線吸収剤と同様、使用するフィルターは特に制限が無いが、紫外線吸収剤添加液ではその濾過前後での液中の添加剤濃度の減量が5%以下であることが好ましい。
本発明において主ドープとは、本発明のセルロースエステルフィルムを製造する際のドープ液であり、添加液と区別するために主ドープと呼ぶ。添加液には、樹脂成分を高濃度で含有する主ドープ液と同様の樹脂成分を混合する場合があり、これと区別するためフィルム形成樹脂成分の大部分を含む添加液ではないドープ液を主ドープと呼ぶ。
また本発明のセルロースエステルフィルムには、フィルムの機械物性を調整したり、製膜中のフィルムのハンドリング性を良くするために可塑剤を添加するのが、好ましい。
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。リン酸エステル系では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等があり、フタル酸エステル系としては、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等があり、クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を、好ましく用いることができる。
これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、また必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して1〜30重量%含有させることができ、好ましくは2〜25重量%、特に好ましくは8〜15重量%である。
本発明によるセルロースエステルフィルムには、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有することができる。セルロースエステルに対する多価アルコールエステルの含有量が4.5〜12.5重量%、好ましくは6〜12重量%、さらに好ましくは7〜11重量%である。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、上記モノカルボン酸は、分子内に芳香族環またはシクロアルキル環を有する化合物であるのが、好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、脂肪族多価アルコールは2〜20価であるのが、好ましい。
このように、多価アルコールエステルを使用することにより、従来の可塑剤を減量できることの寄与が大きい。
つぎに、本発明に用いられる脂肪族多価アルコールエステルについて説明すると、脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
(脂肪族多価アルコール)
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(1)で表される。
−(OH)n …(1)
ただし、式中、Rはn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性及び/またはフェノール性水酸基を表す。
ここで、n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等)、アルケニレン基(例えばエテニレン基等)、アルキニレン基(例えばエチニレン基等)、シクロアルキレン基(例えば1,4−シクロヘキサンジイル基等)、アルカントリイル基(例えば1,2,3−プロパントリイル基等)が挙げられる。n価の脂肪族有機基は置換基(例えばヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。
nは2〜20が好ましい。好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
(モノカルボン酸)
本発明において、多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらはさらに置換基を有しても良い。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
(多価アルコールエステル)
本発明に用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明において、多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
Figure 2006206627
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Figure 2006206627
Figure 2006206627
上記多価アルコールエステルのうち、トリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、1,3−ジブチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールプロパンと酢酸及び安息香酸との混合エステル、トリメチロールプロパンとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、トリメチロールプロパンと酢酸及びシクロヘキサンカルボン酸との混合エステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと安息香酸とのエステル、キシリトールと安息香酸とのエステル、キシリトールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステルが好ましい。
なお、多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%が好ましく、6〜12重量%がさらに好ましく、特に好ましくは7〜11重量%である。
また、上記多価アルコールエステルは可塑剤機能を有しており、このような多価アルコールエステルと、従来の可塑剤とを同時に使用することができる。その場合、多価アルコールエステルは、上記のように、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%の範囲で使用することができるが、多価アルコールエステルと可塑剤との合計量が、セルロースエステルに対する重量%で12.5重量%以下であることが、好ましい。またこの場合には、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して8.0重量%以下であるのが、好ましい。中でも、多価アルコールエステルの使用量が、セルロースエステルに対して7重量%以上であることが好ましく、さらには、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して5.5重量%以下であることが好ましい。その理由は、多価アルコールエステルの使用により、従来の可塑剤の使用量を低減することが可能となるためである。
本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルと溶剤、及び上記多価アルコールエステルからなる化合物と一緒に、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有している。
多価アルコールエステルからなる化合物、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤に溶解して、液状添加剤とし、これをドープ溶解釜に添加しても良いし、インラインで添加しても良い。本発明においては、液状添加剤は事前に濾過して、ドープと混合する。またドープ溶解釜に紫外線吸収剤を添加する場合は、その全量をドープ溶解釜に添加しても良いし、フィルム中での成分を調整するために、その一部をインライン添加して、添加量を調整するようにしても良い。
本発明の光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムにおいては、上記可塑剤の他にも可塑剤と同様の作用を示す添加剤が含有させることができる。これらの添加剤としては、例えば、セルロースエステルフィルムを可塑化することのできる低分子有機化合物であれば、可塑剤と同様の効果を得ることができる。これらの成分は可塑剤に比べ直接フィルムを可塑化する目的で添加されるものではないが、量に応じて上記可塑剤と同様の作用を示す。
本発明の好ましい態様であるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に用いられる好ましい製膜工程は、下記に示す溶解工程(濾過工程を含む)、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程、及び巻き取り工程からなる。以下に各々の工程を説明する。
《主ドープの溶解工程》
主ドープの溶解工程は、セルロースエステルのフレークに、後述の良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。
本発明では、ドープ中の固形分濃度は15重量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35重量%のものが好ましく用いられる。
ドープ中の固形分濃度が高過ぎると、ドープの粘度が高くなり過ぎ、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、35重量%以下であることが望ましい。
ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
溶解には、常圧で行なう方法、好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)の沸点以下で行なう方法、上記の良溶媒の沸点以上で加圧して行なう方法、冷却溶解法で行なう方法、高圧で行なう方法等種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力をかけて溶解する方法としては、温度40.4〜120℃で、0.11〜1.50MPaに加圧することで発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することができる。
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等、また特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号公報等に記載されているセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルなどがセルロースの低級脂肪酸エステルの例として挙げられる。
セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTM−D−817−96に準じて実施することができる。
上記脂肪酸の中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるが、本発明のセルロースエステルフィルムの場合には、フィルム強度の観点から、特に重合度250〜400のものが、好ましく用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルムは総アシル基置換度が2.5〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられるが、特に総アシル基置換度が2.55〜2.85のセルロースエステルが、好ましく用いられる。総アシル基置換度が2.55以上になると、フィルムの機械強度が増加し、2.85以下になると、セルロースエステルの溶解性が向上したり、異物の発生が低減されるため、より好ましい。
偏光板保護フィルムとして用いる場合は、セルロースアセテートがより好ましく、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であることがさらに好ましい。
ここで、使用するセルロースアセテートの分子量分布Mw/Mnを1.8〜3.0の範囲に限定した理由は、セルロースアセテートの分子量分布Mw/Mnが1.8未満であると、延伸によりフィルム表面あるいは内部で、セルロースエステルの結晶化が部分的に発生するため、加工性や寸法安定性において品質にバラツキが生じるので、好ましくない。これに対し、セルロースアセテートの分子量分布Mw/Mnが3.0を超えると、延伸によりフィルム表面に細かな凹凸が発生しやすいので、好ましくないからである。
セルロースアセテートの分子量は、数平均分子量(Mn)で90000〜180000のものが用いられる。120000〜180000のものが、さらに好ましく、150000〜180000が、特に好ましい。数平均分子量(Mn)が90000未満だと、製膜時にシワが入りやすくなるので、好ましくなく、数平均分子量(Mn)が180000を超えると、ドープ粘度が非常に高くなるので、生産上好ましくない。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工株式会社製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1重量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所株式会社製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
位相差フィルムとして用いる場合は、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましく、セルロースアセテートプロピオネートの場合、アセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度をYとすると、
2.55≦X+Y≦2.85
1.5≦X≦2.4
の範囲にあるものが、好ましく用いられる。
セルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステル、それ以外の原料から合成されたセルロースエステルを単独あるいは混合して用いることができる。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物すなわち、錯体を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると、不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行なった後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行なうことによって求めることができる。
セルロースエステルの代わりに、セルロースエステルフィルムの返材を用いても良い。返材の使用比率は、主ドープ等の処方値の固形分に対して0〜70重量%が好ましく、10〜50重量%がさらに好ましく、20〜40重量%が最も好ましい。返材使用量の多い方が、濾過性に優れ、返材使用量の少ない方が、滑り性に優れるため、上記範囲にすることが好ましい。
返材を使用した場合は、その使用量に対応して、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子などセルロースエステルフィルムに含まれる添加剤は減量して、最終的なセルロースエステルフィルム組成が設計値になるように調整を行なう。
主ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば、特に限定はされないが、また単独で溶解できない溶媒であっても、他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば、使用することができる。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30重量%含有するものが好ましく用いられる。
この他使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が、好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため、特に好ましい。
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
溶解後、セルロースエステル溶液(ドープ)を前述の濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましく、またその際、ドープ中には、微粒子が添加されている必要がある。可塑剤、酸化防止剤等は好ましく添加される。
これらの添加物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
図1は、本発明のドープ濾過方法に係わる溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程、及び巻取り工程を模式的に示すものである。
同図を参照すると、本発明においては、微粒子仕込釜1でドープに添加する微粒子の分散溶液(微粒子添加液)を調製し、この微粒子の分散溶液を送液ポンプ2aの作動により濾過器3に導き、濾過器3で微粒子分散溶液を事前に濾過して、大きな凝集物を除去した後、事前濾過後の微粒子分散溶液を主ドープ溶解釜4へ導入して、セルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)に添加する。
その後、微粒子含有ドープを送液ポンプ2bの作動により主濾過器5に導いて濾過する。主濾過器5では、微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で、1次濾過する。なお、この実施形態では、主濾過器5に並列して予備の主濾過器5aが設けられており、一定期間の経過後、主濾過器5を定期的に清掃する場合に、流送管に設けられたバルブの切り替えにより微粒子含有ドープを予備の主濾過器5a側に導いて濾過し、1次濾過作業の連続運転が可能なようになされている。
1次濾過後の微粒子含有ドープは、一旦、ドープストック釜6に貯える。ついで、送液ポンプ2cの作動によりドープストック釜6から1次濾過後の微粒子含有ドープを、濾過器7に導いて濾過する。濾過器7でも、微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で、2次濾過する。なお、この実施形態では、濾過器7に並列して予備の濾過器7aが設けられており、一定期間の経過後、濾過器7を定期的に清掃する場合に、流送管に設けられたバルブの切り替えにより微粒子含有ドープを予備の濾過器7a側に導いて濾過し、2次濾過作業の連続運転が可能なようになされている。
なお、本発明において、微粒子含有ドープを濾過する濾過器を直列に2段以上設置するとは、図1に示すように、濾過器5と濾過器7が直列に設置されていても良いし、濾過器5を直列に2段以上設置しても良いし、濾過器7を直列に2段以上設置しても良い。たゞし、濾過効率や設置コストを考慮すると、濾過器7で金属焼結フィルターを直列に2段以上設けるのが、好ましい。
一方、添加液溶解釜8で作成した紫外線吸収剤添加液を送液ポンプ9の作動により濾過器10に導き、濾過器10で紫外線吸収剤添加液を事前に濾過する。そして、上記2次濾過後の微粒子含有ドープを、スタティックミキサー11に導入するとともに、スタティックミキサー11の手前において事前濾過後の紫外線吸収剤添加液を導入して、微粒子含有ドープに紫外線吸収剤添加液をインライン添加する。紫外線吸収剤添加液を添加後の微粒子含有ドープは、流延ダイ102に導入し、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを作製する。
本発明においては、上記のようにして得られたドープを用い、以下に説明する流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
図1を参照すると、101はエンドレスで走行する支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。102はセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体1に流延するダイスを示す。103は支持体101に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離点を示し、104は剥離されたフィルムを示す。105はテンター搬送・乾燥工程を示す。106はロール搬送・乾燥工程を示す。107は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
なおここで、テンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を含む工程とは、支持体から剥離されたフィルムを乾燥して巻き取るまでの工程のどこかに、フィルムの乾燥伸縮率を調整するテンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を有する工程をいう。テンター搬送・乾燥工程とは、テンター搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行ない、乾燥伸縮率を調整する工程を言い、ロール搬送・乾燥工程とはロール搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行ない、乾燥伸縮率を調整する工程をいう。
《流延工程》
ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以下、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、いずれも好ましく用いられる。
製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいはダイの内部をスリットで分割し、組成の異なる複数のドープ液を同時に流延(共流延とも言う)して、積層構造のセルロースエステルフィルムを得ることもできる。
このように、得られたドープをベルトまたはドラム等の支持体上に流延し、製膜するが、本発明は特にベルトを用いた溶液流延製膜法で特に有効である。これは後述のように支持体上での乾燥条件を細かく調整することが容易だからである。
《溶媒蒸発工程》
ウェブ(本発明においては、流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率が好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。流延後の支持体上のウェブを温度40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。温度40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか、赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
特に本発明のセルロースエステルフィルムは、流延から30〜90秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが望ましい。ここで、30秒未満で剥離すると、フィルムの面品質が低下するだけでなく、透湿性の点でも好ましくない。90秒を越えて乾燥させると、剥離性が悪化することなどによる面品質の低下や、フィルムに強いカールが発生するため、好ましくない。
《剥離工程》
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると、剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量は、25〜120重量%が好ましく、さらに好ましくは40〜100重量%である。
本発明において、ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量=(ウェブの加熱処理前重量−ウェブの加熱処理後重量)/(ウェブの加熱処理後重量)×100%
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、温度115℃で、1時間の加熱処理を行なうことを表わす。
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行なえるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが、好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、液体による裏面伝熱方法が、好ましい。
輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とはいえないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することができる。
支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることができ、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等異なる温度とすることができる。
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため、製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。
それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることもできる。
偏光板保護フィルムとして使用する場合は、製膜した後、残留溶剤量が40重量%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶剤量が40重量%未満であるとき、TD方向に延伸することが好ましい。残留溶剤量が40重量%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸し、かつ残留溶剤量が40重量%未満であるとき、TD方向に延伸するのは、剥離後のフィルムを高残留溶剤状態でMD方向とTD方向の両方に延伸してしまうと、MD方向に延伸しセルロースエステルの配向性を高めても、TD方向の延伸によってその配向性が乱れてしまい、弾性率向上の効果が低くなってしまうためである。本発明のセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルの配向性を乱すことなく、弾性率の向上を維持できるものである。残留溶剤量が60〜120重量%であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始することがさらに好ましく、90〜110重量%が最も好ましい。残留溶剤量が1〜30重量%未満であるとき、TD方向に延伸することがさらに好ましく、5〜20重量%が最も好ましい。
偏光板保護フィルムとして使用する場合のセルロースエステルフィルムの延伸倍率はMD方向とTD方向とも1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍がさらに好ましい。MD方向とTD方向延伸により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが、好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。これはMD方向の延伸倍率×TD方向の延伸倍率で求めることができる。MD方向の延伸倍率が1.05倍未満では弾性率向上効果が少なく、好ましくない。TD方向の延伸倍率が1.05倍未満ではRo低減効果が少なく、好ましくない。また、延伸倍率が1.3倍を超えてもヘイズも増加するため、好ましくない。
MD方向に延伸するために、剥離張力を130N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは150〜170N/mである。剥離後のウェブも高残留溶剤状態であるため、剥離張力と同様の張力を維持することで、MD方向への延伸を行なうことができる。ウェブが乾燥し、残留溶剤量が減少するに従って、MD方向への延伸率は低下する。
偏光板保護フィルムとして使用する場合は、セルロースエステルフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンが1.0m以下であることが、好ましい。本発明のような分子量分布のセルロースエステルフィルムを高残留溶剤量の状態でMD方向に延伸する場合、MD方向へのツレが発生しやすく、ロールスパンが1.0m以下であると、ツレを防止することができる。また、MD方向へ延伸しているときのフィルム温度は10〜40℃が好ましく、この範囲にすることで、フィルムの平面性が良くなるからである。
本発明のMD方向の延伸倍率は、ベルト支持体の回転速度とテンター運転速度から算出した。
TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップまたはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が、好ましく用いられる。
テンターを行なう場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、80〜150℃がさらに好ましく、100〜140℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性、弾性率に優れる。セルロースエステルフィルムを延伸すると、異物が表面に突出しやすく、通常よりも異物故障が多く発生する。そのため、本発明は延伸するプロセスを有するセルロースエステルフィルムにおいて特に効果を発揮するものである。
本発明において、面内リタデーション値Roは自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行ない、得られた屈折率Nx、Ny、Nzから算出することができる。
面内リタデーション値Roは20〜200nmであることが好ましく、かつ厚み方向のリタデーション値Rtが70〜400nmの範囲であることが好ましい。
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt=((Nx+Ny)/2−Nz)×d
(式中、Nx、Ny、Nzはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表わし、かつ、Nx、Nyはフィルム面内方向の屈折率を、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表わす。また、Nx≧Nyであり、dはフィルムの厚み(nm)を表わす。)
本発明のセルロースエステルフィルムは、遅相軸方向と製膜方向とのなす角度θ(ラジアン)と面内方向のリタデーション値Roが下記の関係にあり、特に偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとして好ましく用いられる。
P≦1−sin(2θ)sin(πRo/λ)
ここで、Pは0.9999以下である。
θはフィルム面内の遅相軸方向と製膜方向(フィルムの直尺方向)とのなす角度(°ラジアン)、λは上記Nx、Ny、Nz、θを求める三次元屈折率測定の際の光の波長590nm、πは円周率である。
《乾燥工程》
ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップまたはピンでウェブの両端を保持して搬送するテンター装置を用いて幅保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することが、リタデーション値Roが低く維持できるために好ましく、190N/m以下であることが好ましい。さらに170N/m以下であることが好ましく、さらに140N/m以下であることが好ましく、100〜130N/mであることが特に好ましい。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5重量%以下となるまで、上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ねやすい。高温による乾燥は残留溶媒が8重量%以下くらいから行なうのがよい。全体を通し、乾燥温度は概ね40〜250℃で行なわれる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど、収縮が大きくなる。
この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
この観点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップまたはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
このとき幅手方向の延伸倍率は0%〜100%であることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いる場合は5〜20%がさらに好ましく、8〜15%が最も好ましく、位相差フィルムとして用いる場合は10〜40%がさらに好ましく、20〜30%が最も好ましい。延伸倍率によってリタデーション値Roをコントロールすることが可能で、延伸倍率が高い方ができ上がったフィルムの平面性に優れるため、好ましい。本発明は、微粒子の凝集物が異物となりやすい延伸倍率の高いフィルムで特に効果を発揮するものである。
テンターを行なう場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100重量%であるのが好ましく、かつ、ウェブの残留溶媒量が10重量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行なうことが好ましく、さらに好ましくは5重量%以下である。
テンターを行なう場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃がさらに好ましく、70〜100℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性に優れる。なお、乾燥温度が高い場合でも蒸散しにくい紫外線吸収剤を使用することにより、テンター乾燥温度が高く、延伸倍率の高い製造条件のときに、その効果が顕著に発揮される。
また、フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を0.5重量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1重量%以下であり、さらに好ましくは0〜0.01重量%以下とすることである。
フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、上記のようなピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。
ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
《巻き取り工程》
ウェブ中の残留溶媒量が2重量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4重量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが、好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常5〜500μmの範囲にあり、さらに10〜250μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては10〜120μmの範囲が用いられる。本発明のセルロースエステルフィルムは特に、10〜60μmの膜厚の薄いフィルムの範囲でより効果を発揮する。
本発明のセルロースエステルフィルムの透湿度は、JIS Z 0208に記載の方法で測定された温度25℃、湿度90RH%における値で定義する。透湿度は20〜250g/m・24時間であることが好ましいが、特に20〜200g/m・24時間であることが好ましい。透湿性が、250g/m・24時間を超えた場合では偏光板の耐久性が著しく低下し、逆に20g/m・24時間未満では、偏光板製造時の接着剤に使われている水等の溶媒が乾燥しにくくなり、乾燥時間が長くなるため、好ましくない。より好ましくは25〜200g/m・24時間である。
また、本発明のセルロースエステルフィルムでは、温度80℃、湿度90%RHにおける重量変化を少なくすることで、寸法安定性をさらに改善することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムでは、温度80℃、湿度90%RHで、48時間加熱処理した前後での重量変化率が±2%以内とすることがより好ましく、これによって、透湿度が改善された薄膜フィルムでありながら、寸法変化率も優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、温度80℃、湿度90%RH雰囲気下で、48時間加熱処理した際の寸法変化率はMD方向(フィルムの製膜方向)、TD方向(フィルムの幅手方向)共に±0.5%以内であることが好ましく、さらに±0.3%以内であることが好ましく、さらに±0.1%以内であることが好ましく、さらに±0.05%以内であることが好ましい。
本発明でいう寸法変化率とは、温度や湿度の条件が過酷な状況でのフィルム縦方向及び横方向の寸法変化を表わす特性値である。具体的には加熱条件、加湿条件、熱湿条件にフィルムを置いて強制劣化としての、縦、横の寸法変化を測定する。例えば、測定しようとするフィルム試料について、幅手方向150mm×長手方向120mmサイズに断裁し、該フィルム表面に、幅手方向及び長手方向それぞれに100mm間隔で2ヶ所、カミソリ等の鋭利な刃物で十文字型の印を付ける。該フィルムを温度23℃、湿度55%RHの環境下で24時間以上調湿し、工場顕微鏡で処理前の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L1を測定する。つぎに、該試料を電気恒温槽中で、高温高湿処理(条件;温度80℃、湿度90%RHの環境下で48時間放置をする)する。再び、該試料を温度23℃、湿度55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理後の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L2を測定する。この処理前後の変化率を次式によって求める。
寸法変化率(%)=(L2−L1)/L1×100
式中、L1は処理前の印間距離、L2は処理後の印間距離を表わす。
すなわち、付す印の位置をフィルムの長手方向、幅手方向に付けることによって所望の寸法変化率測定を行なうことができるのである。
温度105℃で5時間処理したときの寸法変化率は、MD方向、TD方向共に±0.5%以内であることが好ましく、さらに±0.3%以内であることが好ましく、さらに±0.1%以内であることが好ましく、さらに±0.05%以内であることが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは抗張力がMD方向、TD方向共に90〜170N/mmであることが好ましく、特に120〜160N/mmであることが好ましい。
含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、透過率が90%以上であることが望ましく、さらに好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは93%以上である。また、ヘイズは0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、カール値は絶対値が小さい方が好ましく、変形方向は、+方向でも、−方向でもよい。カール値の絶対値は30以下であることが好ましく、さらに好ましくは20以下であり、10以下であることが特に好ましい。なお、カール値は、曲率半径(1/m)で表わされる。
本発明においては、上述したいずれの溶液流延製膜法による形態でセルロースエステルフィルムを製造しても構わない。
本発明のセルロースエステルフィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明のセルロースエステルフィルムは好ましく用いられる。
本発明に係る偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルムあるいはセルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
本発明のセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、本発明の液晶表示装置が得られる。
本発明のセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。さらに、本発明の偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1〜4
(添加液A)
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 12重量部
(1次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88重量部
図1を参照すると、本発明においては、密閉した微粒子仕込釜1でドープに添加する上記の材料よりなる微粒子の分散溶液(微粒子添加液A)を調製する。すなわち、上記の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。分散後の液濁度は120ppmであった。酸化珪素分散液に88重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合した。この微粒子の分散溶液を送液ポンプ2aの作動によりロキテクノ株式会社製のSLフィルターカートリッジ SL−100よりなる濾過器3に導き、濾過器3で微粒子分散溶液を事前に濾過して、大きな凝集物を除去し、添加液Aを調製した。
(添加液C)
チヌビン109(液状紫外線吸収剤) 11重量部
チヌビン171(液状紫外線吸収剤) 5重量部
メチレンクロライド 88重量部
エタノール 12重量部
同様に、図1を参照すると、本発明においては、上記の材料を密閉した添加液溶解釜8に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、セルロースアセテートプロピオネート(置換度2.65、アセチル基1.90、プロピオニル基0.75)6重量部を撹拌しながら加えて、さらに120分間撹拌した後、紫外線吸収剤添加液を送液ポンプ9の作動によりロキテクノ株式会社製のSLフィルターカートリッジ SL−100よりなる濾過器10に導き、濾過器10で紫外線吸収剤添加液を事前に濾過し、添加液Cを調製した。
(主ドープ液Aの調製)
リンター綿から合成されたセルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
多価アルコールエステル例示化合物16 5重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5重量部
メチレンクロライド 440重量部
エタノール 40重量部
図1を参照すると、本発明においては、上記の材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、事前濾過後の微粒子添加液Aを主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート溶液(ドープ)に添加した。
このとき、実施例1〜3においては、微粒子添加液Aを、表1に記載のように、ドープ中の微粒子含有量(微粒子濃度)が0.05重量%になるようにそれぞれ添加し、また実施例4においては、微粒子添加液Aを、ドープ中の微粒子含有量(微粒子濃度)が1.00重量%になるように添加し、加熱、撹拌しながら、溶解した。その後、微粒子含有ドープを送液ポンプ2bの作動によりプレスフィルター装置よりなる主濾過器5に導いて濾過した。主濾過器5では、微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の25倍の濾材(濾紙)で、1次濾過した。すなわち、主濾過器5では、プレスフィルター装置に捕集粒子径30μmで濾水時間1sec/100ml未満のガードフィルターを2枚使用し、その内側へ下記の表1記載の90%捕集粒子径/微粒子平均粒子径の比が25倍である濾紙を3枚重ねて使用し濾過して、主ドープ液Aを調製した。プレスフィルターの濾過面積は50mであった。
さらに流延までに、1次濾過後の微粒子含有ドープを、表1に記載の金属焼結フィルターをセットした濾過器7に導いて濾過した。濾過器7でも、微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の70倍の濾材(金属焼結フィルター)で、2次濾過した。濾過器を通して製膜した。この金属焼結フィルターをセットした濾過器7は、表1に記載の台数を直列に配置した。
上記2次濾過後の微粒子含有ドープを、スタティックミキサー11に導入するとともに、スタティックミキサー11の手前において事前濾過後の紫外線吸収剤添加液Cを導入して、微粒子含有ドープに紫外線吸収剤添加液Cをインライン添加した。インライン添加では、スタティックミキサー11としてインラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)を使用し、ここで充分混合し、紫外線吸収剤添加液Cを添加後の微粒子含有ドープは、流延ダイ102に導入して、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製する。
ベルト流延装置では、温度22℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体101に均一に流延した。ついで、ステンレスバンド支持体101で、残留溶剤量が100重量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離ロール103により、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体101上から剥離した。剥離したセルローストリアセテートのウェブ(フィルム)104を、温度35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンター105で幅方向に1.07倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンター105で延伸を始めたときの残留溶剤量は10重量%であった。その後、110℃、120℃の乾燥ゾーン106を多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1430mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアの巻取り機107に巻き取り、実施例1〜4のセルローストリアセテートフィルム試料を得た。
これら実施例1〜4において、ステンレスバンド支持体101の回転速度とテンター105の運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.08倍であった。セルローストリアセテートフィルムの残留溶剤量は、0.004重量%であり、膜厚は40μm、巻数は5200mであった。
比較例1
比較のために、実施例1に記載の添加液A,Cに関して、実施例1記載の濾過を実施しないこと、その他、表1に記載の条件違い以外は、実施例1の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
(添加液A1)
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 12重量部
(1次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88重量部
実施例1の場合と同様に、密閉した微粒子仕込釜1でドープに添加する上記の材料よりなる微粒子の分散溶液(微粒子添加液A1)を調製する。すなわち、上記の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。分散後の液濁度は120ppmであった。酸化珪素分散液に88重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、添加液A1を調製した。なお、添加液A1は、濾過器3による濾過を行なっていない。
(添加液C1)
チヌビン109(液状紫外線吸収剤) 11重量部
チヌビン171(液状紫外線吸収剤) 5重量部
メチレンクロライド 88重量部
エタノール 12重量部
上記の材料を密閉した添加液溶解釜8に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、セルロースアセテートプロピオネート(置換度2.65、アセチル基1.90、プロピオニル基0.75)6重量部を撹拌しながら加えて、さらに120分間撹拌し、添加液C1を調製した。なお、添加液C1は、濾過器10による濾過を行なっていない。
ついで、上記実施例1に記載の主ドープAの材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、比較例記載の濾過していない微粒子添加液A1を、主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート樹脂溶液(ドープ)に添加した。
以下、実施例1の場合と同様に処理した後、微粒子含有ドープを、スタティックミキサー11に導入するとともに、スタティックミキサー11の手前において、濾過していないの紫外線吸収剤添加液C1を導入して、微粒子含有ドープに紫外線吸収剤添加液C1をインライン添加した。インライン添加では、スタティックミキサー11としてインラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)を使用し、ここで充分混合し、紫外線吸収剤添加液C1を添加後の微粒子含有ドープは、流延ダイ102に導入して、上記実施例1の場合と同様に、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
実施例5〜7
(添加液B)
チヌビン109(液状紫外線吸収剤) 11重量部
チヌビン171(液状紫外線吸収剤) 5重量部
メチレンクロライド 88重量部
エタノール 12重量部
同様に、図1を参照すると、本発明においては、密閉した微粒子仕込釜1でドープに添加する上記の材料よりなる微粒子の分散溶液(微粒子添加液B)を調製する。すなわち、上記の材料をこれらの材料を微粒子仕込釜1に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
これに酸化珪素分散希釈液(上記微粒子添加液A)4重量部を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度2.65、アセチル基1.90、プロピオニル基0.75)6重量部を撹拌しながら加えて、さらに120分間撹拌した。この微粒子の分散溶液を送液ポンプ2aの作動によりロキテクノ株式会社製のSLフィルターカートリッジ SL−100よりなる濾過器3に導き、濾過器3で微粒子分散溶液を事前に濾過して、大きな凝集物を除去し、添加液Bを調製した。
(主ドープ液Aの調製)
上記実施例1〜3の場合と同様に、主ドープ液Aを調製した。このとき、事前濾過後の微粒子添加液Bを主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート溶液(ドープ)に添加した。その他は、実施例1〜3の場合と同様にして、実施例5〜7のセルローストリアセテートフィルム試料を得た。
これら実施例5〜7において、MD方向の延伸倍率は1.08倍であった。セルローストリアセテートフィルムの残留溶剤量は、0.004重量%であり、膜厚は40μm、巻数は5200mであった。
比較例2
比較のために、実施例5に記載の添加液Bに関して、実施例5記載の濾過を実施しないこと、その他、表1に記載の条件違い以外は、実施例5の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
(添加液B1)
チヌビン109(液状紫外線吸収剤) 11重量部
チヌビン171(液状紫外線吸収剤) 5重量部
メチレンクロライド 88重量部
エタノール 12重量部
実施例5の場合と同様に、密閉した微粒子仕込釜1でドープに添加する上記の材料よりなる微粒子の分散溶液(微粒子添加液B)を調製する。すなわち、上記の材料をこれらの材料を微粒子仕込釜1に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。
これに酸化珪素分散希釈液(上記微粒子添加液A)4重量部を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度2.65、アセチル基1.90、プロピオニル基0.75)6重量部を撹拌しながら加えて、さらに120分間撹拌し、添加液B1を調製した。なお、添加液B1は、濾過器3による濾過を行なっていない。
ついで、比較例2では、上記実施例1に記載の主ドープAの材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、上記の濾過していない微粒子添加液B1を、主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート樹脂溶液(ドープ)に添加した。以下、実施例1の場合と同様に処理して、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
比較例3〜5
比較例3〜5では、上記の比較例2における微粒子添加液B1を、金属焼結フィルターをセットした濾過器(図示略)に導いて濾過した後、スタティックミキサー11の手前に導入して、主ドープAに、微粒子添加液B1をインライン添加した。またここで、比較例3では、微粒子添加液B1の濾過器の金属焼結フィルターの直列台数を1としたが、比較例4と5では、金属焼結フィルターの直列台数を2及び4とし、多段濾過を行なった。
その後、微粒子添加液B1を添加した主ドープについて、上記実施例5の場合と同様に、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
実施例8〜18
(主ドープ液Bの調製)
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)
(Mn=70000、Mw=220000、Mw/Mn=3.14)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 60重量部
図1を参照すると、本発明においては、上記の材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、実施例8〜15においては、事前濾過後の微粒子添加液Aを主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート溶液(ドープ)に添加した以外は、主ドープ液Aと同様にして主ドープ液Bを調製した。
なお、流延までに、1次濾過後の微粒子含有ドープを、表1に記載の金属焼結フィルターをセットした濾過器7に導いて濾過した。濾過器7でも、微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の50倍または90倍の濾材(金属焼結フィルター)で、2次濾過した。濾過器を通して製膜した。この金属焼結フィルターをセットした濾過器7は、表1に記載の台数を直列に配置した。
上記2次濾過後の微粒子含有ドープを、スタティックミキサー11に導入するとともに、スタティックミキサー11の手前において事前濾過後の紫外線吸収剤添加液Cを導入して、微粒子含有ドープに紫外線吸収剤添加液Cを、上記実施例1の場合と同様に、インライン添加した。
また、実施例16〜18においては、上記の材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、事前濾過後の微粒子添加液Bを主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート溶液(ドープ)に添加した以外は、主ドープ液Aと同様にして主ドープ液Bを調製した。
ついで、微粒子含有ドープを、ベルト流延装置の流延ダイ102に導入して、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
ベルト流延装置では、温度22℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体101に均一に流延した。ステンレスバンド支持体101で、残留溶剤量が100重量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離ロール103により、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体101上から剥離した。剥離したセルローストリアセテートのウェブ(フィルム)104を温度35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンター105で幅方向に1.5倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンター105で延伸を始めたときの残留溶剤量は10重量%であった。その後、110℃、120℃の乾燥ゾーン106を多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1430mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアの巻取り機107に巻き取り、実施例8〜18のセルローストリアセテートフィルム試料を得た。
これら実施例8〜18において、ステンレスバンド支持体101の回転速度とテンター105の運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は0.98倍であった。セルローストリアセテートフィルム試料の残留溶剤量は0.1重量%であり、膜厚は80μm、巻数は2600mであった。
比較例6と7
比較のために、実施例1に記載の添加液A,Cに関して、実施例1記載の濾過を実施しないこと、その他、表1に記載の条件違い以外は、実施例8の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
すなわち、上記実施例8に記載の主ドープBの材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、比較例記載の濾過していない微粒子添加液A1を、主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート樹脂溶液(ドープ)に添加した。
以下、実施例8の場合と同様に処理した後、微粒子含有ドープを、スタティックミキサー11に導入するとともに、スタティックミキサー11の手前において、濾過していないの紫外線吸収剤添加液C1を導入して、微粒子含有ドープに紫外線吸収剤添加液C1をインライン添加した。紫外線吸収剤添加液C1を添加後の微粒子含有ドープは、流延ダイ102に導入して、上記実施例8の場合と同様に、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
比較例8
比較のために、実施例5に記載の添加液Bに関して、実施例5記載の濾過を実施しないこと、その他、表1に記載の条件違い以外は、実施例16の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。なお、添加液B1は、濾過器3による濾過を行なっていない。
ついで、比較例8では、上記実施例1に記載の主ドープBの材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、上記の濾過していない微粒子添加液B1を、主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート樹脂溶液(ドープ)に添加した。以下、実施例16の場合と同様に処理して、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
比較例9と10
比較例9と10は、上記比較例8における微粒子添加液B1を、金属焼結フィルターをセットした濾過器(図示略)に導いて濾過した後、スタティックミキサー11の手前に導入して、主ドープAに、微粒子添加液B1をインライン添加した。またここで、比較例9では、微粒子添加液B1の濾過器の金属焼結フィルターの直列台数を1としたが、比較例10では、金属焼結フィルターの直列台数を2とし、多段濾過を行なった。
その後、微粒子添加液B1を添加した主ドープについて、上記実施例16の場合と同様に、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
実施例19〜26
(主ドープ液Cの調製)
セルロースアセテートプロピオネート 55重量部
(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)
(Mn=70000、Mw=220000、Mw/Mn=3.14)
返材 50重量部
トリフェニルフォスフェート 5重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 1重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 60重量部
図1を参照すると、本発明においては、上記の材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、実施例19〜23においては、事前濾過後の微粒子添加液Aを主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート溶液(ドープ)に添加した以外は、主ドープ液Aの場合と同様にして主ドープ液Cを調製した。ただし、返材は表1の実施例1で製膜したフィルムを粉砕したものを使用した。
なお、流延までに、1次濾過後の微粒子含有ドープを、表1に記載の金属焼結フィルターをセットした濾過器7に導いて濾過した。濾過器7でも、微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の100倍濾材(金属焼結フィルター)で、2次濾過した。濾過器を通して製膜した。この金属焼結フィルターをセットした濾過器7は、表1に記載の台数を直列に配置した。
上記2次濾過後の微粒子含有ドープを、スタティックミキサー11に導入するとともに、スタティックミキサー11の手前において事前濾過後の紫外線吸収剤添加液Cを導入して、微粒子含有ドープに紫外線吸収剤添加液Cを、上記実施例1の場合と同様に、インライン添加した。
また、実施例24〜26においては、上記の材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、事前濾過後の微粒子添加液Bを主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート溶液(ドープ)に添加した以外は、主ドープ液Aの場合と同様にして主ドープ液Cを調製した。
ついで、微粒子含有ドープを、ベルト流延装置の流延ダイ102に導入して、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
ベルト流延装置では、温度22℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体101に均一に流延した。ステンレスバンド支持体101で、残留溶剤量が100重量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体101上から剥離した。剥離したセルローストリアセテートのウェブ(フィルム)104を温度35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンター105で幅方向に1.5倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンター105で延伸を始めたときの残留溶剤量は10重量%であった。その後、110℃、120℃の乾燥ゾーン106を多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1430mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアの巻取り機107に巻き取り、実施例19〜26のセルローストリアセテートフィルム試料を得た。
これら実施例19〜26において、ステンレスバンド支持体101の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は0.98倍であった。セルローストリアセテートフィルム試料の残留溶剤量は0.1重量%であり、膜厚は80μm、巻数は2600mであった。
比較例11
比較のために、実施例1に記載の添加液A,Cに関して、実施例1記載の濾過を実施しないこと、その他、表1に記載の条件違い以外は、実施例19の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
すなわち、上記実施例19に記載の主ドープCの材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、比較例記載の濾過していない微粒子添加液A1を、主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート樹脂溶液(ドープ)に添加した。
以下、実施例19の場合と同様に処理した後、微粒子含有ドープを、スタティックミキサー11に導入するとともに、スタティックミキサー11の手前において、濾過していないの紫外線吸収剤添加液C1を導入して、微粒子含有ドープに紫外線吸収剤添加液C1をインライン添加した。紫外線吸収剤添加液C1を添加後の微粒子含有ドープは、流延ダイ102に導入して、上記実施例8の場合と同様に、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
比較例12
比較のために、実施例5に記載の添加液Bに関して、実施例5記載の濾過を実施しないこと、その他、表1に記載の条件違い以外は、実施例22の場合と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。なお、添加液B1は、濾過器3による濾過を行なっていない。
ついで、比較例12では、上記実施例1に記載の主ドープCの材料を密閉した主ドープ溶解釜4に投入し、撹拌しながら、上記の濾過していない微粒子添加液B1を、主ドープ溶解釜4へ導入して、セルローストリアセテート樹脂溶液(ドープ)に添加した。以下、実施例22の場合と同様に処理して、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
比較例13
比較例13は、上記比較例12における微粒子添加液B1を、金属焼結フィルターをセットした濾過器(図示略)に導いて濾過した後、スタティックミキサー11の手前に導入して、主ドープAに、微粒子添加液B1をインライン添加した。ここで、微粒子添加液B1の濾過器の金属焼結フィルターの直列台数を1とした。
その後、微粒子添加液B1を添加した主ドープについて、上記実施例22の場合と同様に、溶液流延製膜法によりセルローストリアセテートフィルムを作製した。
上記実施例1〜26、及び比較例1〜13で作製した試料を、下記に示す測定方法に従って評価した。得られた結果を表1にまとめて示した。
《測定方法》
(異物故障)
ベルト流延装置の巻き取り部の直前にオンライン欠陥検査機を設置し、セルロースアセテート原反フィルム10本分を検査し、平均してセルロースアセテートフィルム100mあたりの20μm以上の異物故障数を算出した。
(フィルム中の粒径分布)
フィルム断面をTEM(透過型電子顕微鏡)計測倍率5000倍にて観察し、画像解析装置により60nm以上の粒径の円相当径を測定。解析された粒径の全個数のうち、円相当径が250nm以上の個数の比率を算出した。
Figure 2006206627
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜26によれば、微粒子を含有するドープの濾過工程において、フィルムでの異物になる微粒子凝集物や樹脂未溶解物等を捕捉しながらも、濾過ライフが充分長く、ドープ(樹脂溶液)の濾過方法は、生産性に優れたものであった。さらに、本発明の実施例1〜26で得られたセルローストリアセテートフィルムは、異物故障が無く、大画面液晶表示装置の部材として優れた光学性能を有するものであった。
これに対し、比較例1、2、6、7、8、11、12では、濾紙フィルター、金属焼結フィルターのいずれか一方または両方の濾圧上昇が大きく、生産性が極端に劣っていた。また比較例3、4、5、9、10、13では、インライン添加用金属焼結フィルターの濾圧上昇が大きく、生産性が極端に劣っていた。また、比較例1では、フィルムの滑り性が劣り、巻き取った後のフィルムの変形が激しく、液晶表示装置用部材として使用することはできなかった。
本発明に係わる溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程、及び乾燥工程を模式的に示したフローシートである。
符号の説明
1:添加液溶解釜
2a,2b,2c:送液ポンプ
3:濾過器
4:主ドープ仕込み釜
5:主濾過器
6:ドープストック釜
7:濾過器
8:添加液C溶解釜
9:送液ポンプ
10:濾過器
11:スタティックミキサー
101:ステンレスバンド支持体(金属支持体)
102:流延ダイ
103:剥離ロール
104:フィルム
105:テンター・乾燥装置
106:ロール搬送・乾燥装置

Claims (4)

  1. 微粒子を含有するセルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)の濾過方法であって、ドープに添加する微粒子の分散溶液を事前に濾過し、またはドープに添加する微粒子の分散溶液及びその他の液状添加剤を事前に濾過し、ドープに、事前濾過後の微粒子分散溶液、またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して、微粒子含有ドープを作製し、該微粒子含有ドープを、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で、濾過することを特徴とする、ドープの濾過方法。
  2. 微粒子を含有するセルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)の作製からドープ流延までの間に、少なくとも2カ所以上で濾過処理を行ない、そのうち上流側の微粒子含有ドープの濾過処理に用いる濾材が、濾紙であり、その濾紙を通過する微粒子含有ドープ中の微粒子濃度が、0.05〜0.1重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のドープの濾過方法。
  3. 事前濾過後の微粒子分散溶液またはいずれも事前濾過後の微粒子分散溶液と液状添加剤を混合して作製した微粒子含有ドープを濾過する濾過器を、直列に2段以上設置することを特徴とする、請求項1または2のうちのいずれか一項に記載のドープの濾過方法。
  4. 上記請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の濾過方法により濾過した微粒子含有ドープを、金属支持体上に流延することにより製膜したセルロースエステルフィルムであって、TEM(透過型電子顕微鏡)断層写真の観察による微粒子の粒径分布で250nm以上の比率が0.1〜4%であることを特徴とする、セルロースエステルフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008207366A (ja) * 2007-02-23 2008-09-11 Fujifilm Corp セルロースエステルフィルムの製造方法
JP2012000783A (ja) * 2010-06-14 2012-01-05 Fujifilm Corp フィルム製造方法及び溶液製膜装置

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