JP2004143376A - 光学フィルムの製造方法及び光学フィルムならびに該光学フィルムを有する偏光板及び表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】滑り性に優れ、異物故障がなく、生産性に優れた光学フィルム及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】アルコールを1〜30質量%の割合で含む溶媒中に微粒子を分散した分散液と、セルロースエステル樹脂又はセルロースエステル樹脂溶液を混合することを特徴とするセルロースエステル添加液の製造方法。
溶液流延法による光学フィルムの製造工程で、上記製造方法によって作製されたセルロースエステル添加液を主ドープと混合することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】アルコールを1〜30質量%の割合で含む溶媒中に微粒子を分散した分散液と、セルロースエステル樹脂又はセルロースエステル樹脂溶液を混合することを特徴とするセルロースエステル添加液の製造方法。
溶液流延法による光学フィルムの製造工程で、上記製造方法によって作製されたセルロースエステル添加液を主ドープと混合することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学用途に利用される光学フィルムに関し、特に液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルムに利用できる光学フィルム及び、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイの大画面化、高画質化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶用偏光板の保護フィルム等の光学フィルムへの異物故障対策も厳しいレベルが要求されている。
【0003】
本発明者らは既に、薄膜化されたセルロースエステルフィルムに二酸化珪素微粒子を添加し、フィルムの滑り性とクリア性を両立させる方法を提案した(特許文献1参照。)。しかしながら、最近の大画面化、高画質化に伴って、異物故障の要求レベルは益々厳しく、今までの技術では滑り性と異物故障改善を両立することが困難であった。
【0004】
又、セルロースアセテートを有機溶剤に溶解してセルロースアセテート溶液を調製し、そこへ沸点30〜170℃のアルコール又は炭化水素類(ヘササン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等)を添加する方法も開示されている(特許文献2参照。)。しかし、これは、セルロースアセテートの溶解性と溶解時間を改善することを目的としていて、異物故障を改善することはできない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−64409号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2000−95877号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、滑り性に優れ、異物故障がなく、生産性に優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0009】
1)アルコールを1〜30質量%の割合で含む溶媒中に微粒子を分散した分散液と、セルロースエステル樹脂又はセルロースエステル樹脂溶液を混合するセルロースエステル添加液の製造方法。
【0010】
2)1)記載の製造方法によって作製されたセルロースエステル添加液。
3)溶液流延法による光学フィルムの製造工程で、2)記載のセルロースエステル添加液を主ドープと混合する光学フィルムの製造方法。
【0011】
4)3)記載の製造方法によって作製された光学フィルム。
5)4)記載の光学フィルムを有する偏光板。
【0012】
6)4)記載の光学フィルムを有する表示装置。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0013】
前記特開2001−64409号では、二酸化珪素微粒子の添加方法として、以下の三つの方法を提案している。
【0014】
(添加方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0015】
(添加方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別の溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0016】
(添加方法C)
溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0017】
しかしながら、最近の高画質化で要求される異物減少のレベルは高く、これ迄の方法で達成することは困難であった。
【0018】
分散性と再凝集防止に優れる添加方法Cでも、少量のセルロースエステル溶液中に二酸化珪素微粒子分散液を加えて撹拌する時に極く少量の二酸化珪素微粒子が再凝集してしまい、異物の原因となっていた。
【0019】
我々は鋭意研究の結果、二酸化珪素微粒子をアルコール溶媒中で分散し、これにセルロースエステルを溶解する溶媒を加え、溶媒中のアルコール溶媒の割合を1〜30質量%とし、ここへセルロースエステル樹脂又はセルロースエステル樹脂溶液を加えて撹拌を行う方法を発見した。
【0020】
分散工学の考え方では、樹脂を含まない溶媒中に微粒子が分散されている場合、ここへ樹脂を入れて撹拌すると微粒子が激しく凝集し、分散状態を保てないということが一般的である。しかし、理由は明確でないが、セルロースエステルは特殊であり、微粒子分散液の中へセルロースエステル樹脂を入れて撹拌することで二酸化珪素の凝集が発生しないことを見い出し、本発明に至ったものである。
【0021】
本発明に使用するアルコールは特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコールが好ましい。溶媒中のアルコールの割合は、1〜30質量%が必須であるが、微粒子の分散性とセルロースエステルの溶解性の点から、5〜20質量%が更に好ましく、8〜16質量%が最も好ましい。
【0022】
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及び燐酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次粒子の平均粒径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均粒径は5〜16nmがより好ましく、5〜12nmが更に好ましい。1次粒子の平均粒径の小さい方がヘイズが低く好ましい。見掛け比重は90〜200g/リットル以上がより好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が減少するため好ましい。
【0023】
微粒子の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0024】
二酸化珪素の微粒子は、例えばアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル社製)の商品名で市販されているものを使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子も、例えばアエロジルR976及びR811(共に日本アエロジル社製)の商品名で市販されている。
【0025】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に3次元の網状構造を有するものが好ましく、例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン社製)の商品名で市販されており、使用することができる。これらの中で、アエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0026】
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、8〜25質量%が更に好ましく、10〜15質量%が最も好ましい。分散濃度の高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0027】
使用される溶剤はセルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることができる。特にアルコールが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等、炭素原子数1〜8のアルコールが挙げられる。
【0028】
本発明において主ドープとは、本発明のセルロースエステルフィルムを製造する際のドープ液であり、添加液と区別するために主ドープと呼ぶ。添加液には、樹脂成分を高濃度で含有する主ドープ液と同様の樹脂成分を混合する場合があり、これと区別するため、フィルム形成樹脂成分の大部分を含む、添加液ではないドープ液を主ドープと呼ぶ。
【0029】
セルロースエステル添加液は、セルロースエステルの主ドープと混合し、溶液流延法によって製膜し、光学フィルムを製造する。
【0030】
セルロースエステルの添加液と主ドープの混合方法は、主ドープの溶解釜でセルロースエステルが溶解された後、セルロースエステル添加液と混合するか、又は主ドープへセルロースエステル添加液をインライン添加して混合することが好ましい。容易に添加比率を変更できるインライン添加で混合する方法が特に好ましい。
【0031】
インライン添加では、特開2001−213974号に記載されるフィルターや送液ポンプ等を適宜使用することが好ましい。
【0032】
次に、本発明の好ましい態様であるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0033】
セルロースエステルフィルムの製造方法に用いられる好ましい製膜工程は、下記に示す溶解工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻取り工程から成る。以下に各工程を説明する。
【0034】
(主ドープの溶解工程)
セルロースエステルのフレークを、溶解釜中で後述の良溶媒を主とする有機溶媒に攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。
【0035】
本発明では、ドープ中の固形分濃度は15質量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35質量%のものが好ましく用いられる。ドープ中の固形分濃度が高すぎるとドープの粘度が高くなりすぎ、流延時にシャークスキン等が生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、35質量%以下であることが望ましい。ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
【0036】
溶解には、常圧で行う方法、好ましい有機溶媒(良溶媒と称す)の沸点以下で行う方法、上記良溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等、種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力を掛けて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで、発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することができる。
【0037】
用いられるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等、又、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許2,319,052号等に記載されるセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステル等がセルロースの低級脂肪酸エステルの例として挙げられる。
【0038】
セルロースエステルのアシル基置換度の測定方法としては、ASTM−D−817−96に準じて実施することが出来る。
【0039】
上記脂肪酸の中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるが、本発明のセルロースエステルフィルムの場合、フィルム強度の観点から特に重合度250〜400のものが好ましく用いられる。
【0040】
セルロースエステルフィルムは総置換度が2.5〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられるが、特に総置換度が2.55〜2.85のセルロースエステルが好ましい。総置換度が2.55以上になるとフィルムの機械強度が増加し、2.85以下になるとセルロースエステルの溶解性が向上したり、異物の発生が低減されるため、より好ましい。
【0041】
セルロースアセテートプロピオネートの場合、アセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度をYとすると、下記式の範囲にあるものが好ましく用いられる。
【0042】
2.55≦X+Y≦2.85 1.5≦X≦2.4
セルロースエステルは、綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステル、それ以外の原料から合成されたセルロースエステルを単独あるいは混合して用いることができる。
【0043】
ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば特に限定されない。又、単独で溶解できない溶媒でも、他の溶媒と混合することにより溶解できるものであれば使用することができる。一般的には、良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒から成る混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中に貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0044】
この他、使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(=良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
【0045】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0046】
溶解したセルロースエステル溶液(ドープ)は濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましく、又、その際、ドープ中には、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、微粒子等が好ましく添加される。
【0047】
これらの添加物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0048】
本発明のセルロースエステルフィルム中には可塑剤を添加することができる。
可塑剤としては、例えば燐酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、枸櫞酸エステル系可塑剤、脂肪族多価アルコールエステル類などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。燐酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等があり、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等があり、枸櫞酸エステル系可塑剤としては、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ(2−エチルヘキシル)シトレート等が好ましい。
【0049】
これらを単独あるいは併用して用いることができる。特に燐酸を含まない可塑剤の組合せが耐久性に優れているため好ましい。可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して1〜30質量%含有されることが好ましく、2〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましく、特に好ましくは10〜15質量%である。
【0050】
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、上記可塑剤の他にも、可塑剤と同様の作用を示す添加剤が含有されることがある。これらの添加剤としてはセルロースエステルフィルムを可塑化することのできる低分子有機化合物であれば、可塑剤と同様の効果を得ることができる。これらの成分は、可塑剤に比べ直接フィルムを可塑化する目的で添加されるものではないが、量に応じて上記可塑剤と同様の作用を示す。
【0051】
次に、本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールエステルについて説明する。脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
【0052】
本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(A)で表される。
【0053】
一般式(A) R1−(OH)n
ここで、R1はn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性及び/又はフェノール性水酸基を表す。
【0054】
n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等)、アルケニレン基(エテニレン等)、アルキニレン基(エチニレン等)、シクロアルキレン基(1,4−シクロヘキサンジイル等)、アルカントリイル基(1,2,3−プロパントリイル等)等が挙げられる。これらの有機基は置換基(ヒドロキシル基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。nは2〜20が好ましい。
【0055】
好ましい多価アルコールの例としては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0056】
用いられる多価アルコールエステルを合成するためのモノカルボン酸としては特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。特に、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0057】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができるが、炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0059】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有してもよい。
【0060】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
【0061】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0062】
用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0063】
多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は1種類でも、2種以上の混合でもよい。又、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を三つ以上有することである。
【0064】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
【0065】
【化1】
【0066】
【化2】
【0067】
【化3】
【0068】
【化4】
【0069】
多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して3〜30質量%が好ましく、5〜25質量%が更に好ましく、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0070】
使用される紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。
【0071】
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系やトリアジン系の化合物が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系やトリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0072】
これら紫外線吸収剤の使用量は、化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常、光学フィルム1m2当たり0.2〜2.0gが好ましく、0.4〜1.5gが更に好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
【0073】
液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線吸収性能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、400nm以上の可視光吸収が少ないものが好ましい。特に波長380nmでの透過率が8%以下であることが好ましく、4%以下が更に好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0074】
又、本発明においては、光学フィルムの色味を調整するために、例えば青色染料等を添加することが出来る。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1〜8位迄の位置に任意の置換基を有することができ、好ましい置換基としては、(置換)アニリノ基、ヒドロキシル基、(置換)アミノ基、ニトロ基又は水素原子が挙げられる。
【0075】
これらの染料のフィルムへの添加量は、フィルムの透明性を維持するため、0.1〜1000μg/m2、好ましくは10〜100μg/m2である。
【0076】
又、フィルムの色味を調整するために蛍光増白剤を添加してもよい。
このようにして得られたドープを用い、以下に説明する流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0077】
(流延工程)
ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルト又は回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体と言うこともある)上に、加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
【0078】
その他の流延する方法は、流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法などがあるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイにはコートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
【0079】
製膜速度を上げるために、加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。又は、ダイの内部をスリットで分割し、組成の異なる複数のドープ液を同時に流延(共流延とも言う)して、積層構造のセルロースエステルフィルムを得ることもできる。
【0080】
このように、ドープをベルト又はドラム等の支持体上に流延して製膜するが、本発明は、ベルトを用いた溶液流延製膜法で特に有効である。これは、後述のように、支持体上での乾燥条件を細かく調整することが容易だからである。
【0081】
(溶媒蒸発工程)
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0082】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0083】
特に、本発明のセルロースエステルフィルムは、流延から30〜90秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが望ましい。30秒未満で剥離するとフィルムの面品質が低下するだけでなく、透湿性の点でも好ましくない。一方、90秒を超えて乾燥させると剥離性が悪化するなどによる面品質の低下や、フィルムに強いカールが発生するため好ましくない。
【0084】
(剥離工程)
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程であり、剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)が余り大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0085】
支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量は25〜120質量%が好ましく、更に好ましくは40〜100質量%である。
【0086】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0087】
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行えるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、前記の液体による裏面伝熱方法が好ましい。
【0088】
輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とは言えないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することが出来る。
【0089】
支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることが出来、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等を異なる温度とすることが出来る。
【0090】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多い内に剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。又、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0091】
又、支持体上でゲル化させ、膜を強くすることによって剥離を早め製膜速度を上げることも出来る。
【0092】
残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時に平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼合いで剥離残留溶媒量が決められる。
【0093】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。剥離張力が低いほど面内リターデーションRoが低く保てるため好ましい。面内リターデーションRoは20nm未満であることが好ましく、更には10nm未満、次いで5nm未満であることが好ましいが、最も好ましくは0〜1nmである。
【0094】
本発明において、面内リターデーションRoは自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用い、590nmの波長において三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。又、膜厚方向のリターデーション値Rtは0〜300nmのものが得られ、更に好ましくは0〜150nm、より好ましくは0〜70nmのものが用途に応じて好ましく得られる。
【0095】
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx−ny)/2−nz}×d
本発明のセルロースエステルフィルムは、遅相軸方向と製膜方向との為す角度θ(ラジアン)と面内方向のリターデーションRoが下記の関係にあり、特に偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとして好ましく用いられる。
【0096】
P≦1−sin2(2θ)sin2(πRo/λ)
Pは0.9999以下である。
【0097】
ここで、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの膜厚(nm)である。θはフィルム面内の遅相軸方向と製膜方向(フィルムの直尺方向)との為す角度(°ラジアン)、λは上記nx、ny、nz、θを求める三次元屈折率測定の際の光の波長590nm、πは円周率である。
【0098】
(乾燥工程)
ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/又はクリップ又はピンでウェブの両端を保持して搬送するテンター装置を用いて巾保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。
【0099】
乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することがRoが低く維持できるため好ましく、190N/m以下であることが好ましい。より好ましくは170N/m以下であることが好ましく、更には140N/m以下であることが好ましく、特に好ましくは100〜130N/mである。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5質量%以下となるまで上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
【0100】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0101】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
【0102】
この観点から、例えば特開昭62−46625号に示されるような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップ又はピンでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
【0103】
この時、幅手方向の延伸倍率は0〜100%であることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いる場合は5〜20%が更に好ましく、8〜15%が最も好ましい。位相差フィルムとして用いる場合は10〜40%が更に好ましく、20〜30%が最も好ましい。延伸倍率によってRoをコントロールすることが可能で、延伸倍率が高い方が出来上がったフィルムの平面性に優れるため好ましい。
【0104】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0105】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃が更に好ましく、70〜100℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染が減少し、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性に優れる。一般式(1)で示される紫外線吸収剤は乾燥温度が高い場合でも、蒸散し難いため、テンター乾燥温度が高く、延伸倍率の高い製造条件の時に、その効果が顕著に発揮される。
【0106】
又、フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を0.5質量%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0〜0.01質量%以下とすることである。
【0107】
フィルム乾燥工程では、一般にロール懸垂方式か、上記のようなピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
【0108】
溶液流延製膜法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。唯、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論である。
【0109】
(巻取り工程)
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。
【0110】
巻取り方法は一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければよい。
【0111】
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。又、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0112】
セルロースエステルフィルムの膜厚は使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常、5〜500μmの範囲にあり、更に10〜250μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては10〜120μmの範囲が用いられる。本発明では、特に10〜60μmの膜厚の薄いフィルムで、より効果を発揮する。
【0113】
本発明における透湿度とは、JIS Z 0208に記載の方法で25℃・90%RH(相対湿度)で測定された値と定義する。透湿度は20〜250g/m2・24hrであることが好ましいが、特に20〜200g/m2・24hrであることが好ましい。透湿性が250g/m2・24hrを超えると偏光板の耐久性が著しく低下し、逆に20g/m2・24hr未満では偏光板製造時の接着剤に使われている水等の溶媒が乾燥し難くなり、乾燥時間が長くなるため好ましくない。より好ましくは25〜200g/m2・24hrである。
【0114】
又、本発明のセルロースエステルフィルムでは、80℃・90%RHにおける質量変化を少なくすることで、寸法安定性を更に改善することができる。即ち、80℃・90%RHで48時間加熱処理した前後での質量変化率が±2%以内とすることがより好ましく、これによって、透湿度が改善された薄膜フィルムでありながら、寸法変化率にも優れたセルロースエステルフィルムが得られる。
【0115】
本発明のセルロースエステルフィルムは、80℃・90%RH雰囲気下で48時間加熱処理した際の寸法変化率はMD方向(フィルムの製膜方向)、TD方向(フィルムの幅手方向)共に±0.5%以内であることが好ましく、±0.3%以内であることがより好ましく、更には±0.1%以内、特に±0.05%以内であることが好ましい。
【0116】
本発明で言う寸法変化率とは、温度や湿度の条件が過酷な状況でのフィルム縦方向及び横方向の寸法変化を表す特性値である。具体的には加熱条件、加湿条件、熱湿条件にフィルムを置いて強制劣化した時の縦、横の寸法変化を測定する。
【0117】
例えば、測定しようとするフィルム試料について、幅手方向150mm×長手方向120mmサイズに断裁し、該フィルム表面に、幅手方向及び長手方向それぞれに100mm間隔で2ヶ所、カミソリ等の鋭利な刃物で十文字型の印を付ける。該フィルムを23℃・55%RHの環境下で24時間以上調湿し、工場顕微鏡で処理前の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L1を測定する。次に、該試料を電気恒温槽中で、高温高湿処理(条件;80℃・90%RHの環境下で48時間放置をする)する。再び、該試料を23℃・55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理後の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L2を測定する。この調湿処理前後の変化率を次式によって求める。
【0118】
寸法変化率(%)=(L2−L1)/L1×100
式中、L1は処理前の印間距離、L2は処理後の印間距離を表す。
【0119】
即ち、付す印の位置をフィルムの長手方向、幅手方向に付けることによって所望の寸法変化率測定を行うことができる。
【0120】
105℃で5時間処理した時の寸法変化率は、MD方向、TD方向共に±0.5%以内であることが好ましく、±0.3%以内であることがより好ましく、更には±0.1%以内、特に±0.05%以内であることが好ましい。
【0121】
本発明のセルロースエステルフィルムは、抗張力がMD方向、TD方向共に90〜170N/mm2であることが好ましく、特に120〜160N/mm2であることが好ましい。
【0122】
含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることが更に好ましい。
【0123】
又、透過率が90%以上であることが望ましく、より好ましくは92%以上であり、更に好ましくは93%以上である。又、ヘイズは0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0124】
更に、カール値は絶対値が小さい方が好ましく、変形方向は+方向でも−方向でもよい。カール値の絶対値は30以下であることが好ましく、更に好ましくは20以下であり、10以下であることが特に好ましい。尚、カール値は、曲率半径(1/m)で表される。
【0125】
以下に本発明のセルロースエステルフィルムの溶液流延製膜法による製造方法について、図を用いて更に詳細に説明する。
【0126】
図1はフィルムの溶液流延製膜法の好ましい一例を示す模式図である。
図1(a)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥する場合の模式図、図1(b)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図、図1(c)は流延後、テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図、図1(d)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。
【0127】
尚、本発明において、テンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を含む工程とは、支持体から剥離されたフィルムを乾燥して巻き取る迄の工程の何処かに、フィルムの乾燥伸縮率を調整するテンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を有する工程を言う。テンター搬送・乾燥工程とは、テンター搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程を言い、ロール搬送・乾燥工程とは、ロール搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程を言う。
【0128】
図1(a)〜(d)において、1はエンドレスで走行する鏡面帯状金属流延支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。2はセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体1に流延するダイスを示す。3は支持体1に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離点を示し、4は剥離されたフィルムを示す。
【0129】
5はテンター搬送・乾燥工程を示し、51は排気口を示し、52は乾燥風取入れ口を示す。尚、排気口51と乾燥風取入れ口52は逆であってもよい。6は張力カット手段を示す。張力カット手段としてはニップロール、サクションロール等が挙げられる。尚、張力カット手段は各工程間に設けても構わない。
【0130】
8はロール搬送・乾燥工程を示し、81は乾燥箱を示し、82は排気口を示し、83は乾燥風取入れ口を示す。尚、排気口82と乾燥風取入れ口83は逆であってもよい。84は上部搬送用ロールを示し、85は下部搬送用ロールを示す。該搬送用ロール84、85は上下で一組で、複数組から構成されている。7は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
【0131】
図1(d)で示される工程において、テンター搬送・乾燥工程5の前のロール搬送・乾燥工程を第1ロール搬送・乾燥工程と呼び、テンター搬送・乾燥工程5の後のロール搬送・乾燥工程を第2ロール搬送・乾燥工程と呼ぶ。
【0132】
尚、図1(a)〜(d)では示されていない冷却工程を、巻き取る前に必要に応じて設けてもよい。
【0133】
本発明においては、上述した何れの溶液流延製膜法による形態でセルロースエステルフィルムを製造しても構わない。
【0134】
本発明のセルロースエステルフィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対してともに厳しい要求のある偏光板用保護フィルムに好ましく用いられる。
【0135】
本発明に係る偏光板は一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルムあるいはセルロースエステルフィルムをアルカリ鹸化処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。
【0136】
アルカリ鹸化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことを言う。
【0137】
本発明のセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布或いは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
【0138】
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面又は両面に設けられ、これを用いて本発明の液晶表示装置が得られる。
【0139】
本発明のセルロースエステルフィルムから成る偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化と共に耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。更に、本発明の偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。又、本発明のフィルムは、反射防止用フィルム又は光学補償フィルムの基材としても使用できる。
【0140】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を説明するが、本発明の実施態様がこれによって限定されるものではない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0141】
実施例1
「フィルム試料1の作製」
以下の操作手順でフィルム試料を作製した。
【0142】
〈酸化珪素分散液A1の調製〉
アエロジルR972V(日本アエロジル社製,1次粒子の平均粒径16nm,
見掛け比重90g/リットル) 15部
エタノール 85部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は196ppmであった。
【0143】
〈酸化珪素分散希釈液A2の調製〉
酸化珪素分散液A1 100部
メチレンクロライド 85部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合して、酸化珪素分散希釈液A2を調製した。
【0144】
〈主ドープ液Aの調製〉
リンター綿から合成されたセルローストリアセテート 85部
木材パルプから合成されたセルローストリアセテート 15部
可塑剤(化合物例16) 6.2部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.6部
メチレンクロライド 475部
エタノール 50部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、安積濾紙社製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液Aを調製した。
【0145】
〈添加液Aの調製〉
チヌビン109(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 26部
チヌビン171(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加え、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、アドバンテック東洋社製のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20Nで濾過し、添加液Aを調製した。
【0146】
〈流延法によるフィルムの製膜〉
製膜ライン中で、日本精線社製のファインメットNFで主ドープ液Aを濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線社製のファインメットNFで添加液Aを濾過した。濾過したドープ液A100部に対して濾過した添加液Aを2.6部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer,SWJ)で十分混合し、ベルト流延装置を用い、33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体上に均一に流延した。
【0147】
ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が80%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力127N/mでステンレスバンド支持体から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムを1550mm幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に10%延伸しながら70℃で乾燥させた後、120℃、135℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了し、1330mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、セルローストリアセテート(TAC)フィルム試料1を得た。この時のTACフィルムの膜厚は40μm、巻数は2600mであった。
【0148】
「フィルム試料2〜10の作製」
試料1の添加液Aを、表1記載のように添加液B〜Jに変更した以外は、試料1と同様にして試料2〜10を作製した。尚、試料6は、更に主ドープ液Aに替えて主ドープ液Bを使用した。添加液B〜Jならびに主ドープ液Bの調製は以下の通りである。
【0149】
〈添加液Bの調製〉
チヌビン109(前出) 31部
チヌビン171(前出) 14部
メチレンクロライド 175部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加え、更に30分間撹拌した後、リンター綿から合成されたセルローストリアセテートを8.6部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Bを得た。
【0150】
〈酸化珪素分散液B1の調製〉
アエロジル200V(日本アエロジル社製,1次粒子の平均粒径12nm,
見掛け比重100g/リットル) 10部
エタノール 90部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は116ppmであった。
【0151】
〈酸化珪素分散希釈液B2の調製〉
酸化珪素分散液B1 100部
メチレンクロライド 90部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合して酸化珪素分散希釈液B2を調製した。
【0152】
〈添加液Cの調製〉
チヌビン109(前出) 22部
チヌビン171(前出) 10部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱・撹拌しながら、完全に溶解した。
【0153】
これに酸化珪素分散希釈液B240部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Cを得た。
【0154】
〈添加液Dの調製〉
チヌビン109(前出) 20部
チヌビン171(前出) 9部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液B220部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Dを得た。
【0155】
〈添加液Eの調製〉
チヌビン109(前出) 24部
チヌビン171(前出) 11部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液B230部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Eを得た。
【0156】
〈添加液Fの調製〉
チヌビン109(前出) 36部
チヌビン171(前出) 17部
メチレンクロライド 175部
エタノール 50部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Bと同じセルロースアセテートプロピオネートを8.6部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Fを得た。
【0157】
〈主ドープ液Bの調製〉
アセチル置換度1.95,プロピオニル置換度0.7,数平均分子量750
00のセルロースアセテートプロピオネート 100部
可塑剤(化合物例16) 6.2部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.6部
メチレンクロライド 475部
エタノール 50部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、安積濾紙No.244(前出)を使用して濾過し、主ドープ液Bを調製した。
【0158】
〈酸化珪素分散希釈液C2の調製〉
酸化珪素分散液A1 100部
メチレンクロライド 127部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合して、酸化珪素分散希釈液C2を得た。
【0159】
〈添加液Gの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散希釈液C280部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Gを得た。
【0160】
〈添加液Hの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Hを得た。
【0161】
〈添加液Iの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散希釈液B240部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Iを得た。
【0162】
〈酸化珪素分散液C1の調製〉
アエロジルR972V(前出:1次粒子の平均粒径16nm、見掛け比重90
g/リットル) 15部
メチレンクロライド 85部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は425ppmであった。
【0163】
〈添加液Jの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散液C140部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Jを得た。
【0164】
〈フィルム試料の評価〉
作製した試料を以下に示す測定方法に従って評価した。
【0165】
《ヘイズ》
同一のフィルム試料3枚を重ね合わせ、ASTM−D1003−52に従って、東京電色工業社製T−2600DAを使用して測定した。
【0166】
《動摩擦係数》
フィルム表面と裏面間の動摩擦係数は、JIS−K−7125(1987)に準じ、フィルムの表裏面が接触するように切り出し、200gの重りを載せ、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で重りを水平に引っ張り、重りが移動中の平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求めた。動摩擦係数が小さい程、「きしみ」の発生が少ない。
【0167】
動摩擦係数=F(g)/重りの重さ(g)
《異物故障》
ベルト流延装置の巻取り部の直前にオンライン欠陥検査機を設置し、セルロースエステルフィルム100m2当たりの50μm以上の異物故障数をカウントした。
【0168】
結果を併せて表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
本発明に係るフィルム試料は、何れの評価も優れている。
実施例2
実施例1で作製したフィルム原反試料を用い、下記のアルカリ鹸化処理を行った後、偏光板の作製を行った。
【0171】
〈アルカリ鹸化処理〉
鹸化工程 2mol/L−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
次いで80℃で乾燥を行った。
【0172】
〈偏光板の作製〉
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、硼酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面に、アルカリ鹸化処理を行ったフィルム試料を完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ偏光板を作製した。この偏光板試料1〜10について以下の評価をした。
【0173】
《偏光板収率》
作製した偏光板を17インチに打ち抜き、1枚ずつ目視による外観検査を行った。外観検査は偏光板1枚中に50μm以上の欠陥が3個以上あった場合に不良品とした。収率は下記の式で求めた。
【0174】
収率(%)=良品枚数÷(良品枚数+不良品枚数)×100
結果を表2に示す。
【0175】
【表2】
【0176】
本発明のフィルム試料を使用することで、偏光板作製における良品収率が向上する。
【0177】
実施例3
実施例2で作製した偏光板試料1〜10を下記に記載する方法で液晶ディスプレイ(表示装置)1〜10に加工し、画質の評価を行った。結果を表3に示す。
【0178】
《画質》
17型TFT型カラー液晶ディスプレイLCD1720VM(NEC社製)の偏光板を剥がし、液晶セルを挟むようにして、実施例2で作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸が元と変わらないよう互いに直交するように貼り付け、17型TFT型カラー液晶ディスプレイを作製した。
【0179】
この液晶ディスプレイをホワイト表示にして目視による画質の観察を行い、以下の3段階に評価した。
【0180】
◯:全面ホワイト表示で、画面が見易い。
△:ホワイト以外の色に見える画素が1〜3カ所あり、画面がやや見え難い。
【0181】
×:ホワイト以外の色に見える画素が4カ所以上あり、画面が明らかに見え難い。
【0182】
【表3】
【0183】
本発明のフィルム試料を使用した液晶ディスプレイの画質は何れも良好であった。
【0184】
【発明の効果】
本発明により、滑り性に優れ、異物故障がなく、生産性に優れた光学フィルムが提供できた。この光学フィルムを使用した偏光板や液晶表示装置は良好な性能を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルムの溶液流延製膜法の模式図である。
【符号の説明】
1 鏡面帯状金属流延支持体
2 ダイス
3 フィルム剥離点
4 剥離されたフィルム
5 テンター搬送・乾燥工程
6 張力カット手段
7 巻き取られたロール状のフィルム
8 ロール搬送・乾燥工程
51,82 排気口
52,83 乾燥風取入れ口
81 乾燥箱
84 上部搬送用ロール
85 下部搬送用ロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学用途に利用される光学フィルムに関し、特に液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルムに利用できる光学フィルム及び、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイの大画面化、高画質化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶用偏光板の保護フィルム等の光学フィルムへの異物故障対策も厳しいレベルが要求されている。
【0003】
本発明者らは既に、薄膜化されたセルロースエステルフィルムに二酸化珪素微粒子を添加し、フィルムの滑り性とクリア性を両立させる方法を提案した(特許文献1参照。)。しかしながら、最近の大画面化、高画質化に伴って、異物故障の要求レベルは益々厳しく、今までの技術では滑り性と異物故障改善を両立することが困難であった。
【0004】
又、セルロースアセテートを有機溶剤に溶解してセルロースアセテート溶液を調製し、そこへ沸点30〜170℃のアルコール又は炭化水素類(ヘササン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等)を添加する方法も開示されている(特許文献2参照。)。しかし、これは、セルロースアセテートの溶解性と溶解時間を改善することを目的としていて、異物故障を改善することはできない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−64409号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2000−95877号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、滑り性に優れ、異物故障がなく、生産性に優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0009】
1)アルコールを1〜30質量%の割合で含む溶媒中に微粒子を分散した分散液と、セルロースエステル樹脂又はセルロースエステル樹脂溶液を混合するセルロースエステル添加液の製造方法。
【0010】
2)1)記載の製造方法によって作製されたセルロースエステル添加液。
3)溶液流延法による光学フィルムの製造工程で、2)記載のセルロースエステル添加液を主ドープと混合する光学フィルムの製造方法。
【0011】
4)3)記載の製造方法によって作製された光学フィルム。
5)4)記載の光学フィルムを有する偏光板。
【0012】
6)4)記載の光学フィルムを有する表示装置。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0013】
前記特開2001−64409号では、二酸化珪素微粒子の添加方法として、以下の三つの方法を提案している。
【0014】
(添加方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0015】
(添加方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別の溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0016】
(添加方法C)
溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0017】
しかしながら、最近の高画質化で要求される異物減少のレベルは高く、これ迄の方法で達成することは困難であった。
【0018】
分散性と再凝集防止に優れる添加方法Cでも、少量のセルロースエステル溶液中に二酸化珪素微粒子分散液を加えて撹拌する時に極く少量の二酸化珪素微粒子が再凝集してしまい、異物の原因となっていた。
【0019】
我々は鋭意研究の結果、二酸化珪素微粒子をアルコール溶媒中で分散し、これにセルロースエステルを溶解する溶媒を加え、溶媒中のアルコール溶媒の割合を1〜30質量%とし、ここへセルロースエステル樹脂又はセルロースエステル樹脂溶液を加えて撹拌を行う方法を発見した。
【0020】
分散工学の考え方では、樹脂を含まない溶媒中に微粒子が分散されている場合、ここへ樹脂を入れて撹拌すると微粒子が激しく凝集し、分散状態を保てないということが一般的である。しかし、理由は明確でないが、セルロースエステルは特殊であり、微粒子分散液の中へセルロースエステル樹脂を入れて撹拌することで二酸化珪素の凝集が発生しないことを見い出し、本発明に至ったものである。
【0021】
本発明に使用するアルコールは特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコールが好ましい。溶媒中のアルコールの割合は、1〜30質量%が必須であるが、微粒子の分散性とセルロースエステルの溶解性の点から、5〜20質量%が更に好ましく、8〜16質量%が最も好ましい。
【0022】
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及び燐酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次粒子の平均粒径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均粒径は5〜16nmがより好ましく、5〜12nmが更に好ましい。1次粒子の平均粒径の小さい方がヘイズが低く好ましい。見掛け比重は90〜200g/リットル以上がより好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が減少するため好ましい。
【0023】
微粒子の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0024】
二酸化珪素の微粒子は、例えばアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル社製)の商品名で市販されているものを使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子も、例えばアエロジルR976及びR811(共に日本アエロジル社製)の商品名で市販されている。
【0025】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に3次元の網状構造を有するものが好ましく、例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン社製)の商品名で市販されており、使用することができる。これらの中で、アエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0026】
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、8〜25質量%が更に好ましく、10〜15質量%が最も好ましい。分散濃度の高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0027】
使用される溶剤はセルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることができる。特にアルコールが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等、炭素原子数1〜8のアルコールが挙げられる。
【0028】
本発明において主ドープとは、本発明のセルロースエステルフィルムを製造する際のドープ液であり、添加液と区別するために主ドープと呼ぶ。添加液には、樹脂成分を高濃度で含有する主ドープ液と同様の樹脂成分を混合する場合があり、これと区別するため、フィルム形成樹脂成分の大部分を含む、添加液ではないドープ液を主ドープと呼ぶ。
【0029】
セルロースエステル添加液は、セルロースエステルの主ドープと混合し、溶液流延法によって製膜し、光学フィルムを製造する。
【0030】
セルロースエステルの添加液と主ドープの混合方法は、主ドープの溶解釜でセルロースエステルが溶解された後、セルロースエステル添加液と混合するか、又は主ドープへセルロースエステル添加液をインライン添加して混合することが好ましい。容易に添加比率を変更できるインライン添加で混合する方法が特に好ましい。
【0031】
インライン添加では、特開2001−213974号に記載されるフィルターや送液ポンプ等を適宜使用することが好ましい。
【0032】
次に、本発明の好ましい態様であるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0033】
セルロースエステルフィルムの製造方法に用いられる好ましい製膜工程は、下記に示す溶解工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻取り工程から成る。以下に各工程を説明する。
【0034】
(主ドープの溶解工程)
セルロースエステルのフレークを、溶解釜中で後述の良溶媒を主とする有機溶媒に攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。
【0035】
本発明では、ドープ中の固形分濃度は15質量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35質量%のものが好ましく用いられる。ドープ中の固形分濃度が高すぎるとドープの粘度が高くなりすぎ、流延時にシャークスキン等が生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、35質量%以下であることが望ましい。ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
【0036】
溶解には、常圧で行う方法、好ましい有機溶媒(良溶媒と称す)の沸点以下で行う方法、上記良溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等、種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力を掛けて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで、発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することができる。
【0037】
用いられるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等、又、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許2,319,052号等に記載されるセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステル等がセルロースの低級脂肪酸エステルの例として挙げられる。
【0038】
セルロースエステルのアシル基置換度の測定方法としては、ASTM−D−817−96に準じて実施することが出来る。
【0039】
上記脂肪酸の中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるが、本発明のセルロースエステルフィルムの場合、フィルム強度の観点から特に重合度250〜400のものが好ましく用いられる。
【0040】
セルロースエステルフィルムは総置換度が2.5〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられるが、特に総置換度が2.55〜2.85のセルロースエステルが好ましい。総置換度が2.55以上になるとフィルムの機械強度が増加し、2.85以下になるとセルロースエステルの溶解性が向上したり、異物の発生が低減されるため、より好ましい。
【0041】
セルロースアセテートプロピオネートの場合、アセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度をYとすると、下記式の範囲にあるものが好ましく用いられる。
【0042】
2.55≦X+Y≦2.85 1.5≦X≦2.4
セルロースエステルは、綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステル、それ以外の原料から合成されたセルロースエステルを単独あるいは混合して用いることができる。
【0043】
ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば特に限定されない。又、単独で溶解できない溶媒でも、他の溶媒と混合することにより溶解できるものであれば使用することができる。一般的には、良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒から成る混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中に貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0044】
この他、使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(=良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
【0045】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0046】
溶解したセルロースエステル溶液(ドープ)は濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましく、又、その際、ドープ中には、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、微粒子等が好ましく添加される。
【0047】
これらの添加物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0048】
本発明のセルロースエステルフィルム中には可塑剤を添加することができる。
可塑剤としては、例えば燐酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、枸櫞酸エステル系可塑剤、脂肪族多価アルコールエステル類などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。燐酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等があり、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等があり、枸櫞酸エステル系可塑剤としては、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ(2−エチルヘキシル)シトレート等が好ましい。
【0049】
これらを単独あるいは併用して用いることができる。特に燐酸を含まない可塑剤の組合せが耐久性に優れているため好ましい。可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して1〜30質量%含有されることが好ましく、2〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましく、特に好ましくは10〜15質量%である。
【0050】
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、上記可塑剤の他にも、可塑剤と同様の作用を示す添加剤が含有されることがある。これらの添加剤としてはセルロースエステルフィルムを可塑化することのできる低分子有機化合物であれば、可塑剤と同様の効果を得ることができる。これらの成分は、可塑剤に比べ直接フィルムを可塑化する目的で添加されるものではないが、量に応じて上記可塑剤と同様の作用を示す。
【0051】
次に、本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールエステルについて説明する。脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
【0052】
本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(A)で表される。
【0053】
一般式(A) R1−(OH)n
ここで、R1はn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性及び/又はフェノール性水酸基を表す。
【0054】
n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等)、アルケニレン基(エテニレン等)、アルキニレン基(エチニレン等)、シクロアルキレン基(1,4−シクロヘキサンジイル等)、アルカントリイル基(1,2,3−プロパントリイル等)等が挙げられる。これらの有機基は置換基(ヒドロキシル基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。nは2〜20が好ましい。
【0055】
好ましい多価アルコールの例としては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0056】
用いられる多価アルコールエステルを合成するためのモノカルボン酸としては特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。特に、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0057】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができるが、炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0059】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有してもよい。
【0060】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
【0061】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0062】
用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0063】
多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は1種類でも、2種以上の混合でもよい。又、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を三つ以上有することである。
【0064】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
【0065】
【化1】
【0066】
【化2】
【0067】
【化3】
【0068】
【化4】
【0069】
多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して3〜30質量%が好ましく、5〜25質量%が更に好ましく、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0070】
使用される紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。
【0071】
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系やトリアジン系の化合物が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系やトリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0072】
これら紫外線吸収剤の使用量は、化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常、光学フィルム1m2当たり0.2〜2.0gが好ましく、0.4〜1.5gが更に好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
【0073】
液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線吸収性能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、400nm以上の可視光吸収が少ないものが好ましい。特に波長380nmでの透過率が8%以下であることが好ましく、4%以下が更に好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0074】
又、本発明においては、光学フィルムの色味を調整するために、例えば青色染料等を添加することが出来る。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1〜8位迄の位置に任意の置換基を有することができ、好ましい置換基としては、(置換)アニリノ基、ヒドロキシル基、(置換)アミノ基、ニトロ基又は水素原子が挙げられる。
【0075】
これらの染料のフィルムへの添加量は、フィルムの透明性を維持するため、0.1〜1000μg/m2、好ましくは10〜100μg/m2である。
【0076】
又、フィルムの色味を調整するために蛍光増白剤を添加してもよい。
このようにして得られたドープを用い、以下に説明する流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0077】
(流延工程)
ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルト又は回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体と言うこともある)上に、加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
【0078】
その他の流延する方法は、流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法などがあるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイにはコートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
【0079】
製膜速度を上げるために、加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。又は、ダイの内部をスリットで分割し、組成の異なる複数のドープ液を同時に流延(共流延とも言う)して、積層構造のセルロースエステルフィルムを得ることもできる。
【0080】
このように、ドープをベルト又はドラム等の支持体上に流延して製膜するが、本発明は、ベルトを用いた溶液流延製膜法で特に有効である。これは、後述のように、支持体上での乾燥条件を細かく調整することが容易だからである。
【0081】
(溶媒蒸発工程)
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0082】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0083】
特に、本発明のセルロースエステルフィルムは、流延から30〜90秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが望ましい。30秒未満で剥離するとフィルムの面品質が低下するだけでなく、透湿性の点でも好ましくない。一方、90秒を超えて乾燥させると剥離性が悪化するなどによる面品質の低下や、フィルムに強いカールが発生するため好ましくない。
【0084】
(剥離工程)
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程であり、剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)が余り大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0085】
支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量は25〜120質量%が好ましく、更に好ましくは40〜100質量%である。
【0086】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0087】
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行えるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、前記の液体による裏面伝熱方法が好ましい。
【0088】
輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とは言えないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することが出来る。
【0089】
支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることが出来、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等を異なる温度とすることが出来る。
【0090】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多い内に剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。又、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0091】
又、支持体上でゲル化させ、膜を強くすることによって剥離を早め製膜速度を上げることも出来る。
【0092】
残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時に平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼合いで剥離残留溶媒量が決められる。
【0093】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。剥離張力が低いほど面内リターデーションRoが低く保てるため好ましい。面内リターデーションRoは20nm未満であることが好ましく、更には10nm未満、次いで5nm未満であることが好ましいが、最も好ましくは0〜1nmである。
【0094】
本発明において、面内リターデーションRoは自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用い、590nmの波長において三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。又、膜厚方向のリターデーション値Rtは0〜300nmのものが得られ、更に好ましくは0〜150nm、より好ましくは0〜70nmのものが用途に応じて好ましく得られる。
【0095】
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx−ny)/2−nz}×d
本発明のセルロースエステルフィルムは、遅相軸方向と製膜方向との為す角度θ(ラジアン)と面内方向のリターデーションRoが下記の関係にあり、特に偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとして好ましく用いられる。
【0096】
P≦1−sin2(2θ)sin2(πRo/λ)
Pは0.9999以下である。
【0097】
ここで、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの膜厚(nm)である。θはフィルム面内の遅相軸方向と製膜方向(フィルムの直尺方向)との為す角度(°ラジアン)、λは上記nx、ny、nz、θを求める三次元屈折率測定の際の光の波長590nm、πは円周率である。
【0098】
(乾燥工程)
ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/又はクリップ又はピンでウェブの両端を保持して搬送するテンター装置を用いて巾保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。
【0099】
乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することがRoが低く維持できるため好ましく、190N/m以下であることが好ましい。より好ましくは170N/m以下であることが好ましく、更には140N/m以下であることが好ましく、特に好ましくは100〜130N/mである。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5質量%以下となるまで上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
【0100】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0101】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
【0102】
この観点から、例えば特開昭62−46625号に示されるような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップ又はピンでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
【0103】
この時、幅手方向の延伸倍率は0〜100%であることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いる場合は5〜20%が更に好ましく、8〜15%が最も好ましい。位相差フィルムとして用いる場合は10〜40%が更に好ましく、20〜30%が最も好ましい。延伸倍率によってRoをコントロールすることが可能で、延伸倍率が高い方が出来上がったフィルムの平面性に優れるため好ましい。
【0104】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0105】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃が更に好ましく、70〜100℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染が減少し、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性に優れる。一般式(1)で示される紫外線吸収剤は乾燥温度が高い場合でも、蒸散し難いため、テンター乾燥温度が高く、延伸倍率の高い製造条件の時に、その効果が顕著に発揮される。
【0106】
又、フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を0.5質量%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0〜0.01質量%以下とすることである。
【0107】
フィルム乾燥工程では、一般にロール懸垂方式か、上記のようなピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
【0108】
溶液流延製膜法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。唯、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論である。
【0109】
(巻取り工程)
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。
【0110】
巻取り方法は一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければよい。
【0111】
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。又、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0112】
セルロースエステルフィルムの膜厚は使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常、5〜500μmの範囲にあり、更に10〜250μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては10〜120μmの範囲が用いられる。本発明では、特に10〜60μmの膜厚の薄いフィルムで、より効果を発揮する。
【0113】
本発明における透湿度とは、JIS Z 0208に記載の方法で25℃・90%RH(相対湿度)で測定された値と定義する。透湿度は20〜250g/m2・24hrであることが好ましいが、特に20〜200g/m2・24hrであることが好ましい。透湿性が250g/m2・24hrを超えると偏光板の耐久性が著しく低下し、逆に20g/m2・24hr未満では偏光板製造時の接着剤に使われている水等の溶媒が乾燥し難くなり、乾燥時間が長くなるため好ましくない。より好ましくは25〜200g/m2・24hrである。
【0114】
又、本発明のセルロースエステルフィルムでは、80℃・90%RHにおける質量変化を少なくすることで、寸法安定性を更に改善することができる。即ち、80℃・90%RHで48時間加熱処理した前後での質量変化率が±2%以内とすることがより好ましく、これによって、透湿度が改善された薄膜フィルムでありながら、寸法変化率にも優れたセルロースエステルフィルムが得られる。
【0115】
本発明のセルロースエステルフィルムは、80℃・90%RH雰囲気下で48時間加熱処理した際の寸法変化率はMD方向(フィルムの製膜方向)、TD方向(フィルムの幅手方向)共に±0.5%以内であることが好ましく、±0.3%以内であることがより好ましく、更には±0.1%以内、特に±0.05%以内であることが好ましい。
【0116】
本発明で言う寸法変化率とは、温度や湿度の条件が過酷な状況でのフィルム縦方向及び横方向の寸法変化を表す特性値である。具体的には加熱条件、加湿条件、熱湿条件にフィルムを置いて強制劣化した時の縦、横の寸法変化を測定する。
【0117】
例えば、測定しようとするフィルム試料について、幅手方向150mm×長手方向120mmサイズに断裁し、該フィルム表面に、幅手方向及び長手方向それぞれに100mm間隔で2ヶ所、カミソリ等の鋭利な刃物で十文字型の印を付ける。該フィルムを23℃・55%RHの環境下で24時間以上調湿し、工場顕微鏡で処理前の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L1を測定する。次に、該試料を電気恒温槽中で、高温高湿処理(条件;80℃・90%RHの環境下で48時間放置をする)する。再び、該試料を23℃・55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理後の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L2を測定する。この調湿処理前後の変化率を次式によって求める。
【0118】
寸法変化率(%)=(L2−L1)/L1×100
式中、L1は処理前の印間距離、L2は処理後の印間距離を表す。
【0119】
即ち、付す印の位置をフィルムの長手方向、幅手方向に付けることによって所望の寸法変化率測定を行うことができる。
【0120】
105℃で5時間処理した時の寸法変化率は、MD方向、TD方向共に±0.5%以内であることが好ましく、±0.3%以内であることがより好ましく、更には±0.1%以内、特に±0.05%以内であることが好ましい。
【0121】
本発明のセルロースエステルフィルムは、抗張力がMD方向、TD方向共に90〜170N/mm2であることが好ましく、特に120〜160N/mm2であることが好ましい。
【0122】
含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることが更に好ましい。
【0123】
又、透過率が90%以上であることが望ましく、より好ましくは92%以上であり、更に好ましくは93%以上である。又、ヘイズは0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0124】
更に、カール値は絶対値が小さい方が好ましく、変形方向は+方向でも−方向でもよい。カール値の絶対値は30以下であることが好ましく、更に好ましくは20以下であり、10以下であることが特に好ましい。尚、カール値は、曲率半径(1/m)で表される。
【0125】
以下に本発明のセルロースエステルフィルムの溶液流延製膜法による製造方法について、図を用いて更に詳細に説明する。
【0126】
図1はフィルムの溶液流延製膜法の好ましい一例を示す模式図である。
図1(a)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥する場合の模式図、図1(b)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図、図1(c)は流延後、テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図、図1(d)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。
【0127】
尚、本発明において、テンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を含む工程とは、支持体から剥離されたフィルムを乾燥して巻き取る迄の工程の何処かに、フィルムの乾燥伸縮率を調整するテンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を有する工程を言う。テンター搬送・乾燥工程とは、テンター搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程を言い、ロール搬送・乾燥工程とは、ロール搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程を言う。
【0128】
図1(a)〜(d)において、1はエンドレスで走行する鏡面帯状金属流延支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。2はセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体1に流延するダイスを示す。3は支持体1に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離点を示し、4は剥離されたフィルムを示す。
【0129】
5はテンター搬送・乾燥工程を示し、51は排気口を示し、52は乾燥風取入れ口を示す。尚、排気口51と乾燥風取入れ口52は逆であってもよい。6は張力カット手段を示す。張力カット手段としてはニップロール、サクションロール等が挙げられる。尚、張力カット手段は各工程間に設けても構わない。
【0130】
8はロール搬送・乾燥工程を示し、81は乾燥箱を示し、82は排気口を示し、83は乾燥風取入れ口を示す。尚、排気口82と乾燥風取入れ口83は逆であってもよい。84は上部搬送用ロールを示し、85は下部搬送用ロールを示す。該搬送用ロール84、85は上下で一組で、複数組から構成されている。7は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
【0131】
図1(d)で示される工程において、テンター搬送・乾燥工程5の前のロール搬送・乾燥工程を第1ロール搬送・乾燥工程と呼び、テンター搬送・乾燥工程5の後のロール搬送・乾燥工程を第2ロール搬送・乾燥工程と呼ぶ。
【0132】
尚、図1(a)〜(d)では示されていない冷却工程を、巻き取る前に必要に応じて設けてもよい。
【0133】
本発明においては、上述した何れの溶液流延製膜法による形態でセルロースエステルフィルムを製造しても構わない。
【0134】
本発明のセルロースエステルフィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対してともに厳しい要求のある偏光板用保護フィルムに好ましく用いられる。
【0135】
本発明に係る偏光板は一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルムあるいはセルロースエステルフィルムをアルカリ鹸化処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。
【0136】
アルカリ鹸化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことを言う。
【0137】
本発明のセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布或いは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
【0138】
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面又は両面に設けられ、これを用いて本発明の液晶表示装置が得られる。
【0139】
本発明のセルロースエステルフィルムから成る偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化と共に耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。更に、本発明の偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。又、本発明のフィルムは、反射防止用フィルム又は光学補償フィルムの基材としても使用できる。
【0140】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を説明するが、本発明の実施態様がこれによって限定されるものではない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0141】
実施例1
「フィルム試料1の作製」
以下の操作手順でフィルム試料を作製した。
【0142】
〈酸化珪素分散液A1の調製〉
アエロジルR972V(日本アエロジル社製,1次粒子の平均粒径16nm,
見掛け比重90g/リットル) 15部
エタノール 85部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は196ppmであった。
【0143】
〈酸化珪素分散希釈液A2の調製〉
酸化珪素分散液A1 100部
メチレンクロライド 85部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合して、酸化珪素分散希釈液A2を調製した。
【0144】
〈主ドープ液Aの調製〉
リンター綿から合成されたセルローストリアセテート 85部
木材パルプから合成されたセルローストリアセテート 15部
可塑剤(化合物例16) 6.2部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.6部
メチレンクロライド 475部
エタノール 50部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、安積濾紙社製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液Aを調製した。
【0145】
〈添加液Aの調製〉
チヌビン109(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 26部
チヌビン171(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加え、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、アドバンテック東洋社製のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20Nで濾過し、添加液Aを調製した。
【0146】
〈流延法によるフィルムの製膜〉
製膜ライン中で、日本精線社製のファインメットNFで主ドープ液Aを濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線社製のファインメットNFで添加液Aを濾過した。濾過したドープ液A100部に対して濾過した添加液Aを2.6部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer,SWJ)で十分混合し、ベルト流延装置を用い、33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体上に均一に流延した。
【0147】
ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が80%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力127N/mでステンレスバンド支持体から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムを1550mm幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に10%延伸しながら70℃で乾燥させた後、120℃、135℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了し、1330mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、セルローストリアセテート(TAC)フィルム試料1を得た。この時のTACフィルムの膜厚は40μm、巻数は2600mであった。
【0148】
「フィルム試料2〜10の作製」
試料1の添加液Aを、表1記載のように添加液B〜Jに変更した以外は、試料1と同様にして試料2〜10を作製した。尚、試料6は、更に主ドープ液Aに替えて主ドープ液Bを使用した。添加液B〜Jならびに主ドープ液Bの調製は以下の通りである。
【0149】
〈添加液Bの調製〉
チヌビン109(前出) 31部
チヌビン171(前出) 14部
メチレンクロライド 175部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加え、更に30分間撹拌した後、リンター綿から合成されたセルローストリアセテートを8.6部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Bを得た。
【0150】
〈酸化珪素分散液B1の調製〉
アエロジル200V(日本アエロジル社製,1次粒子の平均粒径12nm,
見掛け比重100g/リットル) 10部
エタノール 90部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は116ppmであった。
【0151】
〈酸化珪素分散希釈液B2の調製〉
酸化珪素分散液B1 100部
メチレンクロライド 90部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合して酸化珪素分散希釈液B2を調製した。
【0152】
〈添加液Cの調製〉
チヌビン109(前出) 22部
チヌビン171(前出) 10部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱・撹拌しながら、完全に溶解した。
【0153】
これに酸化珪素分散希釈液B240部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Cを得た。
【0154】
〈添加液Dの調製〉
チヌビン109(前出) 20部
チヌビン171(前出) 9部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液B220部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Dを得た。
【0155】
〈添加液Eの調製〉
チヌビン109(前出) 24部
チヌビン171(前出) 11部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液B230部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Eを得た。
【0156】
〈添加液Fの調製〉
チヌビン109(前出) 36部
チヌビン171(前出) 17部
メチレンクロライド 175部
エタノール 50部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Bと同じセルロースアセテートプロピオネートを8.6部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Fを得た。
【0157】
〈主ドープ液Bの調製〉
アセチル置換度1.95,プロピオニル置換度0.7,数平均分子量750
00のセルロースアセテートプロピオネート 100部
可塑剤(化合物例16) 6.2部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.6部
メチレンクロライド 475部
エタノール 50部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、安積濾紙No.244(前出)を使用して濾過し、主ドープ液Bを調製した。
【0158】
〈酸化珪素分散希釈液C2の調製〉
酸化珪素分散液A1 100部
メチレンクロライド 127部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合して、酸化珪素分散希釈液C2を得た。
【0159】
〈添加液Gの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散希釈液C280部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Gを得た。
【0160】
〈添加液Hの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散希釈液A280部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Hを得た。
【0161】
〈添加液Iの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散希釈液B240部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Iを得た。
【0162】
〈酸化珪素分散液C1の調製〉
アエロジルR972V(前出:1次粒子の平均粒径16nm、見掛け比重90
g/リットル) 15部
メチレンクロライド 85部
以上をディゾルバーで30分間、撹拌・混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は425ppmであった。
【0163】
〈添加液Jの調製〉
チヌビン109(前出) 26部
チヌビン171(前出) 12部
メチレンクロライド 130部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解した。その後、主ドープ液Aを55部投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、これに酸化珪素分散液C140部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20N(前出)で濾過し、添加液Jを得た。
【0164】
〈フィルム試料の評価〉
作製した試料を以下に示す測定方法に従って評価した。
【0165】
《ヘイズ》
同一のフィルム試料3枚を重ね合わせ、ASTM−D1003−52に従って、東京電色工業社製T−2600DAを使用して測定した。
【0166】
《動摩擦係数》
フィルム表面と裏面間の動摩擦係数は、JIS−K−7125(1987)に準じ、フィルムの表裏面が接触するように切り出し、200gの重りを載せ、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で重りを水平に引っ張り、重りが移動中の平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求めた。動摩擦係数が小さい程、「きしみ」の発生が少ない。
【0167】
動摩擦係数=F(g)/重りの重さ(g)
《異物故障》
ベルト流延装置の巻取り部の直前にオンライン欠陥検査機を設置し、セルロースエステルフィルム100m2当たりの50μm以上の異物故障数をカウントした。
【0168】
結果を併せて表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
本発明に係るフィルム試料は、何れの評価も優れている。
実施例2
実施例1で作製したフィルム原反試料を用い、下記のアルカリ鹸化処理を行った後、偏光板の作製を行った。
【0171】
〈アルカリ鹸化処理〉
鹸化工程 2mol/L−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
次いで80℃で乾燥を行った。
【0172】
〈偏光板の作製〉
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、硼酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面に、アルカリ鹸化処理を行ったフィルム試料を完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ偏光板を作製した。この偏光板試料1〜10について以下の評価をした。
【0173】
《偏光板収率》
作製した偏光板を17インチに打ち抜き、1枚ずつ目視による外観検査を行った。外観検査は偏光板1枚中に50μm以上の欠陥が3個以上あった場合に不良品とした。収率は下記の式で求めた。
【0174】
収率(%)=良品枚数÷(良品枚数+不良品枚数)×100
結果を表2に示す。
【0175】
【表2】
【0176】
本発明のフィルム試料を使用することで、偏光板作製における良品収率が向上する。
【0177】
実施例3
実施例2で作製した偏光板試料1〜10を下記に記載する方法で液晶ディスプレイ(表示装置)1〜10に加工し、画質の評価を行った。結果を表3に示す。
【0178】
《画質》
17型TFT型カラー液晶ディスプレイLCD1720VM(NEC社製)の偏光板を剥がし、液晶セルを挟むようにして、実施例2で作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸が元と変わらないよう互いに直交するように貼り付け、17型TFT型カラー液晶ディスプレイを作製した。
【0179】
この液晶ディスプレイをホワイト表示にして目視による画質の観察を行い、以下の3段階に評価した。
【0180】
◯:全面ホワイト表示で、画面が見易い。
△:ホワイト以外の色に見える画素が1〜3カ所あり、画面がやや見え難い。
【0181】
×:ホワイト以外の色に見える画素が4カ所以上あり、画面が明らかに見え難い。
【0182】
【表3】
【0183】
本発明のフィルム試料を使用した液晶ディスプレイの画質は何れも良好であった。
【0184】
【発明の効果】
本発明により、滑り性に優れ、異物故障がなく、生産性に優れた光学フィルムが提供できた。この光学フィルムを使用した偏光板や液晶表示装置は良好な性能を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルムの溶液流延製膜法の模式図である。
【符号の説明】
1 鏡面帯状金属流延支持体
2 ダイス
3 フィルム剥離点
4 剥離されたフィルム
5 テンター搬送・乾燥工程
6 張力カット手段
7 巻き取られたロール状のフィルム
8 ロール搬送・乾燥工程
51,82 排気口
52,83 乾燥風取入れ口
81 乾燥箱
84 上部搬送用ロール
85 下部搬送用ロール
Claims (6)
- アルコールを1〜30質量%の割合で含む溶媒中に微粒子を分散した分散液と、セルロースエステル樹脂又はセルロースエステル樹脂溶液を混合することを特徴とするセルロースエステル添加液の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法によって作製されたセルロースエステル添加液。
- 溶液流延法による光学フィルムの製造工程で、請求項2記載のセルロースエステル添加液を主ドープと混合することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
- 請求項3記載の製造方法によって作製された光学フィルム。
- 請求項4記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
- 請求項4記載の光学フィルムを有することを特徴とする表示装置。
Priority Applications (1)
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JP2002312556A JP2004143376A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | 光学フィルムの製造方法及び光学フィルムならびに該光学フィルムを有する偏光板及び表示装置 |
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---|---|---|---|---|
JP2006071875A (ja) * | 2004-09-01 | 2006-03-16 | Konica Minolta Opto Inc | 偏光板、その製造方法及び液晶表示装置 |
JP2009073106A (ja) * | 2007-09-21 | 2009-04-09 | Konica Minolta Opto Inc | 光学フィルム、その製造方法、光学フィルムを用いた偏光板、及び表示装置 |
-
2002
- 2002-10-28 JP JP2002312556A patent/JP2004143376A/ja active Pending
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