JP2004170592A - 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び表示装置 - Google Patents

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び表示装置 Download PDF

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勇 道端
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Abstract

【課題】切り替えロスが少なく、しかも異物故障が少なく、紫外線吸収性能とヘイズの両方にも優れた光学フィルム及びその製造方法を提供すること、更には該光学フィルムを用いた偏光板、その偏光板を組み込んだ表示装置を提供すること。
【解決手段】溶液流延法によって光学フィルムを製造する工程において、微粒子を含有した添加液と紫外線吸収剤とを含有した添加液が別々に調製された後、別々に主ドープへインライン添加されることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種光学用途に利用される光学フィルム及びその製造方法に関するものであり、更には該光学フィルムを用いた偏光板、その偏光板を組み込んだ表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の液晶ディスプレイの用途は広くその用途によって、例えば、携帯電話用には軽量化のためにより薄膜のものが要求され、カーナビゲーション用の液晶ディスプレイには耐久性を重視した従来の厚い膜厚のものが要求され、室内で使用されるパソコンの液晶モニター用には軽量化と耐久性のバランスの取れた中間の膜厚のものが要求されるなど、各メーカーの用途によって使い分けが行われている。セルロースエステルフィルムも各メーカーの要求に、膜厚、滑り性、紫外線吸収性能を合わせている。このため、組み合わせが多数存在し、少量他品種生産となっている。一般にセルロースエステルフィルムの製膜方法は、溶液流延法で品種切り替えに時間がかかり、少量他品種生産には向かない製造方法であり、どのようにして生産性を向上させるかが大きな課題であった。
【0003】
特開平7−11055号公報には、表面メチル基を持った二酸化珪素微粒子をセルローストリアセテート溶液中で分散させ、主ドープのミキシングタンクに添加する方法と主ドープとインラインで添加する方法が開示されている。
【0004】
1次平均粒子径が20nm以下で、且つ見かけ比重が70g/L以上の二酸化珪素微粒子を溶剤中で分散し、セルロースエステル溶液中に添加して、添加液を作り、インラインで添加する方法などが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、インライン添加される添加液のフィルタリングについての方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、少量他品種生産には対応が困難で切り替えロスが多く、生産性の向上が困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−64409号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2001−213974号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は切り替えロスが少なく、しかも異物故障が少なく、紫外線吸収性能とヘイズの両方にも優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにあり、更には該光学フィルムを用いた偏光板、その偏光板を組み込んだ表示装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0010】
1)溶液流延法によって光学フィルムを製造する工程において、微粒子を含有した添加液と紫外線吸収剤を含有した添加液とが別々に調製された後、別々に主ドープへインライン添加されることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0011】
2)溶液流延法によって光学フィルムを製造する工程において、微粒子を含有した添加液と紫外線吸収剤を含有した添加液とが別々に調製された後、インラインで混合され、主ドープへインライン添加されることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0012】
3)前記1)または2)に記載の製造方法によって作製されたことを特徴とする光学フィルム。
【0013】
4)前記3)に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
5)前記4)に記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
特開平7−11055号公報、特開2001−64409号公報、同2001−213974号公報に記載のいずれの方法も紫外線吸収剤は、主ドープ溶解釜中に添加されるか、または微粒子とともにインラインで添加される方法であった。紫外線吸収剤を主ドープ溶解釜に添加している場合は、40μmの膜厚から80μmへ切り換えるとき、紫外線吸収剤量の減量が必要になる。そのため80μm用の主ドープ処方で主ドープを溶解し、フィルタリングをし、静置釜へ送液される。
【0015】
溶液流延法では、連続で製膜するために前の主ドープが残った状態で静置釜へ送液される。そのため、紫外線吸収剤量が違う主ドープが一部混合されるため、製膜されたフィルムの紫外線吸収剤量が変動してしまう。この変動が安定するためには、ほぼ1バッチ分の主ドープが必要となり大きなロスとなってしまう。
【0016】
これを改善するために、紫外線吸収剤を微粒子とともにインラインで添加する方法が提案されている。この方法の方が切り換えロスが少なくなるが、この場合も紫外線吸収剤と微粒子の添加比率を変更する場合、前の紫外線吸収剤と微粒子の添加液を廃棄し、新たな比率で紫外線吸収剤と微粒子の含まれた添加液を作り直す必要があった。また、微粒子の分散状態のバラツキによってフィルムのヘイズが変動する場合が多く、この方法ではヘイズを微調整するために、インライン添加液量を増やすと紫外線吸収性能がずれてしまうという問題があった。
【0017】
我々は、鋭意研究の結果、紫外線吸収剤と微粒子を別々に調製し、主ドープへインライン添加することを見い出した。これによって切り換えロスが少なくて済み、しかも異物故障が少なく、紫外線吸収性能とヘイズの両方にも優れたセルロースエステルフィルムの製造が可能になった。
【0018】
本発明の具体的な例として、これらの方法に限定されないが、例えば、図1や図2の方法がある。図1は紫外線吸収剤と微粒子を別々に調製し、別々に主ドープへインライン添加する方法である。図2は紫外線吸収剤と微粒子を別々に調製し、インラインで混合した後、主ドープへインライン添加する方法である。我々の検討の結果、図2のインラインで混合した後、主ドープへインライン添加する方法が異物の発生が少なく、より好ましい方法であることがわかった。
【0019】
微粒子を含有した添加液とは下記に示す微粒子を含有し、主ドープへインライン添加される液のことであり、微粒子を1〜10質量%含有していることが好ましく、1〜5質量%含有していることが更に好ましく、2〜3質量%含有していることが最も好ましい。微粒子の含有量の少ない方が低粘度で取り扱い易く、微粒子の含有量の多い方が添加量が少なく、インライン添加が容易になるため上記の範囲が好ましい。
【0020】
微粒子添加液には、微粒子の他にセルロースエステルが含まれていることが、添加液の粘度を調整する点で好ましい。セルロースエステルは主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わない。微粒子を含有した添加液には、主ドープに添加可能な添加剤を少量含んでいても構わない。また、紫外線吸収剤も含有していて構わないが、3%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0021】
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmがより好ましく、5〜12nmが更に好ましい。1次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。見かけ比重は90〜200g/L以上が好ましく、100〜200g/L以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0022】
微粒子の添加量は1mあたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0023】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0024】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0025】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0026】
微粒子を含む添加液の作製方法は、以下ような方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
(作製方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液を溶剤で希釈し、その後、少量のセルロースエステルまたは主ドープを加え、十分撹拌する。
【0028】
(作製方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースエステルまたは主ドープを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。
【0029】
(作製方法C)
溶剤に少量のセルロースエステルまたは主ドープを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。
【0030】
作製方法Aが、微粒子の凝集発生が少なく、特に好ましい。
微粒子を分散するときに使用する溶剤は、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることができる。特にアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール等が挙げられる。
【0031】
微粒子を溶剤などと混合して分散するときの微粒子の濃度は5〜30質量%が好ましく、8〜25質量%が更に好ましく、10〜15質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0032】
微粒子を分散する分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
【0033】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は微粒子と溶媒を混合した組成物を細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8×10Pa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.6×10Pa以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが好ましい。
【0034】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザー、あるいはウルトラタラックスがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0035】
紫外線吸収剤を含有した添加液とは下記に示す紫外線吸収剤を含有し、主ドープへインライン添加される液のことであり、紫外線吸収剤を1〜30質量%含有していることが好ましく、5〜20質量%含有していることが更に好ましく、10〜15質量%含有していることが最も好ましい。紫外線吸収剤の含有量の少ない方がセルロースエステルの溶解性に優れ、紫外線吸収剤の含有量の多い方が添加量が少なく、インライン添加が容易になるため、上記の範囲が好ましい。
【0036】
紫外線吸収剤添加液には、紫外線吸収剤の他にセルロースエステルが含まれていることが、添加液の粘度を調整する点で好ましい。セルロースエステルは主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わない。
【0037】
紫外線吸収剤を含有した添加液には、主ドープに添加可能な添加剤を少量含んでいても構わない。また、微粒子も含有していて構わないが、0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。
【0038】
本発明に使用される紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。
【0039】
本発明で好ましく用いられる上記の紫外線吸収剤は透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤やトリアジン系化合物が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系化合物が特に好ましい。
【0040】
上記紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常は光学フィルム1m当り0.2〜2.0gが好ましく、0.4〜1.5gが更に好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
【0041】
液晶劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線吸収性能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、400nm以上の可視光吸収が少ないものが好ましい。本発明においては、特に波長380nmでの透過率が8%以下であることが好ましく、4%以下が更に好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0042】
本発明において主ドープとは本発明のセルロースエステルフィルムを製造する際のドープ液であり、添加液と区別するために主ドープと呼ぶ。添加液には、樹脂成分を高濃度で含有する主ドープ液と同様の樹脂成分を混合する場合があり、これと区別するためフィルム形成樹脂成分の大部分を含む添加液ではないドープ液を主ドープと呼ぶ。
【0043】
インライン添加では、特開2001−213974号公報に記載されているフィルターや送液ポンプ等を適宜使用することが好ましい。
【0044】
本発明の好ましい態様であるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0045】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に用いられる好ましい製膜工程は、下記に示す溶解工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻き取り工程からなる。以下に各々の工程を説明する。
【0046】
《主ドープの溶解工程》
主ドープの溶解工程は、セルロースエステルのフレークに、後述の良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。
【0047】
本発明では、ドープ中の固形分濃度は15質量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35質量%のものが好ましく用いられる。ドープ中の固形分濃度が高すぎるとドープの粘度が高くなりすぎ、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、35質量%以下であることが望ましい。ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
【0048】
溶解には、常圧で行う方法、好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)の沸点以下で行う方法、上記の良溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、且つ沸騰しない圧力をかけて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで発泡を抑え、且つ短時間に溶解することができる。
【0049】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
【0050】
セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等、また特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルなどがセルロースの低級脂肪酸エステルの例として挙げられる。
【0051】
セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTM−D−817−96に準じて実施することができる。
【0052】
上記脂肪酸の中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるが、本発明のセルロースエステルフィルムの場合には、フィルム強度の観点から、特に重合度250〜400のものが好ましく用いられる。
【0053】
本発明のセルロースエステルフィルムは総置換度が2.5〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられるが、特に総置換度が2.55〜2.85のセルロースエステルが好ましく用いられる。総置換度が2.55以上になるとフィルムの機械強度が増加し、2.85以下になるとセルロースエステルの溶解性が向上したり、異物の発生が低減されるため、より好ましい。
【0054】
セルロースアセテートプロピオネートの場合、アセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度をYとすると
2.55≦X+Y≦2.85
1.5≦X≦2.4
の範囲にあるものが好ましく用いられる。
【0055】
セルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステル、それ以外の原料から合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることができる。セルロースエステルのかわりに、セルロースエステルフィルムの返材を用いてもよい。返材とはセルロースエステルフィルムを細かく粉砕したもので、セルロースエステルフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落としたものや、擦り傷などでスペックアウトしたセルロースフィルム原反が使用される。
【0056】
返材の使用比率は主ドープ等の処方値の固形分に対して、0〜70質量%が好ましく、10〜50質量%が更に好ましく、20〜40質量%が最も好ましい。返材使用量の多い方が、濾過性に優れ、返材使用量の少ない方が滑り性に優れるため、上記範囲にすることが好ましい。
【0057】
返材を使用した場合は、その使用量に対応して、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子などセルロースエステルフィルムに含まれる添加剤は減量して、最終的なセルロースエステルフィルム組成が設計値になるように調整を行う。
【0058】
主ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、また単独で溶解できない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば使用することができる。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、且つ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0059】
この他使用できる良溶媒としては、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
【0060】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0061】
溶解後セルロースエステル溶液(ドープ)を濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましく、また、その際、ドープ中には可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、微粒子等が好ましく添加される。これらの添加物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0062】
本発明セルロースエステルフィルム中には可塑剤を添加することができる。これらは前記紫外線吸収剤と併用することができる。
【0063】
用いることのできる可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪族多価アルコールエステルなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等があり、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等があり、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。
【0064】
これらを単独或いは併用して用いるのが好ましく、これらの可塑剤は必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。特に、リン酸を含まない可塑剤の組み合わせが耐久性に優れているため好ましい。また、可塑剤の使用量はセルロースエステルに対して1〜30質量%含有されることが好ましく、2〜25質量%が更に好ましく、5〜20質量%が更に好ましく、特に好ましくは10〜15質量%である。
【0065】
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、上記可塑剤の他にも可塑剤と同様の作用を示す添加剤が含有されることがある。これらの添加剤としてはセルロースエステルフィルムを可塑化することのできる低分子有機化合物であれば、可塑剤と同様に本発明の効果を得ることができる。これらの成分は可塑剤に比べ直接フィルムを可塑化する目的で添加されるものではないが、量に応じて上記可塑剤と同様の作用を示す。
【0066】
次に、本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールエステルについて説明する。脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
【0067】
脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(A)で表される。
【0068】
一般式(A) R−(OH)
但し、Rはn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す。
【0069】
n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等)、アルケニレン基(例えば、エテニレン基等)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基等)、シクロアルキレン基(例えば、1,4−シクロヘキサンジイル基等)、アルカントリイル基(例えば、1,2,3−プロパントリイル基等)が挙げられる。n価の脂肪族有機基は置換基(例えば、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。nは2〜20が好ましい。
【0070】
好ましい脂肪族多価アルコールの例としては、例えば、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0071】
本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールエステルを合成するモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環式モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0073】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有してもよい。
【0074】
好ましい脂環式モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0075】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0076】
本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。脂肪族多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
【0077】
本発明に好ましく用いられる脂肪族多価アルコールエステルの例を以下に示す。
【0078】
【化1】
Figure 2004170592
【0079】
【化2】
Figure 2004170592
【0080】
【化3】
Figure 2004170592
【0081】
【化4】
Figure 2004170592
【0082】
脂肪族多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して3〜30質量%が好ましく、5〜25質量%が更に好ましく、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0083】
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために、例えば、青色染料等を添加剤として用いてもよい。好ましい染料としては、アンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料はアンスラキノンの1位から8位迄の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としては、置換されてもよいアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。これらの染料のフィルムへの添加量は、フィルムの透明性を維持するため0.1〜1000μg/m、好ましくは10〜100μg/mである。
【0084】
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために蛍光増白剤を添加剤として使用してもよい。
【0085】
このようにして得られたドープを用い、以下に説明する流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0086】
《流延工程》
ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルト或いは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
【0087】
その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
【0088】
製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いはダイの内部をスリットで分割し、組成の異なる複数のドープ液を同時に流延(共流延とも言う)して、積層構造のセルロースエステルフィルムを得ることもできる。
【0089】
このように、得られたドープをベルトまたはドラム等の支持体上に流延し、製膜するが、本発明は特にベルトを用いた溶液流延製膜法で特に有効である。これは後述のように、支持体上での乾燥条件を細かく調整することが容易だからである。
【0090】
《溶媒蒸発工程》
ウェブ(本発明においては、流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率が好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するにはこの温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0091】
特に本発明のセルロースエステルフィルムは、流延から30〜90秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが望ましい。30秒未満で剥離するとフィルムの面品質が低下するだけでなく、透湿性の点でも好ましくない。90秒を越えて乾燥させると剥離性が悪化することなどによる面品質の低下や、フィルムに強いカールが発生するため好ましくない。
【0092】
《剥離工程》
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0093】
支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量は25〜120質量%が好ましく、更に好ましくは40〜100質量%である。ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
【0094】
残留溶媒量=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100%
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0095】
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行えるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、液体による裏面伝熱方法が好ましい。
【0096】
輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とはいえないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することができる。
【0097】
支持体の温度は加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることができ、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等異なる温度とすることができる。
【0098】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。
【0099】
それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることもできる。
【0100】
残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常196〜245N/mで剥離が行われるが、剥離の際にシワが入り易い場合、190N/m以下で剥離することが好ましく、更には剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0101】
剥離張力が低いほど面内リターデーションRoが低く保てるため好ましい。面内リターデーションRoは20nm未満であることが好ましく、更には10nm未満、次いで5nm未満であることが好ましいが、最も好ましくは0〜1nmである。
【0102】
面内リターデーションRoは自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。また、膜厚方向のリターデーション値Rtは0〜300nmのものが得られ、更に好ましくは0〜150nm、より好ましくは0〜70nmのものが用途に応じて好ましく得られる。
【0103】
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx−ny)/2−nz)×d
本発明のセルロースエステルフィルムは、遅相軸方向と製膜方向とのなす角度θ(ラジアン)と面内方向のレターデーションRoが下記の関係にあり、特に偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとして好ましく用いられる。
【0104】
P≦1−sin(2θ)sin(πRo/λ)
Pは0.9999以下である。
【0105】
nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの膜厚(nm)である。θはフィルム面内の遅相軸方向と製膜方向(フィルムの直尺方向)とのなす角度(°ラジアン)、λは上記nx、ny、nz、θを求める三次元屈折率測定の際の光の波長590nm、πは円周率である。
【0106】
《乾燥工程》
ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップまたはピンでウェブの両端を保持して搬送するテンター装置を用いて巾保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することがRoが低く維持できるため好ましく、190N/m以下であることが好ましい。更に好ましくは170N/m以下であることが好ましく、更に好ましくは140N/m以下であることが好ましく、100〜130N/mであることが特に好ましい。特にフィルム中の残留溶媒量が少なくとも5質量%以下となるまで上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
【0107】
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥温度は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0108】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
【0109】
この観点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を巾方向にクリップまたはピンでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
【0110】
このとき幅手方向の延伸倍率は0〜100%であることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いる場合は5〜20%が更に好ましく、8〜15%が最も好ましく、位相差フィルムとして用いる場合は10〜40%が更に好ましく、20〜30%が最も好ましい。延伸倍率によってRoをコントロールすることが可能で、延伸倍率が高い方が出来上がったフィルムの平面性に優れるため好ましい。
【0111】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、且つウェブの残留溶媒量が10質量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0112】
テンターを行う場合の乾燥温度は30〜150℃が好ましく、50〜120℃が更に好ましく、70〜100℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性に優れる。紫外線吸収剤は乾燥温度が高い場合でも、蒸散しにくいため、テンター乾燥温度が高く、延伸倍率の高い製造条件のときに、その効果が顕著発揮される。
【0113】
また、フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を0.5質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、更に好ましくは0〜0.01質量%以下とすることである。
【0114】
フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、上記のようなピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
【0115】
溶液流延製膜法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は、常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0116】
《巻き取り工程》
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0117】
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0118】
セルロースエステルフィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常5〜500μmの範囲にあり、更に10〜250μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては10〜120μmの範囲が用いられる。本発明のセルロースエステルフィルムは特に、10〜60μmの膜厚の薄いフィルムの範囲でより効果を発揮する。
【0119】
本発明における透湿度とは、JIS Z 0208に記載の方法で測定された25℃、90RH%における値で定義する。透湿度は20〜250g/m・24時間であることが好ましいが、特に20〜200g/m・24時間であることが好ましい。透湿性が250g/m・24時間を超えた場合では、偏光板の耐久性が著しく低下し、逆に20g/m・24時間未満では、偏光板製造時の接着剤に使われている水等の溶媒が乾燥しにくくなり、乾燥時間が長くなるため好ましくない。より好ましくは25〜200g/m・24時間である。
【0120】
また、本発明のセルロースエステルフィルムでは80℃、90%RHにおける質量変化を少なくすることで、寸法安定性を更に改善することができる。本発明のセルロースエステルフィルムでは80℃、90%RHで48時間加熱処理した前後での質量変化率が±2%以内とすることがより好ましく、これによって透湿度が改善された薄膜フィルムでありながら、寸法変化率も優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0121】
本発明のセルロースエステルフィルムは、80℃、90%RH雰囲気下で48時間加熱処理した際の寸法変化率はMD方向(フィルムの製膜方向)、TD方向(フィルムの幅手方向)共に±0.5%以内であることが好ましく、更に±0.3%以内であることが好ましく、更に±0.1%以内であることが好ましく、更に±0.05%以内であることが好ましい。
【0122】
本発明でいう寸法変化率とは、温度や湿度の条件が過酷な状況でのフィルム縦方向及び横方向の寸法変化を表す特性値である。具体的には加熱条件、加湿条件、熱湿条件にフィルムを置いて強制劣化としての、縦、横の寸法変化を測定する。例えば、測定しようとするフィルム試料について、幅手方向150mm×長手方向120mmサイズに断裁し、該フィルム表面に、幅手方向及び長手方向それぞれに100mm間隔で2ヶ所、カミソリ等の鋭利な刃物で十文字型の印を付ける。該フィルムを23℃、55%RHの環境下で24時間以上調湿し、工場顕微鏡で処理前の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L1を測定する。次に、該試料を電気恒温槽中で、高温高湿処理(条件;80℃、90%RHの環境下で48時間放置をする)する。再び、該試料を23℃、55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理後の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L2を測定する。この処理前後の変化率を次式によって求める。
【0123】
寸法変化率(%)=(L2−L1)/L1×100
式中、L1は処理前の印間距離、L2は処理後の印間距離を表す。
【0124】
即ち、付す印の位置をフィルムの長手方向、幅手方向に付けることによって所望の寸法変化率測定を行うことができるのである。105℃で5時間処理したときの寸法変化率は、MD方向、TD方向共に±0.5%以内であることが好ましく、更に±0.3%以内であることが好ましく、更に±0.1%以内であることが好ましく、更に±0.05%以内であることが好ましい。
【0125】
本発明のセルロースエステルフィルムは抗張力がMD方向、TD方向共に90〜170N/mmであることが好ましく、特に120〜160N/mmであることが好ましい。
【0126】
含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることが更に好ましい。
【0127】
本発明のセルロースエステルフィルムは、透過率が90%以上であることが望ましく、更に好ましくは92%以上であり、更に好ましくは93%以上である。また、ヘイズは0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましく、0%であることが更に好ましい。
【0128】
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、カール値は絶対値が小さい方が好ましく、変形方向は、+方向でも、−方向でもよい。カール値の絶対値は30以下であることが好ましく、更に好ましくは20以下であり、10以下であることが特に好ましい。なお、カール値は、曲率半径(1/m)で表される。
【0129】
以下に本発明のセルロースエステルフィルムの溶液流延製膜法による製造方法について、図を用いて更に詳細に説明する。
【0130】
図4はフィルムの溶液流延製膜法の好ましい一例を示す模式図である。図4(a)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥する場合の模式図である。図4(b)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。図4(c)は流延後、テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。図4(d)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。
【0131】
なお、本発明において、テンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を含む工程とは、支持体から剥離されたフィルムを乾燥して巻き取る迄の工程のどこかに、フィルムの乾燥伸縮率を調整するテンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を有する工程をいう。テンター搬送・乾燥工程とはテンター搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程を言い、ロール搬送・乾燥工程とはロール搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程をいう。
【0132】
図4において、1はエンドレスで走行する支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。2はセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体1に流延するダイスを示す。3は支持体1に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離点を示し、4は剥離されたフィルムを示す。5はテンター搬送・乾燥工程を示し、51は排気口を示し、52は乾燥風取り入れ口を示す。なお、排気口51と乾燥風取り入れ口52は逆であってもよい。6は張力カット手段を示す。張力カット手段としてはニップロール、サクションロール等が挙げられる。なお、張力カット手段は各工程間に設けてもかまわない。
【0133】
8はロール搬送・乾燥工程を示し、81は乾燥箱を示し、82は排気口を示し、83は乾燥風取り入れ口を示す。なお、排気口82と乾燥風取り入れ口83は逆であってもよい。84は上部搬送用ロールを示し、85は下部搬送用ロールを示す。該搬送用ロール84、85は上下で一組で、複数組から構成されている。7は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
【0134】
図4(d)で示される工程において、テンター搬送・乾燥工程5の前のロール搬送・乾燥工程を第1ロール搬送・乾燥工程と呼び、テンター搬送・乾燥工程5の後のロール搬送・乾燥工程を第2ロール搬送・乾燥工程と呼ぶ。なお、図4(a)〜(d)では示されていない冷却工程を、巻き取る前に必要に応じて設けてもよい。
【0135】
本発明においては、上述した何れの溶液流延製膜法による形態でセルロースエステルフィルムを製造しても構わない。
【0136】
本発明のセルロースエステルフィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対してともに厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明のセルロースエステルフィルムは好ましく用いられる。
【0137】
本発明に係る偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルム或いはセルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
【0138】
本発明のセルロースエステルフィルムにはハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布或いは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
【0139】
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、本発明の液晶表示装置が得られる。
【0140】
本発明のセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。更に、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
【0141】
本発明のセルロースエステルフィルムは、反射防止用フィルム或いは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
【0142】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
〔試料1−1、1−2の作製〕
〈酸化珪素分散液A〉
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製)(一次粒子の平均径16n
m、見掛け比重90g/L) 15質量部
エタノール 85質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は196ppmであった。
【0144】
〈酸化珪素分散希釈液A〉
酸化珪素分散液A 100質量部
メチレンクロライド 85質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合して、酸化珪素分散希釈液Aを作製した。
【0145】
〈主ドープ液Aの調製〉
リンター綿から合成されたセルローストリアセテート 85質量部
木材パルプから合成されたセルローストリアセテート 15質量部
例示化合物16 6.2質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.6質量部
メチレンクロライド 475質量部
エタノール 50質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液Aを調製した。
【0146】
〈添加液Aの調製〉
メチレンクロライド130質量部を密閉容器に投入し、これに酸化珪素分散希釈液A、80質量部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55質量部投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解し、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20Nで濾過し、添加液Aを調製した。
【0147】
〈添加液Bの調製〉
チヌビン109(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) 26質量部
チヌビン171(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) 12質量部
メチレンクロライド 130質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。これに主ドープ液Aを55質量部投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解し、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−10Nで濾過し、添加液Bを調製した。
【0148】
製膜ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFで主ドープ液Aを濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液Aを濾過した。別のインライン添加液ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液Bを濾過した。濾過した主ドープ液A、100質量部に対して、濾過したインライン添加液Aを1.7質量部、インライン添加液Bを1.5質量部、それぞれを図1に示すように別々に加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いでベルト流延装置を用い、温度33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が80%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力127N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
【0149】
剥離したセルローストリアセテートフィルムを1550mm幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に10%延伸しながら、70℃の乾燥温度で乾燥させ、その後、120℃、135℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1330mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して、セルローストリアセテートフィルム試料1−1を得た。このときのセルローストリアセテートフィルムの膜厚は40μm、巻数は3900mであった。
【0150】
その後、添加液の比率を表1の80μmの設定に合わせて変更し、ステンレスバンド支持体スピードを遅くし、フィルム試料の厚さが80μmになるように調整して、セルローストリアセテートフィルム試料1−2を得た。この時の剥離残留溶媒量は100%で、剥離張力は200N/mであった。
【0151】
〔試料2−1、2−2の作製〕
添加液A、Bの添加方法を図2のようにインラインで混合した後、主ドープにインライン添加した以外は、同様にして試料2−1、2−2を作製した。
【0152】
〔試料3−1、3−2及び4−1、4−2の作製〕
添加液A、Bを添加液Cに変更し、添加方法を図3のようにし、添加量を表1のようにした以外は同様にして、試料3−1、3−2及び4−1、4−2を作製した。
【0153】
〈添加液Cの調製〉
チヌビン109(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) 26質量部
チヌビン171(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) 12質量部
メチレンクロライド 175質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。これに酸化珪素分散希釈液A、80質量部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、主ドープ液Aを55質量部投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−20Nで濾過し、添加液Cを調製した。
【0154】
なお、本発明の図1、2で示される添加方法においては、40μmから80μmへの切り替えの時間ロスは、比較の図3で示される添加方法に比して圧倒的に少なかった。
【0155】
【表1】
Figure 2004170592
【0156】
試料1−1〜4−2について以下の評価を行った。結果を表2示す。
〈異物故障〉
ベルト流延装置の巻き取り部の直前にオンライン欠陥検査機を設置し、セルロースエステルフィルム100mあたりの40μm以上の異物故障数をカウントした。
【0157】
〈ヘイズ〉
フィルム試料3枚を重ね合わせ、ASTM−D1003−52に従って、東京電色工業(株)社製T−2600DAを使用して測定した。ヘイズは低いほど優れている。
【0158】
〈UV性能〉
Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)を用い、フィルムの分光吸収スペクトルを測定し、380nmに於ける透過率を求め、以下のようにランク分けを行った。
【0159】
(40μm)
○・・・透過率6%以上、10%未満
×・・・透過率6%未満、10%以上
(80μm)
○・・・透過率2%以上、6%未満
×・・・透過率2%未満、6%以上
【0160】
【表2】
Figure 2004170592
【0161】
表2の結果から、本発明の微粒子を含有した添加液と紫外線吸収剤を含有した添加液を別々に調製した後、主ドープへインライン添加した方が、膜厚が変わった場合にも、ヘイズ、UV性能ともにバランスがとれて優れており、更に異物故障にも優れていることがわかる。また別々に調製された添加液がインラインで混合された後、主ドープへインライン添加された方が、より異物故障が少なく、優れていることがわかる。
【0162】
実施例2
実施例1で作製したセルロースエステルフィルム原反試料を使って、下記に記載するアルカリケン化処理、偏光板の作製を行った。
【0163】
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程 2M−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
【0164】
〔偏光板の作製〕
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として、アルカリケン化処理を行ったセルロースエステルフィルム試料を各々貼り合わせ、偏光板を作製した。
【0165】
偏光板の評価は以下の偏光板収率で行った。
〈偏光板収率〉
作製した偏光板を17インチに打ち抜き、1枚ずつ目視による外観検査を行った。外観検査は偏光板1枚中に50μm以上の欠陥が3個以上あった場合に不良品とした。収率は下記の式で求めた。
【0166】
収率(%)=良品枚数÷(良品枚数+不良品枚数)×100
【0167】
【表3】
Figure 2004170592
【0168】
表3より、本発明の製造方法で作製した光学フィルムからの偏光板は、その良品収率が比較に対して明らかに高いことが分かる。これは光学フイルム製造での異物故障が少ないことに起因している。
【0169】
実施例3
実施例2で作製した偏光板試料を、下記に記載する方法で液晶表示装置試料に加工し、画質の評価を行った。結果を表4に示す。
【0170】
17型TFT型カラー液晶ディスプレイLCD1720VM(NEC製)の偏光板を剥がし、液晶セルを挟むようにして、前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸がもとと変わらないように互いに直交するように貼り付け、17型TFT型カラー液晶表示装置試料を作製した。
【0171】
〈画質〉
この液晶表示装置試料をホワイト表示にして目視による画質の評価を行った。
【0172】
○:全面ホワイト表示で、画面が見やすい
△:ホワイト以外の色に見える画素が1〜3カ所あり、画面がやや見えにくい
×:ホワイト以外の色に見える画素が4カ所以上あり、画面が明らかに見えにくい
【0173】
【表4】
Figure 2004170592
【0174】
表4より、本発明の製造方法で作製した光学フィルムを元にしたカラー液晶表示装置試料は画質が優れている。
【0175】
【発明の効果】
本発明によって、切り替えロスが少なく、しかも異物故障が少なく、紫外線吸収性能とヘイズの両方にも優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することができたとともに、異物故障の減少によって偏光板作製の収率も上げることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインライン添加方法の模式図である。
【図2】本発明のインライン添加方法の模式図である。
【図3】従来のインライン添加方法の模式図である。
【図4】フィルムの溶液流延製膜法の模式図である。
【符号の説明】
11 主ドープ溶解タンク
12 送液ポンプ
13 プレスフィルター
14 主ドープストックタンク
15 フィルター
16 インラインミキサー
17 添加液ミキシングタンク
18 添加液ストックタンク
19 切り替え弁
20 流延ダイ
21 ベルト流延装置
1 鏡面帯状金属流延支持体
2 ダイス
4 セルロースエステルフィルム
5 テンター搬送・乾燥工程
6 張力カット手段
8 ロール搬送・乾燥工程
84 上部搬送用ロール
85 下部搬送用ロール

Claims (5)

  1. 溶液流延法によって光学フィルムを製造する工程において、微粒子を含有した添加液と紫外線吸収剤を含有した添加液とが別々に調製された後、別々に主ドープへインライン添加されることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 溶液流延法によって光学フィルムを製造する工程において、微粒子を含有した添加液と紫外線吸収剤を含有した添加液とが別々に調製された後、インラインで混合され、主ドープへインライン添加されることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法によって作製されたことを特徴とする光学フィルム。
  4. 請求項3に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
  5. 請求項4に記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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