JP4300608B2 - Clbo結晶による和周波光の発生方法 - Google Patents
Clbo結晶による和周波光の発生方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長193nmの光を放出するArFエキシマレーザの代替光源として使用される固体レーザ光源等に用いられるCLBO結晶による193nmの和周波光の発生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路等の微細化に伴い、露光光の波長が短波長化しており、次世代の半導体リソグラフィー用光源として、波長193nmのArFエキシマレーザが有力視されている。
しかし、上記エキシマレーザは、レーザ媒質として腐食性ガスを使用するためメンテナスン上の問題があり、実用化する上で解決しなければならない問題も多い。そこで、ArFエキシマレーザの代替光源として使用できる波長がほぼ193nmの光を放出する固体レーザの開発が検討されている。
【0003】
固体レーザを用いて上記ArFエキシマレーザの代替光源を構成するには、Nd:YAGレーザ光源等が放出するコヒーレント光と、波長可変レーザや光パラメトリック発振器が放出するコヒーレント光あるいはその高調波光を、CLBO結晶等の和周波結晶に入射して、波長がほぼ193nmの和周波光を得る方法が考えられる。
すなわち、波長が950nm〜1100nmの第1のコヒーレント光と、波長がほぼ200nm〜250nmの第2のコヒーレント光(例えば、ほぼ1064nmの波長の光を放出するNd:YAGレーザ光と、ほぼ236nmの波長の光を放出する可変波長レーザ光)をCLBO結晶に入射し、和周波混合することにより、波長がほぼ193nmの光を得る方法が考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、波長が950nm〜1100nmの第1のコヒーレント光と、波長がほぼ200nm〜250nmの第2のコヒーレント光をCLBO結晶に入射し、和周波混合することにより、ほぼ193nmの光を得ることができるが、CLBO結晶により和周波光を得るには、位相整合がとられていなければならず、従来においては、上記2波長の光の組み合わせで、193nmの和周波光を発生させるための条件が必ずしも明らかにされていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、CLBO結晶により193nmの和周波光を発生させるための実用上の条件を明らかにし、実用上実現可能なCLBO結晶による和周波光の発生方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等が種々実験を行い検討したところ、1064nmの波長の光と236nmの波長の光をCLBO結晶に入射して波長がほぼ193nmの光を発生させるには、CLBO結晶を適切な温度環境下におく必要があることが明らかになった。
すなわち、CLBO結晶に入射する一方の光の波長を固定し、他方の光の波長とCLBO結晶の温度を変えて位相整合角を求める実験を行ったところ、CLBO結晶の温度が室温(23°C)とき、波長がほぼ195nmの和周波光を得ることができたが、波長をさらに193nmに近づけるには、CLBO結晶の温度をさらに低下させることが好ましいことが分かった。
【0006】
本発明は上記知見に基づきなされたものであって、上記課題を次のようにして解決する。
(1)CLBO結晶を冷却し、波長950nm〜1100nmの第1のコヒーレント光と、波長200nm〜250nmの第2のコヒーレント光から、ほぼ193nmの和周波光を発生させる。
(2)上記(1)において、第1のコヒーレント光をNd:YAGレーザ光、または、Nd:YVO4 レーザ光とし、上記結晶の温度を−180°C以下とする。
(3)上記(1)において、CLBO結晶の温度を、位相整合する角度(光が位相整合するときの結晶の光学軸と光の入射方向のなす角度)がほぼ90度となる温度にする。
本発明は上記(1)〜(3)のように構成したので、CLBO結晶により波長がほぼ193nmの和周波光を得ることができる。また、位相整合する角度をほぼ90度となる温度にすることにより、角度許容幅を大きくすること(ノン・クリティカル・フェーズ・マッチング)ができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施例の測定系におけるCLBO結晶と入射光と出射光の関係を示す図である。同図に示すように、光学軸を光の入射方向に対してθ度傾けたCLBO結晶1に波長λ1(第1波長λ1という)の第1のコヒーレント光と、波長λ2(第2波長λ2という)の第2のコヒーレント光に入射し、プリズム2により、波長λ3の和周波光を取り出した。なお、同図では波長λ1,λ2,λ3の光を3本に分けて記載しているが、実際は重なっている。
本実施例では上記第1のコヒーレント光として、Nd:YAGレーザの基本波光である波長1064nmの光を用い、第2のコヒーレント光として、チタンサファイアレーザから構成される可変波長レーザ光を用いた。また、CLBO結晶を内部が真空に保たれた容器内に収納し、該容器に液体窒素を用いた冷却機構を設けて、CLBO結晶の温度を−200°C近傍まで冷却できるようにした。
そして、第1波長λ1を上記1064nmに固定し、第2のコヒーレント光の第2波長λ2を変えて、各温度におけるCLBO結晶の位相整合角の温度依存特性を調べた。
【0008】
具体的には、図2に示す測定系を用いて測定を行った。
図2に示すように、Nd:YAGレーザ光源3から放射される光を3倍波発生用非線形結晶7に入射し、3倍波を発生し、ダイクロイックミラーDM1,DM3を介して和周波発生用非線形光学結晶8(CLBO)に入射した。
また、タイミング調整器5で上記Nd:YAGレーザ光源3と同期が取られたNd:YAGレーザ光源4に組み込まれたその2倍波(532nm)のレーザ光により波長可変レーザ光源であるチタンサファイアレーザ光源6(Ti:SAレーザ光源という)を励起し、Ti:SAレーザ光源6が放出するレーザ光をミラーM4、ハーフミラーHs1、ミラーM2、ダイクロイックミラーDM3を介して和周波発生用非線形光学結晶8に入射した。
和周波発生用非線形光学結晶8は、上記3倍波とTi:SAレーザ光源が放出するレーザ光の和周波光を発生する。この和周波光(波長λ2)をダイクロイックミラーDM2を介して、被測定対象であるCLBO結晶1に入射した。
【0009】
一方、Nd:YAGレーザ光源3から放射される基本波レーザ光(波長λ1)をダイクロイックミラーDM1、ミラーM1、ダイクロイックミラーDM2を介して被測定対象であるCLBO結晶1に入射した。
また、上記Nd:YAGレーザ光源3とNd:YAGレーザ光源4の同期が正しくとられ、被測定対象CLBO結晶1に同時にTi:SAレーザ光源6からのレーザ光と、Nd:YAGレーザ光源3の基本波光が到達しているかを調べるため、ピンフォトダイオード11,12により上記波長λ1の光とλ2の光を検出し、オッシロスコープ13でモニタした。
【0010】
波長λ2は、Ti:SAレーザ光源6が放出するレーザ光の波長を変えることにより、230〜240nmの範囲で変えた。Ti:SAレーザ光源6が放出するレーザ光の波長は波長計9により測定した。
また、位相整合角は、前記図1のθを変え、結晶表面からの反射光の入射光軸からのズレを検出することにより測定した。また、位相整合のピークを確認するため、発生する和周波光のパワーをサーモパイル型パワーメータまたは、蕉電型パワーメータ10で測定した。
上記のように、波長λ1の光と波長λ2の光を測定対象となるCLBO結晶1に入射し、位相整合角を求めてグラフ上にプロットし、各温度における温度依存特性を調べた。
【0011】
図3は上記のようにして測定した各温度における位相整合角と第2波長λ2の関係を示す図である。同図において、横軸は第2波長λ2、縦軸は位相整合角であり、各曲線は、CLBO結晶を180°C、100°C、23°C、−90°C、−160°C、−185°Cの温度にしたときの波長λ2と位相整合角の関係を示しており、各曲線に付された196.48nm、195.69nm、194.82nm、193.93nm、193.39nmは、各温度において位相整合角が90°のときにCLBO結晶から出射される和周波光の波長を示している。なお、−160°Cのときの和周波光の波長は−185°Cのときの和周波光の波長に近いので図示されていない。
【0012】
同図に示すように、CLBO結晶の温度を低下させると、位相整合可能な第2波長λ2が低下し、これに伴い和周波光の波長も193nmに近づいていく。
また、位相整合角が90°のとき、第2波長λ2が最も小さくなりこれに伴い和周波光の波長も小さくなる。
さらに図3から明らかなように、位相整合角が90°近傍であればCLBO結晶の角度θ(位相整合角)の変動に対する和周波光の波長の変動も小さくなる。すなわち、位相整合角が90°のとき、いわゆる、ノン・クリティカル・フェーズ・マッチングとすることができる。
【0013】
図4は上記図3に基づきCLBO結晶の温度と、第2波長λ2および得られる和周波光の波長をプロットした図である。同図において、横軸はCLBO結晶の温度、縦軸は、混合する第2波長λ2である。
同図から明らかなように、温度を低下させるに従って、位相整合可能な第2波長λ2が小さくなり、これに伴い和周波光の波長も短くなる。
以上の実験から、CLBO結晶の温度を低下させていくことにより波長が193nmに近い和周波光を得ることができることがわかった。また、CLBO結晶の温度を−180°C以下にすることにより、193nmに近い193.39nmの和周波光を得ることができた。
また、位相整合角が90°であれば、CLBO結晶の温度が同じとき和周波光の波長は最も短くなり、さらに前記したように、いわゆる、ノン・クリティカル・フェーズ・マッチングとすることができる。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、CLBOを冷却したので、波長950nm〜1100nmの第1のコヒーレント光と、波長200nm〜250nmの第2のコヒーレント光からほぼ193nmの和周波光を発生させることができる。特に、第1のコヒーレント光をNd:YAGレーザ光、または、Nd:YVO4 レーザ光とし、上記結晶の温度を−180°C以下とすることにより、193nmに近い193.39nmの和周波光を得ることができる。
さらに、CLBO結晶の温度を、位相整合する角度がほぼ90度となる温度にすることにより、ノン・クリティカル・フェーズ・マッチングとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の測定系におけるCLBO結晶の入射光と出射光の関係を示す図である。
【図2】本発明で使用した測定系の構成例を示す図である。
【図3】各温度における位相整合角と第2波長λ2の関係を示す図である。
【図4】CLBO結晶の温度と第2波長λ2および和周波光の波長の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 被測定CLBO結晶
2 プリズム
3,4 Nd:YAGレーザ光源
5 タイミング調整器
6 チタンサファイアレーザ光源
7 3倍波発生用非線形光学結晶
8 和周波発生用非線形光学結晶
9 波長計
10 パワーメータ
11,12 ピンフォトダイオード
13 オッシロスコープ
Claims (3)
- 波長950nm〜1100nmの第1のコヒーレント光と、波長200nm〜250nmの第2のコヒーレント光とをCLBO結晶に入射し和周波光を発生させる方法であって、
波長がほぼ193nmの和周波光を発生するように上記CLBO結晶を冷却することを特徴とするCLBO結晶による和周波光の発生方法。 - 第1のコヒーレント光がNd:YAGレーザ光、または、Nd:YVO4 レーザ光であり、上記結晶の温度が−180°C以下である
ことを特徴とする請求項1のCLBO結晶による和周波光の発生方法。 - 前記結晶の温度は、位相整合する角度がほぼ90度となる温度である
ことを特徴とする請求項1のCLBO結晶による和周波光の発生方法。
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