JP4299995B2 - 沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力発電プラント等に適用される沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
沸騰水型原子炉においては、原子炉圧力容器に装荷した核燃料内で発生するウランの核分裂の量を制御し、かつ核分裂によって発生した熱を有効に除去するため、冷却材である水を強制的に循環させる方式を採用している。沸騰水型原子炉の場合、冷却材の循環量(=炉心流量)が多ければ多いほどウランの核分裂は促進されて原子炉の出力が増加し、逆に、冷却材の循環量が少なければ少ないほどウランの核分裂の数が減少して原子炉出力は低下する。
【0003】
このように、炉心流量によって原子炉出力が決定される理由は、炉心流量が多いと原子炉の気泡(ボイト)の量が少なくなり、気泡の量が少なくなるとウランの核分裂によって生成される中性子が減速されやすくなり、中性子が減速されていわゆる比較的速度の遅い熱中性子が多く生成され、次のウランの核分裂が促進されて原子炉出力が増加するためである。炉心流量が少ない場合にはこれとは逆の過程をたどって原子炉出力は低下する。
【0004】
また、上述したように、炉心流量は原子炉出力を制御するとともに、核分裂で発生した熱を核燃料から除去するものであるため、これが原子炉で発生する出力に見合う量に満たない場合には、核燃料表面で冷却不全に至る可能性がある。このように、沸騰水型原子炉において、炉心流量は原子炉の制御、運転、安全の観点から極めて重要な物理であり、より高い精度で計測又は計算することが要求されている。
【0005】
図6を参照して、炉心流量の計測手法について説明する。この図6は、炉心に冷却材を循環させるための再循環ポンプを原子炉圧力容器に内蔵する型式の構成を示す概略図である。
【0006】
原子炉圧力容器1の内部には、核燃料を内包する炉心2、この炉心2をその下方から上方に通過して気液混合状態となった冷却材を気相(=蒸気)と液相とに分離する気水分離器3、および冷却材を強制的に循環する再循環ポンプ4が設けられている。原子炉圧力容器1には、発生した蒸気をタービン5に導いて発電機6を駆動するための主蒸気管7が接続されており、タービン5の駆動により仕事をした蒸気は復水器8で再び液相となり、復水として給水配管9を経て再び原子炉圧力容器1に導かれる。給水配管9には給水ポンプ10が設けられ、復水を冷却材として原子炉圧力容器1に常時一定量供給するようになっている。
【0007】
次に、図6に示した型式の沸騰水型原子力炉において、従来行われている炉心流量の計測方法について説明する。
【0008】
再循環ポンプ4は、原子炉圧力容器1の内部において、冷却材を昇圧して炉心の下部より炉心2に向けて冷却材を強制的に循環させる機能を有している。通常、冷却材が単位時間内に炉心2を通過する流量の値を「炉心流量」と呼んでいる。再循環ポンプ4の前後には、冷却材の圧力差を計測する計装配管11が設けられ、この計装配管11によって再循環ポンプ4の前後間差圧が計測される。また、再循環ポンプ4にはその回転数を計測する回転計12が設けられている。
【0009】
このようにして測定された再循環ポンプ4の前後間差圧および回転数の測定値が演算手段13に導かれ、演算手段13では、この2つの信号に基づいて炉心流量の計算が行われる。すなわち、演算手段13のデータベースには、再循環ポンプ4の前後間差圧(=ポンプ揚程)と回転数、ならびに通過する流量の関係について、予め原子炉圧力容器1への据付前に工場等の試験装置において測定されたポンプ特性がデータとして格納されている。
【0010】
そして、再循環ポンプ4の前後間差圧と回転数とを実測することにより、1台の再循環ポンプ4毎に通過する冷却材の流量が求められる。通常、原子炉圧力容器1内には複数台の再循環ポンプ4が設けられているので、炉心流量は個々の再循環ポンプ4毎に上述の計算によって得られた値を合計することによって求められている。
【0011】
なお、図7は、原子炉圧力容器1の外に再循環ポンプ18とループ状の外部配管19とを有する型式の沸騰水型原子炉の構成を示している。この沸騰水型原子炉においても、上記同様の手法により、炉心流量が求められている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の沸騰水型原子炉においては、実測される再循環ポンプ前後間差圧と回転数とを予め工場で測定されたポンプ特性に基づいて求めている。このため、原子炉運転様式が変ったり、据付後の時間が経過して再循環ポンプの特性が変化し、工場等で測定した値と異なるものとなったときには、計算される炉心流量が正しい値とならない場合を想定することができる。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、再循環ポンプ特性に依存することなく、より正確に炉心流量を求めることができる沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システムを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
発明者においては、再循環ポンプ特性に代る炉心流量の計測演算要素について研究してきた結果、冷却材のエンタルピ、給水流量およびそのエンタルピ等の熱的要素を適用することにより、より正確な炉心流量を求めることができるとの着想を得た。
【0015】
すなわち、図7に示した沸騰水型原子炉において、核燃料の核分裂によって発生する熱量をQ、炉心流量をWc、炉心2の入口部における冷却材のエンタルピをHin、原子炉圧力容器1に給水配管9を介して流入する給水の流量をWfw、そのエンタルピをHfwとする。
【0016】
この沸騰水型原子炉においては、炉心2にその下部より液相の状態で流入した冷却材が炉心2で加熱され、炉心2の上部の出口では気液二相状態となる。このとき、気相(=蒸気)の包有率(重量割合)を「出口クオリティXe」と呼ぶ。二相状態となった冷却材は、気水分離器3を通過することによって気相と液相とに分離され、気相部は主蒸気管7に導かれる。また、液相部は下降流となり、原子炉圧力容器1内のダウンカマ部の領域において給水と混合され、再び再循環ポンプ4を経て炉心2に下部より流入される。
【0017】
図3は、このような原子炉圧力容器1内の冷却材の流れを示している。図3において、気水分離器3からの下降流14は大半が飽和の液相状態であるが、ごく微量の飽和蒸気を含んでいる。この飽和蒸気の包有量(重量割合)を「キャリアンダー率Xcu」と呼ぶ。
【0018】
原子炉圧力容器1からタービン5に導かれる蒸気17の量は、給水15の流量(給水流量Wfw)に等しい。したがって、気水分離器3からの下降流14の量は、炉心流量Wcから給水流量Wfwを減算した(Wc−Wfw)で表わされる。
【0019】
気水分離器下降流14は飽和状態の気相と液相とが混合した状態の流体であるため、そのエンタルピHcuは、
【数4】
で表わされる。ここで、hg,hfは原子炉圧力容器1の圧力に対した飽和状態の気相および液相のエンタルピである。
【0020】
そこで、気水分離器3からの下降流14と給水15とが混合して、炉心2にその下部から流入する炉心流16となることを考慮して、熱エネルギバランスの式をたてると、
【数5】
となる。
【0021】
これを変形して炉心流量Wcを求める方程式として表現すると
【数6】
となる。
【0022】
この式は給水流量Wfw、その給水のエンタルピHfw、炉心入口部の冷却材エンタルピ(以下、「炉心入口エンタルピ」と呼ぶ)Hin、およびキャリアンダー率Xcuの4つの物理量を知れば、炉心流量Wcを知ることができることを表わしている。ここで、エンタルピとして表現されている物理量Hfw、およびHinは、実際には温度計を用いて流体温度を測定することによって求められる。しかし、上記に示した4つの物理量のうちで、実際の沸騰水型原子力発電所において、計測装置により測定が可能な物理量は給水流量Wfw、その給水のエンタルピHfw、炉心入口エンタルピHinの3つであり、キャリアンダー率Xcuは測定することができない。
【0023】
エネルギバランス式(3)を用いて炉心流量Wcを求める場合、その精度を正しく把握しておく必要があるが、この評価には沸騰水型原子力発電所において実際に測定される物理量Wfw、Hfw、Hinの計測精度、および設計上想定するキャリアンダー率Xcuの不確かさを考慮して評価することとなる。
【0024】
現在、我が国において営業運転を行っている沸騰水型原子力発電所の代表的な値を用いて評価すると、給水流量WfwおよびそのエンタルピHfwの計測精度が炉心流量Wcの計算値の不確かさに与える影響は小さく、その不確かさの大半は、炉心入口エンタルピHinの計測精度と、仮定するキャリアンダー率Xcuの不確かさに支配されている。例えば、炉心流量Wcの計算値の不確かさに対して炉心入口エンタルピHinの計測精度が起因している割合は40〜50%、キャリアンダー率Xcuの不確かさが起因している割合もまた40〜50%程度と大きく、残りの10%程度が給水流量WfwおよびそのエンタルピHfwの計測精度に起因している。
【0025】
炉心入口エンタルピHinの計測精度を改善する代表的な方策としては、炉心入口部に多数の温度計を設けることが挙げられる。
【0026】
炉心入口エンタルピHinを精度良く求めるために、その配管内部に温度計を内蔵した局所出力モニタ(LPRM)を複数台用意し、その計測値の平均値を用いることで、炉心入口エンタルピHinの計測精度を改善することができる。温度計の設置位置としては、原子炉圧力容器内のガンマ線や中性子束分布を考慮して、その影響を受けない位置に設置することが望ましい。
【0027】
一方、キャリアンダー率Xcuについては、気水分離器3の気相と液相の分離メカニズムが複雑であるために、従来の沸騰水型原子力発電所の設計においては一定値を仮定し、精度評価が必要な場合には例えば±100%という大きな不確かさを仮定していた。
【0028】
しかるに、エネルギバランス式(3)を用いて炉心流量Wcを求める場合にはキャリアンダー率Xcuをより精度よく知ることが重要であることがわかる。この目的を達成するためには、気水分離器3における気相と液相との分離のメカニズムを明確にする必要があるが、現実的には定量的に評価することが非常に困難であるため、本発明においては実際に運転されている沸騰水型原子力発電所の運転実績からこれを求める方策を提供する。
【0029】
気水分離器下降流のエンタルピを示す式(1)とエネルギバランス式(3)を用いてキャリアンダー率Xcuについて整理すると
【数7】
のように表わすことができる。
【0030】
なお、図7に示したように、原子炉圧力容器1の外に再循環ポンプ18とループ状の外部配管19とを有する型式の沸騰水型原子炉においては、炉心流量Wcの値を比較的精度よく求めることができるので、式(4)を用いてキャリアンダー率Xcuを計算することが理論的に可能である。
【0031】
ところで、前述したように、出口クオリティXeは、炉心流量Wcと給水流量Wfwとの比率
【数8】
により近似することができる。キャリアンダー率Xcuは気水分離器下降流14に包まれる蒸気の重量割合であるので、出口クオリティXeと強い相関をもっているものと考えられる。また、出口クオリティXeが同じであっても冷却材の流速の大小、すなわち炉心流量Wcにも相関を持つことが予想される。
【0032】
したがって、キャリアンダー率Xcuは
【数9】
のように表わすことができるものと考えられる。ここで、f(Wc)は炉心流量Wcの関数であることを示し、g(Xe)は出口クオリティXeの関数であることを示す。
【0033】
実際、営業運転中の沸騰水型原子力発電所の運転実績を用いてキャリアンダー率XcuとクオリティXeとの関係、およびキャリアンダー率Xcuと炉心流量Wcとの関係を求めてみると、それぞれ図4および図5に示すような相関を見ることができる。
【0034】
すなわち、図4は炉心流量Wcが一定の条件のもとでキャリアンダー率Xcuと出口クオリティXeの関係の一例を示すグラフである。この図4に示すように、出口クオリティXeの増加によってキャリアンダー率Xcuは増加する傾向がある。
【0035】
また、図5は、出口クオリティXeが一定の条件のもとでキャリアンダー率Xcuと炉心流量Wcの関係の一例を示すグラフである。この図5に示すように、炉心流量Wcの増加によってキャリアンダー率Xcuは減少する傾向がある。
【0036】
相関式(5)はいわゆる相関式であり、多くの沸騰水型原子力発電所のこれまでの運転実績をもとに作成する。相関式(5)の具体的な表式としては、例えばa,b,c…fを定数として、
【数10】
のように炉心流量Wcおよび出口クオリティXeの多項式の積として表わす方法などが考えられる。ここでは簡単化のため、2次式で表わされるとした場合の表式の例を示しているが、他にこれらの関係をよく表示するものがあれば式(6)にこだわらない。
【0037】
また、式(5)に代えて、炉心流量WcやクオリティXeの他に、原子炉水位Lnを加え、
【数11】
のように表わすことも可能である。ここで、定数a,b,c…fは式(4)を用いて計算したキャリアンダー率Xcuと相関式(6)の値の偏差が極小となるように、最小2乗法等を用いて計算することが可能である。
【0038】
以上の知見に基づき、発明者においては、炉心流量Wcの計算精度を改善するために相関式(5)を用いてキャリアンダー率Xcuを求めることに想到した。この際、式(5)の独立変数は、式(3)の結果である炉心流量Wcおよびこの炉心流量Wfcと給水流量Wfwとを用いて計算される出口クオリティXeであるため、単純に炉心流量Wcを求めることは困難である。
【0039】
そこで、計算の初めにキャリアンダー率Xcuを1つ仮定してエネルギバランス式(3)により炉心流量Wcを求め、その値と、給水流量Wfwとにより計算される出口クオリティXeを式(5)に適用してキャリアンダー率X´cuを求め、その値と初めに仮定したXcuとの差が大きいときは、再び同様の計算を行う。このような計算を繰返して実行し、キャリアンダー率について初めの仮定値Xcuと相関式(5)による算値X´cuとの差が充分小さくなったとき、その際の炉心流量Wcとキャリアンダー率Xcuとはエネルギバランス式(3)と式(5)とを同時に満足する値となる。そこで、この値を用いることにより、キャリアンダー率Xcuの不確かさを低減し、その結果、炉心流量Wcの計算値の精度を大きく改善することができる。
【0040】
本発明は以上の知見の結果なされたものであり、原子炉圧力容器への給水流量、この給水のエンタルピおよび前記原子炉圧力容器の炉心入口の冷却材エンタルピを計測するステップと、前記原子炉圧力容器内の気水分離器からの冷却材下降流に含まれる蒸気割合としてのキャリアンダー率を仮定するステップと、これら各計測値と仮定値とを演算手段に入力するステップと、これらの入力値を演算要素として炉心出入口におけるエネルギバランス式を用いて炉心流量を演算するステップと、この演算によって求められた炉心流量と前記給水流量とに基づいて炉心出口の気液二層に含まれる蒸気割合としての出口クオリティを演算するステップと、この演算によって求められた出口クオリティと前記炉心流量とに基づいて、これら両者の関数として示される前記キャリアンダー率についての相関式からキャリアンダー率を演算するステップと、この演算により求められたキャリアンダー率と前記仮定されたキャリアンダー率とを比較して両者の差が一定値以下であるか否かを判断するステップと、これら両キャリアンダー率の差が一定値以下でない場合にはその差を縮小する方向で新たにキャリアンダー率を仮定して再入力を行うステップとを備え、前記差が一定値以下となるまで前記演算を繰り返し、その差が一定値以下となった場合のキャリアンダー率を採用して前記炉心流量を求めることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システムを提供する。
【0041】
このような本発明のシステムによれば、炉心流量を求めるためのキャリアンダー率が、炉心出入口におけるエネルギバランス式と、出口クオリティの関数および炉心流量の関数として示される相関式とを同時に満足する値となるため、キャリアンダー率Xcuの不確かさを5〜10分の1に低減することが可能であり、結果として炉心流量Wcの計算値の精度を大きく改善することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0043】
図1は本発明の一実施形態によるシステムを実行するための処理手順を示すフローチャートであり、図2は演算要素および演算種類等の関係を示す系統図である。なお、本実施形態において適用する沸騰水型原子炉の構成については、図6および図7および前述した説明をそのまま参照する。また、作用の説明については、図3〜図5を参照する。
【0044】
まず、図1および図2を参照して、図6に示した原子炉圧力容器1に再循環ポンプ4を内蔵する型式の沸騰水型原子炉に本発明のシステムを適用する場合について説明する。
【0045】
図1および図2に示すように、本実施形態のシステムにおいては、運転する沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器1内に設置される計測器により、給水流量Wfwと、その給水のエンタルピHfwと、炉心入口エンタルピHinとを測定する(ステップS101)。この計測器としては、炉心入口エンタルピHinを精度良く求めるために、その配管内部に温度計を内蔵した複数の局所出力モニタ(LPRM)を適用する。この複数の局所出力モニタ(LPRM)に内蔵した温度計の計測値の平均値を用いることにより、炉心入口エンタルピHinの計測精度を改善することができる。温度計の設置位置としては、原子炉圧力容器1内のガンマ線や中性子束分布を考慮して、その影響を受けない位置を設定する。
【0046】
また、原子炉圧力容器1内の気水分離器3からの冷却材下降流14に含まれる蒸気割合としてのキャリアンダー率Xcuを1つ仮定する(ステップS102)。
【0047】
そして、これらの各計測値Wfw,Hfw,Hiおよび仮定値Xcuを演算手段に入力し(ステップS103)、これらの入力値を演算要素として、まず炉心出入口におけるエネルギバランス式を用いて炉心流量Wcの演算を行う(ステップS104)。
【0048】
ここで、エネルギバランス式としては、図2に示すように、例えば上述した(3)式を適用する。即ち、炉心流量をWc、給水流量をWfw、その給水のエンタルピをHfw、炉心入口部の冷却材エンタルピをHinとしたとき、
【数12】
で示される方程式とする。
【0049】
これにより、高精度の給水流量Wfw、その給水のエンタルピHfwおよび炉心入口エンタルピHinと、仮定による不確かさを含むキャリアンダー率Xcuとに基づく炉心流量をWcが一旦求められる。
【0050】
次に、この演算によって求められた炉心流量Wcと給水流量Wfwとに基づいて、炉心出口の気液二層流に含まれる蒸気割合としての出口クオリティXeの演算を行う(ステップ105)。出口クオリティXeは、炉心流量Wcと給水流量Wfwとの比率に関する上述した式、すなわち
【数13】
により近似値として求める。
【0051】
次に、この演算によって求められた出口クオリティXeと、ステップS104で求められた炉心流量Wcとに基づいて、これら両者の関数として示される相関式からキャリアンダー率X’cuの演算を行う(ステップS106)。この相関式としては、図2に示すように、上述した(5)式を適用する。
【0052】
即ち、キャリアンダー率をX’cu、炉心流量の関数をf(Wc)、出口クオリティの関数をg(Xe)としたとき、
【数14】
で示される式を適用する。
【0053】
なお、この演算においては、図4に示した特性、即ち、出口クオリティXeの増加によってキャリアンダー率Xcuが増加する傾向、また図5に示した炉心流量Wcの増加によってキャリアンダー率Xcuが減少する傾向を参照する。
【0054】
そして、以上の演算によって求められたキャリアンダー率X’cuと、最初に仮定されたキャリアンダー率Xcuとを比較し、両者の差が一定値以下であるか否かを判断する(ステップS107)。
【0055】
これら両キャリアンダー率Xcu、X’cuの差が一定値以下でない場合(NO)、即ち差が大きいときには、その差を縮小する方向に新たにキャリアンダー率を仮定して再入力を行う(ステップS108)。
【0056】
このステップS108においては、下記(1),(2)の仮定をして、XcuとX´cuの差が充分小さくなるまで再び同様の計算を繰り返す。
【0057】
(1)Xcu>X´cuならば、Xcuより小さくX´cuより大きい値。
(2)Xcu<X´cuならば、Xcuより大きくX´cuより小さい値。
【0058】
このような計算を繰返し実行して、仮定したキャリアンダー率の値Xcuと相関式((5)式)により計算したキャリアンダー率の値X´cuとの差が充分小さくなったとき、その際の炉心流量Wcとキャリアンダー率Xcuとはエネルギバランス式((3)式と(5)式))とを同時に満足する値となる。
【0059】
このように、両キャリアンダー率Xcu、X’cuの差が一定値以下となるまでステップS104〜S108の演算を繰り返し、その差が一定値以下となった場合のキャリアンダー率を採用して前記炉心流量を決定する(S109)。
【0060】
以上の本実施形態による沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システムによれば、給水流量Wfw、およびそのエンタルピHfw、炉心入口エンタルピHinを計測器を用いて測定し、これらの3つの物理量と予め1つ仮定するキャリアンダー率Xcuから出発してエネルギバランス式を適用した繰返し演算を行い、炉心流量Wcを計算することによって、最終的に炉心流量Wcの値を精度よく知ることができる。
【0061】
すなわち、原子炉圧力容器1内に再循環ポンプ4を内蔵した方式を用いる沸騰水型原子炉において、給水流量WfwやそのエンタルピHfw、炉心入口エンタルピHin等を用いて炉心流量Wcを求める従来の手法では、その計算値に大きな影響を与えるキャリアンダー率Xcuが一定の計測値と大きな不確かさを想定していたのに対し、本発明による計算手法を用いた場合には、キャリアンダー率Xcuの不確かさを従来に比して5〜10分の1に低減することが可能であり、その結果、炉心流量Wcの計算値の精度を大きく改善することができる。
【0062】
なお、図7に示したように、原子炉圧力容器1の外に再循環ポンプ18とループ状の外部配管19を有する方式を用いている沸騰水型原子炉においても、前記同様のステップS101〜S109を適用して炉心流量Wcを求めることができる。
【0063】
ただし、このような原子炉圧力容器1の外に再循環ポンプ18とループ状の外部配管19とを有する型式の沸騰水型原子炉においては、炉心流量Wcの値を比較的精度よく求めることができるので、前述した式(4)を用いてキャリアンダー率Xcuを計算することが可能である。この場合においては、式(4)によるキャリアンダー率Xcuの計算値を、式(5)で表わされるように、炉心流量Wcと出口クオリティXeとの近似式からなる相関式として作成し、この式にエネルギバランス式(3)で求めた炉心流量Wcをあてはめて、キャリアンダー率X´cuを求めるようにする。
【0064】
即ち、この場合にキャリアンダー率Xcuを求める相関式は、炉心流量をWc、前記給水流量をWfw、その給水のエンタルピをHfw、前記給水分離器からの下降流のエンタルピをhfgとしたとき、
【数15】
で示される方程式とする。
【0065】
そして、ステップS107およびS108において、前記同様に、下記(1),(2)の仮定をして、XcuとX´cuの差が充分小さくなるまで再び同様の計算を繰り返す。
【0066】
(1)Xcu>X´cuならば、Xcuより小さくX´cuより大きい値。
(2)Xcu<X´cuならば、Xcuより大きくX´cuより小さい値。
【0067】
このような計算を繰返し実行して、仮定したキャリアンダー率の値Xcuと相関式((5)式)により計算したキャリアンダー率の値X´cuとの差が充分小さくなったとき、その際の炉心流量Wcとキャリアンダー率Xcuとはエネルギバランス式((3)式と(5)式))とを同時に満足する値となる。
【0068】
このように、両キャリアンダー率Xcu、X’cuの差が一定値以下となるまでステップS104〜S108の演算を繰り返し、その差が一定値以下となった場合のキャリアンダー率を採用して、前記図6に示した再循環ポンプ内蔵型の場合と同様に、炉心流量を決定する(S109)。
【0069】
このような計測演算システムによっても、給水流量Wfw、およびそのエンタルピHfw、炉心入口エンタルピHinを計測器を用いて測定し、これらの3つの物理量と、予め1つ仮定するキャリアンダー率Xcuとをエネルギバランス式に適用して炉心流量Wcを計算することにより、炉心流量Wcの値を精度よく知ることができる。即ち、原子炉圧力容器1の外に再循環ポンプ18とループ状の外部配管19とを有する型式の沸騰水型原子炉においても、キャリアンダー率Xcuの不確かさを5〜10分の1に低減し、炉心流量Wcの計算値の精度を大きく改善することができる。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、沸騰水型原子炉の炉心流量の計測演算値を、再循環ポンプ特性に依存する必要なく、より高い精度で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システムの処理手順を示すフローチャート。
【図2】本発明の一実施形態による沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システムの演算要素および演算種類等を示す系統図。
【図3】沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内における冷却材の流れ様式を示す説明図。
【図4】出口クオリティとキャリアンダー率の相関データの一例を示すグラフ。
【図5】炉心流量とキャリアンダー率の相関データの一例を示すグラフ。
【図6】原子炉圧力容器に再循環ポンプを内蔵する型式の沸騰水型原子炉の構成図。
【図7】原子炉圧力容器の外に再循環ポンプと外部配管を有する型式の沸騰水型原子炉の構成図。
【符号の説明】
1 原子炉圧力容器
2 炉心
3 気水分離器
4 再循環ポンプ
5 タービン
6 発電機
7 主蒸気管
8 復水器
9 給水配管
10 給水ポンプ
11 再循環ポンプ前後間差圧計測配管
12 再循環ポンプ回転計
13 炉心流量演算手段
14 気水分離器下降流の流れ
15 給水の流れ
16 炉心入口部の冷却材の流れ
17 主蒸気の流れ
18 再循環ポンプ
19 外部配管
Claims (5)
- 原子炉圧力容器への給水流量、この給水のエンタルピおよび前記原子炉圧力容器の炉心入口の冷却材エンタルピを計測するステップと、前記原子炉圧力容器内の気水分離器からの冷却材下降流に含まれる蒸気割合としてのキャリアンダー率を仮定するステップと、これら各計測値と仮定値とを演算手段に入力するステップと、これらの入力値を演算要素として炉心出入口におけるエネルギバランス式を用いて炉心流量を演算するステップと、この演算によって求められた炉心流量と前記給水流量とに基づいて炉心出口の気液二層に含まれる蒸気割合としての出口クオリティを演算するステップと、この演算によって求められた出口クオリティと前記炉心流量とに基づいて、これら両者の関数として示される前記キャリアンダー率についての相関式からキャリアンダー率を演算するステップと、この演算により求められたキャリアンダー率と前記仮定されたキャリアンダー率とを比較して両者の差が一定値以下であるか否かを判断するステップと、これら両キャリアンダー率の差が一定値以下でない場合にはその差を縮小する方向で新たにキャリアンダー率を仮定して再入力を行うステップとを備え、前記差が一定値以下となるまで前記演算を繰り返し、その差が一定値以下となった場合のキャリアンダー率を採用して前記炉心流量を求めることを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システム。
- 前記沸騰水型原子炉が原子炉圧力容器に再循環ポンプを内蔵する型式のものであり、前記炉心入口部の冷却材エンタルピを求めるための計測器として、複数台の局所出力モニタの配管に内蔵した温度計を適用する請求項1記載の沸騰水型原子炉の炉心流量計測演算システム。
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