JP4299758B2 - 耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトおよびその耐遅れ破壊特性向上方法 - Google Patents
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Description
高強度鋼の耐遅れ破壊特性を向上させる技術として、例えば、特許文献1にはP、S含有量を低減することが有効であり、また、特許文献2にはSi、Mn含有量を規制するとともに焼入れ処理後、焼戻し工程中で曲げ加工または引き抜き加工を施す方法が開示されている。更に、特許文献3〜6には、合金元素や熱処理時に析出する炭化物に着目した耐遅れ破壊特性向上技術が開示されている。更に、特許文献7、8には、パーライト鋼を伸線加工により強化したボルトが開示されている。これらの技術によって、高強度ボルトの耐遅れ破壊特性は、ある程度向上するものの、抜本的な解決には至っていなかった。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであって、その要旨とするところは、次の通りである。
(1)質量%で、C:0.65〜1.1%、Si:0.05〜2%、Mn:0.2〜2%、Al:0.002〜0.1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ、引張強さが1500MPa以上の鋼材で構成された高強度ボルトであって、前記ボルトの首下部表層の圧縮残留応力が前記鋼材の引張強さの20〜90%であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト。
(2)さらに、質量%で、Cr:0.1〜2%、Mo:0.05〜3%、V:0.05〜1%、Ti:0.002〜0.5%、Nb:0.002〜0.5%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト。
(3)(1)または(2)に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を900℃以上に加熱し、熱間でボルト成形した後、焼入れ処理および500〜700℃で焼戻し処理を行った後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
(4)(1)または(2)に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を用いてボルト成形した後、焼入れ温度:900℃以上、焼戻し温度:500〜700℃の条件で熱処理を行い、その後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
(5)(1)または(2)に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を熱間圧延後、30℃/s以上で550〜700℃の温度範囲に冷却し、前記温度範囲に30〜300s保持しパーライト変態させた後、真歪みが0.15〜1.0の範囲で伸線加工を行い、次いで冷間でボルト成形し、その後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
(6)(1)または(2)に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を熱間圧延後、900℃以上に再加熱し、30℃/s以上で550〜700℃の温度範囲に冷却し、前記温度範囲に30〜300s保持しパーライト変態させた後、真歪みが0.15〜1.0の範囲で伸線加工を行い、次いで冷間でボルト成形し、その後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
(7)前記ボルトを成形後、200〜600℃の温度範囲に加熱し冷却した後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする(5)または(6)に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
(8)前記ボルトを成形後、該ボルトに引張強さの20〜95%の張力を負荷しながら200〜600℃の温度範囲に加熱し冷却した後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする(5)または(6)に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
まず、本発明の対象とする鋼の成分の限定理由について述べる。
Cはボルトの強度を確保する上で必須の元素であるが、0.65%未満では所要の強度を得ることが困難であり、一方1.1%を越えるとボルト成形性の低下あるいは耐遅れ破壊特性が低下しやすくなるため、0.65〜1.1%の範囲に制限した。
Siは、リラクゼーション特性を向上させるとともに固溶体硬化作用によって強度を高める作用がある。0.05%未満では前記作用が発揮できず、一方、2%を超えても添加量に見合う効果が期待できないため、0.05〜2%の範囲に制限した。
Mnは、脱酸、脱硫のために必要であるばかりでなく、焼入性を高めるために有効な元素であるが、0.2%未満では上記の効果が得られず、一方2%を越えて添加しても添加量に見合う効果が得られないため、0.2〜2%の範囲に制限した。
Alは、脱酸および熱処理時においてAlNを形成することによりオーステナイト粒の粗大化を防止する効果がある。0.002%未満では上記の効果が発揮されず、0.1%を越えても効果が飽和するため0.002〜0.1%の範囲に限定した。
Crは、パーライト組織の場合はパテンティング処理時のラメラ微細化強化のためにパテンティング処理後の強度を高め、また、マルテンサイト組織の場合は焼戻し軟化抵抗を高める作用がある。Crが0.1%未満ではその効果が十分に発揮できず、一方2%を超えて添加しても効果が飽和するため、0.1〜2%の範囲に限定した。
Mo、V、Ti、Nbはいずれもパテンティング処理時あるいは焼戻し処理時に微細な合金炭化物として析出し、ボルトの高強度化に対して極めて有効な元素である。また、合金炭化物は水素をトラップさせる効果もあるため、耐遅れ破壊特性を向上させる作用も有している。Moが0.05%未満、Vが0.05%未満、Tiが0.002%未満、Nbが0.002%未満では上記の効果が十分に発揮できず、一方、それぞれMoが3%、Vが1%、Tiが0.5%、Nbが0.5%を超えて添加しても上記効果が飽和するため、Moは0.05〜3%、Vは0.05〜1%、Tiは0.002〜0.5%、Nbは0.002〜0.5%の範囲に限定した。
P、Sについては特に制限しないものの、高強度ボルトの耐遅れ破壊特性を向上させる観点から、それぞれ0.015%以下が好ましい範囲である。また、NはAl、V、Nb、Tiの炭窒化物を生成することによりオーステナイト粒の細粒化効果があるが、0.015%を越えると延性が低下するため、0.002〜0.015%が好ましい範囲である。
本発明の高強度ボルトにおいて、焼入れ・焼戻し処理によって所定の強度を得る場合は、焼戻しマルテンサイトが主体の組織である。その他の組織として、フェライト、ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上を面積率で10%以下を含有しても良い。また、パテンティング処理によってパーライト組織にした後、伸線加工およびボルト成形工程で所定の強度を得る場合は、加工パーライト組織が主体の組織である。その他の組織として、フェライト、ベイナイトの1種又は2種を面積率で15%以下を含有しても良い。これらの組織の面積率は、2mm2以上の視野を光学顕微鏡(500倍)で観察することによって測定できる。
まず、焼入れ・焼戻し処理によって所定のボルト強度を得る場合の限定理由を説明する。熱間でボルト成形する場合は、鋼材を900℃以上に加熱する必要がある。900℃未満では、未溶解の炭化物や合金炭化物が多すぎて、析出強化能が低下するためである。上限は特に限定しないものの、1100℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化して耐遅れ破壊特性が低下するため、好ましい加熱温度の上限は1100℃である。なお、熱間でのボルト成形後は、水冷または油冷による焼入れ処理を行い、マルテンサイト組織にするものである。また、冷間でボルト成形した後、焼入れ処理を行う場合は、焼入れ処理の加熱温度が900℃未満では、未溶解の炭化物や合金炭化物が多すぎて、析出強化能が低下するため、焼入れ温度の下限を900℃に限定した。上限は特に限定しないものの、上記と同様に1100℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化して耐遅れ破壊特性が低下するため、好ましい加熱温度の上限は1100℃である。焼入れは水冷または油冷を行い、マルテンサイト組織にするものである。焼戻し処理温度は、熱間でのボルト成形、冷間でのボルト成形のいずれにおいても、500〜700℃に限定した。焼戻し温度が500℃未満ではボルトの耐遅れ破壊特性が劣化し、また、合金炭化物の析出が不十分なため、合金炭化物による析出強化と耐遅れ破壊特性の向上が期待できない。一方、焼戻し温度が700℃を超えると強度低下や合金炭化物の粗大化が起き、合金炭化物の析出強化能と水素トラップ能が低下する。以上の理由で、焼戻し温度範囲を500〜700℃に制限した。
熱間圧延後または熱間圧延後に再加熱した後、パーライト変態させる温度範囲までは急冷することが必要である。冷却速度は、30℃/s未満では、冷却途中にパーライト変態が生じ、パーライト変態後の引張強さが低下するため、30℃/sを下限とした。好ましい冷却速度は、50℃/s以上である。冷却速度の上限は規定しないが、500℃/sを超えることは技術的に困難である。
550〜700℃の温度範囲で、パーライト変態が終了するまで保持することが必要である。これは、パーライト変態途中で冷却を開始すると、耐遅れ破壊特性に対して有害なベイナイトあるいはマルテンサイトが発生するためである。550〜700℃の温度範囲での保持時間は、化学成分の含有量によって異なるが、本発明の成分範囲では、30〜300sである。
本発明において、熱間圧延後または再加熱後、550〜700℃のソルト浴又は鉛浴に浸漬することにより、パーライト変態させることができる。また、熱間圧延後、再加熱する場合には、再加熱温度が900℃未満では、溶体化が不十分であり、未溶解炭化物が残存しやすくなるため、下限温度を900℃に限定した。上限は特に限定しないが、1100℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化し、伸線加工後の延性低下が起きるため、好ましい再加熱温度の上限は1100℃である。
伸線後およびボルト成形後の熱処理は、耐遅れ破壊特性の向上を目的に行うものである。加熱温度が200℃未満では、上記向上効果が少なく、一方、600℃を超えると強度低下が著しいため、加熱温度範囲を200〜600℃に制限した。加熱時間は、加熱炉の方法によって変化するため特に限定しないが、上記効果を十分に発揮するために10〜600sが好ましい範囲である。
また、伸線後の鋼材又は成形後のボルトに張力を負荷しつつ加熱処理を行うことによって、耐遅れ破壊特性が一層向上する。この場合、張力の下限が、引張強さの20%未満では、耐遅れ破壊特性の向上効果が少なく、一方、95%を超えて張力を負荷しても効果が飽和するため、20〜95%の範囲に限定した。
図1において、1は首下部、2は超音波振動端子を示す。
図1に示すように、焼入れ・焼戻し処理を行った高強度ボルトの首下部1に超音波振動端子2を押付けて、図1の矢印の方向に超音波打撃処理を施して、高強度ボルトの首下部1の表層に前記ボルトを構成する鋼材の引張強さの20〜90%の高圧縮残留応力を付与することによって、高強度ボルトの耐遅れ破壊特性を著しく向上させることができる。
本発明は、前述のようにボルト成形し、必要な処理を行った後、ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする。
超音波振動子の硬度がボルトの硬度の1.2倍未満では、超音波打撃処理によるボルト首下部への圧縮残留応力を効率的に付与することが困難であるため、ボルトに対する超音波振動子の硬度比を1.2以上に限定した。なお、超音波振動子の先端の曲率半径は特に限定しないものの、ボルト首下部の曲率半径(首下部丸み)よりも大きい場合は効率的に圧縮残留応力を付与することが出来ないため、超音波振動子の先端半径は首下部の曲率半径と同等以下にすることが好ましい条件である。超音波振動子の振動数が10kHz未満では、効率的に圧縮残留応力を付与することができないため、下限を10kHzに限定した。一方、60kHzを超える振動数で超音波打撃処理を行っても圧縮残留応力の導入効果が飽和するため、振動数の上限を60kHzに制限した。振動数の好ましい範囲は、20〜40kHzである。超音波の出力が500W未満では、所定の圧縮残留応力を付与させるための超音波打撃処理時間が長くなり経済的でないため、下限を500Wに限定した。超音波出力が5000Wを超えても効果が飽和するため、5000Wを上限にした。超音波振動子のボルト首下部への押し付け力が10N未満では、効率的に圧縮残留応力を付与することができず経済的でないため、下限を10Nに制限した。一方、押し付け力が1000Nを超えて超音波打撃処理を行っても効果が飽和するため、上限を1000Nに制限した。
1)超音波打撃処理による圧縮残留応力はショットピーニングよりも高い
2)超音波打撃処理による圧縮残留応力はショットピーニングよりも鋼材内部まで付与されている
3)超音波打撃処理の部位は塑性変形されており、耐遅れ破壊特性が向上する
4)超音波打撃処理による表面粗さがショットピーニングよりも小さい
ことに起因すると推定される。
表1に示す化学成分の鋼材を用いて、図1に示す形状のM6の六角ボルトを冷間または熱間で成形した。熱間でボルト成形した場合は、ボルト成形後に直ちに焼入れ処理を行い、その後焼戻し処理を行った。冷間でボルト成形を行った場合は、その後、焼入れ・焼戻し処理を行った。ミクロ組織は、いずれも焼戻しマルテンサイトが面積率で95〜100%であり、残部はフェライト、ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上であった。焼入れ・焼戻し処理後に、ボルトに超音波打撃処理を施した。ボルトの熱処理条件、超音波打撃処理条件を表2に示す。また、ボルトの引張強さ、首下部の残留応力を表2に併せて示す。遅れ破壊試験は、同一の条件で製造したボルトをそれぞれ100本の大気暴露試験を行い、遅れ破壊の破断比率(%)で評価した。なお、大気暴露試験におけるボルトの締め付け荷重はボルト破断荷重の90%であり、大気暴露期間は2年間で評価した。大気暴露試験の破断比率(%)も表2に示した。表2の試験No.1〜19が本発明例で、試験No.20〜39が比較例である。同表に見られるように本発明例は、いずれもボルトの引張強さが1500MPa以上であるとともにボルト首下部に高い圧縮残留応力が導入されている。この結果、遅れ破壊の破断比率が全て0%であり、耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトが実現されている。
比較例であるNo.22、24、26、28、34、36、37、39は、いずれも超音波打撃処理の条件が不適切な例である。即ち、No.22はボルトに対する超音波振動子の硬度比が低いために、No.24は超音波振動子の振動数が低いために、No.28は超音波振動子のボルト首下部への押し付け力が低すぎるために、No.28は超音波出力が低すぎるために、No.34は超音波振動子の振動数と押し付け力が低すぎるために、No.36はボルトに対する超音波振動子の硬度比及び押し付け力が低すぎるために、No.37は超音波振動子の振動数と超音波出力が低すぎるために、No.39はボルトに対する超音波振動子の硬度比及び超音波出力が低すぎるために、いずれもボルト首下部の残留応力が高い圧縮残留応力状態になっていない。この結果、暴露試験で遅れ破壊の破断比率が高く、遅れ破壊を防止できなかった例である。
比較例であるNo.20、31は、いずれも焼戻し処理の熱処理条件が不適切な例である。No.20は焼戻し温度が低すぎるために遅れ破壊試験で遅れ破壊が発生した例である。No.31は、焼戻し温度が高すぎるために目的とするボルトの高強度化が実現できなかった例である。
比較例であるNo.32は、ボルトのC含有量が高すぎるために耐遅れ破壊特性が劣化し、遅れ破壊試験で遅れ破壊が発生した例である。
比較例である表3のNo.22、24〜26、29、36、38は、いずれも超音波打撃処理の条件が不適切な例である。即ち、No.22はボルトに対する超音波振動子の硬度比が低いために、No.24は超音波振動子の振動数が低いために、No.25は超音波振動子のボルト首下部への押し付け力が低すぎるために、No.26は超音波出力が低すぎるために、No.29はボルトに対する超音波振動子の硬度比び超音波出力が低すぎるために、No.36はボルトに対する超音波振動子の硬度比及び押し付け力が低すぎるために、No.38は超音波振動子の振動数と超音波出力が低すぎるために、いずれもボルト首下部の残留応力が高い圧縮残留応力状態になっていない。この結果、暴露試験で遅れ破壊の破断比率が高く、遅れ破壊を防止できなかった例である。
比較例である表3のNo.27、37、41は、いずれも従来のショットピーニング処理で首下部の残留応力を圧縮残留応力に変化させた例である。ショットピーニング処理では首下部に効率的に高い圧縮残留応力を付与することが困難であるため、大気暴露試験で遅れ破壊が発生した例である。
比較例である表3のNo.32、33は、いずれも伸線加工歪みが不適切な例である。No.32は、伸線加工歪みが低すぎるために、目的とするボルトの高強度化が達成できなかった例である。No.33は、伸線加工歪みが高すぎるために耐遅れ破壊特性が劣化し、遅れ破壊試験で遅れ破壊が発生した例である。
比較例である表3のNo.34は、鋼材の化学成分が不適切な例である。即ち、C含有量が高すぎるために、パーライト変態処理時に初析セメンタイトが生成し、この結果、伸線工程で断線が発生した例である。
2 超音波振動端子
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.65〜1.1%、
Si:0.05〜2%、
Mn:0.2〜2%、
Al:0.002〜0.1%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ、引張強さが1500MPa以上の鋼材で構成された高強度ボルトであって、前記ボルトの首下部表層の圧縮残留応力が前記鋼材の引張強さの20〜90%であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト。 - さらに、質量%で、
Cr:0.1〜2%、
Mo:0.05〜3%、
V :0.05〜1%、
Ti:0.002〜0.5%、
Nb:0.002〜0.5%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト。 - 請求項1または請求項2に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を900℃以上に加熱し、熱間でボルト成形した後、焼入れ処理および500〜700℃で焼戻し処理を行った後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
- 請求項1または請求項2に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を用いてボルト成形した後、焼入れ温度:900℃以上、焼戻し温度:500〜700℃の条件で熱処理を行い、その後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
- 請求項1または請求項2に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を熱間圧延後、30℃/s以上で550〜700℃の温度範囲に冷却し、前記温度範囲に30〜300s保持しパーライト変態させた後、真歪みが0.15〜1.0の範囲で伸線加工を行い、次いで冷間でボルト成形し、その後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
- 請求項1または請求項2に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法であって、前記鋼材を熱間圧延後、900℃以上に再加熱し、30℃/s以上で550〜700℃の温度範囲に冷却し、前記温度範囲に30〜300s保持しパーライト変態させた後、真歪みが0.15〜1.0の範囲で伸線加工を行い、次いで冷間でボルト成形し、その後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
- 前記ボルトを成形後、200〜600℃の温度範囲に加熱し冷却した後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
- 前記ボルトを成形後、該ボルトに引張強さの20〜95%の張力を負荷しながら200〜600℃の温度範囲に加熱し冷却した後、前記ボルトに対する超音波振動子の硬度比:1.2以上、超音波振動子の振動数:10〜60kHz、超音波の出力:500〜5000W、超音波振動子のボルト首下部への押し付け力:10〜1000Nの条件でボルト首下部に超音波打撃処理を行うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の高強度ボルトの耐遅れ破壊特性向上方法。
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