JP4298123B2 - 冷凍装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷凍装置における既設配管の利用及び信頼性向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は、例えば社団法人日本冷凍協会出版、初級標準テキスト冷凍空調技術の第95ページ図13.1に示された従来の冷凍装置の冷媒回路図を簡略化して示したものである。
同図において、1は圧縮機、2は凝縮器、3は液溜、4は膨張機構、5は蒸発器、18は気液分離器であり、これらを環状に配管接続して冷媒回路が構成されている。
【0003】
前記のような従来の冷凍装置では、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は凝縮器2によって凝縮され液冷媒となり、膨張機構4によって絞られた後、蒸発器5で蒸発し、また圧縮機1によって圧縮され吐出されるというサイクルが繰り返される。冷媒としてはハイドロクロロフルオロカーボン系冷媒(以下HCFC系冷媒と記載する)が一般的に使用されてきたが、オゾン層保護や地球温暖化などの環境問題の観点から、ハイドロフルオロカーボン系冷媒(以下HFC系冷媒と記載する)や自然冷媒への転換が必要となってきている。
【0004】
なお、液溜3は凝縮器2で液化した液冷媒を一時的に貯留するもので、冷凍装置の運転中に蒸発器5内の冷媒量が変化したようなとき、液溜3の液面の上下でこれを吸収し、円滑な運転を図っている。また、長期運転休止や冷媒配管系統の修理の場合にポンプダウン(冷凍装置内の冷媒を液溜3に回収する操作)をするので、液溜3は封入冷媒量の大半を溜めるだけの容積を有している。
【0005】
また、図5は社団法人日本冷凍協会出版、初級標準テキスト冷凍空調技術の第66ページ図10.10に示された一般的な気液分離器の構造図を簡略化して示したものである。
同図において、18aは冷媒の入口配管、18bは冷媒の出口配管、18cは冷媒を収容する円筒状の密閉容器である。
気液分離器18は、運転負荷の急激な変動などで生じる一時的な液バック(冷媒が液状のまま蒸発器5から下流側に流出すること)から圧縮機1を保護するものであって、蒸発器5と圧縮機1とを結ぶ吸入側配管の途中に取り付けられており、構造的には、密閉容器18c内に液冷媒を蓄積し、蒸気となった冷媒(ガス冷媒)のみを圧縮機1に戻すようになっている。
【0006】
気液分離器18の出口配管18bはU字形をしていて、その底部には油戻し孔18dが形成されており、冷媒と一緒に入口配管18aから流入してきた冷凍機油を、この油戻し孔18dを通じて圧縮機1に戻す構造となっている。
なお、油戻し孔18dがなければ、熱源側ユニットから冷媒と一緒に吐出された冷凍機油が圧縮機1に戻らず、気液分離器18内に溜まるので、圧縮機1では冷凍機油が枯渇し、圧縮機故障にいたる。
【0007】
ところで、前記のような冷凍装置を設置しているスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの一般的な店舗では、改装の時に図4における液留3の出口から膨張機構4の入口までの冷媒配管と、蒸発器5の出口から気液分離器18の入口までの冷媒配管は店舗の壁等の中に埋め込まれていることが多いため、冷凍装置を変更(更新)する際にも、前記冷媒配管(以下「既設配管」と称する)はそのまま使用される場合が多い。
なお、再使用される既設配管の長さは、長い場合100m以上となることもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、冷凍装置を、HCFC系冷媒を用いる冷媒サイクルからHFC系冷媒を用いる冷媒サイクルに変更する場合、HCFC系冷媒サイクルで用いていた冷凍機油及びその化合物や冷媒が前記既設配管内に残留していて、そうした残留物(以下「異物」と称する)がHFC系冷媒サイクルの冷凍機油に混入すると、圧縮機等の故障や細部の詰まりの原因となる。したがって、この場合は既設配管を洗浄なしには使用することができない。
また、前記既設配管の場合と同様に、HCFC系冷媒サイクルで用いていた既設の蒸発器5を冷媒変更後のHFC系冷媒サイクルでも使用する場合は、この蒸発器5内の配管も洗浄なしには使用することができない。
【0009】
以上のような事情から、従来、冷媒変更後も既設配管を使用する場合は、専用の洗浄機を使用して配管内を洗浄したり、所定の運転を行った後、冷媒及び冷凍機油を入れ替えることを数回繰り返して行ったりしており、また、新品の配管や蒸発器を新しく設置する場合もあったが、いずれの場合も費用や手間の嵩むことが問題であった。
【0010】
因みに、冷媒変更後、故意に液バック運転をさせることにより既設配管内を洗浄することも考えられるが、従来の冷凍装置では、次のような理由から、液バック運転による配管洗浄は不可能だった。
【0011】
すなわち、従来の冷凍装置が備えている一般的な気液分離器は図5に示したような構造を有しており、通常運転において一時的な液バックが生じた場合でも、液冷媒が油戻し孔18dから吸い込まれて圧縮機まで戻ってしまうため、液バックから完全に圧縮機を保護することはできなかった。また、気液分離器18(密閉容器18c)の容積が小さいため、連続的な液バックが生じた場合は、気液分離器18から液冷媒が溢れてしまい、この溢れた液冷媒が圧縮機に吸い込まれるため、液バックから圧縮機を保護することはできなかった。
【0012】
このような気液分離器18が設けられているため、従来の冷凍装置で液バック運転による配管洗浄を行うと、当然ながら気液分離器18から溢れた液冷媒が圧縮機に吸い込まれて故障を招いてしまうことになった。したがって、故意の液バック運転により既設配管を洗浄することはできず、前記のような手間と費用のかかる方法を採用せざるを得なかった。
【0013】
この発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、配管に残留する異物を液バック運転により洗浄・除去することができ、冷媒変更時等における既設配管の利用を容易にできる冷凍装置の提供を目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、第1の発明は、圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器、及び気液分離器を順次配管接続してなる冷媒回路を有する冷凍装置において、液バック運転時に凝縮器で液化した冷媒の蒸発を防止して液状態のまま蒸発器の下流側に流れるようにする蒸発防止手段を備え、気液分離器は、蒸発防止手段により蒸発を防止されて液状態で流入する冷媒のほぼ全量を収容可能な容積を有するとともに、この気液分離器内の上部に開口する出口配管と、底部に開口する返油配管とを備えており、さらに、液バック運転時に返油配管を閉じる操作弁と、液バック運転終了後に気液分離器内に滞留した異物を抜き出す異物抜出し手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
また、第2の発明は、圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器、及び気液分離器を順次配管接続してなる冷媒回路を有する冷凍装置において、液バック運転時に凝縮器で液化した冷媒の蒸発を防止して液状態のまま蒸発器の下流側に流れるようにする蒸発防止手段と、気液分離器と並列に冷媒回路に接続される補助気液分離器と、液バック運転時に前記補助気液分離器を冷媒回路に選択的に連通させる切換手段とを備え、補助気液分離器は、蒸発防止手段により蒸発を防止されて液状態で流入する冷媒のほぼ全量を収容可能な容積を有するとともに、この補助気液分離器内の上部に開口する出口配管を備えており、さらに、液バック運転終了後に補助気液分離器内に滞留した異物を抜き出す異物抜出し手段を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
また、第3の発明は、圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器、及び気液分離器を順次配管接続してなる冷媒回路を有する冷凍装置において、液バック運転時に凝縮器で液化した冷媒の蒸発を防止して液状態のまま蒸発器の下流側に流れるようにする蒸発防止手段を備え、気液分離器は、蒸発防止手段により蒸発を防止されて液状態で流入する冷媒のほぼ全量を収容可能な容積を有するとともに、この気液分離器内の上部に開口する第1出口配管と、この気液分離器内の上部に開口するU字状をなし底部に油戻し孔が形成された第2出口配管とを備えており、さらに、液バック運転時に前記第1出口管を選択的に開き、前記第2出口配管を選択的に閉じる開閉手段と、液バック運転終了後に気液分離器内に滞留した異物を抜き出す異物抜出し手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る冷凍装置の冷媒回路を示している。
同図において、1は圧縮機、2は凝縮器、3は液溜、4は膨張機構(膨張弁)、5は蒸発器、6は気液分離器であり、これらが順次配管接続されて、環状の冷媒回路が構成されている。この冷媒回路では、圧縮機1から吐出されたガス冷媒が凝縮器2において凝縮し、この液冷媒が膨張機構4によって絞られた後、蒸発器5において蒸発し、このガス冷媒が圧縮機1によって圧縮され再び吐出されるというサイクルが繰り返される。
【0018】
7は液溜3と膨張機構4との間に設けられ冷媒回路を開閉する操作弁、8は蒸発器5とアキュムレータ6との間に設けられ冷媒回路を開閉する操作弁である。
また、9は冷媒回路の操作弁7の上流側と操作弁8の下流側とを連通して設けられたバイパス回路、10はバイパス回路9に設けられ当該バイパス回路9を開閉する操作弁、11は蒸発器5の送風ファン、12は気液分離器6から圧縮機1へ冷凍機油を返すための返油配管、13は返油配管12に設けられ当該返油配管12を開閉する操作弁、14は一端が気液分離器6の底部に接続された異物抜出し配管、15は異物抜出し配管14の先端部に設けられ当該異物抜出し配管14を開閉する操作弁である。
さらに、16は液溜3と膨張機構4との間の既設配管、17は蒸発器5と気液分離機6との間の既設配管を示している。
なお、この実施の形態では、操作弁7,8,10及びバイパス回路9により本発明にいう蒸発防止手段が構成されており、異物抜出し配管14及び操作弁15により本発明にいう異物抜出し手段が構成されている。
【0019】
本装置に使用する気液分離器6は、冷媒回路に封入された液冷媒の総量から予想される最大量の液バックが起こっても溢れないだけの容積(たとえば液溜3と同容積)の密閉容器を備えることを特徴としている。また、気液分離器6は入口配管6a及び出口配管6bを介して冷媒回路に接続されている。入口配管6aは従来の一般的な気液分離器のものと同様、気液分離器6(密閉容器)内の上部に開口している。一方、出口配管6bは従来のもののようにU字状に湾曲しておらず、気液分離器6の上部からガス冷媒のみを取り出せるように、気液分離器6(密閉容器)内の上部に開口している。そして、この出口配管6bには油戻し孔が設けられておらず、その代わりに気液分離器6内の底部に開口する前記返油配管12が設けられている。返油配管12の他端側は気液分離器6と圧縮機1との間の冷媒回路(圧縮機1の吸入側配管)に接続されている。
【0020】
ここで、既設配管16及び既設配管17はHCFC系冷媒回路で使用されていた配管であって、その後、冷媒をHFC系冷媒に変更(交換)するとともに、冷媒回路の各部をHFC系冷媒に対応した仕様のものに変更した際に、これら既設配管16及び既設配管17は交換せずに再使用するという場合を想定する。
こうした場合、冷媒変更後の試運転時に既設配管16,17内の洗浄を目的として液バック運転を行う際には、冷媒回路の操作弁7及び操作弁8を閉じ、バイパス回路9の操作弁10を開くことにより、冷媒が膨張機構4及び蒸発器5を通らずに、バイパス回路9を通るようにする。返油配管12に設けた操作弁13は閉じておく。この状態で圧縮機1を運転すると、吐出されたガス冷媒は凝縮器2で液冷媒となり液溜3を経て既設配管16に流入し、既設配管16に残留する異物はHFC系液冷媒によって洗浄され、液冷媒及び異物はバイパス回路9を通過し既設配管17に流入する。すると、蒸発器5での熱交換が行われていないために液冷媒が液状態のまま蒸発器5の下流側配管に流れる、いわゆる液バック運転となるため、既設配管17に残留する異物もHFC系液冷媒によって洗浄され、液冷媒及び異物は気液分離器6に流入する。
【0021】
この際、返油配管12の操作弁13が閉じられているので、気液分離器6内の液冷媒が返油配管12を通じて圧縮機1側に流出することはない。また、気液分離器6は液バックで戻ってくる液冷媒の全量を収容可能な容積を有しているため、気液分離器6内の液冷媒が出口配管6bを通じて圧縮機1側に流出することもない。さらに、当然ながら異物も圧縮機1側に流出せず、気液分離器6内に滞留する。よって、圧縮機1は保護される。
【0022】
以上のような液バック運転を冷凍装置の据え付け(冷媒変更)後に所定の時間(たとえば9時間程度)行うだけで、既設配管16及び17に残留する異物を完全に洗浄・除去することができるので、従来に比べて既設配管洗浄のための手間や費用を節減できる。また、洗浄のための液バック運転が終わった後には異物抜出し配管14の先端に設けた操作弁15を開くことにより、気液分離器6に滞留した異物を抜き出すことができる。
【0023】
そして、異物を抜き出した後は操作弁7と操作弁8を開き、操作弁10を閉じることによって冷媒が膨張機構4及び蒸発器5を通るようにするとともに、操作弁13を開き、操作弁15を閉じて、気液分離器6内の冷凍機油が返油配管12を通じて圧縮機1に戻ることができるようして、通常運転を行う。
【0024】
以上に説明したように、この実施の形態では、既設配管を利用してHCFC系冷媒からHFC系冷媒を用いた冷媒回路に変更する場合、HCFC系冷媒サイクルに由来する異物が既設の冷媒配管内に残留しないので、HFC系冷媒回路での通常運転時に圧縮機故障や細部の詰りを防ぐことができる信頼性の高い冷凍装置を提供することが可能である。
【0025】
なお、以上のようにHCFC系冷媒からHFC系冷媒を用いた冷媒回路に変更する場合に限らず、同じ冷媒系統の冷媒回路に交換する場合や自然冷媒に変更する場合でも、この実施の形態の構成を用いれば、同様の効果が得られる。
【0026】
また、既設配管16,17に加えて蒸発器5も既設のものを利用した場合であって、蒸発器5内の配管の洗浄も同時に行う場合には、操作弁7,8及びバイパス回路9の設置は不要となる。この場合は、蒸発器5の送風ファン11を任意に停止することが可能な制御装置(蒸発防止手段)を設け、送風ファン11を起動させないまま圧縮機1を運転する。
すると、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は凝縮器2によって熱交換されて液冷媒となり、膨張機構4を経て蒸発器5に流入するが、送風ファン11が停止していて蒸発器5での熱交換が行われないために、液冷媒は蒸発できず液状態のまま蒸発器5から流出する、いわゆる液バック運転となる。
こうした液バック運転を実行させることにより、既設配管16、蒸発器5、既設配管17を洗浄することが可能となる。
【0027】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る冷凍装置の冷媒回路を示しており、図1に示したものと同様の構成要素には同一記号を付し、その説明を省略する。
同図において、18は前記図5に示した一般的な構造を有する気液分離器、6Aは前記気液分離器18と並列に冷媒回路に接続された補助気液分離器、19は補助気液分離器6Aの入口側の配管を開閉する操作弁、20は補助気液分離器6Aの出口側の配管を開閉する操作弁、21は気液分離器18の入口側の配管を開閉する操作弁、22は気液分離器18の出口側の配管を開閉する操作弁である。
なお、この実施の形態では、前記操作弁19,20,21,及び22により、本発明にいう切換手段が構成されている。
【0028】
気液分離器18の構成は図5に示したとおりであって、入口配管18a及びU字状の出口配管18bを介して冷媒回路に接続されている。
一方、補助気液分離器6Aは、冷媒回路に封入された液冷媒の総量から予想される最大量の液バックが起こっても溢れないだけの容積(たとえば液溜3と同容積)の密閉容器を有し、入口配管6a及び出口配管6bを介して冷媒回路に接続されている。入口配管6aは気液分離器18の入口配管18aと同様、補助気液分離器6A(密閉容器)内の上部に開口している。出口配管6bはU字状に湾曲しておらず、油戻し孔も設けられておらず、補助気液分離器6Aの上部からガス冷媒のみを取り出せるように、補助気液分離器6A(密閉容器)内の上部に開口している。補助気液分離器6Aの底部には、先端に操作弁15を備えた異物抜出し配管14(異物抜出し手段)が接続されている。
【0029】
ここで、既設配管16及び既設配管17はHCFC系冷媒回路で使用されていた配管であって、その後、冷媒をHFC系冷媒に変更(交換)するとともに、冷媒回路の各部をHFC系冷媒に対応した仕様のものに変更した際に、これら既設配管16及び既設配管17は交換せずに再使用するという場合を想定する。
【0030】
こうした場合、冷媒変更後の試運転時に既設配管16,17内の洗浄を目的として液バック運転を行う際には、冷媒回路の操作弁7及び操作弁8を閉じ、バイパス回路9の操作弁10を開くことにより、冷媒が膨張機構4及び蒸発器5を通らずに、バイパス回路9を通るようにする。また、操作弁19,20を開き、操作弁21,22を閉じて、補助気液分離器6Aが冷媒回路と連通するようにしておく。
【0031】
この状態で圧縮機1を運転すると、既設配管16に残留する異物はHFC系液冷媒によって洗浄されバイパス回路9を通過し既設配管17に流入する。既設配管17での冷媒は熱交換が行われないため蒸発できず液冷媒のままのいわゆる液バック運転となるため、液冷媒により既設配管17に残留する異物もHFC系液冷媒によって洗浄される。
そして、液冷媒及び異物は補助気液分離器6Aに流入する。この際、補助気液分離器6Aは液バックで戻ってくる液冷媒の全量を収容可能な容積を有しているため、補助気液分離器6A内の液冷媒が出口配管6bを通じて圧縮機1側に流出することはない(ガス冷媒は流出する)。また、異物も圧縮機1側に流出せず、補助気液分離器6A内に滞留する。
【0032】
以上のような液バック運転を冷凍装置の据え付け(冷媒変更)後に所定の時間(たとえば9時間程度)行うだけで、既設配管16及び17に残留する異物を完全に洗浄・除去することができるので、従来に比べて既設配管洗浄のための手間や費用を節減できる。また、洗浄のための液バック運転が終わった後には異物抜出し配管14の先端に設けた操作弁15を開くことにより、補助気液分離器6Aに滞留した異物を抜き出すことができる。
【0033】
そして、異物を抜き出したあとは操作弁7及び操作弁8を開き、操作弁10を閉じることによって冷媒が膨張機構4及び蒸発器5を通るようにする。また、操作弁19及び操作弁20を閉じ、操作弁21及び操作弁22を開けば、冷媒回路と連通した気液分離器18に冷媒が流れるようになる。気液分離器18は出口配管18bに油戻し孔18dを備えているので、圧縮機1に冷凍機油を戻すことができるようになり、通常運転が可能となる。
【0034】
このように、既設配管を利用してHCFC系冷媒からHFC系冷媒を用いた冷媒回路に変更する場合、HCFC系冷媒サイクルに由来する異物が既設の冷媒配管内に残留しないので、HFC系冷媒回路での通常運転時に圧縮機故障や細部の詰りを防ぐことができ、信頼性の高い冷凍装置を提供することが可能となる。
【0035】
なお、以上のようにHCFC系冷媒からHFC系冷媒を用いた冷媒回路に変更する場合に限らず、同じ冷媒系統の冷媒回路に交換する場合や自然冷媒に変更する場合でも、この実施の形態の構成を用いれば、同様の効果が得られる。
【0036】
また、既設配管16,17に加えて蒸発器5も既設のものを利用した場合であって、蒸発器5内の配管の洗浄も同時に行う場合には、操作弁7,8及びバイパス回路9の設置は不要となる。この場合は、蒸発器5の送風ファン11を任意に停止することが可能な制御装置(蒸発防止手段)を設け、送風ファン11を起動させないまま圧縮機1を運転する。すると、凝縮器2で凝縮し膨張機構4を経て蒸発器5に流入した液冷媒は、送風ファン11が停止していて蒸発器5での熱交換が行われないために蒸発できず、液状態のまま蒸発器5から流出する、いわゆる液バック運転となる。
こうした液バック運転を実行させることにより、既設配管16、蒸発器5、既設配管17を洗浄することが可能となる。
【0037】
さらに、通常運転には必要のない補助気液分離器6Aを、冷媒回路に着脱可能に構成することも考えられる。このようにすれば、液バック運転後の通常運転に入る前に補助気液分離器6Aを取り外すことができ、また、取り外した補助気液分離器6Aは同様に構成された別の冷凍装置に取り付けて、洗浄運転に使用することができ、装備の無駄を省ける。
【0038】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3に係る冷凍装置の冷媒回路を示しており、図1に示したものと同様の構成要素には同一記号を付し、その説明を省略する。
同図において、6Bは気液分離器、6aは気液分離器6Bの入口配管、25は気液分離器6Bの第1出口配管、23は気液分離器6Bの第2出口配管、26は第1出口配管25を開閉する操作弁、24は第2出口配管23を開閉する操作弁である。
なお、この実施の形態では、前記操作弁24及び26により、本発明にいう開閉手段が構成されている。
【0039】
気液分離器6Bは、冷媒回路に封入された液冷媒の総量から予想される最大量の液バックが起こっても溢れないだけの容積(たとえば液溜3と同容積)の密閉容器を有し、入口配管6aと第1出口配管25及び第2出口配管23とを介して冷媒回路に接続されている。
第1出口配管25は油戻し孔を有しておらず、気液分離器6Bの上部からガス冷媒のみを取り出せるように、気液分離器6B内の上部に開口している。
一方、第2出口配管23は、図5に示した一般的な気液分離機18における出口配管18bと同様、気液分離器6B内でU字状に湾曲するとともに、その開口が気液分離器6B内の上部に位置する構成とされている。また、図3では図示を省略するが、第2出口配管23の底部(すなわち、気液分離器6B内でU字状に湾曲した部分の下端近傍部)には、前記気液分離機18における油戻し孔18dと同様の油戻し孔が形成されている。
さらに、気液分離器6Bの底部には、先端に操作弁15を備えた異物抜出し配管14(異物抜出し手段)が接続されている。
【0040】
ここで、既設配管16及び既設配管17はHCFC系冷媒回路で使用されていた配管であって、その後、冷媒をHFC系冷媒に変更(交換)するとともに、冷媒回路の各部をHFC系冷媒に対応した仕様のものに変更した際に、これら既設配管16及び既設配管17は交換せずに再使用するという場合を想定する。
【0041】
こうした場合、冷媒変更後の試運転時に既設配管16,17内の洗浄を目的として液バック運転を行う際には、冷媒回路の操作弁7及び操作弁8を閉じ、バイパス回路9の操作弁10を開くことにより、冷媒が膨張機構4及び蒸発器5を通らずに、バイパス回路9を通るようにする。また、第1出口配管25の操作弁26は開き、第2出口配管23の操作弁24は閉じておく。
【0042】
この状態で圧縮機1を運転すると、既設配管16に残留する異物はHFC系液冷媒によって洗浄されバイパス回路9を通過し既設配管17に流入する。既設配管17での冷媒は熱交換が行われないため蒸発できず液冷媒のままのいわゆる液バック運転となるため、液冷媒により既設配管17に残留する異物もHFC系液冷媒によって洗浄される。
【0043】
そして、液冷媒及び異物は気液分離器6Bに流入する。ここで、第2出口配管23は操作弁24によって閉じられているので、流入した液冷媒が第2出口配管23を通じて圧縮機1側に流出することはなく、かつ、気液分離器6Bは液バックで戻ってくる液冷媒の全量を収容可能な容積を有しているため、気液分離器6Bから液冷媒が溢れ第1出口配管25を通じて圧縮機1側に流出するようなこともない(ガス冷媒は流出する)。また、異物も圧縮機1側に流出せず、気液分離器6B内に滞留する。
【0044】
このような液バック運転を冷凍装置の据付け後に所定の時間(たとえば9時間程度)行えば、既設配管16,17に残留する異物を完全に洗浄・除去することができるので、従来に比べて洗浄のための手間と費用を節減できる。また、洗浄のための液バック運転が終わった後に、異物抜出し配管14の先端に設けた操作弁15を開けば、気液分離器6Bに滞留した異物を抜き出すことができる。
【0045】
そして、異物を抜き出したあとは操作弁7及び操作弁8を開き、操作弁10を閉じることによって冷媒が膨張機構4及び蒸発器5を通るようにする。また、操作弁24を開き、操作弁26を閉じれば、気液分離器6Bは油戻し孔を備えた第2出口配管23のみを介して圧縮機1の吸入側に接続された状態となるので、圧縮機1に冷凍機油を戻すことができるようになり、通常運転が可能となる。
【0046】
このように、HCFC系冷媒からHFC系冷媒を用いた冷媒回路に変更する場合、HCFC系冷媒サイクルに由来の異物が既設の冷媒配管に残留しないので、HFC系冷媒回路の通常運転時に既設配管の利用と圧縮機故障や細部の詰りを防ぐことができ、信頼性の高い冷凍装置を提供することができる。
【0047】
なお、HCFC系冷媒からHFC系冷媒を用いた冷媒回路に変更する場合に限らず、同じ冷媒系統の冷媒回路に交換する場合や自然冷媒に変更する場合でも、この実施の形態と同様に構成すれば、同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、既設配管16,17に加えて蒸発器5も既設のものを利用した場合であって、蒸発器5内の配管の洗浄も同時に行う場合には、操作弁7,8及びバイパス回路9の設置は不要となる。この場合は、蒸発器5の送風ファン11を任意に停止することが可能な制御装置(蒸発防止手段)を設け、送風ファン11を起動させないまま圧縮機1を運転する。すると、凝縮器2で凝縮し膨張機構4を経て蒸発器5に流入した液冷媒は、送風ファン11が停止していて蒸発器5での熱交換が行われないために蒸発できず、液状態のまま蒸発器5から流出する、いわゆる液バック運転となる。
こうした液バック運転を実行させることにより、既設配管16、蒸発器5、既設配管17を洗浄することが可能となる。
【0049】
【発明の効果】
以上に説明したように、第1の発明に係る冷凍装置にあっては、気液分離器内の底部に開口する返油配管の操作弁を閉じた状態で、蒸発防止手段により冷媒の蒸発を防止した液バック運転を行うことにより、凝縮器から気液分離器までの配管内の異物を洗浄・除去することができ、かつ、その異物を気液分離器内に滞留させて圧縮機への流入を防止でき、液バック運転の終了後に前記異物を抜き出すことができる。したがって、冷媒変更時等における既設配管の利用が容易にできるようになるとともに、配管残留異物に起因する圧縮機の故障や細部の詰まりを防止できて、信頼性の高い冷凍装置が得られる。
【0050】
また、第2の発明に係る冷凍装置にあっては、補助気液分離器を冷媒回路に連通させた状態で、蒸発防止手段によって冷媒の蒸発を防止した液バック運転を行うことにより、凝縮器から補助気液分離器までの配管内の異物を洗浄・除去することができ、かつ、その異物を補助気液分離器内に滞留させて圧縮機への流入を防止でき、液バック運転の終了後に前記異物を抜き出すことができる。したがって、冷媒変更時等における既設配管の利用が容易にできるようになるとともに、配管残留異物に起因する圧縮機の故障や細部の詰まりを防止できて、信頼性の高い冷凍装置が得られる。さらに、補助気液分離器を着脱可能にすれば、他の冷凍装置に取り付けて使用することも可能となる。
【0051】
また、第3の発明に係る冷凍装置にあっては、気液分離器の油戻し孔を有する第2出口配管を閉じた状態で、蒸発防止手段によって冷媒の蒸発を防止した液バック運転を行うことにより、凝縮器から気液分離器までの配管内の異物を洗浄・除去することができ、かつ、その異物を気液分離器内に滞留させて圧縮機への流入を防止でき、液バック運転の終了後に前記異物を抜き出すことができる。したがって、冷媒変更時等における既設配管の利用が容易にできるようになるとともに、配管残留異物に起因する圧縮機の故障や細部の詰まりを防止できて、信頼性の高い冷凍装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る冷凍装置の冷媒回路図である。
【図2】 この発明の実施の形態2に係る冷凍装置の冷媒回路図である。
【図3】 この発明の実施の形態3に係る冷凍装置の冷媒回路図である。
【図4】 従来の冷凍装置の冷媒回路図である。
【図5】 一般的な気液分離器の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1 圧縮機、2 凝縮器、4 膨張機構、5 蒸発器、6 気液分離器、6A補助気液分離器、6B 気液分離器、6a 入口配管、 6b 出口配管、7操作弁、8 操作弁、9 バイパス回路、10 操作弁、11 送風ファン、12 返油配管、13 操作弁、14 異物抜出し配管、15 操作弁、16 既設配管、17 既設配管、18 気液分離器、18a 入口配管、 18b 出口配管、18d 油戻し孔、19 操作弁、20 操作弁、21 操作弁、22 操作弁、23 第2出口配管、24 操作弁、25 第1出口配管、26 操作弁。
Claims (3)
- 圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器、及び気液分離器を順次配管接続してなる冷媒回路を有する冷凍装置において、
液バック運転時に前記凝縮器で液化した冷媒の蒸発を防止して液状態のまま前記蒸発器の下流側に流れるようにする蒸発防止手段を備え、前記気液分離器は、前記蒸発防止手段により蒸発を防止されて液状態で流入する冷媒のほぼ全量を収容可能な容積を有するとともに、この気液分離器内の上部に開口する出口配管と、底部に開口する返油配管とを備えており、さらに、液バック運転時に前記返油配管を閉じる操作弁と、液バック運転終了後に前記気液分離器内に滞留した異物を抜き出す異物抜出し手段とを備えていることを特徴とする冷凍装置。 - 圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器、及び気液分離器を順次配管接続してなる冷媒回路を有する冷凍装置において、
液バック運転時に前記凝縮器で液化した冷媒の蒸発を防止して液状態のまま前記蒸発器の下流側に流れるようにする蒸発防止手段と、前記気液分離器と並列に前記冷媒回路に接続される補助気液分離器と、液バック運転時に前記補助気液分離器を前記冷媒回路に選択的に連通させる切換手段とを備え、前記補助気液分離器は、前記蒸発防止手段により蒸発を防止されて液状態で流入する冷媒のほぼ全量を収容可能な容積を有するとともに、この補助気液分離器内の上部に開口する出口配管を備えており、さらに、液バック運転終了後に前記補助気液分離器内に滞留した異物を抜き出す異物抜出し手段を備えていることを特徴とする冷凍装置。 - 圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器、及び気液分離器を順次配管接続してなる冷媒回路を有する冷凍装置において、
液バック運転時に前記凝縮器で液化した冷媒の蒸発を防止して液状態のまま前記蒸発器の下流側に流れるようにする蒸発防止手段を備え、前記気液分離器は、前記蒸発防止手段により蒸発を防止されて液状態で流入する冷媒のほぼ全量を収容可能な容積を有するとともに、この気液分離器内の上部に開口する第1出口配管と、この気液分離器内の上部に開口するU字状をなし底部に油戻し孔が形成された第2出口配管とを備えており、さらに、液バック運転時に前記第1出口管を選択的に開き、前記第2出口配管を選択的に閉じる開閉手段と、液バック運転終了後に前記気液分離器内に滞留した異物を抜き出す異物抜出し手段とを備えていることを特徴とする冷凍装置。
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