JP4297644B2 - 水性接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水性接着剤組成物に関し、詳しくは樹脂含浸紙用水性接着剤として好適な、又は樹脂含浸紙と異種材料との積層体の製造に好適な水性接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
テーブル、コタツ天板、デスクトップ等の天板(以下、単に天板ということがある。)は、傷付き易いため表面が強く強靭であることが望まれ、また、ポット等から湯が溢れ出たり、誤って熱い薬缶などを乗せることがあるため、耐熱性も要求される。
したがって、通常、天板表面には、化粧紙に代えて、化粧紙に樹脂含浸した耐熱性の樹脂含浸紙がホットプレスで接着積層されている。
【0003】
しかし、この樹脂含浸紙は、化粧紙と異なり、剛性に富み、樹脂含浸ムラもあるため、ごわごわのシーツのように反り、うねりを生じやすく、周囲が巻き上がったりするため、木質ボード等の基材(以下、単に基材ということがある。)へのホットプレス接着は極めて困難な作業となる。即ち、
樹脂含浸紙を基材に接着する場合には、普通、次の図1の工程が採用され、接着剤としては、一般的に耐熱性、耐水性を発揮する酢酸ビニル系ポリマーエマルジョン/ユリア樹脂/酸性物質(硬化剤)の水性接着剤が使用されている。このホットプレス接着を図1を用いて更に詳しく説明すると、
木質基材(台板)供給→ロールコータで接着剤塗布→ゴム製の脱気ロールで樹脂含浸紙貼り合わせ(ゴムロールで圧締)→ホットプレス→耳取り→取り出し
の順序で樹脂含浸紙/基材の積層体が製造される。
【0004】
そして、ゴムロールによる圧締工程では樹脂含浸紙と基材の結合は、接着剤の初期接着強さ(粘着強さ)による仮接着であり、ホットプレスで接着材が架橋硬化して最終的な接着強さが得られる。
ところで、酢酸ビニル系ポリマーエマルジョン/ユリア樹脂/酸性物質(硬化剤)の水性接着剤では、その初期接着強さ(粘着強さ)が必ずしも充分ではないことから、剛性に富み反り、うねり、巻き上がりやすい樹脂含浸紙をゴムロールで基材に強く圧締してもホットプレスへ入れる前に往々巻き上がって剥離してしまうという問題が生じる。
樹脂含浸紙が巻き上がったままホットプレスに入ると、商品価値のある樹脂含浸紙/基材の積層体が得られない上に、ホットプレスに樹脂含浸紙がめくれた状態で接着したり、露出した基材部分が直接接着して、ホットプレス表面に異物(樹脂含浸紙、接着剤、基材等の破片)が接着してしまうことになる。
そうすると、ホットプレスの度毎にその後に搬入される積層体表面に打痕が発生し、商品価値が失われるために完璧に掃除しなければならない。
【0005】
しかしながら、100〜200℃の温度もあり隙間が小さく作業空間が充分に確保できないホットプレスを、完全に打痕のない状態に綺麗にすることは非常に危険で、且つ困難な作業である。
そこで、このような事態が生じないように、通常は作業員がラインの両側に立ってアイロンで樹脂含浸紙を仮圧締し(図1参照)、樹脂含浸紙が巻き上がらないようにしているが、それでもアイロンでの仮圧締後巻き上がってしまうことが往々にして生じる。特に気温が低くなる冬季には、接着剤の初期接着強さ(粘着強さ)が低下するとともに、湿度が低くなって樹脂含浸紙のカールが強くなるので、非常に大きな問題となっている。
【0006】
ところで、以上述べた樹脂含浸紙の基材接着時の巻き上がりを防止するには、強粘着性を具備した感圧型接着剤を用いることが考えられるが、これら感圧型接着剤(粘着剤)は、耐熱性が非常に乏しいため、使途に必要な耐熱性を得ることができず、実用に耐えられるものではない。
もし、上記巻き上がりの問題が防止でき、且つ高度な耐熱性、耐水性を付与できる接着剤が提供できるなら、産業上極めて有益である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題
(目的)は、上記巻き上がりを完全に防止する初期接着性を備え、ホットプレス後直ちに高度な耐熱性と耐水性を発現する水性接着剤を提供すること、及び該水性接着剤を用いて品質・性能の優れた樹脂含浸紙と木質ボード、無機質ボードなど異種材料の積層体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題
(目的)を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、従来の上記水性接着剤に代えて、酢酸ビニル系ポリマーエマルジョン/酸性物質(硬化剤)の水性接着剤に、
(1)酢酸ビニル系ポリマーにN−メチロール基を導入し、さらに、
(2)酢酸ビニル系ポリマーエマルジョンのpHを2.5〜3.5に調製し、且つ、
(3)特定量のポリイソシアネート化合物を配合する、ことにより始めて優れた初期接着性を備え、ホットプレス後直ちに高度な耐熱性と耐水性を発現する水性接着剤を開発する
ことができ、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の通りのものである。
1.ポリビニルアルコールと分子内にメチロール基を有する酢酸ビニル系ポリマーとを含むポリマーエマルジョンに対して、酸性金属塩、有機カルボン酸、有機スルホン酸、鉱酸、塩化アンモニウムのグループから選択した少なくとも1種以上の酸性物質を配合することにより、そのpHを2.5〜3.5の範囲に調製した主剤エマルジョン(A)に対し、該主剤エマルジョン(A)のポリマー固形分100質量部当たり、4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B)2〜6質量部を配合することを特徴とする、樹脂含浸紙と異種材料との積層体製造用水性接着剤組成物。
2.上記主剤エマルジョン(A)における酢酸ビニル系ポリマーが、酢酸ビニルモノマー100質量部に対し、炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル0〜100質量部、N−メチロール(メタ)アクリルアマイド0.1〜20質量部を重合せしめたポリマーである上記1に記載の水性接着剤組成物。
3.上記酸性金属塩が、水溶性多価金属の酸性金属塩であることを特徴とする上記1又は2に記載の水性接着剤組成物。
4.上記水溶性多価金属の酸性金属塩が、塩化アルミニウムであることを特徴とする上記3に記載の水性接着剤組成物。
5.上記1〜4のいずれか1項に記載の水性接着剤組成物を使用して成形されたことを特徴とする樹脂含浸紙と異種材料との積層体。
【0009】
請求項1の発明は、ポリビニルアルコールおよび分子内にメチロール基を有する酢酸ビニル系ポリマーを含むポリマーエマルジョンに対して、酸性金属塩、有機カルボン酸、有機スルホン酸、鉱酸、塩化アンモニウムのグループから選択した少なくとも1種以上の酸性物質を配合することにより、そのpHを2.5〜3.5の範囲に調製した主剤エマルジョン(A)に対し、該主剤エマルジョン(A)の固形分100質量部当たり、ポリイソシアネート化合物(B)1〜40質量部を配合することを特徴とする水性接着剤組成物である。
この水性接着剤組成物は、優れた初期接着性を備え、直ちに高度な耐熱性を発現し、最終的に優れた耐熱性、耐水性を与える。したがって、最終的に優れた耐熱性、耐水性が必要な用途、樹脂含浸紙のような反り、うねり、巻き上がりのある材料のホットプレス接着に好適である。また、本発明の接着剤は常温硬化が可能なので、常温硬化型接着剤とすることもできる。
【0010】
この水性接着剤組成物において、▲1▼主剤エマルジョン(A)の酢酸ビニル系ポリマーにN−メチロール基を導入すること、▲2▼主剤エマルジョン(A)に酸性金属塩、有機カルボン酸、有機スルホン酸、鉱酸、塩化アンモニウムのグループから選択した少なくとも1種以上の酸性物質を配合してそのpHを2.5〜3.5の範囲に調製すること、▲3▼主剤エマルジョン(A)に対し、特定量のポリイソシアネート化合物(B)を配合することの3つの要件が同時に必要でいずれが欠けても、本発明の効果は発揮されない。
本発明の水性接着剤組成物(以下、単に水性接着剤ということがある。)においては、ポリイソシアネート化合物(B)は、酸性物質と共に主剤エマルジョン(A)における酢酸ビニル系ポリマーと架橋結合して、耐熱性、耐水性を付与する働きをするが、これだけでは優れた初期接着性、直ちに高度な耐熱性を与える作用効果はなく、これに加えて酢酸ビニル系ポリマーに直結したメチロール基と相互作用する働きを有するものであり、この作用機構は極めて重要である。
【0011】
pH2.5〜3.5の領域は、本発明の特性を発現する上で重要である。
pHが2.5未満の場合にはポリイソシアネート化合物の働きが不活性化し所望の初期接着力を得ることができない。
一方、pHが3.5を超える場合には、ポリイソシアネート化合物が主剤エマルジョン(A)中の水と反応し消耗してしまい、短時間(例えば、20分以内)で水性接着剤からポリイソシアネート化合物が失われ、所望の初期接着力が得られず、同時に酸性物質(硬化剤)が不足する(酸性物質だけで架橋硬化させるには通常pHが2.5となる量が必要である。)事情も重なって、ホットプレス時に充分に架橋硬化せず、水性接着剤中の水分がガス化しホットプレスを解圧後、基材上の樹脂含浸紙に「ふくれ」を生じさせるという問題(即ち、耐熱性の問題)が発生する。
【0012】
したがって、pHが3.5を超える場合には、短時間(例えば、20分以内)毎に水性接着剤を調製することが必要になり、著しく作業性が低下する。(尚、以下において、水性接着剤が上記「ふくれ」の問題を発生せず有効に使用できる時間を「可使時間」と定義する。)
また、pH3.5を超えると、ポリイソシアネート化合物は水と反応する際に発泡するので一層作業効率が低下する。
【0013】
本発明の酸性物質は、酸性金属塩、有機カルボン酸、有機スルホン酸、鉱酸、塩化アンモニウムのいずれでも良い。
酸性金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化ジルコニウム、塩化マグネシウムが、有機カルボン酸としては、酒石酸、クエン酸、酢酸が、有機スルホン酸としては、P−トルエンスルホン酸が、鉱酸としては、塩酸、硫酸、リン酸がある。
ポリイソシアネート化合物(B)の配合量は、主剤エマルジョン(A)のポリマー固形分100質量部当たり、1〜40質量部である。これが1質量部未満であると優れた初期接着性、耐熱性、耐水性が発揮されず、又40質量部を超えると、保存中にポリイソシアネート化合物と水との反応による発泡が激しくなり好ましくない。
【0014】
ポリイソシアネート化合物としては分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば格別の制限はないが、例えば、4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニル系ポリマーに対して1〜40質量%存在することが、最終的な耐熱性、耐水性を付与するために好ましい。
【0015】
請求項2の発明は、pHを2.5〜3.5の範囲に調製した主剤エマルジョン(A)に対し、上記(A)のポリマーの固形分100質量部当たり、ポリイソシアネート化合物(B)2〜6質量部を配合することを特徴とする請求項1に記載の水性接着剤組成物である。
このpH範囲とポリイソシアネート化合物配合量の選択が、本発明の効果を最大限に発揮する。
請求項3の発明は、上記(A)における酢酸ビニル系ポリマーが、酢酸ビニルモノマー100質量部に対し、炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル0〜100質量部、N−メチロール(メタ)アクリルアマイド0.1〜20質量部を重合せしめたポリマーである請求項1又は請求項2に記載の水性接着剤組成物である。
このモノマーの組み合わせによる酢酸ビニル系ポリマーが本発明の効果を有効に発揮する。最大限の効果は、酢酸ビニルモノマー100質量部に対し、C1 〜C8 の(メタ)アクリル酸エステル0〜6質量部、N- メチロール(メタ)アクリルアマイドを2〜6質量部を重合せしめたポリマーである。
【0016】
請求項4の発明は、上記(A)における酸性物質が、水溶性多価金属の酸性金属塩であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水性接着剤組成物である。本発明の効果をより発揮する酸性物質は、酸性金属塩である。
請求項5の発明は、上記水溶性多価金属の酸性金属塩が、塩化アルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の水性接着剤組成物である。
塩化アルミニウムはpH調節作用以外に、ポリイソシアネート化合物とメチロール基との相互作用の促進剤として働くものと推定され、最も好ましい酸性金属塩である。
請求項6の発明は、上記(B)におけるポリイソシアネート化合物が4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の水性接着剤組成物にである。
特に、4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含有する、いわゆる粗製MDI(crude MDI)は、優れた初期接着性、直ちに高度な耐熱性を与える作用をする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂含浸紙用水性接着剤組成物である。
本発明の水性接着剤を樹脂含浸紙用接着剤に使用した場合、巻き上がりを一旦アイロンなどの手作業で仮接着する処理は不要になる。また、ホットプレスを解圧後、耐熱性が乏しいことに起因する、ふくれ、接着不良を生じることもない。
したがって、樹脂含浸紙用と基材(例えば、木質ボード)の接着において、接着特性、生産性は著しく向上する。
請求項8の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂含浸紙用水性接着剤組成物を使用して成形された樹脂含浸紙と異種材料との積層体である。
樹脂含浸紙と異種材料との積層体とは、樹脂含浸紙と木質ボード、無機質ボード等の接着製品で、用途はテーブル、コタツ天板、デスクトップ等が例示できる。
本発明の水性接着剤組成物を使用したこれら積層体は、耐熱性、耐水性などの接着特性に優れ、生産性が高いので、経済価値、品質価値の高い積層体を提供できる。
【0018】
【実施例】
次に、本発明を以下の実施例により具体的にに説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないことはいうまでもない。
[主剤エマルジョン(A)の製造]
主剤エマルジョン(A)は、様々な方法で製造することができる。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)の存在下で酢酸ビニル、N−メチロール(メタ)アクリルアマイド、炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステルを、周知の手段で乳化共重合させることによって得られる。なお、この乳化重合における開始剤としては、特に制限はないが、例えば過酸化水素、クメンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、過硫酸塩、過酢酸t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等の酸化性物質とロンガリット等の還元性物質などの水溶性開始剤が好ましく用いられる。
【0019】
主剤エマルジョン(A)には、本発明の目的、効果を逸脱しない範囲内で他の水性エマルジョンを添加することができる。他の水性エマルジョンとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、ポリクロロプレンエマルジョン、ポリブタジエンエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体エマルジョン、ブチルゴムエマルジョン、ポリアクリル酸エステルエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ポリ塩化ビニリデンエマルジョン等が挙げられる。
【0020】
a[巻き上がりの評価方法]
厚さ15mmのパーティクルボード(小名浜合板(株)製)を15cm×10cmの大きさに切り出し基材とした。
樹脂含浸紙(坪量:75g/m2 含浸樹脂:ウレタン樹脂)(商品名:FFシート 日本デコール社製)を17cm×11cmの大きさに切り出した。
基材に水性接着剤を塗布し、これに樹脂含浸紙をのせ、シリンダープレスで6kgf/cm2 の圧力で30秒間圧締し、樹脂含浸紙のはみ出し部をクリッで挟み、デジタルフォースゲージ((株)イマダ製:タイプDPSII−50)で90°剥離し、その時の最大値(kgf/cm2 )を測定した。
実際に樹脂含浸紙を接着する場合、図1に示すようなゴム製の脱気ロールを一回通過させるだけであるがゴムロールの直径が大きく、圧力も高いため、十分な圧締を行うことができる。これに対し、ハンドロールは直径も小さく、圧力も弱いため、シリンダープレスで6kgf/cm2 の圧力(30秒間)を掛けるようにして、図1に示す実際のラインと同等の圧締ができるようにした。
【0021】
次に、巻き上がりの具体的な評価方法(○、△、×)を示す。
数値はデジタルフォースゲージ(kgf/cm2 )の最大測定値を、括弧内は樹脂含浸紙の接着状況を示す。
◎:0.16以上 (樹脂含浸紙が全面接着しており、容易に剥離しない)
○:0.14〜0.15(樹脂含浸紙が全面接着しているが、容易に剥離する)
×:0.13以下 (樹脂含浸紙が巻き上がり、全面接着していない)
【0022】
b[可使時間(作業性)の評価方法]
水性接着剤の可使時間(以下、単に可使時間という。)は、前述したように、短ければ短時間毎に新たな水性接着剤を調製することが必要となり、作業性を低下させるので、連続ラミネータラインでは可使時間が作業効率を左右する重要なファクターである。ところで、本発明の水性接着剤ではpHの値により可使時間が変化するので、可使時間を測定してその作業性を評価する。
可使時間は、既に説明したように、水性接着剤がホットプレス後の樹脂含浸紙に「ふくれ」の問題を発生せずに有効に使用できる時間であるから、以下の方法により「ふくれ」の有無を確認して「可使時間」を測定する。
厚さ15mmのパーティクルボード(小名浜合板(株)製)を30cm×30cmの大きさに切り出し基材とした。
樹脂含浸紙(商品名:FFシート 日本デコール社製)を31cm×31cmの大きさに切り出した。
【0023】
調製後20分静置、又は調製後2時間静置した水性接着剤を、基材に40g/m2 の割合で塗布し、樹脂含浸紙をのせ、150℃で10kgf/cm2 ×7秒の条件でホットプレスした後、表面の「ふくれ」の有無を調べる。その結果から水性接着剤の作業性を以下のように評価(○、×)した。
○:静置2時間後でも接着した加工紙の表面にふくれはみられない(可使時間;2時間以上)
×:静置20分後でも接着した加工紙の表面にふくれがみられる(可使時間;20分未満)
【0024】
c[平面引っ張り試験及び浸せき剥離試験]
上記b[可使時間(作業性)の評価方法]で○の評価の樹脂含浸紙/基材について、その接着性を以下の▲1▼〜▲2▼の方法で試験した。
▲1▼特殊合板の日本農林規格(JAS)(農林水産省告示921号)「平面引っ張り試験」
▲2▼特殊合板の日本農林規格(JAS)(農林水産省告示921号)「2類浸せきはく離試験」
【0025】
(実施例と比較例)
主剤エマルジョン(A)の調整
還流冷却器、攪拌機、配量装置、窒素導入管並びに加熱及び冷却装置を備えた1リットルの反応器内に、窒素で置換した後、水425g、ポリビニルアルコール(重合度1500・鹸化度88%)40gを添加して90℃で1時間加熱・攪拌してポリビニルアルコールを溶解(以後、ポリビニルアルコール溶液と呼ぶ。)し、65℃まで冷却し、その温度に維持した。
酢酸ビニルモノマー460g、アクリル酸メチル20g、t−ブチルハイドロパーオキシド0.5gを混合し、モノマー混合液とした。
水50gにN−メチロ−ルアクリルアミド20gを溶解しN−メチロ−ルアクリルアミド溶液とした。
水25gにロンガリット0.8g及び重炭酸ナトリウム0.8gを溶解し開始剤溶液とした。
ポリビニルアルコール溶液にモノマー混合液、開始剤溶液を定量で滴下し、重合を行った。重合温度は65〜70℃で実施した。その際、モノマー混合液は還流が起こらない様に調節した。モノマー混合液滴下開始30分後、N−メチロ−ルアクリルアミド溶液の滴下を開始した。モノマー混合液とN−メチロ−ルアクリルアミド溶液の滴下は同時に終了するようにした。モノマー混合液の滴下時間は約6時間であった。モノマー混合液滴下終了後、1時間、70℃に維持した。開始剤溶液の滴下はモノマー混合液の滴下終了後、1時間長く行った。その後室温まで冷却し、ポリマー固形分が50%のエマルジョンを得た。
このエマルジョン100質量部に対し、チタン白(チタン工業(株)製:KD)3質量部を配合して主剤エマルジョン(A)とした。このエマルジョン(A)中のポリマーのモノマー比(質量)は、次のとおりである。
【0026】
水性接着剤の調製
攪拌羽根を備えたガラス容器に、上記主剤エマルジョン(A)100質量部を入れ、これを攪拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(濃度:50重量%)0.5〜5質量部と、4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)0〜3質量部を添加して、pH値とMDI添加量の異なる各種試験用水性接着剤を得た。
これらの水性接着剤を用いて、上記a[巻き上がりの評価方法]、b[可使時間(作業性)の評価方法]、及びc[平面引っ張り試験及び浸せき剥離試験]の各試験を実施した。
尚、これら試験用水性接着剤のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度計(商品名:型式F−13 (株)堀場製作所製)を使用して測定した。
【0027】
a「巻き上がりの評価」及びb「可使時間(作業性)の評価」の結果を次の表1に示す。
表1の結果によると、太線で囲まれた範囲のpH値×MDI添加量の組み合わせの水性接着剤が、aとbの評価が共に優れ、基材からの樹脂含浸紙の巻き上がりがなく、水性接着剤の可使時間が長く作業性も優れていた。
また、太線で囲まれた範囲の水性接着剤を用いた積層体のc[平面引っ張り試験及び浸せき剥離試験]の結果は全て基準をクリヤーしており満足すべきものであった。
以上の結果から、本発明の水性接着剤は、優れた初期接着性を発揮して樹脂含浸紙の基材からの巻き上がりを完全に防止し、より効率的に高度の耐熱性、耐水性を備えた樹脂含浸紙/基材の積層体を製造できることが判る。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明の水性接着剤は、従来から大きな問題であった、基材に樹脂含浸紙をホットプレスする際に生じる樹脂含浸紙の巻き上がりを効果的に防止し、優れた耐熱性、耐水性を備えた樹脂含浸紙/基材の積層体をより効率的に製造することができるので、プリント合板を始めとする接着技術分野において多大な貢献をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続ラミネータラインで樹脂含浸紙を基材に接着する工程の概略図である。
Claims (5)
- ポリビニルアルコールと分子内にメチロール基を有する酢酸ビニル系ポリマーとを含むポリマーエマルジョンに対して、酸性金属塩、有機カルボン酸、有機スルホン酸、鉱酸、塩化アンモニウムのグループから選択した少なくとも1種以上の酸性物質を配合することにより、そのpHを2.5〜3.5の範囲に調製した主剤エマルジョン(A)に対し、該主剤エマルジョン(A)のポリマー固形分100質量部当たり、4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B)2〜6質量部を配合することを特徴とする、樹脂含浸紙と異種材料との積層体製造用水性接着剤組成物。
- 上記主剤エマルジョン(A)における酢酸ビニル系ポリマーが、酢酸ビニルモノマー100質量部に対し、炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステル0〜100質量部、N−メチロール(メタ)アクリルアマイド0.1〜20質量部を重合せしめたポリマーである請求項1に記載の水性接着剤組成物。
- 上記酸性金属塩が、水溶性多価金属の酸性金属塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性接着剤組成物。
- 上記水溶性多価金属の酸性金属塩が、塩化アルミニウムであることを特徴とする請求項3に記載の水性接着剤組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性接着剤組成物を使用して成形されたことを特徴とする樹脂含浸紙と異種材料との積層体。
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