JP4297332B2 - 履帯式走行体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械や作業用車両に採用される履帯式走行体の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
油圧ショベル等の建設機械において、一般的に採用される走行装置として履帯式走行体があるが、このような履帯式走行体は、トラックフレームの前後に設けられる駆動スプロケットとアイドラとのあいだに無端帯状のクローラ(履帯)を懸回して構成されると共に、トラックフレームの上下部には、クローラの非接地面側、接地面側の移送をガイドするべく上部ローラ(キャリアローラ)、下部ローラ(トラックローラ)がそれぞれ設けられている。
ところで、前記履帯式走行体のなかには、不整地や湿地帯で作業を行う場合には鉄製クローラ、また舗装面で作業する場合には路面を傷めず騒音、振動も小さいゴムクローラというように、鉄製クローラとゴムクローラとを履き替えることができるように構成されたものがある。この場合、ゴムクローラを装着するときには、車体の前後方向の安定性を確保するために、アイドラ、スプロケット、下部ローラを介したゴムクローラの接地面が略同一高さとなることが望ましい。また、鉄製クローラを装着するときには、アイドラ、スプロケットを介した鉄製クローラの接地面が、下部ローラを介した鉄製クローラの接地面よりも下方に位置することにより発生する走行振動を抑制するために、下部ローラの下端位置を低くすることが望ましい。
そこで、従来、トラックフレームに対する下部ローラの取付位置を、鉄製クローラ装着時とゴムクローラ装着時とで調節することができるように構成したものが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、下部ローラのローラ軸に嵌合する嵌合孔が開設されたプレートを、トラックフレームの下端面に当接するストッパが無いものと有るものとの二種類用意し、ストッパが無いプレートを用いた場合には、ローラ軸がトラックフレームに形成されたスリットの上端部に当接する上方位置として下部ローラを取付けできる一方、ストッパが有るプレートを用いた場合には、ストッパがトラックフレームの下端面に当接することでプレートの上動が規制され、これによりプレートに嵌合するローラ軸の上動も規制されて、ローラ軸がトラックフレームのスリットの上端部から離間する下方位置として下部ローラを取付できるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−1075号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、前記特許文献1のものにおいて、ストッパの有るプレートを用いて下部ローラを下方位置とした場合、下部ローラにかかる荷重は、ローラ軸を介してプレートの嵌合孔上縁側部が受止めることになる。このため、プレートに強度が必要となって、肉厚で重量の重いものを用いなければならず、コストがかかる許りか、プレートの交換作業が困難となる。また、ストッパが無いものと有るものとの二種類のプレートが必要であって、この点でもコスト上昇の一因となる。さらにこのものでは、プレートがトラックフレームの左右内方側面に取付けられているため、プレートの交換作業が面倒であって、作業性に劣るという問題があり、これらに本発明が解決しようとする課題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の如き実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、トラックフレームの前後に設けられるアイドラと駆動スプロケットとのあいだに無端帯状の履帯を懸回してなる履帯式走行体において、前記トラックフレームの下部に、下部ローラを回転自在に軸承するローラ軸を取付け、該ローラ軸に一体的に設けられるカラーに、トラックフレームの下端面に対向するフレーム受面を形成して、ローラ軸のトラックフレームに対する取付位置を、トラックフレームの下端面にカラーのフレーム受面が当接する上方位置と、トラックフレームの下端面とカラーのフレーム受面とのあいだにスペーサが介装される下方位置とに位置調節できるように構成するにあたり、前記スペーサは、トラックフレームの左右外方側面に接当するプレート部と、トラックフレームの下端面とカラーのフレーム受面とのあいだに介装されるスペーサ部とが一体形成され、さらに前記プレート部には、ローラ軸をトラックフレームに取付け固定するための固定ボルトが貫通する貫通孔が開設されていることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、トラックフレームに対するローラ軸の取付位置を、ゴムクローラと鉄製クローラとの履き替えに対応して上下位置調整することができるが、この場合に、ローラ軸に一体的に設けられるカラーのフレーム受面とトラックフレームの下端面とのあいだにスペーサを介装することで位置調整を行う構成であるから、スペーサにかかる負荷を小さくし得て、スペーサの軽量化を達成でき、コストダウンに寄与できる許りか、スペーサの着脱作業を容易に行うことができる。
このものにおいて、スペーサの装着は、トラックフレームの左右外方側から、上方位置のローラ軸から固定ボルトを取外し、トラックフレームの下端面とカラーのフレーム受面とのあいだにスペーサ部を介装できる位置まで下部ローラを下方にずらすことで行うことができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図面において、1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、履帯式(クローラ式)の走行体2、該走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着される作業装置4等の各部から構成されている等の基本的構成は従来通りである。
【0007】
5は前記走行体2を構成する左右のトラックフレームであって、該トラックフレーム5の後端部には駆動スプロケット6が回転自在に軸承され、また前端部にはアイドラ7が回転自在に軸承されると共に、これら駆動スプロケット6とアイドラ7とのあいだには、無端体状のクローラ(履帯)8が懸回されている。
【0008】
さらに、トラックフレーム5の上部には、クローラ8の非接地面側部分を上方に押し上げてクローラ8のたるみ防止をしつつ移送誘導するための上部ローラ9が取付けられている。また、トラックフレーム5の下部には、クローラ8の接地面側部分を接地方向に押圧しつつ移送誘導するための複数の下部ローラ10が取付けられているが、該下部ローラ10は、後述するように、トラックフレーム5に対する取付位置を、上方位置と下方位置とに調節できる構成になっている。
【0009】
ここで、前記トラックフレーム5は、左右の側面板5a、5aと、これら側面板5a、5aの上端部同士を連結する上面板5bとによって断面略冂状に形成されるものであって、前記下部ローラ10は、トラックフレーム5の左右の側面板5a、5a間に支架される状態で取付けられている。
【0010】
つまり、下部ローラ10は、トラックフレーム5の左右の側面板5a、5a間に配されるローラ軸11、該ローラ軸11の左右両側部に形成される螺子孔11a、11aに螺合する左右の固定ボルト12、12、ローラ軸11の中間部に軸受13、13を介して回転自在に軸承されるローラ体14、該ローラ体14の左右外方側に位置する状態でローラ軸11の左右両側部に一体的に外嵌固定される左右のカラー15、15、これらカラー15、15とローラ体14とのあいだに介装されるシール18、18等の部材を用いて構成されているが、上記カラー15の下部には、トラックフレーム5の左右の側面板5aの下端面5cに対向するフレーム受面15aが形成されている。
【0011】
一方、トラックフレーム5の左右の側面板5aには、上下方向に長い長孔状の挿入孔5dが開設されているが、該挿入孔5dの幅寸法は、前記固定ボルト12を挿入孔5dに挿入した場合に該固定ボルト12が幅方向にズレないようにボルト径よりも僅かに大きい程度に設定され、また挿入孔5dの上下長さ寸法は、ボルト径よりも少なくとも後述するスペーサ部16bの厚みα分だけ長くなるように設定されている。
【0012】
また、16はスペーサであって、該スペーサ16は、トラックフレーム5の側面板5aの左右外方側面に面接触状態で接当するプレート部16aと、該プレート部16aの下端部から略直角方向に向けて折曲形成され、後述するようにトラックフレーム5の側面板5aの下端面5cとカラー15のフレーム受面15aとのあいだに介装されるスペーサ部16bとを備えると共に、上記プレート部16aには、固定ボルト12が貫通する貫通孔16cが開設されている。
【0013】
扨、前記下部ローラ10をトラックフレーム5に取付けるにあたり、スペーサ16を用いない場合には上方位置に取り付けることができ、またスペーサ16を用いた場合には下方位置に取り付けることができる。
即ち、下部ローラ10を上方位置に取付ける場合にはスペーサ16を用いないが、この場合、下部ローラ10を、トラックフレーム5の左右の側面板5a、5aの下端面5c、5cに左右のカラー15、15のフレーム受面15a、15aが当接するように組込み、この状態で、左右の側面板5a、5aの挿入孔5d、5dに挿入されてローラ軸11の螺子孔11a、11aに螺合される左右の固定ボルト12、12を緊締することにより、下部ローラ10をトラックフレーム5に取付け固定できるように構成されている(図2、図3、図6(A)参照)。尚、図3、図6(A)中、17は固定ボルト12のボルト頭とトラックフレーム側面板5aの左右外側面とのあいだに介装されるワッシャである。
【0014】
一方、下部ローラ10を下方位置に取付ける場合にはスペーサ16を用いるが、この場合、スペーサ16、16を、プレート部16a、16aがトラックフレーム5の左右の側面板5a、5aの左右外側面に面接触状態で接当すると共に、スペーサ部16b、16bが側面板5a、5aの下端面5c、5cとカラー15、15のフレーム受面15a、15aとのあいだに介装されるように組込み、この状態で、側面板5a、5aの挿入孔5d、5dに挿入されてスペーサ16、16の貫通孔16c、16cを貫通しローラ軸11の螺子孔11a、11aに螺合される左右の固定ボルト12、12を緊締することにより、下部ローラ10をトラックフレーム5に取付け固定できるように構成されている(図4、図5、図6(B)参照)。これにより、下部ローラ10のトラックフレーム5に対する取付位置は、前述したスペーサ16を用いない場合と比して、スペーサ16のスペーサ部16bの厚みα分だけ下方に下がる。尚、図5、図6(B)中、17は固定ボルト12のボルト頭とスペーサ16のプレート部16aとのあいだに介装されるワッシャである。
【0015】
叙述の如く構成されたものにおいて、下部ローラ10をトラックフレーム5に取付けるにあたり、該下部ローラ10のローラ軸11の左右両側部にはカラー15が一体的に固定されており、該カラー15には、トラックフレーム5の側面板5aの下端面5cに対向するフレーム受面15aが形成されている。そして、クローラ8としてゴムクローラを装着する場合には、トラックフレーム側面板5aの下端面5cにカラー15のフレーム受面15aを当接せしめることで下部ローラ10を上方位置に取付けることができる一方、鉄製クローラを装着する場合には、トラックフレーム側面板5aの下端面5cとカラー15のフレーム受面15aとのあいだにスペーサ16を介装することにより下部ローラ10を下方位置に取付けることができる。
而して、トラックフレーム5に対する下部ローラ10の取付位置を、ゴムクローラ、鉄製クローラの各クローラ8に対応して上下位置調節できることになるが、このものにおいて、下部ローラ10を上方位置に取付けた場合に、該下部ローラ10にかかる荷重は、カラー15のフレーム受面15aに当接するトラックフレーム5の側面板5aが受止めることになり、また、下部ローラ10を下方位置に取付けた場合でも、下部ローラ10にかかる荷重は、スペーサ16のスペーサ部16bをあいだに挟んだ状態でトラックフレーム5の側面板5aが受止めることになる。
この結果、スペーサ16にかかる負荷を小さくし得て、スペーサ16を肉厚の高強度のものとする必要がなく、スペーサ16の軽量化を達成できて、コストダウンに寄与できる許りか、スペーサ16の取付け、取外し作業も容易となる。
しかもこのものでは、スペーサ16を用いるのは下部ローラ10を下方位置に取付けるときだけであるから、下部ローラ10の上方位置、下方位置に対応して二種類のスペーサを用意しなければならないようなことがなく、この点においてもコストダウンに寄与できる。
さらに、スペーサ16は、トラックフレーム5の左右外方側から取付け、取外しできる構成であるため、下部ローラ10を上下位置変更するにあたり、スペーサ16を装着する場合には、ローラ軸11から固定ボルト12およびワッシャ17を取外した状態で、トラックフレーム側面板5aの下端面5cとカラー15のフレーム受面15aとのあいだにスペーサ部16bが介装できる位置まで下部ローラ10を下動させてからスペーサ16を装着すればよく、またスペーサ16を取外す場合には、ローラ軸11から固定ボルト12およびワッシャ17を取外した状態で、スペーサ16を取外してから下部ローラ10を上動させればよく、着脱作業が容易であって、作業性に優れる。
【0016】
尚、本発明を実施するにあたり、下部ローラ10の上方位置と下方位置との高低差は、スペーサ16のスペーサ部16bの厚みαによって決まるから、該スペーサ部16の厚みα寸法の設定により、下部ローラ10の上方位置と下方位置との高低差を任意に調節できる。
また、下部ローラ10を上方位置に取付ける場合にはスペーサ16は不要となるが、該不要時のスペーサ16を、図8に示す如く、スペーサ部16bが左右外方側に突出するよう逆向きとして取付けることにより、不要時におけるスペーサ16の収納、管理が必要ないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】上方位置の下部ローラの取付け状態を示す側面図である。
【図3】上方位置の下部ローラの取付け状態を示す断面図である。
【図4】下方位置の下部ローラの取付け状態を示す側面図である。
【図5】下方位置の下部ローラの取付け状態を示す断面図である。
【図6】(A)は図2の要部拡大図、(B)は図4の要部拡大図である。
【図7】(A)、(B)、(C)、(D)はスペーサの正面図、背面図、右側面図、平面図である。
【図8】不要時のスペーサをトラックフレームに取付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
2 走行体
5 トラックフレーム
5a 側面板
5c 下端面
6 駆動スプロケット
7 アイドラ
10 下部ローラ
11 ローラ軸
12 固定ボルト
14 ローラ体
15 カラー
15a フレーム受面
16 スペーサ
16a プレート部
16b スペーサ部
16c 貫通孔

Claims (2)

  1. トラックフレームの前後に設けられるアイドラと駆動スプロケットとのあいだに無端帯状の履帯を懸回してなる履帯式走行体において、前記トラックフレームの下部に、下部ローラを回転自在に軸承するローラ軸を取付け、該ローラ軸に一体的に設けられるカラーに、トラックフレームの下端面に対向するフレーム受面を形成して、ローラ軸のトラックフレームに対する取付位置を、トラックフレームの下端面にカラーのフレーム受面が当接する上方位置と、トラックフレームの下端面とカラーのフレーム受面とのあいだにスペーサが介装される下方位置とに位置調節できるように構成するにあたり、前記スペーサは、トラックフレームの左右外方側面に接当するプレート部と、トラックフレームの下端面とカラーのフレーム受面とのあいだに介装されるスペーサ部とが一体形成され、さらに前記プレート部には、ローラ軸をトラックフレームに取付け固定するための固定ボルトが貫通する貫通孔が開設されていることを特徴とする履体式走行体。
  2. 請求項において、スペーサの装着は、トラックフレームの左右外方側から、上方位置のローラ軸から固定ボルトを取外し、トラックフレームの下端面とカラーのフレーム受面とのあいだにスペーサ部を介装できる位置まで下部ローラを下方にずらすことで行うことを特徴とする履体式走行体。
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