JP4296747B2 - 6,7−ジアルコキシキナゾリン−4−オンの製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドから6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンを製造する方法に関する。6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンは、炎症性剤や抗癌剤等の医薬品の合成中間体として利用出来る有用な化合物である(例えば、特表平11-503412号公報)。
【0002】
【従来の技術】
従来、4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドから6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンを製造する方法としては、4,5-メチレンジオキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドを245〜250℃の高温下で加熱して、4,5-メチレンジオキシキナゾリン-4-オンを得る方法が開示されている(Acta Chim.Acad.Sci.Hung.,94,233(1977))。しかしながら、この方法では、極めて高温を要するために、工業的な製法としては実施が困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、簡便な方法によって、4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドから6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンを得る、工業的に好適な6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンの製法を提供するものである。
【0004】
本発明の課題は、水溶媒中、塩基の存在下、一般式(1)
【0005】
【化3】
Figure 0004296747
【0006】
(式中、R及びRは、同一又は異なっていても良く、アルキル基又は、アルコキシル基および第二アミノ基からなる群の置換基を有していても良いアルキル基を示す。なお、R及びRは、互いに結合して環を形成していても良い。)で示される4,5−ジアルコキシ−2−ホルミルアミノベンズアミドを、0〜50℃で環化反応させることを特徴とする、一般式(2)
【0007】
【化4】
Figure 0004296747
【0008】
(式中、R及びRは、前記と同義である。)
で示される6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンの製法によって解決される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の反応において使用する4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドは、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、R及びRは、同一又は異なっていても良く、置換基を有していても良い、反応に関与しない基であるが、具体的には、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アシル基(アセタール化されていても良い)を示す。なお、R及びRは、互いに結合して環を形成していても良い。
【0010】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0011】
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0012】
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブタジエニル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0013】
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0014】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0015】
前記アシル基(アセタール化されていても良い)としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0016】
前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アシル基(アセタール化されていても良い)は、置換基を有していても良い。その置換基としては、炭素原子を介して出来る置換基、酸素原子を介して出来る置換基、窒素原子を介して出来る置換基、硫黄原子を介して出来る置換基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0017】
前記炭素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基等のアルケニル基;ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の複素環式アルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基等のアシル基(アセタール化されていても良い);カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;シアノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0018】
前記酸素原子を介して出来る置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、ペンチルオキシル基、ヘキシルオキシル基、ヘプチルオキシル基、ベンジルオキシル基等のアルコキシル基;フェノキシル基、トルイルオキシル基、ナフチルオキシル基等のアリールオキシル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0019】
前記窒素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等の第一アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の第二アミノ基;モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリジノ基、インドリル基等の複素環式アミノ基;イミノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0020】
前記硫黄原子を介して出来る置換基としては、例えば、メルカプト基;チオメトキシル基、チオエトキシル基、チオプロポキシル基等のチオアルコキシル基;チオフェノキシル基、チオトルイルオキシル基、チオナフチルオキシル基等のチオアリールオキシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0021】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
なお、前記4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドは、一般式(3)
【0023】
【化5】
Figure 0004296747
【0024】
(式中、R及びRは、前記と同義である。)
で示されるように、4,5-ジアルコキシ-2-アミノベンズアミドにギ酸を反応させることによって得ることが出来る化合物である(後の参考例1に記載)。
【0025】
本発明の環化反応において使用する塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシドが挙げられるが、好ましくはアルカリ金属水酸化物、更に好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。なお、これらの塩基は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0026】
前記塩基の使用量は、4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド1molに対して、好ましくは1〜20mol、更に好ましくは2〜10molである。
【0027】
本発明の環化反応は好ましくは溶媒の存在下において行われる。使用する溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定されず、例えば、水;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N,N'-ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類が挙げられるが、好ましくは水、ニトリル類、エーテル類、ケトン類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、更に好ましくは水、ニトリル類、エーテル類、ケトン類、特に好ましくは水、ニトリル類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0028】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等によって適宜調節するが、4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド1gに対して、好ましくは1〜50ml、更に好ましくは1〜20mlである。
【0029】
本発明の環化反応は、例えば、不活性ガス雰囲気にて、4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド、塩基及び溶媒を混合して反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜100℃、更に好ましくは0〜50℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0030】
なお、最終生成物である6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンは、反応終了後、例えば、濾過、抽出、濃縮、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【0031】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0032】
参考例1(4,5-ジメトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容積10mlのフラスコに、アルゴン雰囲気下、4,5-ジメトキシ-2-アミノベンズアミド0.30g(1.53mmol)及びアセトニトリル2mlを加え、攪拌しながら5℃まで冷却した。次いで、同温度でギ酸1.05g(22.92mmol)を添加した後、25℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾過後、アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥させて、無色結晶として4,5-ジメトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド246mgを得た。一方、濾液及び結晶洗浄液の混合液を冷却し、更に、析出した結晶を濾過後、アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥させて、無色結晶として4,5-ジメトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド27mgを得た。得られた4,5-ジメトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドの結晶は合計273mgであった(単離収率:80%)。
4,5-ジメトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドの物性値は以下の通りであった。
【0033】
融点;231〜233℃
元素分析;炭素53.31%、水素5.45%、窒素12.49%
(理論値(C10H12N2O4);炭素53.57%、水素5.39%、窒素12.49%)
1H-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));3.784(3H,s)、3.794(3H,s)、7.362(1H,s)、7.571(1H,brs)、8.165(1H,brs)、8.270(1H,s)、8.412〜8.417(1H,m)、11.797(1H,s)
13C-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));55.857(CH3O-)、55.949(CH3O-)、104.179、110.874、111.658、134.125、143.544、151.227、160.128(-NHC(=O)H)、170.138(-C(=O)NH2)
FAB-MS;225(MH+)
【0034】
実施例1(6,7-ジメトキシ-3H-キナゾリン-4-オンの合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容積10mlのフラスコに、アルゴン雰囲気にて、参考例1と同様な方法で合成した4,5-ジメトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド100mg(0.45mmol)及びpHを13.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、25℃で30分間反応させた。反応終了後、水20ml及び0.5mol/l塩酸を加えて、pHを7.6に調整した。次いで、析出した結晶を濾過した。一方、濾液を酢酸エチル100mlで抽出し、有機層を分離して、減圧下で濃縮して結晶を析出させた。得られた結晶を合わせて、減圧下で乾燥させて、無色結晶として6,7-ジメトキシ-3H-キナゾリン-4-オン86.2mgを得た(単離収率:93%)。
【0035】
参考例2〜4
参考例1において、原料を変えたこと以外は、参考例1と同様に反応を行った。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 0004296747
【0037】
なお、参考例2〜4において得られた化合物の物性値は以下の通りであった。
【0038】
5-エトキシ-4-メトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド(参考例2)。
融点;200〜203℃
元素分析;炭素55.26%、水素5.96%、窒素11.77%
(理論値(C11H14N2O4);炭素55.46%、水素5.92%、窒素11.76%)
1H-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));1.327(3H,t,J=6.84Hz)、3.786(3H,s)、4.048(2H,q,J=6.84Hz)、7.361(1H,s)、7.548(1H,brs)、8.139(1H,brs)、8.271(1H,s)、8.411〜8.415(1H,m)、11.807(1H,s)
13C-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));14.618(CH3-)、55.321(CH3O-)、64.158(-CH2O-)、104.243、110.846、112.877、134.171、142.722、151.485、160.119(-NHC(=O)H)、170.138(-C(=O)NH2)
FAB-MS;238(M+)
【0039】
4,5-ジエトキシ-2-ホルミルアミノベンズアミド(参考例3)。
融点;172〜175℃
元素分析;炭素56.88%、水素6.48%、窒素11.07%
(理論値(C12H16N2O4);炭素57.13%、水素6.39%、窒素11.10%)
1H-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));1.303〜1.372(6H,m)、4.012〜4.078(4H,m)、7.361(1H,s)、7.534(1H,brs)、8.127(1H,brs)、8.255(1H,s)、8.396〜8.399(1H,m)、11.780(1H,s)
13C-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));14.396(CH3-)、14.636(CH3-)、63.715(-CH2O-)、64.278(-CH2O-)、105.222、110.846、113.422、134.180、142.786、150.839、160.100(-NHC(=O)H)、170.101(-C(=O)NH2)
FAB-MS;252(M+)
【0040】
4,5-ビス(2-メトキシエトキシ)-2-ホルミルアミノベンズアミド(参考例4)。
1H-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));3.327(6H,s)、3.650〜3.707(4H,m)、4.098〜4.156(4H,m)、7.409(1H,s)、7.554(1H,brs)、8.144(1H,brs)、8.270(1H,s)、8.410〜8.415(1H,m)、11.758(1H,s)
13C-NMR(DMSO-d6,δ(ppm));58.145(CH3O-)、58.194(CH3O-)、67.812(MeO-CH2-)、68.414(MeO-CH2-)、70.004(-CH2O-)、70.334(-CH2O-)、105.814、111.394、114.114、134.322、142.893、150.921、160.168(-NHC(=O)H)、170.033(-C(=O)NH2)
FAB-MS;312(M+)
【0041】
実施例2〜4
実施例1において、原料を参考例2〜4で合成した化合物に変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0004296747
【0043】
【発明の効果】
本発明により、簡便な方法によって、4,5-ジアルコキシ-2-ホルミルアミノベンズアミドから6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンを得る、工業的に好適な6,7-ジアルコキシキナゾリン-4-オンの製法を提供するものである。

Claims (4)

  1. 水溶媒中、塩基の存在下、一般式(1)
    Figure 0004296747
    (式中、R及びRは、同一又は異なっていても良く、アルキル基又は、アルコキシル基および第二アミノ基からなる群の置換基を有していても良いアルキル基を示す。なお、R及びRは、互いに結合して環を形成していても良い。)で示される4,5−ジアルコキシ−2−ホルミルアミノベンズアミドを、0〜50℃で環化反応させることを特徴とする、一般式(2)
    Figure 0004296747
    (式中、R及びRは、前記と同義である。)
    で示される6,7−ジアルコキシキナゾリン−4−オンの製法。
  2. (式中、R及びRは、同一又は異なっていても良く、アルキル基又は、アルコキシル基の置換基を有していても良いアルキル基である請求項1記載の6,7−ジアルコキシキナゾリン−4−オンの製法。
  3. アルキル基がメチル基またはエチル基である請求項2記載の6,7−ジアルコキシキナゾリン−4−オンの製法。
  4. 塩基がアルカリ金属水酸化物である請求項1から3のいずれか1項記載の6,7−ジアルコキシキナゾリン−4−オンの製法。
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